(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プランジャを下方に向けたソレノイドと、前記プランジャの下端側にフック部が後側から入り込んで掛止され前記プランジャの上動に連動して弾性的に復元可能に上動するリンク部材と、前記リンク部材の上動により商品収容通路から退避動作するストッパと、ρ字状に曲げられその中間のU字状垂下部分が前記フック部に引掛けられ、一端側は前記ソレノイド側に対して取付けられると共に他端側は前記一端側を超えて下方に延びているワイヤーと、前記U字状垂下部分を復元方向に弾性的に付勢する弾性復元手段とを有し、
前記弾性復元手段が、前記ワイヤーが挿通され前記U字状垂下部分の片側から前記一端側を超える部分まで及んでいるコイルスプリング状アウターチューブと、左右一対のガイド孔を有し、一方のガイド孔に前記U字状垂下部分の片側のワイヤー諸共アウターチューブが、他方のガイド孔に前記U字状垂下部分のもう片側のワイヤーがそれぞれ挿通されて、前記U字状垂下部分をU字形に弾性的に復元方向に付勢するものであり、
前記ソレノイドのヨーク部に取付けられ、コイル部の周囲をΠ状に囲んだ板状のガイド部を備え、前記ρ字状に曲げられたワイヤー諸共前記アウターチューブが前記ガイド部によってガイドされて前記コイル部の周囲に這わされており、
前記ガイド部には後方に向かって突設した突設片が設けられ、前記突設片に前記左右一対のガイド孔だけでなく這わせ用のガイド孔が形成されており、前記アウターチューブは前記ガイド部に後方から当接しており、
前記ソレノイドへの通電だけでなく前記ワイヤーの他端側の手動操作による引張りによる前記プランジャの引上げでも前記リンク部材が上動する商品搬出機構を備えたことを特徴とする手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の手動操作式商品搬出機構は構成する部品が多くコストが高いばかりか、自動販売機に取付ける作業が煩雑で手間がかかるという問題がある。また、ワイヤーが露出した状態で商品収容通路を横断しているので震災等で自動販売機が若干傾いただけでも商品に引掛かって取出し難くなる恐れがある。
また、自動販売機自体が高価なので、一時期は手動操作を利用して商品を取出しても、その後は再び通常の自動販売機として利用したい。
【0006】
それに応えて、本出願人は、先に、特許文献2で、部品点数が少なく、取付け作業も容易で、故障し難く災害時でも手動操作により確実に商品を取出すことができ、更に、手動操作により商品を取出した後にも、電気駆動式商品搬出機構を再び利用できるよう工夫された手動操作式商品搬出機構を提案した。
本発明は特許文献2で開示されたアイデアを利用し、更に工夫を凝らすことで、部品点数がより少なく、取付け作業もより容易で、故障し難く、手動操作により商品を取出した後にも、電気駆動式商品搬出機構を再びより確実に利用できる、新規且つ有用な自動販売機を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、プランジャを下方に向けたソレノイドと、前記プランジャの下端側にフック部が後側から入り込んで掛止され前記プランジャの上動に連動して弾性的に復元可能に上動するリンク部材と、前記リンク部材の上動により商品収容通路から退避動作するストッパと、ρ字状に曲げられその中間のU字状垂下部分が前記フック部に引掛けられ、一端側は前記ソレノイド側に対して取付けられると共に他端側は前記一端側を超えて下方に延びているワイヤーと、前記U字状垂下部分を復元方向に弾性的に付勢する弾性復元手段とを有し、前記弾性復元手段が、前記ワイヤーが挿通され前記U字状垂下部分の片側から前記一端側を超える部分まで及んでいるコイルスプリング状アウターチューブと、左右一対のガイド孔を有し、一方のガイド孔に前記U字状垂下部分の片側のワイヤー諸共アウターチューブが、他方のガイド孔に前記U字状垂下部分のもう片側のワイヤーがそれぞれ挿通されて、前記U字状垂下部分をU字形に弾性的に復元方向に付勢するものであり、
