【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、冒頭で示したような方法であって、追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネルに追加注入することと共に、このガス移送チャネルを通過する燃焼ガス中に含まれる未燃焼生成物を酸化させることをさらに含む、方法が提供される。
【0012】
本発明による未燃焼生成物という用語は、燃料の燃焼に使用される酸素含有ガスの酸素と不完全に組み合わさった物質を意味する。したがって、これらの未燃焼生成物は、燃焼中に燃焼しない炭素の微粒子、有機分子だけでなく、特に一酸化炭素を含み得る。燃焼ガス中の一酸化炭素の存在は、燃焼中の燃料の不完全な酸化反応を明らかにする。この酸化反応が発熱的であるため、これは、不完全である場合、燃料に含まれる潜在エネルギーの一部が失われていることを意味する。
【0013】
本発明による方法は、存在する未燃焼生成物、特に燃焼ガス中に含まれる一酸化炭素を酸化させ、したがって、前述のエネルギー損失を回避し、また一方のシャフトから他方のシャフトに進む間はこのエネルギー損失を著しく回避するという大きな利点を有する。したがって、追加の酸素含有ガスの供給は、シャフトの外側で、一方のシャフトから他方のシャフトへのガスの移送のために設けられた空間内で行われる。したがって、シャフトの内部に提供される作動に干渉しない。
【0014】
酸素含有ガスという用語は、本発明では、空気、酸素富化空気、または酸素、例えばトンネージ酸素を意味することができる。追加の酸素含有ガスも、空気、酸素富化空気、または酸素、例えばトンネージ酸素であることができ、さらに、燃焼触媒のような未燃焼生成物の酸化を改善することを可能にする添加剤を含むこともできる。例えば、追加のガスの酸素による富化を挙げることができ、ここでは酸素を使用することにより、ガス移送チャネル内の未燃焼ガスの酸化反応を改善することができる。そのような方法は、生成されるCOの量をより容易に安定化させ、これを最大許容値以下に保つことを可能にする。説明の残りの部分では、酸素含有ガスという表現は、便宜上、時には空気という用語によってのみ表現される。
【0015】
したがって、本発明による方法は、それ自体知られている方法で、炉によって放出されたガス中のNO
Xの含有量を減少させる効果をもたらすという条件において、不都合なく作動することを可能にする。
【0016】
実際に、燃料の有機原子窒素は、燃焼空気中に含まれる酸素と以下の単純化された反応によって反応することが知られている:
【数1】
【0017】
燃料の燃焼中に焼成モードのシャフト内の酸素の供給を特に低減することにより、上記の反応は好ましくない。
【0018】
従来技術で知られている方法とは対照的に、本発明による方法は、再生併流炉内のNO
Xの量を低減することができるが、炉の出口におけるガス中のCO含有量の増加もさらに防止する。したがって、この方法は、二酸化硫黄、窒素酸化物中の含有量だけでなく放出されたガス中に含まれる一酸化炭素に関わる環境法令を遵守しつつ、石油コークスまたは木材廃棄物などの窒素および硫黄に富んだ安価な燃料または原料を使用することができるという利点を提供する。石炭、木材、亜炭、瀝青質頁岩、泥炭、石炭、無煙炭、アルコール、油およびその誘導体、天然ガス、バイオガス、液化石油ガス、廃棄物(例えば、木材廃棄物、ブドウ種子など)などの、この技術におけるすべてのタイプの通常の固体燃料、液体燃料、またはガス燃料を本発明による鉱物岩の焼成に使用することができることが、確かに理解される。
【0019】
さらに、焼成モードのシャフト内の大気の供給の減少は、このシャフトの石床を通るガスの流れに関連する負荷損失を低減することを可能にし、これは、より大量の鉱物岩をこのシャフトに供給できることを意味する。結果として、本発明による方法はまた、炉の生産性を高めることを可能にする。これは、窒素および硫黄に富んだ、したがって安価な燃料を使用することができ、炉の瞬時生産性が向上し、放出される大気汚染物質の量が制限されることを考慮すると、経済的かつ生態学的な利益を生じさせる。
【0020】
