(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る堆肥製造装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
【0020】
(実施の形態1)
堆肥製造装置1は、堆肥材料100への送気を行うことで堆肥材料100の堆肥化を促進しながら堆肥を製造する装置である。堆肥材料100は、牛ふん、豚ふん、鶏ふん、馬ふん等の家畜排せつ物、生ごみ、下水の汚泥、食品工業汚泥、稲わら、おがくず等を含んでいる。
【0021】
図1を参照して、実施の形態1に係る堆肥製造装置1の構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る堆肥製造装置1を模式的に示す図である。堆肥製造装置1は、発酵槽10、送気部20、温度測定部30、制御部40を備えている。制御部40は、温度測定部30により測定された堆肥材料100の温度を取得し、送気部20による堆肥材料100への送気を制御している。制御部40は、2つの発酵槽10内の堆肥材料100への送気を別々に制御している。
【0022】
以下、堆肥製造装置1の各構成について説明する。発酵槽10は、堆肥材料100を内部に収容し、発酵させるための槽である。送気部20は、発酵槽10の外部から内部に向かって延びており、発酵槽10の内部に空気を送り込む送気手段の一例である。温度測定部30は、発酵槽10に収容された堆肥材料100の温度を測定する温度測定手段の一例である。温度測定部30により測定された温度に関するデータは、制御手段である制御部40に提供される。制御部40は、温度測定部30により測定された温度測定データを取得し、堆肥材料100の温度に基づいて、送気部20の動作を制御する。
【0023】
図2は、実施の形態1に係る発酵槽10を示す斜視図である。
図2に示すように、発酵槽10は、長方形の平面を有する底部11と、底部11の背面側の端部から上方に立ち上がる側壁部12と、を備えている。また、発酵槽10は、底部11及び側壁部12に対して垂直に設けられ、発酵槽を4つの区画10a、10b、10c、10dに区切る5つの側壁部13、14、15、16、17を備えている。底部11の正面側には、堆肥材料100を操作するためにタイヤローダー、トラクター等を発酵槽10の内部に出し入れする出入口が設けられている。
【0024】
発酵槽10は、各区画10a、10b、10c、10d内に収容された堆肥材料100が濡れることを防ぐため、全体が屋根18で覆われている。屋根18は、側壁部13、17から上方に延びる複数の支柱19で支持されている。
【0025】
送気部20は、発酵槽10の内部に収容された堆肥材料100に空気を送気する送気手段である。送気部20は、発酵槽10の側壁部12の外面及び底部11の上面に沿って配置されている。送気部20は、発酵槽10の各区画10a、10b、10c、10dごとに設けられており、堆肥材料100に均一に空気を送気するように構成されている。
【0026】
図1に戻り、送気部20は、送風機21と、送気管22とを備える。送風機21は、吸引口から空気(外気)を吸引し、吸引した空気にエネルギーを付与し、送気口から外部に送気する。送風機21は、その送気口が発酵槽10に設けられた送気管22に送気可能に接続されている。送風機21は、発酵槽10の側壁部12の外側に形成された土手の上面に設置されている。送風機21は、作動時、送気管22に接続された送気口から一定の送気量で空気を送気する。送風機21は、単位体積の堆肥材料100への体積流量が約40L/min/m
3〜約300L/min/m
3、好ましくは約40L/min/m
3〜約100L/min/m
3、さらに好ましくは約50L/min/m
3〜約60L/min/m
3の範囲内となるような送気量で送気する。
【0027】
送気管22は、送風機21から送気された空気を発酵槽10の底部11に向けて送気する。送気管22は、複数の塩化ビニル製の管をジョイント部で接続して形成されており、発酵槽10の底部11の上面と側壁部12の外面とに沿って配置されている。
【0028】
図3は、理解を容易にするために、
図2に示す発酵槽10の側壁部17を取り除いて観察した側面図である。
図3に示すように、送気管22は、送風機21に接続された基端部22aと、基端部22aに接続され、側壁部12の外面に沿って下方に延びる中間部22bと、中間部22bの下端部に接続され、側壁部12を貫通して底部11の上面を延びる先端部22cと、を備えている。
【0029】
送気管22の先端部22cには、送風機21から送出された空気を外部に放出する複数の送出孔23が設けられている。複数の送出孔23は、堆肥材料100に均一に空気を送り込むため、送気管22の先端部22cの長さ方向に均等な間隔で設けられおり、先端部22cの先端に近づくにつれて孔径が大きくなるように形成されている。また、先端部22cの先端に近づくにつれて送出孔23の密度が大きくなるように配置してもよく、送出孔23の孔径の変化と密度の変化とを組み合わせてもよい。
【0030】
図1に戻り、温度測定部30は、堆肥材料100の温度を測定し、制御部40に温度測定データを送信する温度測定手段の一例である。温度測定部30は、堆肥材料100の温度を測定する温度計31と、測定された堆肥材料100の温度測定データを送信する送信部32と、を備える。
【0031】