前記ソレノイドのヨーク部に取付けられ、コイル部の周囲をΠ状に囲んだ板状のガイド部を備え、前記ρ字状に曲げられたワイヤー諸共前記アウターチューブが前記ガイド部によってガイドされて前記コイル部の周囲に這わされており、前記ガイド部には後方に向かって突設した突設片が設けられ、前記突設片に前記左右一対のガイド孔だけでなく這わせ用のガイド孔が形成されており、前記アウターチューブは前記ガイド部に後方から当接しており、前記ソレノイドへの通電だけでなく前記ワイヤーの他端側の手動操作による引張りによる前記プランジャの引上げでも前記リンク部材が上動する商品搬出機構を備えたことを特徴とする手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機である。
【0011】
請求項
2の発明は、請求項
1に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、左右一対のガイド孔のうちアウターチューブの挿通用のガイド孔が形成された突設片の板面は下方に向かうにつれてコイル部から離れる方向に傾斜しており、ワイヤーの挿通用のガイド孔が形成された突設片の板面は略左右方向を向いていることを特徴とする自動販売機である。
【0012】
請求項
3の発明は、請求項
1または2に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、ガイド部は複数のブラケット部材を組み合わせて構成されていることを特徴とする自動販売機である。
【0013】
請求項
4の発明は、
プランジャを下方に向けたソレノイドと、前記プランジャの下端側にフック部が後側から入り込んで掛止され前記プランジャの上動に連動して弾性的に復元可能に上動するリンク部材と、前記リンク部材の上動により商品収容通路から退避動作するストッパと、ρ字状に曲げられその中間のU字状垂下部分が前記フック部に引掛けられ、一端側は前記ソレノイド側に対して取付けられると共に他端側は前記一端側を超えて下方に延びているワイヤーと、前記U字状垂下部分を復元方向に弾性的に付勢する弾性復元手段とを有し、前記弾性復元手段が、前記ワイヤーが挿通され前記U字状垂下部分の片側から前記一端側を超える部分まで及んでいるコイルスプリング状アウターチューブと、左右一対のガイド孔を有し、一方のガイド孔に前記U字状垂下部分の片側のワイヤー諸共アウターチューブが、他方のガイド孔に前記U字状垂下部分のもう片側のワイヤーがそれぞれ挿通されて、前記U字状垂下部分をU字形に弾性的に復元方向に付勢するものであり、前記ソレノイドのヨーク部に取付けられ、コイル部の周囲をΠ状に囲んだ板状のガイド部を備え、前記ρ字状に曲げられたワイヤー諸共前記アウターチューブが前記ガイド部によってガイドされて前記コイル部の周囲に這わされており、前記アウターチューブは一枚板状の
前記ガイド部と
前記ヨーク部との間で挟まれた状態でガイドされ、前記ガイド部の両下端部に
前記左右一対のガイド孔が形成され、そのうち前記アウターチューブ用のガイド孔が形成された側は前記ヨーク部に向かって折り曲げられて折り曲げ片になって
おり、前記ソレノイドへの通電だけでなく前記ワイヤーの他端側の手動操作による引張りによる前記プランジャの引上げでも前記リンク部材が上動する商品搬出機構を備えたことを特徴とする手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機である。
【0014】
請求項
5の発明は、請求項
4に記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、折り曲げ片は僅かに後方を向いて傾斜して、後方に向かって跳ね上げ方向に引出されていることを特徴とする自動販売機である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、他方のガイド孔の上方に止め孔が設けられており、ワイヤーの一端部が更に前記止め孔に挿通されたところでカシメ止めされて取付けられており、前記他方のガイド孔と前記止め孔に対して前記ワイヤーは遊通可能になっていることを特徴とする自動販売機である。
請求項
7の発明は、請求項
1から6のいずれかに記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、掛止め用の穴が形成されたシート状のシールド片が、コイル部の下側に配置された配線コードのフック状ガイド部への掛止めにより吊下げ支持されて、プランジャ及びその左右空間を後方からシールドしており、ワイヤーのU字状垂下部分は前記シールド片にシールドされて前方への回り込みが規制されていることを特徴とする自動販売機である。
