(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889989
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】音声認識性能を向上させるためのアクティブノイズキャンセレーション装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20210607BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20210607BHJP
G10L 21/0208 20130101ALI20210607BHJP
G10L 15/20 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
G10K11/178
B60R11/02 M
G10L21/0208 100B
G10L15/20 370E
【請求項の数】26
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-139189(P2016-139189)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-32981(P2017-32981A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】14/812,300
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592051453
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スリカンス コンジェティ
(72)【発明者】
【氏名】バラバ バサント ハンピホリ
【審査官】
冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−107438(JP,A)
【文献】
特開2001−142469(JP,A)
【文献】
特開2008−213822(JP,A)
【文献】
特開2013−148891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B60R 11/02
G10L 15/20
G10L 21/0208
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置であって、
少なくとも1つのエラーマイクに動作可能に連結されるための、メモリを含むANCコントローラであって、前記ANCコントローラが、
車両の室内を通って伝播し、音声認識(VR)マイクにおいて受信される環境ノイズを示す、第1の信号を受信することと、
ノイズキャンセレーション波を生成して、前記環境ノイズを除去することであって、前記ノイズキャンセレーション波が、前記VRマイクにおいて受信される、ことと、
前記VRマイクにおいて受信された、前記環境ノイズと前記ノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、前記少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、
前記メモリからの少なくとも1つの補正フィルタを、仮想エラーマイクに関連する前記少なくとも1つのエラーマイクのうちの対応するエラーマイクにおいて取得された実際のノイズに基づいて前記対応するエラーマイクの前記音声出力に適用して、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波と、を除去することと、
を行うように構成されている、ANCコントローラ、
を備え、前記仮想エラーマイクが、前記VRマイクの近くにまたは前記VRマイクの場所に配置されたエラーマイクのシミュレーションされたバージョンである、車両ANC装置。
【請求項2】
各補正フィルタが、前記対応するエラーマイクと前記仮想エラーマイクとの間のノイズ関係を提供する、請求項1に記載の車両ANC装置。
【請求項3】
前記ANCコントローラが、前記少なくとも1つの補正フィルタからの出力と、それぞれのエラーマイクにおいて受信される前記ノイズキャンセレーション波および前記環境ノイズを明らかにする伝達機能からの出力とを加算した結果に基づいて、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波と、を除去するように構成されている、請求項1に記載の車両ANC装置。
【請求項4】
前記ANCコントローラが、前記少なくとも1つのエラーマイクが前記VRマイクの近くの場所に配置された時の、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて存在する前記ノイズキャンセレーション波と、を明らかにするための、チューニング段階中に生成される仮想エラーマイクを含む、請求項1に記載の車両ANC装置。
【請求項5】
前記チューニング段階が、複数の異なる速度で、複数の道路上で運転されている車両に対応する、請求項4に記載の車両ANC装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補正フィルタが、振幅と周波数と位相とのうちの少なくとも1つに対応する、請求項1に記載の車両ANC装置。
【請求項7】
前記ANCコントローラが、振幅と周波数とのうちの少なくとも1つを前記少なくとも1つの補正フィルタの各出力に適用するように構成された標準化回路を含む、請求項1に記載の車両ANC装置。
【請求項8】
前記ANCコントローラが、前記少なくとも1つの補正フィルタからの出力を受信し、伝達機能からの出力を受信するための、加算回路を含む、請求項1に記載の車両ANC装置。
【請求項9】
前記加算回路が、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波とを、前記少なくとも1つの補正フィルタからの前記出力と前記伝達機能からの前記出力とを加算する前記加算回路に基づいて、除去するように構成されている、請求項8に記載の車両ANC装置。
【請求項10】
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)を車両内で実行するための方法であって、前記方法が、
車両の室内を通って伝播する環境ノイズを示す第1の信号を、音声認識(VR)マイクにおいて受信することと、
ノイズキャンセレーション波を生成して、前記環境ノイズを除去することと、
前記ノイズキャンセレーション波を、前記VRマイクにおいて受信することと、
前記VRマイクにおいて受信された、前記環境ノイズと前記ノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、前記車両内に配置された少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、