温度計31は、先端部が堆肥材料100の中心部に到達し得る程度に長尺な本体部と、本体部の先端部に設けられた測定部と、を備える。本体部は、内部に空間を有する管であり、堆肥材料100から発生するガス等による腐食を抑制するため、耐腐食性材料、例えばステンレスから形成されている。本体部は、堆肥材料100の中心の温度を測定できるように、約2m〜約5m程度の長さを有する。測定部は、寿命の長さ、耐熱性、機械的強度の点で優れているため、熱電対から構成されている。
【0032】
送信部32は、温度計31にて測定された温度測定データを制御部40に向けて送信する送信手段の一例である。送信部32は、本体部内の空間を延びる電線を介して温度計31の測定部に通信可能に接続されている。送信部32は、無線を用いた通信回線を介して制御部40の通信部60に通信可能に接続されている。より詳細には、制御部40には、無線LANの親機が接続されると共に、温度測定部30の送信部32として無線LANの子機が採用される。親機と子機とがWi−Fiにより通信可能に接続されることにより、送信部32は、制御部40の通信部60へ温度測定データを送信可能に構成される。
【0033】
堆肥製造装置1においては、温度測定データの送信に有線を用いた通信回線を使用していないため、発酵槽10に堆肥材料100を収容していない場合には、温度測定部30を安全に保管できる。また、堆肥材料100に温度測定部30を差し込んでいる場合でも、ネズミ等により切断され得る有線が存在しないため、制御部40は温度測定データを確実に取得できる。
【0034】
制御部40は、温度測定部30にて測定された堆肥材料100の温度に基づいて、送気部20の動作を制御する制御盤である。制御部40は、設定された時間ごとに送風機21が作動と停止を繰り返すように制御する送気制御手段として機能する。送風機21は、作動時には一定の送気量で空気を堆肥材料100に送出しているため、制御部40が送風機21を間欠的に作動させることで、堆肥材料100の発酵に必要な量の酸素を供給できる。
【0035】
制御部40は、プログラマブルロジックコントローラ41(programmable logic controller:PLC)、マグネットスイッチ42、ブレーカ43、を備える。PLC41、マグネットスイッチ42、ブレーカ43は、互いに駆動回路により接続されている。
【0036】
PLC41は、シーケンサとも呼ばれ、小型のコンピュータの一種で、プログラムを記憶するメモリと、このメモリに記憶されたプログラムを実行するマイクロプロセッサと、を備える。PLC41は、予め設定された条件に従い、スイッチ、センサ等の入力機器の指令信号のON/OFFに応じて出力機器のON/OFFを制御する。PLC41は、温度測定部30から送信された温度測定データに応じて、マグネットスイッチ42を開閉するためのプログラムが記憶されている。
【0037】
マグネットスイッチ42は、回路を開閉する電磁接触器と、過負荷発生時に回路を遮断するサーマルリレーと、を組み合わせたスイッチである。電磁接触器は、PLC41からの指示に基づいて、送風機21のON/OFFを切り換えるために、駆動回路を開閉する。電磁接触器は、PLC41から電流が供給されず、電磁石のコイルを励磁していない状態では、固定接点と可動接点とが離れており、駆動回路を開放している。一方、PLC41から電流が供給され、電磁石のコイルを励磁している状態では、固定接点と可動接点とが接触し、駆動回路を閉じている。
【0038】
サーマルリレーは、送風機21の焼損を防止するため、送風機21への過負荷発生時に回路を遮断する。サーマルリレーは、過負荷発生時に発熱するヒータと、ヒータが発熱したときに回路を遮断するバイメタルと、を備えている。
【0039】
ブレーカ43は、駆動回路に短絡、漏電等が発生したときに駆動回路を遮断する遮断器である。
【0040】
制御部40は、表示部50、通信部60をさらに備えている。表示部50は、送風機21のON/OFF、温度計31で測定された堆肥材料100の温度、制御部40が選択した送風機21の制御条件等を表示する。表示部50は、制御部40の正面に取り付けられたタッチパネルであり、情報を表示するだけでなく、制御部40に対する堆肥化開始の指示等を受け付ける指示受付部としても機能する。
【0041】
通信部60は、外部端末等に向けて制御部40から信号を送信し、外部端末等から制御部40への信号を受信する通信手段の一例である。通信部60は、インターネット回線等のネットワークを介して遠隔地にある外部端末とも通信可能に接続されている。通信部60は、外部端末に向けて堆肥材料100の測定温度データ、堆肥材料100の撮像データ等を送信する。また、通信部60は、温度測定部30の送信部32からの温度測定データ、外部端末から送信される制御条件に関する指示、堆肥化開始の指示、PLC41に記憶される新たな制御プログラム等を受信する。このように構成されているため、ユーザは、遠隔地にある事業所の外部端末を用いて堆肥製造装置1の動作を制御できる。
【0042】
外部端末には、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等が含まれている。外部端末には、通信部60と通信可能に接続するために必要なアプリケーションがインストールされている。
【0043】
次に、
図4を参照して、送風機21の制御条件について説明する。
【0044】
堆肥材料100の温度は、堆肥材料100内の好気性微生物の活性状況を示している。堆肥材料100の温度が比較的低いとき、好気性微生物は酸素をそれほど必要としていないが、堆肥材料100の温度が比較的高いとき、好気性微生物は酸素を多く必要としている。そこで、堆肥材料100の堆肥化においては、堆肥材料100の温度を測定することにより、堆肥材料100内の酸素量を測定することなく、堆肥材料100の発酵状況に応じた酸素の供給を実現できる。
