特許第6889993号(P6889993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6889993地表変状可視化装置及び地表変状可視化プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889993
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】地表変状可視化装置及び地表変状可視化プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20210607BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   G01S13/90 127
   G01S13/90 191
   G06T1/00 285
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-175628(P2016-175628)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-40728(P2018-40728A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】小俣 雅志
(72)【発明者】
【氏名】三五 大輔
(72)【発明者】
【氏名】郡谷 順英
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−209780(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/016034(WO,A1)
【文献】 米国特許第05835055(US,A)
【文献】 特開2010−175381(JP,A)
【文献】 特開2009−289111(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/016153(WO,A1)
【文献】 中国特許第103576149(CN,B)
【文献】 中国実用新案第203773045(CN,U)
【文献】 香川昌己 ほか,InSARにおける位相情報処理システムの開発 Development of a System for InSAR Phase Processing,計測自動制御学会論文集,日本,社団法人計測自動制御学会 The Society of Instrument and Control Engineers,2001年11月,第37巻/第11号,1012-1019頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00−17/95
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる時刻に合成開口レーダにより取得された観測対象である地表の時系列画像データから、前記観測対象の変位による位相差に基づいて生成された縞模様の画像である干渉縞画像を生成する干渉縞画像生成手段と、
前記時系列画像データから、前記時系列画像データ間のコヒーレンスが低い領域である低干渉性領域を抽出する低干渉性領域抽出手段と、
前記干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを重畳する重畳手段と、
前記重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする地表変状可視化装置。
【請求項2】
前記重畳手段は、前記干渉縞画像と前記低干渉性領域の画像と地形の状態を表す地形表現図とを重畳し、前記表示手段が、前記重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像と地形表現図とを表示する、請求項1に記載の地表変状可視化装置。
【請求項3】
前記地形表現図が傾斜量図である、請求項2に記載の地表変状可視化装置。
【請求項4】
コンピュータを、
異なる時刻に合成開口レーダにより取得された観測対象である地表の時系列画像データから、前記観測対象の変位による位相差に基づいて生成された縞模様の画像である干渉縞画像を生成する干渉縞画像生成手段、
前記時系列画像データから、前記時系列画像データ間のコヒーレンスが低い領域である低干渉性領域を抽出する低干渉性領域抽出手段、
前記干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを重畳する重畳手段、
前記重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを表示する表示手段、
として機能させる、地表変状可視化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表変状可視化装置及び地表変状可視化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダー(SAR Synthetic Aperture Radar)は、人工衛星等に搭載され、地表面に向けて電波(マイクロ波パルス)を発射し、その反射波を観測して地表面の形状等を測定する。このようなSARによる観測を、地表面の同じ場所に対して2回以上行い、その差をとる(上記反射波の干渉縞を生成する)と、地表面の動きを詳細にとらえることができる(干渉SAR)。
【0003】
上記干渉SARによれば、観測対象の時間的変化を検出する(下記特許文献1参照)ことができるとともに、取得した上記反射波から相関が低い領域を抽出して低相関領域画像を生成することもできる。このような低相関領域には、地震発生時に地表面に発生した断層による変位、河川、地すべり、液状化、盛土崩壊等が含まれる。これらの場所では、河川を除いて地震等の前後における地表面の状態が大きく変化しているので、反射波間の干渉性が低下するからである(下記非特許文献1参照)。また、河川の場合は、水面の状態が常に変動しているので、元々反射波の干渉性が低く、低相関領域に含まれる。
