特許第6890403号(P6890403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890403
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】洗濯機及び洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20210607BHJP
   D06F 39/04 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   D06F58/02 F
   D06F39/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-231993(P2016-231993)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-86205(P2018-86205A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】今成 正雄
(72)【発明者】
【氏名】川村 圭三
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】大杉 寛
(72)【発明者】
【氏名】友部 克史
(72)【発明者】
【氏名】濱口 智雄
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀之
(72)【発明者】
【氏名】小池 敏文
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0266587(US,A1)
【文献】 特開2010−000904(JP,A)
【文献】 特開2013−158650(JP,A)
【文献】 特開昭57−209094(JP,A)
【文献】 特開2006−217953(JP,A)
【文献】 特開2007−289559(JP,A)
【文献】 特開昭48−036971(JP,A)
【文献】 特開2014−050518(JP,A)
【文献】 特開平04−158895(JP,A)
【文献】 特開2011−024697(JP,A)
【文献】 特開2012−000313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/00−58/28
D06F 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯溜可能な外槽と、
該外槽内に回転自在に支持され、洗濯物が収容される略円筒型のドラムと、
前記外槽に送風する送風手段と、
前記送風手段の出口からの風を前記ドラム内に導く送風ダクトと、
前記外槽下部に設けた水受け部と、
前記送風ダクトに連結され、前記水受け部下方に設けられ、風を加熱する熱交換ダクトと、
空気や水を加熱するヒータと前記ヒータを挟持して配置された一対のフィンとを有する熱交換手段と、を備え、
前記一対のフィンの一方のフィンは、前記水受け部に収められ、前記ヒータからの熱により前記外槽内の洗浄水と熱交換し、
前記一対のフィンの他方のフィンは、前記熱交換ダクト内に収められ、前記一方のフィンが前記ヒーターからの熱により前記洗浄水と熱交換をしながら、前記一対のフィンの他方のフィンは、前記ヒータからの熱により前記熱交換ダクト内に流れる空気と熱交換する、ことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1記載の洗濯機において、
前記外槽から前記送風手段に導かれる空気の一部もしくは全量を、前記外槽外の空気と入れ替える換気のための手段を備えたことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯を行う洗濯機及び洗濯から乾燥まで一貫して行う洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機は回転可能な内槽に洗濯物を投入して洗い工程、すすぎ工程、脱水工程を行うものであり、洗濯乾燥機は、前記工程のほかに、さらに乾燥工程を備えたものである。内槽の回転軸が水平もしくは前方を上に向けて傾斜させたドラム式と、回転軸を設置面に対して略垂直としたいわゆるタテ型があるが、各工程の概要と制御アルゴリズムには大きな差はないため、以下、ドラム式を前提に説明する。洗い工程、すすぎ工程ではドラムを低速で回転させ、ドラム下方に溜まった洗濯物を持ち上げて、ドラム上方から落下させるタンブリング動作を行う。このタンブリング動作により、洗濯物に機械的な力を与えて洗浄およびすすぎを行っている。特に、この動作に伴う洗浄をたたき洗いと呼んでいる。脱水工程時ではドラムを高速で回転させ、回転による遠心力で洗濯物から水分を押し出す遠心脱水を行う。
【0003】
また、洗い工程において、洗浄効果を高めるために循環ポンプを設けて、洗濯槽(外槽)内の洗浄水を汲み上げて洗濯物にかけることで、洗剤が溶けた洗浄水を洗濯物に満遍なく浸透させる。このように、ドラム式洗濯機は、タンブリング動作と循環ポンプによる洗浄水の循環により、少ない水でも洗浄性能が確保できるので、縦型洗濯機と比較して節水することができるようになっている。
【0004】
さらに洗浄力を高める方法の一つとして,洗浄温度を上げることが行われる。すなわち,洗濯物及び洗浄水の温度を上げることで、洗剤酵素の働きを高めたり、洗浄水中の界面活性剤などの拡散を促進させることで、洗浄力を高めることができる。ドラム内に洗浄水を十分に満たして外槽下部に洗浄水を常に溜めた状態での洗濯に対しては、外槽下部に設けた加熱手段を用いて、外槽下部の洗浄水を温めながら循環ポンプで汲み上げて、ドラム上方から洗濯物へ掛けることで、外槽を含む循環系全体を温めていく方法がある。
【0005】
