特許第6890122号(P6890122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6890122再生併流縦型シャフト炉において鉱物岩をか焼する方法および使用される炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890122
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】再生併流縦型シャフト炉において鉱物岩をか焼する方法および使用される炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 1/02 20060101AFI20210607BHJP
   F23C 6/02 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   F27B1/02
   F23C6/02
【請求項の数】25
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-517319(P2018-517319)
(86)(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公表番号】特表2018-532971(P2018-532971A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2016073796
(87)【国際公開番号】WO2017060303
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年9月17日
(31)【優先権主張番号】2015/5631
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】514311209
【氏名又は名称】エス.ア.ロイスト ルシェルシュ エ デヴロップマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アビブ、ジアード
(72)【発明者】
【氏名】パドクス、ギレーム
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−060254(JP,A)
【文献】 特開昭55−053685(JP,A)
【文献】 特開昭57−175754(JP,A)
【文献】 特表2013−513542(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0353421(US,A1)
【文献】 中国実用新案第201132820(CN,Y)
【文献】 米国特許第3771946(US,A)
【文献】 米国特許第4927357(US,A)
【文献】 米国特許第3074706(US,A)
【文献】 特開2009−155161(JP,A)
【文献】 特開昭49−130897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/02
F23C 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生併流縦型シャフト炉において鉱物岩をか焼するための方法であって、少なくとも2つのシャフトがガス移送チャネルによって相互連結されており、前記方法は、
前記シャフトの上部に鉱物岩を装填することと、
前記シャフトの底部で、か焼された鉱物岩を取り出すことと
を含み
各シャフトは焼成モードと予熱モードで交互に作動し、一方のシャフトは所定の時間の間焼成モードにあり、別のシャフトは予熱モードにあり、その逆もあり、
前記焼成モードは、前記鉱物岩の存在下で、燃料を酸素含有ガスの存在下で燃焼させて前記岩の焼成を得て、か焼された岩を与えることと、燃焼ガスの放出と、前記燃焼ガスを焼成モードの前記シャフトから予熱モードの前記別のシャフトに前記ガス移送チャネルによって進めることと
を含み、
前記予熱モードは、前記鉱物岩と前記ガス移送チャネルからの前記燃焼ガスとの間の熱交換を含む、方法において、
前記方法は、さらに、追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネルに追加注入することと共に、前記ガス移送チャネルを通過する前記燃焼ガスに含まれる未燃焼生成物を酸化させることを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
焼成モードのシャフトに供給される前記酸素含有ガスが、前記燃料に同時に運ばれる一次酸素含有ガス、および焼成される岩を通して前記シャフトの上部に導入される二次酸素含有ガスの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
未燃焼生成物の前記酸化が、800℃から1,300℃の間にある酸化温度で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記追加の酸素含有ガスを使用して前記ガス移送チャネルに注入される追加の酸素の量が、前記追加の酸素含有ガスの不在下で前記炉の出口において測定されたCOの量に基づいて計算される化学量論的量の0.1から50倍の間である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記追加の酸素含有ガスが、前記注入時に周囲温度から400℃の間の温度を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記追加の酸素含有ガスが、空気、酸素富化空気または酸素である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記追加の酸素含有ガスが、少なくとも1つの燃焼触媒を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス移送チャネルが、一方のシャフトを他方のシャフトに直接連結するクロスオーバーチャネルである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記追加の酸素含有ガスが、前記クロスオーバーチャネルが相互連結する前記シャフトから等しい距離にある前記クロスオーバーチャネルに注入される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記燃料が、前記燃焼を行う燃料のストリームの平行ビームを生成し、前記クロスオーバーチャネルを通過する燃焼ガスのラインを形成するランスによって焼成モードの前記シャフト内に運ばれ、このとき前記追加の酸素含有ガスの注入は、燃焼ガスの前記ラインの各1つ上で実施される、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