【0016】
請求項
8の発明は、請求項
1から7のいずれかに記載した手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機において、ワイヤーの他端側の端部または前記端部の延長部に連設した掴み部は、本体キャビネット内に露出しており、外扉を開放すると手で掴めることを特徴とする自動販売機である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の手動操作式商品搬出機構を備えた自動販売機によれば、更に手動操作式商品搬出機構が改善されて、部品点数がより少なく、取付け作業もより容易で、故障し難く、手動操作により商品を取出した後にも、電気駆動式商品搬出機構を再びより確実に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る手動操作式商品搬出機構1を備えた自動販売機を図面にしたがって説明する。
この自動販売機は、既存の自動販売機2に後付けで部品を取付けて第1の実施の形態に係る手動操作式商品搬出機構1を備えさせたものである。
【0020】
先ず、自動販売機2の全体構成と商品搬出動作を説明する。
図1に示すように、符号3は本体キャビネットを示し、この本体キャビネット3はボックス状を為し、前面が開口している。この本体キャビネット3には商品収容通路5が左右前後方向に複数設けられており、各商品収容通路5には商品、この実施の形態では飲料缶Cが横倒され、上下方向に一列に積み重ねられて収容されている。この商品収容通路5の上方が飲料缶Cの商品補充部7になっている。また、商品収容通路5の下端には商品排出シュート9が連設されている。
本体キャビネット3の左側縁部には内扉11と外扉13とが回動自在に連結されている。内扉11は断熱性で閉鎖すると商品収容通路5に対向する。外扉13の下部には商品取出口15が設けられており、商品収容通路5から商品排出シュート9を介して搬出された飲料缶Cは内扉11の下部に形成された開口(図示省略)を通って、外扉13の商品取出口15に排出される。
【0021】
次に、この自動販売機2の電気駆動式商品搬出機構について、
図2にしたがって説明する。
符号17は後方から見て縦長矩形状の基板であり、
図1に示すように、商品収容通路5の後面側の下部に配置されて商品収容通路5の一部を構成している。この基板17には矩形状の大きな開口部19が形成されている。
この基板17の後面の上部側に、電気的駆動源としてのソレノイド21が取付けられている。
【0022】
このソレノイド21には薄肉のプランジャ23が上下動可能になっている。ソレノイド21は、スプールに巻き回されたコイルを絶縁性樹脂で覆った矩形状部のコイル部25と、逆U字状のヨーク部27とを備える。ヨーク部27は軟鉄板が積層されたものであり、コイル部25を係止固定させるために、Π(パイ)字状で両下端部が互いに近づく方向に対向して狭口となっている。
図4に示すように、ヨーク部27の四隅にネジ29、29が差し込まれて、基板17側の台座に締付け固定されている。プランジャ23はコイル部25から下方に向かって突出しており、その板面は前後方向を向いている。プランジャ23の下端側には掛止用穴31が形成されている。
ヨーク部27はコイル部25より一段低くなっており、境界に段差ができている。
上記ソレノイド21は、コイル部25への通電による励磁によりプランジャ23が上方に吸引されるようになっている。
【0023】
基板17の開口部19には2本のリンク軸33、35と支持軸37とが互いに平行に横方向に架設されており、リンク軸33、35はいずれも上下方向に移動可能になっている。そして、リンク軸35と支持軸37との間にはスプリング39が架け渡されてリンク軸35は下方に弾性的に付勢されている。
符号41はリンク部材を示し、このリンク部材41は全体として縦長の薄板状をしており、この上部は前側に折り曲げられてフック部43となっている。このフック部43がソレノイド21のプランジャ23に形成された掛止用穴31に後側から差し込まれて連結されている。また、リンク部材41の左右両側縁には前側に向かって垂直に折曲げられて受け部が形成されており、そこに設けられた穴にリンク軸33、35が通されている。
