特許第6890341号(P6890341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6890341治療部位でマイクロ波エネルギーを放射し液体を排出するための電気手術器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890341
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】治療部位でマイクロ波エネルギーを放射し液体を排出するための電気手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   A61B18/18 100
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-529218(P2018-529218)
(86)(22)【出願日】2016年12月7日
(65)【公表番号】特表2018-538058(P2018-538058A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2016080138
(87)【国際公開番号】WO2017097856
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年10月18日
(31)【優先権主張番号】1521522.1
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】プレストン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ツィアモウロス,ザカリアス・ピィ
(72)【発明者】
【氏名】ソーンダーズ,ブライアン
【審査官】 菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−052408(JP,A)
【文献】 特開2009−207898(JP,A)
【文献】 特表平08−510154(JP,A)
【文献】 特表平07−507470(JP,A)
【文献】 特表2010−540029(JP,A)
【文献】 特表2010−505572(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/101787(WO,A2)
【文献】 米国特許第05403311(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
A61B 18/12−18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長いプローブを備えた電気手術器具であって、前記細長いプローブは、マイクロ波電磁(EM)エネルギーを運ぶための同軸伝送線と、前記マイクロ波エネルギーを受けるために前記同軸伝送線の遠位端に連結されたプローブチップと、前記プローブチップへと前記細長いプローブを通じて液体を運ぶために前記同軸伝送線の内部に置かれた液体チャネルとを備え、前記同軸伝送線は、中空の内導体と、外導体と、前記内導体を前記外導体から分離する第1誘電材料と、前記中空の内導体の内面上にある中空の第2誘電材料とを備え、前記液体チャネルは前記中空の第2誘電材料の内部に置かれ、前記プローブチップはそこを通じて走るプローブチップチャネルを有し、前記プローブチップチャネルはその遠位端の開口部内で終結し、前記プローブチップは、前記同軸伝送線からマイクロ波エネルギーを受けるよう連結された導電素子を含み、前記導電素子は前記プローブチップから外側にマイクロ波EM場を放射するための放射アンテナ構造を形成し、前記器具はさらに液体チャネルの内部に置かれた中空の針を備え、前記針の第1端は前記液体チャネルと流体連通し、前記針の第2端は前記液体チャネルから前記プローブチップの前記開口部を通じて目標領域へと液体を送達するために配置される、前記電気手術器具。
【請求項2】
前記マイクロ波周波数EMエネルギーが、400MHz以上で100GHz以下の周波数を有する、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記プローブチップが、前記同軸伝送線の遠位端を越えて前記中空の第2誘電材料を備える、請求項1または2に記載の電気手術器具。
【請求項4】
前記導電素子が、前記プローブチップチャネルの内面上に配置された伝導シェルである、請求項1から3のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項5】
前記中空の内導体が、前記伝導シェルを形成するよう前記同軸伝送線の前記遠位端を越えて前記プローブチップへと延びる、請求項4に記載の電気手術器具。
【請求項6】
前記プローブチップが、そこを通じて走る前記プローブチップチャネルを有するチップ本体を備え、前記チップ本体が第3誘電材料から形成され、かつ前記同軸伝送線の前記遠位端に連結される、請求項4または5に記載の電気手術器具。
【請求項7】
伝導コーティングが前記プローブチップの外面に形成され、伝導シェルが前記開口部を通じて前記伝導コーティングへと電気接続される、請求項6に記載の電気手術器具。
【請求項8】
前記伝導コーティングが、前記同軸伝送線の前記外導体から電気的に隔離される、請求項7に記載の電気手術器具。
【請求項9】
前記プローブチップが、前記同軸伝送線の縦軸と並ぶ対称軸の周りで円筒状に対称である、請求項1から8のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項10】
前記針が、前記針の前記第2端が前記プローブチップチャネルまたは液体チャネルの内部に置かれる引込位置と、前記針の前記第2端がその遠位端にある開口部を越えて前記プローブチップチャネルの外部に置かれる露出位置との間で調節可能である、請求項1から9のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項11】
前記液体チャネル内に取り付けられ、前記針に連結されたガイドワイヤを含み、前記ガイドワイヤが前記液体チャネルの近位端にあるアクチュエータに取り付けられ、前記アクチュエータが前記針を前記引込位置と前記露出位置との間で切り替えるよう前記ガイドワイヤを前記液体チャネル内で軸方向に移動させるよう動作可能である、請求項10に記載の電気手術器具。
【請求項12】