前記ガス移送チャネルが、クロスオーバーチャネル内の各シャフトからの前記燃焼ガスにアクセスできるように各シャフトの周りに配置された周辺チャネルを連結する前記クロスオーバーチャネルから形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
追加の酸素含有ガスの前記注入が、前記クロスオーバーチャネル、前記周辺チャネル、または前記クロスオーバーチャネルおよび前記周辺チャネルの両方において行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記炉が、3つのシャフトと、3つのガス移送チャネルであって、各々が前記シャフトの2つを相互連結する、3つのガス移送チャネルとを備え、1つのシャフトが、所定の時間の間焼成モードにあり、他方の2つのシャフトは予熱モードにある、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
か焼された鉱物岩の製造のための再生併流縦型シャフト炉であって、
ガス移送チャネル(3)によって相互連結された少なくとも2つのシャフト(1,2)であって、
前記シャフトのそれぞれ1つが
燃料を供給するための少なくとも1つの装置(4)と、
前記燃料の燃焼のための酸素含有ガスの少なくとも1つの供給部(5(a)、5(b)と、
鉱物岩の装填のための入口(6)と、
生成された、前記か焼された鉱物岩の取り出しのための出口(7)と、
燃焼ガス(8)の除去部と
を備える、2つのシャフトを備える、再生併流縦型シャフト炉において、
前記炉が、さらに、追加の酸素含有ガス源と、前記追加の酸素含有ガス源(18)に連結され、前記追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネル(3)に注入するように配置された注入装置とを備えることを特徴とする、再生併流縦型シャフト炉。
【請求項15】
前記ガス移送チャネルが、一方のシャフトを他方のシャフトに直接連結するクロスオーバーチャネルである、請求項14に記載の炉。
【請求項16】
前記ガス移送チャネルが、クロスオーバーチャネル内の各シャフトからの前記燃焼ガスにアクセスできるように各シャフトの周りに配置された周辺チャネルを連結する前記クロスオーバーチャネルから形成される、請求項14に記載の炉。
【請求項17】
前記注入装置が、前記クロスオーバーチャネル(3)に導入され、前記追加の酸素含有ガス源(19)によって供給される少なくとも1つの直線状の有孔注入ユニット(10)を備える、請求項15または16に記載の炉。
【請求項18】
前記クロスオーバーチャネル(3)が、長手方向軸(L)を有し、前記少なくとも1つの直線状の有孔注入ユニット(10)が、前記クロスオーバーチャネルの前記長手方向軸に対して横断方向に置かれる、請求項17に記載の炉。
【請求項19】
前記注入ユニット(10)が、前記クロスオーバーチャネルの上部分に向かって前記追加の酸素含有ガスを注入するように配向された1つまたは複数のオリフィス(11)を備える、請求項17または18のいずれか一項に記載の炉。
【請求項20】
前記ユニット(10)が、前記シャフトから等しく離れた開口部(13)によって前記クロスオーバーチャネル(3)に導入される、請求項17から19のいずれか一項に記載の炉。
【請求項21】
前記クロスオーバーチャネル(3)が、天井(12)および長手方向軸(L)を有し、前記追加の酸素を含むガス注入装置(18)が、前記クロスオーバーチャネルの前記天井内に設けられた、前記追加の酸素含有ガスを前記そのようなガス源(20)からそこを通して供給することができる1つまたは複数の開口部(14)を含み、前記開口部は、前記シャフトから等距離に、前記長手方向軸に対して垂直に位置する、請求項15または16のいずれか一項に記載の炉。
【請求項22】
燃料を供給するための前記装置が、燃料のストリームの平行ビームを前記対応するシャフト内に生成するように配置された1つまたは複数の組の1つまたは複数の単一ストリームまたは複数ストリームのランスを備え、前記ビームは互いに平行であり、さまざまな前記ビームの燃料の前記ストリームは、前記クロスオーバーチャネルの前記長手方向軸(L)に平行ないくつかの平面内に位置する、請求項18から21のいずれか一項に記載の炉。
【請求項23】
前記追加の酸素含有ガスの注入のための、前記注入ユニットの前記オリフィスまたは前記クロスオーバーチャネルの前記天井内の前記開口部が、前記ビームによって形成される前記平面内に設けられる、請求項22に記載の炉。
【請求項24】
前記注入装置が、追加の酸素含有ガスを前記クロスオーバーチャネル、前記周辺チャネル、または前記クロスオーバーチャネルおよび前記周辺チャネルの両方に注入するように配置されることを特徴とする、請求項16に記載の炉。
【請求項25】
3つのシャフトと、前記シャフトの2つをそれぞれ相互連結する3つのガス移送チャネルと、追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネルのそれぞれ1つに注入するための注入装置とを備えることを特徴とする、請求項14から24のいずれか一項に記載の炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのシャフトがガス移送チャネルによって相互連結された、再生併流縦型シャフト炉(Parallel Flow Regenerative Kiln、PFRK)において鉱物岩をか焼する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生併流炉は、一般に、その中央部分内でクロスオーバーチャネルによって相互連結された2つまたは3つの縦型シャフトを備える。これらのシャフトは、交互に作動する。すなわち、1つは、所定の時間、例えば10から12分間、焼成(か焼)モードで作動し、他方または複数の他のシャフトは、鉱物岩の予熱モードで作動する。次いで、焼成モードのシャフトは、予熱モードに切り替わり、予熱モードのシャフトまたはシャフトの1つは、焼成モードに切り替わる。そのように所与のシャフトが焼成モードで再び作動を開始するたびに、作動サイクルが繰り返される。