特に、本発明によれば、焼成モードのシャフトに供給される酸素含有ガスは、燃料に同時に特に燃料ランスによって運ばれる一次酸素含有ガス、および焼成される岩を通してこのシャフトの上部に導入される二次酸素含有ガスの形態である。したがって、一次空気は、特に、燃料の輸送のため、および燃料の燃焼のためまたは燃料注入ランスの冷却のために使用される。一次空気の供給が低減すると、次いで、焼成シャフト内の燃料の不完全燃焼が起こり、その結果未燃焼生成物、特に一酸化炭素の無視できない生成が生じる。焼成シャフト内の空気の供給量の低減を最適化するために、二次空気の供給量の低減を実施することもできる。
【0021】
本発明の特定の実施形態によれば、追加の酸素含有ガスの前述の注入中に生成される未燃焼生成物の酸化は、一酸化炭素の酸化を可能にするのに十分高く、かつ二窒素N
2の分子の原子状窒素Nへの熱分解を防止するのに十分低い酸化温度で実施される。この酸化温度は、有利には、800℃から1300℃の間、より好ましくは900℃から1,250℃の間で提供される。実際、窒素酸化物NO
Xの放出は、2つの別々の反応から生じ、これらは、上記で説明したような燃料の有機原子窒素と空気の酸素との反応、および酸素の存在下での空気の分子窒素の熱分解である。
【0022】
空気中に含まれる分子窒素の熱分解は、1250℃を上回る温度を必要とする。次いで、NO
Xが、熱分解の結果から生じる原子状窒素と、空気中で利用可能な酸素との組み合わせによって、以下の単純化された反応によって形成される。
【数2】
【0023】
したがって、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化を促進し、シャフトを相互連結するガス移送チャネル中のNO
Xの形成を制限することによってこの方法を最適化するためには、追加の酸素含有ガスの注入場所における温度が最も重要である。
【0024】
好ましくは、本発明による方法の一実施形態によれば、追加の酸素含有ガスを使用して前記ガス移送チャネルに注入される追加の酸素の量は、この追加の酸素含有ガスの不在下において炉の出口(スタック)において測定されたCOの量に基づいて算出した酸素の化学量論的量の0.1から50倍の間である。
【0025】
「化学量論的量」という表現は、本発明によれば、一酸化炭素の酸化反応を化学量論的条件で完了させ、行うために必要とされる酸素の理論的量を意味する。これらの化学量論的比率は、追加の酸素含有ガスの不在下で炉の出口(スタック)におけるガス中の測定されたCOの量に関して算出される。
【0026】
追加される酸素の量は、特に、炉の煙道ガス中に存在するCOおよびO
2の量、ならびに煙道ガス中に追加の酸素の良好な混合物を提供するために必要とされるこの追加の酸素含有ガスの最低速度によって決定され、例えばこの速度は、少なくとも煙道ガスの速度(約5〜15m/s)に等しくなることができる。
【0027】
さらに、特定の実施形態によれば、追加の酸素含有ガスは、注入時に周囲温度から400℃の間の温度を有することができる。この温度を制御することにより、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化の効果性の低下を引き起こすガス移送チャネルの冷却をさらに防止することができる。
【0028】
本発明の特定の実施形態によれば、ガス移送チャネルは、一方のシャフトを他方のシャフトに直接連結するクロスオーバーチャネルである。より好ましくは、追加の酸素含有ガスをクロスオーバーチャネルに注入することは、これが相互連結するシャフトから等しい距離で行われる。シャフトから等しい距離にあるこの位置は、シャフトの作動モードが規則的に逆転される場合に好ましい。追加ガスの注入は、これがシャフトから等しい距離で実施されるとき、炉のシャフトの焼成モードおよび予熱モードの交互からは独立している。
【0029】
