特許第6889969号(P6889969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6889969
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】防護ネットおよび衝撃吸収柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   E01F7/04
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-55956(P2020-55956)
(22)【出願日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 義則
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 眞輝
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】川端 聡史
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−88704(JP,A)
【文献】 特開2011−153491(JP,A)
【文献】 特開2002−302911(JP,A)
【文献】 実開昭57−128612(JP,U)
【文献】 特開2003−261910(JP,A)
【文献】 特開2005−307572(JP,A)
【文献】 特開2013−155493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撓み変形により落下物を捕捉する可撓性の防護ネットであって、
合成繊維製のネット状物である繊維ネットと、
前記繊維ネットの受撃面に重合して配置したネットカバーと、
前記ネットカバーを繊維ネットに取り付けた複数の接続具とよりなり、
受撃時に前記ネットカバーが落下物を包み込むように、ネットカバーの取付部が繊維ネットから分離可能であることを特徴とする、
防護ネット。
【請求項2】
前記ネットカバーが繊維ネットよりも大きい剛性と繊維ネットよりも小さな可撓性を併有した合成繊維製のネット状物またはシート状物であることを特徴とする、請求項1に記載の防護ネット。
【請求項3】
前記ネットカバーの伸度が繊維ネットの伸度よりも小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載の防護ネット。
【請求項4】
前記ネットカバーの網目が繊維ネットの網目よりも小さい寸法関係にあることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の防護ネット。
【請求項5】
前記繊維ネットは該繊維ネットの周縁の網目に挿通して取り付けた弾性変形が可能な枠ロープを具備し、枠ロープを介して繊維ネットの周縁を保持することを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の防護ネット。
【請求項6】
前記枠ロープの破断伸度が繊維ネットの破断伸度よりも大きい関係にあることを特徴とする、請求項5に記載の防護ネット。
【請求項7】
間隔を隔てて立設した支柱間に防護ネットを横架した衝撃吸収柵であって、
前記請求項1乃至6の何れか一項に記載の防護ネットを具備し、
防護ネットを構成する繊維ネットの左右側辺を隣り合う支柱に支持させ、
防護ネットを構成するネットカバーを斜面山側に位置させ、
受撃時にネットカバーの取付部が繊維ネットから分離し、分離したネットカバーが落下物を包み込んで繊維ネットに捕捉されるように構成したことを特徴とする、
衝撃吸収柵。
【請求項8】
隣り合う支柱の上部間に上辺ロープを張設し、該上辺ロープに繊維ネットの上辺を懸架したことを特徴とする、請求項7に記載の衝撃吸収柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は落石、土砂崩落、雪崩等の落下物を捕捉する衝撃吸収技術に関し、特に落下物の捕捉性を改善した合成繊維製の防護ネットおよび衝撃吸収柵に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2は、合成樹脂、化学繊維等からなる網糸をネット状に編成した合成繊維製の防護ネットを開示している。
