特許第6890310号(P6890310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890310
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ヒンジ及び扉装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 3/14 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   E05D3/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-547343(P2019-547343)
(86)(22)【出願日】2019年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2019019709
(87)【国際公開番号】WO2019244532
(87)【国際公開日】20191226
【審査請求日】2019年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2018-115971(P2018-115971)
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】高松 真吾
(72)【発明者】
【氏名】田村 友明
【審査官】 加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−265386(JP,A)
【文献】 米国特許第05345654(US,A)
【文献】 米国特許第05412841(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/14
E05D 5/02
E05D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の内側面のほぞ穴に嵌まることが可能であり、上縁に取付けフランジとマージナルフランジとが突出するカップを備え、
前記取付けフランジの前記扉側の表面と前記マージナルフランジの前記扉側の表面との間に段差が形成されるヒンジにおいて、
前記取付けフランジの前記扉側の表面には、スペーサが着脱可能に取り付けられ、
前記取付けフランジ及び前記スペーサには、ねじが通る通し穴が形成され、
前記取付けフランジ及び前記スペーサを前記ねじによって扉に共締めすることが可能であり、
前記スペーサを前記取付けフランジに取り付けた状態において、前記スペーサの前記扉側の表面と前記マージナルフランジの前記扉側の表面とが実質的に同一平面にあるヒンジ。
【請求項2】
前記取付けフランジの周縁が、前記取付けフランジに凹陥部が形成されるように前記扉に向かって曲がっていて、
前記スペーサの周縁が、前記取付けフランジの前記周縁の外側に着脱可能に嵌まることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記スペーサには、前記取付けフランジの前記扉とは反対側の表面を覆うソケットカバーが着脱可能に係合する係合部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のヒンジと、
前記扉と、を備え、
前記扉の前記ほぞ穴に隣接する前記扉の前記内側面が前記スペーサと前記マージナルフランジとに接触することを特徴とする扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具等の扉の内側面のほぞ穴に嵌まることが可能なカップを備えるヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
家具等の扉の内側面のほぞ穴に嵌まることが可能なカップを備えるヒンジが知られている(特許文献1参照)。カップの上縁には、取付けフランジとマージナル(周辺)フランジが突出して形成される。取付けフランジは、扉のほぞ穴に隣接する扉の内側面に接触する。取付けフランジには、ねじ等の締結部材が通る通し穴が形成される。取付けフランジは、ねじ等の締結部材によって扉の内側面に取り付けられる。マージナルフランジは、扉の内側面のほぞ穴に嵌められる。マージナルフランジは、ほぞ穴の半径に合わせた半径を持ち、扇状に形成される。見栄えを良くするために、マージナルフランジは、ほぞ穴に嵌められるカップの浴槽状部とほぞ穴との間の隙間を覆う。
【0003】
