【文献】
BHAKTA, M. et al.,The generation of zinc finger proteins by modular assembly,Methods Mol. Biol.,2010年,Vol. 649,pp. 3-30(1-25)
【文献】
KIM, Y. G. et al.,Hybrid restriction enzymes: zinc finger fusions to Fok I cleavage domain,Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,1996年,Vol. 93,pp. 1156-1160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルブミン遺伝子を切断するジンクフィンガーヌクレアーゼであって、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、第1および第2の二量体化ZFNを含み、それぞれのZFNはジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼドメインを含み、前記ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、アルブミン遺伝子内の標的配列に結合し、第1のジンクフィンガーDNA結合ドメインは、表8の35393、35394、35396、35398、または35399で指定されるジンクフィンガータンパク質に示されるF1からF5またはF1からF6の順序の認識ヘリックス領域を含む5または6個のジンクフィンガードメインを含み、この第1のジンクフィンガーDNA結合ドメインは配列番号127中の標的部位に結合し、かつ第2のジンクフィンガーDNA結合ドメインは、表8の35361、35364、35370、または35379で指定されるジンクフィンガータンパク質に示されるF1からF5またはF1からF6の順序の認識ヘリックス領域を含む5または6個のジンクフィンガードメインを含み、この第2のジンクフィンガーDNA結合ドメインは配列番号128中の標的部位に結合する、ジンクフィンガーヌクレアーゼ。
請求項1または2に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ、請求項3に記載の1つ以上のポリヌクレオチド、および/または請求項4〜6のいずれかに記載の細胞を含むキット。
哺乳動物対象の細胞における内因性アルブミン遺伝子を改変するための組成物であって、前記組成物は、請求項1または2に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ、または請求項3に記載の1つ以上のポリヌクレオチドと、治療用タンパク質をコードする導入遺伝子を含むドナーポリヌクレオチドとを含む、組成物。
前記対象が、凝固障害、COPDもしくは肝臓損傷等のA1AT欠損障害、リソソーム貯蔵疾患、代謝性疾患、糖尿病、表皮水疱症、肝硬変、リポタンパク質リパーゼ欠損症、癌、および自己免疫疾患を含む群から選択される疾患または障害に罹患している、請求項8または9に記載の組成物。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
細胞のゲノムにおけるセーフハーバーの作成、標的挿入、および導入遺伝子のその後の発現、例えば、肝臓等の分泌組織からの導入遺伝子の発現のための方法および組成物が本明細書に開示される。一態様において、ゲノム中の目的とする領域(例えば、アルブミン遺伝子)内の標的部位に結合する非天然ジンクフィンガータンパク質(ZFP)が本明細書に記載され、ZFPは、1つ以上の操作されたジンクフィンガー結合ドメインを含む。一実施形態において、ZFPは、目的とする標的ゲノム領域を切断するジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であり、ZFNは、1つ以上の操作されたジンクフィンガー結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。切断ドメインおよび切断ハーフドメインは、例えば、様々な制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得られ得る。一実施形態において、切断ハーフドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、Fok I)に由来する。ある実施形態において、ジンクフィンガードメインは、アルブミン遺伝子内の標的部位、例えば、表1、3、5、または8の単一列に示される順に並べられた認識ヘリックスドメインを有するジンクフィンガータンパク質を認識する。
【0017】
別の態様では、ゲノム中の目的とする領域(例えば、アルブミン遺伝子)内の標的部位に結合する転写活性化因子様(TALE)タンパク質が本明細書に記載され、TALEは、1つ以上の操作されたTALE結合ドメインを含む。一実施形態において、TALEは、目的とする標的ゲノム領域を切断するヌクレアーゼ(TALEN)であり、TALENは、1つ以上の操作されたTALE DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。切断ドメインおよび切断ハーフドメインは、例えば、様々な制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得られ得る。一実施形態において、切断ハーフドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、Fok I)に由来する。ある実施形態において、TALE DNA結合ドメインは、アルブミン遺伝子内の標的部位、例えば、表12の単一列に示される標的配列を有するTALE DNA結合ドメインを認識する。
【0018】
本明細書に記載のZFNおよび/またはTALENは、遺伝子内または遺伝子に隣接したコーディング領域または非コーディング領域内の目的とする領域、例えば、リーダー配列、トレーラー配列、もしくはイントロン等、またはコーディング領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内の目的とする領域に結合し、かつ/または目的とする領域を切断し得る。ある実施形態において、ZFNは、アルブミン遺伝子に結合し、かつ/またはアルブミン遺伝子を切断する。他の実施形態において、ZFNおよび/またはTALENは、セーフハーバー遺伝子、例えば、CCR5遺伝子、PPP1R12C(AAVS1としても知られている)遺伝子、またはRosa遺伝子に結合し、かつ/またはそれらを切断する。例えば、米国特許公開第20080299580号、同第20080159996号、および同第201000218264号を参照されたい。別の態様において、本明細書に記載のジンクフィンガーおよび/またはTALEヌクレアーゼのうちの1つ以上を含む組成物が本明細書に記載される。ある実施形態において、この組成物は、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて1つ以上のジンクフィンガーおよび/またはTALEヌクレアーゼを含む。
【0019】
別の態様において、本明細書に記載の1つ以上のZFNおよび/またはTALENをコードするポリヌクレオチドが本明細書に記載される。ポリヌクレオチドは、例えば、mRNAであり得る。いくつかの態様において、mRNAは、化学的に修飾され得る(例えば、Kormann et al,(2011)Nature Biotechnology 29(2):154−157を参照のこと)。
【0020】
別の態様において、プロモーターに作動的に連結される本明細書に記載の1つ以上のZFNおよび/またはTALENをコードするポリヌクレオチドを含む。ZFNおよび/またはTALEN発現ベクターが本明細書に記載される。一実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。一態様において、ウイルスベクターは、組織特異的向性を呈する。
【0021】
別の態様において、1つ以上のZFNおよび/またはTALEN発現ベクターを含む宿主細胞が本明細書に記載される。宿主細胞は、1つ以上のZFPまたはTALEN発現ベクターで安定的に形質転換されるか、一過性にトランスフェクトされるか、またはこれらの組み合わせであり得る。一実施形態において、宿主細胞は、胚幹細胞である。他の実施形態では、1つ以上のZFPおよび/またはTALEN発現ベクターは、宿主細胞において1つ以上のZFNおよび/またはTALENを発現させる。別の実施形態において、宿主細胞は、外因性ポリヌクレオチドドナー配列をさらに含み得る。好適な宿主細胞の非限定的な例として、真核細胞または細胞株、例えば、分泌細胞(例えば、肝臓細胞、粘膜細胞、唾液腺細胞、下垂体細胞等)、血球(赤血球)、幹細胞等が挙げられる。本明細書に記載の実施形態のうちのいずれかにおいて、宿主細胞は、胚細胞、例えば、マウス、ラット、ウサギ、または他の哺乳動物の胚細胞を含み得る。
【0022】
別の態様において、細胞内のアルブミン遺伝子を切断するための方法が本明細書に記載され、この方法は、ZFN(複数可)またはTALEN(複数可)が発現され、かつ1つ以上のアルブミン遺伝子が切断される条件下で、細胞に、1つ以上のアルブミン遺伝子内の標的部位に結合する1つ以上のZFNおよび/またはTALENをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを導入することを含む。
【0023】
他の実施形態では、任意の標的遺伝子のゲノム配列が、例えば、本明細書に記載のZFNもしくはTALEN(またはこれらのZFNもしくはTALENをコードするベクター)ならびにZFNおよび/もしくはTALENでの標的切断後に遺伝子に挿入される「ドナー」配列(例えば、導入遺伝子)を用いて置換される。ドナー配列は、別個のベクター(例えば、AdもしくはLVベクター)に存在するZFNもしくはTALENベクターに存在し得るか、またはあるいは、異なる核酸送達機構を用いて細胞に導入され得る。ドナーヌクレオチド配列の標的遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子、他のセーフハーバー遺伝子等)へのそのような挿入は、標的遺伝子座(例えば、アルブミン)の遺伝子制御要素の制御下でドナーによって運ばれる導入遺伝子の発現をもたらす。いくつかの態様において、例えばアルブミン遺伝子への目的とする導入遺伝子の挿入は、無傷の外因性タンパク質配列の発現をもたらし、任意のアルブミンによってコードされたアミノ酸を欠く。他の態様において、発現された外因性タンパク質は、融合タンパク質であり、導入遺伝子およびアルブミン遺伝子によってコードされたアミノ酸(例えば、内因性標的遺伝子座由来、またはあるいは、導入遺伝子上のアルブミンコード配列由来)を含む。いくつかの例において、アルブミン配列が外因性タンパク質のアミノ(N)末端部分に存在する一方で、他の例では、アルブミン配列は、外因性タンパク質のカルボキシ(C)末端部分に存在する。他の例において、アルブミン配列は、外因性タンパク質のN末端部分およびC末端部分の両方に存在する。アルブミン配列は、全長野生型または変異体アルブミン配列を含み得るか、またはあるいは、部分的アルブミンアミノ酸配列を含み得る。ある実施形態において、アルブミン配列(全長または部分的)は、それが融合される導入遺伝子によって発現されたポリペプチドの血清半減期を延長させるのに役立ち、かつ/または担体としての機能を果たす。いくつかの実施形態において、アルブミン−導入遺伝子融合物が細胞内の内因性遺伝子座に位置する一方で、他の実施形態では、アルブミン−導入遺伝子コード配列は、ゲノム内のセーフハーバーに挿入される。いくつかの態様において、セーフハーバーは、AAVS1、Rosa、HPRT、またはCCR5遺伝子座から選択される(共同所有の米国特許公開第20080299580号、同第20080159996号、および同第201000218264号、ならびに米国仮特許出願第61/556,691号を参照のこと)。
【0024】
別の態様では、本発明は、インビボでのアルブミンプロモーター(例えば、内因性または外因性アルブミンプロモーター)の制御下で導入遺伝子を発現させるために使用することができる方法および組成物を記載する。いくつかの態様において、この導入遺伝子は、目的とする治療用タンパク質をコードし得る。この導入遺伝子は、本発明の方法が欠損または不足したタンパク質の産生(例えば、「タンパク質置換」)のために使用され得るようにタンパク質をコードし得る。いくつかの例において、このタンパク質は、リソソーム蓄積症の治療に関与し得る。表皮水疱症またはAAT欠損気腫等の様々な状態のタンパク質治療薬を含む他の治療用タンパク質が発現し得る。他の態様では、この導入遺伝子は、発現したタンパク質がそれに新規の望ましい特徴を与える特性(半減期の延長、血漿クリアランス特性の変化等)を有するような配列(例えば、操作された配列)を含み得る。操作された配列は、アルブミン配列に由来するアミノ酸も含み得る。いくつかの態様において、導入遺伝子は、治療用タンパク質、治療用ホルモン、血漿タンパク質、抗体等をコードする。いくつかの態様において、導入遺伝子は、凝固障害等の血液障害に関与するタンパク質をコードし得る。いくつかの態様において、導入遺伝子は、構造核酸(shRNA、miRNA等)をコードする。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、トランスジェニック動物系においてインビボで用いられ得る。いくつかの態様において、トランスジェニック動物は、導入遺伝子がヒト遺伝子をコードするモデル開発において用いられ得る。いくつかの例において、トランスジェニック動物は、対応する内因性遺伝子座でノックアウトされ得、ヒトタンパク質が単離について研究され得るインビボ系の開発を可能にする。そのようなトランスジェニックモデルは、目的とするヒトタンパク質と相互作用し得るか、またはそれを修飾し得る小分子、大きい生体分子、または他の実体を特定するスクリーニング目的のために用いられ得る。他の態様において、トランスジェニック動物は、産生目的、例えば、目的とする抗体または他の生体分子の産生のために用いられ得る。ある実施形態において、動物は、小型の哺乳動物、例えば、イヌ、ウサギ、またはラット、マウス、もしくはテンジクネズミ等の齧歯類である。他の実施形態では、動物は、非ヒト霊長類である。なおさらなる実施形態において、動物は、ウシ、ヤギ、またはブタ等の家畜動物である。いくつかの態様において、導入遺伝子は、選択された遺伝子座(例えば、アルブミンまたはセーフハーバー)、幹細胞(例えば、胚幹細胞、人工多能性幹細胞、肝幹細胞等)、または本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって得られる動物胚に組み込まれ、その後、この胚は、生きた動物が生まれるように移植される。その後、この動物を性的に成熟するまで育て、子孫を生ませ、子孫のうちの少なくともいくつかは、組み込まれた導入遺伝子を含む。
【0026】
なおさらなる態様において、染色体の内因性遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子)、例えば、胚の染色体に、核酸配列を部位特異的に組み込むための方法が本明細書に提供される。ある実施形態において、この方法は、(a)胚に、(i)組み込まれる核酸配列に隣接する上流配列および下流配列を含む少なくとも1つのDNAベクター、ならびに(ii)ジンクフィンガーをコードする少なくとも1つのRNA分子および/または標的遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子座)における組み込み部位を認識するTALEヌクレアーゼを注入することと、(b)胚を培養してジンクフィンガーおよび/またはTALEヌクレアーゼの発現を可能にすることとを含み、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはTALENによって組み込み部位に導入される二本鎖切断は、核酸配列を染色体に組み込むように、DNAベクターとの相同的組換えによって修復される。
【0027】