【0003】
これらの知られている炉で使用される方法は、
−シャフトの上部に鉱物岩を装填することと、
−シャフトの底部で、か焼された鉱物岩を取り出すこととを含み、
−各シャフトは焼成モードと予熱モードで交互に作動し、一方のシャフトは所定の時間の間焼成モードにあり、別のシャフトは予熱モードにあり、その逆もあり、
−焼成モードは、前記鉱物岩の存在下で、酸素含有ガスの存在下で燃料を燃焼させてこの岩の焼成を得て、か焼された岩を与えることと、燃焼ガスの放出と、これらの燃焼ガスを焼成モードのシャフトから予熱モードの別のシャフトに前記ガス移送チャネルを通して進めることとを含み、
−予熱モードは、前記鉱物岩と前記ガス移送チャネルからの前記燃焼ガスとの間の熱交換を含む。
【0004】
鉱物岩という用語は、本発明に関して、特に、それぞれ、生石灰、クイックドライムおよびマグネシアにか焼される、石灰岩、ドロマイト岩および/またはマグネサイトを意味する。
【0005】
鉱物石または岩は、シャフトの上部に装填される。また、これらのシャフトの上側部分内には、ランスが位置して、炉内に燃料の供給を可能にする。石の予熱ゾーンは、シャフトの上部と燃料ランスの端部との間に位置する。次いで、ランスの端部に達した石は、燃料および酸素含有ガスが提供された焼成モードのシャフト内に到達し、温度は通常800℃から1300℃に変化する。予熱モードのシャフトまたは複数のシャフトには、このとき、燃料は供給されない。予熱モードのシャフトまたは複数のシャフト内に置かれた石は、焼成モードのシャフトからのガスからエネルギーを回収する。燃料の注入が焼成モードのシャフト内で停止し、次いで焼成モードが予熱モードに切り換わるとき、およびその逆のとき、シャフトの動作は、例えば、10分〜12分ごとに逆転される。したがって、2つのシャフトがある場合、サイクルは通常、20分〜24分の間続く。
【0006】
経済性への懸念から、安価な燃料を使用することは、このタイプの設備において有利である。残念なことに、これらの安価な燃料の窒素および硫黄の含有量は高く、これは、窒素酸化物NOまたは硫黄酸化物SOなどのガスの放出によって環境問題を潜在的に引き起こす。高い硫黄含有量を有する燃料の使用に遭遇する別の問題は、この含有量が、一般に、石灰によって捕捉されることであり、これは、石灰中の硫黄の最大含有量が通常0.1重量%に制限される製鋼のような特定の用途には望ましくないことである。
【0007】
石灰中の硫黄含有量の低減を可能にする方法は、特に、特許文献のベルギー特許第1018212号明細書および米国特許第4315735号明細書に記載されている。これらの特許では、燃料の不完全燃焼を実施するために焼成モードのシャフトに供給される空気の量を低減することが推奨されている。この操作により、焼成モードのシャフト内の石灰によって硫黄が捕捉されるのを効果的に防止することができる。これはまた、焼成モードのこのシャフトに形成されるNOの量を低減することも可能であることが観察される。燃料の一次輸送空気は、燃料と予混合されるときの燃焼およびNOの形成において特に重要な役割を果たし、温度が許容するとすぐに、燃料に含まれる窒素と迅速に組み合わさるようになっている。したがって、この一次空気の量の低減は、NOを低減するために好ましい。残念なことに、燃料の不完全燃焼はまた、炉の出口に到達する燃焼ガス中の未燃焼生成物(主に一酸化炭素)の量を増加させる。これらの先行文献では、焼成モードのシャフトに供給される空気の低減は、焼成モードのシャフトの下流で測定された一酸化炭素COの閾値をクロスオーバーチャネル内で観測するまで実施される。したがって、これらの方法は、炉の出口で放出されたガス中のCO含有量の増加の観察に基づいており、この方法は、エネルギー損失を明らかにし、大気汚染の点で大きな欠点を表し、これらのガスは、いくつかの環境法規と不適合になる恐れもある。
【0008】
炉の性能を向上させるために、クロスオーバーチャネルにガス燃料、液体燃料または固体燃料を導入することが知られている(仏国特許第2091767号明細書および独国特許第19843820号明細書を参照)。最後に、炉の起動中に熱源として、ランスを介して油をクロスオーバーチャネルに注入することも知られている(米国特許第6113387号明細書を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ベルギー特許第1018212号明細書
【特許文献2】米国特許第4315735号明細書
【特許文献3】仏国特許第2091767号明細書
【特許文献4】独国特許第19843820号明細書
【特許文献5】米国特許第6113387号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、炉を退出する燃焼ガス中の未燃焼生成物の許容されない増加、したがってエネルギーの対応する損失および汚染を引き起こすことなく、使用される安価な燃料の硫黄および窒素の含有量に関連する欠点を回避することを可能にする方法を獲得することによって、これらの欠点を克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、冒頭で示したような方法であって、追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネルに追加注入することと共に、このガス移送チャネルを通過する燃焼ガス中に含まれる未燃焼生成物を酸化させることをさらに含む、方法が提供される。
【0012】
本発明による未燃焼生成物という用語は、燃料の燃焼に使用される酸素含有ガスの酸素と不完全に組み合わさった物質を意味する。したがって、これらの未燃焼生成物は、燃焼中に燃焼しない炭素の微粒子、有機分子だけでなく、特に一酸化炭素を含み得る。燃焼ガス中の一酸化炭素の存在は、燃焼中の燃料の不完全な酸化反応を明らかにする。この酸化反応が発熱的であるため、これは、不完全である場合、燃料に含まれる潜在エネルギーの一部が失われていることを意味する。
【0013】
