(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890346
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】スライドファスナ付き縫製品
(51)【国際特許分類】
A44B 19/34 20060101AFI20210607BHJP
A41D 10/00 20060101ALI20210607BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
A44B19/34
A41D10/00 B
A41D10/00 G
A41D13/12 163
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-223701(P2019-223701)
(22)【出願日】2019年12月11日
(65)【公開番号】特開2021-90654(P2021-90654A)
(43)【公開日】2021年6月17日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】500294800
【氏名又は名称】松本ナ−ス産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 行生
【審査官】
▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−078811(JP,A)
【文献】
特開2016−077626(JP,A)
【文献】
特開平10−204709(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3202032(JP,U)
【文献】
特許第6712623(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/00−19/64
A41D 5/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のファスナチェーンがスライダによって開閉され、少なくとも一方の端部を開くと、開かれたファスナチェーンの端部に箱体が露出するスライドファスナを備えた縫製品において、
前記箱体を有する側のファスナチェーンの端部に、前記ファスナチェーンが開いた状態で前記箱体の表裏両面を覆うカバー部材が取り付けられ、
前記カバー部材は、一枚の布体またはシート片を前記ファスナチェーンの延長先で折り返し、その折返しラインに交差する片側の縁部を、前記箱体を有する側のファスナチェーンと当該縫製品本体との縫合ラインに沿って、当該縫製品の表裏両面に縫合してなる
ことを特徴とするスライドファスナ付き縫製品。
【請求項2】
請求項1に記載されたスライドファスナ付き縫製品において、
前記カバー部材の折返しラインに近接する部分は、当該縫製品本体の端部よりも前記ファスナチェーンの延長先へはみ出し、そのはみ出し部分は当該縫製品本体に縫合されていない縫い残し部となされている
ことを特徴とするスライドファスナ付き縫製品。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたスライドファスナ付き縫製品において、
前記カバー部材の表側部分に、前記スライドファスナの閉止端部より広い幅のフラップが延設され、前記フラップが当該縫製品本体の開閉箇所をまたいで相手側部分まで張り出し、前記相手側部分の表面にロック付きの係着手段を介して着脱自在に留め付けられる
ことを特徴とするスライドファスナ付き縫製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、スライドファスナが取り付けられた衣服その他の縫製品に関する。
【背景技術】
【0002】
介護・医療施設では、疾病、障害、高齢等によって寝たきりになる人を介護するための衣服として、例えば特許文献1〜4等に開示されているような、つなぎ寝巻タイプの介護用衣服が利用されている。その種の介護用衣服の概略的な構成を
図1に示す。
【0003】
