特許第6889825号(P6889825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6889825四座キレートモノキノリン誘導体及びその製造方法、神経変性疾患の金属イオン調整剤としての応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889825
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】四座キレートモノキノリン誘導体及びその製造方法、神経変性疾患の金属イオン調整剤としての応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/40 20060101AFI20210607BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 39/04 20060101ALI20210607BHJP
   A61K 31/4706 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   C07D215/40CSP
   A61P25/28
   A61P25/14
   A61P25/16
   A61P21/00
   A61P25/02
   A61P43/00 111
   A61P3/00
   A61P39/04
   A61K31/4706
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-562176(P2018-562176)
(86)(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公表番号】特表2019-516776(P2019-516776A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】CN2017085886
(87)【国際公開番号】WO2017202360
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2018年11月26日
(31)【優先権主張番号】201610369550.X
(32)【優先日】2016年5月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518005942
【氏名又は名称】広東工業大学
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(73)【特許権者】
【識別番号】520346826
【氏名又は名称】ザ ナショナル センター フォー サイエンティフィック リサーチ
【氏名又は名称原語表記】The National Center for Scientific Research
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】劉艶
(72)【発明者】
【氏名】劉興国
(72)【発明者】
【氏名】張蔚欣
(72)【発明者】
【氏名】黄達涯
(72)【発明者】
【氏名】黄美傑
(72)【発明者】
【氏名】王徳安
(72)【発明者】
【氏名】黄菊
(72)【発明者】
【氏名】舒思▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】グエン、ミチェル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、アン
(72)【発明者】
【氏名】ムニエ、バーナード
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0094755(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0364454(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105949120(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式が式(I)に示されることを特徴とする四座キレートモノキノリン誘導体。
式(I)
(式中、
Xは−NRR´であり、
Yは−(CH)n−NR−(CH)m−NR(nは1、2、3、4、5又は
6、mは1、2、3、4、5又は6である。)であり、
RとR´は同じ又は異なり、それぞれ水素原子、又はC1−6アルキル基、C3−6シク
ロアルキル基、アルコキシ基、アミン基、ハロゲン原子、シアノ基、又はトリフルオロメ
チル基であり、
、R、R、R、及びRは同じ又は異なり、それぞれ水素原子、アルコキシ基
、アミン基、ハロゲン原子、シアノ基又はトリフルオロメチル基、C1−6アルキル基又
はC3−6シクロアルキル基であり、
、R、及びRは同じ又は異なり、それぞれ水素原子、アルコキシ基、シアノ基、
トリフルオロメチル基、C1−6アルキル基又はC3−6シクロアルキル基であり、前記
アルキル基又は前記シクロアルキル基は、最終的には、アルコキシ基、アミン基、ハロゲ
ン原子、シアノ基、又はトリフルオロメチル基のうちのいずれか1つ又は複数により置換
されてもよい。)
【請求項2】
Xは−NHであることを特徴とする請求項1に記載の四座キレートモノキノリン誘導体
【請求項3】
請求項1又は2に記載の四座キレートモノキノリン誘導体を含む神経変性疾患又は銅イオ
ン代謝障害疾患を治療する薬物。
【請求項4】
前記四座キレートモノキノリン誘導体は、生理学的に許容可能な立体異性体又は立体異性
体の混合物、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び塩形成物のうちいずれか1種をさらに
含み、前記塩形成物は硫酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、安息
香酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩又は酒石酸塩のうちいず
れか一つ以上であることを特徴とする請求項3に記載の前記神経変性疾患又は前記銅イオ
ン代謝障害疾患を治療する薬物。
【請求項5】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、ダウン症候
群又は筋萎縮性側索硬化症のうちいずれか一つであり、前記銅イオン代謝障害疾患はウィ
ルソン病であることを特徴とする請求項4に記載の前記神経変性疾患又は前記銅イオン代
謝障害疾患を治療する薬物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年5月27日に中国特許庁に提出して、出願番号が201610369550.X、発明の名称が「四座キレートモノキノリン誘導体及びその製造方法、神経変性疾患の金属イオン調整剤としての応用」である中国特許出願の優先権を主張し、全内容を引用により本願に組み入れる。
【0002】
本発明は、薬物・有機合成の技術分野に関し、具体的に、四座キレートモノキノリン誘導体及びその製造方法、神経変性疾患の金属イオン調整剤としての応用に関する。
【背景技術】
【0003】
大量の研究から明らかなように、多数の複雑な進行性神経変性疾患は金属イオンの不均衡及び過剰な蓄積に関連し、病因が単一の疾患でも、類似した場合がある。たとえば、アルツハイマー病では、患者の脳内で銅イオンの定常状態調整のバランスが崩れることにより、大量の銅イオンが患者の脳のアミロイド斑に蓄積して、酸化ストレスを引き起こしてニューロン死亡を誘導する。
【0004】
大量の科学論文において、酸化還元活性を有する金属イオン(銅イオン、鉄イオン)がタンパク質のミスフォールディングや凝集を誘起して、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、海綿状脳症などの各種の重篤な疾患を引き起こす報道があった。これら病症では、酸化還元活性を有する金属イオンの定常状態のバランスが各種の内因性還元剤(又は外部電子源)により破壊されて、金属媒介の酸素分子の還元反応を発生させ、反応性酸素種(ROS)、たとえば過酸化水素やヒドロキシ遊離基を生成させることが発生し易い(P.Faller,C.Hureau,Chem.Eur.J.,012,18,15910‐15920;M.A.Telpoukhovskaia,C.Orvig,Chem.Soc.Rev.,2013,42,1836‐1846)。