【0045】
実施の形態1に係る堆肥製造装置1においては、送風機21が単位時間あたりに送気する空気量である送気量を一定にしておき、堆肥材料100の温度が比較的低いとき、送風機21の作動をONにする時間(ON時間)に対して送風機21の作動をOFFにする時間(OFF時間)を長くする。一方、堆肥材料100の温度が比較的高いとき、送風機21のOFF時間に比べて送風機21のON時間を長くする。このようにして、制御部40は、堆肥材料100の測定温度に応じて、一定時間ごとに送風機21のON時間とOFF時間とを設定する。
【0046】
送風機21のON時間とOFF時間は、堆肥材料100の温度ごとに予め設定されている送風機21のON時間を一定時間(ON時間とOFF時間の合計時間)で割った割合であるデューティ比に基づいて決定される。堆肥材料100の温度が比較的低いとき、デューティ比は小さく、堆肥材料100の温度が比較的高いとき、デューティ比は大きい。
【0047】
より詳細に説明すると、温度測定部30は、1時間ごとの間隔で堆肥材料100の温度を測定する。そして、制御部40は、PLC41に記憶されたプログラムに基づいて、堆肥材料100の温度測定後の1時間におけるデューティ比を決定する。制御部40は、決定されたデューティ比に基づいて、この1時間当たりのON時間、OFF時間を配分する。制御部40は、送風機21のON時間、OFF時間のパターン、言い換えると堆肥材料100への送気のオンオフのパターンを決定するパターン決定手段でもある。
【0048】
本発明者らは、送風機21のON時間、OFF時間を変更しつつ堆肥化の実験を繰り返した結果、最終的に
図4に示す制御条件が最適であることを見いだした。
図4に示す制御条件は、堆肥製造装置1に堆肥材料100の量に適した送気量(例えば、単位体積当たりの堆肥材料100への送気量は、52L/min/m
3であってもよい。)で送気する送風機21を設置していることを前提としており、堆肥材料100の量、送風機21の送気量等に応じてON時間、OFF時間を調整する必要はない。
図4に示す制御条件においては、堆肥化により得られた堆肥の安全性を確保できるとともに、堆肥化に伴う消費電力量、亜酸化窒素N
2O、メタンCH
4、アンモニアNH
3の排出量を抑制できる。
【0049】
図4に示す制御条件では、堆肥材料100の温度が25℃以下の場合、制御部40は、温度測定後の1時間をすべてOFF時間とする。
堆肥材料100が25℃〜30℃の場合、ON時間を10〜30分、OFF時間を30〜50分の範囲から設定する。
堆肥材料100の温度が30℃〜40℃の場合、制御部40は、温度測定後の1時間のうちON時間を15〜40分、OFF時間を20〜45分の範囲から設定する。
堆肥材料100の温度が40℃〜50℃の場合、制御部40は、温度測定後の1時間のうちON時間を20〜40分、OFF時間を20〜40分の範囲から設定する。
堆肥材料100の温度が50℃〜60℃の場合、制御部40は、温度測定後の1時間のうちON時間を30〜50分、OFF時間を10〜30分の範囲から設定する。
堆肥材料100の温度が60℃以上の場合、制御部40は、温度測定後の1時間のうちON時間を10分、OFF時間を50分に設定する。
【0050】
堆肥材料100の温度が25℃〜30℃の場合、30℃〜40℃の場合、40℃〜50℃の場合、50℃〜60℃の場合については、ON時間、OFF時間に選択の余地がある。実際のON時間、OFF時間をいかなる時間に決定するかは、製造施設の環境、発酵槽10のサイズ及び形状、搬入される堆肥材料100に含まれる材料等の条件を考慮し、ユーザが適宜決定し得る。制御部40のPLC41には、堆肥材料100の温度が25℃〜30℃の場合、30℃〜40℃の場合、40℃〜50℃の場合、50℃〜60℃の場合についても、ON時間、OFF時間を決定したプログラムを記憶しておく。
【0051】
図4に示す制御条件に基づいて、送気機21のON時間、OFF時間を決定するためのデューティ比は以下のように設定される。
制御部40は、堆肥材料100の温度が25℃以下の場合、デューティ比をゼロに設定する。
堆肥材料100の温度が25℃〜30℃の場合、制御部40は、デューティ比を約1/6〜約1/2の範囲内に設定する。
堆肥材料100の温度が30℃〜40℃の場合、制御部40は、デューティ比を約1/4〜約2/3の範囲内に設定する。
堆肥材料100の温度が40℃〜50℃の場合、制御部40は、デューティ比を約1/3〜約2/3の範囲内に設定する。
堆肥材料100の温度が50℃〜60℃の場合、制御部40は、デューティ比を約1/2〜約5/6の範囲内に設定する。
堆肥材料100の温度が60℃以上の場合、制御部40は、デューティ比を約1/6に設定する。
【0052】
また、デューティ比は以下のように設定してもよい。
堆肥材料100の温度が50℃以下(第1の温度範囲)の場合、制御部40は、デューティ比を第1のデューティ比に設定する。
堆肥材料100の温度が50℃〜60℃(第2の温度範囲)の場合、制御部40は、デューティ比を第1のデューティ比よりも大きい第2のデューティ比に設定する。
堆肥材料100の温度が60℃以上(第3の温度範囲)の場合、制御部40は、デューティ比を第2のデューティ比よりも小さい第3のデューティ比に設定する。
【0053】
堆肥製造装置1が実行する処理は、例えば、上述の物理的構成を備える装置が、予め組み込まれたプログラムを実行することにより実現される。本発明は、プログラムとして実行されてもよく、そのプログラムが記憶された記憶媒体として実現されてもよい。