図示の介護用衣服1は、2本のスライドファスナ2、2が、襟元部11から前身頃(左身頃部14Lと右身頃部14Rとの間)を経由して右脚の裾部12に至る正面開閉箇所と、右脚の裾部12から股間を経て左脚の裾部13に至る内股開閉箇所と、に取り付けられており、それらの開閉箇所を開くことで、着替えや診察、排泄処理等を容易に行えるように構成されている。これらに加えて、背中部分や、脇下から袖口に至る部分にスライドファスナを取り付けたものもある。さらに、それらのスライドファスナ2の閉止端部に、該端部の表側を覆うフラップを取り付け、そのフラップをロック付きのスナップボタンやストラップで衣服に留め付けることにより、被介護者自身による不適切な開閉操作を防ぐようにしたものもある(特許文献1、2、3)。また、スライドファスナ2の閉止端部の裏側に柔軟な緩衝部材を取り付けて、該端部に取り付けられる金属部品等が身体に接触する際の圧迫感や痛感を緩和したものも開示されている(特許文献4)。
【0004】
ところで、介護・医療施設等で日々、大量に使用される介護用衣服は通常、洗濯サービス業者によって定期的に回収され、まとめて洗濯されて、繰り返し使用される。かかる洗濯作業は、強い回転力を有する大型の洗濯乾燥機を用いて行われるため、その激しい攪拌によってスライドファスナを開閉するスライダが破損したり、スライダに糸屑が絡みついて動かなくなったりすることがある。
【0005】
そこで、本出願人は、洗濯に際してあらかじめスライドファスナからスライダを取り外しておくことができ、また、スライダが故障した場合でもスライダを容易に交換できるようにしたスライドファスナ付きの介護用衣服を開発し、実用化している。そのスライドファスナの概略的な構成を
図2に示す。
【0006】
このスライドファスナ20は、両端部いずれからでも開閉可能な、いわゆる両開きダブルファスナである。左右一対のファスナチェーン31(31L、31R)に、二個のスライダ4(4A、4B)が、左右のエレメント列32(32L、32R)を分離させる側を互いに突き合わせた「頭合せ」の向きで、介護用衣服1の開閉箇所(例示の部位では、左身頃部14Lと右身頃部14Rとの間)に取り付けられている。ファスナチェーン31の両端部には、蝶棒33と、箱棒34および箱体35と、によって構成される開離嵌挿具が取り付けられている。箱棒34と箱体35とは一体化されている。蝶棒33は、スライダ4の胴部41に形成されたレール(エレメント列を噛合・分離させるY字状の空洞部分)を通り抜けて、箱体35に形成された溝部(図示せず)に嵌挿されるように形成されている。両端部の開離嵌挿具を嵌挿させた状態で、二個のスライダ4同士をファスナチェーン31の中間位置で互いに突き合わせると、スライドファスナ20が全閉になる。また、一方のスライダをファスナチェーン31の一端部まで移動させると、箱体35から蝶棒33を抜き取ってファスナチェーンの端部同士を分離させることができ、二個のスライダ4をそれぞれファスナチェーン31の一端部および他端部に移動させると、両ファスナチェーン31を全長にわたって完全に分離することができる。
【0007】
さらに、このスライドファスナ20は、その両端部において蝶棒33と、箱棒34および箱体35とが互いに逆配置になるように取り付けられている。したがって、ファスナチェーン31同士が分離した状態で、各スライダ4をそれぞれ反対側の端部まで移動させると、当該反対側の蝶棒33を通過させるようにしてスライダ4をファスナチェーン31から抜き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−300706号公報
【特許文献2】特開10−204709号公報
【特許文献3】登録実用新案第3202032号公報
【特許文献4】実開平6−5622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した両開き式のスライドファスナ20は、ファスナチェーン31の端部を開いて分離させたとき、その端部に開離嵌挿具が露出する、
図2に示すように、蝶棒33は凹凸の小さい形状をなしているが、これに相対する箱体35は角張った箱状をなして、エレメント列32から大きく突出している。そのため、ファスナチェーン31同士を分離した状態で介護用衣服1を洗濯すると、洗濯乾燥機内での撹拌中に、箱体35が介護用衣服1その他の洗濯物や洗濯槽を損傷してしまうおそれがある。
【0010】
