(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表皮材のうち、前記赤外線センサの前記発信部および前記受信部に対応する領域と、前記領域以外との色差ΔEが10以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用内装部品。
【背景技術】
【0002】
たとえば、インストルメントパネル、センターコンソールなどの自動車用内装部品は、樹脂成形品の表面を覆うようにして表皮材が貼り合わせられている。そして、内装部品には、たとえば、空調機器、オーディオ機器などの各装置を作動させるためのスイッチが設けられている。このような内装部品として、たとえば特許文献1には、スイッチ押圧部210を有するスイッチ基盤200が内蔵された成形体300と、成形体の表面に貼り合わせられた表皮材400とを備えた自動車用内装部品100が開示されている(
図8参照)。表皮材400には、スイッチ押圧部210の位置を示す目印となるマーキング部410が形成されている。マーキング部410は、表皮材400の表面に形成された凹部である。したがって、マーキング部410の周囲には段差ができる。ドライバーは、段差に触れることによって、マーキング部410を視認せずともスイッチ押圧部210の位置を認識でき、スイッチを押すことでスイッチのオン・オフを切り換えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の自動車用内装部品は、車室内の各装置を作動させるためスイッチを押す必要があり、各装置を非接触で操作することができないという問題があった。また、表皮材には、スイッチの位置を目立たせるためのマーキング部が形成されており、内装部品のデザインが一体感に欠けるという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、車室内の各装置を非接触で作動せることができ、一体感のあるデザインの自動車用内装部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0007】
本発明の自動車用内装部品は、
赤外線を対象物に発信する発信部と、対象物から反射された赤外線を受信する受信部とを有する赤外線センサと、
赤外線センサが設置された成形体と、
赤外線センサを覆うように配置された赤外線を透過する表皮材とを備えたものである。
【0008】
表皮材は赤外線透過率が60%以上であってもよい。
【0009】
赤外線センサの受信部は撮像素子であってもよい。
【0010】
表皮材のうち、赤外線センサの発信部および受信部に対応する領域と、領域以外との色差ΔEが10以下であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動車用内装部品は、赤外線を対象物に発信する発信部と、対象物から反射された赤外線を受信する受信部とを有する赤外線センサと、赤外線センサが設置された成形体と、赤外線センサを覆うように配置された赤外線を透過する表皮材とを備えたように構成した。
【0012】
したがって、本発明の自動車用内装部品は、車室内の各装置を非接触で作動させることができ、一体感のあるデザインを有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の自動車用内装部品について、図面を参照しながら実施形態の一例を説明する。
【0015】
本発明の自動車用内装部品1は、赤外線を対象物に発信する発信部2aと、対象物から反射された赤外線を受信する受信部2bとを有する赤外線センサ2と、赤外線センサ2が設置された成形体3と、赤外線センサ2を覆うように配置された赤外線を透過する表皮材4とを備えたものである(
図1参照)。
【0016】
赤外線センサ2は、発信部2aと受信部2bとを有している。いわゆる、アクティブセンサを用いる。発信部2aは赤外線を対象物に発信し、受信部2bは対象物から反射された赤外線を受信するものである。赤外線センサ2は、波長700nm〜2500nmの近赤外線に反応するものを用途に応じて用いる。発信部2aと受信部2bは、
図1に示すように、成形体3の表面3aがフラットになるように成形体3に設置する。なお、発信部2aと受信部2bは分離していてもよいし、一体となっていてもよい。
【0017】
