(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、
図1〜
図6を参照しつつ説明する。本実施形態に係るエレベータの制御システムは、
図1に示すようなエレベータ1において、乗場呼びが入った場合に、かご内の混雑値に応じて、かごに対して乗場呼びに応答せず乗場呼びの入った階床を通過させることが可能な満員通過システムである。
【0018】
エレベータ1は、建物内を複数の階床(フロア)に跨って上下方向に延びる昇降路2と、昇降路2を昇降するかご3と、を備える。エレベータ1には、
図2に示すように、エレベータ1の運転を制御する運転制御装置4が設けられている。かご3は、昇降路2内に配置され、昇降路2内を昇降して建物の各階に設けられる乗場5に停止可能である(
図1参照)。乗場5は、後述するかごドア32と連動して開閉する乗場ドア51と、かご3を呼ぶ(かご3に対する乗場呼びを行う)乗場呼びボタン52と、かご3の昇降方向が表示されるインジケータ53と、利用者のかごへの乗降した人数を検知可能な乗降検知部54と、を有する。なお、本実施形態の建物は、8階建てである。
【0019】
乗降検知部54は、利用者のかご3への乗降した人数を検知可能なカメラである。例えば、このカメラは、乗場5またはかごの乗降口の上方フレームに設けられた監視カメラである。
【0020】
このエレベータ1では、利用者が建物のいずれかの階床の乗場5で乗場呼びボタン52を押す(乗場呼びが入る)ことで、かご3が乗場5に停止(到着)してかごドア32及び乗場ドア51が開き、これにより、利用者等がかご3に乗車可能となる。また、エレベータ1では、かご3に乗り込んだ利用者が行先階を登録する(かご呼びが入る)ことで、かご3は登録された行先階に昇降する。
【0021】
運転制御装置4は、乗場呼びに関する情報をかご3に出力する、例えば、かご3の昇降方向及びかご3の位置を検知し、これらに関する情報をかご3に出力する運転制御部40を機能的に含む(
図2参照)。例えば、運転制御部40は、かご3が乗場呼びに応答して乗場5に停止する度に、かご3が停止した階床である停止階床に関する停止階床情報、及び、かご3の乗場呼びで登録された昇降方向に関する昇降方向情報をかご3に出力する。停止階床情報では、1桁の数値がかご3の停止階床を示し、例えば、「1」が1階を示し、「2」が2階を示す。昇降方向情報では、1桁の数値がかごの昇降方向を示し、例えば、「1」が上昇方向を示し、「2」が下降方向を示す。
【0022】
なお、運転制御装置4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えた基盤やマイクロコンピュータ等によって構成されている。
【0023】
かご3は、出入口311を有し且つ該出入口311から利用者が乗降するかご本体31と、かご本体31の出入口311を開閉するかごドア32と、かご3の制御を行う制御部であるかご制御装置33と、を有する(
図1、
図2参照)。本実施形態のかご3の定員は、10人である。
【0024】
かご制御装置33は、かご3内の混雑に応じて、かご3に対して乗場呼びに応答せず乗場呼びの入った階床を通過させることが可能な満員通過システム(制御システム)330と、かご3の昇降やかごドア32の開閉を制御するかご制御部335と、現在の時間を保持するタイマー部336と、を機能的に有する(
図2参照)。なお、かご制御装置33は、運転制御装置4と同様に、例えば、CPU、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROMやEEPROM等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えた基盤やマイクロコンピュータ等によって構成されている。
【0025】
本実施形態のかご制御部335は、かご3におけるかごドア32の開閉動作の制御や、かご3の昇降に関する制御を行う。
【0026】