本発明はかかる事象に着目して想起されたものであり、両開きダブルファスナ付きの介護用衣服に限らず、少なくとも一方の端部を開いたとき、その開かれた端部に角張った箱体が露出するタイプのスライドファスナが取り付けられた衣服や肌着等の衣類全般、および同様のスライドファスナが取り付けられた寝装品、バッグ類、日用品等を含む様々な縫製品について、その箱体が洗濯時に他の洗濯物等を損傷するのを防止することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するために本願が開示する発明が採用した構成は、一対のファスナチェーンがスライダによって開閉され、少なくとも一方の端部を開くと、開かれたファスナチェーンの端部に箱体が露出するスライドファスナを備えた縫製品において、前記箱体を有する側のファスナチェーンの端部に、前記ファスナチェーンが開いた状態で前記箱体の表裏両面を覆うカバー部材が取り付けられ、前記カバー部材は、一枚の布体またはシート片を前記ファスナチェーンの延長先で折り返し、その折返しラインに交差する片側の縁部を、前記箱体を有する側のファスナチェーンと当該縫製品本体との縫合ラインに沿って、当該縫製品の表裏両面に縫合してなることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記スライドファスナ付き縫製品において、前記カバー部材の折返しラインに近接する部分は、当該縫製品本体の端部よりも前記ファスナチェーンの延長先へはみ出し、そのはみ出し部分は当該縫製品本体に縫合されていない縫い残し部となされていることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記スライドファスナ付き縫製品において、前記カバー部材の表側部分に、前記スライドファスナの閉止端部より広い幅のフラップが延設され、前記フラップが当該縫製品本体の開閉箇所をまたいで相手側部分まで張り出し、前記相手側部分の表面にロック付きの係着手段を介して着脱自在に留め付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
前述のように構成されるスライドファスナ付き縫製品は、箱体が露出する側のファスナチェーンの端部に、箱体の表裏両面を覆うカバー部材が取り付けられているので、ファスナチェーンの端部が開いた状態でも常時、箱体がこのカバー部材によって包囲される。したがって、スライドファスナを開いたまま洗濯しても、箱体が洗濯物や洗濯槽等を損傷するのを防ぐことができる。
【0015】
さらに、そのカバー部材は、一枚の布片をファスナチェーンの延長先で折り返し、その折返しラインに交差する片側の縁部を、箱体を有する側のファスナチェーンと当該縫製品本体との縫合ラインに沿って当該縫製品本体の表裏両面に縫合することで、相手側のファスナチェーンの蝶棒に向かって常時、開口した袋状になる。このようなカバー部材であれば、相手側の蝶棒の挿脱や、スライダの着脱・交換等の妨げにもならず、良好な使い勝手が担保される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】スライドファスナによって開閉される、つなぎ寝巻タイプの介護用衣服の概略的な構成を示す正面図である。
【
図2】両開き式のスライドファスナの構成を示す正面図である。
【
図3】本願が開示する発明の一実施形態に係る介護用衣服の要部拡大図であって、スライドファスナの端部に取り付けられたカバー部材の表側および裏側の形態を示す図である。
【
図4】
図3に示すカバー部材が取り付けられたスライドファスナを閉じた状態を示す要部拡大図である。
【
図5】カバー部材の他の実施形態を示す要部拡大図である。
【
図6】
図5に示すカバー部材が取り付けられたスライドファスナを閉じた状態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態は、
図1に示した介護用衣服1への適用を想定したものであるため、
図1に示した介護用衣服1、および
図2に示したスライドファスナ20の構成要素と実質的に同一の構成要素には共通の符号を付して、それらに関する重複説明は省略する。
【0018】
図3〜
図4は、本願が開示する発明を、介護用衣服1の襟元部11(
図1中の二重丸囲み部分)に適用した例を示している。この襟元部11は、
図2に示した両開き式のスライドファスナ20によって開閉される。スライドファスナ20は、ファスナテープ(基布)36の片側縁にエレメント列32(32L、32R)が設けられた左右一対のファスナチェーン31(31L、31R)と、互いのエレメント列32を対置させた両ファスナチェーン31の間に装着されて両エレメント列32を噛合・分離させるスライダ4(4A、4B)と、を具備する。ファスナテープ36の他側縁(エレメント列32の反対側)は、介護用衣服1本体の左身頃部14Lおよび右身頃部14Rの裏側にそれぞれ重ねて縫い付けられている。また、スライダ4の胴部41には引手42が取り付けられている。
【0019】
