(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記曲げモーメント演算器は、前記スライドの移動方向と前記コンロッドとのなす角度と、前記スライドの移動方向に作用するプレス荷重とに基づいて前記複数のコラムの各コラムに作用する曲げモーメントを演算する請求項1に記載のプレス機械のプレス荷重測定装置。
前記演算された各コラムに対応するプレス分荷重、又は前記プレス分荷重及び前記プレス荷重を出力する出力部を備えた請求項8に記載のプレス機械のプレス荷重測定装置。
出力部が、前記演算された各コラムに対応するプレス分荷重、又は前記プレス分荷重及び前記プレス荷重を出力する請求項14に記載のプレス機械のプレス荷重測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1つのコンロッドを介してスライドを駆動する1ポイント式のプレス機械は、スライドの移動方向(プレス機械の上下方向)とコンロッドとのなす角度に応じて、スライドに横方向の荷重が作用し、その横方向の荷重の影響を受けてプレス機械の複数のコラム(フレーム)に曲げモーメントが作用する。
【0009】
したがって、1ポイント式のプレス機械は、複数のコラムに作用する曲げモーメントにより各コラムが湾曲し、プレス荷重を測定するためにプレス機械の各コラムに装着された歪ゲージは、各コラムに作用する曲げモーメントによる曲げ歪の影響(誤差)を有する歪を検出する。
【0010】
そのため、各コラムに対応する歪ゲージが検出する歪に基づいて算出されるプレス分荷重(プレス荷重を各コラムが分担する荷重)は、スライド位置が下死点より大きい領域では、スライド位置に応じて、実際より大きい、あるいは小さいプレス分荷重が測定されていた。
【0011】
このことは、プレス分荷重(プレス荷重)と成形結果の因果関係を見極めようとするユーザを混乱させた。
【0012】
さらに、昨今、プレス機械がサーボ化したり、IOT(Internet of Things)等のインターネットを駆使してプレス機械の状態量をデジタル情報として簡便に通信したりし、高度化する一方で、プレス機械のより基本的な(物理的な)プレス荷重の測定は進化(精度UP)していない。
【0013】
特許文献1には、1ポイント式のプレス機械に関する記載がなく、特にスライドの移動方向とコンロッドとのなす角度に応じて、スライドに横方向の荷重が作用し、その横方向の荷重の影響を受けてプレス荷重を精度よく測定できなくなるという課題に関する記載がない。
【0014】
また、特許文献1に記載のプレス荷重の測定方法は、各コラムに設けた歪ゲージの抵抗値の合計によってプレス荷重を測定するが、各コラムが分担するプレス分荷重を測定していない。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、1ポイント式のプレス機械の各コラムに対応するプレス分荷重を、精度よく測定することができるプレス機械のプレス荷重測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために一の態様に係る本発明は、1つのコンロッドを介してスライドを駆動する1ポイント式のプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記プレス機械の複数のコラムにそれぞれ装着され、前記スライドに作用するプレス荷重に伴って前記複数のコラムに発生する歪をそれぞれ検出する複数の歪ゲージと、前記スライドの移動方向と前記コンロッドとのなす角度に基づいて前記複数のコラムの各コラムに作用する曲げモーメントを演算する曲げモーメント演算器と、前記複数のコラムの各コラムに装着した前記歪ゲージにより検出された歪及び各コラムに作用する曲げモーメントに基づいて、前記検出された歪に含まれる前記曲げモーメントによる曲げ歪成分の影響を除去した、前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重をそれぞれ演算するプレス分荷重演算器と、を備える。
【0017】
1ポイント式のプレス機械の場合、スライドの移動方向とコンロッドとのなす角度に応じて、スライド位置が下死点より大きい領域では、各コラムに曲げモーメントが作用する。その結果、各コラムに装着された歪ゲージは、各コラムに作用する曲げモーメントによる曲げ歪の影響(誤差)を有する歪を検出する。
【0018】
本発明の一の態様によれば、複数のコラムの各コラムに作用する曲げモーメントを演算し、各歪ゲージにより検出された歪に含まれる、曲げモーメントによる曲げ歪成分の影響を除去した、プレス分荷重を演算することで、曲げモーメントの影響を受けない精度の高いプレス分荷重を測定することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記曲げモーメント演算器は、前記スライドの移動方向と前記コンロッドとのなす角度と、前記スライドの移動方向に作用するプレス荷重とに基づいて前記複数のコラムの各コラムに作用する曲げモーメントを演算することが好ましい。
【0020】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記プレス分荷重演算器は、各コラムに装着した前記歪ゲージにより検出された歪に基づいて、前記複数のコラムの各コラムに対応する第1プレス分荷重をそれぞれ演算する第1プレス分荷重演算器と、各コラムに作用する曲げモーメントに基づいて、前記第1プレス分荷重に含まれる前記曲げモーメントによる誤差を、前記複数のコラムのコラム毎に演算する誤差演算器と、を有し、各コラムに対応して演算した前記第1プレス分荷重から各コラムに対応して演算した前記誤差を除去し、各コラムに対応するプレス分荷重を演算することが好ましい。即ち、歪ゲージにより検出された歪に基づいて各コラムに対応する第1プレス分荷重(曲げモーメントによる誤差を含む荷重)を算出するとともに、各コラムに作用する曲げモーメントに基づいて第1プレス分荷重に含まれる誤差を算出し、第1プレス分荷重から誤差を除去することで、精度のよいプレス分荷重を算出する。
【0021】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記プレス分荷重演算器は、各コラムに作用する曲げモーメントに基づいて各コラムに装着した前記歪ゲージにより検出された歪に含まれる前記曲げモーメントによる曲げ歪をコラム毎に演算する曲げ歪演算器と、各コラムに装着した前記歪ゲージにより検出された歪からコラム毎に演算した曲げ歪を除去し、校正した歪を算出する歪算出器と、前記算出した校正後の各コラムの歪に基づいて前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重をそれぞれ演算することが好ましい。即ち、歪ゲージにより検出された歪(誤差を含む歪)から、曲げモーメントによる曲げ歪分の誤差を除去し、校正した歪に基づいて精度のよいプレス分荷重を算出する。
【0022】
更に他の態様に係る発明は、1つのコンロッドを介してスライドを駆動する1ポイント式のプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記プレス機械の複数のコラムにそれぞれ装着され、前記スライドに作用するプレス荷重に伴って前記複数のコラムに発生する歪をそれぞれ検出する複数対の歪ゲージであって、前記複数対の歪ゲージの各対の歪ゲージは、各コラムの中立面を挟んで両面に装着される複数対の歪ゲージと、前記複数対の歪ゲージのうちの各コラムに対応する一対の歪ゲージが検出する歪を加算し、前記加算した歪に基づいて前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重をそれぞれ演算するプレス分荷重演算器と、を備える。
【0023】