合成繊維製の防護ネットは、ワイヤロープや金網等の金属製ネットと比べて、柔らかく重量が軽いため運搬取扱性に優れ、受撃時にネットが斜面谷側へ大きく変形することで衝撃エネルギーを吸収するといった特性を有している。
特許文献3は、粗目ネットの斜面山側に細目ネットを重ね合わせて衝撃力の分散性能を高めた合成繊維製の防護ネットを開示している。
粗目ネットは衝撃吸収を主目的とし、細目ネットは小石等の通過阻止を主目的としていて、これらの各ネットの周縁を隣り合う支柱に取り付けて張設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−261910号公報
【特許文献2】特開2005−307572号公報
【特許文献3】特開2013−155493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防護ネットには次のような問題点がある。
<1>一般に合成繊維製の防護ネットは、金属製ネットと比べて可撓性に優れるため、受撃時に防護ネットが岩塊等の落下物の表面の凹凸形状に追従して自由に変形することで、防護ネットに切創が生じ易い。
さらに、落下物が回転しながら防護ネットに衝突することで、防護ネットの受撃面に回転摩擦熱が生じる。
このように従来の合成繊維製の防護ネットは、岩塊等の落下物の回転を考慮した耐性構造にはなっていないため、落下物の衝突時にネット素材が破れ易く、防護ネットが有する本来の捕捉性能を十分に発揮することができない。
<2>単に網目寸法の異なる2枚の合成繊維製ネットを重ね合わせただけの特許文献3の防護ネットも、落下物の回転を考慮した構造ではないため、先行して細目ネットが破れた直後に露出した粗目ネットが破れてしまい、本来の捕捉性能を発揮することができない。
<3>合成繊維製の防護ネットの切創強度を高めるには、例えば網糸を太径にする方法とネット素材に耐切創性に優れた特殊繊維を用いる方法が考えられる。
前者の方法は防護ネットの製作コストが嵩む問題と、重量が増して取扱性が悪くなり、後者の方法は防護ネットの製作コストが嵩む問題と、ネット素材の可撓性が損なわれて衝撃エネルギーの吸収性能が落ちるといった問題があり、いずれの方法も実用的に採用が難しい。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、落下物が回転しながら衝突しても、合成繊維製ネットの破断を効果的に抑制しつつ、合成繊維製ネットが有する本来の捕捉性能を発揮できる、防護ネットおよび衝撃吸収柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、撓み変形により落下物を捕捉する可撓性の防護ネットであって、合成繊維製のネット状物である繊維ネットと、前記繊維ネットの受撃面に重合して配置したネットカバーと、前記ネットカバーを繊維ネットに取り付けた複数の接続具とよりなり、受撃時に前記ネットカバーが落下物を包み込むように、ネットカバーの取付部が繊維ネットから分離可能に構成した。
本発明の他の形態において、前記ネットカバーが繊維ネットよりも大きい剛性と繊維ネットよりも小さな可撓性を併有した合成繊維製のネット状物またはシート状物である。
本発明の他の形態において、受撃時にネットカバーの張力が繊維ネットの張力に卓越するように、前記ネットカバーの伸度が繊維ネットの伸度よりも小さくなっている。
本発明の他の形態において、繊維ネットに落下物が直接当たらないように、前記ネットカバーの網目が繊維ネットの網目よりも小さい寸法関係になっている。
本発明の他の形態において、防護ネットを支柱等の支持部材に取り付けできるように、前記繊維ネットは該繊維ネットの周縁の網目に挿通して取り付けた弾性変形が可能な枠ロープを具備し、枠ロープを介して繊維ネットの周縁を保持し得るようになっている。
本発明の他の形態において、受撃時に枠ロープと繊維ネットが協働して落下物の衝撃エネルギーを吸収するように、前記枠ロープの破断伸度が繊維ネットの破断伸度よりも大きい関係にしてある。
本発明は、間隔を隔てて立設した支柱間に防護ネットを横架した衝撃吸収柵であって、前記した何れかひとつの防護ネットを具備し、防護ネットを構成する繊維ネットの左右側辺を隣り合う支柱に支持させ、防護ネットを構成するネットカバーを斜面山側に位置させ、受撃時にネットカバーが繊維ネットから分離し、分離したネットカバーが落下物を包み込んで繊維ネットに捕捉されるように構成した。