【0005】
各種の金属イオンキレート剤のうち、クリオキノールとPBT2の2種のモノキノリン誘導体は、潜在的な治療薬としてアルツハイマー病の治療研究に用いられている(R.A.Chernyetal.Neuron,2001,30,665−676;K.J.BarnhamandA.I.Bush,Chem.Soc.Rev.,2014,43,6727‐6749)。しかしながら、クリオキノールとPBT2のようなモノキノリン化合物は二座配位子だけとしては、アミロイド内の銅イオンを除去しにくい。最近の研究では、このような二座配位子は「アミロイド−銅イオン−クリオキノール」三元複合物を形成することを示した(M.Nguyenetal.,ChemistryOpen,2014,20,6771−6785)。同時に、該研究では、四座配位子がアミロイドから銅イオンを効果的に除出することが報道された。
【0006】
関連する最新の総合的な文献としては、BarnhamandBush,Chem.Soc.Rev.,2014,43,6727−6749,PerezandFranz,DaltonTrans.,2010,39,2177−2187,Rowinska−Zyreketal.,Coord.Chem.Rev.,2015,284,298−312,Robertetal.,Acc.Chem.Res.2015,48,1332−1339,Bandmannetal.,LancetNeurol.,2015,14,103−113.を参照すればよい。
【0007】
ところが、現在、モノキノリン化合物がアミロイド内の銅イオンを特異的に抽出できる報道は少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高選択性で銅イオンをキレートでき、神経変性疾患(たとえば、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、ダウン症候群、筋萎縮性側索硬化症)及び銅イオン蓄積症(ウィルソン病)における銅イオンの定常状態の不均衡を調整する能力を有するモノ8−アミノキノリン系四座配位子化合物を提供することである。本発明によるモノアミノキノリン誘導体は、適切な疎水性、良好な経口投与活性及び血液脳関門を通過する能力を有する。このような新規配位子は、「四配位モノキノリン誘導体」と総称し、TDMQを略称とする。
【0009】
より具体的には、本発明による化合物は、金属配位化合物であり、酸化還元活性を有する金属イオン、たとえば銅イオン(アルツハイマー病患者のアミロイド斑に大量過剰になる)を特異的にキレートできる。本特許では、ADはアルツハイマー病を示す。本発明の化合物は、ほかの金属イオン調整障碍に関するほかの神経変性疾患、たとえばパーキンソン病(PD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)にも適用できる。この他、ウィルソン病(WD)は血液循環や他の器官における銅イオンの過負荷を引き起こし、本発明のキレート配位化合物の応用分野に該当する。
【0010】
本発明の別の目的は上記誘導体の製造方法と応用を提供することである。
【0011】
優れた生物学的利用能を有する小分子四座配位子化合物を製造するために、本発明は、モノアミノキノリン骨格に基づいて新薬のシリーズを設計する。
【0012】
本発明には、化合物の合成、金属キレート能力及び抗酸化ストレス能力が記載されており、一実施例として、本発明には、化合物は銅イオン−アミロイド複合物の還元剤存在下での過酸化水素に対する媒介作用を低下させることが記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成させるために、本発明は下記技術案を用いる。
【0014】
本発明は、構造式が式(I)に示される四座キレートモノキノリン誘導体を提供する。
【0015】

(式中、Xは−OR、−NRR´、−OCOR又は−OCOORであり、
Yは−(CH)n−NR−(CH)m−NRであり、
RとR´は同じ又は異なり、それぞれ水素原子、又はアルコキシ基(−OR)、アミン基(−NRR´)、ハロゲン、シアノ基(−CN)、トリフルオロメチル基(−CF3)、エステル基(−COOR又は−OCOOR)、アミド基(−CONRR´又は−NRCOOR´)のうちのいずれか1つ又は複数の基により置換されたシクロアルキル基又はアルキル基であり、
、R、R、R、R、R、R、Rは同じ又は異なり、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アミン基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、エステル基、アミド基を示すか、又は、アルコキシ基(−OR)、アミン基(−NRR´)、ハロゲン原子、シアノ基(−CN)、トリフルオロメチル基(−CF3)、エステル基(−COOR又は−OCOOR)、アミド基(−CONRR´又は−NRCOOR´)のうちのいずれか1つ又は複数の基により置換されたアルキル基を示し、
nは1、2、3、4、5又は6、mは1、2、3、4、5又は6である。)
【0016】
好ましくは、式(I)に示される四座キレートモノキノリン誘導体において、Xは−OR、−NRR´、−OCOR又は−OCOORであり、Yは−(CH)n−NR−(CH)m−NRであり、
RとR´は同じ又は異なり、それぞれ水素原子、又はアミン基(−NRR´)、ハロゲン原子、シアノ基(−CN)又はトリフルオロメチル基(−CF3)のうちのいずれか1つ又は複数の基により置換されたシクロアルキル基又はアルキル基であり、
、R、R、R、R、R、R、Rは同じ又は異なり、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アミン基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基を示すか、又は、アルコキシ基(−OR)、アミン基(−NRR´)、ハロゲン原子、シアノ基(−CN)又はトリフルオロメチル基(−CF3)のうちのいずれか1つ又は複数の基により置換されたアルキル基を示す。
【0017】
より好ましくは、式(I)に示される四座キレートモノキノリン誘導体において、Xは−NRR´であり、RとR´は同じ又は異なり、それぞれ水素原子を示すか、又はアミン基(−NRR´)、ハロゲン原子、シアノ基(−CN)又はトリフルオロメチル基(−CF3)のうちのいずれか1つ又は複数の基により置換されたアルキル基を示し、
【0018】
、R、R、R、R、R、R、Rは同じ又は異なり、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アミン基、ハロゲン原子、シアノ基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0019】
最も好ましくは、式(I)に示される四座キレートモノキノリン誘導体においてXは−NHである。
【0020】
用語解釈
【0021】
本発明に係る化合物はさらに、生理学的に許容可能な立体異性体又は立体異性体混合物、互変異性体形態、水和物、溶媒和物、塩形成化合物(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、メチルベンゼンスルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩などを含む)、任意の形態及び各種のエステル形成誘導体などを含む。
【0022】
本発明によるアルキル基とは、線形又は分岐状の飽和アルキル基を意味し、1−20個の炭素原子、好ましくは1−6個の炭素原子を含む。
【0023】
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、セチル基及びオクタデシル基は線形アルキル基である。
