特許第6890314号(P6890314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890314
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ペット用補助食品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/42 20160101AFI20210607BHJP
   A23K 10/20 20160101ALI20210607BHJP
   A23K 40/00 20160101ALI20210607BHJP
【FI】
   A23K50/42
   A23K10/20
   A23K40/00
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-205730(P2016-205730)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-64513(P2018-64513A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】516315731
【氏名又は名称】吉村 知子
(74)【代理人】
【識別番号】100175075
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 知子
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−262785(JP,A)
【文献】 特開2013−188209(JP,A)
【文献】 特開平06−319469(JP,A)
【文献】 特開2009−017811(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3178794(JP,U)
【文献】 特開2009−207487(JP,A)
【文献】 特表2003−532394(JP,A)
【文献】 特開2015−156846(JP,A)
【文献】 特開2009−153508(JP,A)
【文献】 特開2005−270100(JP,A)
【文献】 特開2008−005804(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0110880(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102469812(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103284019(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 − 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物由来の原料及び添加物を含まないペット用補助食品の製造方法であって、
(1)材料の鶏肉または豚肉をカットしてから煮る工程、
(2)煮た材料を冷ました後、フードプロセッサで攪拌してペースト状にする工程、
(3)ペースト状にした材料を成形する工程、及び
(4)成形した材料を48℃で12〜36時間乾燥する工程
を含む方法。
【請求項2】
焼く、炒める、及び揚げる工程を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
穀物由来の原料及び添加物を含まないペット用クッキーまたはケーキの製造方法であって、
(1)材料の鶏肉または豚肉を、カットして鍋に入れ、肉に被るくらいの水を入れてかき回してから煮る工程、
(2)煮た材料を冷ました後、フードプロセッサで攪拌してペースト状にする工程、
(3)ペースト状にした材料を、型を用いて、または切り分けて成形する工程、及び
(4)成形した材料を48℃で12〜36時間乾燥する工程
を含む方法。
【請求項4】
焼く、炒める、及び揚げる工程を含まない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
材料の鶏肉が鶏胸肉であり、豚肉が豚モモ肉である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用補助食品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般社団法人ペットフード協会の平成27年全国犬猫飼育実態調査によると、ペットは、生活に喜びを与えてくれる大切な存在、健康面や精神面及び人と人をつなぐコミュニケーションにおける重要な存在であるという結果が出ている(平成27年全国犬猫飼育実態調査 結果(一般社団法人ペットフード協会)http://www.petfood.or.jp/topics/img/160129.pdf)。
同調査によると、ペットの平均寿命は、犬14.85歳(前年14.17歳)、猫15.75歳(前年14.82歳)と延びており、これに伴い、人間と同様に生活習慣病や痴呆等健康上の問題が増加していると思われる。また同調査によると、毎日の食事(餌)だけでなく、ペットにおやつを与える飼い主が増加している。犬に対して市販のおやつを与える飼い主は、35.9%(前年33.8%)、猫に対して市販のおやつを与える飼い主は、25.3%(前年21.6%)である。
【0003】
