特許第6890351号(P6890351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6890351
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】フィルム巻替装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/025 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   B65H23/025
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-18118(P2020-18118)
(22)【出願日】2020年2月5日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154130
【氏名又は名称】株式会社不二鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠山 哲則
【審査官】 松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−098370(JP,A)
【文献】 実開平03−089196(JP,U)
【文献】 実開昭56−078898(JP,U)
【文献】 特開2015−131463(JP,A)
【文献】 特開2019−215499(JP,A)
【文献】 特開平04−269577(JP,A)
【文献】 実開平03−062055(JP,U)
【文献】 特開平07−257793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H16/00−16/10
B65H18/00−18/28
B65H23/00−23/16
B65H23/24−23/34
B65H27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを繰り出す繰出部と、
前記繰出部から繰り出されるフィルムを搬送する複数の搬送ローラと、
前記搬送ローラによって搬送されるフィルムを巻き取る巻取部とを備え、
前記繰出部から前記巻取部に向かう正方向とその逆の逆方向とにフィルムを搬送可能に構成されているフィルム巻替装置であって、
前記搬送ローラによって搬送されるフィルムのしわを取るためのエキスパンダーロールと、
前記エキスパンダーロールがフィルムに対して接触または離間するように、前記エキスパンダーロールを移動させる移動部とを備え、
前記エキスパンダーロールは、軸方向の中央部が膨出するように円弧状に湾曲された軸部材と、前記軸部材に回転可能に設けられたスリーブとを有し、前記軸部材の両端部に対して中央部が配置される向きを調整可能に構成され、
前記エキスパンダーロールおよび前記移動部は、二組設けられており、
前記複数の搬送ローラは、前記繰出部と正方向における上流側のエキスパンダーロールとの間に配置される第1ローラと、前記上流側のエキスパンダーロールと正方向における下流側のエキスパンダーロールとの間に配置される第2ローラと、前記下流側のエキスパンダーロールと前記巻取部との間に配置される第3ローラとを含み、
フィルムが搬送される場合に、前記軸部材の両端部に対して中央部がフィルムの搬送方向の下流側に配置された状態で、前記スリーブがフィルムに接触されるように構成され、
フィルムの搬送方向が切り替えられる場合に、前記第1ローラおよび前記第3ローラが回転自在にされるとともに、前記移動部により前記スリーブをフィルムから離間させた状態で、前記軸部材の両端部に対する中央部の向きが調整されるように構成されていることを特徴とするフィルム巻替装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム巻替装置において、
前記エキスパンダーロールのスリーブは、フィルムの搬送方向が切り替えられる場合に、回転自在になるように構成されていることを特徴とするフィルム巻替装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルム巻替装置において、
前記軸部材の両端部に対する中央部の向きは、フィルムの種類に応じて調整されることを特徴とするフィルム巻替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム巻替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原反から繰り出されるフィルムを巻取軸に巻き取るフィルム巻替装置が知られている。このフィルム巻替装置は、原反から巻取軸に向かう正方向にフィルムを搬送可能に構成され、かつ、巻取軸から原反に向かう逆方向(正方向と反対の方向)にフィルムを搬送可能に構成されている。これにより、フィルムの巻取軸への巻替時に、正方向に搬送されるフィルムの検査を行い、フィルムに不良箇所が発見された場合に、フィルムを逆方向に搬送して不良箇所を取り除くことが可能である。
