(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1、
図2に第1実施形態である改修前の防水シート固定構造の断面図を示す。下地1に受け具2が打ち込まれ、その上に既存固定板3が配置され、固定板留め具4が既存固定板3を貫通して受け具2に留め付けられている。さらに、下地1の上には既存防水シート5が敷設され、既存固定板3によって既存防水シート5が固定されている。
防水シート固定構造は受け具2に固定板留め具4が着脱可能に固定され、固定板留め具4によって既存防水シート5が固定されている。そのため、改修時の位置決めが容易になる。さらに、既存防水シート5の改修行うために固定板留め具4を用いる際に新たに下地を穿孔することなく固定板留め具4を固定することができる。このように、本実施形態は改修施工に適した防水シート固定構造となっている。
【0015】
より具体的に
図1の実施形態は先付工法による防水シート固定構造であり、下地1に受け具2が固定されている。既存固定板3は受け具2の上に配置され、固定板留め具4が既存固定板3を貫通して下地に向けて受け具2に留め付けられている。そして、既存固定板3と下地1を覆うように既存防水シート5が敷設され、既存固定板3の上面と既存防水シート5の下面とが接合されることで既存防水シート5が既存固定板3に固定される。このように、既存防水シート5は既存固定板3を介して下地1に対し固定される。
【0016】
既存固定板3と既存防水シート5との接合は、熱による融着や溶剤による溶着等が用いられるが、
図1の実施形態においては誘導加熱装置による融着により接合されている。
【0017】
図2には第1実施形態の変形例として、後付工法による防水シート固定構造を示している。下地1に既存防水シート5が敷設され、下地1に受け具2が打ち込まれ、その上に既存固定板3が配置され、固定板留め具4が既存固定板3を貫通して受け具2に留め付けられている。さらに既存固定板3と既存防水シート5の一部を覆うように既存補強用シート6が敷設されている。既存補強用シート6の端縁部が既存防水シート5と接合され、端縁部にはシーラー (図示せず)が塗布されている。
【0018】
ここで、受け具2と固定板留め具4とは着脱可能となればよい。
図1のように、凹部形状の受け具2と凸部形状の固定板留め具4とすることができる。さらに、受け具2と固定板留め具4はねじ切りを有していることで容易に着脱が可能かつ固定強度も保たれるため好ましい。さらに、受け具2がメネジを有し、固定板留め具4がオネジを有することがより好ましい。
【0019】
受け具2は下地に打ち込まれて固定される。より具体的には下地1が形成された後に下地1の上から下地1に打ち込まれて固定される。そこで、受け具2は下地1を穿孔し下穴を設け、受け具2を打ち込んでも良いし、下地1を直接受け具2が穿孔し、受け具2を下地1に打ち込んでも良い。
【0020】
下地1を穿孔し下穴を設ける場合は特に、下地1に受け具2が充分に固定される固定手段を設けることがより好ましい。この場合、下地1に設けた下穴にエポキシ系やウレタン系等の接着剤を注入しても良いし、下穴に挿入される適度な柔軟性を有する緩衝材を用いてもよい。緩衝材は下穴に挿入され、その上から受け具2が打ち込まれる。その際に緩衝材は柔軟性を有するため下穴と受け具2の間を埋め、下地1に対し受け具2とを強固に固定することを補助するものである。したがって、緩衝材は適度な柔軟性と強度を有する樹脂製であり、下穴に挿入されその内側に受け具2を受け止める形状であることが好ましい。
図1の様な筒状の受け具の場合は緩衝材も受け具2と同様の形状である筒状が好ましい。また、複数の固定手段を用いても良く、接着剤と緩衝材を併用してもよい。
【0021】
また、下地1に受け具2を充分に固定する別の形態として、受け具2に固定手段を有していても良い。例えば、受け具2を下地1に設けた下穴に打ち込み、受け具2の外形が広がるか、突起状物が広がる等して受け具2が下穴の中で強固に固定されても良い。下地1の内部側に挿入される受け具2の先端側が拡張部を有しており、この拡張部が下地に対し拡張することで受け具2が下地に強固に固定される。さらに、受け具2は円筒形で内部に空間を有する本体と本体の内側に挿入されたコア部を有し、本体にはスリットを有した拡張部が設けられ、コア部を本体内側に押し込むことで拡張部がスカート状に広がる構造としてもよい。また、コア部を本体内部に押し込むことで本体から外側に向けて突起状物が突き出す構造としても良い。ここで、コア部はコーン形状とすることもできる。そして、本体内側にはメネジを有することでオネジを有する固定板留め具4との着脱が容易となる。
