(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6889891
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】漏れ検知機能付き弁および漏れ検知装置
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
F16K37/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2021-24623(P2021-24623)
(22)【出願日】2021年2月18日
【審査請求日】2021年2月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307032674
【氏名又は名称】京浜ハイフロー販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】菅野 泰央
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2019−152494(JP,A)
【文献】
特開2004−157117(JP,A)
【文献】
特開平7−56638(JP,A)
【文献】
特開昭55−155984(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0270467(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
G01M 13/00−13/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流入させる入口側接続口と、
前記流体を排出させる出口側接続口と、
前記入口側接続口と前記出口側接続口とに接続され、前記入口側接続口と前記出口側接続口との間の流路を開閉可能な弁本体と、
前記弁本体の下流に設けられ、常態で閉止し前記弁本体からの前記流体が所定の圧力以上のとき開放する逆止弁部と、
前記弁本体と前記逆止弁部との間の流路に設けられた弁室と、
前記弁室の内部の圧力変動を検出可能な圧力検出部とを、
有することを特徴とする漏れ検知機能付き弁。
【請求項2】
前記逆止弁部は、
前記弁本体と前記出口側接続口との間の流路に設けられた弁座と、
前記出口側接続口の側から前記弁座を開閉可能な弁体と、
常態で前記弁座を閉止し前記弁本体からの前記流体が所定の圧力以上のとき前記弁座を開放するよう前記弁体を弁座側に付勢するばねとを、
有することを特徴とする請求項1記載の漏れ検知機能付き弁。
【請求項3】
前記入口側接続口と前記弁室とを有して内部に前記逆止弁部を収容する弁箱を有し、前記逆止弁部は前記出口側接続口を有し、前記圧力検出部は圧力検出器とリード線と蓋とを有し、前記圧力検出器は前記弁室の内部の圧力変動を検出可能な構成を有し、前記リード線は前記圧力検出器の検出信号を外部に出力するよう前記圧力検出器に接続され、前記蓋は前記弁箱の外側面に取り付けられて前記弁箱との間に前記圧力検出器を収容していることを、特徴とする請求項2記載の漏れ検知機能付き弁。
【請求項4】
前記弁本体はダイヤフラム式電磁弁またはポペット式電磁弁から成ることを、特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の漏れ検知機能付き弁。
【請求項5】
弁に取り付け可能な漏れ検知装置であって、
前記弁は、流体を流入させる入口側接続口と、前記流体を排出させる出口側接続口と、前記入口側接続口と前記出口側接続口とに接続され、前記入口側接続口と前記出口側接続口との間の流路を開閉可能な弁本体とを有し、
前記出口側接続口に接続される弁室と、
前記弁室に接続され、常態で閉止し前記出口側接続口から流入する前記流体が所定の圧力以上のとき開放する逆止弁部と、
前記弁室の内部の圧力変動を検出可能な圧力検出部とを、
有することを特徴とする漏れ検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏れ検知機能付き弁および漏れ検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図1に示すダイヤフラム方式の2方向電磁弁および
図2に示すポペット方式の2方向電磁弁がある。
図1および
