特許第6890216号(P6890216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6890216
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20210607BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20210607BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20210607BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20210607BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210607BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210607BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   C09J7/29
   C09J7/38
   C09J201/00
   C09J5/00
   B32B27/00 M
   B32B27/30 B
   H01L21/78 M
【請求項の数】19
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2021-514643(P2021-514643)
(86)(22)【出願日】2020年11月30日
(86)【国際出願番号】JP2020044513
【審査請求日】2021年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2019-230602(P2019-230602)
(32)【優先日】2019年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2020-114047(P2020-114047)
(32)【優先日】2020年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】上野 周作
(72)【発明者】
【氏名】平山 高正
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−342540(JP,A)
【文献】 特開2010−202833(JP,A)
【文献】 特開2019−070104(JP,A)
【文献】 特開2010−129699(JP,A)
【文献】 特開2018−141086(JP,A)
【文献】 特開2018−182276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/10
B32B27/00
B32B27/30
H01L21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生層と、ガス発生層の少なくとも片側に配置されたガスバリア層とを含む粘着シートであって、
該ガスバリア層が、該粘着シートへのレーザー光照射により、その表面が変形する層であり、
該ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(1)で算出される値以下であり、かつ、
該ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(2)で算出される値以上である、粘着シート;
35011×EXP(−0.812×log10(Er×10))・・・(1)
20081×EXP(−1.145×log10(Er×10))・・・(2)
Erは、ガスバリア層の高弾性部分の25℃のおけるナノインデンテーション法による弾性率(MPa)である、
粘着シート。
【請求項2】
前記ガス発生層が、紫外線吸収可能な層である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記ガス発生層が、紫外線吸収剤を含む、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記ガスバリア層が、粘着剤層を含む、請求項1から3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
前記ガスバリア層が、中間層をさらに含む、請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記ガスバリア層の高弾性部分のナノインデンテーション法による弾性率が、0.01MPa〜10GPaである、請求項1から5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
前記ガスバリア層の厚みが、0.1μm〜200μmである、請求項1から6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】
前記ガスバリア層へのレーザー光照射による前記ガスバリア層表面の変形量が、前記ガスバリア層の垂直変位で、0.6μm以上である、請求項1から7のいずれかに記載の粘着シート
【請求項9】
前記粘着シートの突き刺し強度が、10mN〜5000mNである、請求項1から8のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項10】
前記粘着シートの法線方向の伸びが、0.1mm以上である、請求項1から9のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項11】
前記中間層が、熱可塑性樹脂を含む、請求項5から10のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項12】
前記中間層が、スチレン系エラストマーから形成される樹脂フィルムである、請求項5から11のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項13】
前記中間層が、硬化型樹脂を含む、請求項5から10のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項14】
前記硬化型樹脂が、紫外線硬化型樹脂である、請求項13に記載の粘着シート。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の粘着シート上に電子部品を貼着すること、および、該粘着シートにレーザー光を照射して該粘着シートから該電子部品を剥離することを含む、電子部品の処理方法。
【請求項16】
前記電子部品の剥離が、位置選択的に行われる、請求項15に記載の電子部品の処理方法。
【請求項17】
前記粘着シートに前記電子部品を貼着した後、該粘着シートから該電子部品を剥離する前に、
該電子部品に所定の処理を行うことを含む、
請求項15または16に記載の電子部品の処理方法。
【請求項18】
前記処理が、グラインド加工、ダイシング加工、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、エッチング、蒸着、モールディング、回路形成、検査、検品、洗浄、転写、配列、リペアまたはデバイス表面の保護である、請求項17に記載の電子部品の処理方法。
【請求項19】
前記粘着シートから前記電子部品を剥離した後、電子部品を別のシートに配置することを含む、請求項15から18のいずれかに記載の電子部品の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を加工する際には、加工時に粘着シート上に被加工体を仮固定し、加工後においては、当該粘着シートから被加工体を剥離するという操作が行われることがある。このような操作に用いられる粘着シートとしては、加工時には所定の粘着力を有し、加工後には粘着力が低下し得る粘着シートが用いられることがある。このような粘着シートのひとつとして、粘着剤層中に熱膨張性微小球を含有させて構成された粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1)。熱膨張性微小球を含む粘着シートは、所定の粘着力を有しつつも、加熱によって熱膨張性微小球を膨張させることにより、粘着面に凹凸を形成して接触面積を小さくすることで粘着力が低下または消失するという特徴を有する。このような粘着シートは、外的なストレスなく容易に被加工体を剥離し得るという利点を有する。
【0003】
しかしながら、近年、各種デバイスの軽量化、搭載数増加の傾向に伴い、電子部品の小型化が進み、上記熱膨張性微小球と同程度のサイズにまで小型化された電子部品を仮固定する必要性が生じている。小型化が進んだ電子部品を仮固定して加工する場合、粒径バラツキに起因して粒径の大きい熱膨張性微小球が存在する箇所、熱膨張性微小球が存在しない箇所等の影響が大きくなり、当該箇所において、良好な剥離が行えない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−131507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、小型電子部品(例えば、100μm□以下サイズのチップ)を良好に仮固定し、かつ、良好に剥離させ得る粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘着シートは、ガス発生層と、ガス発生層の少なくとも片側に配置されたガスバリア層とを含む粘着シートであって、該ガスバリア層が、該粘着シートへのレーザー光照射により、その表面が変形する層であり、該ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(1)で算出される値以下であり、かつ、該ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(2)で算出される値以上である、粘着シート;
35011×EXP(−0.812×log10(Er×10))・・・(1)
20081×EXP(−1.145× log10(Er×10))・・・(2)
Erは、ガスバリア層の高弾性部分の25℃のおけるナノインデンテーション法による弾性率(MPa)である。
1つの実施形態においては、上記ガス発生層が、紫外線吸収可能な層である。
1つの実施形態においては、上記ガス発生層が、紫外線吸収剤を含む。
1つの実施形態においては、上記ガスバリア層が、粘着剤層を含む。
1つの実施形態においては、上記ガスバリア層が、中間層をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記ガスバリア層の高弾性部分のナノインデンテーション法による弾性率が、0.01MPa〜10GPaである。
1つの実施形態においては、上記ガスバリア層の厚みが、0.1μm〜200μmである。
1つの実施形態においては、上記ガスバリア層へのレーザー光照射による上記ガスバリア層表面の変形量が、上記ガスバリア層の垂直変位で、0.6μm以上である。
1つの実施形態においては、上記粘着シートの突き刺し強度が、10mN〜5000mNである。
1つの実施形態においては、上記粘着シートの法線方向の伸びが、0.1mm以上である。