少なくとも1つの補正フィルタを、仮想エラーマイクに関連する前記少なくとも1つのエラーマイクのうちの対応するエラーマイクにおいて取得された実際のノイズに基づいて前記対応するエラーマイクの前記音声出力に適用して、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波と、を除去することと、
を備え、前記仮想エラーマイクが、前記VRマイクの近くにまたは前記VRマイクの場所に配置されたエラーマイクのシミュレーションされたバージョンである、方法。
【請求項11】
各補正フィルタが、前記対応するエラーマイクと前記仮想エラーマイクとの間のノイズ関係を提供する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ANCコントローラが、前記少なくとも1つの補正フィルタからの出力と、それぞれのエラーマイクにおいて受信される前記ノイズキャンセレーション波および前記環境ノイズを明らかにする伝達機能からの出力とを加算した結果に基づいて、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波と、を除去するように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
仮想VRエラーマイクを、チューニング段階中に電気的に生成して、前記少なくとも1つのエラーマイクが前記VRマイクの近くの場所に配置された時の、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて存在する前記ノイズキャンセレーション波と、を明らかにすること、をさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記チューニング段階が、複数の異なる速度で、複数の道路上で運転されている車両に対応する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの補正フィルタが、振幅と周波数と位相とのうちの少なくとも1つに対応する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの補正フィルタの各出力を、振幅と周波数とのうちの少なくとも1つを、前記少なくとも1つの補正フィルタの各出力に適用することによって標準化すること、をさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの補正フィルタからの出力と、伝達機能からの出力と、を受信すること、をさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの補正フィルタからの前記出力と前記伝達機能からの前記出力とを加算して、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波と、を除去すること、をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置であって、
メモリと、
チューニング段階で生成され、前記メモリ上に格納されている仮想音声認識(VR)エラーマイクを含み、少なくとも1つのエラーマイクに動作可能に連結されるための、ANCコントローラであって、前記ANCコントローラが、
筐体を通って伝播し、物理的VRマイクにおいて受信される環境ノイズを示す第1の信号を受信することと、
ノイズキャンセレーション波を生成して前記環境ノイズを除去することであって、前記ノイズキャンセレーション波が、前記VRマイクにおいて受信される、ことと、
前記VRマイクにおいて受信された、前記環境ノイズと前記ノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、前記少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、
前記メモリからの少なくとも1つの補正フィルタを、仮想エラーマイクに関連する前記少なくとも1つのエラーマイクのうちの対応するエラーマイクにおいて取得された実際のノイズに基づいて前記対応するエラーマイクの前記音声出力に適用して、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波と、を除去することと、
を行うように構成された、ANCコントローラと、
を備え、前記仮想エラーマイクが、前記VRマイクの近くにまたは前記VRマイクの場所に配置されたエラーマイクのシミュレーションされたバージョンである、ANC装置。
【請求項20】
各補正フィルタが、前記対応するエラーマイクと前記仮想エラーマイクとの間のノイズ関係を提供する、請求項19に記載のANC装置。
【請求項21】
前記ANCコントローラが、前記少なくとも1つの補正フィルタからの出力と、それぞれのエラーマイクにおいて受信される前記ノイズキャンセレーション波および前記環境ノイズを明らかにする伝達機能からの出力とを加算した結果に基づいて、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波と、を除去するように構成されている、請求項19に記載のANC装置。
【請求項22】
前記仮想VRエラーマイクが、前記チューニング段階中に車両内の前記VRマイクの周囲の場所に配置された実際のエラーマイクを示す、請求項19に記載のANC装置。
【請求項23】
前記チューニング段階が、複数の異なる速度で、複数の道路上で運転されている車両に対応する、請求項19に記載のANC装置。
【請求項24】
前記ANCコントローラが、振幅と周波数とのうちの少なくとも1つを前記少なくとも1つの補正フィルタの各出力に適用するように構成された標準化回路、を含む、請求項19に記載のANC装置。
【請求項25】
前記ANCコントローラが、前記少なくとも1つの補正フィルタからの出力を受信し、伝達機能からの出力を受信するための加算回路を含む、請求項19に記載のANC装置。
【請求項26】
前記加算回路が、前記環境ノイズと、前記VRマイクにおいて受信された前記ノイズキャンセレーション波とを、前記少なくとも1つの補正フィルタからの前記出力と前記伝達機能からの前記出力とを加算する前記加算回路に基づいて、除去するように構成されている、請求項25に記載のANC装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、車両または他の適切な環境内での音声認識性能を向上させるためのシステム及び方法におけるアクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
ますます多くの車両が、ドライバからの音声入力を受信するための音声認識(VR)システムを備えている。音声認識システムは、一般に、車両の特定の機能の簡単で手を使用しない操作を可能にして、ドライバの注意散漫を最小限にする。VRシステムは、車両内に設置され、音声入力を受信するためにドライバの近くに配置されるVRマイクを含む。ほとんどの場合、マイクは、車両のバックミラーの近くに配置される。
【0003】