本発明の更に他の態様によれば、各コラムの中立面を挟んで両面に一対の歪ゲージを装着し、一対の歪ゲージが検出する歪を加算することで、それぞれ曲げモーメントによる各コラムの曲げ歪(引張方向と圧縮方向の曲げ歪)を相殺する。そして、加算後の歪に基づいて各コラムに対応するプレス分荷重を演算することで、曲げモーメントによる誤差を含まない精度のよいプレス分荷重を算出する。
【0024】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記加算した歪に対応する電圧を出力するホーイストンブリッジ回路を備え、前記ホーイストンブリッジ回路において、前記一対の歪ゲージの抵抗は直列に接続され、かつ前記一対の歪ゲージの抵抗の初期状態の抵抗値は、それぞれ前記ホーイストンブリッジ回路の固定抵抗の抵抗値の2分の1であることが好ましい。これによれば、1つのホーイストンブリッジ回路により、一対の歪ゲージの加算した歪に対応する電圧を直接取得することができる。
【0025】
更に他の態様に係る発明は、1つのコンロッドを介してスライドを駆動する1ポイント式のプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記プレス機械の複数のコラムにそれぞれ装着され、前記スライドに作用するプレス荷重に伴って前記複数のコラムに発生する歪をそれぞれ検出する複数の歪ゲージであって、前記複数の歪ゲージの各歪ゲージは、各コラムの中立面と交差する面の中立軸に沿って装着される複数の歪ゲージと、前記複数のコラムの各コラムに装着した前記歪ゲージにより検出された歪に基づいて前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重をそれぞれ演算するプレス分荷重演算器と、を備える。
【0026】
本発明の更に他の態様によれば、各コラムの中立面中と交差する面の中立軸に沿って歪ゲージを装着したため、各歪ゲージは、曲げモーメントによる曲げ歪の影響を受けない歪を検出することができる。中立軸は、曲げモーメントによって伸縮しないためである。このようにして各コラムに装着した歪ゲージにより検出された歪に基づいて各コラムに対応するプレス分荷重を演算することで、曲げモーメントによる誤差を含まない精度のよいプレス分荷重を算出する。
【0027】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記プレス分荷重の総和をプレス荷重として算出する加算器を備えることが好ましい。これにより、曲げモーメントの影響を受けない精度の高いプレス荷重を測定することができる。
【0028】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記演算された各コラムに対応するプレス分荷重、又は前記プレス分荷重及び前記プレス荷重を出力する出力部を備えることが好ましい。
【0029】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定装置において、前記スライド及び前記スライドに連結される部材の質量と前記スライドの移動方向の加速度との積に比例する慣性力を算出する慣性力演算器を備え、前記プレス分荷重演算器は、前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重から前記算出した慣性力のうちの各コラムに作用する慣性力を除去し、前記プレス分荷重を更に校正することが好ましい。
【0030】
スライドや金型の質量が大きい大型のプレス機械の場合、スライドの加速度に伴う慣性力が、測定されるプレス荷重の精度に影響する。本発明の更に他の態様によれば、スライド及びスライドに連結される部材の質量とスライドの移動方向の加速度との積に比例する慣性力を算出し、各コラムに対応して算出したプレス分荷重から各コラムに作用する慣性力を除去することで、プレス分荷重を更に校正し、精度の高いプレス荷重を測定する。
【0031】
更に他の態様に係る発明は、1つのコンロッドを介してスライドを駆動する1ポイント式のプレス機械のプレス荷重測定方法において、前記プレス機械の複数のコラムに、前記スライドに作用するプレス荷重に伴って各コラムに発生する歪を検出する歪ゲージをそれぞれ装着し、曲げモーメント演算器が、前記スライドの移動方向と前記コンロッドとのなす角度に基づいて前記複数のコラムの各コラムに作用する曲げモーメントを演算し、プレス分荷重演算器が、前記複数のコラムの各コラムに装着した前記歪ゲージにより検出された歪及び前記演算された各コラムに作用する曲げモーメントに基づいて、前記検出された歪に含まれる前記曲げモーメントによる曲げ歪成分の影響を除去した、前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重をそれぞれ演算する。
【0032】
更に他の態様に係る発明は、1つのコンロッドを介してスライドを駆動する1ポイント式のプレス機械のプレス荷重測定方法において、前記プレス機械の複数のコラムの各コラムに対して、前記スライドに作用するプレス荷重に伴って前記複数のコラムに発生する歪をそれぞれ検出する一対の歪ゲージを、各コラムの中立面を挟んで両面に装着し、プレス分荷重演算器が、前記複数のコラムの各コラムに対応する一対の歪ゲージが検出する歪を加算し、前記加算した歪に基づいて前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重をそれぞれ演算する。
【0033】
更に他の態様に係る発明は、1つのコンロッドを介してスライドを駆動する1ポイント式のプレス機械のプレス荷重測定方法において、前記プレス機械の複数のコラムの各コラムに対して、前記スライドに作用するプレス荷重に伴って各コラムに発生する歪をそれぞれ検出する歪ゲージを、各コラムの中立面と交差する面の中立軸に沿って装着し、プレス分荷重演算器が、前記複数のコラムの各コラムに装着された前記歪ゲージにより検出された歪に基づいて前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重をそれぞれ演算する。
【0034】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定方法において、加算器が、前記プレス分荷重の総和をプレス荷重として算出することが好ましい。これにより、曲げモーメントの影響を受けない精度の高いプレス荷重を測定することができる。
【0035】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定方法において、出力部が、前記演算された各コラムに対応するプレス分荷重、又は前記プレス分荷重及び前記プレス荷重を出力することが好ましい。
【0036】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のプレス荷重測定方法において、慣性力演算器が、前記スライド及び前記スライドに連結される部材の質量と前記スライドの移動方向の加速度との積に比例する慣性力を算出し、前記プレス分荷重演算器が、前記複数のコラムの各コラムに対応するプレス分荷重から前記算出された慣性力のうちの各コラムに作用する慣性力を除去し、前記プレス分荷重を更に校正することが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
1ポイント式のプレス機械の場合、スライドの移動方向とコンロッドとのなす角度に応じて、スライド位置が下死点より大きい領域では、各コラムに曲げモーメントが作用するが、本発明によれば、プレス機械の各コラムに作用する曲げモーメントの影響を除去することで、各コラムに対応するプレス分荷重を精度よく測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下添付図面に従って本発明に係るプレス機械のプレス荷重測定装置及び方法の好ましい実施形態について詳説する。
【0040】