【0024】
上記した構成により、非通電時、すなわち待機時には、
図2に示すように、リンク軸33、35は、スプリング39の下方への弾性付勢力により下方の位置にあり、通電時、すなわち販売による商品取出し時には、
図6に示すように、リンク軸33、35はプランジャ23の上動に追従してリンク部材41と共に引上げされて上方の位置にくる。そして、通電が終了すると、弾性的に復元されて下方の位置に戻る。
【0025】
このリンク軸33、35の位置の関係で、待機時には、上側ストッパ45及び支持リンク47は後方に後退して、飲料缶Cには関与せず、下側ストッパ49は前方の突出位置で、その上に載った飲料缶Cの自重に抗してその下方への移動を規制する。
そして、販売時には、リンク軸33、35の引上げに伴い、上側ストッパ45及び支持リンク47は前方の商品収容通路5に突出して、最下段の飲料缶Cとその上の飲料缶Cとの間に入り込んで、その上の飲料缶Cの下方への移動を規制する。一方、下側ストッパ49は係合支持が解除され、その上に載った飲料缶Cの自重に負けて後退する。そして、その飲料缶Cは下方に移動して搬出される。
【0026】
その飲料缶Cの搬出が終了すると、下側ストッパ49は弾性付勢力により前方に再び突出しその位置で維持されると共に、上側ストッパ45が後退して、その上に載っていた飲料缶Cが下側ストッパ49まで落下してその上に載って待機状態となる。
このようにして、飲料缶Cは下段側から1つずつ搬出される。
【0027】
次に、自動販売機2の手動操作式商品搬出機構について、主に
図3〜
図5、
図7にしたがって詳細に説明する。
手動操作式商品搬出機構は、上記した電気駆動式商品搬出機構の構成部品を一部借りて構成されている。
符号51は1本のワイヤーを示し、このワイヤー51の一端部はカシメ止めされたカシメ玉53が付けられている。他端部には掴み部55が取付けられている。
【0028】
このワイヤー51は、保護チューブとしてステンレス製のコイルスプリング状アウターチューブ57に挿通され、その両端部であるカシメ玉53と掴み部55は共に外に引出されている。ワイヤー51はこのアウターチューブ57に対して摺動可能になっており、両端部側の引出しの長さは調整できるが、両端部がカシメ玉53と掴み部55で抜け止めされている。アウターチューブ57は、外からの作用により胴曲りしても、その作用がなくなれば直状に弾性回復するようになっている。
【0029】
このワイヤー51が、アウターチューブ57と共に、ρ(ロー)字状に曲げられており、この環状部分59の下側がU字状垂下部分61になっている。ワイヤー51のカシメ玉53側は環状部分59の一部を構成して後側を向いており、掴み部55側は下方に長く延びている。
U字状垂下部分61は、下方に向かって弛んでおり、その底側乃至カシメ玉53側はアウターチューブ57から引出されて露出している。
この環状部分59がソレノイド21のヨーク部27上でコイル部25を囲むように這わされているが、上記したU字状垂下部分61はヨーク部27から下方にはみ出している。U字状垂下部分61がリンク部材41のフック部43に軽く引掛けられている。
【0030】
符号63は薄い当て板を示し、この当て板63はヨーク部27の板面形状と同じΠ字状になっている。当て板63はガイド部として使用されており、ヨーク部27にワイヤー51及びアウターチューブ57を挟んだ状態で後方から当てて重ね合わされている。
この当て板63の両肩部にはそれぞれネジ29、29が入り込むよう逃げ孔65、65が形成され、その中間には、ネジ67の挿通用の挿通孔69が形成されている。
一方の端部側、すなわちカシメ玉53側には止め孔71とガイド孔73が間隔をあけて上下に並んだ状態で設けられている。この止め孔71、ガイド孔73に対して、ワイヤー51は遊通可能で、カシメ玉53は挿通不能になっている。このうち、ガイド孔73がU字状垂下部分61をU字形に弾性的に復元方向に付勢するためのガイド孔になっている。
また、他方の端部側はヨーク部27側に向かって略垂直に折り曲げられており、この折り曲げ片75にも丸い孔77が設けられている。この孔77はU字状垂下部分61をU字形に弾性的に復元方向に付勢するためのガイド孔になっており、アウターチューブ57が遊通可能になっている。
【0031】