別の形態として、下地1に打ち込まれる受け具2の下地側と逆側、すなわち下地に対し上側にツバ状部を設けても良い。例えば受け具2の本体が内側にメネジを有する円筒形状であり、この本体の一側端縁の円周に沿って本体部の径よりも大きい板状のツバ状部を有する形態が例示できる。このようにツバ状部を有することで受け具2は側面から見て略T字形となる。したがって、ツバ状部は受け具2が下地1に打ち込まれた際に本体より径の大きいツバ状部が下地1の上に止まり受け具2が下地に打ち込まれ過ぎないように規制する。また、固定板留め具4を固定する際に下地1の一定位置に受け具2が打ち込まれるため、固定板留め具4の長さが不足するという不具合を防止することができる。さらに既存固定板3をその上に配置し固定板留め具4を受け具2に固定することで既存固定板3がより安定して固定された状態となる。
【0022】
固定板留め具4は、受け具2に着脱可能に固定されることを要し、受け具2に対応した形状であることが好ましい。また固定板留め具4は、既存防水シート5を受け具2に固定するための留め具であって、ネジ、ビス、ボルト、釘等が用いられる。材質としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材などが使用できる。また、既存固定板3の上面から頭部がはみ出ないように、固定板留め具4の頭の形状は皿、平、なべがよく、ドライバーやレンチで掛ける座面の窪み形状は十字穴、六角穴、四角穴が好ましい。
受け具2にメネジを有していれば固定板留め具4はオネジを有することで着脱が容易になり好ましい。
また、固定板留め具4を受け具2に固定する際に、固定板留め具4と既存固定板3等の固定板との間に座金、ワッシャー、ゴム等の弾性体を挟んで固定しても良い。
【0023】
既存固定板3は既存防水シート5を固定できるものであればよい。厚み方向に貫通し、固定板留め具4を打ち込むための穴を備えていることが好ましい。この穴の周囲には固定板留め具4の頭が収容されるための座くりが設けられていることが好ましい。既存固定板3の厚みは0.5mm〜2.0mm程度で、形状は正方形または長方形をした矩形状のプレート状や、円形または楕円形状のディスク状、長尺状など任意であり、大きさは1辺または外径が50mm〜100mm程度に形成することができる。既存固定板3は金属製、硬質合成樹脂製、木製等が用いられる。強度や耐久性の点から金属製が好ましい。金属製の固定板を構成する鋼鈑の材質としては、ステンレス板や、亜鉛・アルミニウム・マグネシウムメッキまたは亜鉛メッキ等の防錆処理が施された鋼板など、多湿状態でも錆びにくい鋼鈑が好適に使用される。
ここで、後述する改修に用いる改修用固定板、2回目以降の改修に用いる改修用固定板も既存固定板と同様の物を用いることができる。
【0024】
図1の実施形態のように融着により既存固定板3と既存防水シート5とが接合される場合には既存固定板3の上面には接着層が設けられている。既存固定板3の接着層としてはアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ニトリルゴム系、スチレン‐ブタジエンゴム系などの各種接着剤や、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂被覆層、またポリ塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂の組成物を溶剤に溶解したシール材などを用いることができる。接合強度を考慮すると、既存防水シート5と熱可塑性樹脂被覆層の材質は同種のものを用いるのが好ましく、既存防水シート5がポリ塩化ビニル系樹脂製である場合には、既存固定板3の熱可塑性樹脂被覆層もポリ塩化ビニル系樹脂からなることが好ましい。また接着層は既存固定板3の上面に予め設けるだけでなく、施工時に新たに設けてもよい。