一方、皮脂汚れなどを効果的に落とす洗浄では、少ない給水による高濃度の洗剤液を洗濯物に散布、浸透させて、タンブリング動作を行う洗濯、即ち洗浄水を通常の洗濯よりも少なめとした運転とした場合、洗浄水を洗濯物に浸透させた後において、ドラム下部の残りの洗浄水量がほとんどない状態となる。このためドラム下部に設けた加熱手段が浸水せず、直接洗浄水を温めることが難しく、温風などを洗濯物に直接当てて、温めるのが好ましい。
【0006】
また洗濯乾燥機における乾燥工程では、低湿高温の温風を洗濯物に当てる温風乾燥を基本とした場合、循環空気の加熱を要する。加熱源にヒータを用いる場合は、加熱した温風からの放熱損失を極力小さくするために、ファンからの送風をドラムに導くダクト内もしくはファンユニット内にヒータを設けて、空気を加熱するのが好ましい。なお、洗い工程と乾燥工程どちらにおいても温風を洗濯物に当てる場合は、ドラム下部に凝集された状態からドラムのタンブリング動作にて上部に持ち上げられた後に落下するタイミングにおいて、温風を洗濯物に当てるのが好ましい。
【0007】
これら温風用ヒータと温水用ヒータを一つのヒータとしたものに、特許文献1がある。特許文献1には「乾燥機能のための発熱手段を利用して洗濯が加熱水で効果的にでき、もって、乾燥機能を有することの付加価値を洗濯機能に有効に与え得る洗濯機を提供する」ことを目的として、「機内に具えられた水槽と、この水槽の側面部に設けられたダクトと、このダクトを通じて前記水槽の内部に送風する送風装置と、前記ダクトの内部に設けられた発熱手段とを具備して成ることを特徴とする洗濯機」が記載されており、効果として「送風装置からダクトを通じて送る風をダクトの内部で発熱手段より加熱して温風化し、この温風が水槽の内部に供給されることで、水槽内部の洗濯物を乾燥させることができる。そして、洗濯時には、水槽の内部に給水することで、その水がダクトの内部にも溜まるから、それをダクトの内部に設けた発熱手段により加熱して温水化し、更には水槽内部の水を温水化して、この温水(加熱水)により洗濯物の洗濯ができる。」ことが開示されている。また特許文献2には「水槽に回転自在に内装され槽璧に多数の脱水孔が形成された回転槽と、該回転槽に回転自在に内装された回転翼とを備え、前記水槽と回転槽との間にヒータが配され、該ヒータを通電制御することにより温水洗濯を行う全自動洗濯機において、前記水槽内の空気を水槽と回転槽との間で循環させる通風経路が形成され、該通風経路に通風温度を検出する通風温度検出器が配され、前記回転翼を回転駆動して前記通風温度検出器からの温度情報に基づいてヒータの通電制御を行い、前記通風経路に温風を循環させる乾燥制御手段が設けられたことを特徴とする全自動洗濯機。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−167385号公報
【特許文献2】特開平5−76683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および2に記載の洗濯機もしくは洗濯乾燥機では、温水用と温風用を兼ねているヒータで温めた空気を外槽もしくはバスケット内へ送風する送風口と、ヒータを浸水させて温水をつくる場合の洗濯水のヒータへの連通部を共通としている。このため、ヒータで加熱した温風の送風口は、外槽もしくはバスケットの底部に設けた構成となるため、ヒータで温めた空気も底部からの送風となり、乾燥工程および洗い工程において温風を効率よく洗濯物に当てることが出来ない。
【0010】
また外槽に水面が現れる程に給水した場合、その水位を保ちつつ温風を生成できる構成にもなっていない。さらに、温風生成に対して、ヒータと熱交換させる空気の風速を熱交換前後で一定に保てるいわゆるダクト構造ではなく、熱交換促進のためのフィンも有していない。このため、熱交換効率が低くなりヒータの温度が上がり易く、部材の耐熱温度を超えてしまう。これを回避するためにヒータ入力を下げざるを得ないので、結果的に温風の熱容量を確保できず、洗濯物や洗濯水の加熱に時間を要してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の洗濯機は、内部に液体を貯溜可能な外槽と、該外槽内に回転自在に支持され、洗濯物が収容される略円筒型のドラムと、前記外槽に送風する送風手段と、前記送風手段の出口からの風を前記ドラム内に導く送風ダクトと、前記外槽下部に設けた水受け部と、前記送風ダクトに連結され、前記水受け部下方に設けられ、風を加熱する熱交換ダクトと、空気や水を加熱するヒータと前記ヒータを挟持して配置された一対のフィンとを有する熱交換手段と、を備え、前記一対のフィンの一方のフィンは、前記水受け部に収められ、前記ヒータからの熱により前記外槽内の洗浄水や空気と熱交換し、前記一対のフィンの他方のフィンは、前記熱交換ダクト内に収められ、前記一方のフィンが前記ヒーターからの熱により前記洗浄水と熱交換をしながら、前記一対のフィンの他方のフィンは、前記ヒータからの熱により前記熱交換ダクト内に流れる空気と熱交換する、構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乾燥工程および洗い工程において温風を効率よく洗濯物に当てることができる。さらに一つの加熱源により,送風路を通して外槽内に送る温風と、外槽内の水および空気を、各々加熱することができるので、温水を作りつつ、温風を洗濯物に当てることができる。これにより、汚れに応じた最適な洗浄工程を組み立てることができることで、効率よく温水洗浄ができる。また洗浄時の発泡現象に対しても、外槽内への給水量に影響されずに温風として洗濯物にあてることができるので、いちはやく消泡できて洗浄時間の延長を抑制できる。さらに、排水を伴う脱水工程においても、温風を洗濯物に当てることができるので、洗濯物に含水された洗濯水もしくはすすぎ水の脱水性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機を示す外観斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す正面から見て右側面の概略断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るドラム散水機構と温風循環機構を模式的に示した斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るヒータユニットの基本構成を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の制御装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の上面カバーを外した平面図である。