【0003】
また、従来では、搬送されるフィルムのしわを取るためのエキスパンダーロールが知られている(たとえば、特許文献1参照)。エキスパンダーロールは、軸方向の中央部が膨出するように円弧状に湾曲された軸部材と、軸部材に回転可能に設けられたスリーブとを有する。エキスパンダーロールは、軸部材の両端部に対して中央部がフィルムの搬送方向の下流側に配置された状態で、スリーブがフィルムに接触されている。このため、スリーブに接触しながら通過するフィルムが幅方向の外側に拡げられることにより、しわが除去されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−89196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなエキスパンダーロールは、軸部材の中央部をフィルムの搬送方向の下流側に配置する必要があるので、正方向および逆方向にフィルムを搬送するフィルム巻替装置に適用することが困難である。すなわち、フィルムが正方向に搬送されるときに、しわが除去されるようにエキスパンダーロールが配置されている場合には、フィルムの正方向への搬送時にしわを除去することが可能であるが、フィルムの逆方向への搬送時にしわを除去することができないという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、正方向および逆方向へのフィルムの搬送時にエキスパンダーロールによってしわを適切に除去することが可能なフィルム巻替装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるフィルム巻替装置は、フィルムを繰り出す繰出部と、繰出部から繰り出されるフィルムを搬送する複数の搬送ローラと、搬送ローラによって搬送されるフィルムを巻き取る巻取部とを備え、繰出部から巻取部に向かう正方向とその逆の逆方向とにフィルムを搬送可能に構成されている。フィルム巻替装置は、搬送ローラによって搬送されるフィルムのしわを取るためのエキスパンダーロールと、エキスパンダーロールがフィルムに対して接触または離間するように、エキスパンダーロールを移動させる移動部とを備える。エキスパンダーロールは、軸方向の中央部が膨出するように円弧状に湾曲された軸部材と、軸部材に回転可能に設けられたスリーブとを有し、軸部材の両端部に対して中央部が配置される向きを調整可能に構成されている。エキスパンダーロールおよび移動部は、二組設けられている。複数の搬送ローラは、繰出部と正方向における上流側のエキスパンダーロールとの間に配置される第1ローラと、上流側のエキスパンダーロールと正方向における下流側のエキスパンダーロールとの間に配置される第2ローラと、下流側のエキスパンダーロールと巻取部との間に配置される第3ローラとを含む。フィルム巻替装置は、フィルムが搬送される場合に、軸部材の両端部に対して中央部がフィルムの搬送方向の下流側に配置された状態で、スリーブがフィルムに接触されるように構成され、かつ、フィルムの搬送方向が切り替えられる場合に、第1ローラおよび第3ローラが回転自在にされるとともに、移動部によりスリーブをフィルムから離間させた状態で、軸部材の両端部に対する中央部の向きが調整されるように構成されている。
【0008】
このように、軸部材の両端部に対する中央部の向きが、フィルムの搬送方向の下流側になるように調整されることにより、正方向および逆方向へのフィルムの搬送時にエキスパンダーロールによってしわを適切に除去することができる。また、軸部材の両端部に対する中央部の向きの調整が、スリーブがフィルムから離間された状態で行われることにより、フィルムが傷つくのを抑制することができる。
【0010】
上記フィルム巻替装置において、エキスパンダーロールのスリーブは、フィルムの搬送方向が切り替えられる場合に、回転自在になるように構成されていてもよい。
【0011】
上記フィルム巻替装置において、軸部材の両端部に対する中央部の向きは、フィルムの種類に応じて調整されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィルム巻替装置によれば、正方向および逆方向へのフィルムの搬送時にエキスパンダーロールによってしわを適切に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態によるフィルム巻替装置の概略を示した模式図である。
図2図1のフィルム巻替装置のしわ取り部をスライド方向と直交する方向から見た図である。
図3図2のしわ取り部をスライド方向から見た図である。
図4図1のフィルム巻替装置において巻取ロールの巻径が増大した状態を示した図である。
図5図4のフィルム巻替装置においてエキスパンダーロールがフィルムから離間された状態を示した図である。
