(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6889960
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】防災用レベル表示体
(51)【国際特許分類】
G09F 7/00 20060101AFI20210607BHJP
G01F 23/04 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
G09F7/00 M
G01F23/04 F
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-193785(P2020-193785)
(22)【出願日】2020年11月20日
【審査請求日】2020年11月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517348905
【氏名又は名称】藤田 憲弘
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】特許業務法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 憲弘
【審査官】
金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−047167(JP,A)
【文献】
実開昭49−133651(JP,U)
【文献】
実開昭57−075523(JP,U)
【文献】
実開昭52−030156(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3165949(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0093940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 1/00 − 27/00
G01F 23/00 − 23/04
G01C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形断面の柱体の表面に固定可能な長尺状の表示体であって、
この表示体の表面には、長手方向に亙る目盛表示部と情報表示部とが境界部を挟んで交互に配設され、偶数本の境界部が等間隔に設けられており、かつ、前記情報表示部には、前記目盛表示部の各レンジに対応した情報が含まれている一方、
前記柱体の表面に表示体が固定されるとき、柱体の側方平面視における全方位から前記境界部の少なくとも一つが視認可能に構成され、前記目盛表示部および前記情報表示部の少なくとも一部が何れも視認可能であることを特徴とする防災用レベル表示体。
【請求項2】
円形断面の柱体の表面に、軸方向に亙る目盛表示部と情報表示部とが境界部を挟んで交互に配設され、偶数本の境界部が等間隔に設けられており、かつ、前記情報表示部には、前記目盛表示部の各レンジに対応した情報が含まれている一方、
前記柱体の側方平面視における全方位から前記境界部の少なくとも一つが視認可能に構成され、前記目盛表示部および前記情報表示部の少なくとも一部が何れも視認可能であることを特徴とする防災用レベル表示体。
【請求項3】
目盛表示部の目盛が境界部に接していることを特徴とする請求項1または2記載の防災用レベル表示体。
【請求項4】
目盛表示部または情報表示部の少なくとも一部に反射材、発光材、蓄光材、蛍光材の少なくとも一つを含む暗中視認材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の防災用レベル表示体。
【請求項5】
表示体の本体が分解および組立可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の防災用レベル表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災用具の改良、更に詳しくは、子供や高齢者であっても、全方位から水位およびその危険度を直観的に視認することができ、自己判断によって水位に応じた避難等の適切な対策を講じることができる防災用レベル表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の地球温暖化の影響による気候変動によって、ゲリラ豪雨や線状降水帯などが発生しやすく、集中豪雨による洪水被害が頻発するようになってきており、もはや「数十年に一度」や「記録的」の用語ですら日常的になりつつある。
【0003】
特に、最近の集中豪雨は短時間での降水量が極めて多く、地形によっては、雨水が集まって水位が急激に増加する場所もあり、家屋の倒壊や流失など、人命被害にまで発展することも多い。