図1は、本発明に係るプレス機械のプレス荷重測定装置が適用されるプレス機械の実施形態を示す図である。
【0041】
図1に示すプレス機械100は、1つのコンロッド103を介してスライド110を駆動する1ポイント式のプレス機械であり、スライド110の移動方向(
図1上で上下方向)とコンロッド103とのなす角度φに応じて、スライド110に対して横方向に押す力が作用するものである。
【0042】
このプレス機械100は、ベッド102、左右のコラム104L,104R、及びクラウン106でフレームが構成され、機械中心に対して左右対称のフレーム構成を有している。また、本例の左右のコラム104L,104Rは、それぞれ1枚の板材で構成されている。
【0043】
スライド110は、コラム104L,104Rに設けられたガイド部108により上下方向(鉛直方向)に移動自在に案内されている。スライド110は、コンロッド103を介してクランク軸112に連結されており、クランク軸112には、図示しない駆動手段(
メカ式の駆動手段ではフライホイールから、サーボ式の駆動手段ではサーボモータから、減速機)を介して回転駆動力が伝達される。スライド110は、駆動手段によりクランク軸112が回転駆動されることにより、
図1上で上下方向に移動させられる。
【0044】
左右のコラム104L,104Rには、各コラム104L,104Rの内側の面に、それぞれ歪ゲージ10L、10Rが装着されている。
【0045】
スライド110には上型120が装着され、ベッド102上のボルスタ107には下型122が装着されている。
【0046】
上型120と下型122の間には、ブランクホルダ(皺押え板)130が配置され、下側が複数のクッションピン132を介して、図示しないクッションパッドで支持され、ブランクホルダ130上側にブランク材(材料)がセットされる。
【0047】
[プレス荷重測定の原理]
次に、本発明に適用されるプレス荷重測定の原理について説明する。
【0048】
まず、プレス荷重測定に使用するパラメータ、信号、定数等を下記の通り定義する。
【0049】
f
L:プレス分荷重左[kN]
f
R:プレス分荷重右[kN]
f:プレス荷重合計[kN]
F
L:プレス分荷重信号左[kN]
F
R:プレス分荷重
信号右[kN]
F:プレス荷重信号合計[kN]
F
L’:誤差を含むプレス分荷重信号左[kN]
F
R’:誤差を含むプレス分荷重信号右[kN]
F’:誤差を含むプレス荷重信号合計[kN]
S:スライド位置信号[mm]
θ:クランク角度信号[rad]
φ:コンロッドが垂線となす角度信号[rad]
ε
FL:F
Lに比例する歪信号
ε
FR:F
Rに比例する歪信号
ε
ML:横荷重に関係する左コラムの歪ゲージ装着部の曲げ歪信号
ε
MR:横荷重に関係する右コラムの歪ゲージ装着部の曲げ歪信号
ε
TL:歪ゲージにより検出される歪信号左
ε
TR:歪ゲージにより検出される歪信号右
K
εF:比例定数(下死点・静止状態における荷重/歪校正値)
歪ゲージ10L,10Rは、スライド110に作用するプレス荷重に伴ってコラム104L,104Rに発生する歪をそれぞれ検出する。
【0050】
歪ゲージ10L,10Rが検出する歪(歪を示す歪信号)は、プレス機械100の調整段階において、スライド110が下死点に静止した状態で、スライド中心部をボルスタ107上に設置した油圧ジャッキで上方向に押し、押す(値が明確な)力に対して、歪ゲージ10L,10Rから(各歪アンプを介して)検出された各歪信号が、均等に分力を負担するものとして校正したものである。
【0051】
ここで、校正後の歪ゲージ10L,10Rの各歪信号に対する荷重値に至る比例定数をK
εF(kN)とし、各歪ゲージ10L,10Rから検出される歪信号をε
TL、ε
TRとし、プレス分荷重信号をF
L’、F
R’(kN)とすると、従来の各コラム104L,104Rが分担するプレス荷重(以下「プレス分荷重」という)を示すプレス分荷重信号F
L’、F
R’は、概ね、[数1]式、[数2]式のように示されていた。
【0052】
[数1]
F
L’=K
εF・ε
TL
[数2]
F
R’=K
εF・ε
TR
あるいは、このように歪信号と荷重信号が全ての負荷領域において正比例では無い場合は、例えば校正段階において、K
εFが負荷領域毎の可変値として、算定されていた。
【0053】
本例のプレス機械100には、最大能力300kNのサーボダイクッションが装備されている。機械中心に、回転対称の円筒形状の製品を絞り成形する金型(上型120、下型122)を装着し、下死点近傍において、材料無し(成形は行わず)一定のダイクッション荷重(設定)200kNを作用させた状態において、クランク軸112を一定の2角度間で反転させ、スライド110を上死点まで戻すことなく、下死点を中心に約14mm揺動(振り子駆動)させた。
【0054】
図2Aから
図2Eは、それぞれプレス機械100を振り子駆動した時の、クランク角度を示すクランク角度信号θ、スライド110の位置を示すスライド位置信号S、ダイクッション荷重を示すダイクッション荷重信号、[数1]式及び[数2]式により求めた各プレス分荷重信号F
L’、F
R’、及びコンロッド103と垂線がなす角度を示す角度信号φ(deg)を示す波形図である。
【0055】
クランク角度信号θ(
図2A)は、180度を中心に約±20度の範囲を繰り返している。それに応じて、スライド位置信号S(
図2B)は、下死点(0mm)とおよそ13.8mm間を揺動している。ダイクッション荷重信号(
図2C)は、ダイクッション荷重設定200kNに対して、ダイクッション開始時(スライド110が上型120、ブランクホルダ130、クッションピン132を介してクッションパッドに衝突する時)の衝撃や、クランク軸112の反転時のプレス機械100の総合隙間の影響等により、±10kN(±5%)程度変動し、その範囲で略一定に作用している。
【0056】
このように、ダイクッション荷重が略一定に作用しているにも関わらず、
図2Dに示すプレス分荷重信号F
L’、F
R’は、下死点で約100kNに同調するものの、それぞれクランク軸角度θ(が180度より小さいか大きいか)とスライド位置Sに応じて変化(それぞれ100kNに対して±30kN(±30%)程度変化)している。
【0057】
このようにプレス分荷重信号F
L’、F
R’が変化する理由を、以下に順を追って説明する。
【0058】
コンロッドと垂線がなす角度φ(rad)は、クランク軸角度θ、クランク半径r、コンロッド長さlに基づいて、[数3]式により演算することができる。
【0059】
[数3]
φ=sin
−1(r/l・sin(π−θ))
図3A及び
図3Bは、横方向に押す力によって、コラム104L,104Rに作用する曲げモーメントM
L、M
R等を示す。尚、
図3Aと
図3Bとは、それぞれクランク軸角度θが、180度より小さい場合と大きい場合に関して示している。
【0060】
図4に示すように、スライド110の鉛直下方向に加わる正しいプレス(総)荷重をF(kN)とすると、[数3]式により算出した角度φに応じて、スライド110を横方向に押す力(以下、「横荷重」という)F
side(kN)は、次式、
[数4]
F
side=F・tanφ
により算出することができる。
【0061】
また、横荷重F
sideによって、フレームに作用する曲げモーメントM(kNmm)は、横荷重F
sideと、[数5]式に示すクランク軸中心−コンロッド先端部(対スライド回転支点)間の距離L(mm)を用いて、[数6]式により算出することができる。
【0062】
[数5]
L=r・cos(π−θ)+l・cosφ
[数6]
M=L・F
side
プレス荷重によりフレームに作用する曲げモーメントMは、
図3A及び
図3Bに示すように、クラウン106−スライド110間でコラム全体を曲げるように発生し、左右のコラム104L,104Rと、金型を伝わってベッド102で相殺される。
【0063】
歪ゲージ10L,10Rは、
図3A及び