【0024】
イソプロピル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルブチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基及び3−メチルヘプチル基は分岐状アルキル基である。
【0025】
アルコキシ基とは、−O−アルキル基(−OR)形態の基であり、アルキル基Rは本発明の前記定義と同様である。
【0026】
本発明によるハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0027】
アルケニル基は、1つ又は複数の炭素炭素二重結合を有する線形又は分岐状のオレフィン基であってもよい。アルケニル基は、1つ又は複数の炭素炭素三重結合を有する線形又は分岐状のアルキン基であってもよい。
【0028】
シクロアルキル基は、飽和又は不飽和の単環、二環又は三環アルカンであってもよく、3−11個の炭素原子を含み、たとえば、シクロプロパン基、シクロペンタン基、シクロヘキサン基又はアダマンチル基及び1つ又は複数の不飽和結合を含む対応したシクロアルカン基が挙げられる。
【0029】
芳香族基とは、6−10個の炭素原子を有する単環又は二環炭化水素不飽和芳香族基であり、たとえば、フェニル基又はナフチル基(ハロゲン原子置換を含んでもよい)が挙げられる。
【0030】
ヘテロアリール基とは、1つ又は複数のヘテロ原子、4−11個の炭素原子を有する単環又は二環芳香環基であり、ヘテロ原子は窒素原子、酸素原子又は硫黄原子であってもよく、たとえば、ピラジニル基、チエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、ピロリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、インダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、フラニル基、イミダゾリル基、インドリル基、テトラゾリル基、ピラゾリル基、イソキノリニル基、キノリル基、チアゾリル基などが挙げられる。
【0031】
用語「生理学的に許容可能な塩形成物」とは、比較的に無毒である本発明の化合物の無機酸塩又は有機酸塩を意味する。これら塩形成形態の化合物は、化合物の最終分離段階に原位置製造し又は精製後に製造し得る。本発明の化合物と塩形成できる酸は、臭化水素塩化水素、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、蓚酸、ホウ酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、メタンスルホン酸、スルホン酸などを含むが、それら上記酸に制限されない。
【0032】
好ましくは、式(I)に示される四座キレートモノキノリン誘導体の製造方法では、反応式は以下のとおりであり、下記ステップを含む。
【0033】
【0034】
S1.化合物I−1のX基を保護して、化合物I−2を生成する。
【0035】
S2.化合物I−2について酸化官能基化を行った後、NHと反応させて、化合物I−3を生成する。
【0036】
S3.化合物I−3を脱保護して、前記誘導体Iを得る。
【0037】
はX基の保護基であり、t−ブトキシカルボニル基、アセチル基を含むが、それらに制限されない。
【0038】
本発明で設計して合成した四座キレートモノキノリン誘導体は、金属特異的キレート能力及び抗酸化ストレス能力が高い。特に、四座配位子を有することにより、銅イオンを効果的にキレートし、且つ適切な疎水性を有することにより、優れた経口投与活性及び血液脳関門を通過する能力を有する。本発明の前記誘導体を銅、亜鉛イオンと配位反応させて、その親和定数を計算したところ、本発明の銅イオンに対する結合定数LogKCu2+は10以上に達し、亜鉛イオンに対する結合定数LogKZn2+は4.5程度であり、このことから、本発明の前記誘導体は、銅イオンに対する特異的キレート能力が高く、また、多数の進行性神経変性疾患を治療する薬物を製造するための良好な配位子であることが示される。アミロイドペプチドAβが銅イオン及び還元性試薬の条件において過酸化水素の生成を誘導する試験を行った結果、本発明による誘導体は、アミロイドを特異的に結合でき、このことから、酸化ストレスを低下させる能力が高いことが示される。
【0039】
このため、本発明の前記四座キレートモノキノリン誘導体の金属錯体製造における応用は保護範囲に含まれる。前記誘導体は金属銅イオンを特異的にキレートして金属錯体を製造する。
【0040】
本発明の前記四座キレートモノキノリン誘導体の、神経変性疾患の金属イオン調整剤としての応用、さらに、神経変性疾患と銅イオン代謝障害疾患を治療する薬物の製造における応用は保護範囲に含まれる。
【0041】
好ましくは、前記誘導体はさらに、生理学的に許容可能な立体異性体又は立体異性体の混合物、異性体、水和物、溶媒和物、塩形成物、任意の形態又はエステルを含み、塩形成物は、硫酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩を含む。
【0042】
好ましくは、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、ダウン症候群又は筋萎縮性側索硬化症を含み、銅イオン代謝障害疾患はウィルソン病を含む。
【発明の効果】
【0043】
従来技術に比べて、本発明は以下の利点及び有益な効果を有する。
【0044】
本発明による誘導体は、銅イオンを選択的にキレートでき、銅イオンとの錯化定数が亜鉛イオンとの錯化定数よりも6〜12桁高く、且つ強い抗酸化ストレス能力を有する。前記誘導体の製造方法はシンプルで、複数種の性神経変性疾患を治療する薬物の製造において将来性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】化合物TDMQ−5、ほかの競合配位子及び銅イオンの紫外線−可視スペクトルである。
図2】化合物TDMQ−5、TDMQ−10及び銅イオン、アスコルビン酸ナトリウムにより誘導されて発生した過酸化水素の含有量の図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、明細書の図面及び実施例にて本発明についてさらに説明するが、実施例は本発明を何ら限定するものではない。特に断らない限り、本発明に使用される試薬、方法及び装置は本技術分野の一般的な試薬、方法及び装置である。
【0047】
特に断らない限り、本発明に使用される試薬及び材料はすべて市販品として入手される。
【0048】
実施例1:化合物TDMQ−5の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0049】
【0050】
2−メチル−5,7−ジクロロ−キノリン(1)
0℃で撹拌しながら、3,5−ジクロロアニリン(3.24g、20mmol)の濃塩酸溶液(12mL)に35wt.%アセトアルデヒド水溶液(12.8mL、80mmol)を1滴ずつ滴下した。反応混合液を0℃で15分間撹拌した後、徐々に75℃に昇温して、該温度で4時間反応させた。反応物を室温に冷却させた後、氷水に投入して、25%アンモニア水溶液を滴下して中和し、アルカリ性にし、ジクロロメタンで3回抽出した。有機相を分離した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:20)で分離して精製し、淡黄色固体化合物1 2.93gを得て、収率は69%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.40(d,J=8.0Hz,1H),7.96(d,J=2.0Hz,1H),7.55(d,J=2.0Hz,1H),7.37(d,J=8.0Hz,1H),2.76(s,3H)。
【0051】
2−メチル−5,7−ジクロロ−8−ニトロキノリン(2):