好適な胚は、哺乳類を含むいくつかの異なる脊椎動物種、鳥類、爬虫類、両生類、および魚種から得られ得る。一般的に言えば、好適な胚は、収集、注入、および培養されてジンクフィンガーまたはTALEヌクレアーゼの発現を可能にし得る胚である。いくつかの実施形態において、好適な胚には、小型の哺乳動物(例えば、齧歯動物、ウサギ等)、ペット動物、家畜、および霊長類由来の胚が含まれ得る。齧歯動物の非限定的な例として、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、およびテンジクネズミが挙げられ得る。ペット動物の非限定的な例として、ネコ、イヌ、ウサギ、ハリネズミ、およびフェレットが挙げられ得る。家畜の非限定的な例として、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラマ、アルパカ、およびウシが挙げられ得る。霊長類の非限定的な例として、オマキザル、チンパンジー、キツネザル、マカク、マーモセット、タマリン、クモザル、リスザル、および尾長ザルが挙げられ得る。他の実施形態では、好適な胚には、魚、爬虫類、両生類、または鳥類由来の胚が含まれ得る。あるいは、好適な胚は、昆虫胚、例えば、ショウジョウバエ胚または蚊胚であり得る。
【0028】
本明細書に記載の方法または組成物のうちのいずれかにおいて、操作された遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子座)を含む細胞は、幹細胞であり得る。本発明の方法および組成物とともに使用され得る特定の幹細胞型には、胚幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、および肝または肝臓幹細胞が含まれる。iPSCは、患者試料および正常対照に由来し得、患者由来のiPSCは、目的とする遺伝子で正常遺伝子配列に変異し得るか、または正常細胞は、目的とする遺伝子で既知の疾患対立遺伝子に改変され得る。同様に、肝幹細胞は、患者から単離され得る。これらの細胞は、その後、目的の導入遺伝子を発現するように操作され、増殖され、その後、患者に再導入される。
【0029】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかにおいて、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(複数可)および/またはTALEN(複数可)をコードするポリヌクレオチドは、DNA、RNA、またはこれらの組み合わせを含み得る。ある実施形態において、ポリヌクレオチドは、プラスミドを含む。他の実施形態では、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、mRNAを含む。
【0030】
少なくとも1つのDNAベクター(このDNAベクターは、組み込まれる核酸配列に隣接する上流配列および下流配列を含む)ならびに染色体組み込み部位を認識するジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのRNA分子を含む胚も提供される。本明細書に記載の胚(例えば、性的に成熟するまで発育し、かつ子孫を生むことを許された胚)のうちのいずれかに由来する生物も提供される。
【0031】
別の態様において、凝固因子障害に罹患した動物の治療に用いる薬物ライブラリおよび/または他の治療用組成物(すなわち、抗体、構造RNA等)のスクリーニングにおける細胞、細胞株、および動物(例えば、トランスジェニック動物)の使用が本発明の方法および組成物によって提供される。そのようなスクリーニングは、操作された細胞株または初代細胞を用いて細胞レベルで開始することができ、全動物(例えば、ヒト)の治療のレベルまで進み得る。
【0032】
本発明のZFPおよび/またはTALENを含むキットも提供される。このキットは、ZFPもしくはTALENをコードする核酸(例えば、好適な発現ベクターに含まれるRNA分子またはZFPもしくはTALENをコードする遺伝子)、ドナー分子、好適な宿主細胞株、本発明の方法を実行するための説明書等を含み得る。
【0033】
したがって、本明細書の本開示は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0034】
1.内因性アルブミン遺伝子に結合するDNA結合タンパク質および切断ドメインを含む非天然融合タンパク質であって、内因性アルブミン遺伝子を修飾する、融合タンパク質。
【0035】
2.前記DNA−結合タンパク質がジンクフィンガータンパク質を含む、実施形態1に記載の融合タンパク質。
【0036】
3.前記ジンクフィンガータンパク質が、認識ヘリックス領域を含む4、5、または6個のジンクフィンガードメインを含み、前記ジンクフィンガータンパク質が、表1、表3、表5、または表8の単一列に示される認識ヘリックス領域を含む、実施形態2に記載の融合タンパク質。
【0037】
4.前記DNA結合タンパク質がTALE DNA結合ドメインを含む、実施形態1に記載の融合タンパク質。
【0038】
5.TALE DNA結合ドメインが表12の単一列に示される標的配列に結合する、実施形態4に記載の融合タンパク質。
【0039】
6.実施形態1〜5に記載の1つ以上の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0040】
7.実施形態1〜5に記載の1つ以上の融合タンパク質または実施形態6に記載の1つ以上のポリヌクレオチドを含む、単離細胞。
【0041】
8.前記細胞が幹細胞または胚細胞である、実施形態7に記載の細胞。
【0042】
9.前記幹細胞が、胚幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、肝幹細胞、および肝臓幹細胞からなる群から選択される、実施形態8に記載の細胞。
【0043】
10.実施形態1〜5に記載の融合タンパク質または実施形態6に記載のポリヌクレオチドまたは実施形態7〜9に記載の細胞を含むキット。
【0044】
11.細胞中の内因性アルブミン遺伝子を切断する方法であって、
前記1つ以上の融合タンパク質が発現し、前記アルブミン遺伝子が切断される条件下で、前記細胞に、実施形態6に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む1つ以上の発現ベクターを導入することを含む、方法。
【0045】
12.前記ポリヌクレオチドがAAVベクターを含む、実施形態11に記載の方法。
【0046】
13.前記細胞が肝臓細胞である、実施形態11に記載の方法。
【0047】
14.導入遺伝子を内因性アルブミン遺伝子に導入する方法であって、
前記導入遺伝子が内因性アルブミン遺伝子に組み込まれるように、前記導入遺伝子を含む外因性ポリヌクレオチドの存在下で、実施形態15〜17のいずれかに記載の方法に従って内因性アルブミン遺伝子を切断することを含む、方法。
【0048】
15.前記導入遺伝子が治療用タンパク質を発現する、実施形態14に記載の方法。
【0049】
16.前記治療用タンパク質が、リソソーム蓄積症、表皮水疱症、AAT欠損気腫、または凝固障害等の血液障害の治療に関与する、実施形態15に記載の方法。
【0050】
17.前記導入遺伝子の発現が内因性アルブミン制御配列によって駆動される、実施形態15または16に記載の方法。
【0051】
18.前記導入遺伝子がアルブミン配列をさらに含む、実施形態15〜17のいずれかに記載の方法。
【0052】
19.前記アルブミン配列が前記タンパク質のアミノ(N)末端部分および/またはカルボキシ(C)末端部上に存在する、実施形態18に記載の方法。
【0053】
20.内因性アルブミン遺伝子に組み込まれた導入遺伝子から発現されるポリペプチドの血清半減期を延長させる方法であって、実施形態18または実施形態19に記載の方法に従って前記導入遺伝子を前記内因性アルブミン遺伝子に導入することを含み、前記ポリペプチドの前記血清半減期が延長するように前記導入遺伝子が前記ポリペプチドおよびアルブミン配列を発現する、方法。
【0054】
21.ポリペプチドの欠損によって引き起こされる疾患を有する対象を治療する方法であって、
導入遺伝子が単離細胞において発現されるように、実施形態14〜19に記載の方法に従って前記ポリペプチドをコードする前記導入遺伝子を前記単離細胞に導入することと、前記単離細胞を前記対象に導入し、それによって前記疾患を治療することと、を含む、方法。
【0055】
22.前記細胞が肝臓細胞または幹細胞である、実施形態21に記載の方法。
【0056】
23.前記幹細胞が、胚幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、肝幹細胞、および肝臓幹細胞からなる群から選択される、実施形態22に記載の細胞。
【0057】
これらおよび他の態様は、本開示を全体として考慮することにより、当業者に容易に明らかになる。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
内因性アルブミン遺伝子に結合するジンクフィンガータンパク質および切断ドメインを含む非天然融合タンパク質であって、前記内因性アルブミン遺伝子を修飾する、融合タンパク質。
(項目2)
前記ジンクフィンガータンパク質が、認識ヘリックス領域を含む4、5、または6個のジンクフィンガードメインを含み、前記ジンクフィンガータンパク質が、表1、表3、表5、または表8の単一列に示される前記認識ヘリックス領域を含む、項目2に記載の融合タンパク質。
(項目3)
項目1に記載の1つ以上の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(項目4)
項目1または項目2に記載の1つ以上の融合タンパク質または項目3に記載の1つ以上のポリヌクレオチドを含む単離細胞。
(項目5)
前記細胞が幹細胞である、項目4に記載の細胞。
(項目6)
前記幹細胞が、胚幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、肝幹細胞、および肝臓幹細胞からなる群から選択される、項目5に記載の細胞。
(項目7)
項目1または項目2に記載の融合タンパク質または項目3に記載のポリヌクレオチドを含むキット。
(項目8)
細胞中の内因性アルブミン遺伝子を切断する方法であって、
前記1つ以上の融合タンパク質が発現され、かつ前記アルブミン遺伝子が切断される条件下で、前記細胞に、項目1または項目2に記載の少なくとも1つの融合タンパク質または項目3に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む1つ以上の発現ベクターを導入することを含む、方法。
(項目9)
前記ポリヌクレオチドがAAVベクターを含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記細胞が肝臓細胞である、項目8または項目9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0059】
内因性アルブミン遺伝子を修飾するため、例えば、分泌組織において導入遺伝子を発現させるための組成物および方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、内因性アルブミン遺伝子に挿入されて、さらに肝組織に制限される非常に高い発現レベルを可能にする。導入遺伝子は、治療利益を提供するものを含む任意のタンパク質またはペプチドをコードし得る。
【0060】
したがって、本発明の方法および組成物を用いて、治療的に有益なタンパク質(導入遺伝子由来)を分泌組織において高度に発現された遺伝子座から発現することができる。例えば、導入遺伝子は、血液障害、例えば、凝固障害、および様々な他の単一遺伝子疾患に関与するタンパク質をコードし得る。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、導入遺伝子の発現がアルブミン発現制御要素によって制御されるように、内因性アルブミン遺伝子座に挿入され得、高濃度の導入遺伝子をコードするタンパク質の肝臓特異的発現をもたらす。発現され得るタンパク質には、凝固因子、例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XIII因子、vWF等、抗体、リソソーム蓄積に関連するタンパク質、インスリン、α1−抗トリプシン、およびそのように発現されたときに利益をもたらす実際に任意のペプチドまたはタンパク質が含まれ得る。
【0061】
加えて、任意の導入遺伝子は、患者由来の細胞、例えば、患者由来の人工多能性幹細胞(iPSC)または他の種類の幹細胞(非限定的な組として、胚、造血、神経、または間葉)に導入されて、分泌組織への最終的な移植において用いられ得る。導入遺伝子は、アルブミン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子を含むが、これらに限定されない、これらの細胞における目的とする任意の領域に導入され得る。これらの改変された幹細胞は、例えば、肝細胞に分化され、肝臓に移植され得る。あるいは、導入遺伝子は、特定の組織を標的とするウイルスまたは他の送達系を用いて、所望に応じて分泌組織に指向され得る。例えば、肝臓栄養性アデノウイルス関連ウイルス(AAV)ベクターAAV8を送達ビヒクルとして用いることで、特異的ヌクレアーゼが導入遺伝子と同時に運ばれるときに所望の遺伝子座での導入遺伝子の組み込みをもたらし得る。
概要
【0062】
方法の実践、ならびに本明細書に開示の組成物の調製および使用は、別途示されない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNA、および当分野の技術の範囲内の関連分野における従来の技法を用いる。これらの技法は、文献内で十分に説明される。例えば、Sambrook et al.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989 and Third edition,2001;Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987 and
periodic updates;the series METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin”(P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds.),Academic Press,San Diego,1999;およびMETHODS IN
MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Becker,ed.)Humana Press,Totowa,1999を参照されたい。
定義
【0063】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、同義に使用され、線状または環状構造であり、かつ一本鎖または二本鎖形態のいずれかである、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的であると解釈されるべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基部分、糖部分、および/またはリン酸部分において修飾されるヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)を包含することができる。概して、特定のヌクレオチドの類似体は、同一の塩基対合特異性を有し、すなわち、Aの類似体は、Tと塩基対合する。
【0064】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために同義に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0065】
「結合」とは、巨大分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的かつ非共有結合的な相互作用を指す。相互作用が全体として配列特異的である限り、結合相互作用のすべての構成要素が配列特異的である(例えば、DNA骨格におけるリン酸残基と接触する)必要はない。そのような相互作用は、概して、10
−6M
−1以下の解離定数(K
d)を特徴とする。「親和性」は、結合の強度を指し、結合親和性の増加は、K