本発明による方法は、存在する未燃焼生成物、特に燃焼ガス中に含まれる一酸化炭素を酸化させ、したがって、前述のエネルギー損失を回避し、また一方のシャフトから他方のシャフトに進む間はこのエネルギー損失を著しく回避するという大きな利点を有する。したがって、追加の酸素含有ガスの供給は、シャフトの外側で、一方のシャフトから他方のシャフトへのガスの移送のために設けられた空間内で行われる。したがって、シャフトの内部に提供される作動に干渉しない。
【0014】
酸素含有ガスという用語は、本発明では、空気、酸素富化空気、または酸素、例えばトンネージ酸素を意味することができる。追加の酸素含有ガスも、空気、酸素富化空気、または酸素、例えばトンネージ酸素であることができ、さらに、燃焼触媒のような未燃焼生成物の酸化を改善することを可能にする添加剤を含むこともできる。例えば、追加のガスの酸素による富化を挙げることができ、ここでは酸素を使用することにより、ガス移送チャネル内の未燃焼ガスの酸化反応を改善することができる。そのような方法は、生成されるCOの量をより容易に安定化させ、これを最大許容値以下に保つことを可能にする。説明の残りの部分では、酸素含有ガスという表現は、便宜上、時には空気という用語によってのみ表現される。
【0015】
したがって、本発明による方法は、それ自体知られている方法で、炉によって放出されたガス中のNOの含有量を減少させる効果をもたらすという条件において、不都合なく作動することを可能にする。
【0016】
実際に、燃料の有機原子窒素は、燃焼空気中に含まれる酸素と以下の単純化された反応によって反応することが知られている:
【数1】
【0017】
燃料の燃焼中に焼成モードのシャフト内の酸素の供給を特に低減することにより、上記の反応は好ましくない。
【0018】
従来技術で知られている方法とは対照的に、本発明による方法は、再生併流炉内のNOの量を低減することができるが、炉の出口におけるガス中のCO含有量の増加もさらに防止する。したがって、この方法は、二酸化硫黄、窒素酸化物中の含有量だけでなく放出されたガス中に含まれる一酸化炭素に関わる環境法令を遵守しつつ、石油コークスまたは木材廃棄物などの窒素および硫黄に富んだ安価な燃料または原料を使用することができるという利点を提供する。石炭、木材、亜炭、瀝青質頁岩、泥炭、石炭、無煙炭、アルコール、油およびその誘導体、天然ガス、バイオガス、液化石油ガス、廃棄物(例えば、木材廃棄物、ブドウ種子など)などの、この技術におけるすべてのタイプの通常の固体燃料、液体燃料、またはガス燃料を本発明による鉱物岩の焼成に使用することができることが、確かに理解される。
【0019】
さらに、焼成モードのシャフト内の大気の供給の減少は、このシャフトの石床を通るガスの流れに関連する負荷損失を低減することを可能にし、これは、より大量の鉱物岩をこのシャフトに供給できることを意味する。結果として、本発明による方法はまた、炉の生産性を高めることを可能にする。これは、窒素および硫黄に富んだ、したがって安価な燃料を使用することができ、炉の瞬時生産性が向上し、放出される大気汚染物質の量が制限されることを考慮すると、経済的かつ生態学的な利益を生じさせる。
【0020】
特に、本発明によれば、焼成モードのシャフトに供給される酸素含有ガスは、燃料に同時に特に燃料ランスによって運ばれる一次酸素含有ガス、および焼成される岩を通してこのシャフトの上部に導入される二次酸素含有ガスの形態である。したがって、一次空気は、特に、燃料の輸送のため、および燃料の燃焼のためまたは燃料注入ランスの冷却のために使用される。一次空気の供給が低減すると、次いで、焼成シャフト内の燃料の不完全燃焼が起こり、その結果未燃焼生成物、特に一酸化炭素の無視できない生成が生じる。焼成シャフト内の空気の供給量の低減を最適化するために、二次空気の供給量の低減を実施することもできる。
【0021】
本発明の特定の実施形態によれば、追加の酸素含有ガスの前述の注入中に生成される未燃焼生成物の酸化は、一酸化炭素の酸化を可能にするのに十分高く、かつ二窒素Nの分子の原子状窒素Nへの熱分解を防止するのに十分低い酸化温度で実施される。この酸化温度は、有利には、800℃から1300℃の間、より好ましくは900℃から1,250℃の間で提供される。実際、窒素酸化物NOの放出は、2つの別々の反応から生じ、これらは、上記で説明したような燃料の有機原子窒素と空気の酸素との反応、および酸素の存在下での空気の分子窒素の熱分解である。
【0022】
空気中に含まれる分子窒素の熱分解は、1250℃を上回る温度を必要とする。次いで、NOが、熱分解の結果から生じる原子状窒素と、空気中で利用可能な酸素との組み合わせによって、以下の単純化された反応によって形成される。
【数2】
【0023】
したがって、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化を促進し、シャフトを相互連結するガス移送チャネル中のNOの形成を制限することによってこの方法を最適化するためには、追加の酸素含有ガスの注入場所における温度が最も重要である。
【0024】
好ましくは、本発明による方法の一実施形態によれば、追加の酸素含有ガスを使用して前記ガス移送チャネルに注入される追加の酸素の量は、この追加の酸素含有ガスの不在下において炉の出口(スタック)において測定されたCOの量に基づいて算出した酸素の化学量論的量の0.1から50倍の間である。
【0025】
「化学量論的量」という表現は、本発明によれば、一酸化炭素の酸化反応を化学量論的条件で完了させ、行うために必要とされる酸素の理論的量を意味する。これらの化学量論的比率は、追加の酸素含有ガスの不在下で炉の出口(スタック)におけるガス中の測定されたCOの量に関して算出される。
【0026】
追加される酸素の量は、特に、炉の煙道ガス中に存在するCOおよびOの量、ならびに煙道ガス中に追加の酸素の良好な混合物を提供するために必要とされるこの追加の酸素含有ガスの最低速度によって決定され、例えばこの速度は、少なくとも煙道ガスの速度(約5〜15m/s)に等しくなることができる。
【0027】
さらに、特定の実施形態によれば、追加の酸素含有ガスは、注入時に周囲温度から400℃の間の温度を有することができる。この温度を制御することにより、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化の効果性の低下を引き起こすガス移送チャネルの冷却をさらに防止することができる。
【0028】