図6図5のフィルム巻替装置においてエキスパンダーロールの向きが変更された状態を示した図である。
図7図6のフィルム巻替装置においてエキスパンダーロールがフィルムに接触された状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
−構成−
まず、図1図3を参照して、本発明の一実施形態によるフィルム巻替装置100の構成について説明する。
【0016】
フィルム巻替装置100は、図1に示すように、原反150からフィルム151を繰り出して巻取軸160に巻き替えるように構成されている。フィルム151は、たとえば樹脂製であり、帯状に形成されている。原反150は、帯状のフィルム151が巻き付けられることによってロール状に形成されている。
【0017】
フィルム巻替装置100は、原反150から巻取軸160に向かう正方向Dfにフィルム151を搬送可能に構成され、かつ、巻取軸160から原反150に向かう逆方向(正方向Dfと反対の方向)Drにフィルム151を搬送可能に構成されている。これにより、フィルム151の巻取軸160への巻替時に、正方向Dfに搬送されるフィルム151の検査を行い、フィルム151に不良箇所が発見された場合に、フィルム151を逆方向Drに搬送して不良箇所を取り除くことが可能である。このフィルム巻替装置100は、繰出部1と、ガイドローラ2a〜2cと、搬送ローラ3a〜3kと、巻取部4と、しわ取り部5aおよび5bと、照明板6とを備えている。
【0018】
[繰出部]
繰出部1は、原反150が着脱可能であり、装着された原反150を回転可能に支持するように構成されている。繰出部1には繰出用モータ(図示省略)が設けられ、その繰出用モータによって原反150が駆動されるようになっている。繰出部1は、繰出用モータが正転されることにより、原反150からフィルム151が繰り出されるように構成されている。なお、繰出部1は、繰出用モータが逆転されることにより、原反150にフィルム151を巻き取ることが可能である。
【0019】
[ガイドローラ]
ガイドローラ2a〜2cは、原反150から繰り出されたフィルム151をガイドするために設けられている。ガイドローラ2a〜2cは、原反150と搬送ローラ3aとの間の所定位置に配置されており、その所定位置で従動回転するように構成されている。
【0020】
[搬送ローラ]
搬送ローラ3a〜3kは、原反150から繰り出されたフィルム151を巻取軸160に搬送するために設けられている。搬送ローラ3a〜3kは、ガイドローラ2cと巻取軸160との間の所定位置に配置されており、その所定位置で駆動回転するように構成されている。搬送ローラ3a〜3kは、1台の搬送用モータ(図示省略)と連結され、その搬送用モータによって駆動されるようになっている。搬送用モータが正転される場合に、搬送ローラ3a〜3kがフィルム151を正方向Dfに搬送するように構成されている。なお、搬送用モータによって回転される搬送ローラ3a〜3kの表面速度は同じになるように設定されている。また、搬送用モータが逆転されることにより、搬送ローラ3a〜3kがフィルム151を逆方向Drに搬送することが可能である。
【0021】
搬送ローラ3aは、ガイドローラ2cと後述するエキスパンダーロール51aとの間に配置されている。搬送ローラ3aと搬送用モータとの間の動力伝達経路にはクラッチ(図示省略)が設けられ、そのクラッチにより搬送ローラ3aと搬送用モータとを接続または遮断するように構成されている。クラッチにより動力伝達経路が遮断された場合には、搬送ローラ3aが回転自在になる。なお、搬送ローラ3aは、本発明の「第1ローラ」の一例である。
【0022】
搬送ローラ3b〜3hは、エキスパンダーロール51aと後述するエキスパンダーロール51bとの間に配置されている。搬送ローラ3b〜3hと搬送用モータとの間の動力伝達経路にはクラッチが設けられておらず、搬送ローラ3b〜3hと搬送用モータとが常に接続されている。なお、搬送ローラ3b〜3hは、本発明の「第2ローラ」の一例である。
【0023】
搬送ローラ3i〜3kは、エキスパンダーロール51bと巻取軸160との間に配置されている。搬送ローラ3i〜3kと搬送用モータとの間の動力伝達経路にはクラッチ(図示省略)が設けられ、そのクラッチにより搬送ローラ3i〜3kと搬送用モータとを接続または遮断するように構成されている。クラッチにより動力伝達経路が遮断された場合には、搬送ローラ3i〜3kが回転自在になる。なお、搬送ローラ3i〜3kは、本発明の「第3ローラ」の一例である。
【0024】
[巻取部]