【0025】
下地1は建築物の屋上、ベランダ、バルコニー等の躯体であり、コンクリート下地、金属下地、軽量発泡コンクリート(ALC)、鋼材、木質材等が用いられる。また、下地1の上に無機質板、モルタル材層等の他の層を積層しても良い。
【0026】
既存防水シート5としては熱可塑性樹脂製防水シートが好ましく使用され、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等を使用することができる。
既存防水シート5は熱可塑性樹脂層の単層でも良いが、寸法安定性、引張強度に優れるという点からガラスクロス、ガラス不織布、ポリエステルクロス、ポリエステル不織布等の基材層を積層した複層品が好ましい。基材層は最下層に設けても良いが熱可塑性樹脂層の中間に設けても良い。また熱可塑性樹脂層は一層であっても、複数の層であってもよく、それぞれの層の組成を異なるものとしてもよい。
ここで、後述する改修に用いる改修防水シート、2回目以降の改修に用いる改修防水シートも既存防水シートと同様の物を用いることができる。
【0027】
既存補強用シート6は既存防水シート5と同様のシートが使用でき、熱可塑性樹脂製防水シートが好ましく使用され、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等を使用することができる。既存補強用シート6は熱可塑性樹脂層の単層でも良く、ガラスクロス、ガラス不織布、ポリエステルクロス、ポリエステル不織布等の基材層を積層した複層品でも良い。また熱可塑性樹脂層は一層であっても、複数の層であってもよく、それぞれの層の組成を異なるものとしてもよい。
ここで、後述する改修に用いる改修補強用シート、2回目以降の改修に用いる改修補強用シートも既存補強用シートと同様の物を用いることができる。
【0028】
本発明においては上記以外の部材等をさらに設けても良い。例えば、下地に断熱層となる断熱材を用いたり、無機質板、緩衝用シート等を用いても良い。
【0029】
第2実施形態として、第1実施形態の改修について説明する。
第2実施形態は下地に打ち込まれた受け具から固定板留め具を取り外し、改修用固定板を固定板留め具を受け具に留め付けることで改修用固定板を固定し、改修用固定板によって改修用の防水シートを固定することを要旨とする。下地に受け具が固定されているために改修時の改修用固定板を留めつける際に受け具に合わせて改修用固定板を配置することができ、改修用固定板の位置決め作業が簡易となり、改修施工の工数低減となる。また、改修時にも受け具を繰り返し使用するため、下地への新たな穿孔が不要となり、改修時の音や振動を低減できる。
【0030】
図1、
図2の防水シート固定構造において第2実施形態の防水シート固定構造の改修工法を
図3、
図4を用いて説明する。固定板留め具4を覆う既存防水シート3または既存補強用シート6を切開するなどして固定板留め具4を外す。そして、既存防水シート5の上から改修防水シート8を敷設するとともに、受け具2の上に配置された改修用固定板7を貫通して固定板留め具4を受け具2に固定する。改修防水シート8は改修用固定板7によって固定される。
このように、第2実施形態の改修工法は、改修前の工法が先付工法、後付工法のいずれにも適用できる。また、改修前が先付工法の場合の改修工法は先付工法、後付工法のいずれも適用でき、同様に改修前が後付工法の場合も改修工法は先付工法、後付工法を適用することができる。
ここで、改修に際して既存防水シート5、既存固定板3の少なくとも一方を取り外してもよい。また、既存防水シート5、既存固定板3を取り外すことなく改修を行っても良い。次に既存防水シート5、既存固定板3のいずれも取り外す場合についてさらに説明する。
【0031】
先付工法の改修について
図1、
図3により説明する。
既存防水シート5を切開し固定板留め具4を外すとともに、既存固定板3の周囲の既存防水シート5を切断し、この切断した既存防水シート5と既存固定板3を取り外す。そして、改修用固定板7を受け具2の上に配置し、固定板留め具4で受け具2に固定する。次に、改修用防水シート8を既存防水シート5の上から下地1の上に敷設し、改修防水シート8と改修用固定板7とを接合し、改修防水シート8を固定する。
