(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6889959
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ウェハチャック及びプローバ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20210607BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-191036(P2020-191036)
(22)【出願日】2020年11月17日
【審査請求日】2020年11月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399028078
【氏名又は名称】ハイソル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳井 博文
【審査官】
堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−089680(JP,A)
【文献】
特開2015−049137(JP,A)
【文献】
特開2011−249695(JP,A)
【文献】
特開2012−142387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを載置する金属製チャックトップと、
前記ウェハに接触させるバネ式コンタクトプローブと、
前記金属製チャックトップと前記バネ式コンタクトプローブとを絶縁させる絶縁部材と、
前記ウェハを加熱冷却する加熱冷却ブロックとを備え、
前記バネ式コンタクトプローブは、前記絶縁部材を介して前記金属製チャックトップに形成された第1開口部に挿入されており、
前記バネ式コンタクトプローブは、電極ピンと、該電極ピンを進退可能に挿入する筒状ホルダーと、前記電極ピンと前記筒状ホルダーとを連結し、前記ウェハと前記電極ピンとの接触により圧縮状態になるバネとを備え、
前記加熱冷却ブロックと前記筒状ホルダーとは、接触している
ことを特徴とするウェハチャック。
【請求項2】
請求項1に記載のウェハチャックであって、
前記金属製チャックトップと前記加熱冷却ブロックとの間には、2枚の絶縁板で挟まれた金属板が介挿されており、
前記金属板には、前記絶縁部材が挿入される第2開口部が形成されている
ことを特徴とするウェハチャック。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウェハチャックと、
前記金属製チャックトップを介して前記ウェハに電流を流し、前記ウェハに接触した前記バネ式コンタクトプローブの電位を測定する計測装置と
を備えることを特徴とするプローバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハを載置するウェハチャック及びプローバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のICチップが形成されたウェハの電気特性試験では、ウェハとウェハチャックとの接触抵抗が測定値に与える影響を低減させる必要がある。そのため、ウェハに電流を流すプローブの他に、ウェハの電位を計測するプローブを設けるケルビン接続が多用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ステージの全面に複数のコンタクトピンを配列すると共に、可動するコンタクト片によりコンタクトピンを選択的に押圧する半導体試験装置が開示されている。これにより、このコンタクト片に対応する特定部位(チップ)でコンタクトピンを半導体ウェハの裏面に当接させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-311799号公報(
図2、段落0001,0019,0029)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の半導体試験装置では、ステージの全面に複数のコンタクトピンを配列する必要性から、ステージを絶縁体で形成している。このため、特許文献1に記載の半導体試験装置では、ウェハチャックを用いて、測定電位を安定にするときに必要な、金属のチャックトップや2枚の絶縁物で挟まれた金属ガードを設けることができない。なお、特許文献1に記載の技術は、ウェハに形成されたチップを個別に試験するものなので、ウェハ温度を変える温度試験には向かない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、載置されたウェハの電位を安定にすることができるウェハチャック及びプローバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のウェハチャックは、ウェハ(1)を載置する金属製チャックトップ(2)と、前記ウェハに接触させるバネ式コンタクトプローブ(6)と、前記金属製チャックトップと前記バネ式コンタクトプローブとを絶縁させる絶縁部材(例えば、絶縁パイプ7)と
、前記ウェハを加熱冷却する加熱冷却ブロックとを備え、前記バネ式コンタクトプローブは、前記絶縁部材を介して前記金属製チャックトップに形成された第1開口部(2a)に挿入されて
おり、前記バネ式コンタクトプローブは、電極ピンと、該電極ピンを進退可能に挿入する筒状ホルダーと、前記電極ピンと前記筒状ホルダーとを連結し、前記ウェハと前記電極ピンとの接触により圧縮状態になるバネとを備え、前記加熱冷却ブロックと前記筒状ホルダーとは、接触していることを特徴とする。なお、括弧内の符号や文字は、実施形態において付した符号等であって、本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、載置されたウェハの電位を安定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態であるウェハチャックの構成図である。
【
図2】本発明の実施形態であるウェハチャックの外観図である。
【
図3】バネ式コンタクトプローブの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態であるチャックユニットの構成図であり、
図2は、その外観図である。
ウェハチャック100は、ウェハ1を載置した状態で、電気特性(電圧電流特性)を計測するために使用される。ウェハチャック100では、計測時にケルビン接続を行うため、ウェハチャック100の表面とウェハ1の裏面との接触抵抗の影響が少ない。また、ウェハチャック100と計測装置20とによってプローバ装置200が構成される。なお、ウェハ1には、裏面側のSi基板で繋がる複数のICチップ1aが形成されている。
【0012】