巻取部4は、繰出部1に対して下流側(Y2方向側)に配置されている。巻取部4は、巻取軸160が着脱可能であり、装着された巻取軸160を回転可能に支持するように構成されている。巻取部4には巻取用モータ(図示省略)が設けられ、その巻取用モータによって巻取軸160が駆動されるようになっている。巻取部4は、巻取軸160が正転されることにより、搬送ローラ3kからのフィルム151を巻取軸160に巻き取るように構成されている。巻取軸160にフィルム151が巻き取られることによって巻取ロール152が形成される。なお、巻取部4は、巻取用モータが逆転されることにより、巻取ロール152からフィルム151を繰り出すことが可能である。
【0025】
巻取部4には、フィルム151を巻取ロール152に押圧するタッチローラ41が設けられている。タッチローラ41は、アーム41aの先端に回転可能に設けられ、従動回転されるようになっている。アーム41aは、基端を中心にして回動可能であり、タッチローラ41を巻取ロール152に押圧するように構成されている。また、巻取部4は、巻取ロール152の巻径(直径)の増大に応じて、タッチローラ41から離れる側(Y2方向側)に巻取軸160を移動させるように構成されている。
【0026】
[しわ取り部]
しわ取り部5aおよび5bは、搬送されるフィルム151のしわを取るために設けられている。しわ取り部5aは、搬送ローラ3aおよび3bの間に配置されており、エキスパンダーロール51aと、スライド部材52aと、ブラケット53aと、エアシリンダ54aとを含んでいる。なお、エキスパンダーロール51aは、本発明の「上流側のエキスパンダーロール」の一例であり、スライド部材52aは、本発明の「移動部」の一例である。スライド部材52a、ブラケット53aおよびエアシリンダ54aは、図2に示すように、エキスパンダーロール51aの軸方向(X1およびX2方向)の両端部にそれぞれ設けられている。
【0027】
ブラケット53aは、サイドフレーム7に取り付けられている。ブラケット53aには、図3に示すように、ガイドレール531aおよびラック532aが同じ方向に延びるように形成されている。
【0028】
スライド部材52aは、ブラケット53aにスライド移動可能に設けられ、エキスパンダーロール51aを支持するように構成されている。スライド部材52aは、搬送ローラ3aおよび3bの間のフィルム搬送経路に対してエキスパンダーロール51aを進退させるために設けられている。このスライド部材52aには、ガイドレール531aと係合するスライド係合部(ガイドシュー)521aが設けられている。このため、スライド部材52aは、ガイドレール531aに沿ってスライド移動可能にされている。また、スライド部材52aには、スライド部材52a同士を連結する連結ロッド55aが回転可能に設けられ、連結ロッド55aには、ラック532aと噛合するピニオン551aが取り付けられている。連結ロッド55aは、一対のスライド部材52aのスライド移動を同期させるために設けられている。スライド部材52aがガイドレール531aに沿ってスライド移動される場合には、ピニオン551aおよび連結ロッド55aが回転されるようになっている。
【0029】
エアシリンダ54aは、図1に示すように、スライド部材52aをスライド移動させるために設けられている。エアシリンダ54aは、シリンダ本体541aに対してピストン542aを進退させるように構成されている。シリンダ本体541aはサイドフレーム7に取り付けられ、ピストン542aはスライド部材52aに連結されている。
【0030】
エキスパンダーロール51aは、フィルム151を幅方向(X1およびX2方向)の外側に拡げてしわを取るために設けられている。このエキスパンダーロール51aは、図3に示すように、軸部材511aと、回転子(図示省略)と、スリーブ512aとを有する。
【0031】
軸部材511aは、軸方向(X1およびX2方向)の中央部が膨出するように円弧状に湾曲されている。軸部材511aの両端部は、それぞれスライド部材52aに支持されている。軸部材511aは、両端部に対して中央部が配置される向きを調整可能に構成されている。具体的には、スライド部材52aの一方(X1方向側のスライド部材52a)には、軸部材511aを移動させるための駆動力源である向き調整用モータ56aが設けられている。向き調整用モータ56aの出力軸561aは、歯車562aなどを介して軸部材511aの一方端部(X1方向側の端部)と繋がれるとともに、減速機563aを介してエンコーダ564aと繋がれている。このため、向き調整用モータ56aによって軸部材511aの中央部の向きを変更させることが可能である。また、エンコーダ564aによって向き調整用モータ56aの回転位置が検出され、その検出結果に基づいて軸部材511aの中央部の向きを算出することが可能である。軸部材511aの両端部に対する中央部の向きは、フィルム151の搬送方向および種類(材質や厚みなど)に応じて予め設定されている。そして、エンコーダ564aによって検出される軸部材511aの中央部の向きが予め設定された向きになるように、向き調整用モータ56aによって軸部材511aの中央部の向きが調整される。具体的に、軸部材511aの両端部に対して中央部は、フィルム151の搬送方向の下流側に配置され、かつ、下流側における位置がフィルム151の種類に応じて設定されている。