1つの実施形態においては、上記中間層が、熱可塑性樹脂を含む。
1つの実施形態においては、上記中間層が、スチレン系エラストマーから形成される樹脂フィルムである。
1つの実施形態においては、上記中間層が、硬化型樹脂を含む。
1つの実施形態においては、上記硬化型樹脂が、紫外線硬化型樹脂である。
本発明の別の局面によれば、電子部品の処理方法が提供される。この電子部品の処理方法は、上記粘着シート上に電子部品を貼着すること、および、該粘着シートにレーザー光を照射して該粘着シートから該電子部品を剥離することを含む。
1つの実施形態においては、上記電子部品の剥離が、位置選択的に行われる。
1つの実施形態においては、上記粘着シートに上記電子部品を貼着した後、該粘着シートから該電子部品を剥離する前に、該電子部品に所定の処理を行うことを含む。
1つの実施形態においては、上記処理が、グラインド加工、ダイシング加工、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、エッチング、蒸着、モールディング、回路形成、検査、検品、洗浄、転写、配列、リペアまたはデバイス表面の保護である。
1つの実施形態においては、上記電子部品の処理方法は、上記粘着シートから上記電子部品を剥離した後、電子部品を別のシートに配置することを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型電子部品(例えば、100μm□以下サイズのチップ)を良好に仮固定し得る粘着シートであって、レーザー光照射によりガス発生し得るガス発生層を備えることにより、当該小型電子部品を良好に剥離させ得る粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による粘着シートの概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による粘着シートの概略断面図である。
図3】突き刺し強度および法線方向の伸びの測定方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.粘着シートの概要
図1は、本発明の好ましい実施形態による粘着シートの概略断面図である。粘着シート100は、ガス発生層10と、ガス発生層10の少なくとも片面に配置されたガスバリア層20とを備える。ガス発生層10は、レーザー光照射によりガスを発生する。より詳細には、ガス発生層10は、レーザー光照射によってその成分がガス化することにより、ガスを発生させる層である。レーザー光としては、代表的には、UVレーザー光が用いられる。ガスバリア層20は、粘着シート(実質的にはガス発生層)にレーザー光を照射することにより、その表面が変形し得る。1つの実施形態においては、当該変形は、ガス発生層10から生じるガスに起因し、ガスバリア層20のガス発生層10とは反対側に生じ得る。レーザー光としては、代表的には、UVレーザー光が用いられる。
【0010】
1つの実施形態においては、ガスバリア層20は、粘着剤層21を含む。代表的には、粘着剤層21は、粘着シート100の最外側に配置され得る。
【0011】
本発明の粘着シートは、粘着剤層に電子部品等の被加工体を貼着して用いられ得る。本発明の粘着シートは、ガス発生層を備え、レーザー光照射により微小な範囲で部分的にガスを発生させる。当該ガス発生に起因して、粘着剤層に変形が生じ、その結果、レーザー光が照射された部分において、剥離性が発現する。代表的には、レーザー光はガス発生層の粘着剤層とは反対側から照射される。本発明においては、上記のように、ガスバリア層が配置されているため、ガス発生層から発生したガスの不要な抜けが防止され、レーザー光照射により良好に粘着剤層が変形する。本発明によれば、上記のようにして、微小な範囲で変形を生じさせることができるため、極めて微細な小型電子部品を加工する際にも当該小型電子部品を良好に剥離させることができる。また、剥離を要する小型電子部品と、剥離を要さない小型電子部品が隣り合って仮固定されている場合であっても、剥離対象の箇所で剥離し、剥離対象外の箇所では剥離しないこと、すなわち、剥離を要する小型電子部品のみを剥離させることができ、小型電子部品の不要な脱離を防止することもできる。また、上記粘着シートは、剥離時の指向性に優れ、所望の箇所でのみ剥離が可能であり、破損が防止され、かつ、糊残りが少ない点でも有利である。なお、剥離時の指向性とは、小型電子部品などの被着体を該粘着シートから剥離して、ある一定の距離が離れた場所を狙って射出する際の位置精度を表す指標であり、当該指向性に優れていれば、剥離の際に被着体が予期せぬ方向に飛んでしまうことが防止される。
【0012】
ガスバリア層の変形とは、ガスバリア層の法線方向(厚み方向)と水平方向(厚み方向と直交する方向)に生じる変位を意味する。ガスバリア層の変形は、例えば、波長355nm、ビーム径約20μmφのUVレーザー光を用いて、0.80mW出力、周波数40kHzでパルススキャンすることでガス発生層からガスを発生させることにより生じる。変形後の形状は、例えば、パルススキャンした任意の1スポットを、レーザー光照射から1分後、共焦点レーザー顕微鏡もしくは非接触型干渉顕微鏡(WYKO)などの測定から観測される。その形状は、発泡(凸)や貫通孔(凹凸)、くぼみ(凹)でもよく、これらの変形により剥離性が生じ得る。法線方向に電子部品を効率よく剥離するには、レーザー光照射前後の法線方向の変位変化が大きい方が好ましく、特に発泡形状を形成するものが適している。発泡(凸)は未照射部の粘着シート表面を基準とし、最高点を垂直変位Y、半値全幅を水平変位X(直径)として定義する。レーザー光照射後に穴を形成する貫通孔(凹凸)とくぼみ(凹)に関しては、最高点と最低点の差を垂直変位Y、穴の直径を水平変位Xと定義する。以下、レーザー光照射により変形した部分を「変形部」ともいう。ガスバリア層の垂直変位は、好ましくは0.6μm以上であり、より好ましくは0.7μm以上であり、さらに好ましくは1.0μm以上である。このような範囲であれば、剥離性に優れ、剥離時の指向性に優れる。また、所望の方向に精度よく剥離することができ、その結果、糊残り、破損等を防止することができる。当該垂直変位の上限は、例えば、10μm(好ましくは20μm)である。ガスバリア層の水平変位は、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下である。このような範囲であれば、小さな被着体について、所望の箇所でのみの剥離を好ましく行うことができる。また、被着体が狭い間隔で配列されている場合にも、同様の効果が期待できる。当該水平変位の下限は、例えば、3μm(好ましくは4μm)である。
【0013】
図2は、本発明の別の実施形態による粘着シートの概略断面図である。粘着シート200において、ガスバリア層20は、中間層22をさらに含む。粘着シート200は、粘着剤層21と、中間層22と、ガス発生層10とをこの順に含む。中間層を設けることにより、変形部形状を容易に制御することができるようになる。また、中間層を設けることにより、ガスバリア性が向上して、より好ましく変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。中間層は、単層であってもよく、複層であってもよい。
【0014】
図示していないが、上記粘着シートは、その他の層をさらに備え得る。例えば、ガス発生層のガスバリア層とは反対側の面に、基材、別の粘着剤層等が設けられていてもよい。基材としては、例えば、任意の適切な樹脂から形成されたフィルムが用いられる。
【0015】
本発明の粘着シートにおいては、上記ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(1)で算出される値以下であり、かつ、上記ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(2)で算出される値以上である。
35011×EXP(−0.812×log10(Er×10))・・・(1)
20081×EXP(−1.145× log10(Er×10))・・・(2)
Erは、ガスバリア層の高弾性部分のナノインデンテーション法による弾性率(MPa)である。
【0016】
より好ましくは、上記ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(3)で算出される値以下であり、かつ、上記ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(4)で算出される値以上である。
20023×EXP(−0.761×log10(Er×10))・・・(3)
18923×EXP(−1.028× log10(Er×10))・・・(4)
さらに好ましくは、上記ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(5)で算出される値以下であり、かつ、上記ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(6)で算出される値以上である。
12546×EXP(−0.728×log10(Er×10))・・・(5)
18096×EXP(−0.949× log10(Er×10))・・・(6)
【0017】
本明細書において、「ガスバリア層の高弾性部分」とは、ガスバリア層が単層構成である場合(例えば、粘着剤層単層で構成される場合)にはガスバリア層そのもの(粘着剤層単層で構成される場合には粘着剤層)を意味し、ガスバリア層が複層構成である場合(例えば、粘着剤層と中間層とから構成される場合)には、弾性率が最も高い層を意味する。1つの実施形態においては、ガスバリア層が中間層と粘着剤層と含む場合、「ガスバリア層の高弾性部分の厚み」は中間層の厚みに相当し得、「ガスバリア層の高弾性部分の25℃のおけるナノインデンター法による弾性率」は、中間層の当該弾性率に相当し得る。
【0018】
ナノインデンテーション法による弾性率は、ダイヤモンド製のBerkovich型(三角錐型)探針を測定対象層の切り出した断面に垂直に押し当てることで得られる変位-荷重ヒステリシス曲線を、測定装置付帯のソフトウェア(triboscan)で数値処理することで得られる。本明細書において、弾性率とは、ナノインデンター(Hysitron Inc社製Triboindenter TI−950)を用いて、所定温度(25℃)における単一押し込み法により、押し込み速度約500nm/sec、引き抜き速度約500nm/sec、押し込み深さ約1500nmの測定条件で、測定された弾性率である。なお、本明細書において、断面または表面を言わず、単に、ナノインデンテーション法による弾性率というとき、当該弾性率は、断面のナノインデンテーション法による弾性率を意味する。
【0019】
本発明においては、ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が上記式(1)で算出される値以下であるため、ガスバリア層が十分に変形して、剥離性に優れる粘着シートを提供することができる。また、ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が上記式(2)で算出される値以上であるため、ガスバリア層の過剰な変形が防止され、破れ等の不具合が生じがたい粘着シートを提供することができる。すなわち、本発明においては、ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)の上限および下限が、上記式(1)および(2)を満足するように構成されていることにより、ガス発生により好ましく変形して、変形部分の破裂等も生じがたく、小型電子部品を加工する際にも当該小型電子部品を良好に(すなわち、剥離性よく、選択的に、糊残りを防止して)剥離させることができる。