【0054】
次に、
図5のフローチャートを参照して、堆肥材料100の堆肥化を実行する堆肥化処理について説明する。
【0055】
表示部50は、ユーザに対して堆肥製造施設に集められた堆肥材料100を発酵槽10の区画10aに搬入するよう指示する。(ステップS101)。発酵槽10にはタイヤローダーやトラクターが出入り可能な出入口が形成されているため、ユーザは、タイヤローダーやトラクターを発酵槽10の区画10a内に進入させ、堆肥材料100を積み上げることができる。
【0056】
次いで、表示部50は、ユーザに対してステップS101で積み上げられた堆肥材料100に温度測定部30を挿入するよう指示する(ステップS102)。温度測定部30は、ユーザにより先端部が堆肥材料100の中心部に位置するように差し込まれる。
【0057】
次いで、ステップS102で堆肥材料100に挿入された温度測定部30は、堆肥材料100の温度を測定する(ステップS103)。温度測定部30により測定された温度に関するデータは、温度測定部30の送信部32から無線の通信回路を介して制御部40に通知される。
【0058】
制御部40は、ステップS103で測定された堆肥材料100の温度に基づいて、送気部20のON時間、OFF時間を決定する(ステップS104)。送気部20のON時間、OFF時間は、
図4に示す制御条件に基づいてON時間とOFF時間の合計が1時間(設定時間)となるように決定される。
【0059】
送気部20は、ステップS104で制御部40により決定されたON時間、OFF時間で送気のON/OFFを行う(ステップS105)。制御部40は、まず始めに送風機21をON時間だけ動作させ、その後、送風機21をOFF時間だけ停止するように制御する。制御部40は、堆肥材料100の温度に基づいて送気部20の制御条件を決定しているため、堆肥材料100には発酵の程度に応じて必要十分な量の酸素が供給される。
【0060】
次に、制御部40は、送気部20の送気開始から設定時間が経過したがどうか判定する(ステップS106)。送気部20の送気開始から設定時間が経過している場合(ステップS106:YES)、温度測定部30は、再び堆肥材料100の温度を測定する(ステップS107)。一方、堆肥材料100への送気開始から設定時間が経過していない場合(ステップS106:NO)、制御部40は、設定時間である1時間が経過するまで決定された制御条件で送気部20を制御する。
【0061】
ステップS107で測定された堆肥材料100の温度が閾値以下かどうか判定する(ステップS108)。ステップS107で測定された堆肥材料100の温度が閾値以下の場合(ステップS108:YES)、表示部50は、ユーザに堆肥材料100の切り返しを指示する(ステップS109)。
【0062】
より詳細には、制御部40は、切り返しを行うようにとのユーザに対する指示を表示部50に表示させる。この指示を受けて、ユーザは、温度測定部30を堆肥材料100から引き抜き、タイヤローダーやトラクター等により堆肥材料100を発酵槽10の区画10aから区画10bへ移動させることで、堆肥材料100を全体的にかき混ぜ、空気を含ませる。堆肥材料100の切り返しが終了すると、ユーザは、表示部50のタッチパネルをタッチし、切り返しが終了した旨を通知する。次いで、表示部50のタッチパネルは、制御部40に切り返しが終了した旨を通知する。
【0063】
切り返しは、発酵中の堆肥材料100を混合する操作である。堆肥材料100の温度は、発酵に伴い上昇するが、ある程度の温度に上昇した後、発酵が勢いを失うため降下していくことが知られている。切り返しを行うことで、堆肥材料100の発酵を再び活性化し、堆肥材料100の堆肥化を促進できる。
【0064】
ステップS107で測定された堆肥材料100の温度が閾値以下でない場合(ステップS108:NO)、再びステップS104に戻り、制御部40は、堆肥材料100の温度に基づいて次の設定時間(1時間)における送気部20のON時間/OFF時間を決定する。そして、ステップS104〜S108の処理をもう一度繰り返す。
【0065】
ステップS109における堆肥材料100の切り返しの後、温度測定部30は、再び堆肥材料100の温度を測定する(ステップS110)。そして、制御部40は、温度測定部30で測定された堆肥材料100の温度が閾値以下かどうかを再び判定する(ステップS111)。
【0066】
堆肥材料100の温度が閾値以下の場合(ステップS111:YES)、制御部40は、堆肥材料100の堆肥化が完了したと判断し、堆肥化処理を終了させる。切り返しを行っても堆肥材料100の温度が上昇しない場合、堆肥材料100の発酵が進行しない程度に堆肥材料100が分解されたと判断できるためである。
【0067】
一方、堆肥材料100の温度が閾値以下でない場合(ステップS111:NO)、ステップS104に戻り、制御部40は、堆肥材料100の温度に基づいて、次の設定時間(1時間)における送気部20の制御条件を決定する。そして、ステップS104〜S111の処理をもう一度繰り返す。切り返しを行って堆肥材料100の温度が上昇した場合、堆肥材料100の発酵がいまだ進行していることから、堆肥材料100の堆肥化を促進する必要があるためである。
【0068】
堆肥材料100は、ステップS109の切り返しを行うたびに、発酵槽10の区画10aから区画10b、区画10bから区画10c、区画10cから区画10dへと移動されていく。このため、区画10dに載置された堆肥材料100が最も堆肥化されていることになる。
【0069】