タイマー部336は、時計のように現在の時間を計測して、現在の時間に関する情報(現在時間情報)を保持する。本実施形態のタイマー部336は、この計測の結果に基づいて、現在時間情報として、現在の日付に関する情報である現在日付情報、現在の曜日に関する情報である現在曜日情報、現在の時刻に関する情報である現在時刻情報、及び、現在の時間帯(例えば、一日の24時間を24分割した時間帯)に関する情報である現在時間帯情報を保持する。
【0027】
具体的に、現在日付情報では、4桁の数値が日付を示す。現在曜日情報では、1桁の数値が現在の曜日を示し、例えば、「0」が月曜日を示し、「1」が火曜日を示し、「2」が水曜日を示し、「3」が木曜日を示し、「4」が金曜日を示し、「5」が土曜日を示し、「6」が日曜日を示す。現在時刻情報では、4桁の数値が現在の24時間表示の時刻を示す。現在時間帯情報では、2桁の数値が現在の時間帯を示し、例えば、「00」が0時〜1時、「01」が1時〜2時、「02」が2時〜3時、同様にして、「23」が23時〜24時を示す。
【0028】
なお、タイマー部336は、現在時間情報として、現在の週数(例えば、一年間における累積週数)に関する情報である現在週数情報、現在の日付を月で示す現在月情報、現在の日付を季節で示す現在季節情報等を保持可能であってもよい。
【0029】
満員通過システム330は、かご3内の混雑状況を示すかご内混雑値を算出する算出部331と、乗場呼びが入った場合に、算出部331により算出されるかご内混雑値が所定の閾値よりも大きいとき、かご3が乗場呼びに応答せず乗場呼びの入った階床を通過するよう判断する判断部332と、を含む。本実施形態の満員通過システム330は、かご3が乗場呼びに応答せず乗場呼びの入った階床を通過するか否かの判断に用いる所定の閾値を記憶するTBL記憶部333を含む。また、本実施形態の満員通過システム330は、算出部331により算出される停止直後のかご内混雑値を記憶するデータ記憶部334を含む。
【0030】
算出部331は、乗降検知部54による利用者の乗降した人数の検知結果に基づいてかご内混雑値を算出する。かご内混雑値は、例えば、かご3内の利用者の数(乗車人数)、かご3の乗車率、かご3の床面積に対するに荷物が置かれた面積の割合等のうち少なくとも一つに基づき算出された値である。
【0031】
本実施形態の算出部331は、乗降検知部54から、かご3が停止可能な各階床について、利用者のかご3への乗降の人数の検知結果に関する乗降検知結果情報を取得可能である。この算出部331は、乗降検知結果情報に基づき、かご3への乗り込み人数を加算するとともに、かご3から降りた人数を減算することにより、かご3内の乗車人数を算出する。また、算出部331は、かご内混雑値(例えば、かご3の乗車率)を算出する。
【0032】
なお、本実施形態の算出部331は、乗降検知部54から乗場検知結果情報として、乗場呼びに応答してかご3が停止し、かごドア32が開閉動作した後に、この停止した階床の乗場に利用者が有るか否かを示す乗場利用者情報を取得可能である。
【0033】
本実施形態の算出部331は、乗場呼びに応答したかご3が満員でないにもかかわらず、このかご3に利用者が乗り込まなかった場合に、かご内混雑値を算出し、運転制御部40やタイマー部336から取得した「停止時の時間(例えば、停止時の曜日、停止時の時間帯)、停止時のかごの停止階床、及び、停止時の乗場呼びで登録されていたかご3の昇降方向」のうち少なくとも一つと、算出したかご内混雑値と、を関連付けてデータ記憶部334に記憶させる。
【0034】
データ記憶部334は、乗場呼びに応答したかご3が満員でないにもかかわらず、このかご3に利用者が乗り込まなかった場合に(例えば、乗場呼びに応答して停止したかご3のかごドア32の開閉動作後に、乗降検知部54が停止したかご3への利用者の乗り込みが無いと検知したとき)、停止時の時間(停止時の曜日、停止時の時間帯)、停止時のかご3の停止階床、及び、停止時の乗場呼びで登録されていたかご3の昇降方向のうち少なくとも一つと、算出部331により算出される停止直後のかご内混雑値とを関連付けて記憶する。
【0035】
具体的に、データ記憶部334は、