【0020】
本発明の粘着シートの粘着剤層のSUS430に対する粘着力は、好ましくは0.1N/20mm以上であり、より好ましくは0.2N/20mm〜50N/20mmであり、さらに好ましくは0.5N/20mm〜40N/20mmであり、特に好ましくは0.7N/20mm〜20N/20mmであり、最も好ましくは1N/20mm〜10N/20mmである。このような範囲であれば、例えば、電子部品の製造に用いられる仮固定用シートとして、良好な粘着性を示す粘着シートを得ることができる。本明細書において粘着力とは、23℃の環境下で、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、引張速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力をいう。
【0021】
1つの実施形態においては、上記ガス発生層は所定の粘着力を有する。本発明の粘着シートのガス発生層のSUS430に対する粘着力は、好ましくは0.1N/20mm以上であり、より好ましくは0.5N/20mm〜50N/20mmであり、さらに好ましくは1N/20mm〜40N/20mmであり、特に好ましくは1.5N/20mm〜30N/20mmであり、最も好ましくは2N/20mm〜20N/20mmである。このような範囲であれば、例えば、電子部品の製造に用いられる仮固定用シートとして、良好な粘着性を示す粘着シートを得ることができる。
【0022】
本発明の粘着シートの厚さは、好ましくは2μm〜200μmであり、より好ましくは3μm〜150μmであり、さらに好ましくは5μm〜120μmである。
【0023】
本発明の粘着シートの水蒸気透過率は、好ましくは5000g/(m・day)以下であり、より好ましくは4800g/(m・day)以下であり、さらに好ましくは4500g/(m・day)以下であり、さらに好ましくは4200g/(m・day)以下である。このような範囲の水蒸気透過率を有する粘着シートにおいては、レーザー光照射によって生じるガスの抜けだしが防止され、ガスバリア層に優れた形状の変形部が形成される。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。本発明の粘着シートの水蒸気透過率は小さいほど好ましいが、その下限値は、例えば、0.1g/(m・day)である。水蒸気透過率は、30℃、90%RHの雰囲気下において、JIS K7129Bに準拠した測定法によって測定され得る。
【0024】
本発明の粘着シートの突き刺し強度は、好ましくは10mN〜5000mNであり、より好ましくは30mN〜4000mNであり、さらに好ましくは50mN〜3000mNであり、特に好ましくは100mN〜2000mNである。このような範囲であれば、ガス発生により好ましく変形して、変形部分の破裂等も生じがたい粘着シートを得ることができる。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。突き刺し強度は、図3に示すように、圧縮試験機6(カトーテック社製、商品名「KES−G5」)を用いて、直径11.28mmの円形開口部を有する試料ホルダー5A、5Bにサンプル4(例えば、粘着シート)を挾持して測定される。より詳細には、23℃の測定温度下、当該円形開口部の円形開口部の中心において、突き刺し針(曲率半径:1mm)をサンプルに突き刺し(突き刺し速度:0.1mm/s)、破壊点における最大荷重を突き刺し強度とすることができる。なお、粘着シートの突き刺し強度は、ガスバリア層の機械的特性に依存する特性であり得る。
【0025】
上記粘着シートの法線方向の伸びは、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上であり、さらに好ましくは0.8mm以上である。このような範囲であれば、バリア層表面に径の小さい凸部を形成することができる。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。粘着シートの法線方向の伸びの上限は、例えば、50mmである。法線方向の伸びは、上記突き刺し強度の測定において、破壊点における突き刺し針を押し込んだ距離に相当し、面方向のサンプル(例えば、粘着シート)の伸びを意味する。
【0026】
本発明の粘着シートのヘイズ値は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは0.1%〜40%であり、さらに好ましくは0.2%〜30%である。このような範囲であれば、被着体(例えば、電子部品を仮固定するための台)を粘着シート越しに視認することが可能となり、例えば、電子部品の仮固定位置を示すために固定台に設けたマーキングの視認性に優れる粘着シートを得ることができる。本発明の粘着シートは、当該粘着シートが備える各層に不溶性のフィラーを含有させることなく構成することができるため、上記のようにヘイズ値が小さく被着体視認性に優れる粘着シートとすることができる。このような効果は、不溶性のフィラー(例えば、熱膨張性微小球)を含む粘着シートでは得られない優れた効果である。
【0027】
上記粘着シートの波長360nmの紫外線透過率は、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下であり、最も好ましくは5%以下である。粘着シートの波長360nmの紫外線透過率の下限は、例えば、0%(好ましくは0.05%、より好ましくは0.1%)である。
【0028】
上記粘着シートの10%重量減少温度は、好ましくは200℃〜500℃であり、より好ましくは220℃〜450℃であり、さらに好ましくは250℃〜400℃であり、特に好ましくは270℃〜370℃である。このような範囲であれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。粘着シートの10%重量減少温度とは、粘着シートを昇温した際のTGA分析において、昇温前の重量に対して10重量%減少した(すなわち、粘着シートの重量が照射前の重量に対して90%となった)時点での温度を意味する。
【0029】
B.ガス発生層
ガス発生層は、紫外線吸収可能な層であり得る。1つの実施形態においては、ガス発生層は、紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤を含むことにより、レーザー光を吸収してガス化し得るガス発生層を形成することができる。代表的には、ガス発生層は、紫外線吸収剤と粘着剤Aとを含む。好ましくは、紫外線吸収剤は、粘着剤Aに溶解して存在している。紫外線吸収剤が、粘着剤Aに溶解して存在していれば、ガスバリア層のいずれの箇所においても変形部(例えば、凹凸部)を発生させ得、かつ、変形部(例えば、凹凸部)の形状にバラツキが少ない粘着シートを得ることができる。このような粘着シートを用いれば、所望の箇所に精度よく変形部(例えば、凹凸部)を発生させることができ、本発明の効果は顕著となる。なお、本明細書において、「粘着剤に溶解して存在している」状態とは、紫外線吸収剤が粒子としてガス発生層中に存在していないことを意味する。より具体的には、上記ガス発生層には、X線CTによるガス発生層断面内の粒子分布測定において、粒子径10μm以上の紫外線吸収剤が含まれていないことが好ましい。なお、ガス発生層は、粘着剤に不溶の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。1つの実施形態においては、ガス発生層中の不溶成分の有無および含有量は、ガス発生層のヘイズ値により評価され、ヘイズ値が小さいほど、ガス発生層中の不溶成分の含有量は少ないと評価される。好ましくは、ガス発生層は、粘着剤に不溶の成分を実質的に含まない。
【0030】
上記ガス発生層(ガス発生層断面)のナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは0.01MPa〜1000MPaであり、より好ましくは0.05MPa〜800MPaである。このような範囲であれば、ガス発生によるガス発生層の形状変化が好ましく生じ、その結果、ガスバリア層に優れた形状の変形部が形成される。なお、ガス発生層の弾性率は、該当する層に含まれる材料の種類、材料を構成するベースポリマーの構造、該当する層に添加される添加剤の種類・量等により、調整することができる。
【0031】
上記ガス発生層表面のナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは0.01MPa〜1000MPaであり、より好ましくは0.05MPa〜800MPaである。このような範囲であれば、ガス発生によるガス発生層の形状変化が好ましく生じ、その結果、ガスバリア層に優れた形状の変形部が形成される。ナノインデンテーション法による弾性率とは、圧子を試料(例えば、粘着面)に押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さとを負荷時、除荷時にわたり連続的に測定し、得られた負荷荷重−押し込み深さ曲線から求められる弾性率をいう。ナノインデンテーション法による弾性率は、ダイヤモンド製のBerkovich型(三角錐型)探針を垂直に押し当てることで得られる変位−荷重ヒステリシス曲線を、測定装置付帯のソフトウェア(triboscan)で数値処理することで得られる。本明細書において、表面のナノインデンテーション法による弾性率とは、ナノインデンター(Hysitron Inc社製Triboindenter TI−950)を用いて、所定温度(25℃)における単一押し込み法により、押し込み速度約500nm/sec、引き抜き速度約500nm/sec、押し込み深さ約3000nmの測定条件で、測定された弾性率である。なお、ガス発生層の弾性率は、該当する層に含まれる材料の種類、材料を構成するベースポリマーの構造、該当する層に添加される添加剤の種類・量等により、調整することができる。本発明においては、断面を測定面として上記方法により測定されるナノインデンテーション法による弾性率と、表面を測定面として上記方法により測定されるナノインデンテーション法による弾性率とには、有意な差はなく、断面からの測定が困難な場合は表面から測定した値を断面からの測定値として採用し得る。
【0032】
上記ガス発生層のガス化開始温度は、好ましくは150℃〜500℃であり、より好ましくは170℃〜450℃であり、さらに好ましくは190℃〜420℃であり、特に好ましくは200℃〜400℃である。このような範囲であれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。なお、本明細書において、ガス発生層のガス化開始温度とは、粘着シートを昇温した際のEGA分析から算出されるガス発生立ち上がり温度を意味する。ガス発生立ち上がり温度とは、EGA分析から得られるEGA/MSスペクトルの最大ガス発生ピークの半値に到達する温度で定義される。ガス化開始温度が低いほど、レーザー光照射された際にガスが発生し始める温度は低くなり、より小さな出力でレーザー光照射された場合にも十分なガス量が発生する。1つの実施形態においては、ガス発生層のガス化開始温度は、紫外線吸収剤のガス化開始温度に相当する。