図3Bに示すように、金型装着部の左右のコラム104L,104Rの内側表面に装着されている。各コラム104L,104Rにそれぞれ伝わる曲げモーメントM
L、M
R(kNmm)を、[数6]に示した曲げモーメントMに対する、それぞれの分担率(定数)k
ml、k
mrを用いると、[数7]式、[数8]式で表すことができる。
【0064】
[数7]
M
L=k
ml・M
[数8]
M
R=k
mr・M
本例のプレス機械100では、機械中心に対して左右対称のフレーム構造を有し、また、機械中心に対して左右対称の金型が装着されている為、定数k
mlとk
mrは等しく、曲げモーメントM
LとM
Rも等しい。定数k
mlとk
mrは、本来、金型(金型の剛性や装着バランス)毎に決定することが好ましい。
【0065】
図5は、左のコラム104Lの歪ゲージ10Lの装着部の側面を示す。尚、104aは、板材からなるコラム104Lに形成された開口部である。
【0066】
図5において、コラム104Lの歪ゲージ10Lの装着部の板厚をt(mm)、板幅をa(mm)とすると、コラム104Lの装着部の断面積s(mm
2)、及び断面2次モーメントI(mm
4)は、それぞれ[数9]式及び[数10]式で表すことができる。尚、右のコラム104Rについても、[数9]式、[数10]式等は同様に成立する。
【0067】
[数9]
s=a・t
[数10]
I=(1/12)・a・t
3
図6A及び
図6Bは、左右のコラム104L,104Rの歪ゲージ10L,10Rの装着部に作用する引張歪及び曲げ歪の分布を示す図である。
【0068】
コラム104L,104R(材料)のヤング率(縦弾性係数)をE(kN/mm
2)、正しいプレス分荷重信号をF
L、F
Rとし、F
L、F
Rによって左右の歪ゲージ装着部に生じる引張歪の演算値ε
FLcal、ε
FRcalは、各プレス分荷重F
L、F
Rによる応力がコラム104L,104Rに一様に分布すると仮定して、[数11]式、及び[数12]式により算出することができる。
【0069】
[数10]
ε
FLcal=F
L/(2sE)
[数11]
ε
FRcal=F
R/(2sE)
また、この時、同時に横荷重F
sideによって発生する左右のコラム104L,104Rの内側の表面に作用する曲げ歪ε
MLcal、ε
MRcalは、各曲げモーメントM
L,M
Rによる曲げ応力が板幅方向に一様に分布すると仮定して、[数12]式、[数13]式で表すことができる。
【0070】
[数12]
ε
MLcal=−M
L・t/(4EI)
[数13]
ε
MRcal=+M
R・t/(4EI)
歪ゲージ10L,10Rの校正時は、スライド110の下死点で横荷重F
sideが0(M=(M
L=M
R=)0)であり、コラム104L,104Rには、曲げ歪ε
MLcal、ε
MRcalは発生しない。したがって、左右の歪ゲージ10L,10Rから検出される歪ε
TL、ε
TRは、正しいプレス分荷重信号F
L、F
Rにより発生する歪ε
FL、ε
FRに等しい。ε
FL、ε
FRは、演算(理論)上、ε
FLcal、ε
FRcalに相当するため、[数1]式、[数2]式と、[数10]式、[数11]式とを比較して、[数1]式、[数2]式中の比例定数K
εFは、K
εF=2sEになり、次式が成り立つ。
【0071】
[数14]
F
L=2sE・ε
FLcal
[数15]
F
R=2sE・ε
FRcal
しかし、歪ゲージ10L,10Rの比例定数K
εFの校正後、歪ゲージ10L,10Rを実際に使用する場合には、スライド110の下死点を除いて、コラム104L,104Rには、曲げ歪ε
MLcal、ε
MRcalが発生する。したがって、プレス分荷重信号(第1プレス分荷重信号)F
L’
cal、F
R’
calは、曲げ歪ε
MLcal、ε
MRcalの影響分の誤差を含み、次式で示すことができる。
【0072】
[数16]
F
L’
cal=2sE・(ε
FLcal+ε
MLcal)
[数17]
F
R’
cal=2sE・(ε
FRcal+ε
MRcal)
図6A及び
図6Bに示すように、左右のコラム104L,104Rに作用する曲げ歪ε
MLcal、ε
MRcalは、各コラム104L,104Rの中心(中立軸)に作用する値が0であり、曲率の内側表面が圧縮(−)方向の最大値、曲率の外側表面が引張(+)方向の最大値をとる。
【0073】
図6Aに示す左のコラム104Lの歪ゲージ装着部には圧縮歪が、
図6Bに示す右のコラム104Rの歪ゲージ装着部には、引張歪が作用する。
【0074】
本例では、(機械中心に点対称の金型が装着されており)、M
LとM
Rが等しい為、ε
MLcalとε
MRcalの絶対値も等しい。したがって、[数16]式、[数17]式から、次式が成り立つ。
【0075】
[数18]
F
L’
cal+F
R’
cal(=2sE(ε
FLcal+ε
FRcal)=F
L+F
R)=F
[数18]式は、本例において、プレス分荷重信号の合計は、正しいプレス荷重信号であることを示している。
【0076】
図7Aは、[数18]式により演算した正味プレス(総)荷重信号F(=F
L’+
FR’
)を示す波形図である。また、
図7Bは、[数4]式により演算した横荷重F
sideを
示す波形図であり、
図7Cは、[数6]式により演算した曲げモーメントMを示す波形図
である。
【0077】
また、
図7Dは、コラム104L,104Rの歪ゲージ装着部に生じる引張歪の演算値ε
FLcal、ε
FRcalと、曲げ歪の演算値ε
MLcal、ε
MRcalとを示す波形図である。
【0078】
引張歪の演算値ε
FLcal、ε
FRcalは、プレス分荷重F
L、F
Rに基づいて[数10]式、[数11]式により演算した演算値であり、曲げ歪の演算値ε
MLcal、ε
MRcalは、曲げモーメントM
L,M
Rに基づいて[数12]式、[数13]式により演算した演算値である。本例では、F
LとF
Rは等しい為、ε
FLcal=ε
FRcalである。
【0079】
図7Eは、曲げ歪による誤差を含むプレス分荷重信号左計測値F
L’、プレス分荷重信号右計測値F
R’と、プレス分荷重信号左演算値F
L’
cal、プレス分荷重信号右演算値F
R’
calとを示す波形図である。
【0080】
F
L’、F
R’は、それぞれ[数1]式、[数2]式により算出した計測値であり、F
L’
cal、F
R’
calは、それぞれ[数16]式、[数17]式により演算された演算値である。
【0081】
図7Eに示すように、プレス分荷重信号の演算値と計測値とは、左右それぞれ、ほぼ一致する。
【0082】
このように、1ポイント式のプレス機械100において、左右のコラム104L,104Rの内(外)表面に装着した歪ゲージ10L,10Rによるプレス分荷重信号には、プレス荷重によってスライド110を横方向に押す力による影響分の誤差が含まれていた。少なくとも、垂線とコンロッド103が為す角度(φ)、プレス荷重信号(F)が影響する分の誤差が含まれていた。この誤差は、プレス荷重値に対して成形性を見極めようとするユーザを混乱させると共に、プレス機メーカの信用を失墜させる。
【0083】
[プレス機械のプレス荷重測定装置の第1実施形態]
図8は、プレス機械のプレス荷重測定装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【0084】
図8に示す第1実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1は、各コラムに装着された各歪ゲージにより検出される歪(歪信号)に含まれる曲げ歪成分の影響を除去し、各コラムに対応するプレス分荷重を精度よく測定するものであり、主として歪ゲージ10L,10Rと、プレス分荷重演算器12−1と、曲げモーメント演算器14と、加算器20と、出力部22とから構成されている。
【0085】
歪ゲージ10L,10Rは、左右のコラム104L,104Rに装着され、装着面の歪に対応する歪信号ε