前記針の最大直径が前記プローブチップチャネルの最小直径よりも小さく、さらに前記針が通ることができる前記プローブチップチャネル内のプラグを含み、前記プラグが前記プローブチップチャネルの前記内面に流体密封シールを形成する、請求項1から11のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項13】
前記プラグが、弾性的に変形可能な材料から作られる、請求項12に記載の電気手術器具。
【請求項14】
多重内腔構造が前記中空の第2誘電材料内に供給される、請求項1から13のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項15】
前記多重内腔構造が、仕切壁によって互いから分離された前記液体チャネルと第2チャネルを含む、請求項14に記載の電気手術器具。
【請求項16】
前記プローブチップがそこを通じて走る第2プローブチップチャネルを有し、前記第2プローブチップチャネルが前記第2チャネルと流体連通する、請求項15に記載の電気手術器具。
【請求項17】
前記同軸伝送線の外径が、5mmと等しいかまたはそれ以下である、請求項1から16のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項18】
前記第1誘電材料が、1mmと等しいかまたはそれ以下の厚さを有する、請求項1から17のいずれかに記載の電気手術器具。
【請求項19】
電気手術装置であって、請求項1から18のいずれかに記載の電気手術器具と、マイクロ波信号生成器からマイクロ波EMエネルギーを受け、かつ前記マイクロ波EMエネルギーを前記電気手術器具に運ぶよう構成されたマイクロ波供給構造と、液体源から液体を受け、かつ前記液体を前記電気手術器具に運ぶよう構成された液体供給構造とを有する、前記電気手術装置。
【請求項20】
前記液体源がアドレナリン源である、請求項19に記載の電気手術装置。
【請求項21】
第1端で前記マイクロ波供給構造に、かつ第2端で前記電気手術器具の前記同軸伝送線に連結された中間同軸伝送線をさらに備える、請求項19または20に記載の電気手術装置。
【請求項22】
1/4波変圧器が、前記マイクロ波供給構造と前記中間同軸伝送線の間におけるインターフェース及び/または前記中間同軸伝送線と前記電気手術器具の前記同軸伝送線の間におけるインターフェースで連結される、請求項21に記載の電気手術装置。
【請求項23】
前記中間同軸伝送線の寸法には、
前記マイクロ波供給構造と前記電気手術器具の前記同軸伝送線の間におけるインピーダンスを整合させる前記中間同軸伝送線の断面の寸法、または
前記マイクロ波供給構造によって送信されるマイクロ波信号の半波長の整数倍である前記中間同軸伝送線の長さ寸法のいずれかが選択される、請求項21または22に記載の電気手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内の目標領域に液体を投与するため、及び例えば同じ目標領域で血管を凝固させるためのマイクロ波場を放射するための電気手術器具に関する。本発明はさらに、電気手術器具を組み込む電気手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波エネルギーは、例えば消化管内で血液を凝固させることで止血するのに用いられ得ることが知られている。さらに、より重篤、または大出血である場合、アドレナリンといった液体薬品を出血部位へ投与するのが望ましいことが知られている。従来、これを行うために、アドレナリンを注入するためには出血が発生した体腔からマイクロ波放射器を取り除く必要があった。これは、アドレナリンが注入される全期間において、血流のせき止めを低減するマイクロ波凝固が起こり得ないことを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
その最も一般的な点では、本発明は、血液の凝固を行うよう放射性(すなわち非イオン化)マイクロ波場を生成すること、及び目標領域に液体、例えば消化管潰瘍の治療のためのアドレナリンを排出することの両方が可能な電気手術装置を提供する。本明細書では、「マイクロ波場」、「マイクロ波放射線」、「マイクロ波エネルギー」または類似の用語は、400MHzから100GHz、より好ましくは1GHzから60GHzの周波数を持つ電磁放射線を指す。考慮された特定の周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz及び24GHzである。マイクロ波エネルギーを用いることは、凝固した組織のインピーダンスの効果によって制限されず、かつ与えられた時間内で高レベルの凝固を得られる制御された凝結を可能にする。マイクロ波の使用はさらに、バイポーラRF凝固といった他の技術よりもやけどによる負傷リスクが低いことを表す。
【0004】
前述の二重機能性を達成するために、本発明は細長いプローブを備えた電気手術器具を提供してもよく、細長いプローブはマイクロ波電磁(EM)エネルギーを送るための同軸伝送線、マイクロ波エネルギーを受けるために同軸伝送線の遠位端に連結されたプローブチップ、及び細長いプローブを通じてプローブチップへと液体を送るために同軸伝送線の内側に配置された液体チャネルを有し、同軸伝送線は中空の内導体、外導体、内導体を外導体から分離する第1誘電材料、及び中空の内導体の内面上にある中空の第2誘電材料を備え、液体チャネルは中空の第2誘電材料の内部に配置され、プローブチップはそこを通じて走るプローブチップチャネルを有し、プローブチップチャネルはその遠位端にある開口部で終結し、プローブチップは同軸伝送線からマイクロ波エネルギーを受けるよう接続された導電素子を含み、導電素子はプローブチップから外側にマイクロ波EM場を放射するための放射アンテナ構造を形成する。
【0005】
本明細書では、「伝導」及び「導体」への言及は、文脈が他のものを指し示さない限り、電導を意味する。
【0006】
導電素子は、放射アンテナ構造を形成するために内導体及び外導体のうち少なくとも1つに接続されてもよい。
【0007】
プローブチップは、同軸伝送線の遠位端を越えて中空の第2誘電材料の継続を備えてもよい。したがってプローブチップチャネルは、中空の第2誘電材料の継続によって定義された経路を含むかまたは経路で構成されてもよい。同軸伝送線の遠位端は、外導体が終結するところで定義されてもよい。中空の内導体はさらに、導電素子の全てまたは一部を形成するところでプローブチップへと延びてもよい。
【0008】