本発明の他の形態において、防護ネットの柵高低下を防止するため、隣り合う支柱の上部間に上辺ロープを張設し、該上辺ロープに繊維ネットの上辺を懸架してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>落下物が回転しながら衝突しても、合成繊維製の繊維ネットの破断を効果的に抑制しつつ、防護ネットを構成する繊維ネットが有する本来の捕捉性能を発揮することができる。
<2>落下物の捕捉時にネットカバーが分離して落下物の表面を被覆するので、ネットカバーが繊維ネットを防護すると共に、落下物の回転を繊維ネットに直接伝えない。
したがって、落下物の回転に起因した繊維ネットの破損を効果的に抑制できる。
<3>ネットカバーが落下物の外形形状に追従した自由な変形をしすぎないので、ネットカバーを通じた繊維ネットへの荷重伝達面積が拡張する。
そのため、落下物の捕捉時における繊維ネットの受撃面に局所的に荷重が集中するのを回避できる。
<4>繊維ネットにネットカバーと取付具を組み合せるだけの構成であるので、繊維ネットの網糸に太径の網糸を使用したり、耐切創性に優れた特殊繊維を用いたりする必要がない。
そのため、繊維ネットの製作コストが嵩んだり、重量が増して運搬性、取扱性が悪くなったりする心配がない。
<5>ネットカバーの網目を繊維ネットの網目よりも小さい寸法関係にすることで、ネットカバーによる繊維ネットの防護性能が高くなる。
<6>枠ロープの破断伸度を繊維ネットの破断伸度よりも大きくすることで、受撃時において枠ロープと繊維ネットが協働して落下物の衝撃エネルギーを吸収することができる。
<7>隣り合う支柱の上部間に張設した上辺ロープに繊維ネットの上辺を懸架することで、防護ネットの上辺中央部の柵高低下を防止して支柱のスパン長を長くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】斜面山側から見た防護ネットを具備した衝撃吸収柵の斜視図
図2】ネットカバーを省略した防護ネットと支柱上部の取付部の説明図
図3】一部を省略したネットカバーの説明図
図4】取付具の説明図で(A)は樹脂製結束バンドの斜視図(B)は連結コイルの斜視図
図5】落下物の捕捉初期における衝撃吸収柵のモデル図
図6】ネットカバーが分離したきの衝撃吸収柵のモデル図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら本発明について説明する。
【0010】
<1>衝撃吸収柵
図1,2を参照して説明すると、衝撃吸収柵は所定の間隔を隔てて立設した複数の支柱10と、複数の支柱10間に縦向きに横架した防護ネット20とを具備する。以降に衝撃吸収柵を構成する主要な資材について詳述する。
【0011】
<2>支柱
支柱10は公知の形鋼や鋼管等の鋼材、コンクリート柱、鋼管とコンクリートを複合した充填鋼管等の何れか一種を適用できる。
支柱10の外周面には防護ネット20を取り付け可能な複数のフックが設けてある。
支柱10の立設形態は傾倒可能に立設してもよいし、支柱10の下部をコンクリート基礎や現地地盤等に埋設して傾倒不能に立設してもよい。
また必要に応じて支柱10の頭部と山側アンカーとの間に控えロープ11を連結する。
防護ネット20や控えロープ11等を取り付けけるため、支柱10の上下部等に複数のフック12を設けておく。
【0012】
<3>防護ネット
防護ネット20は岩塊等の落下物を捕捉するための可撓性ネットで、方形を奏する繊維ネット21と、繊維ネット21の受撃面に重合して付設したネットカバー25と、ネットカバー25を繊維ネット21に分離可能に付設する接続具30とよりなる。
繊維ネット21の受撃面とはネットの斜面山側面を指す。
【0013】
<3.1>繊維ネット
繊維ネット21は可撓性を有する合成繊維製のネット状物であり、落下物を捕捉可能な寸法の網目22を有する
繊維ネット21は繊維ネット21の周縁の網目22に挿通して一体に取り付けた枠ロープ23を具備する。
繊維ネット21と枠ロープ23は共に合成繊維製で弾性変形が可能であり、受撃時において繊維ネット21および枠ロープ23の弾性変形により衝撃エルルギーの吸収が可能である。