図3に示すように、停止時の日付、停止時の曜日、停止時の時間帯、停止時のかご3の停止階床、及び、停止時の乗場呼びで登録されていたかご3の昇降方向の全てと、かご内の利用者の人数、及び、かご内混雑率(例えば、かごの乗車率)と、を関連付けて記憶している。より具体的に、データ記憶部334は、データ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]を記憶している。データ記憶部334には、例えば、
図3の最初のデータに示すように、2019日2月4日(月曜)の11時〜12時に、昇降方向下向きで5階に停止したかご3に対して、乗車率70%(利用人数7人)であったにもかかわらず、利用者の乗り込みがなかったことが記憶されている。
【0036】
本実施形態の判断部332は、乗場呼びが入った場合に、データ記憶部334に記憶されたかご内混雑値のうち、現在の時間(例えば、現在の曜日、現在の時間帯)、乗場呼びが入った階床、及び、かごの昇降方向のうち少なくとも一つに対応したかご内混雑値を所定の閾値として用いる。
【0037】
TBL記憶部333に記憶される閾値TBLでは、2桁の数字が乗車率を示し、例えば、「50」が乗車率50%を示す。閾値TBL[曜日,時間帯,停止階床,昇降方向]では、例えば、曜日が月曜日であり、時間帯が0時〜1時であり、停止階床が2階であり、昇降方向が上昇方向である場合は、閾値TBL[0、00、2、1]と示される。
【0038】
以上の満員通過システム330による一連の処理について、以下において具体的に説明する。
【0039】
まず、算出部331によるかご内混雑値の算出等の処理について、
図4を用いて説明する。かご3が乗場5に到着し、かご3が一方向(上昇方向或いは下降方向)の乗場呼びに応答して停止した場合には(ステップS1:Yes)、対象スイッチSWに1がセットされ(ステップS2)、かごドア32の戸開が開始し、開状態(全開状態)となる。即ち、かごドア32の戸開が完了する(ステップS3)。
【0040】
かごドア32の戸開が完了すると、算出部331は、運転制御部40からかご3が停止した階床である停止階に関する停止階情報、及び、かご3の乗場呼びで登録された昇降方向に関する昇降方向情報を取得し(ステップS4)、乗降検知部54が、かごドア32の戸閉の開始までに、停止したかご3への利用者の乗降人数を検知する(ステップS5)。この検知の後、かごドア32の戸閉が開始し、かごドア32が閉状態(全閉状態)となる。即ち、戸閉が完了する(ステップS6)。かごドア32の戸閉が完了すると、算出部331は、乗降検知部54から乗降検知結果情報を取得して、取得した乗降検知結果情報に基づいて、かご3への乗降が有るか否かを判断する(ステップS7)。
【0041】
かご3への乗降が無く(ステップS7:Yes)、対象スイッチSWが1である場合には(ステップS8:Yes)、算出部331は、乗降検知部54から乗場呼びに応答してかご3が停止した階床の乗場に利用者が有るか否かを示す乗場利用者情報を取得して、この乗場に利用者が有るか否かを判断する(ステップS9)。
【0042】
この乗場に利用者が有る場合には(ステップS9:Yes)、算出部331は、乗降検知結果情報を取得して、かご3内の乗車人数、及び、かご内混雑値(例えば、かご3の乗車率)を算出する(ステップS10)。さらに、算出部331は、現在日付情報、現在曜日情報、及び、現在時間帯情報を取得し(ステップS11)、停止時の日付、停止時の曜日、停止時の時間帯、停止時のかご3の停止階床、及び、停止時の乗場呼びで登録されていたかご3の昇降方向の全てと、かご内の利用者の人数、及び、かご内混雑率(例えば、かごの乗車率)と、を関連付けてデータ記憶部334にデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]を登録して記憶させ(ステップS12)、処理を終了する。
【0043】
かご3への乗降が無く(ステップS7:Yes)、対象スイッチSWが1でない場合には(ステップS8:No)、ステップS9〜ステップS12を行わず処理を終了する。
【0044】