これまでのペットフード・栄養補助食品・おやつは、肉や魚等のタンパク質源の他に、穀類、食塩、化学調味料、合成添加物を含むため、穀類を原因とするアレルギーの問題、グルテンによるLGS問題、または食塩や化学調味料、合成添加物による高血圧や糖尿病といったヒトの生活習慣病と同様の疾患の原因になるという問題があった。また、高温調理によりアクリルアミドが発生するという問題があった。
【0004】
例えば特許文献1には、乾燥後の表面の色つやをよくして商品としての見栄がよく、かつ食べやすい鶏肉を主原料とするペットフードが記載されている。同文献では、主原料である鶏肉の他に、つなぎとしての小麦粉と味付けのための食塩と化学調味料を添加した配合、そしてさらにカルシウム補強用としての魚粉を加えた配合が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2975569号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ペットの消化への負担、アレルギーの発生、穀物由来のグルテンによるLGS問題、及びアクリルアミドの発生を解消することが可能なペット用補助食品とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、タンパク源として、鶏肉のみ、または豚肉のみを原料とし、穀物由来の原料を含まないペット用補助食品である。
【0008】
また本発明は、(1)材料の鶏肉または豚肉を煮る工程、(2)煮た材料を冷ました後、攪拌してペースト状にする工程、(3)ペースト状にした材料を成形する工程、及び(4)成形した材料を低温乾燥する工程を含み、高温調理工程を含まないペット用補助食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ペットの消化への負担、アレルギーの発生、穀物由来のグルテンによるLGS問題、及びアクリルアミドの発生を解消することが可能なペット用補助食品とその製造方法を提供することが可能となる。さらに本発明は、化学調味料などの添加物を添加する必要がないため、これら添加物による高血圧や糖尿病といったヒトの生活習慣病と同様の疾患を予防し、ペットの健康維持・健康増進に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、鶏胸肉を使った焼かないバースデーケーキの一例を示す写真である。
図2図2は、鶏胸肉を使った焼かないハロウィンクッキーの一例を示す写真である。
図3図3は、鶏胸肉を使った焼かないハロウィンケーキの一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、タンパク源として、鶏肉のみ、または豚肉のみを原料とするペット用補助食品に関する。鶏肉由来または豚肉由来の単一の原料由来の単一のタンパク質を含むため、ペットの消化の負担を軽減することができる。さらに鶏肉は鶏胸肉、豚肉は豚モモ肉を使用することでよりタンパク質の単一性を高めることができる。
【0012】
また本発明のペット用補助食品は、小麦粉などの穀物由来の原料を使用しない。そのため、穀物アレルゲン由来のアレルギーの発生を抑えられる他、穀物由来のグルテンを含まない(グルテンフリー)ためLGS問題も解決できる。
【0013】
グルテンとは小麦、ライ麦などの穀類の胚芽から生成されるタンパク質の一種で、小麦加工品を作る上で弾性や軟性を決定し膨張を助ける重要な要素である。しかしながら、近年このグルテンがアレルギーやLGSを引き起こすファクターとなっていることが広く一般に認知され、グルテンを排除した食生活で健康を取り戻そうという指向が広まっている。LGS問題(Leaky Gut Syndrome;腸管壁浸漏症候群)とは、腸壁の粘膜が損傷され、腸内物質が体内に漏れ出す症状のことで、様々な体調不良を引き起こす原因となる。本来穀類を必要としない犬の消化管において、近年このLGSが原因とみられる諸症状が発症している。
【0014】
さらに、本発明のペット用補助食品は、化学調味料などの添加物を添加する必要がない。これらの添加物を含まないことで、ペットの健康維持・健康増進に貢献することができる。
【0015】
本発明のペット用補助食品は、鶏胸肉などの鶏肉のみ、あるいは豚モモ肉などの豚肉のみを原料とすることで、特定のアミノ酸から構成される単一のタンパク質を含む食品である。その結果、消化が良く、アレルギーが起きにくい。さらに穀類を使用しないことにより、穀類をアレルゲンとするアレルギーの発生を防ぎ、穀類由来のグルテンによるLGS問題を解決することができる。
【0016】
本発明のペット用補助食品は、例えば、以下に説明する本発明の製造方法により製造することができる。
【0017】
また本発明は、(1)材料の鶏肉または豚肉を煮る工程、(2)煮た材料を冷ました後、攪拌してペースト状にする工程、(3)ペースト状にした材料を成形する工程、及び(4)成形した材料を低温乾燥する工程を含み、高温調理工程を含まないペット用補助食品の製造方法に関する。
【0018】
低温乾燥とは、約50℃前後あるいはそれ以下の温度(例えば48℃)で乾燥することをいう。乾燥工程により、成形したペースト状の材料の水分を蒸発させて固め、クッキーやケーキなどの食品として形を固定することができる。低温乾燥工程の乾燥時間は、通常高温乾燥の場合より長くなる傾向があり、例えば12〜36時間程度、好ましくは24時間以上である。