図7】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の外槽下部を中心に本体正面上方からみた斜視図である。
図8】第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機における洗濯運転(洗い〜すすぎ〜脱水)の運転工程を説明する工程図である。
図9】本発明の第2の実施例におけるドラム3の基本構成について示した斜視図である。
図10】本発明の第3の実施例におけるタテ型洗濯乾燥機の基本構成について示した全体断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例を図面を用いて説明する。洗い工程においては、ドラム式洗濯機でも洗濯乾燥機でも同じ工程であるため、以下の実施例ではドラム式洗濯乾燥機を用いて説明する。
【0016】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図を示す。また図2は、本発明の第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す正面から見て右側面の概略断面図である。
【0017】
まず外観について説明する。ベース1hの上部に、主に鋼板と樹脂成形品で作られた側板1a及び補強材(図示せず)を組合わせて骨格を構成し、さらにその上に前面カバー1c、上面カバー1eを取り付けることで筐体1を形成している。前面カバー1cには洗濯物207を出し入れするドア9が設けられており、背面には背面カバー1dがとりつけられている。
【0018】
つぎに洗濯乾燥機の概略構造と、洗い工程から乾燥工程までにおける各構成要素の動作と役割について簡単に説明する。図1に示す筐体1の内側には図2のごとく、ほぼ中央部に外槽2が備えられている。外槽2は下部の複数個のダンパ5により支持されている。外槽2の内側に回転可能に設けたドラム3には、ドア9を開けて洗濯物207を投入する。ドア9自体は、ドア枠9bにドアガラス9aを固定したものであり、ヒンジ(図示せず)により、筐体に取り付けられている。回転可能なドラム3の開口部の外周には、脱水時の洗濯物207のアンバランスによる振動を低減するための、流体バランサー208が必要に応じて設けられている。また、ドラム3の内側には洗濯物207を持ち上げる複数個のリフター209が設けられている。回転可能なドラム3は金属製フランジ210に連結された主軸211を介して、ドラム駆動用のモータM10aに直結されている。あるいは本実施例に対して別方式となる、主軸に固定されたプーリと外槽に固定したモータとをベルトを介して連結させ、ドラムを駆動させるいわゆるベルト駆動構成でもよい。
【0019】
また外槽2の開口部には弾性体からなるゴム製のベローズ10が取付けられている。このゴム製のベローズ10は、外槽2内とドア9との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い,すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。回転可能なドラム3は、側壁である円筒部に遠心脱水兼通風用の多数の小孔(図示せず)を有する。
【0020】
図3は、外槽2下部の水受け部54から循環ポンプ18を介してドラム3上部に散水する散水機構224の基本構成要素と、外槽2の循環空気出口2bから送風ファン20を介してヒータユニット236の下半分のフィン239が収まっている熱交換ダクト231で加熱されて、吹出しノズル203からドラム3内に吹き出される温風を循環させるための基本構成要素を模式的に示した斜視図である。図3に示すように、外槽2内に貯めた洗浄水を外槽2の内側にて回転させるドラム3により掻きあげて洗濯物に散布させる散水作用に加えて、外槽2よりも下部の筐体ベース1h側に、ドラム3内の洗濯物207に散布するための循環ポンプ18を必要に応じて設けて、ドラム3の回転とは独立かつ強制的に、洗浄水を外槽2上部まで汲み上げて散水させる機構224が設けられている。また水受け部54の底面54aに排水のために設けた排水口21(図3参照)は、糸くずフィルタ222と排水ポンプ230を介して、排水ホース26に通じており、水受け部54内の水を排水ポンプ230により排水できる。
【0021】
送風手段である送風ファン20と送風ファン20出口からの送風をドラム3内に導く送風ダクト29は、外槽2から離して筐体1に固定(図示せず)されている。一方、温風を加熱する熱交換ダクト231と吹出しノズル203は外槽2に固定されており、吹出しノズル203は外槽2に、洗濯乾燥機正面からみて回転可能なドラム3の中心軸よりも上側且つ、洗濯乾燥機側面からみて、正面寄りの前側の位置に固定されている。熱交換ダクト231と送風ダクト29の出口の連結部には必要に応じて柔軟構造のゴム製の蛇腹管212で、その長手伸縮方向が外槽2の回転軸に対して略垂直となる配置で接続しており、外槽2の振動を吸収している。また同様にして外槽2の循環空気出口2bから換気ダクト232との接続と、換気ダクト232と送風ファン20の吸込側の接続にも、必要に応じてジャバラホース215を設けている。排水口21,送風ファン20の吸気側につながる循環空気出口2b及び熱交換ダクト231の出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