改修用固定板7と改修防水シート8との接合は、既存防水シート5と既存固定板3との接合と同様に、熱による融着や溶剤による溶着等が用いられるが、
図2の実施形態においては誘導加熱装置による融着により接合されている。
【0032】
より具体的な例として、
図1においてコンクリート製の下地1に受け具2が打ち込まれ固定されている。受け具2は円柱形で内側にメネジが設けられている。そして、円形の鋼板で上面に接着層としてポリ塩化ビニル樹脂層を有する既存固定板3が受け具2の位置に合わせて下地1に配置され、固定板留め具4を受け具2に留め付けることで既存固定板3が固定される。固定板留め具4はビスであって、オネジを有し受け具2に対応しねじ込み可能となっている。下地1、既存固定板3を覆うポリ塩化ビニル樹脂製の既存防水シート5が敷設され、既存防水シート5の下面と既存固定板3の接着層とが誘導加熱装置により溶融接合されている。
図3の改修時には、既存防水シート5の一部を切開し、受け具2にねじ込まれている固定板留め具4を逆回転することで取り外す。既存固定板3の周囲で既存防水シート5を切断し、既存防水シート5を既存固定板3とともに取り外す。そして、改修用固定板7を受け具2の位置にあわせて配置し、改修用固定板7の上から固定板固定具4のオネジ部分を受け具2のメネジ部分にねじ込んで固定し、これにより改修用固定板7を下地1に固定する。改修防水シート8を既存防水シート5と改修用固定板7を覆って敷設する。改修用固定板7、改修防水シート8は既存固定板3、既存防水シート5と同様の物を使用している。そして、改修防水シート8の下面と改修用固定板7の接着層とを誘導加熱装置により溶融接合する。
【0033】
ここで、既存固定板3と既存防水シート5とは接合されているので、既存防水シート5を既存固定板3から剥離させることが容易でない場合は、新たな固定板として改修用固定板7を用いることが好ましい。特に、誘導加熱装置による融着により既存固定板3と既存防水シート5とが接合されている場合は、既存防水シート5を既存固定板3から剥離させても既存防水シート5がきれいに剥離せず、また既存固定板3の接着層(図示なし)も再利用が困難なため、改修用固定板7は新たな固定板を使用することが好ましい。
【0034】
また、既存固定板3を取り外す際に既存防水シート5切り取ることになるが、少なくとも固定板留め具4上の既存防水シート3を切り取ればよい。既存固定板3よりも大きく既存防水シート5を切り取ってもよい。
図3では切り取られた既存防水シート5が既存固定板3に対応した大きさであり、残った既存防水シート5が下地1上に敷設されている。
【0035】
既存固定板3を取り外すには固定板留め具4を外すこととなる。既存防水シート5を切り抜く、切込みを入れる等して、固定板留め具4の頭を露出させ、固定板留め具4の頭に設けられた窪みにドライバーやドリル等を用いて固定板留め具4を外すことができる。
【0036】
このようにして、既存固定板3と既存防水シート5を取り外すことで、受け具2が視認できる状態となる。これにより受け具2を目安として、受け具2の上に改修固定板を容易に配置し固定することができる。
【0037】
受け具2を下地1に固定し、受け具2に固定板留め具4が着脱可能に固定されていることにより、固定板留め具を下地に固定する際に下地を穿孔する必要がない。そのため改修工事における音や振動を低減することができる。ここで、病院やマンション等、日時を問わず人が部屋にいる場合には改修時の音や振動が問題となる。このような場合に、受け具2に固定板留め具4が着脱可能に固定されていることにより、改修時の穿孔が不要となり、音や振動が低減できる。
【0038】
次に
図2の実施形態の改修について
図2、
図4により説明する。既存固定板3の周囲の既存補強用シート6を切断し、さらに固定板留め具4を外して、切断した既存補強用シート6を取り外す。既存防水シート5、受け具2の上から改修防水シート8を敷設する。そして、改修用固定板7を受け具2の上部であって改修防水シート8の上に配置し、固定板留め具4で受け具2に固定する。改修用固定板7は受け具2を目安に配置することができるので位置決めが容易になる。固定板留め具4は、既存の固定板留め具を用いても良いし、新たな固定板留め具に交換しても良い。耐久性の面から新たな固定板留め具に交換することが好ましい。改修用固定板7を覆うように改修防水シート8の上から改修補強用シート9を敷設、固定する。