かご3への乗降が有り(ステップS7:No)、対象スイッチSWが1である場合には(ステップS13:Yes)、ステップS9の判断を行い、この乗場に利用者が有る場合には(ステップS9:Yes)、ステップS10〜ステップS12のデータ登録を行った後、処理を終了し、この乗場に利用者が無い場合には(ステップS9:No)、ステップS10〜ステップS12を行わず処理を終了する。
【0045】
かご3への乗降が有り(ステップS7:No)、対象スイッチSWが1でない場合には(ステップS13:No)、ステップS9〜ステップS12を行わず処理を終了する。
【0046】
なお、かご3が乗場5に到着し、かご3が一方向(上昇方向或いは下降方向)の乗場呼びに応答して停止していない場合には(ステップS1:No)、対象スイッチSWに0がセットされ(ステップS14)、その後のステップS3以降を行い、処理を終了する。
【0047】
次に、判断部332により常時実行されている処理について、
図5を用いて説明する。判断部332は、データ記憶部334に記憶された過去の一定期間(例えば、4週間前から現在まで)におけるデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]を抽出し(ステップS21)、抽出したデータの件数が0件を上回っているか否かを判断する(ステップS22)。
【0048】
抽出したデータの件数が0件を上回っている場合には(ステップS22:Yes)、カウント数CNTに1をセットし(ステップS23)、カウント数CNTが「抽出したデータの件数」を上回るか否かを判断する(ステップS24)。
【0049】
カウント数CNTが「抽出したデータの件数」を上回らない場合には(ステップS24:No)、判断部332は、抽出したデータから、カウント数CNTに対応する順番のデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率](例えば、カウント数CNT=1のときには一番目のデータ、カウント数CNT=2のときには2番目のデータ、即ち、(CNT)番目のデータ)を読み込み(ステップS25)、カウント数CNTに1を加算する(ステップS26)。さらに、判断部332は、TBL記憶部333から閾値TBL[曜日,時間帯,停止階床,昇降方向]を取得し、これを設定値にセットする(ステップS27)。読み込んだデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]の乗車率が閾値を上回る場合には(ステップS28:Yes)、判断部332は、読み込んだデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]の乗車率が設定値を上回るか否かを判断する(ステップS29)。
【0050】
読み込んだデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]の乗車率が設定値を上回る場合には(ステップS29:Yes)、読み込んだデータの乗車率を、対応する閾値TBL[曜日,時間帯,停止階床,昇降方向]としてTBL記憶部333に記憶させて(ステップS30)、ステップS24の判断に戻り、カウント数CNTが抽出したデータの件数を上回るまで、ステップS25〜ステップS30の処理を繰り返す。
【0051】
なお、読み込んだデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]の乗車率が設定値を上回らない場合には(ステップS29:No)、ステップS24の判断に戻り、カウント数CNTが抽出したデータの件数を上回るまで、ステップS25〜ステップS30の処理を繰り返す。
【0052】
同様に、読み込んだデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]の乗車率が閾値を上回らない場合には(ステップS28:No)、ステップS24の判断に戻り、カウント数CNTが抽出したデータの件数を上回るまで、ステップS25〜ステップS30の処理を繰り返す。
【0053】
カウント数CNTが抽出したデータの件数以上で有る場合には(ステップS24:Yes)、そのまま処理を終了する。
【0054】
また、抽出したデータの件数が0件以下である場合には(ステップS22:No)、そのまま処理を終了する。