さらに、有利には、本発明による方法によれば、燃料は、燃焼を行う燃料のストリームの平行ビームを生成し、クロスオーバーチャネルを通過する燃焼ガスのラインを形成するランスによって焼成モードのシャフト内に運ばれ、このとき前述の追加の酸素含有ガスの注入は、燃焼ガスのこれらのラインの各1つ上で実施されている。CFDシミュレーション(計算流体力学(Computational Fluid Dynamics))により、焼成モードのシャフト内およびクロスオーバーチャネル内の温度および酸素濃度の分布のマッピングを得ることができる。これらのシミュレーションは、クロスオーバーチャネル内で変位して予熱モードのシャフトに入ってから炉を出る間、COなどの燃焼からのガスは、燃料ランスの位置によって定められた軌道をたどることを明らかにした。燃焼ガス流れラインとも呼ばれるこれらの軌道はまた、温度が未燃焼生成物の最適酸化に適している場合のクロスオーバーチャネルの場所に対応する。
【0030】
本発明の方法の別の特定の実施形態によれば、前記ガス移送チャネルは、クロスオーバーチャネル内の各シャフトからの燃焼ガスにアクセスできるように、各シャフトの周りに配置された周辺チャネルを連結するクロスオーバーチャネルから形成される。この場合、追加の酸素含有ガスの前記注入は、クロスオーバーチャネル、周辺チャネル、またはクロスオーバーチャネルおよび周辺チャネルの両方において行われ得る。
【0031】
有利には、本発明による方法は、2つのシャフトを備える再生併流縦型シャフト炉に適用される。炉は3つのシャフトと、3つのガス移送チャネルであって、各々が前記前述のシャフトの2つを相互連結し、1つのシャフトは所定の時間の間焼成モードにあり、他方の2つのシャフトは予熱モードにある、3つのガス移送チャネルとを備えることができる。
【0032】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、鉱物岩は、石灰岩、ドロマイト岩、マグネサイトおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
この場合、本発明の方法は、再生併流縦型シャフト炉における生石灰および/またはクイックドライムおよび/またはマグネシアの製造方法である。
【0034】
炉のシャフトには、それぞれ同じ性質の鉱物岩を装填することができる。あるいは、炉のシャフトにそれぞれ異なる性質の鉱物岩を装填することができる。
【0035】
本発明による方法の他の実施形態は、添付の請求項に示される。
【0036】
本発明はまた、か焼された鉱物岩を製造するための再生併流縦型シャフト炉であって、
−ガス移送チャネルによって相互連結された少なくとも2つのシャフトであって、前記シャフトのそれぞれ1つが、
−燃料を供給するための少なくとも1つの装置と、
−燃料の燃焼のための酸素含有ガスの少なくとも1つの供給部と、
−鉱物岩の装填のための入口と、
−生成された、前記か焼された鉱物岩を取り出すための出口と、
−燃焼ガスの除去部とを備える、少なくとも2つのシャフトを備える、再生併流縦型シャフト炉に関する。
【0037】
本発明による炉は、さらに、追加の酸素含有ガス源と、この追加の酸素含有ガス源に連結され、この追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネルに注入するように構成された注入装置とを備える。この装置は、燃焼中の未燃焼生成物の形成に関連する問題を解決することを可能にする。実際、本発明によれば、焼成モードのシャフト内で形成され、ガス移送チャネルを通過するCOなどの未燃焼生成物は、予熱モードのシャフトおよび次いで、炉の出口に到達する前に追加の空気によって酸化される。これにより、燃料を形成する炭素材料の不完全な酸化の結果生じるエネルギー損失を防止し、大気中に排出される燃焼ガスのCO含有量に関する環境要求に対応することができる。未燃焼生成物の酸化は、さらに、シャフトの外側に位置する空間内で行われ、追加の酸素含有ガスの供給は、このため、シャフト自体の作動に影響を及ぼさない。特に石または岩の焼成が燃料の不完全燃焼を引き起こす条件で実施される場合、これは重要である。実際、不完全燃焼は、特に、NO
Xの含有量を低減することを可能にする。本発明による炉では、放出されるガス中のCO含有量を法令よりも低く維持しながら、NO
Xの量は低減される。
【0038】
本発明によれば、ガス移送チャネルは、一方のシャフトを他方のシャフトに直接連結するクロスオーバーチャネルであることができる。また、これは、クロスオーバーチャネル内の各シャフトからの燃焼ガスにアクセスできるように、各シャフトの周りに配置された周辺チャネルを連結するクロスオーバーチャネルから形成することもできる。この後者の場合、前述の注入装置は、追加の酸素含有ガスをクロスオーバーチャネル、周辺チャネル、またはクロスオーバーチャネルおよび周辺チャネルの両方に注入するように配置される。