上記のように、取付けフランジは、扉のほぞ穴に隣接する扉の内側面に接触する。一方、マージナルフランジは、扉のほぞ穴に嵌まる。このため、取付けフランジの下面(取付けフランジの扉側の表面)とマージナルフランジの下面(マージナルフランジの扉側の表面)との間には、段差が形成される。
【0004】
ところで、開き位置にある扉には、さらに開き方向のモーメントが働く場合がある。ねじ等の締結部材によってカップの取付けフランジを扉の内側面に取り付けるだけでは、このモーメントが働く場合の連結強度が不足する。連結強度を確保するために、カップの浴槽状部の底を扉のほぞ穴の底面に接触させることが行われている。カップの底部を扉のほぞ穴の底面に接触させることで、このモーメントに耐えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4797972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ヒンジの取付け状況によっては、カップの浴槽状部の底を扉のほぞ穴の底面に接触させることが困難な場合がある。例えば、板金製の扉の場合には、ほぞ穴の底面を形成するためのブラケットを扉に取り付ける必要があり、部品点数が増大する。また、木製の扉でも、例えば現場で扉にほぞ穴を加工する場合、扉のほぞ穴の深さをカップの深さに一致させるのは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、カップのマージナルフランジを利用してカップと扉との連結強度を確保することができるヒンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、扉の内側面のほぞ穴に嵌まることが可能であり、上縁に取付けフランジとマージナルフランジとが突出するカップを備え、前記取付けフランジの前記扉側の表面と前記マージナルフランジの前記扉側の表面との間に段差が形成されるヒンジにおいて、前記取付けフランジの前記扉側の表面には、スペーサが着脱可能に取り付けられ、前記取付けフランジ及び前記スペーサには、ねじが通る通し穴が形成され、前記取付けフランジ及び前記スペーサを前記ねじによって扉に共締めすることが可能であり、前記スペーサを前記取付けフランジに取り付けた状態において、前記スペーサの前記扉側の表面と前記マージナルフランジの前記扉側の表面とが実質的に同一平面にあるヒンジである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スペーサの扉側の表面とマージナルフランジの扉側の表面とが実質的に同一平面にあるので、ねじによって取付けフランジを扉の内側面に取り付ければ、スペーサだけでなく、マージナルフランジをほぞ穴に隣接する扉の内側面に接触させることができる。このため、マージナルフランジを利用してカップと扉との連結強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態のヒンジの斜視図である。
図2】本実施形態のヒンジのスペーサにソケットカバーを取り付けた状態の斜視図である。
図3】本実施形態のヒンジ、スペーサ、ソケットカバーの分解斜視図である。
図4】本実施形態のヒンジ、スペーサ、ソケットカバーの分解側面図である。
図5】カップの取付けフランジとマージナルフランジの断面図(図5(a)は全体断面図であり、図5(b)は図5(a)のb部拡大断面図)である。
図6】扉とスペーサ及びマージナルフランジとの接触面積を示す平面図である。
図7】本実施形態のヒンジを木製の扉に取り付けた例の斜視図(図7(a)は扉にカップを取り付けた状態、図7(b)は扉からカップを取り外した状態)である。
図8】本実施形態のヒンジを他の木製の扉に取り付けた例の斜視図(図8(a)は扉にカップを取り付けた状態、図8(b)は扉からカップを取り外した状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のヒンジを詳細に説明する。ただし、本発明のヒンジは種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態のヒンジ10の斜視図である。1は家具の本体、2は扉である。本体1には、アーム3が取り付けられる。扉2には、カップ4が取り付けられる。アーム3とカップ4には、2本のリンク6,7(図4参照)が回転可能に連結される。アーム3、カップ4、2本のリンク6,7によって4節回転連鎖が構成される。扉2は、板金製である。
【0014】
本体1には、ねじ等の締結部材8によって取付けプレート13が取り付けられる。アーム3は、公知の手法で取付けプレート13にワンタッチで着脱可能に取り付けられる。本体1に対する扉2の位置調節は、公知の位置調節ねじ9a,9b,9cによって行われる。