【0014】
<3.1.1>繊維ネットの素材
繊維ネット21はポリエチレン等の合成繊維フィラメントを複数本撚り合わせて伸長可能なストランドを形成し、これらを格子状に撚り合わせて編成した無結節網または有結節網を適用できる。
繊維ネット21には、耐候性ポリエステル繊維を極太のラッシェル編物として編成した高い衝撃分散力を持つネイチャーネット(前田工繊株式会社製)を使用できる。
【0015】
本発明では繊維ネット21の切創強度を高める手段として、ネットカバー25と取付具30の組合せを採用することで、繊維ネット21の網糸を太径にしたり、耐切創性に優れた特殊繊維を用いたりする必要がなくなる。
そのため、繊維ネット21の製作コストが嵩んだり、重量が増して取扱性が悪くなったり、繊維ネット21の可撓性が損なわれたりする心配がない。
【0016】
<3.1.2>枠ロープ
繊維ネット21の上下辺および左右辺を支持する枠ロープ23は、繊維ネット21の四辺に連続して配設する無端構造の形態でもよいし、繊維ネット21の各辺単位で配設する形態でもよい。
枠ロープ23は高伸度繊維糸からなる高強度ロープで、高い衝撃吸収性能を有する。
高伸度繊維糸には、ポリエステル、ポリアミド、塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維が挙げられる。
枠ロープ23の破断伸度は繊維ネット21の破断伸度よりも大きい関係にあり、受撃時に枠ロープ23が繊維ネット21の周縁部の自由な弾性変形を抑制する。
【0017】
なお、枠ロープ23は必須ではなく、繊維ネット21の周縁部を直接支持する場合は枠ロープ23を省略してもよい。
【0018】
<3.2>ネットカバー
ネットカバー25は繊維ネット21の受撃面を被覆し、受撃時に岩塊等の落下物を包み込むことが可能な適度の剛性と可撓性を有する軽量なネット状物またはシート状物である。
ネットカバー25は風の影響を避けるため、ネット状物または有孔シート状物が好ましいが、無孔のシート状物でもよい。
ネットカバー25は繊維ネット21の保護部材として機能することの他に、繊維ネット21へ向けた落下物の回転伝達を緩和することに機能する。
【0019】
<3.2.1>ネットカバーの剛性と可撓性
ネットカバー25は適度の剛性と可撓性を併有している。
ネットカバー25の剛性は繊維ネット21よりも大きく、ネットカバー25の可撓性は繊維ネット21よりも小さい。
ネットカバー25の剛性を高めるほど落下物の衝突時にネットカバー25の受撃部が破損し易くなり、ネットカバー25の可撓性を高めるほど、落下物の捕捉時におけるネットカバー25が落下物の外形形状に合わせた追従変形がし易くなる。
したがって、落下物の衝突時にネットカバー25の破損を回避できるだけの可撓性と、落下物の捕捉時にネットカバー25が落下物の外形形状に合わせた追従変形をさせすぎない程度の剛性を満足するように、ネットカバー21の可撓性と剛性を適宜選択する。
【0020】
<3.2.2>繊維ネットとネットカバーの伸度
ネットカバー25の伸度は繊維ネット21の伸度よりも小さい。
これは受撃して防護ネット20が変形する際に、高伸度の繊維ネット21に対して低伸度のネットカバー25の張力との間に張力差を生じさせるためである。
換言すると、受撃時にネットカバー25の張力を繊維ネット21の張力に卓越させてネットカバー25を分離させるためである。
ネットカバー25と繊維ネット21の各伸度は、落下物の衝撃エネルギー等を考慮して適宜選択する。
【0021】
<3.2.3>ネットカバーの寸法
ネットカバー25の全体寸法は特に制約がない。
ネットカバー25は繊維ネット21の受撃面を被覆できればよいので、図1に示すような繊維ネット21の受撃面の縦横寸法とほぼ同一の一枚もののネットカバー25でもよいし、ネットカバー25は繊維ネット21の受撃面を複数に分割して被覆する形態でもよい。
【0022】
<3.2.4>ネットカバーの例示
図3に例示したネットカバー25には、耐候性ポリエステル繊維のラッシェル網26にモノフィラメント27を形状保持材として挿入した複合ポリエステル製ラッシェル網であるGMネット(前田工繊株式会社製)を使用できる。
ネットカバー25は通常の繊維網と比べて強度が大きく、目合い(網目形状)が崩れない適度の剛性を有している。
【0023】
<3.2.5>ネットカバーの網目