dの低下と相関性がある。
【0066】
「結合タンパク質」は、別の分子に非共有結合的に結合することができるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)、および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合し得る。タンパク質結合タンパク質の場合、それは、それ自身に結合することができ(ホモ二量体、ホモ三量体等を形成するために)、かつ/または、異なるタンパク質(単数または複数)の1つ以上の分子に結合し得る。結合タンパク質は、2つ異常の種類の結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合、およびタンパク質結合活性を有する。
【0067】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、亜鉛イオンの配位によってその構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的な様式でDNAに結合するタンパク質またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、多くの場合、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。
【0068】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つ以上のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、TALEのその同族の標的DNA配列への結合に関与する。単一の「反復単位」(「反復」とも称される)は、典型的には、33〜35アミノ酸長であり、天然に存在するTALEタンパク質内の他のTALE反復配列に少なくともある程度の配列相同性を示す。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第20110301073号を参照されたい。
【0069】
ジンクフィンガーおよびTALE結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識へリックス領域を操作する(1つ以上のアミノ酸を改変する)ことによって、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」され得る。したがって、操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、非天然タンパク質である。DNA結合タンパク質を操作するための方法の非限定的な例には、設計および選択がある。設計されたDNA結合タンパク質は、その設計/組成が主に合理的基準によってもたらされる非天然タンパク質である。設計のための合理的基準は、置換規則の適用、ならびに既存のZFPおよび/またはTALE設計および結合データの情報を格納するデータベース内の情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、および同第6,534,261号を参照されたく、国際公開第WO98/53058号、同第WO98/53059号、同第WO98/53060号、同第WO02/016536号、および同第WO03/016496号、ならびに米国公開第20110301073号も参照されたい。
【0070】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その生成が主にファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択等の実験プロセスからもたらされる天然には見られないタンパク質である。例えば、米国第5,789,538号、米国第5,925,523号、米国第6,007,988号、米国第6,013,453号、米国第6,200,759号、国際公開第WO95/19431号、同第WO96/06166号、同第WO98/53057号、同第WO98/54311号、同第WO00/27878号、同第WO01/60970号、同第WO01/88197号、同第WO02/099084号、および米国公開第20110301073号を参照されたい。
【0071】
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間における遺伝子情報の交換のプロセスを指す。本開示の目的のために、「相同組換え(HR)」とは、例えば、相同性指向性の修復機構を介して細胞における二本鎖切断の修復中に生じるような交換の特殊な形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)の鋳型修復のために「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝子情報の伝達をもたらすため、「非交差遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として広く知られている。任意の特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、そのような伝達は、切断された標的とドナーとの間に生じるヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ修正、および/または標的の一部になる遺伝子情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存鎖アニーリング」、および/または関連プロセスを含み得る。そのような特殊なHRは、多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部またはすべてが標的ポリヌクレオチドに組み込まれるように、標的分子の配列の改変をもたらす。
【0072】
本開示の方法において、本明細書に記載の1つ以上の標的化されたヌクレアーゼは、所定の部位で標的配列(例えば、細胞クロマチン)に二本鎖切断を作成し、この切断領域内のヌクレオチド配列と相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドが細胞に導入され得る。二本鎖切断の存在は、ドナー配列の組み込みを促進することが示されている。ドナー配列は、物理的に組み込まれ得るか、またはあるいは、ドナーポリヌクレオチドは、相同組換えによる切断の修復用の鋳型として使用され、その結果、ドナーにおいて見られるようなヌクレオチド配列のすべてまたは一部を細胞クロマチンに導入する。したがって、細胞クロマチン内の第1の配列を改変することができ、ある実施形態において、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列に変換することができる。したがって、「置換する」または「置換」という用語の使用が、あるヌクレオチド配列の別のヌクレオチド配列による置換(すなわち、情報の意味において、配列の置換)を表し、かつあるポリヌクレオチドの別のポリヌクレオチドによる物理的または化学的置換は必ずしも必要としないことが理解され得る。
【0073】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、ジンクフィンガーまたはTALENタンパク質のさらなる対が、細胞内のさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断のために使用され得る。
【0074】
細胞クロマチンにおける目的とする領域内の配列の標的組換えおよび/または置換および/または改変のための方法のある実施形態において、染色体配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列との相同組換えによって改変される。切断領域に対する配列相同性が存在する場合、そのような相同組換えは、細胞クロマチンにおける二本鎖切断の存在によって促進される。
【0075】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的とする領域のゲノム配列と相同であるが同一ではない配列を含み得、それによって、相同組換えを促進して目的とする領域内の非同一配列を挿入する。したがって、ある実施形態において、目的とする領域内の配列と相同であるドナー配列の一部は、置換されるゲノム配列に約80〜99%(またはそれらの間の任意の整数)の配列同一性を示す。他の実施形態では、例えば、101を超える連続した塩基対のドナー配列とゲノム配列との間で1つのヌクレオチドのみが異なる場合、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は99%よりも高い。ある場合において、新しい配列が目的とする領域に導入されるように、ドナー配列の非相同部分は、目的とする領域に存在しない配列を含み得る。これらの例において、非相同配列は、概して、50〜1,000個の塩基対(もしくはそれらの間の任意の整数値)または目的とする領域内の配列と相同もしくは同一である1,000を超える任意の数の塩基対の配列に隣接している。他の実施形態において、ドナー配列は、第1の配列と非相同であり、非相同組換え機構によってゲノムに挿入される。
【0076】
本明細書に記載の方法のいずれかは、目的とする遺伝子(複数可)の発現を妨害するドナー配列の標的組み込みによる細胞における1つ以上の標的配列の部分的または完全な不活性化のために使用され得る。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株も提供される。
【0077】
さらに、本明細書に記載の標的組み込みの方法を用いて、1つ以上の外因性配列を組み込むこともできる。外因性核酸配列は、例えば、1つ以上の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意の種類のコードもしくは非コード配列、ならびに1つ以上の制御要素(例えば、プロモーター)を含み得る。加えて、外因性核酸配列は、1つ以上のRNA分子(例えば、スモールヘアピンRNA(shRNA)、阻害RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)等)を産生し得る。
【0078】
「切断」とは、DNA分子の共有結合の骨格の切断を指す。切断は、リン酸ジエステル結合の酵素加水分解または化学的加水分解を含むが、これらに限定されない様々な方法によって開始され得る。一本鎖切断も二本鎖切断もいずれも可能であり、二本鎖切断は、2つのはっきりと異なる一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの生成をもたらし得る。ある実施形態において、融合ポリペプチドは、標的化二本鎖DNA切断に用いられる。
【0079】
「切断ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一または異なる)とともに、切断活性(好ましくは、二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。「第1および第2の切断ハーフドメイン」、「+および−切断ハーフドメイン」、ならびに「右および左切断ハーフドメイン」という用語は、二量体化する切断ハーフドメインの対を指すために同義に使用される。
【0080】
「操作された切断ハーフドメイン」は、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の操作された切断ハーフドメイン)を有する偏性ヘテロ二量体を形成するように修飾された切断ハーフドメインである。参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2005/0064474号、同第20070218528号、同第2008/0131962号、および同第2011/0201055号も参照されたい。
【0081】
「配列」という用語は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、DNAまたはRNAであってもよく、線状、環状、または分岐状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよい。「ドナー配列」という用語は、
ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さであってもよく、例えば、2〜10,000ヌクレオチド長(またはそれらの間もしくはそれらを超える任意の整数値)、好ましくは、約100〜1,000ヌクレオチド長(またはそれらの間の任意の整数)、より好ましくは、約200〜500ヌクレオチド長であってもよい。
【0082】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大半は、ヌクレオソームの形態で存在し、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3、およびH4をそれぞれ2つ含む八量体と会合した約150個の塩基対のDNAを含み、(生物に応じて可変長の)リンカーDNAは、ヌクレオソームコアの間に延在する。ヒストンH1の分子は、概して、リンカーDNAと会合している。本開示の目的のために、「クロマチン」という用語は、すべての種類の細胞核タンパク質(原核および真核の両方)を包含するよう意図される。細胞クロマチンは、染色体クロマチンおよびエピソームクロマチンの両方を含む。
【0083】
「染色体」は、細胞のゲノムのすべてまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、多くの場合、その核型を特徴とし、これは、この細胞のゲノムを含むすべての染色体の集合である。細胞のゲノムは、1つ以上の染色体を含み得る。
【0084】
「エピソーム」は、複製核酸、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む他の構造である。エピソームの例として、プラスミドおよびあるウイルスゲノムが挙げられる。
【0085】
「標的部位」または「標的配列」は、結合分子が結合する核酸の一部を定義する核酸配列であるが、但し、結合に十分な条件が存在することを条件とする。
【0086】
「外因性」分子は、通常は細胞に存在しないが、1つ以上の遺伝学的方法、生化学的方法、または他の方法によって細胞内に導入され得る分子である。「通常は細胞に存在する」かは、細胞の特定の発達段階および環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、成人筋肉細胞に対して外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に対して外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全型内因性分子の機能バージョン、または正常機能型内因性分子の機能不全バージョンを含み得る。
【0087】
外因性分子は、とりわけ、小分子(組み合わせ化学プロセスによって生成される小分子等)、または高分子(タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上述の分子の任意の修飾誘導体)、または上述の分子のうちの1つ以上を含む任意の複合体であり得る。核酸は、DNAおよびRNAを含み、一本鎖または二本鎖であってもよく、線状、分岐状、または環状であってもよく、任意の長さであってもよい。核酸には、二重鎖を形成することができる核酸、ならびに三重鎖形成核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチン再構成因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレース、およびヘリカーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
