(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889917
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
F16D 1/06 20060101AFI20210607BHJP
B02C 19/22 20060101ALI20210607BHJP
F16D 1/09 20060101ALI20210607BHJP
F16B 7/18 20060101ALN20210607BHJP
【FI】
F16D1/06 242
B02C19/22
F16D1/09 500
!F16B7/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-135925(P2017-135925)
(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-19837(P2019-19837A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】391055195
【氏名又は名称】関西産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】児島 輝明
(72)【発明者】
【氏名】木下 徹
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−087151(JP,A)
【文献】
特開2001−009317(JP,A)
【文献】
実開平03−032218(JP,U)
【文献】
実開昭64−046531(JP,U)
【文献】
独国実用新案第29708897(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00−9/10
F16B 7/00−7/22
B02C 19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体に取り付けられるスクリュと、
前記回転体と螺合可能な取付ボルトと、を備え、
前記回転体には凹部が設けられ、前記凹部は、前記スクリュが挿入されるスクリュ受入部と、前記スクリュ受入部よりも基端側に位置する第1雌ねじ部と、を有し、
前記スクリュには挿通孔が設けられ、
前記スクリュは、先端側から前記挿通孔に挿通された前記取付ボルトを前記第1雌ねじ部に螺合させることにより前記回転体に取り付けられ、
前記挿通孔は、平滑な内周面を有する中間部と、前記中間部よりも基端側に位置する第2雌ねじ部と、を有し、前記第2雌ねじ部は、前記取付ボルトよりも大きなネジ径を有する抜きボルトと螺合可能であることを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
前記回転体の前記凹部には段部が設けられ、
前記取付ボルトが前記挿通孔から抜かれた状態において、前記抜きボルトを先端側から前記挿通孔に挿入して前記第2雌ねじ部に螺合させ、前記抜きボルトのネジ先を前記回転体の前記段部に当接させて締め付け方向に回転させると、前記段部によって前記抜きボルトの基端側への移動が規制されると共に、前記スクリュには先端側への力が加わり、これによって前記スクリュと前記回転体との固着が緩むことを特徴とする請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記取付ボルトのネジ径をα、前記抜きボルトのネジ径をβとしたとき、1.2α≦β≦1.45α+1.5の関係が成り立つことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記回転体は、ロータと、前記ロータの基端側に接続された回転軸と、を備え、前記ロータは駆動機構から伝達される駆動力によって前記回転軸と共に回転駆動され、
前記凹部は前記ロータから前記回転軸にかけて設けられ、前記第1雄ねじ部は前記回転軸に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の取り外しを容易にできる部材取付構造及びこれを備える粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、籾殻などのバイオマス原料を粉砕するための粉砕装置が提案されている。特許文献1に開示の圧縮微粉砕装置は、ハウジング内で回転するロータを備え、原料はハウジングとロータとの間の僅かな隙間を通過する際にすり潰されて粉砕される。粉砕された原料は回転するスクリュにより外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粉砕装置が備えるスクリュはロータの先端に螺着により装着されるのが一般的であるが、粉砕装置を稼働するに連れてスクリュとロータとの接触面が固着し、スクリュを容易にはロータから取り外せなくなるという問題が生じていた。このような場合には、スクリュの先端部をハンマで叩く等して固着箇所を緩ませており、スクリュの破損の原因となっていた。
【0005】