【0022】
洗濯もしくは洗濯乾燥コースを選んで運転を開始すると、投入された洗剤を溶かして洗濯物207に散布する洗剤溶かし工程を実行する。洗い工程の初期は、工程終了までに使用する全水量よりも少ない給水量で洗剤を溶かして洗浄水を高濃度洗剤液とし、ドラム3の回転により、洗濯物207を攪拌させながら、ドラム3による掻き揚げ動作と循環ポンプ18による強制循環にて洗浄水を満遍なく散布する。このため通常は、外槽2内には洗剤液のしみこんだ洗濯物207と、外槽2下部の水受け部54に少量の洗剤液が存在する。ドラム3を回転させることで、洗濯物207をドラム3上部に持ち上げた後、重力により下部まで落下させるタンブリング動作に基づくたたき洗いを行い続けると、洗濯物207にしみこんだ洗剤液が搾り出されてくるが、ドラム3の回転に伴う洗浄水の掻き揚げ動作により再び散布される。さらに必要に応じて間欠的に循環ポンプ18を駆動させて、搾り出された洗浄水を洗濯物207に強制散布する。この動作中においても、洗浄水と洗濯物207のいわゆる洗浄温度を上げることで、洗浄性能を向上できる。本実施例では、この洗い工程においては、送風ファン20を駆動させて熱交換ダクト231にて温風をつくり、洗浄水及び洗濯物207を温める。
【0023】
図4は本実施例におけるヒータユニット236の概略構造を示す斜視図である。本実施例では兼用ヒータ237の断面に対して上半分と下半分とで、各々形状の異なるフィンを取り付けた構造としている。上半分のフィン238は、外槽2の下部の水受け部54に収められており、兼用ヒータ237の熱が上半分のフィン238を通して、外槽2内の洗浄水や空気と熱交換できる。一方、下半分のフィン239は熱交換ダクト231内に収められており、兼用ヒータ237の熱が下半分のフィン239を通して、熱交換ダクト231内を流れる空気と熱交換できる。ヒータユニット236は本実施例では、上半分のフィン238と下半分のフィン239を組み合わせた構成としているのに対して、ヒータ部を予め備えた型に、フィン構成部材を流し込んで固化させて成型させたいわゆるダイキャスト成型品であってもよい。また洗浄水と主に熱交換させる上半分のフィン238と送風ファン20から送風された空気と熱交換させる下半分のフィン239は、それぞれ熱交換させる媒体(水や空気)への伝熱特性と経済性を考慮して、材質の異なるフィン(たとえば上半分のフィン238はアルミとし、下半分のフィン239は銅とする)を組み合わせた構成としてもよい。また上半分のフィン238と下半分のフィン239の伝熱面積は、それぞれ熱交換させる媒体(空気や水)への伝熱特性を考慮して、最適な大きさとすることが好ましく、特に空気と熱交換させる下半分のフィン239は、上半分のフィン238と比較して、十分な伝熱面積を確保したものが好ましい。
【0024】
その後の洗い工程において、外槽2内に追加給水して、洗浄水を通常の洗濯水量まで増やすと、外槽2下部の水受け部54にも十分な水量が確保される。ヒータユニット236の外槽2内に収まっている上半分のフィン238も浸水するため, 兼用ヒータ237の通電により直接洗浄水を温めることができる。追加給水した後でも、送風ファン20を駆動させて温風をドラム3に送り続けることで、洗濯物207と洗浄水を効率よく加熱することができるので、追加給水による洗濯物207の急激な温度低下も抑えることができ、より洗浄性能を向上させることができる。
【0025】
このように構成したドラム式洗濯乾燥機における洗い工程から乾燥工程に至るまでを運転パターンと温風及び温水生成のタイミングの観点から、図2、3を用いて詳述する。なお,通常の洗濯コース運転の前段階として、洗い工程から脱水工程までを、通常の洗濯コース用とは分けて準備した洗剤により行う予洗い運転を設定できる機種もあるが、ここでは通常の洗濯運転を対象とする。
【0026】
回転可能なドラム3内に洗濯物207を投入し、排水ポンプ230を停止させた状態で給水して、ドラム3を回転させて洗濯物207を洗濯する。洗い工程は、大別すると洗剤溶かし工程、前洗い工程、本洗い工程からなる。洗剤溶かし工程は、洗濯開始時の布量センシングで洗剤量と洗濯所要時間を提示し、投入された洗剤を水で溶かして、ドラム3内の洗濯物207に洗浄水を散布する工程である。洗剤投入部に給水された水は、洗剤とともにドラム3下部に位置する水受け部54に導かれる。循環ポンプ18を駆動すると、水受け部54の水は,排水口21から糸くずフィルタ222を介して循環ポンプ18の吸込口(図示せず)に入る。循環ポンプ18で昇圧された高濃度洗剤の洗浄水は、循環ポンプ18の出口と連通する循環吐出口54bから再び水受け部54に戻される(洗剤溶かし工程の循環経路:図3参照)。この循環を繰り返すことで、少ない水で洗剤を溶かした高濃度洗剤液を生成する。循環ポンプ18の出力は、最大洗濯負荷に応じた洗浄水を、外槽2の上方に設けた散水ノズル223まで、くみ上げるに十分な仕様となっている。このため、前述の洗剤溶かし工程の循環経路で循環させると、循環ポンプ18の所要動力は最終的には熱エネルギーに変わり、高濃度洗剤液の温度を上昇させる。生成された高濃度洗剤液は、本実施例では循環ポンプ18の回転方向を替えることで、外槽2の上方に設けた散水ノズル223までくみ上げられて、ドラム3内の洗濯物207へ散布される。すなわち、循環ポンプ18の出口には、外槽2上方まで導く経路と、上述のように散布せずに水受け部54に戻す経路が必要となるが、循環ポンプ18のケーシング外周に各々の経路につながる吐出口(図3参照)を設けておき、循環ポンプ18の回転方向を替えることで、回転方向に応じて最初に連通する吐出口側から吐出させることで経路を切り替えている。あるいは循環ポンプ18の吐出口は一箇所として、その下流側で分岐させて流路を切り替えても、機能としてはなんら差し支えない。