図2に示す電磁弁は、弁箱1に入口側接続口2と出口側接続口3とを有している。電磁弁の弁本体はアクチュエータ4を有し、入口側接続口2と出口側接続口3との間の流路に弁座5を有している。アクチュエータ4は、コイル6に電流が流れると、固定鉄心7と可動鉄心8とが磁化され、可動鉄心8がコイルばね9に抗して固定鉄心7に吸引されて、可動鉄心8に連結された弁体10が弁座5を開放し、流体を流すようになっている。なお、ダイヤフラム方式のアクチュエータ4は、ダイヤフラム11により流路から隔てられている。
【0003】
コイル6への電流の供給を止めると、固定鉄心7と可動鉄心8とが消磁され、可動鉄心8の内部に設置されたコイルばね9の反発力によって可動鉄心8が固定鉄心7から離反して、可動鉄心8に連結された弁体10が弁座5を閉止し、流体の流れを止める。このとき、弁体10および弁座5の一方または両方に損傷がある場合や、弁体10と弁座5の間に上流から流れてきた異物が挟まった場合、流体の流れを完全に閉止することができずに内部漏れ(弁座5漏れ)が発生し、装置に圧力上昇や液垂れなどを引き起こす問題があった。
【0004】
このような問題を解決可能な方法として、ソレノイド作動式流量制御弁とソレノイド作動式開閉弁と圧力変換器とが共通のハウジング内に配置され、共通の電気レセプタクルに接続されており、圧力変換器は、システムに負圧が導入される漏れテスト時に、計量オリフィス前後の差圧を検出してこの計量オリフィスを通過する流量を計測するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−68814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電磁弁は、漏れテストの際に漏れを検出するものであって、使用時に漏れを検出するものではないという課題があった。また、2つの電磁弁を有するため、サイズが大きく、高価になるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、使用時の漏れを検出可能であって、小型化および低廉化を図ることができる漏れ検知機能付き弁および漏れ検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る漏れ検知機能付き弁は、流体を流入させる入口側接続口と、前記流体を排出させる出口側接続口と、前記入口側接続口と前記出口側接続口とに接続され、前記入口側接続口と前記出口側接続口との間の流路を開閉可能な弁本体と、前記弁本体の下流に設けられ、常態で閉止し前記弁本体からの前記流体が所定の圧力以上のとき開放する逆止弁部と、前記弁本体と前記逆止弁部との間の流路に設けられた弁室と、前記弁室の内部の圧力変動を検出可能な圧力検出部とを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る漏れ検知機能付き弁では、弁本体が開放するとき、流体は入口側接続口から流入し、弁本体、弁室、逆止弁部を順に通って出口側接続口から排出される。弁本体が閉止するとき、流体は停止する。このとき、逆止弁部は常態で閉止しているため、弁室は密閉される。圧力検出部は、弁室の内部の圧力変動を検出する。弁本体の漏れがなければ、密閉された弁室の内部の圧力は弁本体の閉止時の状態から変化しない。弁本体に漏れがあると、弁室の内部の圧力が弁本体の閉止時の状態より上昇していくため、圧力勾配により漏れを検出することができる。このように、使用時の漏れを検出可能であって、弁本体と逆止弁部の選択によって、小型化および低廉化を図ることができる。
【0010】
本発明に係る漏れ検知機能付き弁において、前記逆止弁部は、前記弁本体と前記出口側接続口との間の流路に設けられた弁座と、前記出口側接続口の側から前記弁座を開閉可能な弁体と、常態で前記弁座を閉止し前記弁本体からの前記流体が所定の圧力以上のとき前記弁座を開放するよう前記弁体を弁座側に付勢するコイルばねとを、有することが好ましい。
この場合、逆止弁部が弁座と弁体とコイルばねによる簡易な構成のため、小型化および低廉化を図ることができる。
【0011】
本発明に係る漏れ検知機能付き弁は、前記入口側接続口と前記弁室とを有して内部に前記逆止弁部を収容する弁箱を有し、前記逆止弁部は前記出口側接続口を有し、前記圧力検出部は圧力検出器とリード線と蓋とを有し、前記圧力検出器は前記弁室の内部の圧力変動を検出可能な構成を有し、前記リード線は前記圧力検出器の検出信号を外部に出力するよう前記圧力検出器に接続され、前記蓋は前記弁箱の外側面に取り付けられて前記弁箱との間に前記圧力検出器を収容していることが好ましい。