本発明は、スクリュ等の部材の取り外しを容易にできる部材取付構造及びこれを備えた粉砕装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の部材取付構造は、第1雌ねじ部を有する第1部材と、前記第1部材に取り付けられる第2部材と、前記第1雌ねじ部と螺合可能な取付ボルトと、を備え、前記第2部材には挿通孔が設けられ、前記第2部材は、前記挿通孔に挿通された前記取付ボルトを前記第1雌ねじ部に螺合させることにより前記第1部材に取り付けられ、前記挿通孔には、前記取付ボルトよりも大きなネジ径を有する抜きボルトと螺合可能な第2雌ねじ部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の部材取付構造は、前記取付ボルトが前記挿通孔から抜かれた状態において、前記抜きボルトを前記第2雌ねじ部に螺合させ、前記抜きボルトの先端面を前記第1部材に当接させてねじ込むことにより、前記第2部材には前記第1部材から離間する方向の力が付与されることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の部材取付構造は、前記取付ボルトのネジ径をα、前記抜きボルトのネジ径をβとしたとき、1.2α≦β≦1.45α+1.5の関係が成り立つことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の粉砕装置は、上述した部材取付構造を備える粉砕装置であって、前記第1部材としての回転体と、前記回転体を回転可能に収容するハウジングと、前記第2部材としてのスクリュと、を備え、前記回転体は、ロータと、前記ロータの基端側に接続された回転軸と、を備え、前記ハウジング内に供給された原料は、前記回転軸と共に回転する前記ロータの外羽根と前記ハウジングの内羽根との間で粉砕され、前記ロータと共に回転する前記スクリュのスクリュ羽根によって排出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の部材取付構造によれば、第2部材の挿通孔には、取付ボルトよりも大きなネジ径を有する抜きボルトと螺合可能な第2雌ねじ部が設けられているので、第2部材が第1部材に対して固着してしまい、取付ボルトを取り外しても第2部材を第1部材から容易には取り外せない場合においては、第2材の第2雄ねじ部に抜きボルトを螺合させてねじ込むことにより、第2部材には第1部材から離間する方向の力が加わり、これにより第1部材と第2部材との固着を緩め、第2部材の取り外しを容易にできる。
【0011】
また、本発明の粉砕装置によれば、第1部材としての回転体と第2部材としてのスクリュとを備え、回転体はロータとロータの基端側に接続された回転軸とを備えるので、仮にスクリュがロータに固着し容易には取り外せなくなった場合においても、抜きボルトを用いることで容易にこれを取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る粉砕装置の要部断面図。
【
図2】
図1に示す粉砕装置が採用する部材取付構造を示す概略図であって、(a)は取り付け方法を説明する図、(b)は取り付けられた状態を示す図。
【
図3】
図2に示す部材取付構造において、部材の取り外し手順を説明する図。
【
図4】
図2に示す部材取付構造において用いられる取付ボルトのボルト径と抜きボルトのボルト径との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る粉砕装置について説明する。
図1に示す粉砕装置1は、籾殻、木質チップ、おから等のバイオマス原料を圧縮粉砕するものであり、ハウジング2と、ハウジング2に回転可能に収容された回転体3と、回転体3の先端に装着されたスクリュ4と、を備える。
【0014】
ハウジング2は基端側から先端側へ向かうに従い縮径する略横向き半球状の内面を有し、この内面には捻れ角を有する複数の内羽根が設けられている。また、ハウジング2の基端側上方部位には原料が供給される供給口21が設けられ、ハウジング2の先端面には粉砕された原料を排出するための排出口22が設けられている。
【0015】
回転体3は、ロータ5と、ロータ5の基端側に接続された回転軸6と、を備える。ロータ5は、ハウジング2の内面に対応して基端側から先端側へ向かうに従い縮径する略横向き半球形状を有し、その外面には捻れ角を有する複数の外羽根が設けられている。回転軸6はロータ5の基端側に固定されると共に、図示しない駆動機構に連結されており、駆動機構から伝達される駆動力によってロータ5が回転軸6と共に回転駆動される。スクリュ4は回転軸6と同軸上に配置された回転軸4aと、回転軸4aの周面に設けられたスクリュ羽根(図示せず)と、を有し、回転体3と一体的に回転する。
【0016】
かかる構成において、供給口21を介してハウジング2内に供給された原料は、回転するロータ5の外羽根とハウジング2の内羽根との間で圧縮粉砕されながら先端側へ移送され、回転するスクリュ4のスクリュ羽根によって押し出されるようにして排出口22から排出される。
【0017】
なお、ハウジング2の先端側にスクリュ4を覆うようにして固形化機構(図示せず)を設けることにより、粉砕装置1を粉砕固形化装置として用いることができ、この場合にはハウジング2内で粉砕された原料が固形化機構において固形化されて排出される。
【0018】
次に、スクリュ4の回転体3への取り付け構造(部材取付構造100)について、
図2の簡略図を参照して説明する。スクリュ4には長手方向(回転軸方向)に延びる挿通孔41が設けられており、この挿通孔41に挿通された取付ボルト7を回転体3(第1部材)に螺着させることでスクリュ4(第2部材)が回転体3に固定される。
【0019】
より具体的に、回転体3の先端面には凹部31が設けられ、凹部31は、基端側へ向かうにつれて縮径するテーパ状のスクリュ受入部31aと、スクリュ受入部31aよりも基端側に位置する中間部31bと、中間部31bよりも基端側に位置する雌ねじ部31c(第1雌ねじ部)と、を有し、雌ねじ部31cは中間部31bよりも小径とされ、中間部31bと雌ねじ部31cの間には段部32が形成されている。