【0015】
カップ4は、扉2のほぞ穴2a(図3参照)に嵌められる浴槽状部11(図3参照)を有する。浴槽状部11の側壁11a(図4参照)には、リンク6,7の一端部が回転可能に連結される軸12a,12b(図4参照)が取り付けられる。リンク6,7の一端部は、浴槽状部11に入る。また、扉2が閉じ位置にあるとき、リンク6,7の一端部だけでなく、アーム3の扉2側の一端部も浴槽状部11に入る(図5(a)参照)。アーム3には、リンク6,7の他端部が回転可能に連結される軸12c,12dが取り付けられる(図4参照)。
【0016】
カップ4の上縁には、取付けフランジ15とマージナル(周辺)フランジ16a,16bが突出して形成される。取付けフランジ15は、扉2のほぞ穴2aに隣接する扉2の内側面2bに重なる。取付けフランジ15は、ねじ等の締結部材17によって扉2に取り付けられる。マージナルフランジ16a,16bは、扇状に形成される。カップ4は、金属板をプレス加工することにより製造される。
【0017】
取付けフランジ15の扉2側の表面(図1の下面)には、スペーサ21が取り付けられる。後述するように、スペーサ21は、取付けフランジ15に対応する形状をしていて、取付けフランジ15の扉2側表面とマージナルフランジ16a,16bの扉2側表面との間の段差を埋める。締結部材17によってカップ4を扉2に取り付ければ、スペーサ21とマージナルフランジ16a,16bとが扉2のほぞ穴2aに隣接する扉2の内側面2bに接触する。
【0018】
図2は、本実施形態のヒンジ10のスペーサ21にソケットカバー22を取り付けた状態の斜視図である。ソケットカバー22は、スペーサ21に対応する形状をしていて、取付けフランジ15の扉2とは反対側の表面(図1の上面)とスペーサ21とを覆う。
【0019】
図3は、本実施形態のヒンジ10、スペーサ21、ソケットカバー22の分解斜視図である。図4は、これらの部品の分解側面図である。扉2の側板24には、ブラケット25が取り付けられる。ブラケット25には、ほぞ穴2aが形成される。ほぞ穴2aの形状は、例えば四角形である。ほぞ穴2aの幅(ヒンジ10の軸12a〜12d方向の幅)は、カップ4の浴槽状部11の幅に略等しい。ブラケット25には、カップ4を取り付けるための締結部材17に螺合するねじ穴2eが形成される。
【0020】
図3に示すように、スペーサ21は、板状である。スペーサ21には、カップ4の浴槽状部11に形状を合わせた切欠き21aが形成される。スペーサ21の周縁21bは、取付けフランジ15に向かって突出する。スペーサ21の周縁21bは弾性変形可能であり、スペーサ21の周縁21bが取付けフランジ15の周縁15bに着脱可能に嵌る。スペーサ21には、締結部材17が通る通し穴21cが形成される。取付けフランジ15にも、締結部材17が通る通し穴15aが形成される。スペーサ21は、樹脂製である。
【0021】
ソケットカバー22は、箱状である。ソケットカバー22には、カップ4の浴槽状部11に形状を合わせた切欠き22aが形成される。ソケットカバー22の周縁22bは、スペーサ21に向かって突出する。ソケットカバー22の周縁22bは、スペーサ21の周縁21bの外側に着脱可能に嵌る。ソケットカバー22の周縁22bの内側面には、弾性変形可能なフック22cが設けられる。フック22cは、スペーサ21の周縁21bの凹状の係合部21dに係合する。なお、図3には、一つのフック22c、一つの係合部21dが図示されているが、実際には一対のフック22cがソケットカバー22の左右対称位置に設けられ、一対の係合部21dがスペーサ21の左右対称位置に設けられる。ソケットカバー22は、樹脂製である。
【0022】
図5は、カップ4の取付けフランジ15とマージナルフランジ16bの断面図(図1のV-V線断面図)である。上述のように、カップ4の上縁には、取付けフランジ15とマージナルフランジ16a,16bとが突出して形成される。図5(b)に示すように、取付けフランジ15の周縁15bは、取付けフランジ15に凹陥部15cが形成されるように扉2に向かって曲がっている。取付けフランジ15の扉2側の表面15dとマージナルフランジ16bの扉2側の表面16cとの間には、段差hが形成される。この段差hは、例えば0.5〜1.5mmである。スペーサ21は、この段差hを埋める。取付けフランジ15にスペーサ21を取り付けた状態において、スペーサ21の扉2側の表面21eとマージナルフランジ16bの扉2側の表面16cとが実質的に同一平面にある。スペーサ21の表面21eとマージナルフランジ16bの表面16cとが、扉2の内側面2bに接触する。カップ4の浴槽状部11は扉2の側板24には接触しておらず、浴槽状部11と扉2の側板24との間には隙間が開く。