プローブチップは、第3誘電材料から形成されたチップ本体を備えることが望ましく、チップ本体は同軸伝送線の遠位端に接続される。例えば、第3誘電材料は、中空の第2誘電材料の継続の上に取り付けられてもよい。したがってプローブチップチャネルは、第3誘電材料を通じて走ってもよい。第3誘電材料は、第1誘電材料及び/または第2誘電材料と同じかまたは異なっていてもよい。
【0009】
1つの実施形態では、内導体及び外導体は、プローブチップで半波長ループへと結合されてもよく、放射されたマイクロ波EM場はループ内部に形成されたH場である。
【0010】
使用中、プローブチップは、例えば内部出血の部位、または消化管潰瘍といった治療目標領域に配置される。装置は、血管凝固のために放射アンテナ構造が非イオン化マイクロ波放射線を放射するマイクロ波放射線モード(i)と、液体が液体源から、目標領域へと排出され得る液体チャネルへと供給される液体送達モード(ii)の2つのモードで動作可能である。このモードは、液体チャネルを液体で満たすことで達成されてもよい。
【0011】
プローブチップは、同軸伝送線の遠位端に接続された近位端と、それに対向する遠位端を有し、遠位端は電気手術器具の使用中に目標領域と接してもよい。プローブチップチャネルは、プローブチップの近位端及び遠位端と結合する。開口部は、プローブチップチャネルの遠位端に配置される。使用中、開口部は、液体送達のために目標領域へのアクセスを提供する。
【0012】
中空の、例えば皮下注射針は、液体チャネルの内部に供給されてもよく、中空の針の第1端は、液体チャネルと流体連通し、中空の針の第2端は、液体チャネルからプローブチップチャネルの開口部を通じて目標領域へと液体を送達するために配置される。針の第2端は、開口部の近位にあるプローブチップチャネルの内部に配置されることが好ましい。使用中、液体送達モードでは、液体は液体源から液体チャネルへと供給され、そこから針の第1端へと入り、針に沿って流れ、またはプローブチップチャネルの外側に配置された針の第2端がプローブチップチャネルの外側に置かれる場合には針の第2端でプローブチップチャネルへと出て、開口部から出る。
【0013】
針が放射アンテナ構造としての機能を持つよう、針は内導体へと連結されてもよく、かつ開口部から1/4波長の奇数で露出してもよい。
【0014】
針は、引込位置と露出位置の間で調節可能であってもよく、針が露出位置にある時、針の第2端がプローブチップの外部に、すなわち目標領域に接するかまたは密に隣接しており、針が引込位置にある時、針の第2端がプローブチップの内部に留まるのが好ましい。あるいは、針が引込位置にある時、針の第2端はプローブチップが連結された同軸伝送線の内部に全てが戻るよう引き込まれてもよい。針の引込は、放射アンテナ構造によるマイクロ波場の放射中に針が露出位置にないということをユーザが確認できるようにする。
【0015】
露出位置と引込位置間における針の調節を行うために、電気手術器具は、針調節手段と共に提供されてもよく、例えば、ガイドワイヤは針の第1端に、または針の第1端の付近に取り付けられてもよく、ガイドワイヤは液体チャネルに沿って通過し、それにより針の調節は液体チャネルの近位端から制御され得る。これは、装置の使用中における針の調節を可能にする。
【0016】
針が露出位置にある時にマイクロ波場の放射を防ぐために、同軸伝送線の内導体は軸方向隙間を有してもよく、針調節手段は、針が引込位置にある時に内導体における隙間を埋めるよう配置された伝導リングを含んでもよい。針が露出位置にある時、伝導リングはもはや内導体における隙間を埋めないように配置され、電気接続を遮断し、よって電力はプローブチップに送られず、マイクロ波場の放出を防ぐ。
【0017】
あるいは、針が露出位置に配置されているかされていないかを検出するのにセンサが用いられてもよい。可能性のあるセンサは、リターンロスセンサ、近接検出装置、または光検出器を含む。そういったセンサは、針が露出位置にあることを検出し、マイクロ波放射線モードにおける装置の動作を防いでもよい。
【0018】
針供給管がさらに、目標領域に投与される液体を含む針を供給するために針の第1端に取り付けられてもよい。このように、液体の送達はより慎重に制御することができ、投与するために全てのチャネルを液体で満たす必要がなく、液体のより経済的な使用が期待できる。
【0019】
針の少なくとも一部は、プローブチップチャネル内に配置されてもよく、かつ安定性を向上させるためにプローブチップチャネルの壁に取り付けられてもよい。露出位置と引込位置間の調節中に針の縦軸がプローブチップチャネルの縦軸(すなわち、同軸伝送線の軸と並ぶ軸)に対する配向を変えないことを確実にするために、針がプローブチップチャネルの壁にある針誘導構造に配置されてもよい。これは、例えば、器具の使用中における調節中に針が生体組織を横方向に傷つけないことを保証し得るといったような針の調節中におけるより優れた制御を可能にする。
【0020】
針の最大直径は、開口部の最小直径またはプローブチップチャネルの最小直径よりも小さくてもよい。この場合、針とプローブチップチャネルの壁の間に流体密封シールを形成するよう、プラグが供給されてもよい。
【0021】
そういったシールは、液体が露出位置にある時には針から目標領域へと液体の注入を可能にするが、針が引込位置にある時にはプローブチップへと血液または他の体液の逆流を防いでもよい。プラグは、開口部を塞ぐ非剛性または弾性的に変形可能な素材から形成されてもよく、それにより針が露出位置にある時には流体密封シールを形成するようプラグは針の外面に内側の圧力を与え、針が引込位置にある時にはプラグの弾性的に変形可能な性質はプラグを通じる穴が存在しないこと、すなわち針が通過可能な穴をシールが遮断することを確実にする。プラグの最も外側端は、プローブチップの面と同一平面に置かれてもよく、かつ連続した面を形成するような形状であってもよい。あるいは、プラグはプローブチップチャネルの内部に配置されてもよく、その最も外側端は開口部から間隔を置いている。プラグはシリコンゴムから作られてもよい。
【0022】