【0027】
前洗い工程では、高濃度洗剤液が散布された洗濯物207を、タンブリング動作にてたたき洗いを実行する。洗濯物207は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、洗剤成分と機械力の作用により、洗濯物207から汚れを分離できる。さらに必要に応じて兼用ヒータ237に通電するとともに送風ファン20を駆動させて、温風をドラム3内に送ることで、洗濯物207を温めながら洗浄する。洗濯物207の繊維隙間を空気が占めるよりも熱伝導は良く、効率よく加熱できる。また温度を上げることで、保水されている高濃度洗剤液の表面張力を下げることができる。さらに洗濯物207の温度が上がると、繊維中の空気が繊維を膨潤させるので、高濃度洗剤液の繊維への浸透をより促進できる。これにより繊維から、より多くの汚れを短時間で分離できる。分離された汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。
【0028】
また汚れによっては、洗濯物207にかけた洗浄水の水量が少ない(洗剤濃度が濃い)ほうがよく落ちる場合と、逆に洗浄水の水量が多い(洗剤濃度が薄い)ほうが良く落ちる場合とがある。両者に作用する汚れ落ちの原動力には違いがあり、以下のように解釈できる。洗剤の主成分の一つである界面活性剤は繊維の濡れを促進して、さらに汚れや布の表面電位を、界面活性剤のマイナス極性に引き寄せることで、負に帯電させる働きがある。これにより、洗濯物207から浮かせた汚れ同士や繊維と汚れの間の反発力を増す効果がある。このため、ファン・デル・ワールス力を主体として付着している固形の汚れの洗浄には、界面活性剤の濃度が濃いほうが、ファン・デル・ワールス力に対抗させる前述の反発力を増強できる。よって固形汚れなどは、一般的に界面活性剤濃度が濃いほうがよく落とせる。一方、水や洗浄水に溶け易いいわゆる水溶性の汚れは、溶媒である洗浄水に対する溶質となる汚れの濃度によって、溶解速度が変わる。汚れの濃度が薄い液では溶解速度が大きいが、濃い液では溶解速度が低下する。このため洗濯物207が保水する洗浄水中に分散している汚れの濃度を薄めておけば、さらに洗濯物207から汚れが落ちやすい。換言すれば、洗濯物207の保水する洗浄水は、汚れの濃度の極めて低い洗浄水に置き替えてやるか、汚れの濃度を薄めてやる処置が必要となる。即ち、この種の汚れに対する界面活性剤の役割は、洗濯物207からはがした汚れを分散保持して、凝集や再付着を防ぐ役割が大きいので、ある程度の洗剤濃度が満たされていれば、汚れ落ちに対する洗剤濃度の依存性は小さい。
【0029】
また、どちらの汚れに対しても、洗浄温度を上げることは、結果的に洗浄力を増すことにつながる。前者に対しては、温度を上げることで、洗浄水中の分子拡散が促進されるので、布表面や汚れ表面に、より多くの界面活性剤を付着させることができ、反発力を増強できる。後者に対しても、洗浄水中での界面活性剤の拡散が向上し、布表面の濡れを促進できる。さらに分離させた汚れも効果的に拡散できる。
【0030】
その後の本洗い工程では、前洗い工程が終了した時点で追加給水して、水受け部54の水量を増やして、水位を上げる。この水位は、循環ポンプ18により水受け部54から洗浄水をくみ上げて、外槽2上部の散水ノズル223から連続して散布するのに十分な水位を保つものとする。すなわち十分な洗濯時間を確保して、洗浄水の水量が少なかった前洗い工程において落とし難かった汚れを効果的に落とす工程である。散水ノズル223からの散布は、連続であっても間欠であってもよい。具体的には、洗濯物207の裏側などに多くの汚れがまだ付着している間は、連続で散布して洗浄水の攪拌を促進することで、洗濯物207が保水する洗浄水を、常に汚れ濃度の低い洗浄水に入れ替えることができる。その後、汚れがほとんど落ちた後は、たたき洗いの機械力を主体として残りの汚れを落とすほうが洗浄効率がよい。よって後半の散布は、機械力を妨げないように間欠散布とするのが好ましい。また循環ポンプ18の駆動力を間欠とすることで、消費電力量を抑えられるので、省エネルギーの面からも好ましい。
【0031】
なお散水ノズル223は、外槽2に、洗濯乾燥機正面からみて回転可能なドラム3の中心軸よりも上側且つ、洗濯乾燥機側面からみて、正面寄りの前側の位置に固定されており、散水ノズル223からの噴出範囲を、ドラム3の半径方向に対して広角にして散布する構造としている(図3参照)。この本洗い工程では、広範囲の散布とともに、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げるとともに洗浄水を掻き揚げて、ドラム3内の上方から落下させることにより、洗濯物207に機械的な力を与えてたたき洗いをする。ドラム径が大きいほど、広範囲の散布とたたき洗いの相乗効果が得られ、本洗い工程の時間を短縮できる。この工程において、洗濯物207及び洗浄水の洗浄温度を上げるには、前洗い工程のように温風を用いても本質的には変わらない。ドラム3内の水位を上げることで、ドラム回転による洗浄水の掻き揚げ量や、同じ回転数に対する循環ポンプ18の循環水量が増えても、水位に影響されずに風量を確保して送風できるダクト構造を有しているため、温風量を大幅に調節する必要がない。また、温風吹き出しノズル203と散水ノズル223とは、洗濯乾燥機を正面から見て、中心軸に対して相対する配置としている。このように温風と水流との直接接触が促される相対配置とすることで、発泡も速やかに消泡できる構成としている。
【0032】