【0055】
本実施形態の判断部332により、予め設定された所定期間毎(例えば、毎週、毎月等)に実行されている処理について、
図6を用いて説明する。本処理は、判断部332により常時実行されている処理に加えて、カウント数CNTに1をセットするステップと、カウント数が「抽出したデータの件数」を上回るか否か判断するステップとの間に、閾値TBL[曜日,時間帯,停止階床,昇降方向]をデフォルト値にリセットするステップを行っている点で、判断部332により常時実行されている処理と異なる。
【0056】
判断部332は、データ記憶部334に記憶された過去の一定期間(例えば、4週間前から現在まで)におけるデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]を抽出し(ステップS31)、抽出したデータの件数が0件を上回っているか否かを判断する(ステップS32)。
【0057】
抽出したデータの件数が0件を上回っている場合には(ステップS32:Yes)、カウント数CNTに1をセットし(ステップS33)、閾値TBL[曜日,時間帯,停止階床,昇降方向]をリセットし(ステップS34)、カウント数CNTが「抽出したデータの件数」を上回るか否かを判断する(ステップS35)。
【0058】
カウント数CNTが「抽出したデータの件数」を上回らない場合には(ステップS35:No)、
図5におけるステップS24〜ステップS30と同様に、カウント数CNTが抽出したデータの件数上回るまで、ステップS35〜ステップ41の処理を繰り返す。また、読み込んだデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]の乗車率が閾値を上回らない場合(ステップS39:No)や、読み込んだデータ[日付,曜日,時間帯,停止階床,昇降方向,人数,乗車率]の乗車率が設定値を上回らない場合には(ステップS40:No)、ステップS35の判断に戻り、カウント数CNTが「抽出したデータの件数」を上回るまで、ステップS35〜ステップS41の処理を繰り返す。
【0059】
カウント数CNTが抽出したデータの件数を上回る場合には(ステップS35:Yes)、そのまま処理を終了する。また、抽出したデータの件数が0件以下である場合には(ステップS32:No)、そのまま処理を終了する。
【0060】
本実施形態の満員通過システム330では、乗場5の乗降検知部54の検知結果に基づくかご内混雑値により、満員通過するか否か、即ち、乗場5の利用者がかご3に乗車するか否かが判断されるため、例えば、かご3内の荷重の測定結果を用いる場合と比べて、乗場5でかご3を待つ利用者の視点に則した制御を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態の満員通過システム330では、過去に無駄な乗場呼びへの応答が生じたときのかご内混雑値が、当時の時間(例えば、当時の曜日や時間帯)、当時のかご3の停止階床、当時の乗場呼びで登録されたかご3の昇降方向に関連付けて記憶され、この過去のかご内混雑値に基づいて、かご3が乗場呼びに応答するか否かを判断するため、かご3の乗場呼びへの応答が無駄になることを効果的に防ぐことができる。
【0062】
さらに、本実施形態の満員通過システム330では、利用者のかご3への乗降をカメラにより監視することで、かご3内の利用者の数又はかご3の乗車率の算出や、かご3が乗場呼びに応答するか否かの判断を確実に行うことができる。
【0063】
なお、本発明の満員通過システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0064】