【0023】
なお、図5(b)に示すように、扉2の閉じ位置において、本体1のエッジ1aがカップ4のマージナルフランジ16bに当たる。扉2の内側面2bと本体1のエッジ1aとの間には隙間gが開く。扉2の側板24の枠24a(図2も参照)は、扉2の内側面2bよりも本体1側に突出する。これにより、扉2を閉じたとき、本体1と扉2との間に隙間gが開くのを防止する。
【0024】
図6は、扉2の内側面2bとスペーサ21及びマージナルフランジ16a,16bとの接触面積を示す。S1は扉2の内側面2bとスペーサ21との接触面積を表し、S2は扉2の内側面2bとマージナルフランジ16aとの接触面積を表し、S3は扉2の内側面2bとマージナルフランジ16bとの接触面積を表す。開いた位置にある扉2にさらに開き方向のモーメントを働かせると、カップ4には締結部材17(図1を参照)を中心に図6で示すモーメントMが働く。本実施形態によれば、スペーサ21だけでなく、マージナルフランジ16a,16bも扉2の内側面2bに接触するので、カップ4がこのモーメントMに耐えることができ、カップ4と扉2との連結強度を確保することができる。
【0025】
本実施形態のヒンジによれば、さらに以下の効果を奏する。スペーサ21の周縁21bが取付けフランジ15の周縁15bの外側に着脱可能に嵌まるので、容易には脱落しないようにスペーサ21を取付けフランジ15に取り付けることができる。したがって、カップ4を扉2に取り付ける作業が容易になる。
【0026】
スペーサ21にソケットカバー22に係合する係合部21dを形成するので、カップ4に係合部を形成する必要がなくなり、カップ4の製造が容易になる。
【0027】
図7は、本実施形態のヒンジ10を木製の扉32に取り付けた例を示す。図7(a)は扉32にカップ4を取り付けた状態を示し、図7(b)は扉32からカップ4を取り外した状態を示す。扉32には、円形のほぞ穴32aが形成される。ほぞ穴32aの深さは、カップ4の浴槽状部11の深さと一致する。このような扉32にカップ4を取り付ける場合、カップ4の取付けフランジ15からスペーサ21を取り外す。そして、取付けフランジ15を締結部材17によって扉32の内側面32bに直接的に取り付ける。マージナルフランジ16a,16bは、扉32のほぞ穴32aに嵌まり、カップ4の浴槽状部11とほぞ穴32aとの間の隙間を覆う。マージナルフランジ16a,16bの上面は、扉32の内側面32bと実質的に同一平面にある。この例では、カップ4の浴槽状部11の底を扉32のほぞ穴32aの底面32cに接触させることができるので、カップ4と扉32との連結強度を確保することができる。
【0028】
図8は、本実施形態のヒンジ10を他の木製の扉42に取り付けた例を示す。図8(a)は扉42にカップ4を取り付けた状態を示し、図8(b)は扉42からカップ4を取り外した状態を示す。扉42には、四角形のほぞ穴42aが形成される。ほぞ穴42aの深さは、カップ4の浴槽状部11の深さに一致させることも、浴槽状部11の深さよりも深くすることもできる。このような扉42にカップ4を取り付ける場合、図3に示すカップ4と同様に、カップ4の取付けフランジ15にスペーサ21を取り付ける。そして、取付けフランジ15とマージナルフランジ16a,16bとの間の段差をスペーサ21で埋め、スペーサ21とマージナルフランジ16a,16bとを扉42の内側面42bに接触させる。これにより、カップ4と扉42との連結強度を確保することができる。カップ4の浴槽状部11の底を扉42のほぞ穴42aの底面42cに接触させれば、カップ4と扉42との連結強度をさらに向上させることができる。
【0029】
本明細書は、2018年6月19日出願の特願2018−115971に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
【符号の説明】
【0030】
2,42…扉
2a,42a…扉のほぞ穴
2b,42b…扉の内側面
4…カップ
10…ヒンジ
11…浴槽状部
15…取付けフランジ
15a…取付けフランジの通し穴
15b…取付けフランジの周縁
15c…取付けフランジの凹陥部
15d…取付けフランジの扉側の表面
16a,16b…マージナルフランジ
16c…マージナルフランジの扉側の表面
17…締結部材
21…スペーサ
21b…スペーサの周縁
21c…スペーサの通し穴
21d…スペーサの係合部
21e…スペーサの扉側表面
22…ソケットカバー
h…段差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8