常温下、化合物1(2.12g、10mmol)を溶解した濃硫酸溶液(10mL)に発煙硝酸(2.0mL)を1滴ずつ滴下して、1時間かけて滴下を終了した後、1時間反応させ続けた。反応物を氷水に投入して、25%アンモニア水溶液を滴下して中和し、アルカリ性にし、ジクロロメタンで3回抽出した。有機相を分離した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:10)で分離して精製し、淡黄色固体化合物2 2.34gを得て、収率は91%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.43(d,J=8.0Hz,1H),7.64(s,1H),7.50(d,J=8.0Hz,1H),2.76(s,3H)。
【0052】
2−メチル−5,7−ジクロロ−8−アミノキノリン(3):
常温下、還元鉄粉(1.34g、24mmol)と氷酢酸(18mL)を化合物2(2.06g、8mmol)のエタノール溶液(50mL)に加えた。4時間還流反応させた後、反応系を常温に冷却させて、反応系に飽和NaHCO水溶液(400mL)を1滴ずつ滴下した。ジクロロメタンで3回抽出して、有機相を分離した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:10)で分離して精製し、淡黄色固体化合物3 1.62gを得て、収率は89%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.31(d,J=8.0Hz,1H),7.42(s,1H),7.35(d,J=8.0Hz,1H),5.36(brs,2H),2.76 (s,3H)。
【0053】
2−メチル−5,7−ジクロロ−8−(N,N−ジアセチル)アミノキノリン(4):
0℃で、化合物3(1.29g、5mmol)を溶解したジクロロメタン溶液(10mL)に塩化アセチル(1.1mL)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(5mL)をそれぞれ1滴ずつ滴下した。反応系を0℃で15分間撹拌した後、徐々に還流させるまで昇温した。4時間反応させ続けた後、溶媒を減圧除去した。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:20)で分離して精製し、淡黄色固体化合物4 1.09gを得て、収率は70%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.41(d,J=8.0Hz,1H),7.70(s,1H),7.42(d,J=8.0Hz,1H),2.71(s,3H),2.29(s,6H)。
【0054】
2−アルデヒド−5,7−ジクロロ−8−(N,N−ジアセチル)アミノキノリン(5):
化合物4(0.93g、3mmol)のジオキサン溶液(7mL)に、酸化セレン(0.5g、4.5mmol)を加えて、85℃で反応させて、12時間撹拌し、反応系を珪藻土で濾過して、ジクロロメタンで濾過ケーキを洗浄した。有機相を合併して減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:20)で分離して精製し、淡黄色固体化合物5 0.69gを得て、収率は71%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ10.13(s,1H),8.76(d,J=8.0Hz,1H),8.18(d,J=8.0Hz,1H),7.92(s,1H),2.32(s,6H)。
【0055】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−5,7−ジクロロ−8−アミノキノリン(TDMQ−5):
アルゴンガス保護下、化合物5(622mg、2mmol)の1,2−ジクロロエタン溶液(30mL)にN,N−ジメチルエチレンジアミン(352mg、4mmol)を加えて、反応混合物を室温で1時間撹拌し、反応系にNaBH(OAc)(848mg、4mmol)を加えて、12時間反応させ続けた。反応系に100mLのジクロロメタンと飽和NaHCO水溶液(40mL)をそれぞれ加えて、有機相を分離した後、水相に2mLのアンモニア水を加えて、次にジクロロメタンで3回抽出した。合併した有機相を減圧濃縮させた。粗製物を5mLのジクロロメタンに溶解して、6N HCl(2mL)を加え、室温で撹拌して4時間反応させた。反応系に50mLの水を加えてアンモニア水でアルカリ性になるまで中和した。ジクロロメタンで3回抽出した。合併後の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/イソプロパノール/25%アンモニア水、8:2:0.5)で分離して精製し、淡黄色固体化合物TDMQ−5 488mgを得て、収率は78%であった。
【0056】
化合物TDMQ−5の構造式
【0057】
【0058】
核磁気共鳴水素スペクトル: H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.35(d,J=8.8Hz,1H),7.49(d,J=8.8Hz,1H),7.43(s,1H),5.38(brs,2H),4.10(s,2H),2.75(t,J=6.0Hz,2H),2.55(brs,1H),2.48(t,J=6.0Hz,2H),2.22(s,6H).
【0059】
マススペクトル :ESI +−MS:m/z(relative intensity)313.1(MH +,100),314.1(18),315.1(65),316.1(11),317.1(11),318.1(2).Minor peaks due to fragmentation in the mass spectrometer were detected at m/z 268.0{M'=[M-(CH 3) 2N] +,9},224.9{M"=[M-(CH 3) 2N−(CH) 2−NH] +,15},190.0(M"-Cl,5),155.0(M"-2Cl,3).Isotopic patterns are consistent.HRMS(ESI +)for C 14H 19N 4Cl 2:Calcd,313.0987;Found,313.0987.
【0060】
油水分配係数:Calculated logP=2.42(ChemDraw Pro、v.14.0)。
【0061】
実施例2:化合物TDMQ−9の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0062】
【0063】
2−メチル−6−フルオロ−8−ニトロキノリン(6):
化合物1の製造方法を参照して合成した化合物6は、収率73%の淡黄色固体であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.00(d,J=8.4Hz,1H),7.70(dd,J=8.0,2.8Hz,1H),7.55(dd,J=8.0,2.8Hz,1H),7.40(d,J=8.4Hz,1H),2.69(s,3H)。
【0064】
2−メチル−6−フルオロ−8−アミノキノリン(7):
化合物3の製造方法を参照して合成した化合物7は、収率92%の淡黄色固体であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ7.87(d,J=8.4Hz,1H),7.25(d,J=8.4Hz,1H),6.95(dd,J=10.8,2.8Hz,1H),6.63(dd,J=10.8,2.8Hz,1H),5.13(brs,2H),2.69(s,3H)。
【0065】
2−メチル−6−フルオロ−8−(N−Boc)アミノキノリン(8):
化合物7(1.76g、10mmol)のジオキサン溶液(20mL)に二炭酸ジ−t−ブチル(3.27g、15mmol)を加えて、12時間還流反応させた。溶媒を減圧除去した後、粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:20)で分離して精製し、淡黄色固体化合物8 2.58gを得て、収率は89%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ9.08(s,1H),8.21(d,J=10.4Hz,1H),7.94(d,J=8.4Hz,1H),7.31(d,J=8.4Hz,1H),6.97(dd,J=8.8,2.8Hz,1H),2.72(s,3H),1.59(s,9H)。