本発明の特定の実施形態によれば、ガス移送チャネルは、一方のシャフトを他方のシャフトに直接連結するクロスオーバーチャネルである。より好ましくは、追加の酸素含有ガスをクロスオーバーチャネルに注入することは、これが相互連結するシャフトから等しい距離で行われる。シャフトから等しい距離にあるこの位置は、シャフトの作動モードが規則的に逆転される場合に好ましい。追加ガスの注入は、これがシャフトから等しい距離で実施されるとき、炉のシャフトの焼成モードおよび予熱モードの交互からは独立している。
【0029】
さらに、有利には、本発明による方法によれば、燃料は、燃焼を行う燃料のストリームの平行ビームを生成し、クロスオーバーチャネルを通過する燃焼ガスのラインを形成するランスによって焼成モードのシャフト内に運ばれ、このとき前述の追加の酸素含有ガスの注入は、燃焼ガスのこれらのラインの各1つ上で実施されている。CFDシミュレーション(計算流体力学(Computational Fluid Dynamics))により、焼成モードのシャフト内およびクロスオーバーチャネル内の温度および酸素濃度の分布のマッピングを得ることができる。これらのシミュレーションは、クロスオーバーチャネル内で変位して予熱モードのシャフトに入ってから炉を出る間、COなどの燃焼からのガスは、燃料ランスの位置によって定められた軌道をたどることを明らかにした。燃焼ガス流れラインとも呼ばれるこれらの軌道はまた、温度が未燃焼生成物の最適酸化に適している場合のクロスオーバーチャネルの場所に対応する。
【0030】
本発明の方法の別の特定の実施形態によれば、前記ガス移送チャネルは、クロスオーバーチャネル内の各シャフトからの燃焼ガスにアクセスできるように、各シャフトの周りに配置された周辺チャネルを連結するクロスオーバーチャネルから形成される。この場合、追加の酸素含有ガスの前記注入は、クロスオーバーチャネル、周辺チャネル、またはクロスオーバーチャネルおよび周辺チャネルの両方において行われ得る。
【0031】
有利には、本発明による方法は、2つのシャフトを備える再生併流縦型シャフト炉に適用される。炉は3つのシャフトと、3つのガス移送チャネルであって、各々が前記前述のシャフトの2つを相互連結し、1つのシャフトは所定の時間の間焼成モードにあり、他方の2つのシャフトは予熱モードにある、3つのガス移送チャネルとを備えることができる。
【0032】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、鉱物岩は、石灰岩、ドロマイト岩、マグネサイトおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
この場合、本発明の方法は、再生併流縦型シャフト炉における生石灰および/またはクイックドライムおよび/またはマグネシアの製造方法である。
【0034】
炉のシャフトには、それぞれ同じ性質の鉱物岩を装填することができる。あるいは、炉のシャフトにそれぞれ異なる性質の鉱物岩を装填することができる。
【0035】
本発明による方法の他の実施形態は、添付の請求項に示される。
【0036】
本発明はまた、か焼された鉱物岩を製造するための再生併流縦型シャフト炉であって、
−ガス移送チャネルによって相互連結された少なくとも2つのシャフトであって、前記シャフトのそれぞれ1つが、
−燃料を供給するための少なくとも1つの装置と、
−燃料の燃焼のための酸素含有ガスの少なくとも1つの供給部と、
−鉱物岩の装填のための入口と、
−生成された、前記か焼された鉱物岩を取り出すための出口と、
−燃焼ガスの除去部とを備える、少なくとも2つのシャフトを備える、再生併流縦型シャフト炉に関する。
【0037】
本発明による炉は、さらに、追加の酸素含有ガス源と、この追加の酸素含有ガス源に連結され、この追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネルに注入するように構成された注入装置とを備える。この装置は、燃焼中の未燃焼生成物の形成に関連する問題を解決することを可能にする。実際、本発明によれば、焼成モードのシャフト内で形成され、ガス移送チャネルを通過するCOなどの未燃焼生成物は、予熱モードのシャフトおよび次いで、炉の出口に到達する前に追加の空気によって酸化される。これにより、燃料を形成する炭素材料の不完全な酸化の結果生じるエネルギー損失を防止し、大気中に排出される燃焼ガスのCO含有量に関する環境要求に対応することができる。未燃焼生成物の酸化は、さらに、シャフトの外側に位置する空間内で行われ、追加の酸素含有ガスの供給は、このため、シャフト自体の作動に影響を及ぼさない。特に石または岩の焼成が燃料の不完全燃焼を引き起こす条件で実施される場合、これは重要である。実際、不完全燃焼は、特に、NOの含有量を低減することを可能にする。本発明による炉では、放出されるガス中のCO含有量を法令よりも低く維持しながら、NOの量は低減される。
【0038】
本発明によれば、ガス移送チャネルは、一方のシャフトを他方のシャフトに直接連結するクロスオーバーチャネルであることができる。また、これは、クロスオーバーチャネル内の各シャフトからの燃焼ガスにアクセスできるように、各シャフトの周りに配置された周辺チャネルを連結するクロスオーバーチャネルから形成することもできる。この後者の場合、前述の注入装置は、追加の酸素含有ガスをクロスオーバーチャネル、周辺チャネル、またはクロスオーバーチャネルおよび周辺チャネルの両方に注入するように配置される。
【0039】
有利には、注入装置は、クロスオーバーチャネルに導入され、追加の酸素含有ガス源によって供給される少なくとも1つの直線状の有孔注入ユニットを備える。この注入ユニットは、有利には、クロスオーバーチャネルの長手方向軸に対して横断方向に置かれるが、クロスオーバーチャネルの横断方向軸に関連して逸脱して配向されてもよい。この装置は、特に不完全燃焼からの未燃焼生成物の最大量を酸化するために、追加の空気を、焼成モードのシャフトの下流に、かつ実際にはクロスオーバーチャネルの全幅にわたって容易に注入することを可能にする。
【0040】
好ましくは、本発明によれば、注入ユニットは、クロスオーバーチャネルの上部分に向かって追加の酸素含有ガスを注入するように配向された1つまたは複数のオリフィスを含む。CFDシミュレーションを用いて得られたマッピングはまた、燃焼からのガスが主としてクロスオーバーチャネルの上部に位置し、ここでは温度が最高であることも当てはまることを明らかにしている。上述したように、未燃焼生成物の酸化反応には温度が重要である。焼成モードのシャフトからの未燃焼生成物の最適な酸化を得るために、追加の空気の注入は、したがって、好ましくは、クロスオーバーチャネルの上部で実施される。