外因性分子は、内因性分子と同一の種類の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってもよい。例えば、外因性核酸は、感染ウイルスゲノム、細胞に導入されるプラスミドもしくはエピソーム、または通常は細胞に存在しない染色体を含み得る。外因性分子を細胞に導入するための方法は、当業者に既知であり、脂質媒介導入(すなわち、中性脂質および陽イオン性脂質を含むリポソーム)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、粒子衝突、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介導入、およびウイルスベクター媒介導入を含むが、これらに限定されない。外因性分子は、内因性分子と同一の種類の分子でもあり得るが、細胞が由来するものとは異なる種に由来し得る。例えば、ヒト核酸配列は、本来はマウスまたはハムスターに由来する細胞株に導入され得る。
【0089】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下で特定の発達段階にある特定の細胞に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、クロロプラスト、もしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含み得る。さらなる内因性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含み得る。
【0090】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が好ましくは共有結合的に連結した分子である。サブユニット分子は、同一の化学型の分子であり得るか、または異なる化学型の分子であり得る。第1の型の融合分子の例として、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインと1つ以上の活性化ドメインとの間の融合物)および融合核酸(例えば、上述の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。第2の型の融合分子の例として、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、および副溝結合剤と核酸との間の融合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
細胞における融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の細胞への送達から、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって生じ得、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて、融合タンパク質を生成する。トランススプライシング、ポリペプチド切断、およびポリペプチド連結も、細胞におけるタンパク質の発現に関与し得る。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを細胞に送達するための方法は、本開示の他の個所で示される。
【0092】
本開示の目的のために、「遺伝子」は、遺伝子産物(以下を参照のこと)をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節するすべてのDNA領域(そのような調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているか否かに関わらず)を含む。したがって、遺伝子は、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列(リボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位等)、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界要素、複製起点、マトリックス付着部位、および遺伝子座制御領域を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0093】
「遺伝子発現」とは、遺伝子内に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、もしくは任意の他の種類のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物は、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスによって修飾されたRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチン化、およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質も含む。
【0094】
遺伝子発現の「調節」は、遺伝子の活性の変化を指す。発現の調節は、遺伝子活性化および遺伝子抑制を含み得るが、これらに限定されない。ゲノム編集(例えば、切断、改変、不活性化、ランダム変異)を用いて発現を調節することができる。遺伝子の不活性化とは、本明細書に記載のZFPまたはTALENを含まない細胞と比較して遺伝子発現における任意の低下を指す。したがって、遺伝子の不活性化は、部分的または完全であり得る。
【0095】
「目的とする領域」は、細胞クロマチンの任意の領域であり、例えば、遺伝子、または遺伝子内もしくは遺伝子に隣接する非コード配列等であり、そこで外因性分子に結合することが望ましい。結合は、標的DNA切断および/または標的組換えの目的のためであり得る。目的とする領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官のゲノム(例えば、ミトコンドリア、クロロプラスト)、または感染ウイルスゲノムに存在し得る。目的とする領域は、遺伝子のコード領域内、転写された非コード領域(例えば、リーダー配列、トレーラー配列、もしくはイントロン等)内、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内に存在し得る。目的とする領域は、単一のヌクレオチド対と同程度に小さいか、または最大2,000ヌクレオチド対長であるか、またはヌクレオチド対の任意の整数値であり得る。
【0096】
「真核」細胞には、真菌細胞(酵母等)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞(例えば、T細胞)が含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
「分泌組織」とは、産物を分泌する組織である。消化管に限局される分泌組織の例として、腸管、膵臓、および胆嚢を裏打ちする細胞が挙げられる。他の分泌組織には、肝臓、目および粘膜に関連する組織、例えば、唾液腺、乳腺、前立腺、下垂体、および他の内分泌系のメンバーが含まれる。さらに、分泌組織は、分泌することができる組織型の個々の細胞を含む。
【0098】
「作動可能な連結」および「作動可能に連結した」(または「作動的に連結した」)という用語は、2つ以上の構成要素(配列要素等)の並列に関して同義に使用され、これらの構成要素は、両方の構成要素が正常に機能し、構成要素のうちの少なくとも1つが他の構成要素のうちの少なくとも1つに与えられる機能を媒介し得る可能性を許容するように配置される。一例として、プロモーター等の転写調節配列は、その転写調節配列が1つ以上の転写調節因子の存在または不在に応答してコード配列の転写レベルを制御する場合にコード配列に作動可能に連結される。転写調節配列は、概して、コード配列とシスに作動可能に連結されるが、それに直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、たとえそれらが隣接していなくても、コード配列に作動可能に連結される転写調節配列である。
【0099】
融合ポリペプチドに関して、「作動可能に連結した」という用語は、構成要素の各々が、そのように連結されていない場合に実行したであろう機能と同一の機能を他の構成要素との連結において実行するという事実を指し得る。例えば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインが活性化ドメインに融合された融合ポリペプチドに関して、融合ポリペプチドにおいて、ZFPまたはTALE DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができる場合、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインおよび活性化ドメインが作動可能に連結している一方で、活性化ドメインは、遺伝子発現を上方制御することができる。ZFPまたはTALE DNA結合ドメインが切断ドメインに融合される融合ポリペプチドである場合、融合ポリペプチドにおいて、ZFPまたはTALE DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができる場合、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインおよび切断ドメインが作動可能に連結している一方で、切断ドメインは、標的部位の近傍でDNAを切断することができる。
【0100】
タンパク質、ポリペプチド、または核酸の「機能的断片」は、その配列が、完全長のタンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一ではないが、完全長のタンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一の機能を保持するタンパク質、ポリペプチド、または核酸である。機能的断片は、対応する天然の分子よりも多いか、少ないか、もしくは同一の数の残基を有することができ、かつ/または1つ以上のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当技術分野において周知である。同様に、タンパク質の機能を決定するための方法も周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、または免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断は、ゲル電気泳動によって評価することができる。上述のAusubel et al.を参照されたい。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、免疫共沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または相補性(遺伝子的相補性もしくは生化学的相補性の両方)によって決定することができる。例えば、Fields et al.(1989)Nature 340:245−246、米国特許第5,585,245号およびPCT国際公開第WO98/44350号を参照されたい。
【0101】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に導入することができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子導入ベクター」は、目的とする遺伝子の発現を指向することができ、かつ遺伝子配列を標的細胞に導入し得る任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニング、および発現ベヒクル、ならびに組み込みベクターを包含する。
【0102】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」とは、日常的なアッセイにおいて必ずしも測定されないが、好ましくは容易に測定されるタンパク質産物を産生する任意の配列を指す。好適なレポーター遺伝子には、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、有色または蛍光または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、および強化された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素)が含まれるが、これらに限定されない。エピトープ標識は、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HA、または任意の検出可能なアミノ酸配列の1つ以上のコピーを含む。「発現標識」は、目的とする遺伝子の発現を監視するために所望の遺伝子配列に作動的に連結され得るレポーターをコードする配列を含む。
ヌクレアーゼ
【0103】
組成物、具体的には、導入遺伝子の挿入のための遺伝子の標的化に有用なヌクレアーゼ、例えば、アルブミンに特異的なヌクレアーゼが本明細書に記載される。ある実施形態において、ヌクレアーゼは、天然に存在する。他の実施形態では、ヌクレアーゼは天然には存在せず、すなわち、DNA結合ドメインおよび/または切断ドメインにおいて操作される。例えば、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位(例えば、同族の結合部位とは異なる部位に結合するように操作されたメガヌクレアーゼ)に結合するように改変され得る。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、異種のDNA結合ドメインおよび切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターヌクレアーゼ、異種の切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含む。
A.DNA結合ドメイン
【0104】
特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。天然に存在するメガヌクレアーゼは、15〜40個の塩基対切断部位を認識し、一般に、4つのファミリー、すなわち、LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−Cystボックスファミリー、およびHNHファミリーに分類される。例示のホーミングエンドヌクレアーゼには、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevII、およびI−TevIIIが含まれる。これらの認識配列は既知である。米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号、Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、D
ujon et al.(1989)Gene 82:115-118、Perler
et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-11
27、Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228、Gi
mble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163-180、
Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345-35
3、およびthe New England Biolabsカタログも参照されたい。
【0105】
ある実施形態において、ヌクレアーゼは、操作された(天然には存在しない)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含む。I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIII等のホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼ認識配列が既知である。米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号、Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.(1989)Gene 82:11
5-118、Perler et al.(1994)Nucleic Acids R
es.22,1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.
