特許第6889971号(P6889971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889971
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】プロセス制御システム
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/00 20060101AFI20210607BHJP
   B21C 47/24 20060101ALI20210607BHJP
   B21B 37/00 20060101ALI20210607BHJP
   B21B 39/08 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   B21C47/00 C
   B21C47/24 A
   B21B37/00 210
   B21B39/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-165554(P2017-165554)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-42747(P2019-42747A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】間宮 太一
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−157065(JP,A)
【文献】 特開2001−296914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 47/00−47/34,
B21B 37/00−37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板を連続的に処理するプロセスラインを制御するプロセス制御システムであって、
前記金属薄板のコイルを識別する情報であるコイル識別データ、および、前記コイル識別データに関連付けられた前記コイルの長さのデータであるコイル長さデータにもとづいて、処理するコイルの順序を決定するコイル処理順序決定装置と、
前記処理するコイルの順序にもとづいて、前記コイルをプロセスラインに供給するコイルハンドリングアクチュエータを制御するコイルハンドリング制御装置と、
を備え
前記プロセスラインは、
前記金属薄板が入力される側に設けられた入側ルーパーと、
前記金属薄板が出力される側に設けられた出側ルーパーと、
を含み、
前記入側ルーパーでは、
前記金属薄板を払い出す際に、前記入側ルーパーを駆動するモータが力行動力を生じ、前記入側ルーパーに前記金属薄板を貯め込む際に、前記入側ルーパーを駆動するモータが回生動力を生じ、
前記出側ルーパーでは、
前記金属薄板を貯め込む際に、出側ルーパーを駆動するモータが回生動力を生じ、前記出側ルーパーが前記金属薄板を払い出す際に、力行動力を生じるプロセス制御システム。
【請求項2】
金属薄板を連続的に処理するプロセスラインを制御するプロセス制御システムであって、
前記金属薄板のコイルを識別する情報であるコイル識別データ、および、前記コイル識別データに関連付けられた前記コイルの長さのデータであるコイル長さデータにもとづいて、処理するコイルの順序を決定するコイル処理順序決定装置と、
前記処理するコイルの順序にもとづいて、前記コイルをプロセスラインに供給するコイルハンドリングアクチュエータを制御するコイルハンドリング制御装置と、
を備え、
前記プロセスラインは、
前記金属薄板が入力される側に設けられた入側ルーパーと、
前記金属薄板が出力される側に設けられた出側ルーパーと、
を含み、
前記入側ルーパーでは、
前記金属薄板を払い出す際に、前記入側ルーパーを駆動するモータが回生動力を生じ、前記入側ルーパーが前記金属薄板を貯め込む際に、前記入側ルーパーを駆動するモータが力行動力を生じ、
出側ルーパーでは、
前記金属薄板を貯め込む際に、出側ルーパーを駆動するモータが力行動力を生じ、前記出側ルーパーが前記金属薄板を払い出す際に、回生動力を生じるプロセス制御システム。
【請求項3】