上記実施形態のデータ記憶部334は、乗場呼びに応答して停止したかご3のかごドア32の開閉動作後に、乗降検知部54が該停止したかごへの利用者の乗り込みが無いと検知したとき、停止時の時間、停止時のかご3の停止階床、及び、停止時の乗場呼びで登録されていたかご3の昇降方向のうち少なくとも一つと、算出部331により算出される停止直後のかご内混雑値とを関連付けて記憶していた。しかしながら、データ記憶部334は、この代わりに、乗場呼びボタン52(上昇呼びボタン又は下降呼びボタン)が押されることで乗場呼びに応答して停止したかご3のかごドア32の開閉動作が完了してから所定時間内に、同じ乗場呼びボタン52(上昇呼びボタン又は下降呼びボタン)が再び押されたとき、停止時の時間(例えば、停止時の曜日、停止時の時間帯)、停止時のかご3の停止階床、及び、停止時の乗場呼びで登録されていたかご3の昇降方向のうち少なくとも一つと、算出部331により算出される停止直後のかご内混雑値と、を関連付けて記憶してもよい。この場合においても、判断部332は、乗場呼びが入った場合に、データ記憶部334に記憶されたかご内混雑値のうち、現在の時間(例えば、現在の曜日、現在の時間帯)、乗場呼びが入った階床、及び、かごの昇降方向のうち少なくとも一つに対応したかご内混雑値を、所定の閾値として用いる。
【0065】
このような場合、かごドア32の開閉直後に乗場呼びで押された乗場呼びボタン52(上昇呼びボタン又は下降呼びボタン)が再び押されたこと、及び、かごドア32の開閉動作後に停止したかご3への利用者の乗り込みが無いとの検知に基づき、過去に無駄な乗場呼びが生じたことを確認するとともに、当時のかご内混雑値が、当時の時間(例えば、当時の曜日や時間帯)、当時のかご3の停止階床、当時の乗場呼びで登録されたかご3の昇降方向と関連付けて記憶され、この過去のかご内混雑値に基づいて、かご3が乗場呼びに応答するか否かを判断するため、かご3の乗場呼びへの応答が無駄になることを効果的に防ぐことができる。
【0066】
上記実施形態の算出部331は、かご内混雑値として、かご3の乗車率を算出したが、この乗車率の代わりに、かご3の人数を算出してもよい。
【0067】
また、かご3の満員通過を行うか否かの判断基準となる閾値は、過去の満員通過時のかご内混雑値に基づいて設定される以外に、予め定められた特定の値が設定されてもよい。この閾値として特定の値が設定される場合、例えば、保守作業員等により設定されてもよい。
【0068】
なお、一つのエレベータ1におけるかご3の満員通過を行うか否かの判断基準となる閾値として、過去の満員通過時のかご内混雑値に基づいて設定される値と、保守作業員等により設定される特定の値との両方が設定可能であってもよい。例えば、エレベータ1の設置される建物がオフィスビルである場合には、この閾値として、かご3が多少混雑していても乗り込む利用者がいると考えられる通勤や退勤の時間帯のみで高い閾値が設定され、別の時間帯について、過去の満員通過時のかご内混雑値に基づいて設定されてもよい。
【0069】
上記実施形態の判断部332は、閾値TBLをリセットするステップを含む処理(
図6参照)を一定期間毎に実行していたが、この処理を別のタイミングで実行してもよい。例えば、エレベータ1の設置される建物が商業施設やオフィスビルである場合には、閾値TBLをリセットするステップを含む処理を、一定期間毎に実行することに加えて、或いは、一定期間毎に実行することの代わりに、建物のテナントの入れ替え時等に実行してもよい。
【0070】
なお、判断部332が、閾値TBLをリセットするステップを含む処理(
図6参照)を実行する代わりに、特定のタイミングで保守作業員等が閾値TBLをリセットする処理を行ってもよい。
【0071】
また、上記実施形態の判断部332は、現在の時間(例えば、現在の曜日、現在の時間帯)、現在のかごの停止階床、及び、乗場呼びで登録されたかご3の昇降方向に対応する閾値TBL[曜日,時間帯,停止階床,昇降方向]として、データ記憶部334に記憶された過去の一定期間のかご内混雑値から最も低いかご内混雑値を設定していたが、データ記憶部334に記憶された過去の一定期間のかご内混雑値のうち下限値(例えば、50%)を上回り、且つ、最も低いかご内混雑値を設定してもよい。
【0072】
なお、判断部332は、閾値TBL[曜日,時間帯,停止階床,昇降方向]として、データ記憶部334に記憶された過去の一定期間のかご内混雑値の平均値を設定してもよい。具体的に、算出部331は、データ記憶部334に記憶された過去の一定期間のかご内混雑値から閾値よりも低いかご内混雑値を抽出し、抽出したかご内混雑値の平均値を設定してもよい。