12:224-228、Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol
.263:163-180、Argast et al.(1998)J.Mol.Bi
ol.280:345-353、およびthe New England Biolab
sカタログも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように操作され得る。例えば、Chevalier et al.(2002)Molec.Cell 10:895−905、Epinat et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952−2962、Ashworth et al.(2006)Nature
441:656−659、Paques et al.(2007)Current Gene Therapy 7:49−66、米国特許公開第20070117128号を参照されたい。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、全体としてのヌクレアーゼという文脈において改変され得るか(すなわち、ヌクレアーゼが同族の切断ドメインを含むように)、または異種の切断ドメインに融合され得る。
【0106】
他の実施形態では、DNA結合ドメインは、天然に存在するか、または操作された(天然には存在しない)TALE DNA結合ドメインを含む。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2011/0301073号を参照されたい。キサントモナス属の植物病原性細菌は、重要な作物に多くの病害を引き起こすことで知られている。キサントモナスの病原性は、25個を超える異なるエフェクタータンパク質を植物細胞に注入する保存III型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されるタンパク質の中には、植物の転写活性化因子を模倣し、かつ植物のトランスクリプトームを操る転写活性化因子様エフェクター(TALE)がある(Kay et al(2007)Science 318:648−651を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含む。最もよく特徴付けられたTALEのうちの1つに、キサントモナス・カンペストリス病原型ベシカトリア由来のAvrBs3がある(Bonas et al(1989)Mol Gen Genet 218:127−136および国際公開第WO2010079430号を参照のこと)。TALEは、タンデム反復の集中ドメインを含み、それぞれの反復は、これらのタンパク質のDNA結合特異性の鍵となる約34個のアミノ酸を含有する。加えて、これらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含む(概説については、Schornack S,et al(2006)J Plant Physiol 163(3):256−272を参照のこと)。加えて、植物病原性細菌である青枯病菌において、brg11およびhpx17と指定される2つの遺伝子は、青枯病菌の次亜種1系統GMI1000および次亜種4系統RS1000において、キサントモナスのAvrBs3ファミリーと相同であることが見出されている(Heuer et al(2007)Appl and Envir Micro 73(13):4379−4384を参照のこと)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列において互いに98.9%同一であるが、hpx17の反復ドメインにおいて1,575bpの欠失分だけ異なる。しかしながら、両方の遺伝子産物は、キサントモナスのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。
【0107】
したがって、いくつかの実施形態において、標的遺伝子座(例えば、アルブミンまたはセーフハーバー)における標的部位に結合するDNA結合ドメインは、植物病原菌キサントモナス(Boch et al,(2009)Science 326:1509−1512およびMoscou and Bogdanove,(2009)Science326:1501を参照のこと)ならびにラルストニア(Heuer et al(2007)Applied and Environmental Microbiology 73(13):4379−4384、米国特許公開第2011/0301073号および米国特許公開第20110145940号を参照のこと)に由来するものと同様のTALE由来の操作されたドメインである。
【0108】
ある実施形態において、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質(例えば、アルブミンまたは他のセーフハーバー遺伝子内の標的部位に結合するジンクフィンガータンパク質)を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択した標的部位に結合するように操作されるという点で非天然である。例えば、例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135−141、Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656−660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637、Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411−416、米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号、および米国特許公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号を参照されたく、これらすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0109】
操作されたジンクフィンガー結合ドメインまたはTALEドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して新規の結合特異性を有し得る。操作方法には、合理的設計および種々の種類の選択が含まれるが、これらに限定されない。合理的設計には、例えば、三重項(または四重項)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用が含まれ、各三重項または四重項ヌクレオチド配列は、特定の三重項または四重項配列に結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、共同所有の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
【0110】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む例示の選択方法は、米国特許5,789,538号、同第925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568、ならびに国際公開第WO98/37186号、同第WO98/53057号、同第WO00/27878号、同第WO01/88197号、同第および英国特許第2,338,237号に開示されている。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共同所有の国際公開第02/077227号に記載されている。
【0111】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガージンクフィンガータンパク質またはTALEドメイン)は、例えば、5アミノ酸長以上のリンカーを含む任意の好適なリンカー配列を用いてともに連結され得る。例示の6アミノ酸長以上のリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載のDNA結合タンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共同所有の国際公開第WO02/077227号に記載されている。
【0112】
標的部位の選択、DNA結合ドメイン、および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)を設計および構築するための方法は、当業者に知られており、米国特許第6,140,0815号、同第789,538号、同第6,453,242号、同第6,534,261号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,200,759号、国際公開第WO95/19431号、同第WO96/06166号、同第WO98/53057号、同第WO98/54311号、同第WO00/27878号、同第WO01/60970号、同第WO01/88197号、同第WO02/099084号、同第WO98/53058号、同第WO98/53059号、同第WO98/53060号、同第WO02/016536号、および同第WO03/016496、ならびに米国公開第20110301073号に詳述されている。
【0113】
加えて、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガージンクフィンガータンパク質)は、例えば、5アミノ酸長以上のリンカーを含む任意の好適なリンカー配列を用いてともに連結され得る。例示の6アミノ酸長以上のリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。
B.切断ドメイン
【0114】
任意の好適な切断ドメインをDNA結合ドメインに作動可能に連結して、ヌクレアーゼを形成することができる。例えば、ZFP DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに融合させてZFNを作成しており、これは、その操作された(ZFP)DNA結合ドメインを介してその目的とする核酸標的を認識し、かつヌクレアーゼ活性を介してZFP結合部位付近でのDNAの切断を引き起こすことができる機能的実体である。例えば、Kim et al.(1996)Proc Nat’l Acad Sci USA 93(3):1156−1160を参照されたい。最近になって、ZFNは、様々な生物におけるゲノム修飾のために使用されている。例えば、米国特許公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060188987号、同第20060063231号、および国際公開第WO07/014275号を参照されたい。同様に、TALE DNA結合ドメインをヌクレアーゼに融合させてTALENを作成している。例えば、米国公開第20110301073号を参照されたい。
【0115】
上述のように、切断ドメインは、DNA結合ドメイン、例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼの切断ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよび切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼの切断ドメインに対して異種であり得る。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られ得る。切断ドメインが由来し得る例示のエンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが含まれるが、これらに限定されない。例えば、2002−2003 Catalogue,New England Biolabs, Beverly,MA、およびBelfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388を参照されたい。DNAを切断するさらなる酵素が知られている(例えば、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、膵臓DNase I、ミクロコッカスヌクレアーゼ、酵母HOエンドヌクレアーゼがあり、Linn et al.(eds.)Nucleases,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照のこと)。これらの酵素(またはその機能的断片)のうちの1つ以上を切断ドメインおよび切断ハーフドメインの源として用いることができる。
【0116】
同様に、上述のように、切断活性のために二量体化を必要とする切断ハーフドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。概して、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が切断に必要とされる。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質が用いられ得る。2つの切断ハーフドメインは同一のエンドヌクレアーゼ(もしくはその機能的断片)に由来し得るか、または各切断ハーフドメインが異なるエンドヌクレアーゼ(もしくはその機能的断片)に由来し得る。加えて、2つの融合タンパク質のそれらの各標的部位への結合が、互いに空間的定位でこれらの切断ハーフドメインを配置して、例えば二量体化によって切断ハーフドメインが機能的切断ドメインを形成することを可能にするように、2つの融合タンパク質の標的部位は、好ましくは、互いに対して配置される。したがって、ある実施形態において、標的部位の近端は、5〜8個のヌクレオチドまたは15〜18個のヌクレオチド分だけ離れている。しかしながら、任意の整数(なぜ我々は常に「整数」および「整数値」という限定詞を用いるのか?これらは本当に必要なのか?これらは限定するもののように見え、これらを用いることで、我々に次善策を受け入れさせるようである)のヌクレオチドまたはヌクレオチド対は、2つの標的部位の間に介在してもよい(例えば、2〜50個以上のヌクレオチド対)。概して、切断部位は、標的部位の間に位置する。
【0117】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、DNAに配列特異的に結合し(認識部位で)、かつ結合部位でまたはその付近でDNAを切断することができる。ある制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から除去された部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素Fok Iは、一方の鎖上でその認識部位から9ヌクレオチド離れた位置で、他方の鎖上でその認識部位から13ヌクレオチド離れた位置でDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許5,356,802号、同第5,436,150号、および同第5,487,994、ならびにLi et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4275−4279、Li et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2764−2768、Kim et al.(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883−887、Kim
et al.(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978−31,982を参照されたい。したがって、一実施形態において、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)および1つ以上のジンクフィンガー結合ドメイン(操作され得るか否かに関わらず)を含む。
【0118】
その切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示のIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaite et
al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10,570−10,575。したがって、本開示の目的のために、開示される融合タンパク質において使用されるFok I酵素の一部は、切断ハーフドメインと見なされる。したがって、ジンクフィンガー−Fok I融合物を用いた細胞配列の標的二本鎖切断および/または標的置換のために、それぞれFok I切断ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質を用いて、触媒的に活性な切断ドメインを再構築することができる。あるいは、DNA結合ドメインおよび2つのFok I切断ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子を用いることもできる。
【0119】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持するか、または多量体化(例えば、二量体化)して機能的切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の部分であり得る。
【0120】
例示のIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO07/014275号に記載されている。さらなる制限酵素も分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを含み、これらは、本開示によって企図される。例えば、Roberts et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:418−420を参照されたい。
【0121】
ある実施形態において、切断ドメインは、例えば、すべての開示が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20050064474号、同第20060188987号、同第20080131962号、および同第20110201055号に記載されるように、ホモ二量体化を最小限に抑えるか、または阻止する1つ以上の操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン変異体とも称される)を含む。Fok
Iの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538位のアミノ酸残基は、すべてFok I切断ハーフドメインの二量体化に影響を与える標的である。
【0122】
偏性ヘテロ二量体を形成するFok Iの例示の操作された切断ハーフドメインには、第1の切断ハーフドメインがFok Iの490位および538位のアミノ酸残基に変異を含み、かつ第2の切断ハーフドメインが486位および499位のアミノ酸残基に変異を含む対が含まれる。