また必要に応じて、本洗い工程は、第1本洗い工程および第1本洗い工程の後に実行される第2本洗い工程を有し、第1本洗い工程の終了時に給水して第2本洗い工程の水量は、第1本洗い工程の水量よりも多くすることで、ドラム回転により掻き揚げる水量を増やす。また必要に応じて第2本洗い工程の循環ポンプ18の循環流量も、第1本洗い工程での循環ポンプ18の循環流量よりも大きくする。さらに、第2本洗い工程のドラム駆動のモータM10aの回転速度は、第1本洗い工程のモータM10aの回転速度よりも低くする。
【0033】
本洗い工程は主に、水量の少ない前洗い工程では洗いにくい衣類の内側やポケットの中などの汚れを洗濯物207から分離させるために行う。さまざまな汚れを落とすために、前述のように水量とドラム駆動のモータM10aの回転速度を変えた、少なくとも2つ以上の工程の組み合わせとするのがより好ましい。第1本洗い工程では、ドラム3の回転速度を高くするため、ドラム3の回転とともに上方に持ち上げられた洗濯物207は、全て下方に落ちずに、大半は遠心力により、ドラム3の内壁に固定された状態で、ドラム3とともに回転している。そこに循環ポンプ18から洗浄水を散布させるので、洗濯物207への洗浄水の貫通流速を速くしている。これにより、汚れを洗濯物207から溶け出しやすくしている。これに続く第2本洗い工程では、ドラム3の回転速度を第1本洗い工程よりも低くして、遠心力を弱めて前述の洗濯物207のドラム3への固着を極力抑えて、ドラム3の上方から下方に叩き落すたたき洗いを重視した工程としている。これにより、洗濯物207に機械力を作用させることで、主に疎水性の汚れを落としやすくできる。洗濯物207をドラム3の上方から下方に叩き落とす際に、ドラム3の下方に停留している洗浄水の水位を高くして、かつ循環水量も多くすることで、必要以上に洗濯物207どうしが直接ぶつかり合って、繊維を圧迫させることを防ぐこともできる。
【0034】
すすぎ工程では、排水ポンプ230を駆動させて洗浄水を排水した後、排水ポンプ230を止めて、外槽2内に所定の水位まですすぎ水を給水する。その後、ドラム3を回転させて、洗濯物207とすすぎ水を攪拌してすすぐ(主に図2参照)。
【0035】
また、脱水工程においては、排水ポンプ230を駆動させて外槽2内のすすぎ水を排水した後、ドラム3を回転させて洗濯物207を遠心脱水する。脱水回転数は、洗濯物207のバランスがとれずにモータM10aの電流値が上限を超えるなどの不具合がない限り、負荷に応じた設定回転数まで上昇させる。脱水回転数を上げて、ドラム3が高速回転すると、外槽2にも振動が伝わり、外槽2自身も僅かながら振動する。外槽2に固定された熱交換ダクト231と筐体1に固定されている送風ダクト29は蛇腹管212にて連結しているため、蛇腹管212が連動して、振動の一部を吸収する。また脱水工程において温風をドラム3内に吹き込むことで、洗濯物207に含水された洗浄水の表面張力を下げて脱水性能をあげることができる(主に図2参照)。
【0036】
乾燥工程では、送風ファン20を駆動させて兼用ヒータ237に通電して、温風をドラム3内に送る。本実施例では、送風ファン20の吸込口(図示せず)に通ずる換気ダクト232に設けてある排気トビラ234と給気トビラ235を開けて、循環空気の一部を排気トビラ234から排気して、それと同量の筐体内空気を給気トビラ235から取り入れる。循環空気の一部を、周囲外気に通ずる筐体内空気と入れ替えることで、ドラム3から出た高湿の空気の湿度を下げることができる。とくに乾燥の前半では洗濯物207の含水量が多いため、上記空気の入れ替え量を多くして温風の湿度を低く保つのが好ましい(図2、3参照)。乾燥の後半では洗濯物207の含水量が減ってくるため、洗濯物207の繊維内部からの蒸発を促すために繊維表面の温度を上げて内部への伝熱量を多くする必要がある。そこで温風の温度を高くして洗濯物207への伝熱量を多くするために、換気ダクト232での空気の入れ替えを抑えて循環空気の温度レベルを上げていくのが好ましい。ただし乾燥負荷が小さく、空気の温湿度レベルを変えても乾燥時間や消費電力量にほとんど影響しない場合などは、換気ダクト232での空気の入れ替え量は固定であっても何ら差し支えない。
【0037】
以上のように、洗濯から乾燥までの運転が可能な洗濯乾燥機や洗濯を行う洗濯機によれば、洗濯物207と洗浄水の洗浄温度を、温水と温風を用いて効率よく高めることができる。さらに乾燥工程時には、兼用ヒータ237から下半分のフィン239を介しての循環空気の加熱と換気ダクト232での環境雰囲気相当の湿度の空気との入れ替えで、低湿度の温風を確保することができる。なお、周囲環境の空気の湿度が高く、入れ替えても湿度を下げるのが難しい使用条件に対応できるものとして、送風ダクト29内に給水して、ダクト内空気を水冷除湿する(冷却水は送風ダクト最低部からダクト外へ排水)構成を追加装備しても、洗濯乾燥機能には何ら差支えない。
【0038】
次に制御装置100および各構成要素の制御フローについて説明する。図5は、本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の制御装置100の構成を示すブロック図である。制御装置100(運転制御手段)は、モータM10a(駆動装置M10)および給水ユニット15および兼用ヒータ237への通電を制御して洗い運転を実行可能にすると共に、電導度検出手段4で検出した外槽2内の洗浄水の電導度の算出、すすぎ水内に含有している柔軟仕上剤の有無の判定(基準濃度に対する判別)、脱水工程の短縮の判定、すすぎ工程の短縮の判定等を行う装置である。なお電導度検出手段4や循環ポンプ18を設けず、洗剤量やすすぎ工程については予め規定した閾値を用い、さらに電導度変化から洗浄水内に交じり合った汚れのレベル判定をせず、規定時間の洗い工程として簡略化しても良い。ここでは、電導度検出手段4及び循環ポンプ18を備えた場合の制御装置構成について説明する。まず構成要素について補足する。
【0039】