TL、ε
TRをプレス分荷重演算器12−1に出力する。
【0086】
プレス分荷重演算器12−1の他の入力には、曲げモーメント演算器14から各コラム104L,104Rに作用する曲げモーメントM
L,M
Rを示す信号が加えられている。
【0087】
曲げモーメント演算器14には、角度検出器16からコンロッド103と垂線がなす角度を示す角度信号φと、選択器18を介して概略のプレス荷重信号合計を示すプレス荷重信号Fとが加えられており、曲げモーメント演算器14は、[数7]式及び[数8]式に示した、各コラム104L,104Rにそれぞれ伝わる曲げモーメントM
L、M
Rを算出する。
【0088】
この段階でいうプレス荷重信号Fは、例えばプレス分荷重演算器12−1で、歪信号ε
TL、ε
TRを基に、金型配置を考慮するなどして概略演算されたり、例えばスライド110がサーボ式の駆動手段である場合に、サーボモータの総駆動トルク(総駆動電流)、減速比、クランク角度信号θから概略演算されたりする。
【0089】
選択器18は、入力端子1に加わるプレス荷重信号F、又は入力端子2に加わるプレス荷重信号Fを選択し、曲げモーメント演算器14に出力する。選択器18は、プレス分荷重演算器12−1で概略演算されたプレス荷重信号Fを使用する場合には、入力端子1に加わるプレス荷重信号Fを選択し、他の手段により演算されたプレス荷重信号F(例えば、サーボモータの総駆動トルク、減速比、及びクランク角度信号θから概略演算されたプレス荷重信号)を使用する場合には、入力端子2に加わるプレス荷重信号Fを選択する。
【0090】
ここで、[数7]式、[数8]式中の曲げモーメントMは、[数6]式により算出することができ、[数6]式中の横荷重F
side、距離Lは、それぞれ[数4]式、[数5]式により算出することができ、[数4]式中のプレス荷重信号Fは、[数18]式に基づいて算出することができる。
【0091】
また、角度検出器16は、クランク軸112の角度を検出するエンコーダ(図示せず)から入力するクランク軸角度信号θに基づいて、[数3]式によりコンロッド103と垂線がなす角度を示す角度信号φを算出する。この角度信号φは、[数6]式により横荷重F
sideを算出するときに使用される。
【0092】
プレス分荷重演算器12−1(第1プレス分荷重演算器)は、歪ゲージ10L,10Rから入力する歪信号ε
TL、ε
TRに基づいて、[数1]式、[数2]式によりプレス分荷重信号(第1プレス分荷重信号)の左計測値F
L’、右計測値F
R’を算出する。左計測値F
L’、右計測値F
R’は、
図7Eに示すように曲げ歪ε
MLcal、ε
MRcalによる誤差を含んでいる。
【0093】
そこで、プレス分荷重演算器12−1(誤差演算器)は、曲げモーメント演算器14から入力する曲げモーメントM
L、M
Rに基づいて、左右のコラム104L,104Rの内表面に作用する曲げ歪演算値ε
MLcal、ε
MRcalを算出し([数12]式、[数13]式参照)、曲げ歪演算値ε
MLcal、ε
MRcalと比例定数により曲げモーメントM
L、M
Rによる誤差を算出する。
【0094】
プレス分荷重演算器12−1は、誤差を含むプレス分荷重信号の左計測値F
L’、右計測値F
R’から曲げ歪演算値ε
MLcal、ε
MRcalに基づくプレス分荷重誤差を除去することにより、正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを算出する。
【0095】
即ち、正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalは、次式により算出することができる。
【0096】
[数19]
F
Lcal=F
L’−2SE・ε
MLcal=K
εF・ε
TL−2SE・ε
MLcal
[数20]
F
Rcal=F
R’−2SE・ε
MRcal=K
εF・ε
RL−2SE・ε
MRcal
プレス分荷重演算器12−1は、[数19]式、[数20]式に示すように誤差を含む左計測値F
L’、右計測値F
R’から、それぞれ曲げ歪によりプレス分荷重誤差(2SE・ε
MLcal、2SE・ε
MRcal)を減算し、正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを算出する。
【0097】
図9は、プレス分荷重演算器12−1により算出された正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalと、スライド110に作用しているプレス分荷重(ダイクッション荷重の1/2)とを示す波形図である。
【0098】
図9に示すように、正しいプレス分荷重信号の左演算値、右演算値は、スライド110に作用しているプレス荷重の2分の1とほぼ一致している。
【0099】
このような正しいプレス分荷重信号をユーザに提供することによって、プレス分荷重値に対して成形性を見極めようとするユーザを支援し、プレス機械(専業)メーカの威信を保つことが出来る。
【0100】
プレス分荷重演算器12−1により算出されたプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalは、それぞれ加算器20及び出力部22に出力される。
【0101】
加算器20は、プレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを加算することで、プレス分荷重信号の総和(合計)を、プレス荷重信号Fとして出力部22に出力する。
【0102】
出力部22は、プレス荷重信号F、プレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalをそれぞれ図示しないモニタ装置、プリンタ、記憶装置等に出力し、正しいプレス分荷重信号をユーザに提供可能にする。
【0103】
尚、プレス分荷重演算器12−1は、[数19]式、[数20]式に示したように、誤差を含むプレス分荷重信号の左計測値F
L’、右計測値F
R’を算出し、これらの左計測値F
L’、右計測値F
R’から曲げ歪によりプレス分荷重誤差(2SE・ε
MLcal、2SE・ε
MRcal)を減算して、正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを算出するようにしたが、これに限らず、歪信号ε
TL、ε
TRに含まれる曲げ歪による誤差を補正し、補正後の歪信号ε
TL、ε
TRに基づいて正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを算出するようにしてもよい。
【0104】
即ち、プレス分荷重演算器12−1に、各コラム104L,104Rに作用する曲げモーメントM
L,M
Rに基づいて、[数12]式、[数13]式により、曲げ歪演算値ε
MLcal、ε
MRcalをコラム毎に演算する曲げ歪演算器と、歪ゲージ10L,10Rにより検出される歪信号ε
TL、ε
TRからコラム毎に演算した曲げ歪演算値ε
MLcal、ε
MRcalを除去し、校正した歪信号を算出する歪算出器とを設け、プレス分荷重演算器12−1は、曲げ歪による誤差が除去された校正後の歪信号ε
TL、ε
TRを生成し、生成した歪信号に基づいて正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを算出するようにしてもよい。
【0105】
[スライド等の慣性力の影響について]
プレス機械のスライドが加減速すると、スライド等による慣性
力の影響を受け、正しいプレス分荷重信号を測定することができず、特にスライド等の質量が大きい大型のプレス機械では、スライド等の慣性力(スライド慣性力)の影響が顕著に現われる。
【0106】
図10は、スライド110に作用するプレス荷重とスライド慣性力との関係を説明するために用いた図である。
【0107】