【0039】
有利には、注入装置は、クロスオーバーチャネルに導入され、追加の酸素含有ガス源によって供給される少なくとも1つの直線状の有孔注入ユニットを備える。この注入ユニットは、有利には、クロスオーバーチャネルの長手方向軸に対して横断方向に置かれるが、クロスオーバーチャネルの横断方向軸に関連して逸脱して配向されてもよい。この装置は、特に不完全燃焼からの未燃焼生成物の最大量を酸化するために、追加の空気を、焼成モードのシャフトの下流に、かつ実際にはクロスオーバーチャネルの全幅にわたって容易に注入することを可能にする。
【0040】
好ましくは、本発明によれば、注入ユニットは、クロスオーバーチャネルの上部分に向かって追加の酸素含有ガスを注入するように配向された1つまたは複数のオリフィスを含む。CFDシミュレーションを用いて得られたマッピングはまた、燃焼からのガスが主としてクロスオーバーチャネルの上部に位置し、ここでは温度が最高であることも当てはまることを明らかにしている。上述したように、未燃焼生成物の酸化反応には温度が重要である。焼成モードのシャフトからの未燃焼生成物の最適な酸化を得るために、追加の空気の注入は、したがって、好ましくは、クロスオーバーチャネルの上部で実施される。
【0041】
特定の実施形態によれば、炉は、前記シャフトから等しく離れた開口部によってクロスオーバーチャネルに導入された注入ユニットを有する。追加ガスの注入は、そのため、炉のシャフトの燃焼モードおよび予熱モードの交互からは独立している。
【0042】
本発明の特定の実施形態によれば、クロスオーバーチャネルは、天井および長手方向軸を有し、追加の酸素含有ガス注入装置は、クロスオーバーチャネルのこの天井に設けられた、追加の酸素含有ガスをそのようなガス源を用いてそこを通して供給することができる1つまたは複数の開口を含み、前記開口部は、シャフトから等距離に、この長手方向軸に垂直に位置する。これらのオリフィスは、追加のガスをクロスオーバーチャネルの天井の燃焼ガス流れラインに直接注入することが可能であることを考慮すると、注入ユニットの効果的な代替策となる。CFDシミュレーションによって証明されるように、未燃焼生成物の量が最大であり、温度が後者の酸化に理想的であるのは、事実上これらの場所内である。
【0043】
この特定の実施形態では、追加の酸素含有ガスを注入するための装置の前記開口部には、有利には、クロスオーバーチャネル内の追加の空気の分布を改善することを可能にする、分配するまたは回転させるための機械システムが設けられる。
【0044】
本発明による炉の特に有利な実施形態では、燃料を供給するための装置は、燃料のストリームの平行ビームを対応するシャフト内に生成するように配置された1つまたは複数の組の1つまたは複数の単一ストリームまたは複数ストリームのランスを備え、これらのビームは互いに平行であり、さまざまな前述のビームの燃料のストリームは、クロスオーバーチャネルの長手方向軸に平行ないくつかの平面に位置する。
【0045】
有利には、本発明による炉では、追加の酸素含有ガスの注入のための、注入ユニットのオリフィスまたはクロスオーバーチャネルの天井内の開口部が、前述のビームによって形成される前記平面内に設けられる。上記で説明したように、CFDシミュレーションにより、これらの平面は、燃焼からのガスの流れラインを表す。
【0046】
有利には、本発明による炉は、2つのシャフトと、これらを相互連結するガス移送チャネルとを備える。また、炉が、3つのシャフトと、前記前述したシャフトの2つをそれぞれ相互連結する3つのガス移送チャネルと、追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネルのそれぞれ1つに注入するための注入装置とを備えることが、もたらされ得る。
【0047】
本発明による炉の他の実施形態は、添付の請求項に示されている。
【0048】
本発明の他の詳細および特徴は、添付の図を参照して、非限定的な方法で、以下に与えられる説明で明確になるものとする。