【0066】
2−アルデヒド−6−フルオロ−8−(N−Boc)アミノキノリン(9):
化合物5の合成方法を参照して合成化合物9は、淡黄色固体で、収率が50%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ10.23(s,H),9.04(s,1H),8.36(d,J=10.8Hz,1H),8.23(d,J=8.4Hz,1H),8.07(d,J=8.4Hz,1H),7.11(dd,J=8.4,2.4Hz,1H),1.62(s,9H)。
【0067】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−6−フルオロ−8−(N−Boc)アミノキノリン(10):
アルゴンガス保護下、化合物9(580mg、2mmol)の1,2−ジクロロエタン溶液(30mL)にN,N−ジメチルエチレンジアミン(352mg、4mmol)を加えて、反応混合物を室温下で1時間撹拌し、反応系にNaBH(OAc)(848mg、4mmol)を加えて、12時間反応させ続けた。反応系に100mLのジクロロメタンと飽和NaHCO水溶液(40mL)をそれぞれ加えて、有機相を分離した後、水相に2mLのアンモニア水を加えて、次にジクロロメタンで3回抽出した。合併後の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/イソプロパノール/25%アンモニア水、8:2:0.5)で分離して精製し、淡黄色固体化合物10 660mgを得て、収率は91%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ9.07(s,1H),8.25(d,J=10.0Hz,1H),8.02(d,J=8.8Hz,1H),7.49(d,J=8.8Hz,1H),7.0(dd,J=8.8,2.8Hz,1H),4.11(s,2H),2.76(t,J=6.0Hz,2H),2.49(t,J=6.0Hz,2H),2.24(s,6H),1.60(s,9H)。
【0068】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−6−フルオロ−8−アミノキノリン(TDMQ−9):
化合物10(725mg、2mmol)を溶解したジクロロメタン溶液(10mL)に5mLのトリフルオロ酢酸を滴下して、室温で4時間撹拌した。過剰なトリフルオロ酢酸を減圧除去した後、反応系に水50mLを加えて、アンモニア水でアルカリ性になるまで中和した。ジクロロメタンで3回抽出した。合併後の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/イソプロパノール/25%アンモニア水、8:2:0.5)で分離して精製し、淡黄色固体化合物TDMQ−9 451mgを得て、収率は86%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ7.93(d,J=8.4Hz,1H),7.39(d,J=8.4Hz,1H),6.71(dd,J=10.4,2.8Hz,1H),6.64(dd,J=10.4,2.8Hz,1H),5.20(brs,2H),4.07(s,2H),2.85(brs,1H),2.78(t,J=6.0Hz,2H),2.49(t,J=6.0Hz,2H),2.23(s,6H)。
【0069】
実施例3:化合物TDMQ−10の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0070】
【0071】
2−メチル−5、6−ジクロロ−8−ニトロキノリン(11):
化合物1の製造方法を参照して合成した化合物11は、淡黄色固体で、収率が54%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.51(d,J=8.8Hz,1H),8.03(s,1H),8.16(d,J=8.8Hz,1H),2.79(s,3H)。
【0072】
2−メチル−5、6−ジクロロ−8−アミンキノリン(12):
化合物3の製造方法を参照して合成した化合物12は、淡黄色固体で、収率が86%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ10.25(s,H),8.91(s,1H),8.34(d,J=8.8Hz,1H),7.37(d,J=8.8Hz,1H),6.93(s,1H),2.71(s,3H)。
【0073】
2−メチル−5、6−ジクロロ−8−(N−Boc)アミノキノリン(13)
化合物8の製造方法を参照して合成した化合物13は、白色固体で、収率が84%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.98(s,1H),8.50(s,1H),8.40(d,J=8.4Hz,1H),7.42(d,J=8.4Hz,1H),2.75(s,3H),1.59(s,9H)。
【0074】
2−アルデヒド−5、6−ジクロロ−8−(N−Boc)アミノキノリン(14):
化合物5の製造方法を参照して合成した化合物14は、淡黄色固体で、収率が56%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ10.25(s,1H),8.91(s,1H),8.69(d,J=8.4Hz,1H),8.65(s,1H),8.16(d,J=8.4Hz,1H),1.62(s,9H)。
【0075】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−5、6−ジクロロ−8−(N−Boc)アミノキノリン(15):
化合物10の製造方法を参照して合成した化合物15は、淡黄色固体で、収率が92%であった。 H NMR(400 MHz,CDCl 3):δ8.97(s,1H),8.54(s,1H),8.48(d,J=8.8Hz,1H),7.60(d,J=8.8Hz,1H),4.14(s,2H),2.75(d,J=6.0Hz,2H),2.48(d,J=6.0Hz,2H),2.24(s,6H),1.59(s,9H)。
【0076】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−5、6−ジクロロ−8−アミノキノリン(TDQM−10):
化合物TDMQ−9の製造方法を参照して合成した化合物TDMQ−10は、淡黄色固体で、収率が92%であった。
【0077】
化合物TDMQ−10の構造式
【0078】
【0079】
核磁気共鳴水素スペクトル: H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.41(d,J=8.8Hz,1H),7.54(d,J=8.8Hz,1H),6.94(s,1H),5.06(s,2H),4.10(s,2H),2.76(d,J=6.0Hz,2H),2.48(d,J=6.0Hz,2H),2.23(s,6H).
【0080】
マススペクトル :ESI +−MS:m/z ESI +−MS:m/z(relative intensity)313.1(MH +,100),314.1(18),315.1(65),316.1(11),317.1(11),318.1(2).Minor peaks due to fragmentation in the mass spectrometer were detected at m/z 268.0{M'=[M-(CH 3) 2N] +,10},224.9{M"=[M-(CH 3) 2N−(CH) 2−NH] +,18},190.0(M"-Cl,6),155.0(M"-2Cl,3).Isotopic patterns are consistent.HRMS(ESI +)for C 14H 19N 4Cl 2:Calcd,313.0987;Found,313.0990.