導電素子は、放射モノポールアンテナとして機能するよう構成されることが好ましい。円筒状に等方性のマイクロ波場を放射するために、プローブチップは円筒状に対称であってもよく、使用中にマイクロ波場の配向がプローブチップの回転とは無関係であることを確実にする。体内に挿入された時にプローブチップを正しい配向に操作するのが困難である可能性があるため、これは有用である。プローブは、ドーム状、円錐状、または円錐台形状であってもよい。これらの形状は、治療中にプローブチップが圧力を加えるのに用いられることを可能にする。プローブチップが円筒状に対称である時、プローブチップチャネルの縦軸(すなわち同軸伝送線の軸と並ぶ軸)は、プローブチップ自体の円筒状に対称な軸と平行であることが好ましい。プローブチップの対称軸がプローブチップチャネルの縦軸と同じであることが、より好ましい。プローブチップチャネルは、プローブチップの対称軸に沿って見られた時、プローブチップの中心に置かれてもよい。プローブチップの代替的形状は、半球状遠位端を持つ円筒形状、及びボール形状を含む。プローブチップは細長い形状であってもよく、すなわち縦軸の方向におけるプローブの長さがプローブチップの最小直径よりも長くてもよい。これは、マイクロ波放射線モードでの動作時に、血管に沿って分布した凝固を引き起こすためにプローブが使用中に血管に沿って並ぶことを可能にする。あるいは、第3誘電材料はディスク状であってもよい。
【0023】
プローブチップチャネルは、少なくともその間のインターフェースの近くで同軸伝送線の軸と並んでもよい。
【0024】
第3誘電材料は、低損失で、機械的に強固な材料であることが好ましい。ここで、「低損失」とは、実質的なエネルギーロスがなくマイクロ波が材料へ通過し得る材料を指す。材料は、0.01以下の誘電正接を有していることが好ましく、0.001以下であることがより好ましい。さらに、第3誘電材料は、器具の使用中、プローブチップに大きな変形を起こすことなく出血部位に機械的圧力を加え得るような十分な剛性があることが好ましい。第3誘電材料は、MACORといったような、PEEK、PTFEまたはセラミックのうちの1つであってもよい。第3誘電材料は、第1誘電材料と同じであってもよく、かつ第1誘電材料と連続していてもよい。
【0025】
内導体は、プローブチップチャネルを結合する壁の内面上の伝導シェルに電気接続されてもよい。伝導シェルは、プローブチップチャネルへの同軸伝送線の内導体の縦方向延長部であることが好ましい。
【0026】
伝導シェルは、プローブチップの第3誘電材料を通じてマイクロ波を送信することが可能なロッド状アンテナとして機能してもよい。放射モノポールアンテナを形成するためにプローブチップチャネルの内面が伝導シェルに覆われる時、針は例えば伝導シェルの内面全体を覆うか、あるいは針が前記内面に接する部分のみを覆い得る絶縁材料の層によって前記伝導シェルから絶縁されるのが好ましい。
【0027】
伝導シェルを取り囲む第3誘電材料の存在は、例えば以下に論じられるようなインピーダンス整合変圧器を用いて例えば反射電力の量を削減することによって、組織へと送達されるエネルギーを高めることができる。
【0028】
あるいは、内導体は、プローブチップチャネルを結合する壁の面上の伝導シェルに電気接続されてもよく、伝導シェルはプローブチップチャネルの遠位端を通過して延び、その後プローブチップの外面上の伝導コーティングを形成するよう自身の上に戻って湾曲するか結合する。伝導コーティングはプローブチップ全体を覆ってもよく、かつ内導体と外導体間の短絡を防ぐために同軸伝送線の外導体から電気的に絶縁される、すなわち外導体に電気接続されていなくてもよい。伝導コーティングは、伝導コーティングと外導体の間のプローブチップの遠位端でリング状の隙間によって外導体から電気的に絶縁されてもよい。隙間の空気は、必要な隔離を供給してもよい。あるいは、絶縁バンドが2つの間に供給されてもよい。より均一で、連続したマイクロ波場を確保するために、伝導シェルは、以下に論じられるように自身へと戻って湾曲するか結合し、その遠位端におけるプローブチップチャネルの端部は、鋭角な端部よりはむしろ滑らかに湾曲した端部または傾斜した端部であってもよい。
【0029】
同軸伝送線の外導体は、不平衡給電を形成するよう接地されてもよく、またはアンテナに平衡給電を形成するよう浮かされていてもよく、すなわち両方の導体における電圧は上下する。
【0030】
可能な限り効果的にマイクロ波エネルギーを目標領域へと送達するために、放射アンテナ構造のインピーダンスは、採用されたマイクロ波場の周波数で目標領域の組織のインピーダンスと整合して配置されることが好ましい。インピーダンスを血液のインピーダンスと整合させる場合、これは確実にマイクロ波場が効果的かつ容易に制御される凝固を引き起こすことを可能にする。インピーダンスの整合は、同軸伝送線の遠位端とプローブチップとの間に配置された1/4波変圧器によって達成されてもよい。この変圧器の長さは、第3誘電材料がMACORである場合おおよそ5.5mm、または第3誘電材料がPEEKである場合おおよそ7mmであってもよい。さらに、キャパシタンスまたはインダクタンスリアクタンス整合スタブは、インピーダンスの虚数部分から整合するよう用いられてもよい。
【0031】
液体チャネルは、同軸伝送線の第2誘電材料の内面によって定義されてもよい。第2誘電材料は、例えばツールが中空を通過する時に導体のひっかきを防ぐための保護コーティングとなってもよい。同軸伝送線は、中空の第2誘電材料を形成する誘電材料の内部管で形成されてもよい。中空の内導体は、前記内部管の周囲を取り巻く伝導テープの層を含んでもよい。テープは、銀テープ、銅テープまたは銀めっきの銅テープを含んでもよい。第1誘電材料は、内導体の周囲を取り巻く誘電テープで形成されてもよい。外導体は、内導体を作る伝導テープに類似しているかまたは同一の伝導テープの層で形成されてもよい。第4誘電材料で作られた保護ジャケットは同様に、外導体の外面に供給されてもよく、第4誘電材料は第1、第2及び第3誘電材料のうちのいずれか1つと同じであってもよい。
【0032】
さらに、液体チャネルは、内導体及び/またはその上に覆われた保護コーティングとは別体である内腔構造の一部として提供されてもよく、内腔構造は外壁を有し、その内面は液体チャネルを結合する。液体チャネルを含む内腔構造は、内導体の内部に供給されてもよい。そのため内腔構造は、その最大外径が同軸伝送線の内導体の最小内径よりも小さくてもよい。このように、内腔構造は空間効率を向上させるために同軸伝送線内部に置かれ得る。
【0033】
液体チャネルに加えて、内腔構造は、カメラ、材料、液体またはガス等といった追加的ツールをプローブチップへ、そして目標領域へと運ぶための第2チャネルを含んでもよい。第2チャネルは、液体チャネルよりも大きくてもよい。
【0034】