【0041】
特定の実施形態によれば、炉は、前記シャフトから等しく離れた開口部によってクロスオーバーチャネルに導入された注入ユニットを有する。追加ガスの注入は、そのため、炉のシャフトの燃焼モードおよび予熱モードの交互からは独立している。
【0042】
本発明の特定の実施形態によれば、クロスオーバーチャネルは、天井および長手方向軸を有し、追加の酸素含有ガス注入装置は、クロスオーバーチャネルのこの天井に設けられた、追加の酸素含有ガスをそのようなガス源を用いてそこを通して供給することができる1つまたは複数の開口を含み、前記開口部は、シャフトから等距離に、この長手方向軸に垂直に位置する。これらのオリフィスは、追加のガスをクロスオーバーチャネルの天井の燃焼ガス流れラインに直接注入することが可能であることを考慮すると、注入ユニットの効果的な代替策となる。CFDシミュレーションによって証明されるように、未燃焼生成物の量が最大であり、温度が後者の酸化に理想的であるのは、事実上これらの場所内である。
【0043】
この特定の実施形態では、追加の酸素含有ガスを注入するための装置の前記開口部には、有利には、クロスオーバーチャネル内の追加の空気の分布を改善することを可能にする、分配するまたは回転させるための機械システムが設けられる。
【0044】
本発明による炉の特に有利な実施形態では、燃料を供給するための装置は、燃料のストリームの平行ビームを対応するシャフト内に生成するように配置された1つまたは複数の組の1つまたは複数の単一ストリームまたは複数ストリームのランスを備え、これらのビームは互いに平行であり、さまざまな前述のビームの燃料のストリームは、クロスオーバーチャネルの長手方向軸に平行ないくつかの平面に位置する。
【0045】
有利には、本発明による炉では、追加の酸素含有ガスの注入のための、注入ユニットのオリフィスまたはクロスオーバーチャネルの天井内の開口部が、前述のビームによって形成される前記平面内に設けられる。上記で説明したように、CFDシミュレーションにより、これらの平面は、燃焼からのガスの流れラインを表す。
【0046】
有利には、本発明による炉は、2つのシャフトと、これらを相互連結するガス移送チャネルとを備える。また、炉が、3つのシャフトと、前記前述したシャフトの2つをそれぞれ相互連結する3つのガス移送チャネルと、追加の酸素含有ガスを前記ガス移送チャネルのそれぞれ1つに注入するための注入装置とを備えることが、もたらされ得る。
【0047】
本発明による炉の他の実施形態は、添付の請求項に示されている。
【0048】
本発明の他の詳細および特徴は、添付の図を参照して、非限定的な方法で、以下に与えられる説明で明確になるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1a】矩形断面を有し、クロスオーバーチャネルによって連結された2つのシャフトを有する、再生併流縦型シャフト炉を示す概略図である。
図1b】円形断面を有し、クロスオーバーチャネルによって連結された、環状周辺チャネルを有する2つのシャフトを有する、再生併流縦型シャフト炉を示す概略図である。
図2】本発明による炉の実施形態のクロスオーバーチャネルの、図1aの線I−Iに沿った断面図である。
図3】本発明による炉のクロスオーバーチャネルの別の実施形態の、これもまた図1aの線I−Iに沿った断面図である。
図4図3に示すような炉の実施形態の図1aの線IV−IVに沿った図である。
図5】本発明による炉の実施形態の図1bの線V−Vに沿った断面図である。
図6】3つのシャフトを備える本発明による炉における図5の断面図に類似する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1aでは、か焼された鉱物岩を製造するための再生併流縦型シャフト炉が概略的に示されている。この図では、炉は、この例では2つのシャフトを直接的に連結するクロスオーバーチャネル3によって相互連結された、長方形断面を有する2つのシャフト1および2を備える。鉱物岩20は、シャフトの上部によって、例えば予熱ゾーンA内にある入口6によって装填される。各シャフトは、燃料ランス9と、燃料の燃焼のための酸素含有ガスを供給するための装置5(a)および5(b)とを備える、燃料を供給するための装置4を有する。シャフトの上部から燃料ランス9の端部まで延びる予熱ゾーンAに最初に装填された鉱物岩は、次いで、燃料ランス9の端部とクロスオーバーチャネル3の下側レベルとの間の焼成ゾーンB内に進む。か焼された鉱物岩21は、冷却ゾーンCのシャフトの下部内に回収され、例えば出口7を介して取り出され、燃焼からのガスは、シャフト1および2の上部を介して、例えば、排気スタック8を介して除去される。
【0051】
再生並流縦型シャフト炉のシャフト1および2は、2つのステップを有するサイクルで交互に作動する:第1のステップでは、第1のシャフトが、焼成のために使用され、このとき第2のシャフトは予熱のために使用され、またその逆に第2のステップでは、第2のシャフトは焼成に使用され、このとき第1のシャフトは予熱のために使用される。鉱物岩の装填は、通常、サイクルの途中で行われ、流体回路を一方のシャフトから他方のシャフトに切り替えると同時に、炉内のガスの流れの逆転を可能にする。図1aでは、シャフト1は焼成モードにあり、シャフト2は予熱モードにある。焼成モードのシャフト1において、燃料は、供給装置4のランス9によって供給され、この燃料の燃焼に必要な空気は、燃料ランス5(a)(一次空気)によって、また、予め予熱された予熱ゾーンA内に位置する岩を通してシャフト1の上部5(b)(二次空気)によって供給される。これにより、焼成ゾーンBにおいて、岩の焼成を実施するのに十分高い温度に達することが可能になる。このようにして生成され、第1のシャフト1の下部の装置5(c)によって供給された空気によって冷却ゾーンC内で冷却された、か焼された岩は、シャフトのこの下部に設けられた出口7によって回収される。焼成モードのシャフトの排気スタック8は閉じられる。装置5(a)によって供給された一次空気、ならびに装置5(b)によってシャフト1の上部内に導入された二次空気および装置5(c)によって供給された冷却空気は、このようにして、冷却空気の一部のみが5(c)内に注入される予熱モードのシャフト2へのガスの循環を強制する。したがって、燃焼モードの第1のシャフト1内の燃料の燃焼からのガスは、クロスオーバーチャネル3を通過してから、燃料または一次酸素含有ガスもしくは二次酸素含有ガスが供給されない予熱モードの炉の第2のシャフト2に到達する。この第2のシャフト2の予熱ゾーンA内に装填された鉱物岩は、次いで、熱交換を介してこれらの燃焼ガスの熱エネルギーを回収し、その後これらのガスは、予熱モードのシャフト内の開いている排気スタック8を介して炉を退出する。岩は、こうして当分の間予熱され、第2のシャフトは焼成モードで作動することになる。