【0032】
回転子は、軸部材511aの外周部に配置され、軸方向に複数設けられている。回転子は、ベアリングを内蔵し、外周部にスリーブ512aが外装されている。すなわち、回転子は、軸部材511aとスリーブ512aとの間に介在され、スリーブ512aを軸部材511aに対して回転可能にするために設けられている。
【0033】
スリーブ512aは、円筒状に形成され、軸部材511aに倣って円弧状に湾曲されている。スリーブ512aは、軸部材511aに対して回転可能であり、フィルム151が巻き掛けられる外周面を有する。スリーブ512aは、駆動回転されるようになっている。具体的には、図2に示すように、スライド部材52aの他方(X2方向側のスライド部材52a)には、スリーブ512aを回転させるための駆動力源であるスリーブ駆動用モータ57aが設けられている。スリーブ駆動用モータ57aは、プーリ571aおよびベルト(図示省略)などを介してスリーブ512aの他方端部(X2方向側の端部)と連結され、スリーブ512aを回転させることが可能である。スリーブ駆動用モータ57aが正転される場合に、スリーブ512aがフィルム151を正方向Dfに搬送するように構成されている。なお、スリーブ駆動用モータ57aが逆転されることにより、スリーブ512aがフィルム151を逆方向Drに搬送することが可能である。また、スリーブ駆動用モータ57aとスリーブ512aとの間の動力伝達経路にはクラッチ572aが設けられ、そのクラッチ572aによりスリーブ512aとスリーブ駆動用モータ57aとを接続または遮断するように構成されている。クラッチ572aにより動力伝達経路が遮断された場合には、スリーブ512aが回転自在になる。
【0034】
しわ取り部5bは、図1に示すように、搬送ローラ3hおよび3iの間に配置されており、エキスパンダーロール51bと、スライド部材52bと、ブラケット53bと、エアシリンダ54bとを含んでいる。なお、エキスパンダーロール51bは、本発明の「下流側のエキスパンダーロール」の一例であり、スライド部材52bは、本発明の「移動部」の一例である。しわ取り部5bはしわ取り部5aとほぼ同様に構成されているので、しわ取り部5bについての説明は省略する。
【0035】
[照明板]
照明板6は、巻き替えられるフィルム151を検査するために設けられている。照明板6は、搬送ローラ3gおよび3hの間のフィルム151に対して上流側(Y1方向側)に配置されている。
【0036】
−動作−
次に、図1図7を参照して、本実施形態によるフィルム巻替装置100の動作について説明する。以下では、正方向Dfにフィルム151が搬送される場合、正方向Dfから逆方向Drにフィルム151の搬送方向が切り替えられる場合、および、逆方向Drにフィルム151が搬送される場合について順に説明する。なお、逆方向Drから正方向Dfにフィルム151の搬送方向が切り替えられる場合については、正方向Dfから逆方向Drにフィルム151の搬送方向が切り替えられる場合とほぼ同様であるため説明を省略する。
【0037】
[正方向にフィルムが搬送される場合]
正方向Dfにフィルム151が搬送される場合には、まず、図1に示すように、しわ取り部5aではエキスパンダーロール51aがフィルム151に接触され、しわ取り部5bではエキスパンダーロール51bがフィルム151に接触されている。このとき、エキスパンダーロール51aおよび51bの向きは、予め設定された向き(フィルム151の種類に応じた正方向Df用の向き)に調整されている。具体的には、エキスパンダーロール51aは、軸部材511aの両端部に対して中央部が正方向Dfの下流側に配置されることにより、スリーブ512aの中央部Caが両端部Eaよりも正方向Dfの下流側(図1における上側)に配置されている。同様に、エキスパンダーロール51bは、軸部材511bの両端部に対して中央部が正方向Dfの下流側に配置されることにより、スリーブ512bの中央部Cbが両端部Ebよりも正方向Dfの下流側(図1における左側)に配置されている。なお、正方向Dfの下流側に配置されるスリーブ512aの中央部Caおよびスリーブ512bの中央部Cbの位置(向き)はフィルム151の種類に応じて調整されている。
【0038】
そして、搬送用モータ(図示省略)、しわ取り部5aのスリーブ駆動用モータ57a、しわ取り部5bのスリーブ駆動用モータ(図示省略)、巻取用モータ(図示省略)および繰出用モータ(図示省略)が正転される。これにより、原反150からフィルム151が繰り出され、繰り出されたフィルム151が搬送ローラ3a〜3kによって正方向Dfに搬送され、搬送されたフィルム151が巻取軸160に巻き取られる。このとき、フィルム151の搬送速度は、搬送用モータによって調整される。すなわち、搬送ローラ3a〜3kの表面速度が目標とされるフィルム151の搬送速度になるように、搬送用モータの回転速度が調整される。しわ取り部5aのスリーブ駆動用モータ57aおよびしわ取り部5bのスリーブ駆動用モータの回転速度は、スリーブ512aおよび512bの表面速度が搬送ローラ3a〜3kの表面速度と同じになるように調整される。巻取用モータは、巻取トルクが出力されるように制御され、繰出用モータは、ブレーキトルクが出力されるように制御される。