図4では改修補強用シート9の周囲と改修防水シート8とを接合している。改修補強用シート9の周囲と改修防水シート8との接合は、熱による融着や溶剤による溶着や接着剤による接着等を用いることができる。改修補強用シート9の端縁部には止水用にシーラー(図示せず)を塗布する。
【0039】
より具体的な例として、
図2においてコンクリート製の下地1に受け具2が打ち込まれ固定されている。受け具2は円柱形で内側にメネジが設けられている。そして、ポリ塩化ビニル樹脂製の既存防水シート5が下地の上に敷設され、既存防水シート5の上に既存固定板3が配置されている。既存固定板3は円形の鋼板で上面および下面にポリ塩化ビニル樹脂層を有している。既存固定板3を貫通して固定板留め具4が受け具2に留め付けて固定されている。ここで、固定板留め具4はオネジを有したビスであって、メネジを内側に有する受け具2に対応しねじ込み可能となっている。したがって、固定板留め具4により既存固定板3が固定され下地1と既存固定板3とで締め付けられることで既存防水シート5は下地に対し固定される。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂製の既存補強用シート6を既存固定板3の上から配置し既存補強シート6の裏面(下面)と既存固定板3の表面(上面)とを接合されるとともに、既存固定板3より大きく形成された既存補強用シート6の外縁部を既存防水シート5と接合されている。さらに、既存補強用シート6の周囲にはシーラー(図示なし)により止水処理が行われている。
図4に改修時には、既存固定板3の周囲の既存補強用シート6を切断し、さらに既存補強用シート6を切開し固定板留め具4を外して、切断した既存補強用シート6と既存固定板3を取り外す。ここで、既存補強用シート6と既存固定板3とは接合されており同時に取り外すことができる。既存防水シート5、受け具2の上からポリ塩化ビニル樹脂製の改修防水シート8を敷設する。そして、上下面ともポリ塩化ビニル樹脂層で被覆された改修用固定板7を受け具2の上部であって改修防水シート8の上に配置する。オネジを有する固定板留め具4を、メネジを有する受け具2に回し入れて固定する。これにより改修用固定板7が下地に対し固定され、改修用固定板7と下地1とで締め付けられることで改修防水シート8が固定される。改修用固定板7を覆うように改修防水シート8の上からポリ塩化ビニル樹脂製の改修補強用シート9を配置する。改修補強用シート9の裏面を改修用固定板7のポリ塩化ビニル樹脂層(図示なし)および改修防水シート8と接合し、端縁部をシーラー(図示なし)で止水処理する。
【0040】
次に、改修時に既存固定板3を取り外さない場合について説明する。
改修時に既存固定板3を取り除かない改修工法は、既存固定板3を取りは外さない点が
図3および
図4の改修工法と異なっている。
図6、
図7の改修工法は既存防水シート5、既存固定具3の上から改修用の改修防水シート8を敷設する工程と、受け具2の上部に改修用の改修用固定板7を配置し、固定板留め具4で改修用固定板7を貫通して受け具2に留め付ける工程を有し、改修用固定板7で改修防水シート8を固定している。
以下、
図6、
図7についてより具体的に説明する。
【0041】
図1の先付工法における改修工法について
図6により説明する。固定板留め具4上の既存防水シート5の一部を切開し、固定板留め具4を外す。そして、既存防水シート5と既存固定板3とを取り外すことなく改修用固定板7を受け具2上に配置し、改修用固定板7を固定板留め具4で受け具2に固定する。次に改修防水シート8を既存防水シート5の上から下地1の上に敷設し、改修防水シート8と改修用固定板7とを接合し、改修防水シート8を固定する。
【0042】
次に
図2の後付工法における改修工法について