前記コイル処理順序決定装置では、前記処理するコイルの順序は、前記プロセスラインに後から投入される1つ以上のコイルの前記コイル長さデータの合計値が、前記プロセスラインにすでに投入されているコイルの長さに等しくなるように決定される請求項1または2に記載のプロセス制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鋼、アルミ、銅等の金属薄板を連続的に焼鈍、メッキ、酸洗等するプロセスラインを制御するプロセス制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図2に示すように、プロセスライン100は、入側、中央、出側の3セクションで構成され、各セクションはルーパーにより区切られる。中央のセクションは、焼鈍、メッキ、酸洗を連続的に行うセクションで、ストリップ101を一定速度で搬送することが要求される。入側のセクションでは、上流工程で製造されたコイルをペイオフリール(以下、PORと称する)112から払い出し、先行材と後行材を溶接して、中央のセクションにストリップ101を送り込む。出側のセクションでは、中央のセクションで処理されたストリップ101の検査やテンションリール(以下、TRと称する)115による巻き取りを行う。
【0003】
各セクションを区切る入側ルーパー(以下、ELPと称する)113および出側ルーパー(以下、DLPと称する)114は、入側および出側のいずれのセクションにおいてストリップ101の搬送が減速されたり、停止されたりした場合であっても、中央のセクションにおいて、ストリップ101が一定速度で搬送されるように、ストリップ101の貯蔵量を調整している。
【0004】
なお、プロセスライン100において、ストリップを搬送するロールは、POR112、ELP113、DLP114、TR115以外にもある。しかしながら、POR112、ELP113、DLP114、TR115のロールを駆動するモータ132〜135の出力容量が最も大きく、ストリップ101を搬送するために必要な単位時間当たりのエネルギ消費量(以下、動力と称す)は、ほとんどこれらのロールを駆動するために使用される。そこで、以下の説明では、他のロール等の動力については省略し、POR112、ELP113、DLP114、およびTR115を駆動するための動力について説明することとする。
【0005】
これらのロールを駆動するモータ132〜135は、それぞれのモータ132〜135に対して個別に設けられたインバータ122〜125と、1台のコンバータ121で駆動される。1台のコンバータ121により、複数台のインバータ122〜125に直流を給電し、各インバータ122〜125により所望の周波数、電圧を有する交流に変換されて、各モータ132〜135は駆動される。コンバータ121は、1つの交流電源120から交流電力を給電される。
【0006】
あるモータが力行運転している場合には、その動力は、そのモータを駆動するインバータの直流側(1次側)から交流側(2次側)に流れる。一方で、あるモータが回生運転している場合には、その動力はそのモータを駆動するインバータの2次側から1次側に向かって流れる。したがって、力行動力と回生動力が等しい場合には、回生しているモータから力行しているモータにエネルギが流れる。すなわち、インバータ1次側で力行と回生の動力が相殺され、この系における動力の消費量は0となる。
【0007】
回生動力の方が力行動力よりも大きい場合には、回生動力はコンバータ121を通過して、交流電源120の方向に回生される。コンバータ121は、有限の電力変換効率を有しているので、コンバータ損失が少なからず生じる。したがって、インバータの1次側で動力が相殺されており、かつ、コンバータ121を介して上位の交流電源120と動力のやり取りが最も少なくなる状態こそが、最も効率のよい操業状態であると言える。
【0008】
プロセスライン100において、ストリップ101が一定速度で搬送される際の動力の授受について考える。POR112、ELP113、DLP114、およびTR115を駆動することにより生じる動力をそれぞれ示すと、図2に示す通りとなる。ストリップ101をコイルから払い出すPOR112を駆動するモータ132は、ストリップ101に引っ張られて回生運転しており、ストリップ101をコイルに巻き取るTR115を駆動するモータ135は、力行運転している。また、ELP113およびDLP114はカウンターウェイトと釣り合い、ストリップ101を引っ張っており、これらを駆動するモータ133,134は力行も回生もしていない状態である。
【0009】
つまり、プロセスライン100においてストリップ101が一定速度で搬送される場合には、モータ132の回生動力QPORと、モータ135の力行動力QTRはほとんど等しく、打ち消し合ってほぼ0になる。このようにプロセスライン100全体にわたってストリップ101が一定速度で搬送される状態は、平衡状態にあり、交流電源120との動力授受が無くなり、プロセスライン100において、動力損失の少ない最も効率のよい操業状態となる。