【0081】
油水分配係数:Calculated logP=2.42(ChemDraw Pro、v.14.0)。
【0082】
実施例4:化合物TDMQ−12の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0083】
【0084】
2−メチル−6−クロロ−8−ニトロキノリン(16):
化合物1の製造方法を参照して合成した化合物16は、淡黄色固体で、収率が54%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.04(d,J=8.4Hz,1H),7.94(d,J=2.1Hz,1H),7.92(d,J=2.2Hz,1H),7.44(d,J=8.4Hz,1H),2.76(s,3H)。
【0085】
2−メチル−6−クロロ−8−アミンキノリン(17):
化合物3の製造方法を参照して合成した化合物17は、淡黄色固体で、収率が81%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ7.84(d,J=8.4Hz,1H),7.24(d,J=8.4Hz,1H),7.06(d,J=2.0Hz,1H),6.83(d,J=2.0Hz,1H),5.05(brs,2H),2.68(s,3H)。
【0086】
2−メチル−6−クロロ−8−(N−アセチル)アミノキノリン(18):
化合物8の製造方法を参照して合成した化合物18は、淡黄色固体で、収率が81%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ9.79(s,1H),8.75(s,1H),7.94(d,J=8.0Hz,1H),7.43(s,1H),7.34(d,J=8.0Hz,1H,),2.73(s,3H),2.36(s,3H)。
【0087】
2−アルデヒド−6−クロロ−8−(N−アセチル)アミノキノリン(19):
化合物5の製造方法を参照して合成した化合物19は、淡黄色固体で、収率が45%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ10.23(s,1H),9.71(s,1H),8.90(s,1H),8.24(d,J=8.0Hz,1H),8.10(d,J=8.0Hz,1H),7.57(s,1H),2.42(s,3H)。
【0088】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−6−クロロ−8−アミノキノリン(TDMQ−12):
化合物TDMQ−5の製造方法を参照して合成した化合物TDMQ−12は、淡黄色固体で、収率が91%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ7.89(d,J=8.4Hz,1H),7.39(d,J=8.4Hz,1H),7.07(d,J=2.0Hz,1H),6.83(d,J=2.0Hz,1H),5.14(brs,2H),4.06(s,2H),2.81(brs,1H),2.77(t,J=6.0Hz,2H),2.48(t,J=6.0Hz,2H),2.22(s,6H)。
【0089】
実施例5:化合物TDMQ−13の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0090】
【0091】
2−メチル−7−クロロ−8−ニトロキノリン(20):
化合物1の製造方法を参照して合成した化合物20は、淡黄色固体で、収率が80%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.08(d,J=8.5Hz,1H),7.83(d,J=8.8Hz,1H),7.52(d,J=8.8Hz,1H),7.40(d,J=8.5Hz,1H),2.74(s,3H)。
【0092】
2−メチル−7−クロロ−8−アミンキノリン(21):
化合物3の製造方法を参照して合成した化合物21は、淡黄色固体で、収率が86%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ7.84(d,J=8.0Hz,1H),7.24(d,J=8.0Hz,1H),7.06(s,1H),6.83(s,1H),5.05(brs,2H),2.68(s,3H)。
【0093】
2−メチル−7−クロロ−8−(N−アセチル)アミンキノリン(22):
化合物8の製造方法を参照して合成した化合物22は、淡黄色固体で、収率が42%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.04(d,J=8.4Hz,1H),7.79(d,J=8.8Hz,1H),7.57(d,J=8.8Hz,1H),7.32(d,J=8.4Hz,1H),2.688(s,3H),2.298(s,6H)。
【0094】
2−アルデヒド−7−クロロ−8−(N−アセチル)アミンキノリン(23):
化合物5の製造方法を参照して合成した化合物23は、淡黄色固体で、収率が64%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ10.13(s,1H),8.39(d,J=8.8Hz,1H),8.10(d,J=8.8Hz,1H),7.96(d,J=8.8Hz,1H),7.81(d,J=8.8Hz,1H),2.330(s,6H)。
【0095】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−7−クロロ−8−(N−アセチル)アミノキノリン(24):
化合物10の製造方法を参照して合成した化合物24は、淡黄色固体で、収率が94%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.08(d,J=8.4Hz,1H),7.62(d,J=8.8Hz,1H),7.54(d,J=8.8Hz,1H),7.43(d,J=8.4Hz,1H),4.11(s,2H),2.79(t,J=6.0Hz,2H),2.50(t,J=6.0Hz,2H),2.239(s,6H)。
【0096】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−7−クロロ−8−アミノキノリン(TDMQ−13):
化合物TDMQ−5の製造方法を参照して合成した化合物TDMQ−13は、淡黄色固体で、収率が97%であった。TDMQ−13: H NMR(400MHz,CDCl 3)δ7.99(d,J=8.4Hz,1H),7.39(d,J= 8.4Hz,1H),7.34(d,J=8.7Hz,1H),7.05(d,J=8.7Hz,1H),5.35(brs,2H),4.09(s,2H),2.76(t,J=6.0Hz,2H),2.48(t,J=6.0Hz,2H),2.46(brs,1H),2.23(s,6H)。
【0097】
実施例6:化合物TDMQ−16の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0098】
【0099】
2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−ニトロキノリン(25):
化合物5の製造方法を参照して合成した化合物25は、淡黄色固体で、収率が59%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.28(s,1H),8.22(d,J=8.4Hz,1H),8.12(s,1H),7.54(d,J=8.4Hz,1H),2.81(s,3H)。
【0100】
2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−アミンキノリン(26):
化合物3の製造方法を参照して合成した化合物26は、淡黄色固体で、収率が74%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.02(d,J=8.4Hz,1H),7.39(s,1H),7.33(d,J=8.4Hz,1H),7.01(s,1H),5.15(brs,2H),2.74(s,3H)。
【0101】
2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−(N−アセチル)アミンキノリン(27):
化合物8の製造方法を参照して合成した化合物27は、淡黄色固体で、収率が78%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ9.85(s,1H),8.97(s,1H),8.12(d,J=8.4Hz,1H),7.76(s,1H),7.42(d,J=8.4Hz,1H),2.79(s,3H),2.38(s,3H)。
【0102】
2−アルデヒド−6−トリフルオロメチル−8−(N−アセチル)アミンキノリン(28):
化合物5の製造方法を参照して合成した化合物21は、淡黄色固体で、収率が50%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ10.28(s,1H),9.77(s,1H),9.12(s,1H),8.45(d,J=8.0Hz,1H),8.18(d,J=8.0Hz,1H),7.90(s,1H),2.43(s,3H)。