図10において、スライド110とスライド110に連結される上型120等の部材の質量をM(kg)、上向きの加速度をα(=d
2S/dt
2)とし、質量Mと加速度αの積の符号を反転させた値を、スライド慣性力信号G(kN)と定義すると、スライド慣性力信号Gは、次式により表すことができる。
【0108】
[数21]
G=−M・α・10
−6=−M・(d
2S/dt
2)・10
−6
正しいプレス分荷重をf
1、f
2(kN)、正しいプレス荷重をf(=f
1+f
2)、スライド慣性力をg(kN)とすれば、スライド慣性力gを含むプレス分荷重は、f
1’、f
2’(kN)、スライド慣性力gを含むプレス荷重は、f’(=f
1’+f
2’=f−g)である。
【0109】
言い変えると、プレス機械では、プレス荷重の一部をスライド慣性力gが負担し、残りをスライド110の駆動力(メーカ式ではフライホイールから、サーボ式ではサーボモータから、減速機やクランク機構を介してスライドを駆動する力)f’(=f
1’+f
2’)が負担している。つまり、f’はfよりg分小さくなる。
【0110】
スライド等の質量Mが,例えば90000kg(≒100t程度)と大きい、大型のプレス機械では、スライド慣性力gは無視できない(すべきではない)。
【0111】
左右のコラム104L,104Rにスライド慣性力gの影響が均等に作用しているとすると、正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalは、[数19]式、[数20]式から、[数21]式により演算されるスライド慣性力信号Gの2分の1のG/2を減算することで、次式により表すことができる。
【0112】
[数22]
F
Lcal=K
εF・ε
TL−2SE・ε
MLcal−G/2
[数23]
F
Rcal=K
εF・ε
RL−2SE・ε
MRcal−G/2
図11は、本例におけるスライド慣性力信号Gを示す波形図である。スライド慣性力信号Gは、スライドの減速中は鉛直下方向になるため、スライドの減速中は、[数22]式、[数23]式により算出されるプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalは、[数19]式、[数20]式により算出されるプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalよりも大きい値になる。
【0113】
図11に示したスライド慣性力信号Gは、プレス機械が小型であり、スライド等の質量が小さく、また、下死点近傍で加速度(速度変化)が小さい為、左右のプレス分荷重信号に含まれるスライド慣性力信号G(G/2)は、
図9に示した左右のプレス分荷重信号の1%程度であり、そのプレス分荷重信号に影響を与える程度では無い。しかし、プレス機械が大型かつ1ポイント式のプレス機械の場合は、[数22]式、[数23]式によるスライド慣性力信号Gに基づく補正は有効である。
【0114】
[プレス機械のプレス荷重測定装置の第1実施形態の変形例]
図12は、プレス機械のプレス荷重測定装置の第1実施形態の変形例を示すブロック図である。尚、
図12において、
図8に示した第1実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0115】
図12に示す第1実施形態の変形例のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1’は、
図8に示した第1実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1と比較して、主として慣性力演算器30が追加されている点で相違する。
【0116】
慣性力演算器30は、スライド110の加速度αに基づいて、[数21]式により慣性力信号Gを算出する。加速度αは、スライド位置信号Sを2回微分することで求めることができる。質量Mは、予め設定した値を使用することができるが、スライド110に装着する上型120を交換する場合には、交換した上型の質量により質量Mを設定することが好ましい。
【0117】
プレス分荷重演算器12−1’は、[数22]式、[数23]式に基づいて、正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを算出する。即ち、プレス分荷重演算器12−1’は、第1実施形態のプレス分荷重演算器12−1と比較して、スライド慣性力信号Gによる補正を行っている点で相違する。
【0118】
[プレス機械のプレス荷重測定装置の第2実施形態]
図13は、
図1に示したプレス機械100と同一のプレス機械100を示す図であり、特にプレス機械100の複数(本例では2つ)のコラム104L,104Rに、複数対(本例では2対)の歪ゲージが装着されている場合に関して示している。
【0119】
図13に示すように、左側の一対の歪ゲージ10LL,10LRは、左側のコラム104Lの中立面(中立軸)104Nを挟んで両面に装着され、右側の一対の歪ゲージ10RL,10RRは、右側のコラム104Rの中立軸104Nを挟んで両面に装着されている。
【0120】
図14は、右側のコラム104Rの歪ゲージ装着部における引張歪(ε
FR)、及び曲げ歪(ε
MR、-ε
MR)の分布を示す図である。
【0121】
プレス分荷重信号左F
L、プレス分荷重信号
右F
Rによって左右のコラム104L,104Rの歪ゲージ装着部に発生する引張歪をε
FL、ε
FRとし、少なくともプレス荷重信号Fとコンロッド103と垂線がなす角度φによって、左右のコラム104L,104Rの歪ゲージ装着部に発生する曲げ歪の絶対値をそれぞれε
ML、ε
MRとし、左側の一対の歪ゲージ10LL、10LRから検出される歪信号ε
TLL、ε
TLR、右側の一対の歪ゲージ10RL、10RRから検出される歪信号ε
TRL、ε
TRRは、次式により示すことができる。
【0122】
[数24]
ε
TLL=ε
FL+ε
ML
[数25]
ε
TLR=ε
FL−ε
ML
[数26]
ε
TRL=ε
FR+ε
MR
[数27]
ε
TRR=ε
FR−ε
MR
ここで、左側のコラム104Lに関する[数24]式と[数25]式とを加算し、右側のコラム104Rに関する[数26]式と[数27]式とを加算すると、次式が得られる。
【0123】
[数28]
ε
TLL+ε
TLR=(ε
FL+ε
ML)+(ε
FL−ε
ML)=2・ε
FL
[数29]
ε
TRL+ε
TRR=(ε
FR+ε
ML)+(ε
FR−ε
ML)=2・ε
FR
[数28]式、[数29]式は、左右の各コラムに装着した一対の歪ゲージにより検出された歪信号を加算すると、曲げ歪が相殺されることを意味する。
【0124】
したがって、正しいプレス分荷重信号左F
L、プレス分荷重信号
右F
Rは、次式により表すことができる。
【0125】
[数30]
F
L=K
εF・(ε
TLL+ε
TLR)/2
[数31]
F
R=K
εF・(ε
TRL+ε
TRR)/2
ただし、K
εFは、プレス機械−調整段階において、スライド110が下死点に静止した状態で、スライド中心部をボルスタ107上に設置した油圧ジャッキで上方向に押し、押す(値が明確な)力に対して、各歪ゲージから(各歪アンプを介して)検出された各歪信号が、均等に分力を負担するものとして校正した時に得られた、各歪ゲージ校正後の各歪信号に対する荷重値に至る比例定数である。
【0126】
図15は、プレス機械のプレス荷重測定装置の第2実施形態を示すブロック図である。尚、
図15において、
図8に示した第1実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0127】
図15に示す第2実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−2は、