【0039】
ここで、正方向Dfに搬送されるフィルム151は、エキスパンダーロール51aを通過する際に幅方向の外側に拡げられるとともに、エキスパンダーロール51bを通過する際に幅方向の外側に拡げられる。また、照明板6と対向する領域(搬送ローラ3gおよび3hの間)をフィルム151が通過する際に検査される。そして、図4に示すように、巻取ロール152の巻径が大きくなるに連れて、巻取軸160が下流側(Y2方向側)に移動される。たとえば、検査によってフィルム151に不良箇所が発見された場合に、その不良箇所を取り除くために、フィルム151の搬送方向の切り替えが行われる。
【0040】
[正方向から逆方向に搬送方向が切り替えられる場合]
次に、正方向Dfから逆方向Drにフィルム151の搬送方向が切り替えられる場合には、まず、搬送ローラ3a〜3k、スリーブ512aおよび512bによる正方向Dfへのフィルム151の搬送が停止される。すなわち、搬送用モータ、しわ取り部5aのスリーブ駆動用モータ57aおよびしわ取り部5bのスリーブ駆動用モータの回転が停止される。なお、巻取用モータから巻取トルクが出力されるとともに、繰出用モータからブレーキトルクが出力されているが、そのトルクによってフィルム151が動かされることはなく張力を発生させている。
【0041】
そして、搬送ローラ3aと搬送用モータとの間のクラッチ(図示省略)が遮断されることによって搬送ローラ3aが回転自在にされるとともに、搬送ローラ3i〜3kと搬送用モータとの間のクラッチ(図示省略)が遮断されることによって搬送ローラ3i〜3kが回転自在にされる。これにより、繰出部1からエキスパンダーロール51aまでの間でフィルム151が巻き掛けられたローラ(ガイドローラ2a〜2cおよび搬送ローラ3a)が回転自在になるとともに、巻取部4からエキスパンダーロール51bまでの間でフィルム151が巻き掛けられたローラ(搬送ローラ3i〜3k)が回転自在になる。
【0042】
また、しわ取り部5aではスリーブ512aとスリーブ駆動用モータ57aとの間のクラッチ572a(図2参照)が遮断されることによってスリーブ512aが回転自在にされるとともに、しわ取り部5bではスリーブ512bとスリーブ駆動用モータとの間のクラッチ(図示省略)が遮断されることによってスリーブ512bが回転自在にされる。
【0043】
次に、図5に示すように、しわ取り部5aでは、エアシリンダ54aのピストン542aが退避されることにより、スライド部材52aがブラケット53aのガイドレール531a(図3参照)に沿ってスライド移動され、エキスパンダーロール51aがフィルム151から離間される。このエキスパンダーロール51aの離間に起因するフィルム経路長の変化は繰出部1によって吸収される。すなわち、繰出部1ではブレーキトルク(原反150からフィルム151を繰り出す方向とは反対方向のトルク)が出力されており、エキスパンダーロール51aの離間によって搬送ローラ3aおよび3bの間で余るフィルム151が原反150に巻き取られる。その原反150によるフィルム151の巻き取りの際に、原反150側に搬送されるフィルム151によってガイドローラ2a〜2cおよび搬送ローラ3aが連れ回される。
【0044】
同様に、しわ取り部5bでは、エアシリンダ54bのピストン542bが退避されることにより、スライド部材52bがブラケット53bのガイドレールに沿ってスライド移動され、エキスパンダーロール51bがフィルム151から離間される。このエキスパンダーロール51bの離間に起因するフィルム経路長の変化は巻取部4によって吸収される。すなわち、巻取部4では巻取トルク(巻取軸160にフィルム151を巻き取る方向のトルク)が出力されており、エキスパンダーロール51bの離間によって搬送ローラ3hおよび3iの間で余るフィルム151が巻取軸160に巻き取られる。その巻取軸160によるフィルム151の巻き取りの際に、巻取軸160側に搬送されるフィルム151によって搬送ローラ3i〜3kが連れ回される。
【0045】
次に、図6に示すように、しわ取り部5aでは、スリーブ512aをフィルム151から離間させた状態で、向き調整用モータ56a(図3参照)により軸部材511aの両端部に対する中央部の向きが調整される。具体的には、エンコーダ564a(図3参照)によって検出される軸部材511aの中央部の向きが予め設定された向き(フィルム151の種類に応じた逆方向Dr用の向き)になるように、向き調整用モータ56aによって軸部材511aが移動される。このため、軸部材511aの両端部に対して中央部が逆方向Drの下流側に配置されることにより、スリーブ512aの中央部Caが両端部Eaよりも逆方向Drの下流側に配置される。なお、逆方向Drの下流側に配置されるスリーブ512aの中央部Caの位置(向き)はフィルム151の種類に応じて調整される。