VRシステムには、一般に、さまざまな課題が伴う。例えば、VRシステムは、環境ノイズ(つまり、エンジンノイズ/ロードノイズ、など)の影響を受けやすいことがある。そのような環境ノイズは、VRシステムのマイクに提供された時の音声入力の品質に影響を与えることがある。この状態は、音声入力に悪影響を与え、VRシステムが音声入力を誤って認識する原因となり得、誤判定の原因となり得る。
【0004】
車両の内部は一般的にうるさく、これは、車両の室内が音響空間として機能しており、それによって、エンジン及び道路からシャシーとの相互作用を介して伝播するノイズ、または他の環境ノイズの強度を増加していることに起因し得る。エラーマイクを含むさまざまなアクティブノイズキャンセレーション(ANC)の実装形態が、車両の室内の環境ノイズを減らすために使用されている。そのような実装形態は、特定のエラーマイクの真下の地点でのノイズを減らすことができるが、室内全体的ではない。車両内のスピーカは、エラーマイクの内部と周辺における一次ノイズを消すための、二次ノイズフィールドを作ることができる。しかしながら、エラーマイクは、VRマイクの近くに配置されないことがあり、この状態は、ノイズがVRマイクに伝播することを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
少なくとも1つの実施形態では、ANCコントローラを含む車両アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置が開示される。ANCコントローラは、少なくとも1つのエラーマイクに動作可能に連結されている。ANCコントローラは、車両の室内を通って伝播し、音声認識(VR)マイクで受信する環境ノイズを示す、第1の信号を受信することと、VRマイクで受信する、環境ノイズを除去するためのノイズキャンセレーション波を生成することと、を行うように構成されている。ANCコントローラは、VRマイクで受信した環境ノイズとノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、少なくとも1つの補正フィルタを音声出力に適用して、環境ノイズと、VRマイクで受信したノイズキャンセレーション波とを除去することと、を行うように構成されている。
【0006】
少なくとも1つの実施形態では、アクティブノイズキャンセレーション(ANC)を車両内で実行するための方法が開示される。方法は、車両の室内を通って伝播する環境ノイズを示す第1の信号を、音声認識(VR)マイクで受信することと、環境ノイズを除去するためのノイズキャンセレーション波を生成することと、を含む。方法は、さらに、ノイズキャンセレーション波をVRマイクで受信することと、VRマイクで受信した環境ノイズとノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、車両内に配置された少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、を含む。方法は、少なくとも1つの補正フィルタを音声出力に適用して、環境ノイズと、VRマイクで受信したノイズキャンセレーション波と、を除去することを含む。
【0007】
少なくとも1つの実施形態では、ANCコントローラを含む車両アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置が、開示される。ANCコントローラは、チューニング段階で生成される仮想音声認識(VR)エラーマイクを含む。ANCコントローラは、少なくとも1つのエラーマイクに動作可能に連結されている。ANCコントローラは、筐体を通って伝播し、物理的VRマイクで受信する環境ノイズを示す、第1の信号を受信することと、VRマイクで受信する、環境ノイズを除去するためのノイズキャンセレーション波を生成することと、を行うように構成されている。ANCコントローラは、さらに、VRマイクで受信した環境ノイズとノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、少なくとも1つの補正フィルタを音声出力に適用して、環境ノイズと、VRマイクで受信したノイズキャンセレーション波と、を除去することと、を行うように構成されている。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
車両アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置であって、
少なくとも1つのエラーマイクに動作可能に連結されるための、メモリを含むANCコントローラであって、
車両の室内を通って伝播し、音声認識(VR)マイクにおいて受信される環境ノイズを示す、第1の信号を受信することと、
ノイズキャンセレーション波を生成して、上記環境ノイズを除去することであって、上記ノイズキャンセレーション波が、上記VRマイクにおいて受信されることと、
上記VRマイクにおいて受信された、上記環境ノイズと上記ノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、上記少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、
上記メモリからの少なくとも1つの補正フィルタを、上記音声出力に適用して、上記環境ノイズと、上記VRマイクにおいて受信された上記ノイズキャンセレーション波と、を除去することと、
を行うように構成されている、ANCコントローラ、
を備える、上記車両アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置。
(項目2)
上記ANCコントローラが、上記少なくとも1つのエラーマイクが上記VRマイクの近くの場所に配置された時の、上記環境ノイズと、上記VRマイクにおいて存在する上記ノイズキャンセレーション波と、を明らかにするための、チューニング段階中に生成される仮想エラーマイクを含む、上記項目に記載の車両ANC装置。
(項目3)
上記チューニング段階が、複数の異なる速度で、複数の道路上で運転されている車両に対応する、上記項目のいずれか一項に記載の車両ANC装置。
(項目4)
上記少なくとも1つの補正フィルタが、振幅と周波数と位相とのうちの少なくとも1つに対応する、上記項目のいずれか一項に記載の車両ANC装置。
(項目5)
上記ANCコントローラが、振幅と周波数とのうちの少なくとも1つを上記少なくとも1つの補正フィルタの各出力に適用するように構成された標準化回路を含む、上記項目のいずれか一項に記載の車両ANC装置。
(項目6)
上記ANCコントローラが、上記少なくとも1つの補正フィルタからの出力を受信し、伝達機能からの出力を受信するための、加算回路を含む、上記項目のいずれか一項に記載の車両ANC装置。
(項目7)
上記加算回路が、上記環境ノイズと、上記VRマイクにおいて受信された上記ノイズキャンセレーション波とを、上記少なくとも1つの補正フィルタからの上記出力と上記伝達機能からの上記出力とを加算する上記加算回路に基づいて、除去するように構成されている、上記項目のいずれか一項に記載の車両ANC装置。
(項目8)