【0010】
しかしながら、プロセスライン100に供給されるコイルの大きさ、すなわちストリップ101の長さは有限であり、また、ストリップ101を無限に大きいコイルに巻き取ることも不可能である。つまり、図3図5に示すように、新たなコイルを投入したり、処理の済んだコイルを収納等したりするために、入側または出側において、ストリップ101が停止することがある。ストリップ101が停止した後には、ストリップ101の、入側速度または出側速度を中央速度より速くして、ELP113にストリップ101を貯め込み、またはDLP114からストリップ101を払い出す状態が必ず生じる。
【0011】
図3は、入側のセクションで先行材と後行材を溶接しているときの状態を示す。図4は、入側のセクションにおける溶接終了後の状態を示す。図4では、入側のセクションにおけるストリップ101の搬送速度が中央のセクションにおけるストリップ101の搬送速度よりも速く、ELP113にストリップ101を貯め込んでいる状態が示されている。図5は、出側のセクションにおいて、コイルの巻き取りが終了して、後行材の巻き取り準備が行われている状態を示す。図6は、出側のセクションにおいて先行材の巻き取りが完了して、後行材を巻き始める状態を示す。図6では、出側のセクションにおけるストリップ101の搬送速度が、中央のセクションにおけるストリップ101の搬送速度よりも速く、DLP114からストリップ101を払い出している状態が示されている。
【0012】
図3の状態では、入側のセクションにおいて、POR112とELP113との間でストリップ101が切り離されている。ストリップ101の搬送は、入側のセクションで停止している。POR112を駆動するモータ132は停止し、または入側に設けられた溶接装置(図示せず)に向けて先端通板をしている状態で、回生動力QPORは0、あるいはほとんど0となる。
【0013】
このとき、中央のセクションにおいて、ストリップ101を一定速度で搬送するために、ELP113が下方向に一定速度で移動する必要がある。ELP113は、ストリップ101が貯められた状態において、カウンターウェイトと釣り合い状態にあり、ELP113が下方向に移動すると、ストリップ101の貯め込み量が減るため、ELP113が上方向に移動しようとする復元力が作用する。したがって、ELP113が一定速度で下方向に移動するためには、この復元力を相殺する方向に、ELP113を駆動するモータ133が力を発生させる必要があり、その方向はELP113の移動方向と同じ方向になる。すなわち、ELP113の駆動において、力行動力が発生する。このとき、QELP+QTR>0となり、系の動力平衡状態が崩れて、コンバータ121を介して交流電源120からモータ133に動力を引き込む。つまり、動力は、力行方向に流れる。
【0014】
図4の状態では、入側のセクションにおけるストリップ101の搬送速度が、中央のセクションにおけるストリップ101の搬送速度よりも速い。この状態の場合には、ELP113は上方に移動する。このとき、ELP113では、カウンターウェイトと釣り合う位置まで復元する力が、ELP113の移動方向と同じ方向に作用する。中央のセクションにおけるストリップ101の搬送速度を一定に保つために、この復元力を抑制する方向、すなわち、移動方向と逆方向の力を、モータ133によって発生させる必要がある。つまり、ELP113の駆動によって、回生動力が発生する。このとき、QPOR+QELP+QTR<0となり、系の動力並行状態が崩れて、コンバータ121を介して交流電源120に向かう回生方向に動力が流れる。
【0015】
図5の状態では、出側のセクションにおいてTR115とDLP114との間でストリップ101が切り離されている。出側のセクションにおけるストリップ101の搬送は停止している。この状態では、TR115を駆動するモータ135は停止し、あるいは、TR115は、ストリップ101の尾端を巻き取っており、力行動力QTRは0、あるいはほとんど0となる。
【0016】
このとき、中央のセクションにおいて、ストリップ101を一定速度で搬送するために、DLP114が下方向に一定速度で移動する必要がある。DLP114は、内部にストリップ101がない状態では、カウンターウェイトと釣り合い状態にあり、DLP114が下方向に移動すると、DLP114のストリップ101の貯め込み量が増加して、貯め込んだストリップ101の自重により、DLP114を下方向に加速させる力が作用する。