給水ユニット15(給水手段)は、外槽2の外部に設けられた給水口2aに水を供給して、外槽2内に給水するための装置である。給水ユニット15は、上面カバー1e(図5参照)の背面側に設けられている。図6は、本実施例の洗濯乾燥機における上面カバーを外した平面図である。図6に示すように、給水ユニット15には、給水ホース接続口16aと、給水電磁弁16と、洗剤投入部7で主に構成されている。本実施例の洗剤投入部7は、本洗い時に洗剤を供給するための洗剤投入室73とすすぎ時に供給する柔軟仕上げ剤投入室74に分かれており、機種によっては洗剤投入室73はさらに液体洗剤投入室73bと粉末洗剤投入室73aを有する。
【0040】
給水ホース接続口16aは、一端が水道水の水栓に取り付けられたホース(図示省略)の他端が接続される接続部分である。給水電磁弁16は、洗剤投入部73の粉末洗剤投入室73aおよび液体洗剤投入室73bに連通する給水管(図示せず)や、柔軟仕上剤投入室74に連通する給水管(図示せず)などと、水道水を注水する弁体の開閉制御を電磁力で行うバルブである。粉末洗剤投入室73a、液体洗剤投入室73bおよび柔軟仕上剤投入室74内に供給された水道水は、洗剤類、柔軟仕上剤と共に給水口2aを介して外槽2内に注水される。ここで、給水電磁弁16は、基本的には5つの電磁弁で構成されており、給水ホース接続口からの給水を制御する電磁弁(第1電磁弁)のほかに、第2電磁弁を開閉することにより給水管(図示せず)を介して粉末洗剤投入室73aおよび液体洗剤投入室73bに給水し、第3電磁弁を開閉することにより給水管(図示せず)を介して柔軟仕上剤投入室74に給水し、第4電磁弁を開閉することにより給水管(図示せず)を介して外槽2の給水口2aに直接給水し、必要に応じて、第5電磁弁を開閉することにより給水ホース32を介して乾燥ダクト29(図3参照)の水冷除湿機構(図示せず)に給水する機種や槽カバー内自動おそうじ用散水スプレー(図示せず)に給水することができるようになっている。外槽2の給水口2aに供給された洗浄水は、ドラム3を駆動させるモータもしくはベルト駆動のプーリが取り付けられている外槽底壁に沿わせて水受け部54まで導かれる。必要に応じて、外槽底壁に溝を掘っておき、外槽底壁と同一面となるようにフタを設けることで、供給された洗浄水を、水受け部54まで円滑に流通させる構成としてもよい。
【0041】
図7は、本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の外槽下部を中心に本体正面上方からみた斜視図である。
【0042】
電導度検出手段4は、給水口2a(図6参照)から供給された水が外槽下部において最初に触れる位置に設けられている。即ち、給水口2aから供給された水が水受け部54に流下する位置に設けてある。このため電導度検出手段4は、水道水が給水された場合、水の電導度を精度良く測定することができる。洗剤や柔軟仕上剤が供給された場合も、電導度検出手段4は、水の中に洗剤や柔軟仕上剤が含まれていることを検知することができる。また、電導度検出手段4は、水受け部54の内部に配置されているので、後述する洗剤溶かし工程において、洗剤が溶かされた水の電導度を検出することができるようになっている。また電導度検出手段4は、洗濯前の水道水、洗濯(洗い、すすぎ、脱水)時の洗浄水の電導度を検出するセンサであり、具体的には合成樹脂製のセンサベースに、一対の電極(図示せず)を備えた構成となっている。電極は、たとえば平板形状とすることにより、電極面積を棒状の電極に比べて広く確保することができ、安定した電導度の検知が可能になる。
【0043】
図5に示すように、制御装置100は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と称する)110、駆動回路、操作スイッチ12,13や電導度検出手段4や各種センサからの入力回路等で構成される。マイコン110は、使用者の操作や、洗い工程、乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイコン110は、駆動回路を介して、駆動装置M10(モータM10a)、給水電磁弁16、排水ポンプ230、送風ファン20等に接続され、これらの開閉、回転、通電を制御する。また、使用者にドラム式洗濯機に関する情報を知らせるために、表示器14やブザー(図示せず)等を制御する。
【0044】
図2に示すように、駆動装置M10は、ドラム3を回転駆動させる装置であり、外槽2の底面の外側中央に設置されている。駆動装置M10は、モータM10aと取付具M10bとを有している。モータM10aの主軸211は、外槽2を貫通し、ドラム3に結合されている。モータM10aは、その回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転検出装置28と、モータM10aに流れる電流を検出するモータ電流検出装置(図示省略)とを備えている。このように制御装置100は、マイコン110を中心に構成される。マイコン110は、運転パターンデータベース111と、工程制御部112と、回転速度算出部113と、衣類重量算出部114と、電導度測定部115と、洗剤量・洗い時間決定部116と、濁度判定部117と、閾値記憶部118と、を備えている。なお、これらの機能については後述する。
【0045】
操作スイッチ12,13は、使用者により運転コースを入力することができるように構成されており、入力された信号をマイコン110に出力する。また、水位センサ34は、外槽2の内部に貯留された水の水位を検出することができるようになっており、検出された信号をマイコン110に出力する。
【0046】