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)を車両内で実行するための方法であって、
車両の室内を通って伝播する環境ノイズを示す第1の信号を、音声認識(VR)マイクにおいて受信することと、
ノイズキャンセレーション波を生成して、上記環境ノイズを除去することと、
上記ノイズキャンセレーション波を、上記VRマイクにおいて受信することと、
上記VRマイクにおいて受信された、上記環境ノイズと上記ノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、上記車両内に配置された少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、
少なくとも1つの補正フィルタを上記音声出力に適用して、上記環境ノイズと、上記VRマイクにおいて受信された上記ノイズキャンセレーション波と、を除去することと、
を備える、上記方法。
(項目9)
仮想VRエラーマイクを、チューニング段階中に電気的に生成して、上記少なくとも1つのエラーマイクが上記VRマイクの近くの場所に配置された時の、上記環境ノイズと、上記VRマイクにおいて存在する上記ノイズキャンセレーション波と、を明らかにすること、をさらに備える、上記項目に記載の方法。
(項目10)
上記チューニング段階が、複数の異なる速度で、複数の道路上で運転されている車両に対応する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
上記少なくとも1つの補正フィルタが、振幅と周波数と位相とのうちの少なくとも1つに対応する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
上記少なくとも1つの補正フィルタの各出力を、振幅と周波数とのうちの少なくとも1つを、上記少なくとも1つの補正フィルタの各出力に適用することによって標準化すること、をさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
上記少なくとも1つの補正フィルタからの出力と、伝達機能からの出力と、を受信することと、さらに備える、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
上記少なくとも1つの補正フィルタからの上記出力と上記伝達機能からの上記出力とを加算して、上記環境ノイズと、上記VRマイクにおいて受信された上記ノイズキャンセレーション波と、を除去すること、をさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置であって、
メモリと、
チューニング段階で生成され、上記メモリ上に格納されている仮想音声認識(VR)エラーマイクを含み、少なくとも1つのエラーマイクに動作可能に連結されるための、上記ANCコントローラであって、
筐体を通って伝播し、物理的VRマイクにおいて受信される環境ノイズを示す第1の信号を受信することと、
ノイズキャンセレーション波を生成して上記環境ノイズを除去することであって、上記ノイズキャンセレーション波が、上記VRマイクにおいて受信されることと、
上記VRマイクにおいて受信された、上記環境ノイズと上記ノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、上記少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、
上記メモリからの少なくとも1つの補正フィルタを上記音声出力に適用して、上記環境ノイズと、上記VRマイクにおいて受信された上記ノイズキャンセレーション波と、を除去することと、
を行うように構成された、ANCコントローラと、
を備える、上記アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置。
(項目16)
上記仮想VRエラーマイクが、上記チューニング段階中に車両内の上記VRマイクの周囲の場所に配置された実際のエラーマイクを示す、上記項目に記載のANC装置。
(項目17)
上記チューニング段階が、複数の異なる速度で、複数の道路上で運転されている車両に対応する、上記項目のいずれか一項に記載のANC装置。
(項目18)
上記ANCコントローラが、振幅と周波数とのうちの少なくとも1つを上記少なくとも1つの補正フィルタの各出力に適用するように構成された標準化回路、を含む、上記項目のいずれか一項に記載のANC装置。
(項目19)
上記ANCコントローラが、上記少なくとも1つの補正フィルタからの出力を受信し、伝達機能からの出力を受信するための加算回路を含む、上記項目のいずれか一項に記載のANC装置。
(項目20)
上記加算回路が、上記環境ノイズと、上記VRマイクにおいて受信された上記ノイズキャンセレーション波とを、上記少なくとも1つの補正フィルタからの上記出力と上記伝達機能からの上記出力とを加算する上記加算回路に基づいて、除去するように構成されている、上記項目のいずれか一項に記載のANC装置。
(摘要)
少なくとも1つの実施形態では、ANCコントローラを含む車両アクティブノイズキャンセレーション(ANC)装置が、開示される。ANCコントローラは、少なくとも1つのエラーマイクに動作可能に連結されている。ANCコントローラは、車両の室内を通って伝播し、音声認識(VR)マイクで受信される環境ノイズを示す、第1の信号を受信することと、VRマイクで受信される、環境ノイズを除去するためのノイズキャンセレーション波を生成することと、を行うように構成されている。ANCコントローラは、VRマイクで受信した、環境ノイズとノイズキャンセレーション波とを少なくとも示す音声出力を、少なくとも1つのエラーマイクから受信することと、少なくとも1つの補正フィルタを音声出力に適用して、環境ノイズと、VRマイクで受信したノイズキャンセレーション波とを除去することと、を行うように構成されている。
【0008】
本開示の実施形態は、添付の特許請求の範囲で、詳細に指摘される。しかしながら、さまざまな実施形態の他の特徴は、以下の詳細な説明を添付の図面を合わせて参照することによって、より明らかになり、最も良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による、チューニング段階におけるアクティブノイズキャンセレーション(ANC)システムを示す。
【
図2】一実施形態による、生産段階におけるANCシステムを示す。
【
図3】例示的なANCシステムの、音響経路と電気経路とを示す。
【
図4】一実施形態による、ANCシステムの音響経路と電気経路を示す。
【
図5A】一実施形態による、チューニング段階においてANCシステムによって生成される、さまざまな補正フィルタを示す。
【
図5B】一実施形態による、チューニング段階においてANCシステムによって生成される、さまざまな補正フィルタを示す。
【
図6】一実施形態による、ANCシステムに関連して活用されるANCコントローラを示す。
【
図7】一実施形態による、補正フィルタを生成するための方法を示す。