成形体3は、赤外線センサ2を内蔵する。成形体3は、たとえば、センターコンソールの形状を有している。センターコンソールは、運転席と助手席との間において、車両の前後方向に延びるように設けられる。成形体3の材料には、たとえば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、繊維強化樹脂、発泡樹脂、2液反応硬化樹脂などを用いることができる。
【0018】
表皮材4は、表皮層40を含むものである。表皮層40の材料には、たとえば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂(オレフィン系、ウレタン系、スチレン系など)、不織布、人工皮革、合成皮革、植毛シート、ファブリック、および、本杢材または石を原材料とする突板などを用いることができる。表皮材4は表皮層40のみからなるものであってもよいし、他の層を有していてもよい。他の層としては、たとえば、表皮層40の裏面に接着された基布41(
図2(a)参照)、表皮層40と基布41との間に形成された中間層42(
図2(b)参照)、表皮層40の表面に形成された印刷層43および表皮材4の最表面に形成された表面処理層44(
図2(c)参照)などが挙げられる。基布41は、たとえば、織布、編布、不織布などである。中間層42は、たとえば、発泡樹脂で成形されたクッション性を有する層である。印刷層43は、たとえば、インキを用いて形成された任意の図柄などである。表面処理層44は、たとえば有機粒子を含有する樹脂層であり、表皮材4に耐摩耗性や滑らかな触感などを付与することができる。
【0019】
表皮材4は、赤外線を透過する。赤外線を透過する表皮材4は、たとえば、次のような方法により得ることができる。
(1) 表皮層40、中間層42、印刷層43、および表面処理層44を構成するそれぞれの樹脂に、赤外線を透過する顔料または染料を混合する方法
(2) 赤外線を透過する顔料または染料を含むインキ45を、透明な表皮層40にコーティングする方法(
図3(a)参照)
(3) 赤外線を透過する顔料または染料を含むインキ45を基材46にコーティングした赤外線透過シート47を、透明な表皮層40に貼り合わせる方法(
図3(b)参照)
(3)において、基材46は透明であってもよいし、赤外線を透過する顔料または染料を練り込んだものであってもよい。
【0020】
上記の方法によって得られた表皮材4は、表皮材を構成するすべての層が赤外線を透過することができる。
【0021】
上記の通り、赤外線センサ2は、波長700nm〜2500nmの近赤外線に反応するものを用途に応じて用いる。したがって、表皮材4も、波長700nm〜2500nmの近赤外線を透過する必要がある。赤外線を透過する領域は、表皮材4の全面であってもよいし、赤外線センサ2の発信部2aに対応する領域4aおよび受信部2bに対応する領域4bであってもよい(
図4参照)。
【0022】
本発明の自動車用内装部品1は、たとえば、センターコンソール5やアームレスト6に適用できる(
図5参照)。赤外線センサ2を、たとえば、通常運転していてドライバー7の手70が置かれる領域70aに設置すれば(
図5(b)参照)、センターコンソール5やアームレスト6にドライバー7が手70を置いたとき、発信部2aから発信された赤外線は手70によって反射され、受信部2bで受信される。受信した赤外線によって、車室内の各装置を制御できるように構成するとよい。たとえば、アームレスト6に手70を置いたときには空調のスイッチをオンに切り換え、アームレスト6から手70を離して所定時間が経過すればスイッチをオフに切り換えるといった制御がある。また、
図5(a)を参照して、手70を左右に動かすことで、オーディオ機器の音量調節や選曲をするといった制御がある。このような制御ができるように、自動車用内装部品と各装置とを構成すれば、従来のようにドライバーは各装置のスイッチを押す必要がない。つまり、非接触で車室内の各装置を操作することができる。また、本発明の自動車用内装部品は、赤外線センサ2を内蔵し、自動車用内装部品1の表面はフラットであるため、一体感あるデザインの自動車用内装部品とすることができる。
【0023】
自動車用内装部品1は、たとえば、インストルメントパネル8、ステアリングホイール9、ドアトリム10、シート11(座席)、各ピラートリムなどにも適用できる。これらの部品では、たとえば、運転席やそれ以外の場所に乗員がいるかを検知することができる(在席検知)。インストルメントパネル8やステアリングホイール9では、ドライバー7の姿勢や動きを検知し、ドライバー7が居眠りをしていないか、身体に異常が生じていないかを検知することができる。ドアトリム10では、ドライバー7の手70が置かれる位置(たとえば、