【0123】
したがって、一実施形態において、490位における変異は、Glu(E)をLys(K)に置換し、538位における変異は、Iso(I)をLys(K)に置換し、486位における変異は、Gln(Q)をGlu(E)に置換し、499位における変異は、Iso(I)をLys(K)に置換する。具体的には、本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインを1つの切断ハーフドメインにおいて490位での変異(E→K)および538位での変異(I→K)によって調製して「E490K:I538K」と指定される操作された切断ハーフドメインを生成し、別の切断ハーフドメインにおいて486位での変異(Q→E)および499での変異(I→L)によって調製して「Q486E:I499L」と指定される操作された切断ハーフドメインを生成した。本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小限に抑えられるか、または無効にされる偏性ヘテロ二量体変異体である。例えば、米国特許公開第2008/0131962号を参照されたく、この開示は、参照によりその全体がすべての目的のために組み込まれる。
【0124】
ある実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、486、499、および496位(野生型FokIに対して番号付けられた)での変異、例えば、野生型Gln(Q)残基を486位でGlu(E)残基に、野生型Iso(I)残基を499位でLeu(L)残基に、かつ野生型Asn(N)残基を496位でAsp(D)またはGlu(E)残基(それぞれ、「ELD」および「ELE」ドメインとも称される)に置換する変異を含む。他の実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、490、538、および537位(野生型FokIに対して番号付けられた)での変異、例えば、野生型Glu(E)残基を490位でLys(K)残基に、野生型Iso(I)残基を538位でLys(K)残基に、かつ野生型His(H)残基を537位でLys(K)残基またはArg(R)残基(それぞれ、「KKK」および「KKR」ドメインとも称される)に置換する変異を含む。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、490および537位(野生型FokIに対する番号付け)での変異、例えば、野生型Glu(E)残基を490位でLys(K)残基に、かつ野生型His(H)残基を537位でLys(K)残基またはArg(R)残基(それぞれ、「KIK」および「KIR」ドメインとも称される)に置換する変異を含む(米国特許公開第20110201055号を参照のこと)。本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインは任意の好適な方法を用いて、例えば、米国特許公開第20050064474号、同第20080131962号、および同第20110201055号に記載の野生型切断ハーフドメイン(Fok I)の部位特異的変異誘発によって調製され得る。
【0125】
あるいは、ヌクレアーゼは、いわゆる「スプリット酵素」技術を用いて、核酸標的部位においてインビボで組み立てられ得る(例えば、米国特許公開20090068164号を参照のこと)。そのようなスプリット酵素の構成要素は、別個の発現構築物のいずれかで発現され得るか、または個々の構成要素が例えば自己切断2AペプチドもしくはIRES配列によって分離される1つのオープンリーディングフレームにおいて連結され得る。構成要素は、個々のジンクフィンガー結合ドメインであり得るか、またはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0126】
ヌクレアーゼは、例えば、国際公開第WO2009/042163号および同第20090068164号に記載の酵母菌ベースの染色体系において、使用前に活性化についてスクリーニングすることができる。ヌクレアーゼ発現構築物は、当技術分野で既知の方法を用いて容易に設計することができる。例えば、米国特許公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060188987号、同第20060063231号、および国際公開第WO07/014275号を参照されたい。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(脱抑制)され、かつグルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にあり得る。
標的部位
【0127】
上で詳述されるように、DNAドメインは、遺伝子座、例えば、アルブミンまたはセーフハーバー遺伝子における任意の選択した配列に結合するように操作され得る。操作されたDNA結合ドメインは、天然に存在するDNA結合ドメインと比較して新規の結合特異性を有し得る。操作方法には、合理的設計および種々の種類の選択が含まれるが、これらに限定されない。合理的設計は、例えば、三重項(または四重項)ヌクレオチド配列および個々の(例えば、ジンクフィンガー)アミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、各三重項または四重項ヌクレオチド配列は、特定の三重項または四重項配列に結合するDNA結合ドメインの1つ以上のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、共同所有の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。TALエフェクタードメインの合理的設計も実行され得る。例えば、米国特許公開第20110301073号を参照されたい。
【0128】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含むDNA結合ドメインに適用可能な例示の選択方法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568、ならびに国際公開第WO98/37186号、同第WO98/53057号、同第WO00/27878号、同第WO01/88197号、そして英国特許第GB2,338,237号に開示されている。
【0129】
標的部位の選択、ヌクレアーゼ、および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)を設計および構築するための方法は、当業者に知られており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号に詳述されている。
【0130】
加えて、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガージンクフィンガータンパク質)は、例えば、5アミノ酸以上のリンカーを含む任意の好適なリンカー配列を用いてともに連結され得る。例示の6アミノ酸長以上のリンカー配列については、例えば、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のDNA結合ドメイン間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。米国公開第20110301073号も参照されたい。
ドナー
【0131】
上述のように、例えば、変異体遺伝子の修正または野生型遺伝子の発現の増大ための外因性配列(「ドナー配列」または「ドナー」とも称される)の挿入。ドナー配列は、典型的には、それが配置されるゲノム配列と同一ではないことは容易に明らかになる。ドナー配列は、目的とする位置で効率的なHDRを可能にするために、2つの相同性領域に隣接した非相同配列を含み得る。さらに、ドナー配列は、細胞染色体内の目的とする領域と相同ではない配列を含むベクター分子を含み得る。ドナー分子は、細胞染色体に対していくつかの不連続な相同性の領域を含み得る。例えば、通常は目的とする領域に存在しない配列の標的挿入の場合、この配列は、ドナー核酸分子に存在し得、目的とする領域内の配列に対して相同性の領域に隣接し得る。
【0132】
ドナーポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAであってもよく、線状または環状形態で細胞に導入され得る。例えば、米国特許公開第20100047805号および同第2011020721号を参照されたい。線状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に既知の方法によって(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)保護され得る。例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基は、線状分子の3’末端に付加され、かつ/または自己相補的オリゴヌクレオチドは、一方の末端もしくは両方の末端に連結される。例えば、Chang et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959−4963、Nehls et al.(1996)Science 272:886−889を参照されたい。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法は、末端アミノ基(複数可)の付加、および修飾ヌクレオチド間結合、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、およびO−メチルリボースまたはデオキシリボース残基の使用を含むが、これらに限定されない。
【0133】
ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーター、および抗生物質耐性をコードする遺伝子等のさらなる配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入され得る。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、裸の核酸として、リポソームもしくはポロキサマー等の薬剤と複合された核酸として導入され得るか、またはウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、およびインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達され得る。
【0134】
ドナーは、概して、その発現が組み込み部位で内因性プロモーターによって、すなわち、アルブミン遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように挿入され得る。しかしながら、ドナーが、プロモーターおよび/あるいはエンハンサー、例えば、構成的プロモーターまたは誘導的もしくは組織特異的プロモーターを含んでもよいことは明らかである。
【0135】
ドナー分子は、内因性遺伝子のすべてもしくは一部が発現されるか、または内因性遺伝子のいずれも発現されないように内因性遺伝子に挿入され得る。例えば、本明細書に記載の導入遺伝子は、例えば、その導入遺伝子との融合物として、内因性アルブミン配列の一部が発現されるか、または内因性アルブミン配列のいずれも発現されないように、アルブミン遺伝子座に挿入され得る。他の実施形態では、導入遺伝子(例えば、アルブミンコード配列を有するか、または有しない)は、任意の内因性遺伝子座、例えば、セーフハーバー遺伝子座に組み込まれる。例えば、米国特許公開第20080299580号、同第20080159996号、および同第201000218264号を参照されたい。
【0136】
アルブミン配列(内因性であるか、または導入遺伝子の一部である)が導入遺伝子とともに発現されるときに、アルブミン配列は、全長配列(野生型もしくは変異体)または部分的配列であり得る。好ましくは、アルブミン配列は機能的である。これらの全長または部分的アルブミン配列の機能の非限定的な例には、導入遺伝子(例えば、治療用遺伝子)によって発現されるポリペプチドの血清半減期を延長させること、および/または担体の役割を果たすことが挙げられる。
【0137】
さらに、発現に必要とされないが、外因性配列は、転写または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インシュレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列を含んでもよい。
送達
【0138】
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびに本明細書に記載のタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、任意の好適な手段によってインビボまたはエクスビボで送達され得る。
【0139】
本明細書に記載のヌクレアーゼを送達する方法は、例えば、米国特許第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および第7,163,824号に記載されており、これらのすべての開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0140】
本明細書に記載のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物も、ジンクフィンガーまたはTALENタンパク質(複数可)のうちの1つ以上をコードする配列を含むベクターを用いて送達され得る。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ関連ウイルスベクター等を含むが、これらに限定されない任意のベクターを用いてもよい。米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号も参照されたく、参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる。さらに、これらのベクターのいずれも治療に必要とされる配列のうちの1つ以上を含み得ることは明らかである。したがって、1つ以上のヌクレアーゼおよびドナー構築物が細胞に導入される場合、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、同一のベクター上または異なるベクター上に担持され得る。複数のベクターが使用される場合、各ベクターは、いは複数のヌクレアーゼおよび/もしくはドナー構築物をコードする配列を含み得る。
【0141】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入方法を用いて、ヌクレアーゼおよびドナー構築物をコードする核酸を細胞(例えば、哺乳類細胞)および標的組織に導入することができる。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームまたはポロキサマー等の送達ビヒクルと複合された核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスを含む。遺伝子治療手順の概説について、Anderson,Science 256:808−813(1992)、Nabel & Felgner,TIBTECH 11:211−217(1993)、Mitani & Caskey,TIBTECH 11:162−166(1993)、Dillon,TIBTECH 11:167−175(1993)、Miller,Nature 357:455−460(1992)、Van Brunt,Biotechnology 6(10):1149−1154(1988)、Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35−36(1995)、Kremer & Perricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31−44(1995)、Haddada et al.,in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm(eds.)(1995)、お
よびYu et al.,Gene Therapy 1:13−26(1994)を参照されたい。
【0142】
核酸の非ウイルス送達の方法は、電気穿孔、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、デンドリマー、ポリカチオン、または脂質、核酸複合体、裸のDNA、人工ビリオン、および薬剤によって強化されたDNAの取り込みを含む。例えば、Sonitron2000システム(Rich−Mar)を用いたソノポレーションも、核酸の送達のために使用され得る。
【0143】
さらなる例示の核酸送達系は、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc(Rockville,Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)、およびCopernicus Therapeutics Incによって提供されるものを含む(例えば、米国第6008336号を参照のこと)。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、および同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性脂質および中性脂質は、Felgner、国際公開第WO91/17424号、同第WO91/16024号に記載のものを含む。
【0144】
脂質の調製:免疫脂質複合体等の標的化リポソームを含む核酸複合体は、当業者に周知である(例えば、Crystal,Science 270:404−410(1995)、Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291−297(1995)、Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382−389(1994)、Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647−654(1994)、Gao et al.,Gene Therapy 2:710−722(1995)、Ahmad et al.,Cancer
Res.52:4817−4820(1992)、米国特許第4,186,183号、
同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第
4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照のこと)。
【0145】