【
図8】一実施形態による、ANCを車両内で実行するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
要求に応じて、本発明の詳細な実施形態を本明細書で開示するが、開示の実施形態が、単に本発明の例示にすぎず、さまざまな形態と代替的な形態とで具現化され得る、ということを理解すべきである。図は、必ずしも正しい縮尺ではなく、いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために、誇張または最小化され得る。したがって、本明細書で開示する具体的な構造詳細及び機能詳細は、限定するものとしてではなく、単に、本発明をさまざまに用いることを当業者に教示するための代表的な基礎として、解釈されるべきである。
【0011】
本開示の実施形態は、一般に、複数の回路と、電気デバイスと、少なくとも1つのコントローラとを提供する。回路と、少なくとも1つのコントローラと、他の電気デバイスと、それぞれによって提供される機能と、への全ての言及は、本明細書に例示し、説明するもののみを包含するように限定すること、を意図していない。特定のラベルが、開示のさまざまな回路とコントローラと他の電気デバイスとに割り当てられ得るが、そのようなラベルは、さまざまな回路とコントローラと他の電気デバイスとの動作の範囲を限定することを意図してはいない。そのような回路とコントローラと他の電気デバイスとを、所望の特定の種類の電気的実装形態に基づいた任意の方法で、互いに組み合わせ、及び/または分離することができる。
【0012】
本明細書で開示する任意のコントローラが、互いに共同して本明細書で開示する動作を実行する、任意の数の、マイクロプロセッサと、集積回路と、メモリデバイス(例えば、FLASH、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、電気的プログラム可能リードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能リードオンリメモリ(EEPROM)、またはそれらの他の適切な変形)と、ソフトウェアと、を含むことができる、ということを認識すべきである。加えて、開示の任意のコントローラは、任意の1つまたは複数のマイクロプロセッサを活用して、任意の数の開示の機能を実行するようにプログラムされた非一時的なコンピュータ可読媒体内に具現化されたコンピュータプログラムを実行する。さらに、本明細書で提供する任意のコントローラは、筐体と、筐体内に配置された、さまざまな数の、マイクロプロセッサと、集積回路と、メモリデバイス((例えば、FLASH、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、電気的プログラム可能リードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能リードオンリメモリ(EEPROM))と、を含む。開示のコントローラは、また、本明細書で説明する通り、データを、他のハードウェアベースのデバイスから、及びそれらに、それぞれ、受信することと送信することとのための、ハードウェアベースの入力と出力とを含む。
【0013】
本明細書で開示する態様は、音声認識動作に関連して使用されるマイクの内部と周辺とのノイズを減らすことができ、それは、音声認識(VR)システムにコストを追加しないかもしれず、一方でそれと同時に、アクティブノイズキャンセレーション(ANC)の使用は、VRシステムの性能を妨害しないかもしれない。ANCシステムに関連して使用されるエラーマイクは、VRシステムに関連して使用されるVRマイクの近くに配置され得る。例えば、VRマイクは、音声入力を、車両の乗員から、VRシステムが音声入力に基づいて動作を実行するという目的のために、受信することができる。エラーマイクをVRマイクの近くに配置することによって、VRマイクで(またはこの位置で)遭遇するノイズの、車両内に置かれた他のエラーマイクに対する推定値を、取得することができる。エラーマイクをVRマイクの近くに配置することは、チューニング段階で実行され得る。任意の数の補正フィルタをチューニング段階中に生成して、VRマイクの近くのエラーマイクによって取得される推定ノイズを最小化することができる。補正フィルタの数は、一般に、ANCシステム内のエラーマイクの数に正比例する。言い換えると、さまざまな補正フィルタは、VRマイクの近くに配置されたエラーマイクと、車両内の別のどこかに配置された他のエラーマイクと、の間で遭遇するエラーを最小限にして、環境ノイズを減らすように構成され得る。例えば、4つの異なる座席の位置に対して4つのエラーマイクがある場合、補正フィルタは、VRマイクに関する各エラーマイクに対して生成される。
【0014】
一般的に、各補正フィルタは、予測パラメータを表す。予測パラメータを用いて、VRマイクの位置に存在するノイズパターンが、ANCシステムで使用されている他のエラーマイクで取得したノイズに関して、推定または予測され得る。また、チューニング段階後、VRマイクの近くに配置されたエラーマイクを、車両が生産段階にある時は、車両から取り外すことができる、ということを認識すべきである。この態様は、コストを削減することができ、それは、ANCシステムに関連して一般的に使用される、所望のエリアに(例えば、乗員の座席に)配置された既存のエラーマイクを、チューニング段階で使用し、その後、生産(またはライブ)段階のための、その意図した目的のために使用することができ、それによって、適切なノイズキャンセレーションを、VRマイクの位置で、やはり可能にすることができるからである。
【0015】
図1は、一実施形態による、車両12の、チューニング段階におけるアクティブノイズキャンセレーション(ANC)システム10を示す。システム10は、音声認識(VR)コントローラ14と、少なくとも1つのアクティブノイズキャンセレーション(ANC)コントローラ16(以降「ANCコントローラ16」)と、を含む。ANCコントローラ16は、少なくとも1つのマイクロプロセッサ17と、メモリ19と、を含む。VRマイク18は、VRコントローラ14と、任意でANCコントローラ16と、に電気的に連結されている。車両の乗員は、音声入力を、VRマイク18に提供することができる。次に、VRマイク18は、音声入力を示す電気出力を、VRコントローラ14に提供する。VRコントローラ14は、電気出力を処理し、車両12内の他の電気デバイスを制御して、音声入力で示された所望のタスクを実行する。使用され得る例示的な音声入力は、(i)ラジオ/マルチメディアデバイスの音量を調節するためと、(ii)車両内の温度設定を調節するためと、(iii)携帯電話などの手を使用しない操作を可能にするために、携帯電話と相互作用するためと、のコマンドを含むが、これらに限定されない。
【0016】