【0073】
このような場合、かご3の利用状況に応じた制御を行いつつ、かごの運転効率を向上できる。
【0074】
さらに、上記実施形態の判断部332は、現在の時間(例えば、現在の曜日、現在の時間帯)、現在のかご3の停止階床、及び、乗場呼びで登録された昇降方向の全てに応じて、かご3の満員通過を行うか否かの判断基準となる閾値を設定可能であったが、現在の時間(例えば、現在の曜日、現在の時間帯)、現在のかご3の停止階床、及び、乗場呼びで登録された昇降方向の少なくとも1つに応じて、かご3の満員通過を行うか否かの判断基準となる閾値を設定可能であってもよい。例えば、かご3が停止可能な全階床において同じ閾値を設定する場合には、判断部332は、現在の時間(例えば、現在の曜日、現在の時間帯)、及び、乗場呼びで登録された昇降方向に応じて、この閾値を設定可能であればよい。この場合、TBL記憶部333は閾値TBL[曜日,時間帯,昇降方向]を記憶し、データ記憶部334は、停止時の時間(例えば、停止時の曜日、停止時の時間帯)、及び、乗場呼びで登録された昇降方向と、かご内混雑値とを関連付けて記憶すればよい。
【0075】
なお、上記実施形態の判断部332は、現在の時間として、現在の曜日及び時間帯を用いていたが、現在の曜日、現在の時間帯、現在の日付、現在の時刻、現在の週数、現在の月、及び、現在の季節等のうち少なくとも一つを用いてもよい。データ記憶部334に記憶されるような停止時の時間についても同様である。
【0076】
また、判断部232は、かご3を満員通過させる際に、乗場5のインジケータ53に満員通過を行う旨を報知させてもよい。
【0077】
上記実施形態の乗降検知部54は、撮影部であったが、エレベータ1の利用者が所持するIDカード、非接触キー、アプリケーションがインストールされたスマートフォン等がかざされたり、一定距離内に配置されたりすることで、利用者の乗降した人数を検知するような機器であってもよい。
【0078】
上記実施形態の満員通過システム330は、一つのエレベータ1を制御していたが、かご3をそれぞれ備えた複数のエレベータ1を制御してもよい。満員通過システム330が、複数のエレベータ1を制御する場合、算出部331は、データの登録をかご3毎に行うことが考えられる。また、この場合、データ記憶部334は、算出部331により登録されたデータ(例えば、かご内混雑値)を一括して記憶することが考えられる。このような場合、一つの満員通過システム330により、複数号機のエレベータ1に対して、かご3毎に算出部331により登録されたデータ(例えば、かご内混雑値)を集約して、乗場呼びに応答したかごに利用者が乗り込まなかったときのかご内混雑値の傾向を複数のかご3に反映させて予測し、この予測に応じてかご3の満員通過を行うか否かの判断基準となる閾値を設定することで、乗場でかごを待つ利用者の実態に応じた効果的な制御を行うことができる。
【0079】
上記実施形態の算出部331、判断部332、TBL記憶部333、及び、データ記憶部334は、いずれもかご3に設けられていたが、これらのうち少なくとも一つがかご3以外に設けられていてもよい。例えば、算出部331、判断部332、及び、TBL記憶部333、データ記憶部334の少なくとも一つが、運転制御装置4に設けられてもよい。また、算出部331、判断部332、TBL記憶部333、及び、データ記憶部334のうち少なくとも複数が一体であってもよく、例えば、算出部331と判断部332とが一体であったり、TBL記憶部333とデータ記憶部334とが一体であったりしてもよい。
【0080】
なお、満員通過システム330が、複数のエレベータ1を制御する場合、運転制御部40は、複数のかご3に対して乗場呼びの割当を行う運転管理(いわゆる群管理)を行ってもよい。なお、群管理による運転管理では、所定の階床の乗場において乗場呼びが入ったときに、利用者の輸送効率が高くなるように複数のかご3から前記乗り場呼びに対応するかご3が選択され、この選択されたかご3が該乗場呼びの入った乗場5に向かう。
【0081】
また、上記実施形態のエレベータ1は1つのかご3を備えていたが、エレベータ1が複数のかご3を備えてもよい。