(実施例1)
以下、実験室レベルの堆肥製造装置1を用いて堆肥材料100を堆肥化した実施例を示す。実施例1においては、発酵槽10に乳牛ふん、麦わらを混合した堆肥材料100を載置して堆肥材料100の堆肥化を行った。堆肥製造装置1は、
図6に示す基準例及び条件A〜Iごとに作動させた。実施例1においては、堆肥材料100の温度、消費電力量、N
2O、CH
4、NH
3の排出量を測定している。堆肥材料100の堆肥化を行った期間は7日間である。送風機21の作動時における単位体積当たりの堆肥材料100への送気量は52L/min/m
3である。
【0070】
従来、堆肥の安全性と消費電力量の抑制を両立させるためには、ON時間を60分、OFF時間を60分とすることが望ましい、とされてきた。そこで、実施例1においては、ON時間を60分、OFF時間を60分として送風機21を制御した場合を基準例とし、基準例で送風機21を制御した場合と各実験条件A〜Iで送風機21を制御した場合とを比較する。
【0071】
まず、堆肥材料100の温度の測定結果について検討する。堆肥の安全性を確保するためには、大腸菌群などの病原菌を死滅させ、雑草種子を不活性化する必要がある。米国EPA(環境保護庁)では、堆肥の安全性を確保するために、堆肥材料100の温度が55℃以上の温度であった時間が連続で3日間(72時間)以上であることを要求している。そこで、実施例1においては、安全のための余裕を取り、堆肥材料100の温度が60℃以上であった積算時間が3日以上となった場合に、堆肥の安全性が確保されたと判断する。実施例1においては、
図6に示す実験条件A、C〜Iの場合に、堆肥温度が60℃以上の積算時間が3日間を超えた。
【0072】
送風機21の消費電力は、製造施設のランニングコストの大半を占めることが知られている。したがって、製造施設のランニングコストを抑制するためには、送風機21の消費電力を抑制することが欠かせない。実施例1においては、150m
3(約60トン)の堆肥材料100に対して出力5.0kWの送風機21で送気を行った。その結果、
図6に示す実験条件B〜Iの場合に、基準例と比較して堆肥製造装置1の消費電力量が削減された。
【0073】
N
2O、CH
4は、温室効果ガスであるため排出量を抑制することが好ましい。実施例1においては、
図6に示す実験条件A、E〜Hの場合に、基準例と比較して堆肥製造装置1におけるN
2Oの排出量とCH
4の排出量との合計排出量が削減された。
【0074】
NH
3は、特有の刺激臭を有しており、製造施設に対する苦情の原因となるため排出量を抑制することが好ましい。実施例1においては、
図6に示す実験条件C〜Iの場合に、基準例と比較して堆肥製造装置1におけるNH
3の排出量が削減された。
【0075】
以上の実験結果を総合すると、堆肥の安全性を確保し、堆肥化に伴う消費電力量、N
2O、CH
4、NH
3の排出量の削減を実現するためには、
図6に示す実験条件のうち実験条件E〜Hを採用することが望ましい。
図4に示した制御条件は、
図6に示す実験条件E〜Hをすべて含むように設定されている。
【0076】
(実施例2)
次に、実験室レベルの堆肥製造装置1を用いて堆肥材料100を堆肥化したさらなる実施例を示す。実施例2においては、堆肥材料100に連続的に送気した場合(連続通気)、ON時間を15分、OFF時間を45分として送風機21を制御した場合(15/45)、ON時間を30分、OFF時間を30分として送風機21を制御した場合(30/30)、ON時間を60分、OFF時間を60分として送風機21を制御した場合(60/60)、ON時間を120分、OFF時間を120分として送風機21を制御した場合(120/120)、
図4に示す条件を満たす制御条件で温度変化に合わせて送風機21を制御した場合(制御1〜制御4)について、堆肥材料100の温度、消費電力量、N
2O、CH
4、NH
3の排出量を測定している。
図7〜
図10は、それぞれ実施例2の実験条件ごとの堆肥材料100の温度、消費電力量、N
2O及びCH
4の排出量、NH
3の排出量を示す。堆肥材料100の温度、N
2O、CH
4、NH
3の排出量については、堆肥材料100の堆肥化期間は7日間とした場合の実験値であるが、消費電力量については、堆肥化期間を30日間とした場合の試算値である。送風機21の作動時における単位体積当たりの堆肥材料100への送気量は、実施例1と同様に52L/min/m
3である。
【0077】
まず、堆肥材料100の温度の測定結果について検討する。実施例2においても、堆肥材料100の温度が60℃以上であった積算時間が3日(4320分)以上である場合に、堆肥の安全性が確保されたと判断する。
図7は、実験条件ごとに堆肥材料100の温度が60℃以上の積算時間を示すグラフである。
【0078】
図7に示すように、制御1〜制御4の場合、堆肥材料100の温度が60℃以上であった積算時間はいずれも3日(4320分)以上となっている。60/60に比べると、堆肥材料100の温度が60℃以上であった積算時間は144%〜150%増加している。連続通気と比較した場合、堆肥材料100の温度が60℃以上であった積算時間は201%〜209%増加している。したがって、
図4に示す制御条件を採用した場合、堆肥の安全性を確保できる。
【0079】
図8は、実験条件ごとの堆肥製造装置1の消費電力の試算値を示すグラフである。150m
3(60トン)の堆肥材料100を出力5.0kWの送風機21で30日間堆肥化した場合の消費電力量の試算値を示す。
【0080】