複数のスピーカ20a〜20n(「20」)は、車両12(または非車両アプリケーションでは筐体)の室内に配置されている。スピーカ20は、音声データを再生するための、車両内の娯楽システムの一部(図示せず)であってよい。加えて、VRコントローラ14は、声ベースの音声を、車両の乗員に出力するように構成されている。5つのスピーカ20のみが例示されているが、任意の数のスピーカを実装することができる、ということを認識される。システム10は、さらに、ANCを実行することに関連して使用される、複数のエラーマイク22a〜22nを含む。一般的に、各エラーマイク22は、車両の乗員が座り得るエリアの近くに配置される。ANCシステム10は、エンジンノイズ及びロードノイズなどであるが、これらに限定されない、車両12内の環境ノイズを、車両12内の車両の乗員のために除去するように構成されている。ANCコントローラ16は、二次ノイズフィールドを、対応するスピーカ20から送信して、車両12内の環境ノイズを消すことができる。
【0017】
チューニング段階中、エラーマイク22は、VRマイク18の近く、またはVRマイク18と同じ位置(または場所)23に、配置され得る。この場合、チューニング段階中に、VRマイクの近くまたはそれと同じ位置に配置されたエラーマイク22は、一般に、VRエラーマイク(またはVREM)24として定義され得る。さらに、チューニング段階では、車両12は、VRマイク18の場所23に存在する環境ノイズを推定するために、任意の数の所定の毎分回転数(RPM)(または異なる車両速度)で、任意の数の道路上で運転される。上述した通り、環境ノイズは、エンジンノイズまたはロードノイズを含むが、これらに限定されない。加えて、ノイズキャンセレーション波を含む二次経路反応が、各スピーカ20から提供されて、VRマイク18において存在する環境ノイズを消す。ANCコントローラ16は、VRマイク18の場所23と各エラーマイク22との間の対応する補正フィルタを格納して、各エラーマイク22によって取得された実際のノイズを所与として、VRマイク18の場所23に伝播し得る、またはVRマイク18の場所23において存在し得る、環境ノイズまたは他のノイズを推定する。
【0018】
チューニング段階の間、ANCコントローラ16は、また、エラーマイク22の各々の場所において存在する環境ノイズを推定して、ANCを、ANCシステムの通常の動作のもとで実行する。例えば、ノートパソコンまたは他の適切なデバイス(図示せず)などのコンピューティングデバイスは、双方向通信が発生するチューニング段階中、ANCコントローラ16に電気的に連結されている。コンピューティングデバイスは、VRマイク18の近くに配置されたエラーマイク22(またはVREM24)を含む、車両12全体に配置された各エラーマイク22に対して、対応する補正フィルタを生成する。チューニング段階中、コンピューティングデバイスは、各補正フィルタを、各エラーマイク22について受信した環境ノイズに基づいて、生成する。コンピューティングデバイスは、補正フィルタを、ANCコントローラ16に、メモリ19上での保管のために、(例えば、無線または有線で)電気的に送信する。生産段階では、次いで、ANCコントローラ16は、環境ノイズとノイズキャンセレーション波とを消すための、適切な振幅、周波数、位相、などで対応するフィルタを使用して、環境ノイズと、VRマイク18で受信したノイズキャンセレーション波とを消す。この態様を、以下でより詳細に説明する。
【0019】
図2は、一実施形態による、生産段階におけるANCシステム10を示す。生産段階では、ANCコントローラ16は、チューニング段階中の仮想VRエラーマイク26に対応する情報を、コンピューティングデバイスから受信する。メモリ19は、仮想VRエラーマイク26に対応する情報を格納する。仮想VRエラーマイク26は、
図1のチューニング段階に関連して使用されるVRM24に関する、VRマイク18の場所23を表す。ANCコントローラ16は、チューニング段階中に生成された補正フィルタを活用(または適用)して、仮想VRエラーマイク26におけるノイズを推定し、一方で、車両12が運転されている間に他のエラーマイク22a〜22nで取得した環境ノイズを、監視する。
【0020】
図3は、
図1と
図2とに関連して例示した実装形態とは異なる、例示的なANCシステム40を示す。システム40は、音声認識システムに関連して使用されるVRマイク18の大よそ近くに配置され得る、エラーマイク22を含む。VRマイク18及びエラーマイク22は、車両12の乗客の位置に配置されているが、必ずしも互いの近くに配置されなくてよい。エラーマイク22及びVRマイク18は、ノイズキャンセレーションゾーン41内に配置され得る。システム40は、適応フィルタ44と利得回路46と加算回路48とを含む、ANCコントローラ16を含む。ANCコントローラ16は、伝達機能45に対応する情報を、電気的に格納する。これを以下に説明する。システム40は、さらに、ノイズセンサ50と、ANCの目的のために使用される、車両12内に配置された少なくとも1つのスピーカ20と、を含む。上述した通り、環境ノイズ54は、VRマイク18の音響経路内にあり得る。言い換えると、VRマイク18は、VRシステムの全体的な品質を低下させ得る、車両の室内を通って伝播する、望ましくないまたは不必要な環境ノイズ54を拾い上げることがある。
【0021】
(ANCシステム内の)ノイズセンサ50は、タコメータまたは加速度計であってよい。ノイズセンサ50(つまり、タコメータ)は、車両の室内を通って伝播するエンジンノイズに対応する、エンジンRPMを提供することができる。加えて、ノイズセンサ50(つまり、加速度計)は、車両の室内を通って伝播するロードノイズに対応する、車両速度情報を提供することができる。一般的に、(ANCシステム40内の)ノイズセンサ50は、車両12の室内で伝播する相対ノイズの量を明らかにするために、環境ノイズ54を拾い上げる。適応フィルタ44は、環境ノイズ54に対して位相がずれているノイズキャンセレーション波をスピーカ20において生成することによって、環境ノイズ54を減少させる。上述した通り、一般的に、ANCシステム40は、エラーマイク22の近くの地点におけるノイズを減少させることができるが、車両12内全体ではない。したがって、VRマイク18は、環境ノイズ54などの一次ノイズフィールドだけでなく、二次経路上に提供される、ANCシステム40によって生成されるノイズ(つまり、ノイズキャンセレーションフィールド)も、扱う必要があり得る。ANCコントローラ16は、チューニング段階中、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、イタリア、パルマ、Parco Area delle Scienze 181/a、43100にあるパルマ大学生産工学部の、Angelo Farniaによる、2007年5月の、「Advancement In Impulse Response Measurements By Sine Sweeps」に明記された、さまざまなインパルス応答測定を実行することができる。そのようなインパルス応答測定(またはサインスイープ信号)は、各エラーマイク22に対する二次経路によって導入されるノイズを明らかにするように構成されている。
【0022】