【0103】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−6−トリフルオロメチル−8−(N−アセチル)アミノキノリン(29):
化合物10の製造方法を参照して合成した化合物29は、淡黄色固体で、収率が96%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ9.92(s,1H),9.00(s,1H),8.20(d,J=8.0Hz,1H),7.79(s,1H),7.61(d,J=8.0Hz,1H),4.17(s,2H),2.77(t,J=6.0Hz,2H),2.50(t,J= 6.0Hz,2H),2.36(s,3H),2.24(s,6H)。
【0104】
2−(N,N−ジメチルエチレンジアミン)メチル−6−トリフルオロメチル−8−アミノキノリン(TDMQ−16):
化合物TDMQ−5の製造方法を参照して合成した化合物TDMQ−16は、淡黄色固体で、収率が99%であった。TDMQ−16: H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.07(d,J=8.4Hz,1H),7.48(d,J=8.4Hz,1H),7.39(s,1H),7.01(s,1H),5.23(brs,2H),4.11(s,2H),2.77(t,J=6.0Hz,2H),2.55(brs,1H),2.48(t,J=6.0Hz,2H),2.23(s,6H)。
【0105】
実施例7:化合物TDMQ−19の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0106】
【0107】
2−(N,N−ジメチルプロパンジアミン)メチル−5、7−ジクロロ−8−アミノキノリン(TDMQ−19):
化合物TDMQ−5の製造方法を参照して合成した化合物TDMQ−19は、淡黄色固体で、収率が87%であった。 H NMR(400MHz,D 2O):δ8.49(d,J=8.8Hz,1H),7.58(s,1H),7.49(d,J=8.8Hz,1H),4.58(s,2H),3.25(t,J=8.0Hz,2H),3.19(t,J=8.0Hz,2H),2.82(s,6H),2.23−2.15(m,2H)。
【0108】
実施例8:化合物TDMQ−20の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0109】
【0110】
2−ビニル−5、7−ジクロロ−8−ニトロキノリン(30):
化合物2(102.8mg、0.4mmol)をDMA(2mL)に溶解した後、それぞれFeCl(6.4mg、0.04mmol)とTBHP(0.8mmol、70%aqueous solution)を加えて、140℃で撹拌して4時間反応させた。反応系を室温に冷却させた後、水で希釈して、ジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/石油エーテル、1:10)で分離して精製し、白色固体化合物30 35.6mgを得て、収率は33%(回収原料41%)であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δ8.52(d,J=8.8Hz,1H),7.73(d,J=8.8Hz,1H),7.65(s,1H),6.97(dd,J=17.6,10.8Hz,1H),6.46(d,J=17.6Hz,1H),5.79(d,J=10.8Hz,1H)。
【0111】
2−(2'−(N,N−ジメチルエチレンジアミン))エチル−5、7−ジクロロ−8−ニトロキノリン(31):
化合物30(1.08g、4mmol)、N,N−ジメチルエチレンジアミン(352mg、4mmol)、酢酸(4mmol)をメタノール15mLに溶解して12時間還流反応させた。有機溶剤を減圧除去した後、粗製物をジクロロメタン30mLに溶解した。有機相を10%NaOH水溶液で洗浄した後、KCOで乾燥させた。KCOを濾過した後に、有機相を減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/イソプロパノール/25%アンモニア水、8:2:0.5)で分離して精製し、淡黄色固体化合物31 1.07gを得て、収率は75%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.46(d,J=8.8Hz,1H),7.66(s,1H),7.54(d,J=8.8Hz,1H),3.22(t,J=6.0Hz,2H),3.12(t,J=6.0Hz,2H),2.74(t,J=6.4Hz,2H),2.43(t,J=6.4Hz,2H),2.23(s,6H)。
【0112】
2−(2'−(N,N−ジメチルエチレンジアミン))エチル−5、7−ジクロロ−8−アミノキノリン(TDMQ−20):
化合物3の製造方法を参照して合成した化合物TDMQ−20は、淡黄色固体で、収率が90%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.33(d,J=8.8Hz,1H),7.43(s,1H),7.37(d,J=8.8Hz,1H),5.40(brs,2H),3.19−3.12(m,4H),2.77(t,J=6.0Hz,2H),2.44(t,J=6.0Hz,2H),2.22(s,6H)。
【0113】
実施例9:化合物TDMQ−22の製造
合成経路、具体的なステップは以下のとおりである。
【0114】
【0115】
2−ビニル−6−トリフルオロメチル−8−ニトロキノリン(32):
化合物25(1.0g、3.9mmol)をDMA(5mL)に溶解した後、それぞれFeCl(19.0mg、0.117mmol)とK(1.05g、7.8mmol)をそれぞれ加えて、110℃で撹拌して15分間反応させた。反応系を室温に冷却させた後、水で希釈して、ジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ノルマルヘキサン、1:5)で分離して精製し、褐色固体化合物32 470.7mgを得て、収率は45%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δppm:8.30−8.28(m,2H),8.15(s,1H),7.76(d,J=8.4Hz,1H),7.02(dd,J=17.6Hz,10.8Hz,1H),6.52(d,J=17.6Hz,1H),5.82(d,J=10.8Hz,1H).
【0116】
2−(2'−(N,N−ジメチルエチレンジアミン))エチル−6−トリフルオロメチル−8−ニトロキノリン(33):
化合物32(388.9g、1.45mmol)をジオキサン5mLに溶解した後、KCO(240.5g、1.74mmol)、N,N−ジメチルエチレンジアミン(255.6mg、2.9mmol)を加えて上記混合液に1滴ずつ滴下して、室温で撹拌して1時間反応させた。反応用水で希釈して、ジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/イソプロパノール/25%アンモニア水、50:1:1)で分離して精製し、黄色固体化合物33 416mgを得て、収率は80%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3)δppm:δ8.29(s,1H),8.24(d,J=8.8Hz,1H),8.16(s,1H),7.56(d,J=8.4Hz,1H),3.26(t,J=6.4Hz,2H),3.16(t,J=6.4Hz,2H),2.77(t,J=6.4Hz,2H),2.44(t,J=6.4Hz,2H),2.22(s,6H).
【0117】
2−(2'−(N,N−ジメチルエチレンジアミン))エチル−6−トリフルオロメチル−8−アミノキノリン(TDMQ−22):
化合物33(142.5mg、0.4mmol)をエタノール5mLに溶解した後、SnCl.2HO(270.8mg、1.2mmol)を加えた。室温で濃塩酸1mLを1滴ずつ滴下した。反応系を50℃に昇温して撹拌して1時間撹拌させた。反応系に水を加えて希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、減圧濃縮させた。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/イソプロパノール/25%アンモニア水、50:1:1)で分離して精製し、淡黄色固体化合物TDMQ−22 96.6mgを得て、収率は74%であった。 H NMR(400MHz,CDCl 3):δ8.04(d,J=8.4Hz,1H),7.38(s,1H),7.35(d,J=8.4Hz,1H),7.01(s,1H),5.24(brs,2H),3.21−3.11(m,4H),2.78(t,J=6.0Hz,2H),2.45(t,J=6.0Hz,2H),2.21(s,6H).