【0019】
高温調理工程とは、焼く、炒める、揚げるという工程をいう。アミノ酸や糖類をこのような高温調理工程によって加工すると、アクリルアミドが発生し、ペットの健康に悪影響を及ぼす恐れがある。アミノ酸や糖類は、食品にごく普通に含まれている一般的な化学物質であり、栄養成分でもある。特に、穀類、いも類、野菜類などに豊富に含まれており、食品に含まれているそのような化学物質は加熱によって分解したり、別の化学物質に変化したりするが、その過程でアクリルアミドが産生されると考えられている。このような、食品の加熱によって起こる食品成分の化学変化は、色や風味の形成のように食品の美味しさにとても重要な役割を果たしていることが知られている。また加熱により消化が良くなり、有害な微生物も殺菌されるため、風味や食感といった食品に求められている品質を保ちながら、アクリルアミドができないように加熱調理することはとても難しい。
【0020】
本発明の製造方法では、焼く、炒める、揚げるという高温調理を行わずに、煮る、及び低温乾燥を行うため、アクリルアミドの発生を抑えることができ、出来上がったペット用補助食品は、実質的にアクリルアミドを含まない。また、煮る工程により十分に殺菌されたのち、低温乾燥を行うため、十分な殺菌はされるがアクリルアミドは含まない食品を提供することができる。さらに本発明では、煮る工程を経た材料をペースト状にして成形した後、乾燥することにより、例えば図1〜3に示すような、イベントを象徴するシンボルやキャラクターなどの形状のクッキーやケーキを提供することができる。このような形状のペット用食品は、従来のウエットタイプ、ドライタイプ、あるいは肉を干したジャーキー様の食品では見られないものであり、またこのような様々な形状や色のクッキーやケーキをペットに与えることで、飼い主がペットと共にイベントを楽しみ、充実感を得ることができる。
【実施例】
【0021】
実施例1 ペット用クッキー及びケーキの製造
以下の材料を用いて、クッキー及びケーキを製造した。
材料:皮付き鶏胸肉 2Kg、水 適量、天然色素 適宜、ハーブ 適宜
【0022】
製造方法
クッキー・ケーキの生地の製造
1)皮付き鶏胸肉2kgを用意する。
2)皮付き鶏胸肉を1枚につき6〜8分割にカットし鍋に入れる。
3)肉に被るくらいの水を入れ、肉と肉の間に水が行き渡るよう手でかき回す。
4)鍋を火にかけ強火で沸騰させ、沸騰したら弱火にして煮る。
5)この間、アクが出たら丁寧にすくう。
6)煮汁が減り肉が出たら水を足し、再度肉に被るくらいにする。
7)そのまま汁気がほとんどなくなるまで弱火で煮詰める。
8)煮詰まった肉の粗熱がとれるまで待つ。
9)冷めた肉をフードプロセッサに適量入れて撹拌する。
10)ペースト状になった材料がまとまるまで更に撹拌する。
天然色素、ハーブ等を加える場合にはここで投入する。
11)クッキーの場合:ラップに包み冷蔵庫で型抜きに適した固さになるまでしばらく寝かせて生地とする。
12)ケーキの場合:ケーキ型に入れ成形し、重石をして冷蔵庫で冷やし固める。
【0023】
クッキーの成形
上記11)で寝かせた生地を、麺棒で適度に伸ばし型を抜く、切り分けるなどして好みの形とした。48℃に設定したディハイドレーターに入れ24時間以上乾燥させ、鶏胸肉を使った焼かないクッキーを作成した。
【0024】
ケーキの成形
上記12)でケーキ型に詰めて固めた台に、鶏肉(または豚肉)のペースト、または予め水切りした無糖ヨーグルト、またはマッシュポテトなどを絞り出し袋に詰めてデコレーションした。必要に応じて、鶏肉クッキーなどもデコレーションして鶏胸肉を使った焼かないデコレーションケーキを作成した。
【0025】
実施例2 バースデーケーキ
実施例1の製造方法に従い、以下の材料を用いて、鶏胸肉のケーキ台に鶏胸肉のクッキーをヨーグルトクリームでデコレーションしたペットのバースデーケーキを作成した。写真を図1に示す。
材料:鶏胸肉、ヤギミルク、ビーツパウダー、大麦若葉パウダー、ターメリックパウダー、フリーズドライフランボワーズ
【0026】
実施例3 ハロウィンクッキー
実施例1の製造方法に従い、以下の材料を用いて、ハロウィンクッキーを作成した。写真を図2に示す。
材料:鶏胸肉、パンプキンパウダー、大麦若葉パウダー、紫芋パウダー、食用炭パウダー
【0027】
実施例4 ハロウィンケーキ
実施例1の製造方法に従い、以下の材料を用いて、ハロウィンケーキを作成した。写真を図3に示す。
材料:鶏胸肉、マッシュポテト、紫芋マッシュ、カボチャマッシュ、大麦若葉パウダー
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、消化が良く、アレルギー対策や健康維持・健康増進を図ることができるペット用補助食品及びその製造方法を提供することができる。本発明のペット用補助食品は、季節のイベントやライフイベントに合わせた、見た目にも美しいクッキーやケーキとして提供可能である。また本発明により、ペットに栄養補助食品やおやつを与えることで飼い主に喜びを与え、ひいては飼い主の心身の健康維持・ストレス解消・人間関係構築のサポートをすることも可能となる。さらに本発明により、単なる「餌」を与えるのではなく、季節ごとのイベントや誕生日や記念日などのライフイベントに合わせた見た目にも美しい食品(クッキーやケーキなど)をペットと共に楽しむことにより、飼い主に生きがいを与えることが可能となる。

図1
図2
図3