この場合、圧力検出器が一体のため、より小型化を図ることができる。
本発明に係る漏れ検知機能付き弁において、前記弁本体はダイヤフラム式電磁弁またはポペット式電磁弁から成る。
【0012】
本発明に係る漏れ検知装置は、弁に取り付け可能な漏れ検知装置であって、前記弁は、流体を流入させる入口側接続口と、前記流体を排出させる出口側接続口と、前記入口側接続口と前記出口側接続口とに接続され、前記入口側接続口と前記出口側接続口との間の流路を開閉可能な弁本体とを有し、前記出口側接続口に接続される弁室と、前記弁室に接続され、常態で閉止し前記出口側接続口から流入する前記流体が所定の圧力以上のとき開放する逆止弁部と、前記弁室の内部の圧力変動を検出可能な圧力検出部とを、有することを特徴とする。
本発明に係る漏れ検知装置は、弁の出口側接続口に取り付けて用いられ、弁の使用時の漏れを検出することができる。本発明に係る漏れ検知装置は、簡易な構成から成るため、小型化および低廉化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用時の漏れを検出可能であって、小型化および低廉化を図ることができる漏れ検知機能付き弁および漏れ検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来のダイヤフラム方式の2方向電磁弁を示す縦断面図である。
【
図2】従来のポペット方式の2方向電磁弁を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態の漏れ検知機能付き弁を示す縦断面図である。
【
図4】
図3に示す漏れ検知機能付き弁の直角に交差する方向の縦断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態の漏れ検知機能付き弁を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態の漏れ検知機能付き弁の漏れがない場合の弁室内の圧力変化を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施の形態の漏れ検知機能付き弁の漏れがある場合の弁室内の圧力変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態の漏れ検知機能付き弁は、生化学自動分析装置などの臨床検査用装置の流体制御に好適な電磁弁である。
図3〜
図5に示すように、漏れ検知機能付き弁は、弁箱20と、弁本体30と、逆止弁部40と、圧力検出部50とを有している。
弁箱20は、内部に、流体を流入させる入口側接続口21を有している。弁本体30は、ダイヤフラム方式の2方向電磁弁の構造を有する。ただし、弁本体30は、ポペット方式の電磁弁から成っていてもよい。
【0016】
弁本体30は、弁箱20と一体的に設けられ、入口側接続口21と出口側接続口22とに接続されている。弁本体30は、入口側接続口21と出口側接続口22との間の流路に主弁座31を有している。弁本体30は、アクチュエータ32と主弁体33とダイヤフラム34とを有している。アクチュエータ32は、フレーム35内に収容され、コイル36と固定鉄心37と可動鉄心38とコイルばね39とを有している。主弁体33は、ゴム弾性体から成り、可動鉄心38に連結されている。可動鉄心38は、可動鉄心38の内部に設置されたコイルばね39により、主弁座31の方向に固定鉄心37から離れるよう付勢されている。ダイヤフラム34は、アクチュエータ32を流路から隔てている。
【0017】
アクチュエータ32は、コイル36に電流が流れると、固定鉄心37と可動鉄心38とが磁化され、可動鉄心38がコイルばね39に抗して固定鉄心37に吸引されて主弁体33が主弁座31を開放し、流体を流すようになっている。コイル36への電流の供給を止めると、固定鉄心37と可動鉄心38とが消磁され、コイルばね39の反発力によって可動鉄心38が固定鉄心37から離反して主弁体33が主弁座31を閉止し、流体の流れを止めるようになっている。これにより、弁本体30は、入口側接続口21と出口側接続口22との間の流路を開閉可能である。
【0018】