図8に示すように、制御1〜制御4においては、60/60に比べると消費電力量を57%〜62%削減している。また、連続通気と比較すると、消費電力量を79%〜81%削減している。したがって、
図4に示す制御条件を採用した場合、堆肥化に伴う消費電力量を削減できる。
【0081】
図9は、実験条件ごとの堆肥製造装置1から排出されるN
2Oの排出量、CH
4の排出量の合計を示すグラフである。
図9の“mg−CO
2”は、N
2O、CH
4の質量を同等の温室効果をもたらすCO
2の質量に換算した値を示し、“kg−dm”は、完全に乾燥した堆肥材料100の質量を示す。
図9に示すように、制御1〜制御4においては、60/60と比較してN
2Oの排出量、CH
4の排出量の合計排出量を14%〜45%削減している。また、連続通気と比較してN
2Oの排出量、CH
4の排出量の合計排出量を31%〜56%削減している。したがって、
図4に示す制御条件を採用した場合、堆肥化に伴うN
2Oの排出量及びCH
4の排出量の合計排出量を削減できる。
【0082】
図10は、実験条件ごとに堆肥製造装置1から排出されるNH
3の排出量を示すグラフである。
図10に示すように、制御1〜制御4においては、60/60と比較してNH
3の排出量を37%〜70%削減している。また、連続通気と比較してNH
3の排出量を85%〜93%削減している。したがって、
図4に示す制御条件を採用した場合、堆肥化に伴うNH
3の排出量を削減できる。
【0083】
なお、
図7〜10を参照すると、従来のON/OFF制御のうち15/45は、堆肥の安全性を確保しつつ、N
2O、CH
4、NH
3の排出量を抑制しており、比較的良好な結果が得られたように見受けられる。しかし、15/45は、堆肥材料100の発酵促進、乾燥効率の点で問題があるため、適切なON/OFF制御とはいえない。
【0084】
(実施例3)
実施例1、2では、実験室レベルの規模の堆肥製造装置1を用いて堆肥材料100を堆肥化した実施例を示したが、実施例3では、実機レベルの堆肥製造装置1を用いて堆肥材料100を堆肥化した実施例を示す。実施例3では、連続通気、単純間欠、新間欠の場合について、それぞれ堆肥温度が60℃以上の積算時間、水分減少率、積算消費電力量を測定した。単純間欠は、
図6の基準例と同じであり、60分ごとに送風機21のON、OFFを繰り返す。新間欠は、
図6の実験条件Fと同じであり、
図4に示す制御条件を満たすものである。
【0085】
以下、実験結果について説明する。
図11は、各制御条件における堆肥材料100が60℃以上の積算時間を示すグラフである。
図11に示すように、60℃以上の積算時間は、連続通気の場合、30.5時間、単純間欠の場合、88.2時間、新間欠の場合、540.3時間であった。新間欠の場合における60℃以上の積算時間は、連続通気の場合の約18倍、単純間欠の場合の約6倍であった。
【0086】
実験室レベルの堆肥製造装置1を用いた実施例2では、新間欠の場合における60度以上の積算時間は、連続通気の場合の約2倍、単純間欠の場合の約1.5倍であった。実機レベルの堆肥製造装置1に
図4に示す制御条件を適用した場合、実験室レベルの堆肥製造装置1と比較して、60度以上の積算時間が大幅に増加している。このことは、実機レベルの堆肥製造装置1に
図4に示す制御条件を適用した場合、堆肥の安全性を飛躍的に向上できることを示している。
【0087】
図12は、各制御条件における堆肥材料100の水分減少量を示すグラフである。堆肥を高品質化するには、堆肥中の水分量を適切にコントロールすることが重要である。堆肥の水分量が多い場合、堆肥からの汁垂れ、堆肥の重さのために、堆肥の取扱いが困難になり、堆肥の水分量が少ない場合、堆肥が乾燥しすぎて堆肥から粉塵が飛び散るためである。堆肥材料100に含まれる水分量は、堆肥の製造を開始する時点で約60%〜約70%であるが、仕上がりの時点で約40〜約60%に減少していることが好ましい。つまり、堆肥材料100の水分減少率は約15%〜約30%程度であることが好ましい。
【0088】
図12に示すように、堆肥材料100の水分減少率は、連続通気の場合、18.95%、単純間欠の場合、9.66%、新間欠の場合、22.04%であった。単純間欠の場合、堆肥材料100の水分減少率が不足しており、水分量が過剰な堆肥が得られるのに対し、連続通気、新間欠の場合、堆肥材料100の水分減少率が適切な範囲に収まっており、水分量が適切な堆肥を得ることができる。しかも、新間欠の場合、連続通気の場合よりも堆肥の水分量を効果的に減少させることができる。このことは、実機レベルの堆肥製造装置1に
図4に示す制御条件を適用した場合、堆肥に含まれる水分量を適正化できることを示している。
【0089】
図13は、各制御条件において送風機21が消費した積算消費電力量を示すグラフである。
図13に示すように、積算消費電力量は、連続通気の場合、970.7kWh、単純間欠の場合、478.1kWh、新間欠の場合、188.6kWhであった。新間欠の場合における積算消費電力量は、連続通気の場合の約1/5、単純間欠の場合の約2/5に抑えられている。このことは、実機レベルの堆肥製造装置1に
図4に示す制御条件を適用した場合、送風機21の消費電力を効果的に抑制でき、堆肥製造施設のランニングコストを抑制できることを示している。
【0090】
以上説明したように、実施の形態1に係る堆肥製造装置1においては、堆肥材料100の温度に応じて送風機21が間欠的に動作するよう制御しているため、堆肥材料100に対して堆肥化に必要十分な送気を実現しつつも、インバータ等の高価な部品を採用する必要がない。このため、堆肥材料100の堆肥化による消費電力量を抑制できると共に、堆肥製造装置1の導入に伴うコストを抑制できる。