【0004】
このような状況の中、自分の命を自分で守る行動を取るためには、自治体が発表する避難勧告や避難指示を待っているだけでは逃げ遅れるおそれもあり、浸水の初期段階における自己判断が重要となる。
【0005】
通常、浸水深が50cm以上にもなると、成人でも歩行が困難になるといわれているが、道路が冠水し始めると路面が見えなくなってしまうため、屋外の正確な水位が把握できず、まだ十分に避難に間に合うのか、逆に屋外は既に危険であるから待機あるいは建物の上階に避難すべきなのかを判断することができない。
【0006】
そこで、従来、目盛を付したシート状の部材が開示されていることから(例えば、特許文献1−3参照)、目盛によって水位を把握できれば良いのであれば、これらの部材を屋外に設置することで解決できるようにも思える。
【0007】
しかしながら、単に目盛を付した構造では、屋外の水位が把握できたとしても、子供や高齢者などにとっては、水位が示す危険度を直ちに理解することは困難であり、自己判断によって水位に応じた避難等の適切な対策を講じることができないという問題がある。
【0008】
また、屋外に水位が表示がされていたとしても、表示を視認できる角度や位置が限定されてしまうため、建物の中や車の中などの移動できない固定された位置からの視点ではうまく見えないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭52−126846号公報
【特許文献2】登録実用新案第3048709号公報
【特許文献3】登録実用新案第3146875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、集中豪雨などの災害時に迅速な避難行動を取るための対策について研究をしていたところ、現在の水位状況を誰でも迅速かつ直観的に把握することができれば、子供や高齢者であっても避難の可否の自己判断材料にできるであろうとの着想を得た。そして、全く新しい構造によって同作用を得られないかと思案した結果、道路上に多数設置された道路標識やカーブミラーなどの柱体のデッドスペースを有効活用して情報伝達媒体にするという解決策を思い付いた。
【0011】
そこで、本発明者は、誰にでも容易に理解できるように、水位の目盛だけでなく、目盛が意味する情報を同時に提供するとともに、道路標識の柱体が通常は円形断面であるという幾何学的特徴にも着目し、全方位から視認可能にする配置構造を採用してみたところ、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0013】
即ち、本発明は、円形断面の柱体Pの表面に固定可能な長尺状の表示体であって、
この表示体の表面には、長手方向に亙る目盛表示部1と情報表示部2とを境界部3を挟んで交互に配設して、
偶数本の境界部を等間隔に設け、かつ、前記情報表示部2には、前記目盛表示部1の各レンジに対応した情報を含む一方、
前記柱体Pの表面に表示体が固定されるとき、柱体Pの側方平面視における全方位から前記境界部3の少なくとも一つを視認可能に構成して、前記目盛表示部1および前記情報表示部2の少なくとも一部を何れも視認可能にするという技術的手段を採用したことによって、防災用レベル表示体を完成させた。
【0014】
また、本発明は、円形断面の柱体Pの表面に、軸方向に亙る目盛表示部1と情報表示部2とを境界部3を挟んで交互に配設して、
偶数本の境界部を等間隔に設け、かつ、前記情報表示部2には、前記目盛表示部1の各レンジに対応した情報を含む一方、
前記柱体Pの側方平面視における全方位から前記境界部3の少なくとも一つを視認可能に構成して、前記目盛表示部1および前記情報表示部2の少なくとも一部を何れも視認可能にするという技術的手段を採用することもできる。
【0015】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、目盛表示部1の目盛を境界部3に接するようにするという技術的手段を採用することもできる。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、目盛表示部1または情報表示部2の少なくとも一部に反射材、発光材、蓄光材、蛍光材の少なくとも一つを含む暗中視認材を設けるという技術的手段を採用することもできる。
【0018】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、表示体の本体を分解および組立可能に構成するという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、表示体の表面には、目盛表示部と情報表示部とを境界部を挟んで交互に配設して、かつ、前記情報表示部には、前記目盛表示部の各レンジに対応した情報を含む一方、