内腔構造内に第2チャネルがある場合、プローブチップは第2プローブチップチャネルを含んでもよく、内腔構造内の異なるチャネルに運ばれるアイテムの混合/抵触/巻き込みを防ぐために、液体チャネル及び第2チャネルは、それぞれがプローブチップチャネル及び第2プローブチップチャネルと流体連通する。特に、プローブチップチャネル内の針で、単体でも、液体チャネルを満たすことで針に液体を投与できるよう、液体チャネルは針の第1端と流体連通してもよい。内腔構造内で針の第1端と流体連通している他のチャネルがない場合、液体が異なるチャネルに入るリスクは最小限に抑えられる。針調節手段は、内腔構造の液体チャネル内にのみ置かれてもよく、針は液体チャネルと流体連通するプローブチップチャネル内にのみ置かれてもよい。
【0035】
内腔構造は、その外面が内導体の内面と同一平面上になるように同軸伝送線の内導体の内部に嵌合するよう構成された細長の、実質的に円筒形状の構造であってもよい。内導体の内面上に保護コーティングがある場合、内腔構造は保護コーティングの内面と同一平面上にあってもよい。液体チャネルは、内腔構造の外壁及び仕切壁のうち少なくとも1つによって定義されたオフセンターチャネルとして形成されてもよい。内腔構造の残りはその後、以下に記述されるように追加的ツール、材料、液体またはガスをプローブチップに運ぶのに用いられてもよい。
【0036】
内腔構造は、PEBAX、ナイロン、ポリイミド、Kapton(登録商標)またはPTFEといった柔軟性のある材料で作られることが好ましい。これは、内腔構造が細長いプローブの曲がりに沿って曲がり、さらに曲げの最中に捻れないよう十分な剛性を残していることを可能にする。
【0037】
液体チャネルがプローブチップ及び/または針にその血管収縮特性のために利用され得るアドレナリンを運ぶよう配置されることが好ましい。あるいは、液体チャネルは、血管を収縮させるかまたは部位を洗浄する例えば生理食塩水といった液体を運ぶのに配置されてもよく、それによりエネルギーがその後出血を止めるために加えられ得る。
【0038】
内導体の内面によって定義された中空の直径を最小化するために、同軸伝送線を作り上げる内導体及び外導体の厚さは最小化されるのが好ましい。さらに、例えば5.8GHzでの許容可能なレベルのロスを保証するよう、第1誘電材料の厚さが最小化されることを保証するよう内導体及び外導体の厚さは選択されるべきである。
【0039】
同軸伝送線の外径は10mm未満であり、5mm未満であることがより好ましい。同軸伝送線の外径は2.5mm未満であることがより好ましい。よって、細長いプローブは、内視鏡、腹腔鏡等といった外科用スコーピング装置の器具チャネルの内部に嵌合するサイズであってもよい。内導体を外導体から分離する第1誘電材料は、1mm未満の厚さであってもよく、0.5mm未満の厚さであることがより好ましい。第1誘電材料の誘電率は、5未満であってもよく、3未満であることがより好ましく、2.5未満であることが最も好ましい。第1誘電材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。
【0040】
あるいは、PTFEより高い空気量を持つ低密度材料が第1誘電材料に用いられてもよい。例えば、1.6と1.8の間の誘電率を有し得る、低ロスで低密度のPTFEが用いられてもよい。あるいは、1.3と1.5の間の誘電率を持つ微小孔性PTFEが用いられてもよい。これは、同軸伝送線に沿うマイクロ波の伝達に関する低電圧のよって可能となる。第1誘電材料の厚さを最小化するために、材料は単層のみであることが好ましい。
【0041】
内導体または外導体のうち少なくとも1つは、銀から作られてもよい。内導体及び外導体の厚さは、50μ未満であってもよく、25μ未満であることがより好ましく、10μ未満であることが最も好ましい。これらの厚さは、同軸伝送線に沿ってマイクロ波エネルギーを伝達するのには十分であるが、中空の内導体の内面によって定義された中空のサイズを最小化するための可能な限りの小ささである。
【0042】
液体チャネルを通じて嵌合し、さらに針に必要な空間量を最小化するために、針は1mm未満の直径であることが好ましく、0.5mm未満であることがより好ましい。
【0043】
本発明の他の態様に従って、前述のような電気手術器具と、マイクロ波信号生成器からマイクロ波EMエネルギーを受け、かつマイクロ波EMエネルギーを電気手術器具へと運ぶよう構成されたマイクロ波供給構造と、液体源から液体を受け、かつ液体を電気手術器具へと運ぶよう構成された液体供給構造とを有する電気手術装置が提供される。
【0044】
電気手術装置は、マイクロ波信号生成器及び/または液体源を含んでもよい。液体源は、アドレナリン源であることが好ましい。
【0045】
マイクロ波供給構造は、保存された中空の供給にアクセスする方法でマイクロ波EMエネルギーを電気手術器具の同軸伝送線へと運んでもよい。例えば、マイクロ波供給構造は、同軸伝送線の長軸からおおよそ90°、または同軸伝送線の長軸から45°で入射してもよい。
【0046】
例えば、マイクロ波供給構造と本発明の第1態様(本明細書では「電気手術器具」)に従う電気手術器具の同軸伝送線の近位端の間に電気接続された変圧器装置を含むことで、マイクロ波供給構造及び同軸伝送線のインピーダンスは整合してもよい。インピーダンスの整合は、マイクロ波供給構造と電気手術器具の同軸伝送線の近位端の間におけるインターフェースでの電力ロスを低減する。
【0047】
電気手術装置はさらに、電気手術装置の動作のためにユーザによって保持され得るハンドピースを含んでもよい。ハンドピースは、マイクロ波供給構造または液体供給構造のうちの1つまたは両方に連結するための取付部を含んでもよい。取付部は、ねじ嵌合の形状であってもよい。供給構造とハンドピース内部に固定された液体チャネル/同軸伝送線の間にインターフェースを持つことは、部品の相対的な配向を確実に固定し続け、かつ取り除かれにくくする。そのため、変圧器装置は、マイクロ波供給構造と同軸伝送線の間のインターフェースの位置でハンドピース内部に置かれてもよい。
【0048】
電気手術器具の同軸伝送線の外径よりも大きい外径を有する中間同軸伝送線の一部は、マイクロ波供給構造と電気手術器具の同軸伝送線の間に置かれてもよい。標準的な1/4波変圧器は、マイクロ波供給構造と中間同軸伝送線のインターフェースで用いられ得る。中間同軸伝送線は、電気手術器具の同軸伝送線の直径と一致するようその直径を減少させた先細り部分を含んでもよい。前記線を先細りさせる方法は、直径の変化で生じたインピーダンス不整合によって起こる電力ロスまたは減衰を最初化させるのに適していてもよい。さらなるインピーダンス整合を実行し、かつマイクロ波供給構造と電気手術器具の同軸伝送線の間における信号切り替えで生じる電力ロスを最小化するために、第2の1/4波変圧器は、中間同軸伝送線と電気手術装置の同軸伝送線の間におけるインターフェースにあってもよい。