図5(a)参照)に赤外線センサ2を設置し、ドライバー7が手70を置くとパワーウィンドウが開き、手70を離して所定時間が経過すると閉まるといった制御ができる。
【0024】
表皮材4のうち、赤外線を透過する領域の赤外線透過率は60%以上であってもよい。好ましくは、80%以上である。少なくとも60%以上の赤外線透過率であると、十分な量の赤外線を対象物に発信でき、十分な量の赤外線を対象物から受信することができる。つまり、赤外線センサ2がより機能しやすくなる。
【0025】
赤外線センサ2の受信部2bは撮像素子2cであってもよい。このような自動車用内装部品1では、たとえば、静脈、虹彩および顔のうち少なくとも1つを利用する認証が可能となる。撮像素子とは、画像を電気信号に変換する素子のことである。撮像素子としては、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、有機薄膜撮像素子などを用いることができる。
【0026】
静脈認証では、たとえば、透過型撮影方式または反射型撮影方式を用いることができる(
図6参照)。いずれの方式も、非接触で静脈認証をすることができる。透過型撮影方式では、赤外線センサ2の発信部2aと撮像素子2cとを、指12の対象部位を挟むように配置する(
図6(a)参照)。この方式を用いる自動車用内装部品1は、指12を挿入するための凹部1aを有している。表皮材4は赤外線を透過するため、発信部2aから発信された赤外線は指12を透過し、さらに指の上方の表皮材4を透過して、撮像素子2cに到達する。撮影対象の指は小さいため、凹部1aつまり静脈認証のためのスペースは小さくできる。反射型撮影方式では、発信部2aと撮像素子2cとを同じ側に配置する(
図6(b)参照)。この方式では、指12の静脈を撮影することもできるし、手70の静脈を撮影することもできる。
【0027】
虹彩は、瞳の周りにある環状の領域である。この領域には筋肉の凹凸があり、そこに脂肪が沈着してランダムなパターンが形成される。このパターンを、赤外線により計測することができる。虹彩は、目の画像を撮影するだけで取得できるため、非接触での衛生的な認証ができる。
【0028】
顔認証では、顔画像を取得する際に化粧、眼鏡や帽子などの装着物、照明条件、顔の向きや動きといった影響を受けやすい。しかし、近赤外線を用いると、これらの影響を低減させることができる。
【0029】
表皮材4のうち、赤外線センサ2の発信部2aに対応する領域4aおよび受信部2bに対応する領域4bと、領域4a,4b以外との色差ΔEは10以下であってもよい。色差ΔEは、下記の式(1)で算出できる。
・・・(1)
ここで、Δa
*、Δb
*、ΔL
*は、CIE1976色空間における、赤外線を透過する領域4a,4bのa
*,b
*,L
*値と、領域4a,4b以外(つまり、赤外線を透過しない領域)のa
*,b
*,L
*値との差で求められる値である。色差ΔEが10以下であることによって、赤外線透過領域4a,4bが目立たなくなり、自動車用内装部品1のデザイン性をさらに向上させることができる。
【0030】
上記の自動車用内装部品1の製造方法について、例を2つ説明する。1つは、赤外線センサ2が設置された成形体3を成形し、赤外線を透過する表皮材4を貼り合わせる方法である。赤外線センサ2が設置された成形体3を得るには、たとえば、赤外線センサ2が設置できる大きさの凹部を有する成形体3を形成し、その凹部に赤外線センサ2を設置する方法がある。また、赤外線センサ2を一対の金型の間に配置して、型締めによりできた空間内に樹脂を射出して成形する方法も利用できる。
【0031】
もう1つは、赤外線を透過する表皮材4と赤外線センサ2とを、一対の金型の間に配置して、型締めによりできた空間内に樹脂を射出して成形する方法である。赤外線センサ2は、位置がずれないよう、表皮材4に固定する。
【0032】
このようにして、自動車用内装部品1を得ることができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、成形体3の表面3aがフラットになるように赤外線センサ2を成形体3に設置しているが、これに限定されない。たとえば、発信部2aと受信部2bの少なくとも一方が成形体の表面3aよりも深い箇所に設置されていてもよい(
図7参照)。この場合、表皮材4と同様に、成形体3も赤外線を透過する必要がある。その方法としては、たとえば、赤外線を透過する顔料または染料を混合した樹脂で成形体3を成形する方法がある。