図7により説明する。固定板留め具4上の既存補強用シート6の一部を切開し、固定板留め具4を外す。既存固定板3を取り外すことなく既存防水シート5、受け具2の上から改修防水シート8を敷設する。そして改修防水シート8の上から改修用固定板7を受け具2の上に配置し、固定板留め具4で受け具2に固定する。改修用固定板7を覆うように改修防水シート8の上から改修補強用シート9を敷設、固定する。
図7では改修補強用シート9の周囲と改修防水シート8とを接合している。改修補強用シート9の周囲と改修防水シート8との接合は、熱による融着や溶剤による溶着や接着剤による接着等を用いることができる。改修補強用シート9の端縁部にはシーラー(図示せず)で止水処理を行う。
【0043】
以上の様に改修工法においては、既存固定板3や既存防水シート5を取り外しても良いし、残しても良い。また、既存固定板3、既存防水シート5のいずれか一方を取り外しても良い。ここで、既存固定板3、既存防水シートを取り外すと改修後の防水構造の厚みが薄くなり意匠性および歩行時の安全性が高くなるとの点で好ましい。一方、既存固定板3、既存防水シート5を残すと施工においてこれらを取り外す工数が削減でき、廃材を削減できるとの点で好ましい。また、既存補強用シート6も同様に取り外しても良いし、取り付けたまま改修しても良い。
【0044】
また、先付工法の改修には先付工法を用い、後付工法の改修には後付工法を用いる例を示した。しかし、先付工法の改修に後付工法を用いても良いし、後付工法の改修に先付工法を用いても良い。
【0045】
図5に第1実施形態の変形例として、パラペット等の立上がった壁部の構造を示す。
図5の実施形態は立上がり部における先付工法による防水シート固定構造である。下地1に受け具2が立上がり壁10に沿って固定されている。受け具2の上には既存固定板3が固定板留め具4によって固定されている。本変形例において既存固定板3は長方形の板状であり、固定板留め具4は既存固定板3を貫通して受け具2に留め付けられている。より具体的に、既存固定板3はパラペット等の立上がり壁10の伸びている方向に沿って長尺状に形成されている。そして、既存固定板3と下地1を覆うように既存防水シート5が敷設され、既存固定板3の下地に対し上面と既存防水シート5の下面とが接合されることで既存防水シート5が既存固定板3に固定される。このように、既存防水シート5は既存固定板3を介して下地1に対し固定される。既存固定板3の上面には既存防水シート5と同じポリ塩化ビニル樹脂系の接着層が設けられており、既存防水シート5の下面と既存固定板3の上面とが誘導加熱装置による融着により接合されている。
このような防水シート固定構造は受け具2に固定板留め具4が着脱可能に固定され、固定板留め具4によって既存防水シート5が固定されている。そのため、既存防水シート5の改修行うために固定板留め具4を用いる際に新たに下地を穿孔することなく固定板留め具4を固定することができる。さらに、既存固定板3は長尺状であり受け具2が既存固定板3に沿って線上に配置されているので、改修時の位置決めが容易になる。このように、本変形例も改修施工に適した防水シート固定構造となっている。
【0046】
第2実施形態の変形例として立上がり部の改修について
図5により説明する。
既存防水シート5の固定板留め具4と対応する位置に切込みを入れ、固定板留め具4の頭を露出させて、固定板留め具4を取り外す。次に既存固定板3の周囲の既存防水シート5を切断し、切断した既存防水シート5と既存固定板3を受け具2から取り外す。そして、改修用固定板7を受け具2の上に配置し、改修用固定板7を固定板留め具4で受け具2に固定する。次に、改修防水シート8を既存防水シート5の上から下地1の上に敷設し、改修防水シート8と改修用固定板7とを接合し、改修防水シート8を固定する。改修用固定板7と改修防水シート8との接合は、熱融着により接合されている。改修用固定板7は既存固定板3と同様に、長方形の板状に形成され、立上がり壁10の伸びている方向に沿って長尺状に形成されている。
ここで本変形例においては、既存固定板3、既存防水シート5を取り外しているが、既存固定板3の既存防水シート5のいずれか1つまたは両方を取り外すことなく改修を行っても良い。
【0047】