【0017】
したがって、一定速度で、DLP114を下方向に移動するためには、この加速させる力を打ち消す方向に、DLP114を駆動するモータ134が力を発生する必要がある。このモータ134が発生する力の向きは、DLP114の移動方向と逆の方向になる。すなわち、DLP114において、回生動力が発生する。このとき、QPOR+QDLP<0となり、系の動力平衡状態が崩れて、コンバータ121を介して上位電源系統に向かう回生方向に動力が流れる。
【0018】
図6の状態では、出側のセクションにおけるストリップ101の搬送速度は、中央のセクションにおけるストリップ101の搬送速度よりも速い。DLP114は、ストリップ101を出側のセクションに払い出すように、上方向に移動する。DLP114は、内部にストリップ101がない状態で、カウンターウェイトと釣り合っている。そのため、DLP114が上方向に移動するにつれて、ストリップ101の自重によりDLP114を下方向に引っ張る力が減少する。
【0019】
DLP114を一定速度で移動させるには、DLP114を下方向に引っ張る力を打ち消す必要がある。そのため、モータ134は、上方向に力を発生させる必要がある。すなわち、DLP114の移動方向とDLP114に印加する力の方向とが一致して、力行動力が発生する。このとき、QPOR+QDLP+QTR>0となり、系の動力並行状態が崩れて、コンバータ121を介して交流電源120から動力を引き込む回生方向に動力が流れる。
【0020】
このように、プロセスライン100において、入側および出側の各セクションにおけるライン停止または加減速に伴い、入側または出側の各セクションにおけるストリップ101の搬送速度が、中央のセクションにおけるストリップ101の搬送速度と異なる場合に、動力の平衡状態が崩れる。動力の平衡状態が崩れた場合には、コンバータ121を介して交流電源120との電力の授受が生じる。このため、コンバータ121の電力変換効率に起因する動力損失が生じ、プロセスライン100のストリップ搬送系の効率が低下することが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許第4715489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
特許文献1では、投入されるコイルの材料データと、最低ライン速度等の投入制約、設備緒元、および操業条件から、操業シミュレーションを実施、入側および出側ルーパーの貯め込み量限界により、設備が非常停止に至ることを防ぐ、コイル投入順序を自動計算する方法が紹介されている。しかしながら、特許文献1に示す方法では、設備を非常停止させないことを判断基準としており、ストリップ搬送動力を低減することは考慮されていない。
【0023】
本発明に係る実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたもので、プロセスラインが動力損失少なく最も効率よく操業される状態を維持するために、プロセスラインにおいて処理すべきコイルの順序を決めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
実施形態に係るプロセス制御システムは、金属薄板を連続的に処理するプロセスラインを制御する。プロセス制御システムは、前記金属薄板のコイルを識別する情報であるコイル識別データ、および、前記コイル識別データに関連付けられた前記コイルの長さのデータであるコイル長さデータにもとづいて、処理するコイルの順序を決定するコイル処理順序決定装置と、前記処理するコイルの順序にもとづいて、前記コイルをプロセスラインに供給するコイルハンドリングアクチュエータを制御するコイルハンドリング制御装置と、を備える。前記プロセスラインは、前記金属薄板が入力される側に設けられた入側ルーパーと、前記金属薄板が出力される側に設けられた出側ルーパーと、を含む。前記入側ルーパーでは、前記金属薄板を払い出す際に、前記入側ルーパーを駆動するモータが力行動力を生じ、前記入側ルーパーに前記金属薄板を貯め込む際に、前記入側ルーパーを駆動するモータが回生動力を生じる。前記出側ルーパーでは、前記金属薄板を貯め込む際に、出側ルーパーを駆動するモータが回生動力を生じ、前記出側ルーパーが前記金属薄板を払い出す際に、力行動力を生じる。
【発明の効果】
【0025】