さらなる送達方法は、送達される核酸のEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)へのパッケージングの使用を含む。これらのEDVは、二重特異性抗体を用いて標的組織に特異的に送達され、この抗体の一方のアームは、標的組織に対する特異性を有し、他方のアームは、EDVに対する特異性を有する。この抗体は、EDVを標的細胞表面に運び、その後、EDVは、エンドサイトーシスによって細胞内に運び込まれる。一旦細胞内に運び込まれると、その内容物は放出される(MacDiarmid et al(2009)Nature Biotechnology 27(7):643を参照のこと)。
【0146】
操作されたZFPをコードする核酸を送達するためのRNAまたはDNAウイルスベースの系の使用は、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化し、ウイルス負荷量を核に輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与され得るか(インビボ)、またはインビトロで細胞を治療するために使用され得、修飾細胞が患者に投与される(エクスビボ)。ZFPを送達するための従来のウイルスベースの系は、遺伝子導入用のレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、および単純ヘルペスウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。宿主ゲノムへの組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ関連ウイルスによる遺伝子送達方法を用いて可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、高い導入効率が多くの異なる細胞型および標的組織において観察されている。
【0147】
レトロウイルスの向性を、外来性エンベロープタンパク質を組み込むことによって変化させることができ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡張する。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入するか、または感染させることができ、かつ典型的には高いウイルス力価を生成するレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6〜10kbの外来配列のパッケージング能力を有する、シス作用性の長い末端反復からなる。最小のシス作用LTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、これはその後、治療用遺伝子を標的細胞に組み込んで恒久的な導入遺伝子の発現を提供するために用いられる。一般に用いられているレトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびこれらの組み合わせに基づくベクターを含む(例えば、Buchscher et al.,J.Virol.66:2731−2739(1992)、Johann et al.,J.Virol.66:1635−1640(1992)、Sommerfelt et al.,Virol.176:58−59(1990)、Wilson et al.,J.Virol.63:2374−2378(1989)、Miller et al.,J.Virol.65:2220−2224(1991)、PCT/US94/05700を参照のこと)。
【0148】
一過性の発現が好ましい用途において、アデノウイルスベースの系を用いることができる。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型において極めて高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて、高力価かつ高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純なシステムにおいて大量に生成することができる。アデノ関連ウイルス(「AAV」)ベクターも、細胞を標的核酸で形質導入するために、例えば、核酸およびペプチドのインビトロ生成において、かつインビボおよびエクスビボ遺伝子治療手順のために用いられる(例えば、West et al.,Virology 160:38−47(1987)、米国特許第4,797,368号、国際公開第WO93/24641号、Kotin,Human Gene Therapy 5:793−801(1994)、Muzyczka,J.Clin.Invest. 94:1351(1994)を参照のこと)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251−3260(1985)、Tratschin,et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072−2081(1984)、Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466−6470(1984)、およびSamulski et al.,J.Virol.63:03822−3828(1989)を含むいくつかの出版物に記載されている。
【0149】
少なくとも6つのウイルスベクターのアプローチが、臨床試験における遺伝子導入に現在利用可能であり、それらは、形質導入剤を生成するためにヘルパー細胞株に挿入される遺伝子による欠損ベクターの相補性に関与するアプローチを利用する。
【0150】
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験に使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al.,Blood 85:3048−305(1995)、Kohn et al.,Nat. Med.1:1017−102(1995)、Malech et al.,PNAS 94:22 12133−12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で使用された最初の治療用ベクターである(Blaese et al.,Science 270:475−480(1995))。50%以上の形質導入効率が、MFG−Sパッケージングベクターにおいて観察されている(Ellem et al.,Immunol Immunother.44(1):10−20(1997)、Dranoff et al.,Hum.Gene Ther.1:111−2(1997)。
【0151】
組換えアデノ関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠損性および非病原性パルボウイルスアデノ関連2型ウイルスに基づく有望な代替の遺伝子送達系である。すべてのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAVの145bpの逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノムへの組み込みに起因した効率的な遺伝子導入および安定した導入遺伝子送達は、このベクター系の重要な特徴である(Wagner et al.,Lancet 351:9117 1702−3(1998)、Kearns et al.,Gene Ther.9:748−55(1996))。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、および偽型AAV(AAV2/8、AAV2/5、およびAAV2/6等)を含む他のAAV血清型も本発明に従って使用することができる。
【0152】
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で生成することができ、いくつかの異なる細胞型を容易に感染させる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換するように操作され、その後、複製欠損ベクターは、欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増幅される。Adベクターは、例えば、肝臓、腎臓、および筋肉に見られるもの等の非分裂の分化細胞を含む複数の種類の組織をインビボで形質導入することができる。従来のAdベクターは、高い輸送能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注入での抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド治療を含む(Sterman
et al.,Hum.Gene Ther.7:1083−9(1998))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例として、Rosenecker et al.,Infection 24:1 5−10(1996)、Sterman et al.,Hum.Gene Ther.9:7 1083−1089(1998)、Welsh et al.,Hum.Gene Ther.2:205−18(1995)、Alvarez et al.,Hum.Gene Ther.5:597−613(1997)、Topf et al.,Gene Ther.5:507−513(1998)、Sterman et al.,Hum.Gene
Ther.7:1083−1089(1998)が挙げられる。
【0153】
宿主細胞を感染させることができるウイルス粒子を形成するために、パッケージング細胞が使用される。そのような細胞は、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞を含む。遺伝子治療に用いられるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする生産細胞株によって生成される。ベクターは、典型的には、パッケージングおよびその後の宿主への組み込みに必要な最小限のウイルス配列(必要に応じて)を含有し、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質をコードする発現カセットによって置換される。失われたウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療に用いられるAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノムへのパッケージングおよび組み込みに必要なAAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわち、repおよびcapをコードするが、ITR配列を欠くヘルパープラスミドを含む細胞株内にパッケージングされる。細胞株は、ヘルパーとしてアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。このヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如のため、相当な量でパッケージングされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性の高い熱処理によって減少させることができる。
【0154】
多くの遺伝子治療の用途において、特定の組織型に対して高度の特異性を有する遺伝子治療ベクターが送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上のウイルスのコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現させることにより、所与の細胞型に対して特異性を有するように修飾され得る。リガンドは、目的とする細胞型上に存在することで知られている受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Han et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747−9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスを、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現するように修飾することができ、その組換えウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現するあるヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、かつ、ウイルスが細胞表面受容体のリガンドを含む融合タンパク質を発現する他のウイルス標的細胞対にまで拡張することができる。例えば、繊維状ファージは、実質的に任意の選択された細胞受容体に対する特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示するように操作され得る。上記の説明は、主としてウイルスベクターに適用されるが、同一の原理が非ウイルスベクターにも適用され得る。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取り込みを好む特定の取り込み配列を含むように操作され得る。
【0155】
遺伝子治療ベクターは、以下に記載されるように、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、もしくは頭蓋内注入)または局所適用による個々の患者への投与によってインビボで送達することができる。あるいは、ベクターは、細胞、例えば、個々の患者から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または普遍的なドナーの造血幹細胞/前駆細胞等にエクスビボで送達することもでき、その後、通常はベクターを組み込んだ細胞の選択後に、細胞が患者に再移植される。
【0156】
ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)は、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。あるいは、裸のDNAは投与され得る。投与は、注射、注入、局所適用、および電気穿孔を含むが、これらに限定されない、通常、血液または組織細胞との最終的な接触に分子を導入するために用いられる経路のうちのいずれかによる。そのような核酸を投与する好適な方法は、利用可能であって、かつ当業者に周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路が用いられてもよいが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりも即時的かつより効果的な反応を提供することができる。
【0157】
本明細書に記載のポリヌクレオチドの導入に好適なベクターは、非組み込み型レンチウイルスベクター(IDLV)を含む。例えば、Ory et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11382−11388、Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463−8471、Zuffery
et al.(1998)J.Virol.72:9873−9880、Follenzi et al.(2000)Nature Genetics 25:217−222、米国特許公開第2009/054985号を参照されたい。
【0158】
薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物によって、かつ組成物を投与するために使用される特定の方法によっても部分的に決定される。したがって、以下に記載されるように、様々な薬学的組成物の好適な製剤が利用可能である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,1989を参照のこと)。
【0159】
ヌクレアーゼコード配列およびドナー構築物が同一または異なる系を用いて送達され得ることは明らかである。例えば、ドナーポリヌクレオチドは、プラスミドによって運ばれてもよく、1つ以上のヌクレアーゼは、AAVベクターによって運ばれてもよい。さらに、同一または異なる経路(筋肉内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋肉内注射)によって異なるベクターが投与されてもよい。ベクターは、同時にまたは任意の連続的順序で送達されてもよい。
【0160】
エクスビボ投与用の製剤およびインビボ投与用の製剤は両方ともに、液体中の懸濁液または乳化液を含む。有効成分は、多くの場合、薬学的に許容され、かつ有効成分と相溶性のある賦形剤と混合される。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール等、およびそれらの組み合わせを含む。加えて、組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、または医薬組成物の有効性を増強する他の試薬等の少量の補助物質を含有してもよい。
適用
【0161】
本発明の方法および組成物は、タンパク質(複数可)が標的細胞から分泌されるように1つ以上のタンパク質をコードする導入遺伝子を供給することが所望されるといったいかなる場合でも使用することができる。したがって、この技術は、ある問題(例えば、発現レベルの問題または副次機能もしくは非機能として発現されるタンパク質に関連する問題)が原因で患者がいくつかのタンパク質を欠損している条件下での使用である。本発明の特に有用な点は、凝固障害における機能性を修正するか、または回復させる導入遺伝子の発現である。さらに、COPDもしくは肝臓損傷等のA1AT欠損障害、または分泌器官による外因性タンパク質の供給によって軽減され得る他の障害、条件、もしくは疾患は、本発明の方法および組成物によってうまく治療され得る。リソソーム蓄積症は、糖尿病等の代謝性疾患のように本発明の方法および組成物によって治療され得る。
【0162】
治療的に有用であり、かつ典型的には、注入(injection)または注入(infusion)によって送達されるタンパク質は、本発明の方法および組成物とともに有用である。非限定的な例として、C−ペプチド(例えば、CebixのErsatta(商標))または糖尿病治療用のインスリンの産生がある。さらなる適用は、コラーゲンVIIの産生による表皮水疱症の治療を含む。本明細書に記載の分泌組織におけるIGF−1の発現を用いて、リポタンパク質リパーゼの発現によって肝硬変およびリポタンパク質リパーゼ欠損症を有する患者におけるこのタンパク質のレベルを増加させることができる。治療利益のために、例えば、癌、自己免疫、および他の疾患の治療のために、抗体を分泌することもできる。凝固に関連した他のタンパク質は、分泌組織において産生され得、フィブリノゲン、プロトロンビン、組織因子、第V因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン副因子II、タンパク質C、タンパク質S、タンパク質Z、タンパク質Z関連プロテアーゼ阻害剤、プラスミノーゲン、α2−抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1、およびプラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2を含む。