ウェハチャック100は、チャックトップ2と、インシュレータ3と、ガード4と、インシュレータ5と、加熱冷却ブロック8とが積層されたものである。チャックトップ2、インシュレータ3、ガード4及びインシュレータ5の中心部には、開口部2a,3a,4a,5aが形成されており、その開口部2a,3a,4a,5aには、加熱冷却ブロック8の上面に達する絶縁パイプ7が挿入されている。その絶縁パイプ7には、バネ式コンタクトプローブ6が挿入されている。なお、加熱冷却ブロック8は、ペルチェモジュール10の上面に積層されている。
【0013】
チャックトップ2は、ウェハ1を載置する円形状の金属板(例えば、OFC(Oxygen-Free Copper))である。なお、図示しないが、チャックトップ2には、半導体を吸着する吸着溝や空気を吸入する貫通孔等が形成されている。インシュレータ3,5は、ガード4を挟むように形成された絶縁セラミック板である。ガード4は、SUSの金属薄板であり、接地電位等に維持することにより、チャックトップ2やウェハ1の電位変動を少なくする。
【0014】
加熱冷却ブロック8は、OFCにより構成されており、その下側に配設されたペルチェモジュール10により加熱・冷却される。これにより、ウェハ1の全面を加熱・冷却することができる。なお、加熱冷却ブロック8の内部に冷却空気を通流する通流孔(不図示)が形成されることもある。加熱冷却ブロック8の側面には、温度センサ9が挿入されており、ペルチェモジュール10を用いた温度制御を可能にしている。
【0015】
図3は、バネ式コンタクトプローブの模式図である。
バネ式コンタクトプローブ6は、ホルダー6aと、電極ピン6bと、バネ部材6cとを備える。ホルダー6aは、電極ピン6bが挿入される有底筒状の金属部材である。電極ピン6bは、略半球状の電極と当接部6eとが形成された金属の軸体である。ホルダー6aの内周面の高さ方向の中間部には、電極ピン6bの当接部6eが上下動する凹部6fが形成されている。バネ部材6cは、コイルばねであり、圧縮状態で、一端が当接部6eに当接し、他端がホルダー6aの凹部下部6gに当接する。これにより、電極ピン6bの先端は、ウェハ1(
図1)の自重によって押圧されると、ホルダー6aに対して退行(ホルダー6a内に没入)する。
【0016】
図1の説明に戻り、計測装置20は、不図示のCPU(Central Processing Unit)及びA/D変換器を備え、記憶部に格納された制御プログラムを実行することにより、測定機能と、ペルチェモジュール10を温度制御する制御機能とを実現する。
【0017】
計測装置20には、ウェハ1の上面に接触する電流用プローブ21および電圧用プローブ22と、チャックトップ2に接続される接続線23と、バネ式コンタクトプローブ6に接続される接続線24とが繋がれている。電流用プローブ21は、ウェハ1に形成されたICチップ1aの電極に接続する。電圧用プローブ22は、ICチップ1aの同一電極に接触されることもあるが、電気的に接続された他の電極に接触されることもある。チャックトップ2及びバネ式コンタクトプローブ6は、ウェハ1の裏面に接触している。
【0018】
計測装置20は、電流用プローブ21とチャックトップ2とを介して、ウェハ1に電流を流す。ウェハ1に電流を流した状態で、バネ式コンタクトプローブ6を用いて、ウェハ1の裏面の電位を測定することができる。このウェハ1の裏面の電位は、チャックトップ2とウェハ1の裏面との間の接触抵抗の影響を受けない。
【0019】
また、計測装置20は、ウェハ1に電流を流した状態で、バネ式コンタクトプローブ6と電圧用プローブ22との電位差を測定することができる。この電位差は、ウェハ1の裏面とチャックトップ2との間の接触抵抗と、電流用プローブ21とICチップ1aの電極との間の接触抵抗との双方の影響を受けない。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のウェハチャック100及びプローバ装置200によれば、ウェハ1に電流を流した状態で、バネ式コンタクトプローブ6を用いて測定したウェハ1の裏面の電位は、チャックトップ2とウェハ1の裏面との間の接触抵抗の影響を受けない。
【0021】
また、チャックトップ2は、金属製なので、ウェハ1の裏面電位が略一定になる。また、チャックトップ2の下面には、インシュレータ3、ガード4及びインシュレータ5の積層物11を設けているので、ガード4を接地電位にすることにより、チャックトップ2及びウェハ1の電位が安定する。
【0022】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形が可能である。
(1)前記実施形態の絶縁パイプ7は、チャックトップ2、インシュレータ3、ガード4及びインシュレータ5に開口部2a,3a,4a,5aを形成し、開口部2a,3a,4a,5aに絶縁パイプ7を挿入していたが、チャックトップ2及びガード4に開口部2a,4aを形成し、開口部2a,4aに絶縁部材を挿入すれば足りる。また、絶縁部材を用いて、バネ式コンタクトプローブ6を開口部2a,4aの内部で支持すれば足りる。
【0023】
(2)前記実施形態では、ペルチェモジュール10を用いて加熱冷却ブロック8を加熱冷却したが、平面ヒータや誘導加熱装置等を用いて、ペルチェモジュール10の最大温度仕様値よりも高い温度まで加熱しても構わない。なお、バネ式コンタクトプローブ6のバネ部材6cは、200℃程度までであれば、例えば、SUS系の材質で足りるが、200℃以上の高温に耐える所定の耐熱合金にすることが好ましい。
【0024】
(3)前記実施形態では、チャックトップ2の下面にインシュレータ3、ガード4及びインシュレータ5の積層物11を配設していたが、積層物11を配設しなくても構わない。チャックトップ2が金属なので、チャックトップ2の電位に対するウェハ1の電位変動が少ない。
【符号の説明】
【0025】
1 ウェハ
1a ICチップ
2 チャックトップ
2a 開口部(第1開口部)
3,5 インシュレータ(絶縁板)
3a,4a,5a 開口部(第2開口部)
4 ガード(金属板)
6 バネ式コンタクトプローブ
7 絶縁パイプ(絶縁部材)
10 ペルチェモジュール
11 積層物
20 計測装置
100 ウェハチャック
200 プローバ装置
【要約】
【課題】載置されたウェハの電位を安定にする。
【解決手段】ウェハ1を載置する金属製チャックトップ2と、ウェハ1に接触させるバネ式コンタクトプローブ6と、金属製チャックトップ2とバネ式コンタクトプローブ6とを絶縁させる絶縁パイプ7と、金属製チャックトップ2を介してウェハ1に電流を流し、ウェハ1に接触したバネ式コンタクトプローブ6の電位を測定する計測装置とを備え、バネ式コンタクトプローブ6は、絶縁パイプ7を介して金属製チャックトップ2に形成された第1開口部2aに挿入されている。
【選択図】
図1