【0049】
前述の任意的機能は、単一で、またはあらゆる他の機能と組み合わせて適用可能である。本発明のさらなる任意的機能は、以下に提示される。
【0050】
本発明の実施形態は、添付の図面に関連する実施例によってここで記述される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示し、露出位置にある中空の針を示す概略図である。
図3】本発明の第1実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示し、引込位置にある中空の針を示す概略図である。
図4】本発明の第2実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。
図5】本発明の第3実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。
図6】本発明の第4実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。
図7】本発明の第5実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。
図8】本発明の第6実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。
図9】本発明の第7実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。
図10】本発明の第7実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた横方向断面を示す概略図である。
図11】本発明の第1から第7実施形態のいずれかに従う電気手術器具を含む電気手術装置に用いられ得るハンドピースの概略図である。
図12】本発明の第1から第7実施形態のいずれかに従う電気手術器具を含む電気手術装置に用いられ得る代替的ハンドピースの概略図である。
図13】本発明での使用に適した同軸伝送線のための近位コネクタを通じた概略断面図である。
図14】本発明の実施形態である電気手術器具の遠位チップにおける概略斜視図である。
図15図14に示される器具によって放射されたマイクロ波場強度を示す模擬実験である。
図16】異なるチップ長で提供された時の図14に示された器具のためのリターンロスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。器具100は、インターフェース116に結合された同軸伝送線102及びプローブチップ104を含む。同軸伝送線102は、マイクロ波供給構造及び液体供給構造(図示せず)に向かう矢の方向で図から左に向かって延びる。同軸伝送線102は、両方が銀といったような伝導性材料で形成された外導体106a、106b、及び中空の円筒状内導体108a、108bによって定義される。誘電材料110a、110bは、外導体106a、106bを内導体108a、108bから空間的かつ電気的に分離する。保護コーティング112a、112bは、内導体108a、108bの内面に置かれる。保護コーティング112a、112bの内面は、チャネル114を定義する。保護コーティング112a、112bは、残りの図面からは省かれるが、以下に記述される本発明の実施形態の全てにおいて保護コーティングを含む可能性がある。
【0053】
プローブチップ104は、インターフェース116で同軸伝送線102に連結される。プローブチップ104は、その対称軸に沿って走る中心プローブチップチャネル118と共に、円筒状に対称なドーム型へと形成された第3誘電材料122を有する。プローブチップチャネル118の最も右側端は、開口部120を定義する。内導体108a、108b及び保護コーティング112a、112bは両方とも、プローブチップチャネル118の円筒状壁を形成するようインターフェース116を連続的に越えて延びる。その結果、実施形態では、プローブチップチャネル118は、ツールがチャネル114を通じてプローブチップチャネル118へと容易に通ることができるよう、チャネル114に続いており、かつチャネル114と同じ直径を有する。
【0054】
動作中、同軸伝送線はマイクロ波信号生成器(図示せず)から信号を受信するよう接続され、内導体108a、108b及び外導体106a、106bは同軸伝送線102に沿ってマイクロ波エネルギーを運ぶための導波管として機能する。
【0055】
内導体108aの円筒状部分は、モノポール放射アンテナとして機能し、かつ同軸伝送線102からマイクロ波エネルギーを受けるよう連結され、それにより誘電材料122を介して周辺へとマイクロ波場を放射する。
【0056】
図2及び図3は、本発明に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。ここでの描写は、既に記述されてきたそれらの特徴を繰り返すものではない。特徴は、同一のものであると思われる以前の図面と同じ第2及び第3数字で標識される。図2に描写される実施形態では、皮下注射針224は、チャネル214及びプローブチップチャネル218によって形成されたプローブ200の中心チャネルの内部に置かれる。針224は、第1端226及び第2端228を有する。剛性金属で作られたガイドワイヤ232は、針224の第1端226へと取り付けられる。ガイドワイヤ232は、図2の視点において左右に、すなわちプローブチップチャネル218に沿って前後に針224を動かすのに用いられる。プラグ230は、プローブチップチャネル218の開口部220に置かれる。プラグ230は、内導体108a、108bによって形成されたプローブチップチャネル218の壁に密封シールを形成可能なゴム状材料で形成される。プラグ230はそこを通じて走る開口部を有し、針224は開口部を貫通できる。針224がプラグ230を貫通し、針224の第2端228がプラグ230から突出し、周辺へと露出する時、針224は露出位置にある。この位置では、液体が針224の第1端226に供給される時、治療またはその他のために、液体は針の第2端228を通じて周辺領域へと出ることができる。
【0057】