【0033】
上記ガス発生層の10%重量減少温度は、好ましくは150℃〜500℃であり、より好ましくは170℃〜450℃であり、さらに好ましくは200℃〜400℃である。このような範囲であれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。ガス発生層の10%重量減少温度とは、粘着シートを昇温した際(例えば、レーザー光照射により昇温した際)のTGA分析において、ガス発生層の重量が、昇温前の重量に対して10重量%減少した(すなわち、ガス発生層の重量が昇温前の重量に対して90%となった)時点での温度を意味する。
【0034】
上記ガス発生層の厚みは、好ましくは0.1μm〜50μmであり、より好ましくは1μm〜40μmであり、さらに好ましくは2μm〜30μmであり、特に好ましくは5μm〜20μmである。このような範囲であれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。
【0035】
上記ガス発生層は、ナノインデンテーション法による弾性率Er(gas)[単位:MPa]と厚みh(gas)[単位:μm]が、下記式(i)を満たす。
Log(Er(gas)×10)≧8.01×h(gas)−0.116・・・(i)
本発明においては、ガス発生層が上記式(1)を満足するように構成されていることにより、ガス発生層から発生したガスによる過度な変形が防止され、レーザー光照射により良好に粘着シートが変形する。このようなガス発生層を形成することにより、過度な変形を防止する層として厚いバリア層を配置することなく、微小な範囲での表面変形を生じさせることができ、ガスバリア層を柔軟に構成させることができる。
【0036】
1つの実施形態においては、ナノインデンテーション法による弾性率Er(gas)[単位:MPa]と厚みh(gas)[単位:μm]が、下記式(ii)を満たす。1つの実施形態においては、ナノインデンテーション法による弾性率Er(gas)[単位:MPa]と厚みh(gas)[単位:μm]が、下記式(iii)を満たす。
Log(Er(gas)×10)≧7.66×h(gas)−0.092・・・(ii)
Log(Er(gas)×10)≧7.52×h(gas)−0.081・・・(iii)
このような範囲であれば、上記効果がより顕著となる。
【0037】
1つの実施形態においては、ナノインデンテーション法による弾性率Er(gas)[単位:MPa]と厚みh(gas)[単位:μm]は、下記式(iv)をさらに満たす。
Log(Er(gas)×10)≦47.675×h(gas)−0.519・・・(iv)
【0038】
上記ガス発生層の波長360nmの紫外線透過率は、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下であり、最も好ましくは5%以下である。ガス発生層の波長360nmの紫外線透過率の下限は、例えば、0%(好ましくは0.05%、より好ましくは0.1%)である。
【0039】
上記ガス発生層のヘイズ値は、好ましくは55%以下であり、より好ましくは0.1%〜50%であり、さらに好ましくは0.5%〜40%である。
【0040】
B−1.紫外線吸収剤
上記紫外線吸収剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な紫外線吸収剤が用いられ得る。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。なかでも好ましくは、トリアジン系紫外線吸収剤またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤である。特に、粘着剤Aとしてアクリル系粘着剤を用いる場合に、当該アクリル系粘着剤のベースポリマーとの相溶性が高いことから、トリアジン系紫外線吸収剤は好ましく用いられ得る。トリアジン系紫外線吸収剤は、水酸基を有する化合物から構成されていることがより好ましく、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物から構成された紫外線吸収剤(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)であることが特に好ましい。
【0041】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10−C16(主としてC12−C13)アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商品名「TINUVIN 400」、BASF社製)、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−[3−(ドデシルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物(商品名「TINUVIN 405」、BASF社製)、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(商品名「TINUVIN 460」、BASF社製)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(商品名「TINUVIN 1577」、BASF社製)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]−フェノール(商品名「アデカスタブ LA−46」、(株)ADEKA製)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(商品名「TINUVIN 479」、BASF社製)、BASF社製の商品名「TINUVIN 477」などが挙げられる。
【0042】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系化合物)としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(商品名「TINUVIN PS」、BASF社製)、ベンゼンプロパン酸および3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C7−9側鎖および直鎖アルキル)のエステル化合物(商品名「TINUVIN 384−2」、BASF社製)、オクチル3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートおよび2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2イル)フェニル]プロピオネートの混合物(商品名「TINUVIN 109」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 900」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 928」、BASF製)、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物(商品名「TINUVIN 1130」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(商品名「TINUVIN P」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 234」、BASF社製)、2−[5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 326」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(商品名「TINUVIN 328」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 329」、BASF社製)、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](商品名「TINUVIN 360」、BASF社製)、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(商品名「TINUVIN 213」、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール(商品名「TINUVIN 571」、BASF社製)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(商品名「Sumisorb 250」、住友化学(株)製)、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール(商品名「SEESORB 703」、シプロ化成社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール(商品名「SEESORB 706」、シプロ化成社製)、2−(4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール(シプロ化成社製の商品名「SEESORB 7012BA」)、2−tert−ブチル−6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール(商品名「KEMISORB 73」、ケミプロ化成社製)、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール](商品名「アデカスタブ LA−31」、(株)ADEKA製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−セルロース(商品名「アデカスタブ LA−32」、(株)ADEKA製)、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェノール(商品名「アデカスタブ LA−36」、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0043】
上記紫外線吸収剤を構成する化合物の分子量は、好ましくは200〜1500であり、より好ましくは250〜1200であり、さらに好ましくは300〜1000である。このような範囲であれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。
【0044】
上記紫外線吸収剤の最大吸収波長は、好ましくは300nm〜450nmであり、より好ましくは320nm〜400nmであり、さらに好ましくは330nm〜380nmである。
【0045】
上記紫外線吸収剤の含有割合は、ガス発生層100重量部に対して、好ましくは1重量部〜100重量部であり、より好ましくは1重量部〜50重量部であり、さらに好ましくは5重量部〜30重量部である。このような範囲であれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。