【0052】
そのような炉は、本発明によれば、図2および図3に示すように、クロスオーバーチャネル3内に追加の酸素含有ガスを注入するための注入装置18を備えることができる。この装置18は、クロスオーバーチャネル3内で、焼成モードのシャフト1から来る燃焼ガスに含まれる、未燃焼生成物、主に一酸化炭素を、シャフト2を出る前に酸化させる利点を与える。クロスオーバーチャネル3は、この空気注入装置18を受け入れるのに理想的な場所であり、その理由は、シャフト1および2に対するその中心位置により、これが炉のサイクルの第1または第2のステップにあるという事実によって独立的に、したがって、シャフト1が焼成モードにあり、シャフト2が予熱モードまたはその反対の状態にあるという事実から独立的に、この空気注入装置を使用することができるためである。クロスオーバーチャネル内の未燃焼生成物の酸化は、シャフト2内の岩の予熱に使用される前に、燃焼ガスの温度を維持し、別の形では増加させる効果も与える。未燃焼生成物は、燃焼後に得られ、これらは、特に、燃焼のための酸素含有ガスの供給5(a)および/または5(b)が、焼成モードのシャフト内で減少して、燃料のそのような不完全な燃料の燃焼を引き起こすときに得られる。焼成モードのシャフト1内の空気の供給のそのような低減は、燃料ランス9によって注入され、特に燃料の燃焼に使用される一次空気5(a)の量を減少させることによって実施され得る。固体燃料の場合、この一次空気のすべてまたは一部は燃料と予混合され、特に燃料の輸送に使用される。このため、一次輸送空気は、燃料と密接に混合された酸素に関してNOの形成に主に寄与し、したがってすぐに利用可能である。焼成モードのシャフト1内で不完全燃焼を実施する別の方法は、焼成モードのシャフト1の上部によって岩石を通して予熱ゾーンA内に注入される二次空気の供給5(b)を減少させることにある。当然ながら、一次空気と二次空気の量を同時に減らすことも可能である。
【0053】
あるいは、一次空気の量の低減が可能でない場合、特に後者が固体燃料の輸送に必要であるという事実により、この一次空気の酸素濃度を、この空気を中性ガス(N、COなど)によって富化するか、またはこれを酸素を枯渇させた再利用煙道ガスに置き換えることによって低減することも可能である。
【0054】
図1aによる炉とは異なり、図1bおよび図5による炉は、円形の断面を有するシャフトを有する。ここで、クロスオーバーチャネル3は、それぞれがシャフトを取り囲む2つの環状周辺チャネル22を連結する。これらは、クロスオーバーチャネル内の各シャフトからの、およびこれらのシャフトの全周にわたる燃焼ガスにアクセスできるように配置される。これらの周辺チャネル22は、鉱物岩の焼成されたブロックの流れの外側に位置し、したがって、クロスオーバーチャネル3と共に、2つのシャフトを相互連結するガス移送チャネルを形成する。
【0055】
図2は、本発明による炉の第1の実施形態のクロスオーバーチャネル3の長手方向軸Lに関する断面図を示す。この実施形態によれば、炉は、直線状のユニット10を備え、この直線状ユニットは、開口部13によってクロスオーバーチャネル3内に挿入され、このクロスオーバーチャネル3の長手方向軸Lに対して横断方向に、または図2に示すように水平に、またはユニットの端部にあるオリフィス11が、開口部13に近いオリフィス11よりも、クロスオーバーチャネルの天井12に近くなるように、水平に対して特定の傾斜角で置かれる。ユニット10のオリフィス11は、好ましくはクロスオーバーチャネル3の天井12に向かって追加の酸素含有ガスを注入するように配向される。未燃焼生成物の量が最も多く、温度が後者の酸化に理想的であるのは、事実上、この天井である。ユニット10は、有利には、シャフトの焼成モードおよび予熱モードとは独立して装置を使用することができるように、2つのシャフト1および2から等しい距離に挿入される。これには、図に概略的に示すように、追加の酸素19を含むガス源によってガスが供給される。
【0056】
図3は、本発明による炉の別の実施形態のクロスオーバーチャネル3の長手方向軸Lに関する断面図を示す。この実施形態によれば、クロスオーバーチャネル3は、その天井12に開口部14を有する。クロスオーバーチャネルの天井12の開口部14は、有利には、シャフト(図4を参照)から等しく離れ、クロスオーバーチャネル3の長手方向軸Lに垂直な平面内に位置する。追加の酸素含有ガスは、クロスオーバーチャネル3の天井12の開口部14に通じる一連のダクト15によって供給することができる。これらのダクトは、概略的に示されている、注入ガス源20から来る1つの主ダクト16にグループ化することができる。このダクト16の上流に置かれた圧縮機(図示せず)は、炉内の正圧にさらに打ち勝つために注入される空気の流量を調整することを可能にする。さらに、クロスオーバーチャネル3の天井12に直接設けられた開口部14は、未燃焼生成物のほとんどを含み、酸化のための最適な温度を有するゾーンに追加の空気を直接注入することを可能にする。
【0057】
図4では、炉のシャフト1および2は、クロスオーバーチャネル3の両側にあり、開口部14は、シャフト1および2から等距離にあり、クロスオーバーチャネル3の長手方向軸Lに垂直な平面内に位置する。長方形のシャフトの場合、燃料を供給するための装置4は、3つの燃料ランス9の6組を備え、これらのランスは、互いに平行に、かつクロスオーバーチャネル3の長手方向軸Lに平行な6つの平面17に位置する燃料のストリームのビームを作り出すように配置される。図4は、クロスオーバーチャネル3の天井12の開口部14がこれらの平行な平面17内に位置決めされることを明らかにしている。これらの平面は、焼成モードのシャフト1から来る燃焼ガス流れラインに対応し、このガス流の未燃焼生成物中に最も高い濃度が存在する。