当て板63は、挿通孔69にネジ67が差し込まれ、更にヨーク部27側の挿通孔28に通された上で基板17側の台座にヨーク部27諸共締付け固定されている。この固定によりアウターチューブ57は押圧されて移動不能に、すなわち這わせ姿勢で維持されている。但し、内部を通っているワイヤー51の摺動は可能になっている。
アウターチューブ57はヨーク部27の縁に寄せられているので、上記した固定により、
図5の側面図に示すように、当て板63はアウターチューブ57の太さ分だけヨーク部27から浮き上がっているが、その浮き上がりにより両端部側がヨーク部27から離れる方向に傾斜している。右側面図に示すように、折り曲げ片75の板面はヨーク部27に対して僅かではあるが倒れた状態となっており、そこに設けられたガイド孔77は完全な上下方向ではなく、やや前後方向を向いている。
【0032】
アウターチューブ57はガイド孔77から後下方に有る程度の長さで延び出ている。その端部からワイヤー51が引出されて露出している。また、ガイド孔73から後方に向かってワイヤー51が引出されて露出している。この両側からのワイヤー51の引出しによりU字状垂下部分61が形成されている。このガイド孔73、77が上記したように前後方向乃至前後方向寄りを向いているので、そこから延び出たアウターチューブ57及びワイヤー51は後方に向かって跳ね上げる方向に引出されている。なお、ガイド孔77の前後方向への傾きは上記した跳ね上げを確保できる程度で然程大きくないので、アウターチューブ57自体は殆ど直状を維持している。
カシメ玉53側の端部は更に上側の止め孔71を通って後方に抜け出ており、カシメ玉53によって抜け止めされている。
【0033】
上記した構成により、ワイヤー51のU字状垂下部分61を引張って下げると、リンク部材41を、上動させることができる。
このように、手動操作式商品搬出機構は、電気駆動式商品搬出機構におけるソレノイド21以外の構成部品をそのまま利用して構成されている。
【0034】
次に、電気駆動時における手動操作式商品搬出機構の状態を説明する。
図6に示すように、ソレノイド21による電気駆動により、リンク部材41が上動するときには、ワイヤー51のU字状垂下部分61はフック部43から外れて遊び可能、すなわちプランジャ23の前側に回り込んで絡む危険性がある。しかしながら、ワイヤー51は後方に向かって跳ね上げる方向に引出され、しかも、アウターチューブ57の直状維持特性によりワイヤー51は曲がり難くなっており、遊びは実質的に規制されている。また、フック部43に掛止されたまま連れ上動した場合でも、カシメ玉53側のワイヤー51が止め孔71から後方に飛び出すので、左右方向に極端に膨らむこともない。
上記したように、ワイヤー51やアウターチューブ57といった異物を基板17に組み込んでも故障を起こさないよう十分な対策が採られている。
また、ワイヤー51も絡まなければ摩耗しないので、手動操作式商品搬出機構自体にとっても故障し難いものとなっているといえる。
【0035】
次に、手動操作時における手動操作式商品搬出機構の状態を説明する。
自動販売機2の外扉13を開けると、本体キャビネット3内で掴み部55が商品収容通路5の下方から露出しているので、それを指で掴んで下方に引張ると、
図7に示すように、ワイヤー51がアウターチューブ57の内部を摺動して引出される。それと共に、U字状垂下部分61が緊張してフック部43を引上げる。このフック部43の引上げにより、後は電気駆動式商品搬出機構と同様にして飲料缶Cが取出される。
掴み部55を離せば、スプリング39の弾性付勢力が働いて、矢印に示すように掴み部55側の引出されたワイヤー51がアウターチューブ57側に戻される。その際には、アウターチューブ57は拡大図に示すように実線から破線に示すように直状に戻ろうとするので、この直状維持特性も利用されて、ワイヤー51は弛んだU字状垂下部分61に戻る。従って、リンク部材41は速やかに下降して、
図2に示す待機時の下方位置に戻る。既存の自動販売機2はメーカーによりスプリング39の弾性付勢力に違いがあるが、この保護チューブを兼ねたアウターチューブ57を利用することで、自動販売機2の種類を問わず、手動操作により商品を取出した後に、再び電気駆動による商品搬出機構の利用がより確実に可能となっている。
【0036】