左身頃部14Lに取り付けられたファスナチェーン31Lのエレメント列32Lの上端部には、スライダ4の胴部41を通り抜ける形状の蝶棒33が取り付けられている。また、右身頃部14Rに取り付けられたファスナチェーン31Rのエレメント列32Rの上端部には、箱棒34と箱体35とが一体化されて取り付けられており、これらによってスライダ4の抜け出しが規制されている。
【0020】
両開き式のスライドファスナ20にはスライダ4が二個、装着されるが、
図4に示すように、上側のスライダ4は、胴部41の尻側(エレメント列32同士を噛合させる側)を上向きにしてファスナチェーン31に装着される。このスライダ4を下ろすと襟元部11が閉じ、上端部まで引き上げると襟元部11が開いて、両ファスナチェーン31の端部同士を分離させることができる。
【0021】
本願が開示する発明の要部は、
図3に示すように、箱体35が露出して突出する側のファスナチェーン31Rの端部に、箱体35の表裏両面を覆うカバー部材5が取り付けられている点にある。カバー部材5は、一枚の柔軟な布体またはシート片を用いて形成される。例示のカバー部材は、例えば介護用衣服1の本体と同じ生地を表裏2枚重ね、その周縁部を縫合した布体によって形成されている。カバー部材5は、一対のファスナチェーン31を閉じ合わせた幅よりも幅広の縦長形状をなし、片側の長辺が略直線状で、他側の長辺が略円弧状に形成されている。このカバー部材5が、長手方向の中間付近で折り返され、その折返しラインがファスナチェーン31Rの延長先に配置されて、該ファスナチェーン31Rの端部を覆うように、右身頃部14Rの表裏両面に重ねられる。そして、折返しライン51に交差する略直線上の縁部52が、ファスナチェーン31Rと右身頃部14Rとの縫合ラインに沿って、右身頃部14Rの表裏両面に縫合される。
【0022】
より詳細には、カバー部材5の折返しライン51が右身頃部14Rの端部よりもファスナチェーン31の延長先へ数ミリ程度、はみ出すように配置されており、そのはみ出し部分は右身頃部14Rに対して縫合されない縫い残し部53となっている。また、折返しライン51によって折り返されたカバー部材5のファスナチェーン31Rに沿う長さは、箱棒34および箱体35と、二個のスライダ4を引手42も含めて覆うことのできる程度の長さ(
図4参照)であり、表側部分よりも裏側部分のほうが若干、長くなっている。
【0023】
こうして介護用衣服1の右身頃部14Rに取り付けられたカバー部材5は、スライドファスナ20の開閉状態にかかわらず常に、ファスナチェーン31Rの端部に取り付けられた箱棒34および箱体35を表裏両面から包囲する。したがって、スライドファスナ20を開いたまま洗濯しても、箱体35の角部が洗濯物や洗濯槽等を損傷するのを防ぐことができる。
【0024】
折返しライン51によって折り返されたカバー部材5は、左身頃部14L側に向かって半分開いた袋状になっているので、スライダ4を端部まで引き上げたり、そのスライダ4の胴部41に左身頃部14L側の蝶棒33を挿脱する際にも、それらの操作を妨げない。折返しライン51と、それに交差して右身頃部14Rの表裏両面に縫合された略直線状の縁部52とは、半分開いた袋状の形態を好適に保型する。カバー部材5の折返しライン51に近接する箇所は右身頃部14Rよりもはみ出した縫い残し部53になっていて、ファスナチェーン31の上端部とカバー部材5の折返しライン51との間に数ミリ以上のクリアランスが設けられるので、スライダ4をファスナチェーン31に着脱したり、不具合の生じたスライダ4を交換したりする作業も、無理なく行うことができる。また、カバー部材5やファスナチェーン31を介護用衣服1から取り外して交換する必要が生じた場合は、カバー部材5の縫い残し部53にハサミを入れることで、それらの縫合箇所を容易にほどくことができる。
【0025】
このカバー部材5は、両開き式のスライドファスナ20における反対側の端部、つまり例示の介護用衣服1にあっては、襟元部11だけでなく、右脚の裾部12にも取り付けることができる。右脚の裾部12から左脚の裾部13に至る内股開閉箇所に取り付けられたスライドファスナについても同様である。それらの各部位(
図1中の一重丸囲み部分)において、カバー部材5の裏側部分は、スライドファスナ20の端部に取り付けられる金属部品等が身体に接触する際の圧迫感や痛感を緩和する作用もなす。
【0026】
図5〜