【0046】
B−2.粘着剤A
上記ガス発生層に含まれる粘着剤Aとしては、感圧粘着剤Aが好ましく用いられる。粘着剤Aとしては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、等が挙げられる。なかでも好ましくは、アクリル系粘着剤またはゴム系粘着剤であり、より好ましくはアクリル系粘着剤である。なお、上記粘着剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステルが挙げられる。なかでも、炭素数が4〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。
【0048】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。このような単量体成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム;ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、これらの変性体等の合成ゴム;等をベースポリマーとするゴム系粘着剤が挙げられる。
【0050】
上記ガス発生層から発生するガスは、炭化水素(好ましくは脂肪族炭化水素)系ガスであることが好ましい。炭化水素系ガスを発生し得るガス発生層は、例えば、炭化水素系化合物を主成分として構成される。ガス発生層は、ハロゲン元素を含む化合物を含有しないことが好ましい。発生するガスが、炭化水素系ガスであれば、被加工物である電子部品の腐食を防止することができる。このような効果は、ハロゲン元素を含む化合物を含有しないガス発生層を形成することにより、より顕著となる。ガス発生層からの発生イオン式量は、好ましくは10m/z〜800m/zであり、より好ましくは11m/z〜700m/zであり、さらに好ましくは12m/z〜500m/zであり、特に好ましくは13m/z〜400m/zである。
【0051】
上記粘着剤Aは、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤(例えば、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、炭化水素系粘着付与剤等)、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤)、顔料、染料、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0052】
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なかでも好ましくは、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤である。
【0053】
上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.1重量部〜20重量部であり、より好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
【0054】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1600」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1500NP」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト40E」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト70P」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールE−400」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールP−200」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX−611」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX−314」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX−512」)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.01重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.03重量部〜5重量部である。
【0055】
C.ガスバリア層
上記ガスバリア層とは、水蒸気透過率が10000/(m・day)以下である層を意味する。上記ガスバリア層の水蒸気透過率は、好ましくは7000g/(m・day)以下であり、より好ましくは5000g/(m・day)以下であり、さらに好ましくは4800g/(m・day)以下であり、特に好ましくは4500g/(m・day)以下であり、最も好ましくは4200g/(m・day)以下である。このような範囲であれば、優れた形状の変形部が形成され、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させ得る粘着シートを得ることができる。ガスバリア層の水蒸気透過率は小さいほど好ましいが、その下限値は、例えば、1g/(m・day)である。
【0056】
上記ガスバリア層の突き刺し強度は、好ましくは10mN〜5000mNであり、より好ましくは30mN〜4000mNであり、さらに好ましくは50mN〜3000mNであり、特に好ましくは100mN〜2000mNである。このような範囲であれば、ガスバリア層が良好に機能し、かつ、ガス発生による形状変化が好ましく生じ、その結果、ガスバリア層(粘着剤層)に優れた形状の変形部が形成される。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。
【0057】
本発明においては、ガスバリア層の突き刺し強度が上記範囲であることにより、ガスバリア性に優れるガスバリア層が形成される。また、ガス発生によるガスバリア層の形状変化が好ましく生じ、その結果、優れた形状の凹部が形成される。より具体的には、ガスバリア層の突き刺し強度が上記範囲であることにより、レーザー光を照射してガスが発生した際に、当該ガスバリア層が厚み方向に形状変化しやすくなり、その結果、例えば、径の小さい凸部を形成することができる。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。
【0058】
上記ガスバリア層の単位厚み当たりの突き刺し強度は、好ましくは2mN/μm〜1200mN/μmであり、より好ましくは3mN/μm〜1000mN/μmであり、さらに好ましくは5mN/μm〜700mN/μmである。このような範囲であれば、ガスバリア層が機能し、かつ、ガス発生による形状変化が好ましく生じ、その結果、ガスバリア層(粘着剤層)に優れた形状の変形部が形成される。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。「ガスバリア層の単位厚み当たりの突き刺し強度」は、ガスバリア層の突き刺し強度(mN)/ガスバリア層の厚み(μm)により求めることができる。
【0059】
上記ガスバリア層の高弾性部分のナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは0.01MPa〜10GPaであり、より好ましくは0.05MPa〜10GPaであり、さらに好ましくは0.1MPa〜10GPaであり、特に好ましくは0.5MPa〜9.8GPaである。このような範囲であれば、機械的特性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れるガスバリア層とすることができる。また、上記範囲で高弾性にすると、ガスバリア層の厚みを薄くすることができる。
【0060】
上記ガスバリア層の厚みは、好ましくは0.1μm〜200μmであり、より好ましくは0.5μm〜150μmであり、さらに好ましくは1μm〜100μmであり、特に好ましくは1.5μm〜50μmである。このような範囲であれば、好ましく変形し得るガスバリア層を形成することができる。
【0061】
上記ガスバリア層の波長360nmの紫外線透過率は、好ましくは50%〜100%であり、より好ましくは60%〜95%である。
【0062】
C−1.粘着剤層
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤Bを含む。粘着剤Bとしては、感圧粘着剤B1であってもよく、硬化型粘着剤B2であってもよい。
【0063】
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは0.1μm〜200μmであり、より好ましくは0.5μm〜150μmであり、さらに好ましくは1μm〜100μmであり、特に好ましくは2μm〜50μmである。このような範囲であれば、好ましい粘着力を有し、かつ、ガスバリア層として良好に機能する粘着剤層を形成することができる。
【0064】
上記粘着剤層の水蒸気透過率は、好ましくは20000g/(m・day)以下であり、より好ましくは10000g/(m・day)以下であり、さらに好ましくは7000g/(m・day)以下であり、さらに好ましくは5000g/(m・day)以下であり、特に好ましくは4800g/(m・day)以下であり、最も好ましくは4500g/(m・day)以下である。このような範囲であれば、粘着剤層がガスバリア層として良好に機能し、優れた形状の変形部が形成される。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。粘着剤層の水蒸気透過率は小さいほど好ましいが、その下限値は、例えば、100g/(m・day)である。
【0065】
上記粘着剤層の突き刺し強度は、好ましくは10mN〜3000mNであり、より好ましくは30mN〜2500mNであり、さらに好ましくは50mN〜2000mNであり、特に好ましくは100mN〜2000mNである。このような範囲であれば、粘着剤層がガスバリア層として良好に機能し、かつ、ガス発生による形状変化が好ましく生じ、その結果、優れた形状の変形部が形成される。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。
【0066】
上記粘着剤層の波長360nmの紫外線透過率は、好ましくは50%〜100%であり、より好ましくは60%〜95%である。
【0067】
C−1−1.感圧粘着剤B1
上記感圧粘着剤B1としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤等が挙げられる。なかでも好ましくは、アクリル系粘着剤またはゴム系粘着剤であり、より好ましくはアクリル系粘着剤である。感圧粘着剤を含む粘着剤層が含む粘着剤B1としては、B−2項で説明した粘着剤が用いられ得る。
【0068】
C−1−2.硬化型粘着剤B2