【0004】
例えば、下記非特許文献2には、干渉SAR画像(干渉縞画像)と3時期コヒーレンス画像(低相関領域画像)とから断層の位置を示そうとしている。しかし、3時期コヒーレンス画像には、上述した通り、断層による変位の他に河川、あるいは地すべり、液状化、盛土崩壊等の地域も含まれるので、干渉縞画像とコヒーレンス画像の重ね合わせを行っていない非特許文献2により断層による変位を抽出することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-3302号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】伊藤陽介・細川直史(2002)干渉SARデータを用いた地震被害度推定モデル,電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌,122,4,617-623)
【非特許文献2】石原光則・夏秋嶺・大木真人・田殿武雄・本岡毅・永井裕人・鈴木新一(2016)地球観測衛星による熊本地震の研究観測対応,日本リモートセンシング学会誌,36,3,204.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、干渉SAR画像を使用して、断層による変位、地すべり、液状化、盛土崩壊等の地域を明瞭に抽出できる地表変状可視化装置及び地表変状可視化プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、地表変状可視化装置であって、異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象である地表の時系列画像データから干渉縞画像を生成する干渉縞画像生成手段と、前記時系列画像データから、低干渉性領域を抽出する低干渉性領域抽出手段と、前記干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを重畳する重畳手段と、前記重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記重畳手段は、前記干渉縞画像と前記低干渉性領域の画像と地形の状態を表す地形表現図とを重畳し、前記表示手段が、前記重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像と地形表現図とを表示してもよい。
【0010】
また、上記地形表現図は傾斜量図であるのが好適である。
【0011】
また、本発明の他の実施形態は、地表変状可視化プログラムであって、コンピュータを、異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象である地表の時系列画像データから干渉縞画像を生成する干渉縞画像生成手段、前記時系列画像データから、低干渉性領域を抽出する低干渉性領域抽出手段、前記干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを重畳する重畳手段、前記重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを表示する表示手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、干渉SAR画像を使用して、断層による変位、地すべり、液状化、盛土崩壊等の地域を明瞭に抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態にかかる地表変状可視化装置を使用した観測対象である地表の変状抽出システムの一実施形態の構成例を示す図である。
図2】実施形態にかかる地表変状可視化装置の例の機能ブロック図である。
図3】実施形態にかかる表示制御部が表示装置に表示する重畳画像の例を示す図である。
図4】地形表現図として傾斜量図を使用し、干渉縞画像と低干渉性領域の画像とともに重畳した例を示す図である。
図5】実施形態にかかる地表変状可視化装置の動作例のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0015】
図1には、実施形態にかかる地表変状可視化装置を使用した、観測対象である地表の変状抽出システムの構成例が示される。図1において、人工衛星101に搭載された合成開口レーダ(SAR)等のレーダ装置により、地表の所望範囲である観測対象のレーダ画像データを取得し、このレーダ画像データを本実施形態の地表変状可視化装置102に送信する。地表変状可視化装置102では、アンテナ103を介して受信したレーダ画像データを処理して観測対象である地表の変状を解析する。この場合のレーダ画像データは、異なる時刻にレーダ装置により取得されたレーダ画像データ(以後、時系列画像データという)となっている。また、地表変状可視化装置102は、例えばコンピュータ上で所定のプログラムを動作させることにより実現することができる。
【0016】
なお、上記人工衛星101の数は1基に限らず、同一の撮影仕様である複数の人工衛星であってもよい。また、上記レーダ装置は、人工衛星101の他、航空機に搭載してもよい。
【0017】
図2には、実施形態にかかる地表変状可視化装置の例の機能ブロック図が示される。図2において、地表変状可視化装置は、衛星データ取得部10、干渉縞画像生成部12、低干渉性領域抽出部14、地形表現図取得部16、重畳部18、表示制御部20、通信部22、記憶部24及びCPU26を含んで構成されている。上記地表変状可視化装置は、CPU26、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU26とCPU26の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0018】