ANCコントローラ16は、エラーマイク22で受信するノイズ(例えば、環境ノイズ54及びノイズキャンセレーション波)を明らかにする、伝達機能45(または周波数応答)を格納している。これが、車両内の各対応するスピーカ20の近くであるが、本実施例におけるVRマイク18の近くまたは最も近くではないところに配置されている各エラーマイク22に対して実行される、ということを認識すべきである。したがって、ANCコントローラ16は、エラーマイク22からの出力を、伝達機能45を介した出力に、加算回路48を介して加算し、エラーマイク22の出力に存在するノイズ(例えば、環境ノイズ54及びノイズキャンセレーション波)を消す。しかしながら、図示する通り、伝達機能45は、環境ノイズ54及び/またはVRマイク18で受信したノイズキャンセレーション波に対処しない。
【0023】
図4は、
図1と
図2とに例示した実装形態に一般的に対応する、一実施形態によるANCシステム10を示す。具体的には、
図4は、ANCシステム10の音響経路と電気経路とを示す。さらに、
図4は、ANCシステム10が、補正フィルタ(例えば、CF1、CF2、CFnなど)及び仮想VRエラーマイク26が生成される、
図1に関連して記したチューニング段階を経験する状態を示す。ANCコントローラ16は、
図3に関連して前に示した通り、適応フィルタ44と、利得回路46と、加算回路48と、伝達機能45と、を含む。
【0024】
述べた通り、ANCコントローラ16は、ノイズキャンセレーションゾーン41内のVRマイク18に関連するシステム10内の各エラーマイク22との間に、対応する補正フィルタを生成する。したがって、この点において、ANCコントローラ16は、音響経路上の望ましくない音(例えば、環境ノイズ54)と二次経路上の望ましくない音(例えば、ノイズキャンセレーション波)とを、チューニング段階中に明らかにし、補正フィルタを生成して、VRマイク18で受信した望ましくない音の影響を、各エラーマイク20に関して、軽減または減らす。
図4は、エラーマイク22a〜22nがANCコントローラ16の右下に配置されていると示したが、これは、対応する補正フィルタCF1、CF2、及びCFnが、対応するエラーマイク22aとエラーマイク22bとエラーマイク22nとの出力に、それぞれ適用される、ということを例示するためのみに提供されている。仮想VRエラーマイク26は、
図1に例示したVRマイク18に関連する、実際の物理的なエラーマイク22(またはVREM24)の、シミュレーションされたバージョンに対応する。
【0025】
(ANCシステム10内の)ノイズセンサ50は、環境ノイズ54を拾い上げて、車両12の室内で伝播する相対ノイズの量を明らかにする。適応フィルタ44は、環境ノイズ54に対して位相がずれているノイズキャンセレーション波をスピーカ20で生成することによって、環境ノイズ54を減らす。上述した通り、VRマイク18は、環境ノイズ54などの一次ノイズフィールドだけでなく、二次経路上に提供される、ANCシステム40によって生成されたノイズも扱う必要があり得、環境ノイズ54及び(例えば、二次経路を介した)ノイズキャンセレーション波の両方が、ノイズキャンセレーションゾーン41内のVRマイク18で拾い上げられる。
【0026】
ANCコントローラ16は、対応する補正フィルタCF1と補正フィルタCF2と補正フィルタCFnとを、(この場合もやはり、チューニング段階中のVRマイク18の場所23の近く、またはそれと同じ場所に配置された実際の物理的なエラーマイク22の、電気的にシミュレーションされたバージョンである)仮想VRエラーマイク26に関連する、対応するエラーマイク22a〜22nで取得した実際のノイズに基づいて、VRマイク18の出力に適用して、環境ノイズ54と、VRマイク18で二次経路を介して受信したノイズキャンセレーション波と、を消す。これは、追加のエラーマイク22を、生産段階中にVRマイク18の近くに入れる必要なしに、達成され得る。
【0027】
図5A〜
図5Bは、一実施形態による、ANCシステム10によってチューニング段階に生成される、さまざまな補正フィルタ(例えば、CF1、CF2、...、CFn)を示す。上述した通り、ANCコントローラ16は、VRマイク18の対応するエラーマイク22に対して、各補正フィルタを、チューニング段階中に生成する。生産モードまたはライブモードでは、ANCコントローラ16は、
図1に関連して例示した、車両12内の場所23にあるVRマイク18に対応する仮想VRエラーマイク26を、これもまた車両12内の場所23に配置されたエラーマイク22(またはVREM24)に対して、生成する。さらに述べた通り、ANCコントローラ16は、スピーカ20と、スピーカ20の近くに配置された対応するエラーマイク22と、の間の二次経路を、車両12内の場所23におけるVRマイク18に関して推定する。
【0028】
ANCコントローラ16は、その後、対応する補正フィルタを生成して、チューニング段階の車両12内の場所23におけるVRマイク18でのノイズと、車両12内の対応するエラーマイク22でのノイズと、を明らかにする。エラーマイク22aに関連して生成された補正フィルタを、一実施例として考える。したがって、
図5Aに示す、エラーマイク22aとVRマイク18との間に存在するノイズに対する補正フィルタ(例えば、CF1)に到達するために、車両12は、さまざまな速度で運転されて、ANCコントローラ16が、補正フィルタ(例えば、CF1)を生成し、適用して、エラーマイク22aとVRマイク18(つまり、生産段階における仮想VRエラーマイク26)との間の関係を、さまざまなノイズシナリオに対して提供するようにする。同様に、エラーマイク22bとVREM24との間のノイズ関係が確立されて、補正フィルタ(例えば、CF2)を提供し、車両12内の各エラーマイク22に対しても同様である。
【0029】
生産段階では、VREM24の近くに配置された(または車両12内の場所23における)エラーマイク22は、取り外され、ANCコントローラ16は、チューニング段階中に車両12内のVRマイク18の場所23に配置されていた実際のエラーマイク22を示す、仮想VRエラーマイク26を生成し、格納する。
【0030】
補正フィルタは、仮想VRエラーマイク26と各対応するエラーマイク22との間の実際のノイズを表し、または明らかにする。補正フィルタは、また、環境ノイズと、VRマイク18で拾い上げられるノイズキャンセレーションフィールドとを、軽減し、または除去するために使用される。
図5Aに関連して、ANCコントローラ16は、各エラーマイク22a〜22nから受信したフィルタ入力を標準化する、標準化回路118を含む。例えば、標準化回路118は、エラーマイク22から受信した後の各フィルタ処理入力が、大まかに、同じ振幅と周波数とを有していることを確実にする。
【0031】