逆止弁部40は、弁箱20の内部に収容され、弁本体30の下流に設けられている。逆止弁部40は、継手41と弁座42と弁体43とピストン44とコイルばね45とを有している。継手41は、流体を排出させる出口側接続口22を有している。弁座42は、弁本体30と出口側接続口22との間の流路に設けられている。弁体43は、ゴム弾性体から成り、出口側接続口22の側から弁座42を開閉可能となっている。弁体43は、ピストン44の先端に固定されている。ピストン44は、後部が継手41の内部で往復運動するように設けられている。コイルばね45は、常態で弁座42を閉止し弁本体30からの流体が所定の圧力以上のとき弁座42を開放するよう弁体43を弁座42側に付勢している。
弁箱20は、内部に、弁本体30と逆止弁部40との間の流路に設けられた弁室23を有している。
【0019】
圧力検出部50は、圧力検出器51とリード線52と蓋53とを有している。圧力検出器51は、弁室23の内部の圧力変動を検出可能な構成を有している。リード線52は、圧力検出器51に電圧を供給し、圧力検出器51の圧力に応じた検出信号を外部に出力するよう圧力検出器51に接続されている。蓋53は、弁箱20の外側面に取り付けられて弁箱20との間に圧力検出器51を収容している。
【0020】
次に、作用について説明する。
漏れ検知機能付き弁では、弁本体30の主弁体33が主弁座31を開放するとき、流体は入口側接続口21から流入し、弁本体30、弁室23、逆止弁部40を順に通って逆止弁部40の出口側接続口22から排出される。弁本体30の主弁体33が主弁座31を閉止するとき、流体は停止する。このとき、逆止弁部40は弁体43がコイルばね45により付勢されて常態で弁座42を閉止しているため、弁室23は密閉される。
【0021】
圧力検出部50は、弁室23の内部の圧力変動を検出する。弁本体30の弁座漏れがなければ、
図6に示すように、密閉された弁室23の内部の圧力は弁本体30の閉止時の状態から変化しない。弁本体30に弁座漏れがあると、
図7に示すように、弁室23の内部の圧力が弁本体30の閉止時の状態より上昇していくため、圧力勾配により漏れを検出することができる。このように、使用時の漏れを検出可能であって、弁本体30と逆止弁部40の選択によって、小型化および低廉化を図ることができる。逆止弁部40は弁座42と弁体43とコイルばね45による簡易な構成のため、特に小型化および低廉化を図ることができる。また、圧力検出器51が弁箱20および弁本体30と一体のため、より小型化を図ることができる。
【0022】
なお、弁室23および逆止弁部40を弁箱20から切り離し、圧力検出部50と一体にして、
図1および
図2に示す電磁弁などの弁に取り付け可能な漏れ検知装置を構成してもよい。この場合、弁室23は弁の出口側接続口3に接続され、逆止弁部40は弁室23に接続されて常態で閉止し出口側接続口3から流入する流体が所定の圧力以上のとき開放する構成とする。圧力検出部50は、弁室23の内部の圧力変動を検出可能に設けられる。
この場合、漏れ検知装置は、市販の電磁弁などの弁の出口側接続口3に取り付けて用いられ、弁の使用時の漏れを検出することができる。漏れ検知装置は、簡易な構成から成るため、小型化および低廉化を図ることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 弁箱、2 入口側接続口、3 出口側接続口、4 アクチュエータ、5 弁座、6 コイル、7 固定鉄心、8 可動鉄心、9 コイルばね、10 弁体、11 ダイヤフラム、20 弁箱、21 入口側接続口、22 出口側接続口、23 弁室、30 弁本体、31 主弁座、32 アクチュエータ、33 主弁体、34 ダイヤフラム、35 フレーム、36 コイル、37 固定鉄心、38 可動鉄心、39 コイルばね、40 逆止弁部、41 継手、 42 弁座、43 弁体、44 ピストン、45 コイルばね、50 圧力検出部、51 圧力検出器、52 リード線、53 蓋
【要約】 (修正有)
【課題】使用時の漏れを検出可能であって、小型化および低廉化を図ることができる漏れ検知機能付き弁および漏れ検知装置を提供する。
【解決手段】流体を流入させる入口側接続口と、流体を排出させる出口側接続口とを有する。弁本体30が入口側接続口と出口側接続口とに接続され、入口側接続口と出口側接続口との間の流路を開閉可能である。逆止弁部が弁本体30の下流に設けられ、常態で閉止し弁本体30からの流体が所定の圧力以上のとき開放する。弁室23が弁本体30と逆止弁部との間の流路に設けられている。圧力検出部50が弁室23の内部の圧力変動を検出可能である。
【選択図】
図4