【0091】
実施の形態1に係る堆肥製造装置1においては、堆肥の安全性、適正な水分量を確保しつつ、N
2O、CH
4、NH
3の排出量を抑制する最適な制御条件で送風機21の動作を制御しているため、堆肥の安全性、適正な水分量を確保しつつ、N
2O、CH
4、NH
3の排出量を抑制できる。
【0092】
実施の形態1に係る堆肥製造装置1においては、温度測定部30と制御部40とが無線の通信回路により通信可能に接続されているため、未使用時には温度測定部30を安全に保管できると共に、使用時には温度測定部30から制御部40へ温度測定データを安定して送信できる。
【0093】
実施の形態1に係る堆肥製造装置1においては、制御部40がネットワークを介して外部端末からの指示を受け付け、外部端末に堆肥化の状況を通知するように構成されている。このため、ユーザは、製造施設から離れた遠隔地にある事業所等において、堆肥材料100への送気の制御条件を調整したり、堆肥材料100の堆肥化の状況を把握したりできる。
【0094】
(実施の形態2)
図14を参照して、本発明の実施の形態2に係る堆肥製造装置1について説明する。実施の形態1においては、堆肥材料100への温度測定部30の設置、堆肥材料100の切り返しをユーザが実施していたが、これらの作業を堆肥製造装置1が実施するように構成してもよい。実施の形態2に係る堆肥製造装置1の基本的な構成は、実施の形態1に係る堆肥製造装置1と同一であるが、一対のレール70、温度測定クレーン80、堆肥クレーン90を備える点で実施の形態1とは異なっている。以下、両者の異なる部分を中心に説明する。
【0095】
一対のレール70は、発酵槽10の区画10a、10b、10c、10dが配置された方向と同じ方向に延在するように配置されている。レール70は、レール支持部71を介して発酵槽10の屋根18に支持されている。
【0096】
温度測定クレーン80は、レール70の長手方向、上下方向に温度測定部30を移動する。温度測定クレーン80は、レール70に支持され、レール70上を走行する走行部81と、走行部81の下端から下方に延びている筒状の延出部82と、を備える。延出部82は、その内部空間に温度測定部30を上下方向に移動可能に収容している。
【0097】
堆肥クレーン90は、堆肥材料100を把持し、把持した堆肥材料100を運搬する。堆肥クレーン90は、レール70に支持され、レール70上を走行する走行部91と、走行部91の下端から下方に延びており、上下方向に伸縮可能な伸縮部92と、を備える。また、堆肥クレーン90は、伸縮部92の先端に支持され、堆肥材料100を把持可能な一対の把持片93と、を備える。
【0098】
発酵槽10の支柱19に支持された制御部40は、温度測定クレーン80、堆肥クレーン90の動作を制御する。制御部40は、PLC41に記憶されたプログラム等に基づいて、温度測定クレーン80の走行部81及び堆肥クレーン90の走行部91の走行を制御する。
【0099】
制御部40は、PLC41に設定された設定時間ごとに、温度測定クレーン80の延出部82から温度測定部30を伸縮させ、発酵槽10内に載置された堆肥材料100の中心部に先端部が位置するように温度測定部30を移動させる。温度測定部30の温度測定が終了すると、制御部40は、温度測定部30を延出部82の内部空間に向けて後退させる。
【0100】
制御部40は、温度測定部30により測定された温度に基づいて、堆肥材料100の切り返しが必要と判断した場合、堆肥クレーン90が堆肥材料100の切り返しを行うように指示する。より詳細に説明すると、制御部40は、堆肥クレーン90の伸縮部92を伸長させ、堆肥材料100を一対の把持片93で把持させる。そして、制御部40は、一対の把持片93で堆肥材料100を把持したまま伸縮部92を短縮させた後、走行部91をレール70上で走行させ、堆肥クレーン90を次なる区画に移動させる。次いで、制御部40は、堆肥クレーン90の伸縮部92を発酵槽10内に向けて伸長させ、一対の把持片93から堆肥材料100を解放させる。制御部40は、堆肥クレーン90に上記の動作を繰り返させ、堆肥クレーン90が堆肥材料100を別の区画に移動するように制御する。
【0101】
以上説明したとおり、実施の形態2に係る堆肥製造装置1は、レール70に沿って移動する温度測定クレーン80、堆肥クレーン90を備え、温度測定クレーン80は、設定時間ごとに堆肥材料100の温度を測定する温度測定部30を移動させ、堆肥クレーン90は、堆肥材料100の温度の測定結果に基づいて堆肥材料100の切り返しを実施するように構成されている。このため、実施の形態2に係る堆肥製造装置1においては、ユーザが堆肥材料100への温度測定部30の挿入や堆肥材料100の切り返しを行うことなく、堆肥材料100の堆肥化を行うことができる。
【0102】
そして、本発明はこれに限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0103】
(変形例)
上記実施の形態においては、制御部40は2つの発酵槽10に載置された堆肥材料100への送気を制御していたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、制御部40は、1つの発酵槽10に載置された堆肥材料100への送気を制御してもよく、3つ以上の発酵槽10に載置された堆肥材料100への送気を制御してもよい。
【0104】