本実施形態では、コイル長さデータにもとづいて処理するコイルの順序を決定するコイル処理順序決定装置を備えているので、プロセスラインが最も効率よく操業される状態を維持するために、プロセスラインにおいて処理すべきコイルの順序を決めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係るプロセス制御システムを例示する模式的なブロック図である。
図2】プロセスラインを例示する模式図である。
図3】プロセスラインを例示する模式図である。
図4】プロセスラインを例示する模式図である。
図5】プロセスラインを例示する模式図である。
図6】プロセスラインを例示する模式図である。
図7】実施形態のプロセス制御システムが適用されたプロセスラインを例示する模式図である。
図8】実施形態のプロセス制御システムが適用されたプロセスラインを例示する模式図である。
図9】実施形態のプロセス制御システムの動作を説明するためのブロック線図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0028】
すでに説明したように、図2には、プロセスライン100の例が示されている。POR112、ELP113、DLP114、TR115およびその他のストリップ搬送ロールを有することは、プロセスライン全般に対して共通する特徴である。プロセスライン100では、ELP113がストリップ101を払い出す際に、ELP113を駆動するモータ133が力行動力を生じ、ELP113がストリップ101を貯め込む際に、モータ133が回生動力を生じる。また、DLP114がストリップ101を貯め込む際に、DLP114を駆動するモータ134が回生動力を生じ、DLP114がストリップ101を払い出す際に、モータ134が力行動力を生じる。さらに、プロセスライン100では、ELP113がストリップ101を払い出す際に、モータ133が回生動力を生じ、ELP113がストリップ101を貯め込む際に、モータ133が力行動力を生じる。また、DLP114がストリップ101を貯め込む際に、モータ134が力行動力を生じ、DLP114がストリップ101を払い出す際に、モータ134が回生動力を生じる。
【0029】
図1は、実施形態に係るプロセス制御システムを例示するブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のプロセス制御システム10は、コイル処理順序決定装置14と、入側コイルハンドリング制御装置16と、を備える。プロセス制御システム10には、自動または手動によって処理予定のコイルに関する情報を含むデータが入力される。プロセス制御システム10は、これから処理すべきコイルの順序を表すデータを生成して、コイルハンドリングアクチュエータ20に供給する。
【0030】
プロセス制御システム10は、入力されたデータにもとづいて、これから処理すべきコイルの順序を決定して、コイルハンドリングアクチュエータ20を介して、実際のコイルのプロセスラインへの投入順を設定する。
【0031】
コイル処理順序決定装置14は、たとえば操業管理システム12に任意の通信ネットワークを介して接続されている。操業管理システム12は、処理プラントにおいて、どのような品種を、どの量で、いつまでに生産するか等の計画を保持している。生産計画の詳細は、ユーザによって決定される。操業管理システム12は、たとえばデータサーバ等である。
【0032】
コイル処理順序決定装置14は、操業管理システム12から生産計画に関する情報を含むデータを受け取る。操業管理システム12は、処理すべき金属薄板に関する属性のデータトラッキングデータを保持している。このようなトラッキングデータは、処理すべき金属薄板のコイルごとに付された識別データに関連付けて保持されている。この識別データをコイルIDと呼ぶ。トラッキングデータには、コイルの長さの情報を含むデータを含んでいる。また、トラッキングデータには、コイルに施される処理の内容に関する情報を含むデータも含んでいる。なお、この例のように、コイル処理順序決定装置14には、オペレータの手動によってコイルID等のデータを入力できるようにしてもよい。
【0033】
コイル処理順序決定装置14は、受け取ったデータの一部を、図示しない制御装置に送信する。図示しない制御装置は、受信したデータにもとづいて、金属薄板の処理手順を生成し、実行する。制御装置は、たとえばプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)である。
【0034】
コイル処理順序決定装置14は、所定の手順にしたがって、処理すべきコイルの順序を決定する。詳細については後述するが、処理すべきコイルの順序は、プロセスライン中のモータやドライブの力行動力と回生動力の総和が0または0に近くなるように設定される。