ネットカバー25が網目28を有するネット状物である場合、ネットカバー25の網目28を繊維ネット21の網目22よりも大きい寸法関係にあると、ネットカバー25による繊維ネット21の防護作用を喪失するそれがある。
そのため、ネットカバー25の網目28は繊維ネット21の網目22よりも小さい寸法関係にしてある。
【0024】
<3.3>接続具
接続具30はネットカバー25を繊維ネット21に分離可能に取り付けるためのファスナー部材である。
複数の接続具30の設置位置はネットカバー25の周縁部に限定されず、周縁部以外の適宜の部位に設置してもよい。
【0025】
<3.3.1>接続具の例示
図4は接続具30の例示を示していて、接続具30には図4(A)に示した樹脂製結束バンドや同図(B)に示したらせん形を呈する金属製または樹脂製の連結コイルを適用できる。
接続具30として樹脂製結束バンドを適用した場合は、ネットカバー25に所定値以上の張力が作用したときに樹脂製結束バンドが破断するように、樹脂製結束バンドの破断強度をネットカバー25の破断強度より低くする。
接続具30として連結コイルを適用した場合は、ネットカバー25に所定値以上の張力が作用したときに連結コイル側が破断またはらせん形状が解けるように構成する。
さらに図示を省略するが、接続具30として面ファスナーを適用することも可能である。面ファスナーを適用した場合は、ネットカバー25に所定値以上の張力が作用したときにネットカバー25が分離するように構成する。
接続具30は上記したファスナー部材に限定されず、ネットカバー25を仮固定できる市販の簡易ファスナー部材を適用できる。
【0026】
またネットカバー25に所定値以上の張力が作用したときに、接続具30ではなくネットカバー25側の取付部が断裂するように構成してもよい。
【0027】
<4>防護ネットの横架方法
防護ネット20は個別に搬入した繊維ネット21にネットカバー25を組み付けて現場で防護ネット20を製作してもよいし、完成した形態の防護ネット20を現場へ搬入して使用してもよい。
【0028】
何れの搬入方法でも、現場へ搬入した繊維ネット21の枠ロープ23を支柱10の上下部のフック12に係留または連結することで繊維ネット21の四つ角を支柱10に取り付けて、隣り合う支柱10間に防護ネット20を横架する。
防護ネット20の資材を個別に搬入する場合では、支柱10間に繊維ネット21を先行して取り付けた後に、接続具30を用いて繊維ネット21の受撃面にネットカバー25を取り付ける。
【0029】
支柱10のスパンが長くなると防護ネット20の上辺中央部が下がって柵高が低くなる。
このような現場では、隣り合う支柱10の上部間に上辺ロープ13を張設し、上辺ロープ13と繊維ネット21の上辺との間を、連結コイル、シャックル等の連結具14を介して分離不能に連結することで柵高が低くなるのを抑制する。
【0030】
隣り合う繊維ネット21の左右の側辺間は連結せずにフリーの状態にしておいてもよいし、隣り合う繊維ネット21の左右の側辺に位置する枠ロープ23間に別途の縫合用のロープ材を掛け渡して隣り合う繊維ネット21の左右の側辺間を閉鎖してもよい。
【0031】
[防護ネットによる落下物の捕捉作用]
つぎに図5,6を参照して防護ネット20による落下物40の捕捉作用について説明する。
【0032】
<1>捕捉初期における防護ネットの変形
図5は岩塊等の落下物40の捕捉初期における衝撃吸収柵のモデル図を示している。
斜面41に沿って落下物40が回転しながら防護ネット20に衝突すると、支柱10に支持された防護ネット20が受撃部を中心に斜面谷側へ向けた撓み変形を生じて衝撃エネルギーを吸収しつつ落下物40を捕捉する。
【0033】
落下物40は防護ネット20のネットカバー25に衝突する。
ネットカバー25は自己の可撓性によって衝撃破壊を回避すると共に、繊維ネット21を落下物40の切創から保護する。
落下物40の捕捉時において、ネットカバー25はある程度変形するものの、その適度の剛性により落下物40の外形形状に追従した自由な変形はしない。
【0034】
<2>ネットカバーの分離
ネットカバー25の伸びは繊維ネット21より小さいので、防護ネット20の変形に伴いネットカバー25の張力が増大する。
防護ネット20の変形時において、繊維ネット21とネットカバー25の張力に差が生じ、この張力差がネットカバー25の取付部(接続具30)に引張力として作用する。