図8に示した第1実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1と比較して、主として複数対(本例では、2対)の歪ゲージ10LL、10LRと、歪ゲージ10RL、10RRとを有し、一方、曲げモーメント演算器14が削除されている点で相違する。
【0128】
左側のコラム104Lに装着される一対の歪ゲージ10LL、10LRは、それぞれ検出した歪信号ε
TLL、ε
TLRをプレス分荷重演算器12−2に出力し、右側のコラム104Rに装着される一対の歪ゲージ10RL、10RRは、それぞれ歪信号ε
TRL、ε
TRRをプレス分荷重演算器12−2に出力する。
【0129】
歪ゲージ10LLは、
図16に示すようなホーイストンブリッジ回路を構成して、歪信号ε
TLLを検出することができる。
【0130】
図16に示すホーイストンブリッジ回路は、歪を検出するための抵抗R
LLと、3つの固定抵抗Rとを含み、ブリッジに一定の電圧Eが加えられており、歪ゲージ10LLの装着面の歪に対応して変化する抵抗値R
LL(抵抗値も抵抗名称もR
LLとする)に応じて、ブリッジから電圧e
LLを出力する。尚、歪が0の場合、抵抗値R
LLは、固定抵抗Rの抵抗値Rと同じであり、電圧e
LLは0である。
【0131】
そして、歪ゲージ10LLは、電圧e
LLに対応する歪信号ε
TLLを出力する。他の歪ゲージ10LR、10RL、10RRも、
図16に示したホーイストンブリッジ回路を構成して歪信号ε
TLR、ε
TRL、ε
TRRを出力することができる。
【0132】
プレス分荷重演算器12−2は、[数30]式に示したように、一対の歪ゲージ10LL、10LRから出力される歪信号ε
TLL、ε
TLRを加算し、加算した歪信号に基づいて正しいプレス分荷重信号左F
Lcalを演算する。同様に、プレス分荷重演算器12−2は、[数31]式に示したように,一対の歪ゲージ10RL、10RRから出力される歪信号ε
TRL、ε
TRRを加算し、加算した歪信号に基づいて正しいプレス分荷重信号
右F
Rcalを演算する。
【0133】
図17は、一対の歪ゲージ10LL、10LRに適用されるホーイストンブリッジ回路を示す。
【0134】
図17に示すホーイストンブリッジ回路は、一対の歪ゲージ10LL、10LRの抵抗R
LL/2,R
LR/2が直列に接続されている。一対の歪ゲージ10LL、10LRの抵抗R
LL/2,R
LR/2の初期状態の抵抗値R
LL/2、R
LR/2は、ホーイストンブリッジ回路の固定抵抗Rの抵抗値Rの2分の1である。
【0135】
図17に示すホーイストンブリッジ回路から出力される電圧e
Lは、プレス分荷重信号左F
Lに比例する歪信号ε
FLとなる。即ち、
図17に示すホーイストンブリッジ回路によれば、プレス分荷重演算器12−2により加算される歪信号ε
TLL、ε
TLRの加算を、ホーイストンブリッジ回路から出力される時点で完了することに相当する。同様にプレス分荷重演算器12−2により加算される歪信号ε
TRL、ε
TRRの加算を、ホーイストンブリッジ回路により行うことができる。
【0136】
[プレス機械のプレス荷重測定装置の第3実施形態]
図18は、
図1に示したプレス機械100と同一のプレス機械100を示す図であり、特に左右のコラム104L,104Rに装着される歪ゲージ12L、12Rの装着位置が、
図1に示したプレス機械100の左右のコラム104L,104Rに装着される歪ゲージ10L、10Rと相違する。
【0137】
図18に示すように歪ゲージ12L、12Rは、それぞれ左右のコラム104L,104Rの中立面と交差する面の中立軸104Nに沿って中立軸104N上に装着されている。
【0138】
プレス分荷重信号左F
L、プレス分荷重信号右F
Rによって左右のコラム104L,104Rの歪ゲージ装着部に発生する引張歪をε
FL、ε
FRとすると、左側の歪ゲージ12Lから検出される歪信号ε
TL、右側の歪ゲージ12Rから検出される歪信号ε
TRは、それぞれ次式で表すことができる。
【0139】
[数32]
ε
TL=ε
FL
[数33]
ε
TR=ε
FR
[数32]式及び[数33]式は、左右のコラム104L,104Rの歪ゲージ12L、12Rから検出される歪信号ε
TL、ε
TRには、曲げ歪が作用していなことを意味する。
【0140】
つまり、曲げモーメントが作用する各コラムの(曲げ応力とそれに比例する)曲げ歪が0になる中立軸104N上に、歪ゲージ12L、12Rが装着されているため、曲げ歪は検出されない。
【0141】
したがって、プレス分荷重信号左F
L、プレス分荷重信号
右F
Rは、それぞれ次式に示すことができる。
【0142】
[数34]
F
L=K
εF・ε
TL
[数35]
F
R=K
εF・ε
TR
ただし、K
εFは、プレス機械−調整段階において、スライド110が下死点に静止した状態で、スライド中心部をボルスタ107上に設置した油圧ジャッキで上方向に押し、押す(荷重値が明確な)力に対して、歪ゲージ12L,12Rから(各歪アンプを介して)検出された各歪信号が、均等に分力を負担するものとして校正した時に得られた、各歪ゲージ12L,12Rの校正後の各歪信号ε
TL、ε
TRに対する荷重値に至る比例定数である。
【0143】
この方法は、それぞれのコラム104L,104Rに作用する曲げ歪の影響を、演算により除去する手法を介さない分、各プレス分荷重信号の測定精度が向上する。
【0144】
図19は、プレス機械のプレス荷重測定装置の第3実施形態を示すブロック図である。尚、
図19において、
図15に示した第2実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−2と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0145】
図19に示す第3実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−3は、
図15に示した第2実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−2と比較して、主として2対の歪ゲージ10LL、10LRと、歪ゲージ10RL、10RRの代わりに、各コラム104L,104Rの中立軸104N上に装着された歪ゲージ12L、12Rを有する点で相違する。
【0146】
左右のコラム104L,104Rの中立軸104N上に装着された歪ゲージ12L、12Rは、それぞれ検出した歪信号ε
TL、ε
TRをプレス分荷重演算器12−3に出力する。
【0147】
尚、各歪ゲージ12L,12Rは、
図16に示したようなホーイストンブリッジ回路を構成して、各歪信号ε
TL、ε
TRを検出することができる。
【0148】
プレス分荷重演算器12−3は、[数34]式及び[数35]式に示したように、歪ゲージ12L、12Rから出力される歪信号ε
TL、ε
TRに基づいて正しいプレス分荷重信号左F
Lcal、正しいプレス分荷重信号
右F
Rcalを演算する。
【0149】
尚、第2実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−2、及び第3実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−3において、正しいプレス分荷重信号左F
Lcal、正しいプレス分荷重信号
右F
Rcalを演算する際に、
図12に示した第1実施形態の変形例のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1’と同様に、スライド慣性力信号Gによる補正を行うようにしてもよい。
【0150】
[プレス機械のプレス荷重測定方法の第1実施形態]
図20は、プレス機械のプレス荷重測定方法の第1実施形態を示すフローチャート図である。尚、第1実施形態のプレス機械のプレス荷重測定方法は、
図8に示した第1実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1に対応する方法である。