【0035】
コイル処理順序決定装置14は、たとえばコンピュータ装置である。コンピュータ装置は、コイルの処理順序を決定する手順をプログラムとして格納する。たとえばプログラムは、コイル処理順序決定装置14に内蔵された記憶装置に格納されている。記憶装置は、コイル処理順序決定装置14に通信ネットワークや制御ネットワーク等を介して接続されていてもよい。コイル処理順序決定装置14は、格納されたプログラムのステップを逐次読み出して実行することによって、プロセスライン100に投入するコイルの順序を決定する。
【0036】
入側コイルハンドリング制御装置16は、コイル処理順序決定装置14から次に投入すべきコイルIDのデータを受け取る。入側コイルハンドリング制御装置16は、受け取ったコイルIDを有するコイルを取り出して、POR112にセットするように指令する。入側コイルハンドリング制御装置16は、たとえばPLCである。入側コイルハンドリング制御装置16は、金属薄板の処理手順を実行するPLCの一部であってもよいし、他のPLCによって構成されていてもよい。
【0037】
図7および図8は、本実施形態のプロセス制御システムが適用されたプロセスラインを例示する模式図である。
図7は、入側および出側の両セクションにおいて、ストリップ101の搬送が停止している状態、あるいは、中央のセクションで搬送されているストリップ101と接続されていない状態を示す。なお、この状態は、すでに説明した図3および図5の状態を同時に実現したものである。
【0038】
図7の状態では、POR112を駆動するモータ132の動力およびTR115を駆動するモータ135の動力は、いずれも0、あるいはほとんど0である。DLP114を駆動するモータ134は力行運転しており、ELP113を駆動するモータ133は、回生動力QELPを発生している。力行動力QDLPは回生動力QELPに等しく、したがって、プロセスライン100全体の動力はほぼ0となり、平衡状態となる。
【0039】
図8に示す状態は、入側のセクションにおいて、先行材と後行材との溶接が終了し、同期速度までストリップ101を加速している状態である。それとともに、出側のセクションにおいて、後行材をコイルに巻き始めて、搬送速度を同期速度まで加速している。なお、この状態は、すでに説明した図4図6の状態を同時に実現したものである。
【0040】
図8の状態では、POR112を駆動するモータ132の回生動力QPOR、ELP113を駆動するモータ133の力行動力QELP、DLP124を駆動するモータ134の回生動力QDLP、およびTR115を駆動するモータ135の力行動力QTRの和はほぼ0になる。したがって、プロセスライン100全体の動力はほぼ0となり、平衡状態となる。
【0041】
本実施形態のプロセス制御システム10の動作について説明する。
本実施形態のプロセス制御システム10では、上述した図7および図8の平衡状態を実現するために、コイルの長さにもとづいて、コイルのプロセスライン100への投入順序を決定する。より具体的には、入側および出側の両セクションにおいて、ストリップ101の搬送が停止し、POR112およびTR115が停止し、ELP114およびDLP115が短端および長端にそれぞれ移動し、ストリップ101の搬送が再開され、ELP114およびDLP115が長端および短端にそれぞれ移動するという一連の動作が、同時に行われるように、コイル投入順序は決定される。
【0042】
図9は、本実施形態のプロセス制御システムの動作を説明するためのブロック線図の例である。
図9に示すように、この例では、コイル処理順序決定装置14は、ライン内ストリップ数計算装置21と、コイル情報記録装置22と、コイル情報検索装置23と、コイル長判定装置24と、計算結果記録装置25と、計算結果判定装置(3)26と、計算結果補助記録装置27と、計算結果判定装置(1)28,29と、を含む。
【0043】
ライン内ストリップ数計算装置21は、以下の式(1)にもとづいて、プロセスライン100内で搬送されているストリップ101の数kを計算する。なお、式(1)において、Lは、プロセスライン100内のストリップ101の搬送方向の長さを示し、コイル長情報L(i,ID)はコイルの長さを示す。ここで、iは、TR115に巻き取られているコイルをi=1として、プロセスライン100にて処理されているコイルを逆順にi=2,3,4,…とした場合の、コイルの順番を示すものとする。すなわち、POR112で払い出されているコイルは、i=kとなり、次に、POR112に挿入されるコイルは、i=k+1となる。また、IDは、コイル情報記録装置22に登録された、コイルIDを示す。