【0058】
図1bに示すタイプの炉の断面図を示す図5に示すように、追加の空気含有ガスの注入は、クロスオーバーチャネル内に設けられた開口部14を通るだけでなく、周辺チャネル22内に設けられた開口部23によっても実施され得る。
【0059】
図6は、3つのクロスオーバーチャネル3、25、26によって相互連結された3つのシャフト1、2および24を備える、本発明による炉のそのような実施形態における断面図を示す。シャフト2および24は予熱モードにあり、シャフト1は焼成モードにあり、以下同様である。
比較例1
【0060】
1つのシャフトから他方のシャフトへのガスの直接通過を可能にするクロスオーバーチャネルによって相互連結された2つの長方形のシャフトを有する再生並流工業炉を、生石灰を生成するために標準的な条件で使用した。この設備では、木材おがくずと木材廃棄物の混合物(50/50)のような、燃料の総重量に対して約2重量%の有機窒素を含む燃料を使用した。これらの標準条件では、焼成モードのシャフトにおいて、(ここでは燃料の輸送のために働く)一次空気の流量は、2,700Nm/hであり、二次空気の流量は、5,526Nm/hであり、燃料の流量は1,790kg/hである。一度焼成された石灰岩を4,990Nm hの冷却空気流量によって冷却する。この設備は、1日当たり311トンの岩を焼成することができ、これは1日当たり175トンの焼成された生成物(生石灰)に相当する。
比較例2
【0061】
比較例1に示す再生並流炉において、焼成モードのシャフト内で、標準的な作動に対してシャフトへの空気の供給を低減させて、不完全燃焼を生成した。この低減は、注入される二次空気流を約12体積%低減することによって得られ、これは、二次空気流が5,526Nm/hから4,842Nm/hに変化したことを意味する。したがって、約12体積%の煙道ガス中のNOの濃度の低減が達成された。しかし、岩のか焼を実施するのに十分な温度、すなわち900℃を超える温度が維持されたことを確実にした。
【0062】
しかし、焼成モードのシャフト内の空気供給のこの低減の結果、一酸化炭素COのような未燃焼生成物の形成を顕著に増加させ、炉のエネルギー出力を低下させ、この生成物の放出後に環境問題を引き起こした。
本発明による実施例
【0063】
不完全燃焼後に得られた未燃焼生成物を酸化させるために、比較例2に示す炉内に、本発明による追加の空気を注入するための装置を設置した。追加の空気を注入するための装置は、図3および図4に示すようなものであり、ここではクロスオーバーチャネルの天井に、追加の空気の注入のための6つの開口部が存在しており、この開口部は、4つの燃料ランスの6つの組の平面内、すなわち未燃焼生成物の濃度が最も高いガス流れラインを通り抜ける平面内に配置される。
【0064】
追加の空気を注入するための装置を、COの含有量に関して非常に臨界的な条件に基づいて寸法設定した。実際に、スタックの出口に到達できる最大CO含有量は、11体積%の酸素を含む煙道ガスに対して1体積%である(すなわち12,500mgの煙道ガスのCO/Nm)と考えられており、これは、クロスオーバーチャネル上のCO総量の約2%に相当することが知られている。しかし、実際には、COの含有量は一般的にそれより低い。その結果、実際に必要とされる追加の酸素の化学量論的量は少なくなり、これは、追加の空気の流量を低減することができることを示唆している。しかし、追加の空気を注入するための既存の装置は、煙道ガス中に良好な追加の酸素混合物を得るために十分な速度を提供するために最小流量を課している。
【0065】
この例では、注入される追加の空気の流量は、化学量論的量の12倍に等しい追加の酸素の量に相当する。
【0066】
炉からの燃焼ガスの退出前の未燃焼生成物の酸化、すなわち800〜1,300℃で実施された酸化に加えて、NOの低減が維持されていることを観察することができた。本発明の驚くべき効果は、さらに、炉の瞬時生産性の予期せぬ3%の増加であった。実際に、クロスオーバーチャネルへの追加の空気の注入にもかかわらず、焼成モードのシャフト内の空気の供給の減少は、負荷損失、したがってこのシャフト内の静圧の減少につながり、それによってこのシャフトの予熱ゾーン内により多くの石灰岩を導入し、したがって炉の生産を増加させることを可能にする。
【0067】
窒素酸化物NOおよび一酸化炭素COの含有量を、上記に含む3つの例について、スタックの出口で測定した(そして11%酸素で表した)。
1)標準条件(比較例1)。
2)焼成モードのシャフト内の空気量は低減したが、煙道内の空気取り入れはない(比較例2)。
3)焼成モードでのシャフト内の空気量は低減し、煙道内にさらなる空気(流量=500Nm/h)を追加した。
(本発明による実施例)。
【0068】
【表1】
【0069】
この比較表により、焼成シャフトにおける空気の供給の減少が、炉の出口で放出されるガス中のNOxの含有量を低減させるが、残念なことにCOの含有量をかなり増加させる結果となるという事実を明らかにすることが可能になる(比較例2)。
【0070】
さらに、追加の空気をクロスオーバーチャネルに注入すると、NOの含有量は減少したままであるが、不完全燃焼がない場合に得られたものと同一のCOの含有量が再び観察される(本発明による実施例)。
【0071】
したがって、本発明は、同一のCO含有量を維持しつつ、標準条件に対してNOの放出を12.5%低減することを可能にする。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に決して限定されず、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく多くの改変を行うことができることが、当然ながら理解される。
【0073】
例えば、本発明による炉は、1つのシャフト内で石灰岩および別のシャフト内でドロマイト岩を焼成するのに適し得ることに留意することができる。シャフトには1種類の岩のみが含まれることに留意されたい。すなわち、例えば、焼成モードのシャフトが石灰岩を含む場合、予熱モードのシャフトは、石灰岩またはドロマイト岩を含むことができ、逆の形も可能である。この結果、サイクル中、生石灰およびクイックドライムを同時に、異なるシャフト内で生成することができる。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6