硬化型粘着剤B2としては、例えば、熱硬化型粘着剤、活性エネルギー線硬化型粘着剤等が挙げられる。好ましくは、活性エネルギー線硬化型粘着剤が用いられる。当該活性エネルギー線硬化型粘着剤により形成される上記粘着剤層は、活性エネルギー線を照射して形成された粘着剤層であり、すなわち、活性エネルギー線照射後に所定の粘着力を有する粘着剤層である。
【0069】
上記活性エネルギー線硬化型粘着剤を構成する樹脂材料としては、例えば、紫外線硬化システム(加藤清視著、総合技術センター発行(1989))、光硬化技術(技術情報協会編(2000))、特開2003−292916号公報、特許4151850号等に記載されている樹脂材料が挙げられる。より具体的には、母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)とを含む樹脂材料(B2−1)、活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(B2−2)等が挙げられる。
【0070】
上記母剤となるポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)等のゴム系ポリマー;シリコーン系ポリマー;アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記活性エネルギー線反応性化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素−炭素多重結合を有する官能基を複数有する光反応性のモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和官能基を有する化合物が好ましく用いられ、エチレン性不飽和官能基を有する(メタ)アクリル系化合物がより好ましく用いられる。エチレン性不飽和官能基を有する化合物は、紫外線によりラジカルを容易に生成するため、当該化合物を用いれば、短時間で硬化し得る粘着剤層を形成することができる。また、エチレン性不飽和官能基を有する(メタ)アクリル系化合物を用いれば、硬化後に適度な硬さを有する粘着剤層を形成することができる。光反応性のモノマーまたはオリゴマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物等の(メタ)アクリロイル基含有化合物;該(メタ)アクリロイル基含有化合物の2〜5量体;等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0072】
また、上記活性エネルギー線反応性化合物として、エポキシ化ブタジエン、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルシロキサン等のモノマー;または該モノマーから構成されるオリゴマーを用いてもよい。これらの化合物を含む樹脂材料(B2−1)は、紫外線、電子線等の高エネルギー線により硬化することができる。
【0073】
さらに、上記活性エネルギー線反応性化合物として、オニウム塩等の有機塩類と、分子内に複数の複素環を有する化合物との混合物を用いてもよい。該混合物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線)の照射により有機塩が開裂してイオンを生成し、これが開始種となって複素環の開環反応を引き起こして3次元網目構造を形成し得る。上記有機塩類としては、例えば、ヨードニウム塩、フォスフォニウム塩、アンチモニウム塩、スルホニウム塩、ボレート塩等が挙げられる。上記分子内に複数の複素環を有する化合物における複素環としては、オキシラン、オキセタン、オキソラン、チイラン、アジリジン等が挙げられる。
【0074】
上記母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物とを含む樹脂材料(B2−1)において、活性エネルギー線反応性化合物の含有割合は、母剤となるポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜500重量部であり、より好ましくは1重量部〜300重量部であり、さらに好ましくは10重量部〜200重量部である。
【0075】
上記活性エネルギー線反応性ポリマーとしては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素−炭素多重結合を有する活性エネルギー線反応性官能基を有するポリマーが挙げられる。好ましくは、エチレン性不飽和官能基を有する化合物(ポリマー)が用いられ、より好ましくはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが用いられる。活性エネルギー線反応性官能基を有するポリマーの具体例としては、多官能(メタ)アクリレートから構成されるポリマー等が挙げられる。該多官能(メタ)アクリレートから構成されるポリマーは側鎖に、炭素数が4以上のアルキルエステルを有することが好ましく、炭素数が6以上のアルキルエステルを有することがより好ましく、炭素数が8以上のアルキルエステルを有することがさらに好ましく、炭素数が8〜20のアルキルエステルを有することが特に好ましく、炭素数が8〜18のアルキルエステルを有することが最も好ましい。
【0076】
上記活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(B2−2)は、上記活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)をさらに含んでいてもよい。
【0077】
上記活性エネルギー線硬化型粘着剤は、活性エネルギー線の照射により硬化し得る。本発明の粘着シートにおいては、粘着剤を硬化させる前に被着体を貼着した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤を硬化させることにより、該被着体を密着させることができる。活性エネルギー線としては、例えば、ガンマ線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)、ラジオ波、アルファ線、ベータ線、電子線、プラズマ流、電離線、粒子線等が挙げられる。活性エネルギー線の波長、照射量等の条件は、用いる樹脂材料の種類等に応じて、任意の適切な条件に設定され得る。例えば、照射量10〜1000mJ/cmの紫外線を照射して、粘着剤を硬化させることができる。
【0078】
C−2.中間層
上記中間層の形態としては、例えば、樹脂層、粘着性を有する層等が挙げられる。
【0079】
1つの実施形態においては、上記中間層は、熱可塑性樹脂を含む。このような中間層は、熱可塑性樹脂を含む樹脂フィルム、熱可塑性樹脂から構成される粘着剤Cを含む層等であり得る。別の実施形態においては、上記中間層は、硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂)を含む。このような中間層は、硬化型樹脂を含む樹脂フィルム、硬化型粘着剤Dを含む層等であり得る。
【0080】
中間層の厚みは、好ましくは0.1μm〜200μmであり、より好ましくは0.5μm〜100μmであり、さらに好ましくは1μm〜50μmであり、特に好ましくは1μm〜30μmである。このような範囲であれば、ガスバリア層として良好に機能する中間層を形成することができる。
【0081】
上記中間層の水蒸気透過率は、好ましくは5000g/(m・day)以下であり、より好ましくは4800g/(m・day)以下であり、さらに好ましくは4500g/(m・day)以下であり、さらに好ましくは4200g/(m・day)以下である。このような範囲であれば、中間層がガスバリア層として良好に機能し、優れた形状の変形部が形成される。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。中間層の水蒸気透過率は小さいほど好ましいが、その下限値は、例えば、0.1g/(m・day)である。
【0082】
上記中間層の突き刺し強度は、好ましくは300mN〜5000mNであり、より好ましくは500mN〜4500mNであり、さらに好ましくは1000mN〜4000mNである。このような範囲であれば、中間層がガスバリア層として良好に機能し、かつ、ガス発生による形状変化が好ましく生じ、その結果、優れた形状の凸部が形成される。このような粘着シートを用いれば、精度よく小型被着体(例えば、電子部品)を剥離させることができる。
【0083】
上記中間層の波長360nmの紫外線透過率は、好ましくは50%〜100%であり、より好ましくは60%〜95%である。
【0084】
C−2−1.樹脂層としての中間層
樹脂層としての中間層は、例えば、樹脂フィルムから形成される。当該樹脂フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系エラストマー(例えば、SEBS等)、紫外線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。1つの実施形態においては、上記樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂から構成される。
【0085】
上記樹脂フィルムの厚みは、好ましくは0.1μm〜50μmであり、より好ましくは0.5μm〜30μmであり、さらに好ましくは1μm〜20μmである。
【0086】
C−2−2.粘着性を有する層としての中間層
粘着性を有する層としての中間層としては、感圧粘着剤を含む中間層、硬化型粘着剤を含む中間層等が挙げられる。好ましくは、硬化型粘着剤Cを含む中間層が配置される。特に、粘着剤層として、感圧粘着剤Aを含む粘着剤層と、硬化型粘着剤Cを含む中間層とを組み合わせれば、レーザー光照射により、より良好な変形部を形成し得る粘着シートを得ることができる。硬化型粘着剤Cとしては、C−1−2項で説明した粘着剤が用いられ得る。
【0087】
粘着性を有する層としての中間層の厚みは、好ましくは5μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜30μmである。
【0088】
D.粘着シートの製造方法
本発明の粘着シートは、任意の適切な方法により製造することができる。本発明の粘着シートは、例えば、所定の基材上に直接、粘着剤Aおよび紫外線吸収剤を含むガス発生層形成用組成物を塗工してガス発生層を形成し、当該ガス発生層上に粘着剤Bを含む粘着剤層形成用組成物を塗工して粘着剤層を形成する方法が挙げられる。1つの実施形態においては、粘着シートが中間層を有する場合、粘着剤層を形成する前に、中間層形成用組成物をガス発生層上に塗工して中間層を形成し、当該中間層上に粘着剤層形成用組成物を塗工して粘着剤層を形成させる。また、各層を別々に形成した後に貼り合わせて粘着シートを形成してもよい。
【0089】
上記組成物の塗工方法としては、任意の適切な塗工方法が採用され得る。例えば、塗布した後に乾燥して各層を形成することができる。塗布方法としては、例えば、マルチコーター、ダイコーター、グラビアコーター、アプリケーター等を用いた塗布方法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥する場合の加熱温度は、乾燥対象となる物質の特性に応じて、任意の適切な温度に設定され得る。また、各層の形態に応じて、活性エネルギー線照射(例えば、紫外線照射)が行われ得る。