図6は、前述した介護用衣服1の襟元部11に取り付けられるカバー部材5の他の実施形態を示している。例示のカバー部材5は、右身頃部14Rに取り付けられたファスナチェーン31Rの端部を表裏両面から覆う構成については前述の実施形態と同じであるが、カバー部材5の表側部分に、襟元部11の開閉箇所をまたいで左身頃部14Lの方まで張り出すフラップ54が設けられている。このフラップ54は、スライドファスナ20を閉じたときの閉止端部の幅よりも十分に広い幅を有して、スライドファスナ20の閉止端部を、スライダ4の引手42まで含めて表側から大きく覆うように設けられる。フラップ54が張り出した側の反対側の縁部52は、ファスナチェーン31Rと右身頃部14Rとの縫合ラインに沿って、その縫合ラインよりもやや右身頃部14Rの内側寄りに縫合されている。このように、ファスナチェーン31Rの縫合ラインと、カバー部材5の縁部52の縫合ラインとを数mm〜十数mm離すことで、ファスナチェーンの縫い付けや交換修理等が容易になる。
【0027】
フラップ54の裏面は、ロック付きのスナップボタン6等の係着手段を介して、左身頃部14Lの表面に留め付けられる。ロック付きのスナップボタン6は、略円形の雄部材61と雌部材62とを重ねて嵌合させる金属製または樹脂製の留め具で、例えば前述の特許文献1に記載された「プッシュスナップ部品」と同様の構成を具備する。雄部材61または雌部材62の一方に板バネ等を利用したロック機構が組み込まれ、該部材の中央を押し込むなどして板バネ等を変形させると、板バネ等が相手側部材に係合して、雄部材61と雌部材62とが容易には外れなくなる。スライドファスナ20の閉止端部を覆うフラップ54を、このようなロック付きのスナップボタン6で介護用衣服1に留め付けると、例えば認知症の利用者等による不適切な開閉操作を防ぎやすくなる。
【0028】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない部材・部品の形状や構造、位置関係、接合形態等を、例示形態と実質的に同様の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変して実施することができる。
【0029】
具体的には、本願が開示する発明は、例示した介護用衣服だけでなく、スライドファスナが取り付けられて洗濯される可能性がある衣服や肌着等の衣類全般に適用可能である。そのスライドファスナの構造も、例示した両開きダブルファスナに限定されるものではなく、少なくとも一端部を開いたときに箱体が露出するタイプのものであればよい。スライドフスナが設けられる位置は、衣類のどの部位であってもよいし、箱体の取付位置も、例示形態と同じである必要はない。この「箱体」には、洗濯時に他の洗濯物や洗濯槽等を損傷しそうな形状を有する類似の突起物も包含される。
【0030】
カバー部材の材質は、布体に代えて、例えば軟質合成樹脂や合成皮革等からなるシート片を利用するものであってもよい。正面から見たカバー部材の形状は、意匠性等を考慮して適宜、変形されてもよい。カバー部材を衣類に縫い付ける位置や、その縫い方は、衣類およびスライドファスナの形態や使い勝手等を考慮して、適宜、調整されればよい。カバー部材に形成したフラップの係着手段についても、公知のストラップ部材や施錠部品等を適宜利用することができる。
【0031】
さらに、本願が開示する発明は、衣類だけでなく、同じような形態のスライドファスナが取り付けられる布製のバッグ類、寝装品(例えば布団カバーや枕カバー等)、インテリア用品(例えばクッション、家具カバー等)、日用品(例えば洗濯ネット、リネンバッグ、収納バッグ等)、レジャー用品(例えばテント、雨具、シュラフ等)、ペット用品(例えばペット用衣服、キャリーケース等)、自転車・自動車用品(例えばシートカバー等)等を含む縫製品全般にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願が開示する発明は、スライドファスナが取り付けられる衣類全般のほか、同様のスライドファスナが取り付けられる様々な縫製品に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 介護用衣服(縫製品)
11 襟元部
12 右脚の裾部
13 左脚の裾部
14R 右身頃部
14L 左身頃部
2 スライドファスナ
20 スライドファスナ
31(31R、31L) ファスナチェーン
32(32R、33L) エレメント列
33 蝶棒
34 箱棒
35 箱体
36 ファスナテープ
4(4A、4B) スライダ
41 胴部
42 引手
5 カバー部材
51 折返しライン
52 略直線状の縁部
53 縫い残し部
54 フラップ
6 スナップボタン
61 雄部材
62 雌部材