更に、手動操作式商品搬出機構として付加すべき部品は、ワイヤー51と、アウターチューブ57と、当て板63の3点であり、ネジ締付けにより簡単に取付けることができるので、特許文献2のものより、部品点数が少なく、しかも取付け作業も容易になっている。
【0037】
次に、第2の実施の形態に係る手動操作式商品搬出機構79について、
図8〜
図10にしたがって説明する。
この手動操作式商品搬出機構79でも、第1の実施の形態に係る手動操作式商品搬出機構1と同様に、既存の自動販売機2に後付けで部品を取付けて構成されたものであるが、コイル部の下側に配置された配線コード81のフック状ガイド部83、83が利用されている。このフック状ガイド部83、83により配線コード81が左右方向に持ち上げ支持されており、プランジャ23に干渉しないようになっている。手動操作式商品搬出機構1と共通する部分は同じ符号を付すことで説明を省略する。
なお、手動操作式商品搬出機構1では、フック状ガイド部83、83が構成要素となっていなかったため図示省略されているが、手動操作式商品搬出機構79では図示されている。
【0038】
以下、手動操作式商品搬出機構79のガイド部を後方から見た状態で説明する。このガイド部には板状のブラケット部材85が使用されている。ブラケット部材85は逆L字状をしており、その上側横部87の端部は略垂直に折り曲げられて突設片89になっている。また、上側横部87の左端部に連なる縦部91には、その中間部に横方向と縦方向にそれぞれ切込みが入れられて二つの切込み縁が形成されており、その切込み縁と縦部91の一つの縁とで囲まれた矩形部分の上端部が略垂直に折り曲げられて突設片93になっている。また、縦部91の下端部にも横方向に切込みが入れられて一つの切込み縁が形成されており、その切込み縁と縦部91の二つの縁とで囲まれた矩形部分の右端部が略垂直に折り曲げられて突設片95になっている。この突設片95は右側に延出しており、その他の縦部91よりも幅広になっている。
【0039】
突設片89、93、95はいずれも後方に向かって突設しており、突設片89は板面が左右方向を向いており、突設片93は板面が上下方向を向いており、突設片95は板面が左右方向を向いている。
突設片89、93にはアウターチューブ57が挿通されるガイド孔97、99がそれぞれ形成されている。また、突設片95にはワイヤー51が挿通されるガイド孔101と止め孔103が形成されている。
また、上側横部87には中間部と角隅部にそれぞれネジ67の挿通用の挿通孔105と逃げ孔107が形成されている。
【0040】
このガイド部には更に別のブラケット部材109が使用されている。ブラケット部材109はI字状をしており、その下端部には折り曲げ用の突設片111が延設されている。この突設片111が後方に向かって略垂直に折り曲げられている。突設片111の折り目は斜めになっており、右方に向かって下がっている。
この突設片111は板面が左下右上方向を向いている。
突設片111にはアウターチューブ57が挿通されるガイド孔113が形成されている。
また、上端部にはネジ67の挿通用の挿通孔115が形成されている。
【0041】
この2つのブラケット部材85、109の組合せで当て板63と同様にガイド部がΠ字状に構成されており、ヨーク部27に後方から当てて重ね合わされている。
ブラケット部材85、109の挿通孔105、115にネジ67が差し込まれ、更にヨーク部27側の挿通孔28(
図4)に通された上で基板17側の台座にヨーク部27諸共締付け固定されている。また、逃げ孔107はヨーク部27の締め付け固定用のネジ29が入り込むようになっている。
【0042】
ワイヤー51がアウターチューブ57と共に、ρ字状に曲げられており、アウターチューブ57がガイド孔113、97、99に挿通されている。アウターチューブ57はガイド孔113、97、99に対して移動不能に、すなわち這わせ姿勢で維持されている。但し、内部を通っているワイヤー51の摺動は可能になっている。アウターチューブ57から引出されてU字状垂下部分61をなしたワイヤー51はガイド孔101と止め孔103に挿通されてカシメ玉53により抜け止めされている。
【0043】