【0090】
E.電子部品の加工方法
本発明の電子部品の処理方法は、上記粘着シートに電子部品を貼着すること、および、当該粘着シートにレーザー光を照射して、当該粘着シートから電子部品を剥離することを含む。電子部品としては、例えば、半導体チップ、LEDチップ、MLCC等が挙げられる。
【0091】
上記電子部品の剥離は、位置選択的に行われ得る。具体的には、複数の電子部品を粘着シートに貼着、固定し、電子部品の一部を剥離し、その他の電子部品は固定されたままとなるようにして電子部品の剥離が行われ得る。
【0092】
1つの実施形態においては、本発明の電子部品の処理方法は、粘着シートに電子部品を貼着した後、粘着シートから電子部品を剥離する前に、当該電子部品に所定の処理を行うことを含む。上記処理は特に限定されず、例えば、グラインド加工、ダイシング加工、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、エッチング、蒸着、モールディング、回路形成、検査、検品、洗浄、転写、配列、リペア、デバイス表面の保護等の処理が挙げられる。
【0093】
上記電子部品のサイズ(貼着面の面積)は、例えば、1μm〜250000μmである。1つの実施形態においては、電子部品のサイズ(貼着面の面積)が1μm〜6400μmの電子部品が処理に供され得る。別の実施形態においては、電子部品のサイズ(貼着面の面積)が1μm〜2500μmの電子部品が処理に供され得る。
【0094】
1つの実施形態においては、上記のとおり、複数の電子部品が粘着シート上に配置され得る。電子部品の間隔は、例えば、1μm〜500μmである。本発明においては、間隔を狭くして、被処理体を仮固定し得る点で有利である。
【0095】
レーザー光としては、例えば、UVレーザー光が用いられ得る。レーザー光の照射出力は、例えば、1μJ〜1000μJである。UVレーザー光の波長は、例えば、240nm〜380nmである。
【0096】
1つの実施形態においては、上記電子部品の処理方法は、電子部品の剥離後、当該電子部品を別のシート(例えば、粘着シート、基板等)に配置することを含む。
【実施例】
【0097】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。なお、下記評価においては、セパレータを剥離した粘着シートを用いた。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0098】
(1)弾性率
ナノインデンター(Hysitron Inc社製Triboindenter TI−950)を用いて、所定温度(25℃)における単一押し込み法により、押し込み速度約500nm/sec、引き抜き速度約500nm/sec、押し込み深さ約1500nmの測定条件で、ガスバリア層断面およびガス発生層断面(実施例10、11)の弾性率を測定した。

(2)突き刺し強度
図3に示すように、圧縮試験機6(カトーテック社製、商品名「KES−G5」)を用いて、直径11.28mmの円形開口部を有する試料ホルダー5A、5Bにサンプル4を挾持して測定した。より詳細には、23℃の測定温度下、当該円形開口部の円形開口部の中心において、突き刺し針(曲率半径:1mm)をサンプルに突き刺し(突き刺し速度:0.1mm/s)、破壊点における最大荷重を突き刺し強度とした。

(3)法線方向の伸び
上記(2)の測定において、破壊点における突き刺し針を押し込んだ距離を測定し、面方向のサンプルの伸びを法線方向の伸びとした。

(4)表面形状変化
粘着シートのガス発生層側(粘着剤層とは反対側)にガラス板(松波硝子社製、大型スライドグラスS9112(標準大型白縁磨No.2))を貼り合わせて測定サンプルを得た。測定サンプルのガラス板側から、波長355nm、ビーム径約20μmφのUVレーザー光を用いて、0.80mW出力、周波数40kHzでパルススキャンして、ガス発生層からガスを発生させた。パルススキャンした任意の1スポットに対応する粘着剤層表面を、レーザー光照射から24時間後、共焦点レーザー顕微鏡により観察して、垂直変位Yと水平変位X(直径;半値全幅)を測定した。
変位Yが8μm以上である場合、剥離性が顕著に優れ(表中、◎);変位Yが0.6μm以上8μm未満である場合、剥離性が良好であり(表中、〇);変位Yが0.6μm未満である場合、剥離性が不十分である(表中、×)。

(5)粘着力(ガス発生層側)
粘着シートの粘着剤層側に、PET#25を貼り合わせて測定サンプルを得た。測定サンプルのガス発生層側のSUS430に対する粘着力を、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、引張速度:300mm/min、剥離角度180°)により、測定した。

(6)粘着力(粘着剤層)
粘着シートのガス発生層側に、PET#25を貼り合わせて測定サンプルを得た。測定サンプルの粘着剤層側のSUS430に対する粘着力を、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、引張速度:300mm/min、剥離角度180°)により、測定した。
【0099】
[製造例1]粘着剤aの調製
トルエン中に、2−エチルヘキシルアクリレート30重量部と、エチルアクリレート70重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート4重量部と、メチルメタクリレート5重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.2重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系共重合体(ポリマーA)のトルエン溶液を得た。
ポリマーAのトルエン溶液(ポリマーA:100重量部)とイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」)3重量部と、界面活性剤(花王社製、商品名「エキセパールIPP」)5重量部とを混合して粘着剤aを調製した。粘着剤aの組成を表1に示す。
【0100】
[製造例2]粘着剤bの調製
マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS:スチレン部位/エチレン・ブチレン部位(重量比)=30/70、酸価:10(mg−CHONa/g)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「タフテックM1913」)100重量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−C」)3重量部と、脂肪酸エステル系界面活性剤(花王社製、商品名「エキセパールIPP」、分子量:298.5、アルキル基の炭素数:16)3重量部と、溶媒としてのトルエンとを混合して、粘着剤aを得た。粘着剤aの組成を表1に示す。
【0101】
[製造例3]粘着剤cの調製
酢酸エチル中に、2−エチルヘキシルアクリレート95重量部と、アクリル酸5重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.15重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系共重合体(ポリマーA2)の酢酸エチル溶液を得た。
ポリマーA2の酢酸エチル溶液(ポリマーA2:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−C」)1重量部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」)3重量部とを混合して粘着剤cを調製した。粘着剤cの組成を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
[製造例4]中間層形成用組成物aの調製
酢酸エチル中に、2−エチルヘキシルアクリレート30重量部と、メチルアクリレート70重量部と、アクリル酸10重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.2重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系共重合体(ポリマーB)の酢酸エチル溶液を得た。
ポリマーBの酢酸エチル溶液(ポリマーB:100重量部)とエポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学社製、商品名「テトラッドC」)1重量部と、UVオリゴマー(三菱ケミカル社製、商品名「紫光UV−1700B」)50重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「Omnirad127」)3重量部とを混合して中間層形成用組成物aを調製した。中間層形成用組成物aの組成を表2に示す。
【0104】
[製造例5]中間層形成用組成物bの調製
マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS:スチレン部位/エチレン・ブチレン部位(重量比)=30/70、酸価:10(mg−CHONa/g)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「タフテックM1913」)100重量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−C」)3重量部と、脂肪酸エステル系界面活性剤(花王社製、商品名「エキセパールIPP」、分子量:298.5、アルキル基の炭素数:16)3重量部と、溶媒としてのトルエンとを混合して、中間層形成用組成物bを得た。中間層形成用組成物bの組成を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
[製造例6]ガス発生層形成用組成物aの調製
製造例1と同様にして、ポリマーAを得た。
ポリマーAのトルエン溶液(ポリマーA:100重量部)とイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」)1.5重量部と、紫外線吸収剤(BASF社製、商品名「Tinuvin477」)20重量部とを混合してガス発生層形成用組成物aを調製した。ガス発生層形成用組成物aの組成を表3に示す。
【0107】
[製造例7]ガス発生層形成用組成物bの調製
酢酸エチル中に、2−エチルヘキシルアクリレート95重量部と、アクリル酸5重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.15重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系共重合体(ポリマーC)の酢酸エチル溶液を得た。
ポリマーCの酢酸エチル溶液(ポリマーC:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−C」)0.1重量部と、紫外線吸収剤(BASF社製、商品名「Tinuvin477」)20重量部とを混合してガス発生層形成用組成物bを調製した。ガス発生層形成用組成物bの組成を表3に示す。
【0108】
[製造例8]ガス発生層形成用組成物cの調製
マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS:スチレン部位/エチレン・ブチレン部位(重量比)=30/70、酸価:10(mg−CHONa/g)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「タフテックM1913」)100重量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−C」)3重量部と、紫外線吸収剤(BASF社製、商品名「Tinuvin477」)20重量部と、溶媒としてのトルエンとを混合して、ガス発生層形成用組成物cを調製した。ガス発生層形成用組成物cの組成を表3に示す。
【0109】
[実施例1]
製造例1で得た粘着剤aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:75μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが50μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層前駆層aを形成した。
製造例5で得たガス発生層形成用組成物aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが15μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上にガス発生層前駆層aを形成した。
上記粘着剤層前駆層aと上記ガス発生層前駆層aとをロール間でラミネートして貼り合わせ、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(粘着剤層/ガス発生層)を得た。
得られた粘着シートを上記評価(1)〜(6)に供した。結果を表3に示す。
【0110】
[実施例2]
粘着剤aに代えて粘着剤bを用い、粘着剤層の厚みを30μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表3に示す。
【0111】
[実施例3]
製造例1で得た粘着剤aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:75μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが7μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層前駆層aを形成した。
製造例3で得た中間層形成用組成物aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが15μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に中間層前駆層aを形成した。
次いで、上記粘着剤層前駆層aと上記中間層前駆層aとをロール間でラミネートして貼り合わせ、中間層前駆層側から500mJ/cmの条件でUV照射して、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれたガスバリア層前駆層aを得た。
製造例5で得たガス発生層形成用組成物aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが7μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上にガス発生層前駆層aを形成した。
上記ガスバリア層前駆層aの中間層前駆層a側のシリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、積層体前駆層aの中間層前駆層aと上記ガス発生層前駆層aとをロール間でラミネートして貼り合わせ、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(粘着剤層/中間層/ガス発生層)を得た。
得られた粘着シートを上記評価(1)〜(6)に供した。結果を表3に示す。
【0112】
[実施例4]
中間層の厚みを7μmとしたこと以外は、実施例3と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表3に示す。
【0113】
[実施例5]
中間層形成用組成物aに代えて、中間層形成用組成物bを用い、中間層の厚みを30μmとしたこと以外は、実施例3と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表3に示す。
【0114】
[実施例6]
中間層の厚みを15μmとしたこと以外は、実施例3と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表3に示す。
【0115】
[実施例7]
製造例1で得た粘着剤aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:75μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが7μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層前駆層aを形成した。
製造例5で得たガス発生層形成用組成物aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが7μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上にガス発生層前駆層aを形成した。
上記粘着剤層前駆層aを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー#2F51N」厚み:2μm)の片側に、ロール間でラミネートして貼り合わせた。
次いで、ガス発生層前駆層aを、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの粘着剤層前駆層aとは反対側に、ロール間でラミネートして貼り合わせた。
このようにして、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘着シート(粘着剤層/中間層/ガス発生層)を得た。
得られた粘着シートを上記評価(1)〜(6)に供した。結果を表3に示す。
【0116】
[実施例8]
厚み4.5μmのPETフィルムを用いたこと以外は、実施例7と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表3に示す。
【0117】
[実施例9]
厚み9μmのPETフィルムを用いたこと以外は、実施例7と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表3に示す。
【0118】
[実施例10]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:50μm)の一方の面に、ガス発生層形成用組成物bを溶剤揮発(乾燥)後の厚みが20μmとなるよう塗工して、ガス発生層を形成した。
次いで、粘着剤cを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるよう塗工して、粘着剤層を形成した。
次いで、ガス発生層と粘着剤層とを積層して、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムで保護された粘着シート(粘着剤層/ガス発生層/基材)を得た。
得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表4に示す。
【0119】
[実施例11]
ガス発生層形成用組成物bに代えて、ガス発生層形成用組成物cを用いたこと以外は、実施例10と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価に供した。結果を表4に示す。
【0120】
[比較例1]
製造例5で得たガス発生層形成用組成物aを、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが7μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上にガス発生層のみからなる粘着シートを形成した。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表5に示す。
【0121】
[比較例2]
粘着剤層の厚みを7μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表5に示す。
【0122】
[比較例3]
粘着剤層の厚みを2μmとしたこと以外は、実施例2と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表5に示す。
【0123】
[比較例4]
粘着剤層の厚みを60μmとしたこと以外は、実施例2と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表5に示す。
【0124】
[比較例5]
中間層の厚みを40μmとしたこと以外は、実施例3と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表5に示す。
【0125】
[比較例6]
中間層の厚みを2μmとしたこと以外は、実施例5と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表5に示す。
【0126】
[比較例7]
中間層の厚みを60μmとしたこと以外は、実施例5と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表5に示す。
【0127】
[比較例8]
厚み25μmのPETフィルムを用いたこと以外は、実施例7と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)から(6)に供した。結果を表5に示す。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【符号の説明】
【0131】
10 ガス発生層
20 ガスバリア層
21 粘着剤層
22 中間層
100、200 粘着シート

【要約】
小型電子部品(例えば、100μm□以下サイズのチップ)を良好に仮固定し、かつ、良好に剥離させ得る粘着シートを提供する。
本発明の粘着シートは、ガス発生層と、ガス発生層の少なくとも片側に配置されたガスバリア層とを含む粘着シートであって、該ガスバリア層が、該粘着シートへのレーザー光照射により、変形する層であり、該ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(1)で算出される値以下であり、かつ、該ガスバリア層の高弾性部分の厚み(μm)が、下記式(2)で算出される値以上である、粘着シート;
12546×EXP(−0.728×log10(Er×10))・・・(1)
18096×EXP(−0.949× log10(Er×10))・・・(2)
Erは、ガスバリア層の高弾性部分の25℃のおけるナノインデンテーション法による弾性率(MPa)である。
図1
図2
図3