【0118】
実施例10:本発明の誘導体による金属銅イオンの特異的キレート試験:
【0119】
一般式(I)の化合物と金属イオンの親和定数の計算
【0120】
銅イオンとの親和定数の計算
下記各種溶液を調製した。(A)被測定配位子[L]:化合物TDMQ−nを20mM Tris−HCl/150mM NaCl、pH7.4の緩衝系に溶解して、初期濃度を300μMにした。(B)競合配位子[Lc]:結合定数が既知の配位子(EDTA、EDDA、EGTA、CDTAなど)を20mM Tris−HCl/150mM NaCl、pH7.4の緩衝系に溶解して、濃度を300μMにした。(C)銅イオン溶液[Cu]:塩化第二銅を脱イオン水に溶解して、初期濃度を15mMにした。紫外線−可視光比色セルに、溶液(A)100μL、溶液(B)100μL、(20mM Tris−HCl/150mM NaCl、pH7.4)の緩衝溶液1800mL及び溶液(C)2μLを順次加えて、このようにして、測定するときの比色セルにおける被測定配位子[L]、競合配位子(LC)及び銅イオン[Cu]の濃度はいずれも15μMであることが分かった。室温下で波長250nm−600nmにおいてスペクトル走査を行ったスペクトルを記録して、図1に示されるように、競合性キレート配位子のスペクトル図を得た。
【0121】
以上の条件下、2μLの銅イオン溶液(C)を2μLの脱イオン水に変更して、スペクトル走査によるスペクトルを記録して、被測定化合物スペクトル図を得て、溶液(B)100μLを(20mM Tris−HCl/150mM NaCl、pH7.4)緩衝溶液100μLに変更して、スペクトル走査によるスペクトルを記録して、被測定化合物と銅イオンキレート錯体[Cu2+−L]のスペクトル図を得た。以上の実験では、研究したすべての配位子及びキレート物はビール−ランバート法則を満たす。以上の条件下、形成された錯体は下記平衡方程式を満たす。
【0122】
【0123】

を導出できる。
【0124】
紫外線−可視光吸収スペクトルにより383nmでの競合キレート錯体(Amix)の吸収スペクトル値、銅イオンのない場合の被測定化合物(AL)の吸収スペクトル値、競合配位子のない場合の被測定化合物と銅イオンキレート物(ACu―L)の吸収スペクトル値を記録した。銅イオンと被測定化合物Lのキレート比率は下記式x=(AL―Amix)/(AL―ACu―L)により計算され、実験は3回繰り返した。
【0125】
また、亜鉛イオンとの親和定数の計算
被測定化合物と亜鉛イオン(1/1)からなる錯体が極めて低い親和力を示す場合、同一反応条件での溶液には、下記平衡は存在する。
【0126】
【0127】
紫外線−可視光滴定実験により、銅イオン滴定実験と比較した結果、TDMQs化合物は亜鉛イオンに対して大幅に低下した親和性を示した。実験において、亜鉛イオン溶液を濃度10〜20mMとなるまで滴下して、溶液に配位に参加する自由配位子Lがなくなると、形成されたL−Zn錯体(化学量論比L/Zn=1/1)は平衡を取った。このため、親和定数Kapp[Zn‐L]は被測定配位子L溶液に亜鉛イオン溶液を平衡になるまで滴下することにより計算できる。
【0128】
【0129】
表1.異なる配位子化合物の、pH7.4での銅イオン、亜鉛イオンとの結合定数
【0130】
【0131】
表1の結果から明らかなように、本発明の前記誘導体の銅、亜鉛イオンに対する配位能力をテストし、その錯化定数を計算した結果、本発明に係る誘導体は、銅イオンに対する錯化定数LogKCu2+が10〜16程度であり、亜鉛イオンに対する結合定数LogKZn2+が4程度であった。たとえば、TDMQ−19は、亜鉛イオンに対する錯化定数が0に近く、亜鉛イオンをほぼ錯化せず、銅イオンに対する錯化定数が10.2であり、両向の間に10桁の差異があり、TDMQ20は、銅、亜鉛イオンに対する錯化定数がそれぞれ16.5と4.2であり、12桁の差異がある。以上から分かるように、本発明の前記誘導体は、銅イオンを特異的にキレートする能力を有し、神経変性疾患を治療する薬物や銅イオン障害に関連する疾患を治療する薬物の開発製造に用いられ得る。
【0132】
実施例11:被測定化合物配位子による、アミロイドポリペプチドAβが銅イオン及び還元性試薬の条件で過酸化水素の生成を誘導することについての影響の定量的分析
【0133】
蛍光定量法を用いて過酸化水素の発生を測定し、実験用の過酸化水素キットはエンツォライフサイエンス株式会社(キット番号:ENZ−51004Lot No.10231415)製である。使用される蛍光分光計は、エジンバラ・インスツルメンツ製の型番FLSP9220であり、励起と放射帯域幅2nm、励起波長λex=540nm、放射波長λem=584nm、収集範囲550−700nmであった。実験ごとに3回繰り返した。母液として塩化第二銅水溶液10μM、アミロイドポリペプチドAβ1‐16水溶液10μM、化合物TDMQ−5塩酸塩水溶液10μM、化合物TDMQ−10塩酸塩水溶液10μM及び20μM、アスコルビン酸ナトリウム水溶液100μM、pH7.4の0.1M Hepes緩衝溶液を調製した。
【0134】
具体的な実験操作プロセスは以下のとおりである。Hepes緩衝溶液50μL、塩化第二銅水溶液10μL、アミロイドポリペプチドAβ1‐16水溶液10μLをそれぞれ取り、十分に混合して30分間インキュベーションし、Cu2+−Aβ1‐16錯体を形成した。次に化合物TDMQ溶液(添加体積10L又は20L、1当量又は2当量の銅イオンに相当)を添加して、添加終了後、混合して30分間インキュベーションし、次に、アスコルビン酸ナトリウム水溶液10μLを加えて、水を全体積が100Lになるまで加え、続いて、30分間インキュベーションした。銅イオン、Aβ1‐16、化合物TDMQ、アスコルビン酸ナトリウム、緩衝溶液の最終濃度はそれぞれ1μM、1μM、1μM又は2μM、10μM、50mMであった。次に、過酸化水素キットを用いて、蛍光分光計において(励起波長λex=540nm、放射波長λem=550〜700nm)を検出して、発生した過酸化水素の量を計算した。反応混合物を遮光下30分間インキュベーションした後に測定した。対照実験は、同一条件において以下のように測定した。Cu2+−Aβ1‐16錯体±アスコルビン酸ナトリウム、塩化第二銅±アスコルビン酸ナトリウム、アミロイドポリペプチドAβ 1−16だけ、銅イオンだけ。結果は図2に示される。
【0135】
アミロイドポリペプチドAβが銅イオン及び還元性試薬の条件において過酸化水素の生成を誘導する試験を行った結果、本発明による誘導体は、アミロイドを特異的に結合でき、強い抗酸化ストレス能力を示した。
図1
図2