次に2回目以降の改修方法について説明する。2回目以降の改修方法も第2実施形態と同様である。固定板留め具を外し、改修用の固定板を固定板留め具を受け具に固定し、改修用の防水シートを改修用の固定板で固定することを要旨とする。2回目以降の改修においても、下地に受け具が固定されているために改修時の固定板を留めつける際に受け具に合わせて固定板を配置することができ、固定板の位置決め作業が簡易となり、さらには下地への新たな穿孔が不要となし、改修施工の工数、音を低減できる。
2回目の改修(3回目の施工方法)においても1回目の改修工法と同様に改修用固定板7、改修防水シート8を取り除いても良いし、残しても良い。また既存固定板3、既存防水シート5についても同様に取り外しても良いし、残しても良い。
また、新設の施工時、1回目以降の改修時に行っていた、先付工法、後付工法によらず、2回目以降の改修においても先付工法、後付工法のいずれを用いても良い。
【0048】
先付の場合の2回目の改修(3回目の施工方法)について説明する。
図3(3−2)において、改修用固定板7の周囲の改修防水シート8を切断し、さらに固定板留め具4を外して、切断した改修防水シート8と改修用固定板7を受け具2から取り外す。そして、新たな固定板(図示なし)を受け具2の上に配置する。新たな固定板(図示なし)は固定板留め具4で受け具2に固定される。次に、新たな防水シート(図示なし)を改修防水シート8の上から下地1の上に敷設し、新たな防水シートと新たな固定板とを接合し、新たな防水シートを固定する。
新たな固定板と新たな防水シートとの接合は、熱による融着や溶剤による溶着等が用いられる。
【0049】
後付の場合の2回目の改修(3回目の施工方法)について説明する。
図4(4−2)において、改修用固定板7の周囲の改修防水シート8と改修補強用シート9を切断し、さらに固定板留め具4を外して、切断した改修防水シート8、改修補強用シート9、改修用固定板7を受け具2から取り外す。受け具2の上から新たな防水シート(図示なし)を敷設する。そして、新たな固定板(図示なし)を受け具2の上部であって新たな防水シート6の上に配置し、固定板留め具4で受け具2に固定する。新たな固定板を覆うように新たなの防水シートの上から新たな補強用シートを敷設、固定する。新たな補強用シートの周囲と新たな防水シート6との接合は、熱による融着や溶剤による溶着や接着剤による接着等を用いることができる。
【0050】
図6、
図7のように固定板を取り外すことなく改修を行う場合の3回目以降の改修は2回目の改修と同様に行うことができる。固定板留め具4を外し、受け具2の上部であって、すでに固定されている固定板の上から改修用の固定板を受け具2に固定し、固定板によって改修用の防水シートを固定する。
【0051】
図6(6−2)の先付の場合の2回目の改修(3回目の施工方法)について説明する。固定板留め具を外し、新たな固定板(図示なし)を受け具2の上部に配置し、固定板留め具4にて新たな固定板は固定板留め具7で受け具2に固定される。次に、新たな防水シート(図示なし)を改修防水シート8の上から下地1の上に敷設し、新たな防水シートと3新たな固定板とを接合し、新たな防水シートを固定する。
新たな固定板と新たな防水シートとの接合は、熱による融着や溶剤による溶着等が用いられる。
【0052】
図7(7−2)の後付の場合の新たな改修(3回目の施工方法)について説明する。固定板留め具4を外し、改修補強用シート9、改修防水シート8、受け具2の上から新たな防水シート(図示なし)を敷設する。そして、新たな固定板(図示なし)を受け具2の上部に配置し、固定板留め具4にて固定板を固定する。新たな固定板を覆うように新たな防水シートの上から新たな補強用シートを敷設、固定する。新たな補強用シートの周囲と新たな防水シートとの接合は、熱による融着や溶剤による溶着や接着剤による接着等を用いることができる。そして、新たな補強用シート(図示なし)の周囲にシーラー(図示なし)を塗布する。
【0053】
3回目以降の改修(4回目の施工)も2回目の改修と同様にして行うことができる。
【0054】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、またこの他にも本発明の技術的思想内においてさまざまな形態をとり得ることができる。