衛星データ取得部10は、人工衛星101から送信され、アンテナ103により受信された、上記観測対象である地表のレーダ画像データを取得し、記憶部24に記憶する。この場合のアンテナ103は、本実施形態の通信部22の一部を構成する。また、上記レーダ画像データは、上述したように、異なる時刻、例えば地震等の災害の発生前後に取得されたレーダ画像データ(時系列画像データ)である。このレーダ画像データには、地表からの反射波の位相の情報が含まれている。
【0019】
干渉縞画像生成部12は、上記異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象である地表の時系列画像データを記憶部24から読み出し、干渉縞画像を生成する。生成した干渉縞画像は、記憶部24に記憶させる。
【0020】
ここで、干渉縞画像は、上記時系列画像データ間(取得時刻が異なるレーダ画像データ間)の位相差に基づいて、従来公知の方法により生成される。なお、位相差は、地震等の災害その他の理由により、地表の状態が変化した場合に、その変化が反射波に影響することにより生じるものである。例えば、地震により地表の地物の位置がずれた場合等に、当該地震の前後のレーダ画像データ間で反射波の位相に差が生じる。
【0021】
なお、上記反射波の位相差は、以下の式により表される。
【数1】
【0022】
ここで、軌道縞Δψorbitと地形縞Δψtopoは地表の状態の変化を示しておらず、変動縞Δψdeformのみが地表の状態の変化を示しているので、初期干渉縞ψrowから軌道縞Δψorbitと地形縞Δψtopoとを除去することにより変動縞Δψdeformを算出する。なお、軌道縞Δψorbitは、観測された衛星データに含まれる軌道情報から算出でき、地形縞Δψtopoは、上記軌道情報と地表の標高情報(DEM等)から算出できる。
【0023】
低干渉性領域抽出部14は、上記時系列画像データを記憶部24から読み出し、低干渉性領域を抽出する。抽出した低干渉性領域の情報は、記憶部24に記憶させる。低干渉性領域の情報としては、当該領域を表す線または点の集合等の画像が好適である。
【0024】
ここで、低干渉性領域とは、上記時系列画像データ間(取得時刻が異なるレーダ画像データ間)の干渉性が低い領域であって、当該画像の観測対象である地表の状態の変化が大きい領域である。地表の状態の変化が大きいと、レーダ画像データ(反射波)における位相のばらつき(分散)が大きくなるので、時系列画像データ間の干渉性が低下する。このような地表の状態の変化が大きい領域としては、例えば地震等により地表面に断層による大きな変位が発生した領域、建物倒壊領域、地すべり等の土砂災害が発生した領域等が含まれる。
【0025】
なお、取得時刻が異なるレーダ画像データ間の干渉性(コヒーレンスともいう)は、以下の式により演算できる。
【数2】
【0026】
ここで、γは干渉性であり、A,Bはそれぞれ干渉性を計算するレーダ画像データのピクセル値を表す複素数である(A及びBは、それぞれ共役複素数を表す)。干渉性(コヒーレンス)が高いとき、レーダ画像データ間の位相のばらつき(分散)は小さくなる。これは物理的に、二つのレーダ画像データ間で地表面の変化が小さいことを示す。逆に干渉性が低いとき、二つのレーダ画像データ間で地表面の変化が大きいことを示す。地表面の変化が大きいときには、上記反射波の位相差が大きくなり、取得時刻が異なるレーダ画像データ間で互いに干渉できなくなる。低干渉性領域抽出部14は、上記干渉性γが小さい領域を抽出する。
【0027】
地形表現図取得部16は、通信部22等を介して外部のサーバ等から地形表現図を取得し、記憶部24に記憶させる。ここで、地形表現図とは、地表の状態を表現する図であって、例えば傾斜量図、陰影図、等高線図等が挙げられ、地表の形状(状態)を細かく表現できる傾斜量図が好ましい。なお、地形表現図は、通信部22を介して取得する代わりに、予め記憶部24に記憶させておくこともできる。
【0028】
重畳部18は、上記干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを記憶部24から読み出し、重畳して記憶部24に記憶させる。干渉縞画像と低干渉性領域の画像との重畳は、両画像を生成する際に使用したレーダ画像データの取得位置(座標)や地図座標に基づいて位置合わせをすることにより行う。
【0029】
なお、重畳部18は、干渉縞画像と低干渉性領域の画像とに加え、上記地形表現図を記憶部24から読み出して重畳するのが好適である。この際も、それぞれの座標に基づいて位置合わせを行い、重畳する。重畳した画像は記憶部24に記憶させる。
【0030】
表示制御部20は、重畳部18により重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像(重畳画像)を記憶部24から読み出し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して表示する。また、地形表現図も重畳されている場合には、重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像と地形表現図(重畳画像)を表示する。
【0031】
利用者は、表示制御部20が表示装置に表示した重畳画像を見て、断層による変位、地すべり、液状化、盛土崩壊等が発生した地域を判別する。判別方法については後述する。
【0032】