【0020】
スクリュ4の基端側外周面は、回転体3のスクリュ受入部31aの内面形状に対応して、基端側に向かうに従い縮径するテーパ状とされている。また、スクリュ4の挿通孔41の内径は回転体3の雌ねじ部31cよりも大径とされている。挿通孔41の先端側には拡径部41aが設けられ、これにより挿通孔41の中間部41bと拡径部41aとの間には段部42が形成されている。更に、挿通孔41の少なくとも基端側部位には雌ねじ山が設けられ、雌ねじ部41c(第2雌ねじ部)を形成している。
【0021】
取付ボルト7は回転体3の雌ねじ部31cと螺合可能な雄ねじ部71を有し、雄ねじ部71及び円筒部72の外径はスクリュ4の挿通孔41よりも小径とされている。また、取付ボルト7の頭部73は挿通孔41の拡径部41aよりも小径且つ挿通孔41の中間部41bよりも大径とされている。
【0022】
かかる構成において、スクリュ4を回転体3へ取り付けるには、先ずスクリュ4の後端部を回転体3の凹部31へ挿入する。次に、取付ボルト7をスクリュ4の挿通孔41に挿通させ、雄ねじ部71を雌ねじ部31cに螺合させる。取付ボルト7をさらにねじ込むと、
図2(b)に示す様にスクリュ4は回転体3の凹部31の内面(スクリュ受入部31aのテーパ面)と取付ボルト7の頭部73との間に挟持され、回転体3に対して固定される。一方、スクリュ4を回転体3から取り外すには、取付ボルト7を外してスクリュ4を回転体3の凹部31から抜き出せばよい。
【0023】
ここで、スクリュ4と回転体3との接触箇所(凹部31の内面とスクリュ4の外周面)が焼き付いて、取付ボルト7を取りはずしても簡単にはスクリュ4を回転体3から取り外せない場合には、
図3に示す抜きボルト8を用いてスクリュ4を取り外す。
【0024】
抜きボルト8は、取付ボルト7よりも大きなネジ径を有し、その雄ねじ部81はスクリュ4の雌ねじ部41cと螺合可能とされている。また、雄ねじ部81の外径は回転体3の中間部31bよりも小径且つ雌ねじ部31cよりも大径とされている。
【0025】
このように構成された抜きボルト8をスクリュ4の挿通孔41に挿入し、雄ねじ部81を雌ねじ部41cに螺合させる。この状態で抜きボルト8を更にねじ込むと、
図3(b)に示す様に抜きボルト8のネジ先81a(先端面)が回転体3の段部32(当接面)に当接する。この状態で抜きボルト8を更に締め付け方向に回転させると、段部32によって抜きボルト8の基端側への移動が規制される代わりに、スクリュ4には先端方向A(即ち、回転体3から離間する方向)の力が加わり、これによってスクリュ4と回転体3との固着を緩めることができる。このようにしてスクリュ4と回転体3との固着部分が緩んだら、スクリュ4を回転体3から引き抜けばよい。
【0026】
なお、
図1の例では、ロータ5から回転軸6にかけて凹部31が設けられ、回転体3のうち回転軸6側に雌ねじ部31cが設けられている。
【0027】
このように、本実施形態においては、スクリュ4に螺合された抜きボルト8を用いて回転体3との固着部分を緩めることができるので、スクリュ4をハンマ等で叩いて固着部分を緩ませる必要がなく、スクリュ4を破損させることなく容易に取り外すことができる。
【0028】
ここで、取付ボルト7の呼び径をα、抜きボルト8の呼び径をβとした場合、αとβとの関係は、
図4に示すように、1.2α≦β≦1.45α+1.5の関係が成り立つのが好ましく、例えば取付ボルト7をM10(10mm径)のメートルネジ、抜きボルト8をM14(14mm径)のメートルネジとすることができる。
【0029】
ここで、抜きボルト8の呼び径βが1.2αよりも小さいと、取付ボルト7の雄ねじ部71がスクリュ4の雌ねじ部41cと干渉してしまい、取付ボルト7をスクリュ4の挿通孔41に挿通させることができなくなる虞があり、抜きボルト8の呼び径βが1.45α+1.5よりも大きいと、挿通孔41の中間部41bの内径が取付ボルト7の頭部73の外径よりも大きくなり、取付ボルト7の頭部73をスクリュ4の段部42に当接させることができなくなる虞がある。
【0030】
以上、本発明の実施形態に係る部材取付構造及び粉砕装置について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0031】
例えば、スクリュ4の基端側外周面はテーパ状である必要はなく、例えば均一外径を有する筒状であってもよく、この場合には回転体3のスクリュ受入部31aの内面形状はテーパ状に代えてスクリュ4の外周面形状に対応して均一内径を有する筒状とすれば良い。
【0032】
また、上記実施形態においては、ロータ5から回転軸6にかけて凹部31が設けられ、回転体3のうち回転軸6側に雌ねじ部31cが設けられているが、本発明はこれに限定されず、例えばロータ5に雌ねじ部を設けてもよい。
【0033】
更に、上記実施形態においては第1部材としての回転体3に凹部31を設け、この凹部31に第1雌ねじ部(雌ねじ部31c)を設けたが、第1部材に凹部31を設けずに第1雌ねじ部のみを設ける構成であってもよい。即ち、第1部材の表面に第1雌ねじ部を設け、第2部材を第1部材の表面に当接させて取付ボルトで固定させるようにし、抜きボルトを用いた取り外し作業においては、第1部材の表面に抜きボルト先端面を当接させて締め付けるようにすれば良い。この場合においては第1部材の表面が抜きボルトとの当接面として機能する。
【符号の説明】
【0034】
1 粉砕装置
2 ハウジング
3 回転体(第1部材)
4 スクリュ(第2部材)
5 ロータ
6 回転軸
7 取付ボルト
8 抜きボルト
31c 第1雌ねじ部
41c 第2雌ねじ部