【0046】
同様に、しわ取り部5bでは、スリーブ512bをフィルム151から離間させた状態で、向き調整用モータ(図示省略)により軸部材511bの両端部に対する中央部の向きが調整される。具体的には、エンコーダ(図示省略)によって検出される軸部材511bの中央部の向きが予め設定された向き(フィルム151の種類に応じた逆方向Dr用の向き)になるように、向き調整用モータによって軸部材511bが移動される。このため、軸部材511bの両端部に対して中央部が逆方向Drの下流側に配置されることにより、スリーブ512bの中央部Cbが両端部Ebよりも逆方向Drの下流側に配置される。なお、逆方向Drの下流側に配置されるスリーブ512bの中央部Cbの位置(向き)はフィルム151の種類に応じて調整される。
【0047】
次に、図7に示すように、しわ取り部5aでは、エアシリンダ54aのピストン542aが進出されることにより、スライド部材52aがブラケット53aのガイドレール531aに沿ってスライド移動され、エキスパンダーロール51aがフィルム151に接触(当接)される。このエキスパンダーロール51aの接触に起因するフィルム経路長の変化は繰出部1によって吸収される。すなわち、エキスパンダーロール51aの接触によって搬送ローラ3aおよび3bの間で不足するフィルム151は原反150から繰り出される。その原反150から繰り出されるフィルム151によってガイドローラ2a〜2cおよび搬送ローラ3aが連れ回される。また、スリーブ512aが回転自在であることから、スリーブ512aがフィルム151に接触する際にスリーブ512aが回動可能である。
【0048】
同様に、しわ取り部5bでは、エアシリンダ54bのピストン542bが進出されることにより、スライド部材52bがブラケット53bのガイドレールに沿ってスライド移動され、エキスパンダーロール51bがフィルム151に接触される。このエキスパンダーロール51bの接触に起因するフィルム経路長の変化は巻取部4によって吸収される。すなわち、エキスパンダーロール51bの接触によって搬送ローラ3hおよび3iの間で不足するフィルム151は巻取ロール152から繰り出される。その巻取ロール152から繰り出されるフィルム151によって搬送ローラ3i〜3kが連れ回される。また、スリーブ512bが回転自在であることから、スリーブ512bがフィルム151に接触する際にスリーブ512bが回動可能である。
【0049】
[逆方向にフィルムが搬送される場合]
逆方向Drにフィルム151が搬送される場合には、上記したように、しわ取り部5aではスリーブ512aの中央部Caが両端部Eaよりも逆方向Drの下流側(図1における下側)に配置され、しわ取り部5bではスリーブ512bの中央部Cbが両端部Ebよりも逆方向Drの下流側(図1における右側)に配置されている。
【0050】
そして、搬送用モータ、しわ取り部5aのスリーブ駆動用モータ57a、しわ取り部5bのスリーブ駆動用モータ、巻取用モータおよび繰出用モータが逆転される。これにより、巻取ロール152からフィルム151が繰り出され、繰り出されたフィルム151が搬送ローラ3a〜3kによって逆方向Drに搬送され、搬送されたフィルム151が原反150に巻き取られる。このとき、繰出用モータは、巻取トルクが出力されるように制御され、巻取用モータは、ブレーキトルクが出力されるように制御される。
【0051】
ここで、逆方向Drに搬送されるフィルム151は、エキスパンダーロール51bを通過する際に幅方向の外側に拡げられるとともに、エキスパンダーロール51aを通過する際に幅方向の外側に拡げられる。
【0052】
−効果−
本実施形態では、上記のように、スリーブ512aの両端部Eaに対する中央部Caの向きを調整可能にすることによって、フィルム151の搬送方向の下流側にスリーブ512aの中央部Caを配置することができるので、正方向Dfおよび逆方向Drへのフィルム151の搬送時にエキスパンダーロール51aによってしわを適切に除去することができる。また、エキスパンダーロール51aの向きの調整をスリーブ512aがフィルム151から離間された状態で行うことによって、フィルム151が傷つくのを抑制することができる。同様に、スリーブ512bの両端部Ebに対する中央部Cbの向きを調整可能にすることによって、フィルム151の搬送方向の下流側にスリーブ512bの中央部Cbを配置することができるので、正方向Dfおよび逆方向Drへのフィルム151の搬送時にエキスパンダーロール51bによってしわを適切に除去することができる。