通信部22は、適宜なインターフェースにより構成され、無線または有線の通信回線を介してCPU26が外部のサーバ等とデータをやり取りするために使用する。また、上述したように、アンテナ103を介してレーダ装置が搭載された人工衛星101とも通信する。
【0033】
記憶部24は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU26の動作プログラム等の、地表変状可視化装置が行う各処理に必要な情報を記憶させる。なお、記憶部24としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部24には、主としてCPU26の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU26が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0034】
図3には、表示制御部20が表示装置に表示する重畳画像の例が示される。図3において、重畳画像には、干渉縞画像生成部12が生成した干渉縞画像I1、I2、I3、I4が表示されている。また、低干渉性領域抽出部14が抽出した低干渉性領域の例としては、断層による変位F、河川R、地すべりSまたは液状化L、盛土崩壊Cが表示されている。利用者は、このような重畳画像から、以下のようにして断層による変位、地すべり、液状化、盛土崩壊等を判別する。
【0035】
低干渉性領域の画像のうち、断層による変位F及び河川Rは、画像上で線状に表示される。利用者は、干渉縞画像I1、I2、I3、I4等が当該線状の画像の位置でずれているか否かを判断し、上記干渉縞画像にずれを生じさせている線状の画像を断層による変位Fと判断する。
【0036】
また、干渉縞画像I1、I2、I3、I4等と低干渉性領域の画像とを傾斜量図等の地形表現図と重畳させることにより、低干渉性領域が河川R等のノイズであるか、地すべりSまたは液状化L、盛土崩壊C等であるかを判別することができる。
【0037】
上記線状の画像が、地形表現図上で河川の位置に一致している場合、当該線状の画像は、干渉縞画像I1、I2、I3、I4等のずれを見るまでもなく河川Rであると判別できるが、河川Rの近傍に低干渉性領域の広がりがあり、かつ当該場所の地形表現図上で人工的な盛土が判読される場合には、盛土崩壊Cが発生していると判断できる。
【0038】
さらに、河川Rが存在しない場所に一定の広がりを持って存在している低干渉性領域は、地すべりSまたは液状化Lが考えられる。この場合、地形表現図上で当該場所が傾斜地に判読されるときには地すべりSの可能性があり、傾斜地ではなく沖積層の平坦地と判読されるときには液状化Lの可能性がある。
【0039】
図4には、地形表現図として傾斜量図を使用し、干渉縞画像と低干渉性領域の画像とともに重畳した例が示される。図4の例では、干渉縞画像I1、I2、I3、I4、I5等と断層による変位Fが表示されている。本例では、地形表現図として地表上の位置を正確に把握できる傾斜量図を使用しているので、断層による変位Fの位置を正確に把握することができる。なお、地すべりS、液状化L、盛土崩壊C等が表示されれば、これらの位置も正確に把握できる。
【0040】
図5には、実施形態にかかる地表変状可視化装置の動作例のフローが示される。図5において、衛星データ取得部10が人工衛星101から送信される、時系列画像データをアンテナ103を介して取得し、記憶部24に記憶させると(S1)、干渉縞画像生成部12が、その時系列画像データを記憶部24から読み出し、干渉縞画像を生成して記憶部24に記憶させる(S2)。また、低干渉性領域抽出部14は、上記時系列画像データを記憶部24から読み出し、低干渉性領域を抽出して記憶部24に記憶させる(S3)。抽出された低干渉性領域の情報は、当該領域を表す線または点の集合等の画像として記憶させる。
【0041】
次に、重畳部18は、重畳処理Iとして、上記干渉縞画像と低干渉性領域の画像とを記憶部24から読み出し、重畳して記憶部24に記憶させる(S4)。
【0042】
表示制御部20は、上記重畳処理Iにより重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の重畳画像を記憶部24から読み出し、表示装置を制御して表示し(S5)、さらに重畳処理IIを行うか否かの問いを表示する(S6)。
【0043】
利用者は、S6で表示された重畳画像により、干渉縞が線状の低干渉性領域の画像の位置でずれているか否かを判断する。ずれている場合には、当該線状の画像が断層による変位と判断できる。また、上記S6の問いに対してN(否定)の入力を行うと、地表変状可視化装置が処理を終了する。
【0044】
一方、上記S6の問いに対してY(肯定)の入力を行うと、重畳部18が重畳処理IIとして、干渉縞画像と低干渉性領域の画像とに加え、傾斜量図等の地形表現図を記憶部24から読み出して重畳して記憶部24に記憶させる(S7)。
【0045】
表示制御部20は、上記重畳処理IIにより重畳された干渉縞画像と低干渉性領域の画像と地形表現図の重畳画像を記憶部24から読み出し、表示装置を制御して表示する(S8)。
【0046】
利用者は、S8で表示された重畳画像により、図3で説明したように、河川R等のノイズであるか、地すべりS、液状化L、盛土崩壊C等であるか否かを判断する。
【0047】
上述した、図5の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【符号の説明】
【0048】
10 衛星データ取得部、12 干渉縞画像生成部、14 低干渉性領域抽出部、16 地形表現図取得部、18 重畳部、20 表示制御部、22 通信部、24 記憶部、26 CPU、101 人工衛星、102 地表変状可視化装置、103 アンテナ。

図1
図2
図3
図4
図5