このようにアウターチューブ57とワイヤー51は、手動操作式商品搬出機構1と同様に這わせられているが、アウターチューブ57がガイド孔113を左下方に向かって挿通し、ワイヤー51はガイド孔101を右方に向かって挿通しており、U字状垂下部分61に対してV字状方向に付勢している。一方、手動操作式商品搬出機構1では、U字状垂下部分61を後方に跳ね上げ方向に付勢している。このように、付勢方向には違いがあるが、いずれもU字形に弾性的に復元する方向になっている。
但し、ワイヤー51のガイド孔101と止め孔103は突設片95に形成されており、ガイド孔101と止め孔103の間を通るワイヤー51の動きがアウターチューブ57に邪魔されないように工夫されている。
また、ガイド部をソレノイド21側に固定させた上でアウターチューブ57やワイヤー51を挿通させており、取付け作業も容易になっている。
【0044】
図11で符号117はシールド片を示す。このシールド片117は薄いプラスチックシートで構成されており、上側には吊下げ用に横長矩形の吊下げ用穴119が打抜きにより形成されている。また、下側の中間部はプランジャ23の掛止用穴31を露出させるために矩形状に切欠かれて切欠き部121になっている。この切欠き部121のサイズはプランジャ23の上動上限まで対応できるよう調整されている。左右両側は配線コード81のガイドに邪魔にならない範囲で外方に拡がって幅広になっている。
図12に示すように、このシールド片117の吊下げ用穴119にフック状ガイド部83、83を通して吊下げると、シート面がプランジャ23及び左右空間を覆って後方からシールドする。
【0045】
シールド片117を吊下げた後に、配線コード81をフック状ガイド部83、83に掛けてガイドさせており、配線コード81がシールド片117を押え付ける働きもして外れ難くなっている。
ワイヤー51のU字状垂下部分61はシールド片117の後面側で垂下しており、ワイヤー51が弛んでもプランジャ23側への回り込みは規制される。
【0046】
手動操作式商品搬出機構79のワイヤー51はアウターチューブ57から十分に引出した状態でガイド孔101と止め孔103に挿通させ、カシメ玉53を取付けているので、U字状垂下部分61はプランジャ23の左右両側を超えて極端に拡開されており、上記した弾性復元手段の復元限界を超えている場合がある。
通常は、取付け作業の最終段階で、片方の手でU字状垂下部分61を押えながら、もう片方の手で掴み部55を掴んでワイヤー51を引張ることで、一回緊張させて、プランジャ23側に回り込まないように注意しながら弛みの度合を調整しているが、この作業が忘れられてしまう場合がある。この場合には、手動操作式商品搬出機構79を最初に操作するときに、大きく弛んだ状態からU字状垂下部分61のワイヤー51が引張られることになるが、シールド片117を併用することで、U字状垂下部分61のワイヤー51がプランジャ23側に回り込まないようになっている。すなわち、この最後の弛み調整作業が無くとも、ワイヤー51がプランジャ23側に回り込むことが確実に阻止される。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…手動操作式商品搬出機構(第1の実施の形態)
2…自動販売機(既存)
3…本体キャビネット 5…商品収容通路 7…商品補充部
9…商品排出シュート 11…内扉 13…外扉 15…商品取出口
17…基板 19…開口部 21…ソレノイド 23…プランジャ
25…コイル部 27…ヨーク部 28…挿通孔 29…ネジ
31…掛止用穴 33、35…リンク軸 37…支持軸
39…スプリング 41…リンク部材 43…フック部
45…上側ストッパ 47…支持リンク 49…下側ストッパ
51…ワイヤー 53…カシメ玉 55…掴み部
57…アウターチューブ 59…環状部分 61…U字状垂下部分
63…当て板 65…逃げ孔 69…挿通孔 71…止め孔
73…ガイド孔 75…折り曲げ片 77…ガイド孔
79…手動操作式商品搬出機構(第2の実施の形態)
81…配線コード 83…フック状ガイド部
85…ブラケット部材 87…上側横部 89…突設片 91…縦部
93…突設片 95…突設片 97…ガイド孔 99…ガイド孔
101…ガイド孔 103…止め孔 105…挿通孔 107…逃げ孔
109…ブラケット部材 111…突設片 113…ガイド孔 115…挿通孔
117…シールド片 119…吊下げ用穴 121…切欠き部 C…飲料缶