上記実施の形態においては、発酵槽10は4つの区画に分けられていたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、発酵槽10に3つ以下の区画を設けてもよく、5つ以上の区画を設けてもよい。
【0105】
上記実施の形態においては、発酵槽10の1つの区画あたり3本の送気管22を設けていたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、発酵槽10に2本以下の送気管22を設けてもよく、4本以上の送気管22を設けてもよい。堆肥材料100に均一に送気するためには、送気管22の数が多い方が好ましい。
【0106】
上記実施の形態においては、温度計31は熱電対から構成されていたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、温度計31は、赤外線温度計、抵抗温度計等であってもよい。
【0107】
上記実施の形態においては、温度計31は堆肥材料100の中心部の温度を1箇所のみ測定するようしていたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、温度計31は堆肥材料100の表面を測定するようにしてもよいし、堆肥材料100の複数箇所の温度を測定し、複数の測定温度から平均値、中央値等の代表値を算出してもよい。堆肥材料100の表面温度を測定する場合には、過去の学習データに基づいて作成した階層型ニューラルネットワーク等の予測モデルを用いて、堆肥材料100の中心部の温度を予測してもよい。
【0108】
上記実施の形態においては、堆肥製造装置1に設けられた制御部40が送風機21の動作を制御していたが、本発明はこのようなものに限定されない。堆肥製造装置1から遠方に離れた位置に設置されたコンピュータ、サーバ等にプログラムを記憶しておき、コンピュータ、サーバ等からの指示に基づいて、各送風機21の動作を制御するように構成してもよい。
【0109】
上記実施の形態2においては、制御部40の内部に記憶されたプログラムに基づいて、温度測定クレーン80、堆肥クレーン90の動作が制御されているが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、スマートフォン、タブレット等の外部端末から制御部40への指示に基づいて、温度測定クレーン80、堆肥クレーン90の動作を制御するように構成してもよい。
【0110】
上記実施の形態においては、堆肥材料100を発酵槽10の区画10aに直接搬入していたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、発酵槽10に隣接して地下ピットを設けておき、一旦、地下ピットに堆肥材料100を搬入して、保管するようにしてもよい。この場合、堆肥材料100の堆肥化を実施する前に、堆肥クレーン90等を用いて地下ピットから発酵槽10の区画10aに堆肥材料100を搬入してもよい。
【0111】
上記実施の形態2においては、堆肥材料100の温度の測定結果に基づいて堆肥材料100の切り返しが必要と判断された場合、すぐに切り返しを実施していたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、堆肥材料100の切り返しが必要と判断された場合、堆肥クレーン90をそのまま夜間まで待機させ、電力が安価な夜間に切り返しを実施してもよい。
【0112】
上記実施の形態においては、1時間ごとに堆肥材料100の温度を測定し、堆肥材料100の温度の測定結果に応じて、温度測定後の1時間におけるON時間、OFF時間を調整していたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、10分〜1時間の範囲内に設定された設定時間ごとに堆肥材料100の温度を測定し、堆肥材料100の温度の測定結果に応じて、温度測定後の設定時間におけるON時間、OFF時間の配分を調整してもよい。
【0113】
上記実施の形態においては、堆肥製造装置1を堆肥材料100への送気を行うために用いていたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、堆肥製造装置1の制御部40を堆肥材料100への送気を行う送風機21の制御のみならず、家畜、実験動物の飼育施設の換気を行う送風機等の制御を併せて行うように構成してもよい。
【0114】
上記実施の形態においては、制御部40はPLC41を備えたが、制御部40は、PLC41に代えてコンピュータを備えても良い。この場合、コンピュータは、メモリとプロセッサを備える。プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより上述した制御動作を行う。
【0115】
上記実施の形態においては、制御部40が実行するプログラムが、制御部40内のメモリに予め記憶されているものとして説明した。しかし、上述の処理動作を実行させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されてもよい。この場合、プログラムがコンピュータにインストールされることにより、上述の処理を実行する制御部40が構成される。
【0116】
上記の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【0117】
本出願は、2016年3月29日に出願された日本国特許出願2016−64969号に基づくものであり、その明細書、特許請求の範囲、図面および要約書を含むものである。上記日本国特許出願における開示は、その全体が本明細書中に参照として含まれる。