柱体の側方平面視における全方位から前記境界部の少なくとも一つを視認可能に構成したことによって、前記目盛表示部および前記情報表示部の少なくとも一部を何れも同時に視認することができる。
【0020】
したがって、本発明の防災用レベル表示体によれば、子供や高齢者であっても、全方位から水位およびその危険度を直観的に視認することができ、自己判断によって水位に応じた避難等の適切な対策を講じることができる。
【0021】
また、全ての方向から目盛表示部を視認することができるため、冬季における積雪量や、土砂災害時における土石流などの土砂の堆積量などを把握することもできる。更にまた、路上において人の身長を把握することもできるため、万一の場合の防犯対策効果を得ることもできることから、産業上の利用価値は頗る大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の防災用レベル表示体を表わす展開正面図である。
【
図2】本発明の実施形態の防災用レベル表示体の使用状態を表わす正面図である。
【
図3】本発明の実施形態の防災用レベル表示体の視認範囲を表わす説明上面図である。
【
図4】本発明の実施形態の防災用レベル表示体の変形例を表わす展開正面図である。
【
図5】本発明の実施形態の防災用レベル表示体の変形例の視認範囲を表わす説明上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。
図1中、符号1で指示するものは目盛表示部であり、符号2で指示するものは情報表示部である。また、符号3で指示するものは境界部である。
【0024】
本発明の防災用レベル表示体は、柱体Pの表面に直接表示して構成される場合と、柱体Pの表面に、表示を有する別部材を固定して構成される場合とがある。柱体Pは円形断面であって、道路標識やカーブミラー、電柱、各種構造物の支柱などの路上に設置されているものが好ましい。
【0025】
まず、柱体Pの表面に、表示を有する別部材を固定して構成される場合について説明する。この表示体は、円形断面の柱体Pの表面に固定可能な長尺状(本実施形態では約200cm)の表示体であって、この表示体の表面には、長手方向に亙る目盛表示部1と情報表示部2とを境界部3を挟んで交互に配設する。
【0026】
また、この表示体には、プラスチックやゴム、金属などを使用材料とする薄手の部材を採用することができ、施工性や耐久性に応じて軟質なものでも硬質なものでも良い。そして、その表面に塗装や印刷(インクジェット等)、貼着加工、凹凸加工(エンボス等)、刻印、切削加工などによって、目盛表示部1および情報表示部2を形成することができる。
【0027】
更にまた、柱体Pへの固定手段には、接着剤や、結束バンド、ネジやボルト、ホック、リベット等の取付具、マグネット、種々の嵌合構造、掛合構造などを採用することができる。
【0028】
また、本実施形態では、目盛表示部1または情報表示部2の少なくとも一部に反射材、発光材、蓄光材、蛍光材の少なくとも一つを含む暗中視認材を設けることができる。具体的には、材料の生地に暗中視認材(粉粒状)を混錬したり、ペースト状にして表面に塗布したりして付着させることができる。こうすることによって、夜間における視認性を高めるとともに、自動車などの衝突を防止することもできる。
【0029】
なお、目盛表示部1の目盛のデザインはできるだけ遠方からでも視認できるように、シンプルで大きくて太い文字や線が好ましく、目盛の間隔も細かすぎず、5〜25cm間隔が好ましい。また50cm、100cmなどの主要値を太くしたり色を変えたりして目立たせることもでき、数値が見えない場合を補助することができる。
【0030】
そして、前記情報表示部2には、前記目盛表示部1の各レンジに対応した情報が含まれている。具体的には、目盛表示部1における0〜20cmのレンジでは、子供や高齢者でも避難が可能であるとして、情報表示部2には、例えば「こどもひなん水位」と表示し、目盛表示部1における20〜50cmのレンジでは、成人であれば避難が可能であるとして、情報表示部2には、「おとなひなん水位」と表示することができる。また、目盛表示部1における50cm以上のレンジでは、屋外への避難が困難であるとして、情報表示部2には、「きけん」「ひなん不可」などと表示したり、家屋内での注意を喚起するために「1階床上浸水位」と表示することもできる。
【0031】
なお、これらの水位を示す目盛表示部1のレンジと情報表示部2との対応関係は、例えば、坂道などの地形によっては、水位が低くても水の流れが速くて避難を困難にするといった他の要因が関係してくる場合もあるため、設置箇所に応じて適宜調整することが好ましい。
【0032】