ネットカバー25の張力が所定値以上に達すると、ネットカバー25の取り付けが解除されてネットカバー25が繊維ネット21から分離する。
落下物40が回転しながら衝突することで、ネットカバー25が落下物40の回転の影響を受けて繊維ネット21から分離し易くなる。
図6はネットカバー25が分離したときの衝撃吸収柵のモデル図を示している。
【0035】
<3>ネットカバーによる落下物の被覆
繊維ネット21から分離したネットカバー25は、繊維ネット21の影響を受けずに個別に変形して落下物40の表面を包み込む。
落下物40は分離したネットカバー25に包み込まれた状態で繊維ネット21の受撃面に衝当する。
【0036】
<4>ネットカバーの作用
既述した落石40の捕捉時において、防護ネット20を構成するネットカバー25はつぎの複数の作用を発揮する。
【0037】
<4.1>繊維ネットの防護作用
ネットカバー25は繊維ネット21から分離した後も繊維ネット21と落下物40の間に介在するので、分離前と同様に継続して繊維ネット21の防護作用を発揮して、繊維ネット21を切創から防護する。
【0038】
<4.2>落下物の回転絶縁作用
仮に、ネットカバー25が繊維ネット21に分離不能な状態で取り付けてある場合には、ネットカバー25に伝えられた落下物40の回転が繊維ネット21にも伝えられて、繊維ネット21が損傷を受け易い。
【0039】
これに対して落下物40の捕捉時にネットカバー25が繊維ネット21から分離するように構成すると、ネットカバー25が落下物40の被覆部材となるために、落下物40の回転が繊維ネット21に直接伝わらない。
したがって、落下物40の回転に起因した繊維ネット21の摩擦熱の発生を効果的に抑制できる。
落下物40の回転は繊維ネット21に対してネットカバー25が滑動することで吸収され、ネットカバー25は繊維ネット21に対し斜面谷側ヘ向けた衝撃力だけを伝達する。
【0040】
<4.3>荷重伝達面積の拡張作用
ネットカバー25はその適度の剛性により落下物40の外形形状に追従した自由な変形をしないので、ネットカバー25は落下物40の表面の凹凸を緩和して繊維ネット21との接触面に丸みがでる。
繊維ネット21の受撃面に対するネットカバー25の接触面は点ではなく曲面となるので、繊維ネット21への荷重伝達面積が拡張する。
このようにネットカバー25の剛性を通じて、繊維ネット21との接触面積が増える結果、繊維ネット21の受撃面における局所的な荷重の集中を回避できる。
【0041】
<5>防護ネットの性能
以上説明したように、本発明に係る防護ネット20は、落下物40の衝突時に繊維ネット21の受撃面に切創と摩擦熱が生じ難いので、繊維ネット21が本来有している捕捉性能を十分に発揮することができる。
【0042】
[他の実施例]
図1に示すように先の実施例では、間隔を隔てて立設した支柱10の間に防護ネット20を縦向きに横架して構成する衝撃吸収柵の形態について説明したが、防護ネット20は支柱10に代えて立木の間に縦向きに横架してもよいし、防護ネット20の周囲を静止部材で支持して横向きの形態で使用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10・・・・支柱
11・・・・控えロープ
12・・・・フック
13・・・・上辺ロープ
20・・・・防護ネット
21・・・・繊維ネット
22・・・・繊維ネットの網目
23・・・・枠ロープ
25・・・・ネットカバー
26・・・・ラッシェル網
27・・・・モノフィラメント
28・・・・ネットカバーの網目
30・・・・接続具
40・・・・落下物
【要約】
【課題】落下物の捕捉時における合成繊維製ネットの破断を効果的に抑制しつつ、合成繊維製ネットが有する本来の捕捉性能を発揮できる、防護ネットおよび衝撃吸収柵を提供すること。
【解決手段】合成繊維製の繊維ネット21と、繊維ネット21の受撃面に重合して配置したネットカバー25と、ネットカバー25を繊維ネット21に取り付けた複数の接続具30とよりなり、受撃時にネットカバー25が落下物を包み込むように、ネットカバー25が繊維ネット21から分離可能に構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6