【0151】
図20において、プレス分荷重演算器12−1は、左右のコラム104L,104Rに装着された歪ゲージ10L,10Rから歪信号ε
TL、ε
TRを入力する(ステップS10)。また、プレス分荷重演算器12−1は、入力した歪信号ε
TL、ε
TRに基に、概略のプレス荷重信号合計を示すプレス荷重信号Fを算出する(ステップS11)。
【0152】
同時に、曲げモーメント演算器14は、角度検出器16からコンロッド103と垂線がなす角度を示す角度信号φと、ステップS11で算出されたプレス荷重信号合計を示すプレス荷重信号Fとを入力する(ステップS12)。曲げモーメント演算器14は,これらの入力に基づいてフレームに作用する曲げモーメントMを算出し、算出した曲げモーメントMに基づいて、[数7]式、[数8]式により各コラム104L,104Rにそれぞれ伝わる曲げモーメントM
L、M
Rを算出する(ステップS14)。
【0153】
プレス分荷重演算器12−1は、曲げモーメント演算器14から入力する曲げモーメン
トM
L、M
Rに基づいて、[数12]式、[数13]式により左右のコラム104L,1
04Rの内表面に作用する曲げ歪演算値ε
MLcal、ε
MRcalを算出し、更に、歪
ゲージ10L,10Rから入力した歪信号ε
TL、ε
TR、及び曲げ歪演算値ε
MLca
l、ε
MRcalに基づいて、[数19]式、[数
20]式により、曲げ歪による誤差
を除去した正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを算出す
る(ステップS16)。
【0154】
加算器20は、プレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを加算することで、プレス分荷重信号の総和(合計)をプレス荷重信号Fとして算出する(ステップS18)。
【0155】
出力部22は、プレス荷重信号F、プレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalをそれぞれ図示しないモニタ装置、プリンタ、記憶装置等に出力し、正しいプレス分荷重信号をユーザに提供可能にする(ステップS20)。
【0156】
ステップS10からステップS20の一連の処理は高速で行われ、これにより、時々刻々と変化するプレス荷重信号F、プレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalをリアルタイムに取得することが可能である。
【0157】
[プレス機械のプレス荷重測定方法の第1実施形態の変形例]
図21は、プレス機械のプレス荷重測定方法の第1実施形態の変形例を示すフローチャート図である。
【0158】
第1実施形態の変形例のプレス機械のプレス荷重測定方法は、
図12に示した第1実施形態の変形例のプレス機械のプレス荷重測定装置1−1’に対応する方法である。尚、
図21において、
図20に示した第1実施形態と共通する部分には、同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0159】
図21に示す第1実施形態の変形例は、
図20に示した第1実施形態に対して、ステップS50、S52が追加され、かつ第1実施形態のステップS16の代わりに、ステップS54の処理が行われる点で相違する。
【0160】
図21において、慣性力演算器30は、スライド110の加速度αを入力する(ステップS50)。加速度αは、スライド位置信号Sを2回微分することで求めることができる。慣性力演算器30は、スライド110とスライド110に連動する上型120等の質量Mと、入力した加速度αに基づいて、[数21]式によりスライド慣性力信号Gを算出する(ステップS52)。
【0161】
プレス分荷重演算器12−1’は、[数22]式、[数23]式に基づいて、正しいプレス分荷重信号の左演算値F
Lcal、右演算値F
Rcalを算出する。即ち、プレス分荷重演算器12−1’は、第1実施形態のプレス分荷重演算器12−1と比較して、スライド慣性力信号Gによる補正を行っている点で相違する(ステップS54)。
【0162】
プレス機械が大型かつ1ポイント式のプレス機械の場合は、スライド慣性力による補正は有効である。
【0163】
[プレス機械のプレス荷重測定方法の第2実施形態]
図22は、プレス機械のプレス荷重測定方法の第2実施形態を示すフローチャート図である。
【0164】
尚、第2実施形態のプレス機械のプレス荷重測定方法は、
図15に示した第2実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−2に対応する方法である。また、
図22において、
図20に示した第1実施形態のフローチャートと共通する部分には、同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0165】
図22において、プレス分荷重演算器12−2は、左側のコラム104Lに装着された一対の歪ゲージ10LL,10LR、及び右側のコラム104Rに装着された一対の歪ゲージ10RL,10RRから、それぞれ歪信号ε
TLL、ε
TLR、及び歪信号ε
TRL、ε
TLLを入力する(ステップS30)。
【0166】
プレス分荷重演算器12−2は、一対の歪信号ε
TLL、ε
TLRを加算して曲げ歪を除去した歪信号(2・ε
TL)を生成し、同様に一対の歪信号ε
TRL、ε
TLLを加算して曲げ歪を除去した歪信号(2・ε
TR)を生成し(ステップS32)、それぞれ加算した歪信号(2・ε
TL)、歪信号(2・ε
TR)に基づいて正しいプレス分荷重信号左F
Lcal、正しいプレス分荷重信号
右F
Rcalを演算する(ステップS16)。
【0167】
[プレス機械のプレス荷重測定方法の第3実施形態]
図23は、プレス機械のプレス荷重測定方法の第3実施形態を示すフローチャート図である。
【0168】
尚、第3実施形態のプレス機械のプレス荷重測定方法は、
図19に示した第3実施形態のプレス機械のプレス荷重測定装置1−3に対応する方法である。また、
図23において、
図20に示した第1実施形態のフローチャートと共通する部分には、同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0169】
図23において、プレス分荷重演算器12−3は、左右の歪ゲージ12L、12Rからそれぞれ歪信号ε
TL、ε
TRを入力する(ステップS40)。
【0170】
ここで、歪ゲージ12Lは、左側のコラム104Lの中立軸104N上に装着され、歪ゲージ12Rは、右側のコラム104Rに中立軸104N上に装着されているため、各歪ゲージ12L、12Rにより検出される歪信号ε
TL、ε
TRRには、フレームに作用している曲げモーメントMによる曲げ歪が作用していない。
【0171】
プレス分荷重演算器12−3は、歪ゲージ12L、12Rから入力する歪信号ε
TL、ε
TRに基づいて、[数34]式、[数35]式によりプレス分荷重信号左F
Lcal、プレス分荷重信号
右F
Rcalを演算する(ステップS42)。即ち、プレス分荷重演算器12−3は、曲げ歪を除去するための演算を行うことなく、正しいプレス分荷重信号左F
Lcal、正しいプレス分荷重信号
右F
Rcalを演算することができる。
【0172】
[その他]
本実施形態のプレス機械は、左右の2つのコラムを有するが、本発明は、2よりも多い複数のコラムを有するプレス機械に適用でき、その場合、歪ゲージも複数のコラムの各コラムに装着する必要がある。
【0173】
また、スライドを上死点まで戻すことなく、下死点を中心に約14mm揺動させる、振り子駆動する場合を例に説明したが、本発明は、振り子駆動されるプレス機械に限らず適用できる。
【0174】
更に、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。