【0044】
【数1】
【0045】
コイル情報記録装置22は、プロセス制御システム10に充填することが可能なコイルの情報を、上位の操業生産システムである操業管理システム12から受領し、コイル長情報L(i,ID)として格納している。コイル情報検索装置23は、以下の式(2)の判定式を満たすコイルを検索して、コイル情報記録装置22から抽出する。
【0046】
【数2】
【0047】
まず、コイル長判定装置24は、コイル情報検索装置23を介して、kcvyおよびklを初期値1として、式(2)を満たすコイルがあるか検索する。コイル長判定装置24は、式(2)を満たすコイルがある場合、そのコイルの情報は、計算結果記録装置25に保存される。
【0048】
コイルスキッドに入れるべきすべてのコイルが決まった場合には、それらのコイルIDを入側コイルハンドリング制御装置16に入力する。
【0049】
コイルスキッドに入れるすべてのコイルが決まっていない場合、プロセス制御システム10は、kcvyおよびklの初期値を、それぞれ1増やす。さらに、コイル長判定装置24の式(2)に代入するL(k+1,IDk+1)は、計算結果記録装置25に保存された値を用いる。
【0050】
再び、コイル長判定装置24は、コイル情報検索装置23を介して、式(2)を満たすコイルがあるかどうか検索して、検索結果を計算結果記録装置25に記録する。このように、コイルスキッドに入れるすべてのコイルが決まるまで、kcvyおよびklを増加していく。
【0051】
コイル長判定装置24が、コイル情報検索装置23を介して、式(2)を満たすコイルを、POR112に充填可能なすべてのコイルから検索できなかった場合には、計算結果判定装置26の処理に移行する。
【0052】
計算結果判定装置26は、以下の式(3)で示すLerrの絶対値を最小とする組み合わせを、コイル情報検索装置23を介して検索し、抽出した情報を計算結果補助記録装置27に記録する。
【0053】
【数3】
【0054】
コイル長判定装置24が、式(2)を満たすコイルを、コイル情報検索装置23を介して、POR112に充填可能なすべてのコイルから検索できなかった場合には、同じく、計算結果判定装置(1)28,29の処理に移行する。計算結果判定装置(1)28,29によって、kcvyがコイルスキッドの数Nskdを上回っているときには、計算結果補助記録装置27に格納されたコイルIDを入側コイルハンドリング制御装置16に入力する。すなわち、コイル長判定装置24の式(2)に示す条件に最も近いコイルを選択する。
【0055】
計算結果判定装置28,29にて、kcvyがコイルスキッドの数Nskdを上回っていない場合には、下記式(4)〜(6)により、式(4)の場合にはklを1増加、式(6)の場合には、kcvyを1増加、式(5)の場合にはkcvyおよびklの両方を1増加する。
【0056】
【数4】
【0057】
kcvyまたはklのいずれか、あるいはkcvyおよびklの両方を1増加して、再びコイル長判定装置24の式(2)を満たすコイルがあるかどうかコイル情報検索装置23を介してコイルを検索する。
【0058】
操業管理システム12のような上位演算装置、あるいはオペレータの手動手介操作によって、格納するコイルが指定されている場合には、スキッドの位置情報kcvy、および投入コイルのIDを、コイル情報検索装置23に入力して、指定されたコイルの情報をコイル情報記録装置22から検索する。コイル情報検索装置23は、コイル長判定装置24に対して、指定されたコイルの長さを出力する。
【0059】
以上説明した実施形態によれば、プロセスラインが最も効率よく操業される状態を維持するために、プロセスラインにおいて処理すべきコイルの順番を決めるプロセス制御システムを実現することができる。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 プロセス制御システム、12 操業管理システム、14 コイル処理順序決定装置、16 入側コイルハンドリング制御装置、20 コイルハンドリングアクチュエータ、100 プロセスライン、101 ストリップ、112 ペイオフリール(POR)、113 入側ルーパー(ELP)、114 出側ルーパー(DLP)、115 テンションリール(TR)、121 コンバータ、122〜125 インバータ、132〜135 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9