ガイドワイヤ232は、図2に描写される位置から図3に示される位置へと針224を引き込むよう用いられ得る。
【0058】
図3では、針の第2端がプローブチップチャネル318の内部に位置づけられ、周辺領域には露出しないように、針324は引き込まれているこれが引込位置である。針324がこの位置にある時、プラグ330の弾性的に変形可能な性質は、自身を確実に密封し、プローブチップチャネル318が周辺へと出ることを防ぎ、液体または他の物質が周辺からプローブチップチャネル318に入ってその内容物が汚染されるのを防ぐ。図3に示される針324の引込位置から、図2に描写される露出位置へと針を戻すようプラグ330を通じて針を押し戻すのにガイドワイヤが用いられてもよい。
【0059】
図4、5及び6は、異なるプローブチップ形状を有する本発明の代替的実施形態を示す。図4のプローブチップ404は、円錐形状である類似の実施形態では、開口部520を取り囲む円錐の端部は、湾曲しているかまたは傾斜していてもよい。
【0060】
図5のプローブチップ504は、ドーム型であり、図1から3に示される実施形態に類似しているが、誘電材料522のドームはより浅く、したがってプローブチップチャネル518はより短い。
【0061】
図6に示される実施形態では、プローブチップ604は、誘電材料622aの円筒状部分及び半球状部分622bで形成される。2つの部分は連続しており、一体的に形成されている。破線は、単に半球状部分622bから円筒状部分622aを説明するものであり、不連続や結合を表すものではない。
【0062】
図7は、本発明の他の実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。図7に示される電気手術器具700では、プローブチップ704のアンテナ構造は前の実施懈怠に記述されたものとは異なる。プローブチップチャネル718の壁を形成する内導体708は、開口部720で終結するよりもむしろ前の実施形態のように開口部から出て延び、誘電材料722の外面を覆うよう折れ曲がって周囲に戻る。誘電材料722を覆う伝導材料の部分734は、外導体706a、706bから電気的に隔離される。例えば、空間736は、プローブチップの円周の周り全てに置かれることができる。図8は、図7に類似した実施形態を示す。図8に示される実施形態では、同軸伝送線の誘電材料810a、810bがプローブチップ804における誘電材料822と連続しているという2つの点でのみ異なる。先行の実施形態の全てにおける同軸伝送線及びプローブチップのために同じ誘電材料が用いられてもよい。
【0063】
図9は、本発明の他の実施形態に従う電気手術器具の一部を通じた長手方向部分を示す概略図である。ここで、内導体908a、908bによって定義された同軸伝送線の中空内に置かれたチャネル914の構造は異なっている。内導体908a、908bによって定義されたチャネル内は内腔構造であり、その一般的な断面は図10に示される。内腔構造は、円筒状外壁942a、942b及び2つのチャネルを定義する仕切壁938、メインチャネル914(他の実施形態の全てにあるような)及び小さな針チャネル940を有する。針チャネル940は、メインチャネル914よりも外径が小さく、針924自体よりも幅広くなく、他の実施形態では、針チャネル940は針と同じ直径になるような形状であってもよい。この実施形態では、針の第1端926に周辺に投与する液体を供給するために、針チャネル940は液体で満たされてもよい。針チャネル940がメインチャネル914から分離しているため、本実施形態ではプラグは必要としない。メインチャネル914は必要に応じて周辺へと分離したアイテムを運ぶのに用いられ得る。
【0064】
図11及び12は、本発明を操作するためにハンドヘルドコントローラ(本明細書では「ハンドピース」とも呼ばれる)で用いられ得るコネクタ1100及び1200の概略図である。これらの図面で示されるケーブルの詳細は示されないが、より詳細にはケーブル部1170、1270は、図1から9のいずれか1つにおける細長いプローブと対応しており、かつ大きな同軸伝送線部は、より大きな直径を有する以外は類似した構造である。
【0065】
より詳細には、これらの図面は図1から9に示されるようにマイクロ波信号生成器と同軸伝送線の間におけるそのインピーダンス整合によるメカニズムを説明する。図10では、ハンドピース1100は、液体源(図示せず)からハンドピース1100へアドレナリンといった液体を送達する液体供給構造(図示せず)へと入力1120で連結される。先行の図面に示されるように例えば102である同軸伝送線に対応するより小さな直径のケーブル1170へと送信するために、入力1120は大きな同軸伝送線部1140の中心で中空のチャネルへと直接供給される。
【0066】
マイクロ波信号生成器(図示せず)によって生成されたマイクロ波信号は、マイクロ波供給構造(同様に図示せず)によって入力1110へと送信される。入力1110から、マイクロ波信号は1/4波変圧器1130を通じて大きな同軸伝送線部1140の内導体及び外導体へと通り、1/4波変圧器1130は大きな同軸伝送線のインピーダンスをマイクロ波供給構造の入力インピーダンスと整合させるよう機能する。
【0067】
1/4波変圧器のためのインピーダンス整合は、以下の方程式を用いて計算される。
【0068】
【数1】
及びZは、入力インピーダンス及び出力インピーダンスである。
【0069】
大きな同軸伝送線部1170のインピーダンスは、マイクロ波供給構造のインピーダンスとケーブル1140の間の中間値である。マイクロ波が入るポイントから先細り部1150の開始への大きな同軸伝送線部の長さがλ/2の整数倍であり、λはマイクロ波信号生成器によって生成されたマイクロ波の波長であり、大きな同軸伝送線部を「不可視」にし、かつケーブル1140との整合を向上させることを可能にする。ケーブルにインターフェースでの反射による望ましくない電力ロスを引き起こし得る急なステップがないことを保証するために、マイクロ波信号はその後、45°の先細り部1150を通じて小径ケーブル1170へと運ばれる。先細り部1150から、マイクロ波信号はケーブル1170へと運ばれる。
【0070】
代替的実施形態では、図11に概略的に示されるように、大きな同軸伝送線部1140はケーブル1170と同じインピーダンスを有することを確実にする形状を有する。このように、さらなるインピーダンス整合装置は必要とされない。適切な形状は以下の方程式から解明され得る。
【0071】
【数2】