また、エキスパンダーロール51bの向きの調整をスリーブ512bがフィルム151から離間された状態で行うことによって、フィルム151が傷つくのを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、フィルム151の搬送方向が切り替えられる場合に搬送ローラ3aが回転自在にされることによって、エキスパンダーロール51aがフィルム151に対して離接する際に搬送ローラ3aがフィルム151によって連れ回されるので、フィルム151が搬送ローラ3aで擦れないようにすることができる。同様に、フィルム151の搬送方向が切り替えられる場合に搬送ローラ3i〜3kが回転自在にされることによって、エキスパンダーロール51bがフィルム151に対して離接する際に搬送ローラ3i〜3kがフィルム151によって連れ回されるので、フィルム151が搬送ローラ3i〜3kで擦れないようにすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、フィルム151の搬送方向が切り替えられる場合にスリーブ512aが回転自在にされることによって、スリーブ512aがフィルム151に接触(当接)する際にスリーブ512aが回動可能であるので、接触時にスリーブ512aがフィルム151と擦れるのを抑制することができる。同様に、フィルム151の搬送方向が切り替えられる場合にスリーブ512bが回転自在にされることによって、スリーブ512bがフィルム151に接触する際にスリーブ512bが回動可能であるので、接触時にスリーブ512bがフィルム151と擦れるのを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、フィルム151の搬送方向の下流側に配置されるスリーブ512aの中央部Caの位置(向き)がフィルム151の種類に応じて調整されることによって、フィルム151の種類に応じた適切なしわの除去を行うことができる。同様に、フィルム151の搬送方向の下流側に配置されるスリーブ512bの中央部Cbの位置(向き)がフィルム151の種類に応じて調整されることによって、フィルム151の種類に応じた適切なしわの除去を行うことができる。
【0056】
また、本実施形態では、エキスパンダーロール51aを支持するスライド部材52aを、エアシリンダ54aによってスライド移動させることによって、エキスパンダーロール51aをフィルム151に対して容易に離接させることができる。同様に、エキスパンダーロール51bを支持するスライド部材52bを、エアシリンダ54bによってスライド移動させることによって、エキスパンダーロール51bをフィルム151に対して容易に離接させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、一対のスライド部材52aを連結する連結ロッド55aが設けられることによって、一対のスライド部材52aのスライド移動を同期させることができる。なお、しわ取り部5bについても同様である。
【0058】
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態のしわ取り部5aでは、スライド部材52aを移動させる駆動力源としてエアシリンダ54aが設けられる例を示したが、これに限らず、エアシリンダに代えて、スライド部材を移動させる駆動力源としてモータが設けられていてもよい。なお、しわ取り部5bについても同様である。
【符号の説明】
【0060】
1 繰出部
3a 搬送ローラ(第1ローラ)
3b〜3h 搬送ローラ(第2ローラ)
3i〜3k 搬送ローラ(第3ローラ)
4 巻取部
51a エキスパンダーロール(上流側のエキスパンダーロール)
51b エキスパンダーロール(下流側のエキスパンダーロール)
52a、52b スライド部材(移動部)
100 フィルム巻替装置
151 フィルム
511a、511b 軸部材
512a、512b スリーブ
【要約】
【課題】正方向および逆方向へのフィルムの搬送時にエキスパンダーロールによってしわを適切に除去することが可能なフィルム巻替装置を提供する。
【解決手段】フィルム巻替装置100は、エキスパンダーロール51aおよび51bを備え、エキスパンダーロール51aおよび51bが移動可能に構成されている。エキスパンダーロール51aおよび51bは、向きを調整可能である。フィルム巻替装置100は、フィルム151が搬送される場合に、軸部材511aおよび511bの両端部に対して中央部がフィルム151の搬送方向の下流側に配置された状態で、スリーブ512aおよび512bがフィルム151に接触され、かつ、フィルム151の搬送方向が切り替えられる場合に、スリーブ512aおよび512bをフィルム151から離間させた状態で、軸部材511aおよび511bの両端部に対する中央部の向きが調整される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7