図5Bを参照して、例示の目的のために、チューニング段階中、環境ノイズ及び(例えば、二次経路を介した)ノイズキャンセレーションフィールドが、エラーマイク22aにおいて、0.5の振幅で受信され、環境ノイズ及び(例えば、二次経路を介した)ノイズキャンセレーションフィールドが、VRマイク18において、0.25の振幅で受信された、と仮定すると、補正フィルタ(CF1)が生成されて、1.5の利得を、環境ノイズ54と二次経路を介したノイズキャンセレーションフィールドとの振幅(例えば、0.5)に適用して、補正フィルタCF1が0.75の利得を出力するようにする。加算回路48は、エラーマイク22aで受信した、環境ノイズ54とノイズキャンセレーションフィールドとの振幅と、VRマイク18で受信した、環境ノイズ54とノイズキャンセレーションフィールドとの振幅と、を加算し(例えば、0.75または約0.75の合計振幅)、そして、それを、補正フィルタCF1の出力の振幅(例えば、0.75または約0.75の合計振幅)から減算して、エラーマイク22aとVRマイク18との各々における環境ノイズ54とノイズキャンセレーションフィールドとの振幅を消し、加算回路48の出力が、零または零に近いなんらかの値であるようにする。チューニング段階中、補正フィルタの利得を、推定器ブロック(図示せず)内に格納し、生産段階で、同様の振幅がエラーマイク22aとVRマイク18とにおいて検出された時に、呼び出すことができる。補正フィルタのうちの任意のものによって活用されるパラメータが、振幅、周波数、位相、などを含むことができるが、これらに限定されない、ということが認識される。
【0032】
図6は、一実施形態による、ANCシステム10に関連して活用されるANCコントローラ16の、より詳細な図を示す。ANCコントローラ16は、アナログ形式の音声入力を対応するエラーマイク22a〜22nから受信する、複数の、第1のアナログ・デジタル変換器(ADC)122a〜122n(「122」)を含む。音声入力は、環境ノイズ54及び二次経路を介したノイズキャンセレーションフィールドなどの、車両12の室内から拾い上げられた音を備えることができる。ANCコントローラ16は、アナログ形式の音声入力を、デジタル形式に変換する。デジタルシグナルプロセッサ(DSP)(または他のプロセッサ)124は、デジタル化された音声入力を、さまざまなADC122から受信する。ANCコントローラ16は、さらに、アナログ形式の環境ノイズ54を示す音声入力をノイズセンサ50から受信する、第2のアナログ・デジタル変換器(ADC)126を含む。ADC126は、音声入力をデジタル形式に変換し、それを、DSP124に提供する。
【0033】
DSP124は、ノイズセンサ50とエラーマイク22とからのデジタル化された音声入力を処理して、アクティブノイズキャンセレーションを車両12内で提供し、VRマイク18で受信した、環境ノイズ54とノイズキャンセレーションフィールドとを消す。DSP124は、アクティブノイズキャンセレーションを車両12内で実行するための、任意の数のフィルタを含むことができる。複数のデジタル・アナログ変換器(DAC)128a〜128n(「128」)は、DSP124からの処理された/フィルタ処理された音声出力をアナログ出力に変換して、車両12内のスピーカ20a〜20nに提供するために、提供されている。
【0034】
USBポート(または他の適切なポート)130が提供されて、DSP124が、コンピューティングデバイス132(例えば、ノートパソコン、など)と双方向通信するように構成されるようにする。コンピューティングデバイス132を、チューニング段階中に、各エラーマイク22に関連するVRマイク18における環境ノイズ54とノイズキャンセレーションフィールドとを明らかにするために、使用することができる。コンピューティングデバイス132は、上述の通り、さまざまな補正フィルタと仮想VRエラーマイク26に対応する情報とを生成し、それらを、DSPに、USBポート130を介して提供することができる。代替的に、I2Cポート136は、補正フィルタに対応する情報を有するフラッシュメモリ134を受け入れることができる。
【0035】
図7は、一実施形態による、補正フィルタをチューニング段階中に生成するための方法200を示す。
【0036】
動作202では、コンピューティングデバイス132は、補正フィルタを、VRマイク18の近くに配置されたエラーマイク22を含む、車両12内の各エラーマイク22に対して生成する。
【0037】
動作204では、コンピューティングデバイス132は、動作202に関連して述べた補正フィルタを、車両12が異なるRPMで任意の数の道路上で運転された時に、生成する。
【0038】
動作205では、コンピューティングデバイス132は、仮想VRエラーマイク26に対応する情報を生成する。
【0039】
動作206では、コンピューティングデバイス132は、補正フィルタと、仮想VRエラーマイク26に対応する情報とを、ANCコントローラ16に、そこでの保管のために、送信する。
【0040】
図8は、一実施形態による、ANCを車両12内で実行するための方法300を示す。
【0041】
動作302では、ANCコントローラ16は、補正フィルタと、仮想VRエラーマイク26に対応する情報とを、メモリ19上に格納する。
【0042】
動作304では、ANCコントローラ16は、これもまたVRマイク18で受信する、車両12を通って伝播する環境ノイズを示す、少なくとも1つの信号を受信する。
【0043】
動作306では、ANCコントローラ16は、環境ノイズを除去するためのノイズキャンセレーション波を生成する。
【0044】
動作308では、ANCコントローラ16は、環境ノイズと、VRマイク18で受信したノイズキャンセレーションと、を示す音声出力を、少なくとも1つのエラーマイク22から受信する。
【0045】
動作310では、ANCコントローラ16は、メモリ19からの少なくとも1つの補正フィルタを音声出力に適用して、VRマイク18における環境ノイズとノイズキャンセレーション波とを除去する。
【0046】
本明細書で開示した態様は、車両内で音声入力をドライバから受信するマイクに関連して使用されるアクティブノイズキャンセレーションシステムの使用を説明したが、開示のアクティブノイズキャンセレーションシステムを、アクティブノイズキャンセレーションをマイクの存在下で用いるアプリケーションで使用することができる、ということが認識される。一実施例では、本明細書で開示した態様を、アクティブノイズキャンセレーションに関連して使用されるマイクとエラーマイクとを含むヘッドフォンに関連して、使用することができる。除去することが望まれる任意の種類のノイズを、対応するチューニング段階で明らかにすることができ、補正フィルタを、マイクで拾い上げられる不必要なノイズを相殺するために、上記で開示した方法で生成することができる。
【0047】
例示的な実施形態を上記で説明したが、これらの実施形態が、本発明のすべての可能性のある形態を説明している、ということを意図していない。むしろ、本明細書で使用する言葉は、限定よりも説明の言葉であり、さまざまな変更が、本発明の精神と範囲とから逸脱することなく、なされ得る、ということが理解すされる。加えて、さまざまな実装されている実施形態の特徴を、本発明のさらなる実施形態を形成するために、組み合わせることができる。