b/aは外導体の内径と内導体の外形との比を表し、Zは変圧器のインピーダンスであり、εrは誘電材料の誘電率である。
【0072】
図12は、代替的ハンドピースを示す。図12では、図11のように、ハンドピース1200は、液体源(図示せず)からハンドピース1200へアドレナリンといった液体を送達する液体供給構造(図示せず)へと入力1220で連結される。先行の図面に示されるように例えば102である同軸伝送線に対応するより小さな直径のケーブル1170へと送信するために、入力1220は大きな同軸伝送線部1240の中心で中空のチャネルへと直接供給される。
【0073】
マイクロ波信号生成器(図示せず)によって生成されたマイクロ波信号は、マイクロ波供給構造(同様に図示せず)によって入力1210へと送信される。入力1210から、マイクロ波信号は1/4波変圧器1230を通じて大きな同軸伝送線部1240の内導体及び外導体へと通り、1/4波変圧器1230は大きな同軸伝送線のインピーダンスをマイクロ波供給構造の入力インピーダンスと整合させるよう機能する。信号はその後、第2の1/4波変圧器1260を通過する前に第1の45°先細り構造1250を通過し、そこから信号がケーブル1270で入射する。この実施形態では、2つの1/4波変圧器1230と1260を組み込むことで、1/4波変圧器1230、1260がマイクロ波供給構造とケーブル1270間のインピーダンス整合を確実にするので、同軸伝送線の大部分があらゆる形状を持つことを可能にする。
【0074】
図13は、前述の電気手術器具へとマイクロ波エネルギーと液体を供給するのに用いられ得る近位コネクタ1300を示す。近位コネクタ1300は、外側本体1304の近位端に取り付けられたSMAコネクタといった標準同軸コネクタ1302を備える。同軸コネクタ1302は、マイクロ波信号生成器(図示せず)からマイクロ波エネルギーを運ぶことができる従来式同軸ケーブル(図示せず)を受けるよう配置される。外部本体1304は、前述の本発明の一部を形成する中空の同軸伝送線1306の近位部をその遠位端で受けるよう配置される。
【0075】
外部本体1304内で、内導体1312及び中空の内部誘電管1314は、外導体1316及び同軸伝送線の第1誘電材料1318の近位終結部から離れて延びる。内導体1312及び中空の内部誘電管1314は、近位コネクタ1300の内部本体1320内に受けられ、この実施例では短い誘電管である。内導体1312は内部本体1320と電気接触し、内部本体1320内で終結する。中空の内部誘電管1314は内部本体1320を通じて延び、その側面に形成された開口部を通じて出る。
【0076】
内部本体1320は、同軸コネクタ1302の内部導電素子1322に電気接続される(例えばはんだ付けによって)。このように、同軸伝送線1306の内導体1312は、マイクロ波エネルギーを送達する同軸ケーブルの内導体に連結される。
【0077】
外部本体1304は、同軸伝送線1306の外導体1316へと(例えばはんだ1310で)電気接続された遠位フェルール1308を有する。外部本体1304及びその遠位フェルール1308は誘電材料から作られ、かつ同軸コネクタ1302を介してマイクロ波エネルギーを送達する同軸ケーブルの外導体へと電気接続される。
【0078】
絶縁スリーブ1324は、内部導電素子1322を外部本体1304から隔離する。
中空の内部誘電管1314は、外部本体1304を通じて液体源(図示せず)へと延びる。(例えばPTFEから作られた)誘電スペーサ1326は、内部本体1320と外導体1316の近位端を分離する(かつ、確実にその間を電気的に隔離する)。
【0079】
図13に示される近位コネクタ1300の寸法は、同軸ケーブルと同軸伝送線1306の間で1/4波インピーダンス変圧器として機能するよう、選択されてもよい。
【0080】
本明細書に論じられる寸法及び材料を使用して、同軸伝送線1306は、おおよそ14Ωの特性インピーダンスを有してもよい。標準同軸コネクタの典型的な特性インピーダンスは、50Ωである。近位コネクタにおける内部本体1320及び外部本体1304の直径は、1/4波長と等しい長さLのために必要なインピーダンスを供給するようセットされ得る。この実施例における内部本体1320及び外部本体1304は、Z=26.5Ω、a=4mm、b=6.1mm及びL=12.9mmであり、a及びbは内導体の外径及び外導体の内径とそれぞれ対応しているというこれらの特性を持つ空気で満たされた同軸線(εr=1)を形成する。
【0081】
角度(例えば45°)を付けて同軸伝送線1306の縦軸に延びる中空の内部誘電管1314のための経路を供給することは、変圧器自体の動作とのあらゆる干渉を制限する。管の小径によって、導体を直接通過する時においても、優れた整合がマイクロ波源とケーブル管にさらに見られた。
【0082】
図14は、本発明の他の実施形態である電気手術器具の外面図を示す。この実施形態は図1と同一であり、プローブチップがCorning社によって開発された機械加工可能なガラスセラミックである、Macorから作られた環状のチップ本体1402を備えると思われる。Macorは、周波数の範囲にわたるその優れた熱的かつ電気的絶縁及び機械加工の容易さによってこの試作品のために選択された。
【0083】
図14に示された構造を有する一連のチップは、肝臓への放射時にシミュレーションされた。図15は、選択されたチップ設計の電力密度分布を示す。チップの遠位端では74.43dBm/mの最小電力密度を有する領域1502がある。3.49kJkg-1-1の特定熱密度及び1060kg/mの組織密度であるとすれば、組織1cm内の凝固を達成するために必要なエネルギーはおおよそ3.7Jであると計算され得る。凝固を達成するために、85.1Jほどの総エネルギー要件を与えるよう組織はおおよそ23℃で加熱される必要がある。放射チップの現在の設計におけるシミュレーション毎に、これは領域1502において0.3sで、かつ領域1504において8.5sで達成され得る。
【0084】
図16は、3つの異なるチップ長のためのリターンロス計測を示す。線1602は3.5mmのチップ長に対応する。線1604は3mmのチップ長に対応する。線1606は2.5mmのチップ長に対応する。シミュレーションされた結果は、3mmのチップが、おおよそ5.8GHzで-16dBのリターンロスを与える組織へのより良い整合を供給することが見られ得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16