また、情報表示部2に表示する情報は文字情報に限らず、着色することによって視認効果を高めることができる。例えば、下端から順に、青、黄、赤のように、信号機に即した色分けにすることもでき、より直観的に現況を把握することができる。
【0033】
更にまた、情報表示部2の余白には、最寄りの避難所への経路や距離、地図などの案内情報や、二次元バーコード、災害に関する知識の案内などの防災情報などを表示することもでき、平時における情報掲示によって日頃から防災意識を啓発することができる。
【0034】
そして、
図2に示すように、前記柱体Pの表面に表示体が固定されるとき、柱体Pの側方平面視における全方位から前記境界部3の少なくとも一つが視認可能に構成され、前記目盛表示部1および前記情報表示部2の少なくとも一部が何れも視認可能である。
【0035】
即ち、
図3に示すように、図中に例示した矢印の方向から視認した場合、どちらであっても前記境界部3の少なくとも一つを視認することができるため、必然的に、境界部3に接する目盛表示部1および前記情報表示部2の少なくとも一部を何れも同時に視認することができる。
【0036】
特に、本実施形態では、目盛表示部1の目盛を境界部3に接するように構成することができ、境界部3が視認できれば、直ちに目盛によって水位を把握することができる。
【0037】
また、本実施形態では、偶数本の境界部3を等間隔に設けることができる。境界部3の位置は柱体Pの設置位置によって偏倚させることもできるが、柱体Pは円形断面という対称性のある幾何学的特徴を有していることから、全方位から確実に視認可能な等間隔が好ましい。また、目盛表示部1と情報表示部2とは、通常は同数となるから、境界部3は偶数本となる。
【0038】
なお、柱体Pの限られた周面領域において目盛表示部1と情報表示部2を多く設け過ぎると却って煩雑な表示になってしまうため、柱体Pの直径が10cm以内であれば、目盛表示部1と情報表示部2とが各4箇所以内、境界部3が8本以内であることが好ましい。なお、
図4および
図5に示すように、目盛表示部1と情報表示部2とを各3箇所、境界部3を6本に設けた場合であっても、全方位から境界部3を視認可能にすることによって、目盛表示部1および情報表示部2の少なくとも一部を何れも同時に視認することができる。
【0039】
また、本実施形態では、表示体の本体を分解および組立可能に構成することができる。具体的には、縦方向または横方向に複数パーツに分解できるようにすることによって、運搬性や施工性、保管性を向上させることができる。
【0040】
次に、本発明の防災用レベル表示体が、柱体Pの表面に直接表示して構成される場合について説明する。
【0041】
この表示体の構成の場合は、円形断面の柱体Pの表面に、軸方向に亙る目盛表示部1と情報表示部2とが境界部3を挟んで交互に配設する。そして、前記情報表示部2には、前記目盛表示部1の各レンジに対応した情報が含まれている。この際、柱体Pの表面に直接的に、塗装や印刷、貼着加工、凹凸加工、刻印、切削加工などによって、目盛表示部1および情報表示部2を形成することができる。
【0042】
そして、前記柱体Pの側方平面視における全方位から前記境界部3の少なくとも一つが視認可能に構成され、前記目盛表示部1および前記情報表示部2の少なくとも一部を何れも同時に視認可能に構成することができる。
【0043】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、目盛表示部1および情報表示部2の形状やデザインは視認性を向上させるために適宜変更することができる。
【0044】
また、境界部3の形状は直線状に限らず、曲線状のものであっても良いし、明確な線分の有無を問わず、例えば、水平方向の帯状の色分けの中に目盛が直接表示されているような連続的ないし不連続的な構成であっても良く、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0045】
1 目盛表示部
2 情報表示部
3 境界部
P 柱体
【要約】
【課題】 子供や高齢者であっても、全方位から水位およびその危険度を直観的に視認することができ、自己判断によって水位に応じた避難等の適切な対策を講じることができる防災用レベル表示体を提供すること。
【解決手段】 円形断面の柱体Pの表面に固定可能な長尺状の表示体であって、
この表示体の表面には、長手方向に亙る目盛表示部1と情報表示部2とを境界部3を挟んで交互に配設して、かつ、前記情報表示部2には、前記目盛表示部1の各レンジに対応した情報を含む一方、
前記柱体Pの表面に表示体が固定されるとき、柱体Pの側方平面視における全方位から前記境界部3の少なくとも一つを視認可能に構成して、前記目盛表示部1および前記情報表示部2の少なくとも一部を何れも視認可能にする。
【選択図】
図2