【0163】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALENを含む本開示の例示の実施形態に関する。これは例示目的のために過ぎず、例えば、操作されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)および/または天然に存在する操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)のDNA結合ドメインと異種の切断ドメインとの融合物等の他のヌクレアーゼを用いることができることが理解される。
【実施例】
【0164】
実施例1:マウスアルブミン遺伝子を標的としたジンクフィンガータンパク質ヌクレアーゼ(ZFN)の設計、構築、および特徴付け
ジンクフィンガータンパク質を、マウスアルブミン遺伝子のイントロン1、12、および13内の切断部位を標的化するように設計した。対応する発現構築物を、本質的にUrnov et al.(2005)Nature 435(7042):646−651、Perez et al(2008)Nature Biotechnology 26(7):808−816に記載され、かつ米国特許第6,534,261号に記載されるように組み立て、プラスミドベクター、AAVベクター、またはアデノウイルスベクターに組み込んだ。表1は、例示のマウスアルブミン特異的ZFPのDNA結合ドメイン内の認識ヘリックスを示し、表2は、これらのZFPの標的部位を示す。ZFP認識ヘリックスに接触する標的部位におけるヌクレオチドは大文字で示され、接触していないヌクレオチドは、小文字で示される。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
実施例2:マウスアルブミン特異的ZFNの活性
【0165】
表1のZFNを、マウス細胞におけるそれらの内因性標的配列を切断する能力について試験した。これを達成するために、表1のZFNを発現する構築物を
図1に示される対合のNeuro2A細胞にトランスフェクトした。その後、細胞を37℃で3日間維持するか、または低温ショック(30℃、共同所有の米国特許公開第20110041195号を参照のこと)に供した。その後、DNeasyキット(Qiagen)を用いてゲノムDNAをNeuro2A細胞から単離し、Perez et al,(2008)Nat.Biotechnol.26:808−816およびGuschin et al,(2010)Methods Mol Biol.649:247−56)に記載されるようにCel−Iアッセイ(Surveyor(商標)、Transgenomics)に供して、ZFN切断によって誘導された染色体修飾を定量化した。このアッセイにおいて、PCRを用いてZFN標的部位を有するDNA断片を増幅し、その後、結果として得られる増幅産物をミスマッチ特異的ヌクレアーゼCel−I(Yang et al,(2000) Biochemistry 39,3533−3541)で消化し、続いて、無傷の切断された増幅産物をアガロースゲル上で分解する。増幅産物切断の程度を定量化することにより、増幅産物、ひいては最初の細胞プールにおける変異対立遺伝子の画分を計算することができる。これらの実験において、すべてのZFN対は、ELD/KKR FokI変異体対(上述されたもの)であった。
【0166】
Cel−Iアッセイの結果が
図1に示され、ZFNがそれらのそれぞれの標的部位で切断および結果として生じる変異体を誘導することができることを示す。各ラインの下に示される「パーセント挿入欠失」値は、切断に成功し、その後にNHEJを介した二本鎖切断の細胞修復中に変異されたZFN標的の画分を示す。このデータは、形質導入手順が低温ショックを取り入れたときの活性の増加も示す。
実施例3:イヌアルブミン特異的ZFN
【0167】
イヌアルブミン遺伝子座を標的とするZFNの対をインビボモデルで用いるために構築した。この対を実施例1に記載されるように構築し、以下の表3に示される。各ZFNの標的が表4に提供される。
【表3】
【表4】
【0168】
イヌ特異的ZFNを、イヌ細胞株D17を用いたことを除いて本質的に実施例2に示されるように活性についてインビトロで試験した。
図2に示されるように、ZFNは、この研究において、約30%の挿入欠失をもたらすことを示した。
実施例4:非ヒト霊長類アルブミン特異的ZFN
【0169】
アカゲザル(マカカムラッタ)におけるアルブミン遺伝子座を標的とするZFNを作製した。これらの対を上述のように構築し、以下の表5に示される。ZFNの標的が表6に示される。以下に示されるように、SBS番号35396の結合部位のヒト配列(配列番号92)およびアカゲザル配列(配列番号93)(以下の表7および8を参照のこと)は完全に保存される。ヒト配列とアカゲザル配列の違いがボックスで囲まれている。
【化1】
【0170】
したがって、アカゲザルアルブミン特異的対を開発するために、35396を、ヒト35364パートナーをアカゲザルにおいて置換するように設計された一連のパターンと対合した。これらのタンパク質は、それらの標的配列(表6)とともに以下(表5)に示される。
【表5】
【表6】
【0171】
アカゲザルアルブミン特異的ZFNを二つ一組で試験して、最大の活性を有する対を決定した。各対において、SBS番号35396を、上述の方法を用いて、アカゲザル細胞株RF/6Aにおける表5および6に示される可能性のあるパートナーと試験した。
【0172】
Cel−Iアッセイを用いて検出されたミスマッチのパーセントによって決定された結果として生じた活性がマトリックスの本体に示され(表7)、ZFN対がアカゲザルアルブミン遺伝子座に対する活性を有することを示す。
【表7】
【0173】
2つの対をより大々的に試験し、SELEX分析を用い、かつインビトロでの活性について各対を滴定することによって配列特異性を比較した。結果は、35396/36806対が最も望ましいリード対であったことを示す(
図12を参照のこと)。
【0174】
ヒトアルブミン遺伝子座の配列と他の非ヒト霊長類の配列との比較は、同様の対がカニクイザル等の他の霊長類における作業のために開発され得ることを示す(
図3Aおよび3Bを参照のこと)。
実施例5:マウスにおけるZFNによるインビボ切断
【0175】
アルブミン特異的ZFNをアルブミン産生の正常部位である肝臓にインビボで送達するために、アルブミン特異的ZFNを肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターから発現する肝向性アデノ関連ウイルスベクター血清型8を生成した(Shen et al,ibidおよびMiao et al,ibid)。成人C57BL/6マウスを、以下のようにアルブミン遺伝子におけるゲノム編集に供した:成人マウスに1×10
11v.g..(ウイルスゲノム)/マウスのZFN対1(SBS30724およびSBS30725)またはZFN対2(SBS30872およびSBS30873)のいずれかをi.v.(静脈内)注入して処理し、7日後に屠殺した。対1の標的部位を包囲するアルブミン遺伝子の領域を、Cel−Iミスマッチアッセイのために以下の2つのPCRプライマーを用いてPCRによって増幅した:
Cel1 F1:5’CCTGCTCGACCATGCTATACT 3’(配列番号69)
Cel1R1:5’CAGGCCTTTGAAATGTTGTTC 3’(配列番号70)
【0176】
対2の標的部位を包囲するアルブミン遺伝子の領域を、Cel−IアッセイのためにこれらのPCRプライマーを用いてPCRによって増幅した:
mAlb set4F4:5’AAGTGCAAAGCCTTTCAGGA 3’(配列番号71)
mAlb set4R4:5’GTGTCCTTGTCAGCAGCCTT 3’(配列番号72)
【0177】
図4に示されるように、ZFNは、この研究において、それらの標的部位の最大17%において挿入欠失をインビボで誘導する。
【0178】
イントロン1の配列を標的とするマウスアルブミン特異的ZFNSBS30724およびSBS30725も第2の研究において試験した。ZFNを発現する遺伝子を以前に説明されたようにAAV2/8ベクターに導入した(Li et al(2011)Nature 475(7355):217)。バキュロウイルス系におけるAAV産生を促進するために、キメラ血清型8.2キャプシド遺伝子を含有するバキュロウイルスを用いた。血清型8.2キャプシドは、AAV8のキャプシドタンパク質VP1におけるホスホリパーゼA2ドメインがキメラキャプシドを作成するAAV2キャプシドの同等のドメインに置換されたという点で血清型8キャプシドとは異なる。当技術分野において標準の方法を用いてHEK293系またはバキュロウイルス系のいずれかを用いて調製することによって、ウイルス粒子を含有するZFNの産生を行った(Li et al,同書、例えば、米国第6723551号を参照のこと)。その後、ウイルス粒子を、200マイクロリットルのマウスアルブミン特異的ZFNをコードするAAV2/8またはAAV2/8.2のいずれかの1.0e11全ベクターゲノムを単一用量で正常雄マウス(n=6)に投与した。rAAVベクターの投与の14日後、マウスを屠殺し、肝臓を摘出し、当技術分野において標準の方法を用いてDNAまたは総タンパク質のために処理した。AAVベクターゲノムコピーを定量PCRで検出した。簡潔に、qPCRプライマーを以下のようにAAV内のbGHpA配列特異的にした。
【化2】
【0179】
ZFNの切断活性を、製造業者のプロトコルに従ってLC−GX装置(Perkin Elmer)を用いて実行したCel−Iアッセイを用いて測定した。ZFNのインビボにおける発現を、標準の方法に従ってFLAG−Tagシステムを用いて測定した。
【0180】
図5に示されるように(この研究における各マウスについて)、ZFNが発現され、マウス肝臓遺伝子中の標的を切断した。各マウス試料においてもたらされた%挿入欠失が、各ラインの下に提供される。ベクターの種類およびそれらの容量がラインの上に示される。ZFN切断後のミスマッチ修復(%挿入欠失に示される)は、これらのマウスのうちの何匹かにおいて約16%で検出された。
【0181】
マウス特異的アルブミンZFNを、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/8、およびAAV2/8.2を含む様々なAAV血清型を用いて送達されるときのインビボ活性についても試験した。これらのAAVベクターにおいて、すべてのZFNコード配列は、AAV2 ITRに隣接しており、AAV5、6、または8を含み、その後、それぞれ、AAV5、6、または8由来のキャプシドタンパク質を用いてカプセル化される。8.2指定は、上述と同一である。SBS30724およびSBS30725 ZFNを以前に説明されたように(Li et al、同書)AAVにクローニングし、ウイルス粒子を、上述のようにバキュロウイルスまたはHEK293一過性トランスフェクション精製のいずれかを用いて産生した。正常マウスに、1用量当たり5e10〜1e12vgの用量で、1匹のマウスにつき200μLの量で尾注入によって投与した。ウイルスゲノムを二倍体マウスゲノムごとに14日目に分析し、30日目および60日目に分析する。加えて、アルブミン遺伝子座のZFN指向切断を先に説明されたCel−Iアッセイを用いて14日目に分析し、30日目および60日目に分析する。
【0182】
図6に示されるように、切断は、最大21%の挿入欠失レベルで観察された。比較として先の研究からの試料も図に含まれる(一番右に「ミニ−マウス」研究−D14および背景帯(「非特異的帯」)。
実施例6:ドナー核酸およびアルブミンZFNのインビボにおける共送達
【0183】
ヒト第IX因子の挿入:ZFNを用いて、成人野生型マウスにおけるアルブミン遺伝子座への凝固タンパク質第IX因子(F.IX)の遺伝子の組み込みを標的化した。これらの実験において、マウスを、1×10
11v.g./マウスのイントロン1+ドナー(「mAlb(イントロン1)」)を標的とするアルブミン特異的ZFN対1、1×10
11v.g./マウスのイントロン12+ドナー(「mAlb(イントロン12)」)を標的とするアルブミン特異的ZFN対2、または対照(「対照」)としてヒト遺伝子+ドナーを標的とするZFNセットのいずれかをI.V.注入して処理した。ZFN対番号1は、イントロン1を標的とする30724/30725であり、ZFN対2は、エクソン12を標的とする30872/30873である。これらの実験において、F.IXドナー導入遺伝子を、ZFN誘導切断後に末端捕捉によって組み込んだ。あるいは、F.IX導入遺伝子を、導入遺伝子が切断部位への相同性を有するアームに隣接するようにドナーベクターに挿入した。いずれの場合でも、F.IX導入遺伝子は、「SA−野生型hF9エクソン2〜8」カセットであった(共同所有の米国特許出願第61/392,333号を参照のこと)。
【0184】
その後、形質導入マウスを血清ヒトF.IXレベルについてサンプリングし、これを評価した(イントロン1への挿入後少なくとも8週間ヒトF.IXの安定化発現を示す
図7を参照のこと)。発現されたヒトF.IXは、アルブミン遺伝子座に標的化されたヒトF.IX導入遺伝子を有する血友病マウスにおける凝固時間の減少によって証明されるように、機能的でもある(
図8を参照のこと)。注目すべきことに、導入遺伝子挿入後2週間までは、凝固時間は、野生型マウスの凝固時間と大きな差はない。イントロン1特異的ドナーをイントロン12遺伝子座に挿入したとき、ヒトF.IXの発現をもたらす正しいスプライシングは起こり得ない。この試料におけるシグナルの欠如は、イントロン1部位に組み込まれるイントロン1ドナーからのシグナルが、まさに正しい導入遺伝子組み込みに由来するものであり、別の非特異的部位でのランダムな組み込みおよび発現に由来するものではないことを立証する。
【0185】
ヒトαガラクトシダーゼ(ヒトGLa)の挿入:ヒトF.IX遺伝子の挿入と同様に、ヒトαガラクトシダーゼ(ファブリー病を有する患者に不足した)をコードする遺伝子をマウスアルブミン遺伝子座に挿入した。ZFN対30724/30725を、F.IX導入遺伝子の代わりにαガラクトシダーゼ導入遺伝子を用いて上述のように使用した。この実験において、3匹のマウスを、1マウス当たり3.0e11ウイルスゲノムの用量のZFN対を含有するAAV2/8ウイルスおよび1マウス当たり1.5e12ウイルスゲノムのヒトGLaドナーを含有するAAV2/8ウイルスで処理した。対照動物に、ZFN含有ウイルスのみまたはヒトGLaドナーウイルスのみのいずれかを与えた。肝臓ホモジネート上で行ったウエスタンブロットは、αガラクトシダーゼ特異的シグナルの増加を示し、αガラクトシダーゼ遺伝子が組み込まれ、かつ発現されたことを示した(
図13A)。加えて、ELISAを、製造業者のプトロコルに従ってヒトαガラクトシダーゼアッセイキット(Sino)を用いて肝臓溶解物上で行った。
図13Bに示される結果は、ZFNおよびヒトGLaドナーの両方で処理したマウスにおけるシグナルの増加を示した。
実施例7:ヒトアルブミン特異的ZFNの設計
【0186】
ヒトアルブミン遺伝子に対する特異性を有するZFNを設計するために、ヒトアルブミンイントロン1のDNA配列を先に説明された方法を用いて分析し、最良のZFN結合を有する標的配列を特定した。イントロンにわたる領域(遺伝子座1〜5)を選択し、いくつかのZFNを、これらの領域を標的とするように設計した(例えば、遺伝子座1〜3からのZFNの結合部位を示す
図9を参照のこと)。この分析において、5つの遺伝子座がアルブミンイントロン1を標的とすると特定された(
図3Bを参照のこと)。標的およびヘリックスが表8および9に示される。
【表8-1】
【表8-2】
【表9-1】
【表9-2】
【0187】
これらのヌクレアーゼを二つ一組で試験し、最大活性を有する対を決定した。試験した対の結果として生じたマトリックスが以下の表10および11に示され、二量体の右側に用いられたZFNは、各マトリックスの上にわたって示されており、二量体の左側に用いられたZFNは、各マトリックスの左側に列記されている。Cel−Iアッセイを用いて検出されたミスマッチのパーセントで決定した結果として生じた活性は、両マトリックスの本体に示される。
【表10】
【表11】
(注記:「n.d.」とは、この対におけるアッセイが行われなかったことを意味する)
【0188】
このようにして、ヒトアルブミンのイントロン1における標的配列を認識する高度に活性のヌクレアーゼが開発された。
実施例8:アルブミン特異的TALENの設計
【0189】
TALENを、ヒトアルブミンイントロン1内の配列を標的とするように設計した。ベース認識を正準のRVDベース一致を用いて達成した(「TALEコード」:Aに対してNI、Cに対してHD、Gに対してNN(NK半繰り返し)、Tに対してNG)。TALENを以前に説明されたように構築した(共同所有の米国特許公開第20110301073号を参照のこと)。TALENのサブセットの標的をマカクザルアルブミン遺伝子およびアカゲザルアルブミン遺伝子に保存した(
図10を参照のこと)。TALENを米国20110301073号において説明されるように「+17」および「+63」TALEN骨格に構築した。試験したTALENの標的および数値識別子が以下の表12に示される。
【表12】
【0190】
その後、TALENを、内因性染色体標的で修飾を誘導する能力についてHepG2細胞において二つ一組で試験し、結果は、+17切断点を有する多くのタンパク質が活性であったことを示した。同様に、+63切断点を有する多くのTALENも活性であった(表13および
図11を参照のこと)。表13に示される対番号が
図11のレーン上に示される対番号と一致することに留意されたい。3つの組の非最適化アルブミンZFNの並列比較は、TALENおよびZFNが略同一の範囲の活性を有することを示した。
【表13-1】
【表13-2】
【0191】
以前に言及されたように(共同所有の米国特許公開第20110301073号を参照のこと)、C17 TALENは、2つのTALEN標的部位間のギャップが約11〜15bpであるときにより高い活性を有する一方で、C63 TALENは、最大18bpまでのギャップで活性を維持する(
図10、
図11C、および表13を参照のこと)。
【0192】
本明細書において言及されるすべての特許、特許出願、および出版物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0193】
理解の明瞭化ために図解および例を用いてある程度詳しく開示を提供しているが、本開示の精神または範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を行うことができることは当業者には明らかである。したがって、前述の説明および実施例は、限定的であると解釈されるべきではない。