温度センサT1は、外槽2の下部(例えば、排水口21)に設けられ、外槽2の内部に貯留された水の温度を検出することができるようになっている。温度センサT2は、送風ファン20の吸気側に向かう外槽2の循環空気出口2bに設けられ、送風ファン20に吸気されるドラム3出口の空気の温度を検出することができる。温度センサT3は、送風ファン20の排気側にあたるヒータユニット236よりも下流側に設けられ、送風ファン20からドラム3内に吹き出される温風温度を検出することができるようになっている。温度センサT4は、筐体内上部に具えた吸気トビラ235近くに設けられ、筐体内雰囲気温度を検出できる。なお、温度センサT1〜T4で検出された信号は、マイコン110に出力される。加速度センサ27は外槽2に取り付けられ、外槽2(ドラム3)の振動を検知する。加速度センサ27で検知された信号は、マイコン110に出力される。
【0047】
回転検出装置28は、例えばレゾルバ(回転角センサの一種)で構成され、モータM10aの回転を検出することができ、検出された信号はマイコン110に出力される。モータ電流検出装置25は、モータM10aの電流値を検出することができ、検出された信号は、マイコン110に出力される。電導度検出手段4は、外槽2の内部に貯留された水の電導度を検出することができ、検出された信号はマイコン110に出力される。
【0048】
マイコン110は、操作スイッチ12,13から入力された運転コースに対応する運転パターンを運転パターンデータベース111から呼び出し、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥の何れかから開始する機能を有する。工程制御部112は、運転パターンデータベース111から呼び出された運転パターンに基づき、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程の各工程を運転制御する機能を有する。各工程において、工程制御部112は、表示器14、給水ユニット15、給水電磁弁16、排水ポンプ230を制御する機能を有する。また、工程制御部112は、モータ駆動回路121を介して駆動装置M10のモータM10aを駆動制御し、兼用ヒータスイッチ123のON/OFFを制御することにより兼用ヒータ237への通電を制御する。ファン駆動回路124を介して送風ファン20を制御し、循環ポンプ駆動回路125を介して循環ポンプ18を駆動制御する機能を有する。ここで、循環ポンプ18は、排水口21から吸い込んだ水を水受け部54の循環吐出口54bから吐出させる洗剤溶かし動作と、排水口21から吸い込んだ水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル223からドラム3の内部に吐出させる循環動作とを切り替えて行うことができるようになっている。なお、このような動作切替可能な循環ポンプ18の構成は、循環ポンプ18と切替弁(図示せず)とにより構成されるものであってもよく、あるいは循環ポンプ18の回転方向を切り替えることにより吐出方向を切り替えることができる構成であってもよい。
【0049】
回転速度算出部113は、モータM10aの回転を検出する回転検出装置28からの検出値に基づき、モータM10aの回転速度を算出する機能を有する。衣類重量算出部114は、回転速度算出部113で算出された回転速度と、モータ電流検出装置25の検出値に基づいて、ドラム3(図2参照)内の洗濯物207の重量を算出する機能を有する。洗濯物207の重量が増加することによりドラム3を回転させるための負荷が大きくなり、モータM10aに流れるモータ電流が多く必要になることから、モータM10aのモータ電流と回転速度により洗濯物207の重量、つまり洗濯コースに対する負荷を算出することができる。
【0050】
電導度測定部115は、電導度検出手段4からの検出値を用いて水道水や洗浄水の電導度を測定する機能を有する。洗剤量・洗い時間決定部116は、電導度測定部115が測定した電導度等に基づいて、洗剤量および洗濯物のすすぎ時間を決定する機能を有するものであり、詳細は後述する。
【0051】
濁度判定部117は、電導度測定部115が測定した電導度に基づいて、洗濯物207の汚れ具合(以下、濁度とする)を判定する機能を有する。閾値記憶部118は、濁度判定部117が衣類の汚れ具合(濁度)を判定する際に用いる閾値を記憶する機能を有する。ちなみに、濁度判定部117および閾値記憶部118は、本実施例では、以下のように本洗い工程時の制御に使用している。第1本洗い工程の前後において、電導度測定部115により、洗浄水の電導度EC1を計測する。なお、電導度を計測する際は、給水電磁弁16による外槽2への給水、循環ポンプ18による循環、モータM10aによるドラム3の回転は停止されていることが望ましい。濁度判定部117において、第1本洗い工程の前後で測定した電導度EC1の差が、閾値記憶部118に記憶された閾値以上か否かを判定する。もし否(閾値よりも低い)であれば、汚れが少ないと判断し、可であれば、汚れが多いと判断して、その後の第2本洗い工程に進む。第2本洗い工程は、前述のように第1本洗い工程よりも水位を高くして、さらに循環ポンプ18の循環流量も多くしたたたき洗いとしている。即ち、洗濯物207がドラム3上方に持ち上げられて、下方にたたき落とされた際に、洗濯物207どうしがぶつかり合って、繊維を圧迫するのを防いでいる。しかしながらこの工程が長いほど、洗濯物207のごわつきは増大する傾向にある。したがって、汚れが比較的少ない場合は、第2本洗い工程を極力短くしたい。そこで、汚れが少ないと判断できた場合には、第2本洗い工程の運転時間を短く調整する。なお、濁度の判定は、他の工程間の切り替えタイミングや各工程の運転時間の見直しにも使用できる。
【0052】
次に、第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の運転工程について主に制御アルゴリズムの観点から説明する。図8は、第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機における洗濯運転(洗い〜すすぎ〜脱水〜乾燥)の運転工程を説明する工程図である。
【0053】
ステップS1において、工程制御部112は、ドラム式洗濯乾燥機の運転工程のコース選択の入力を受け付ける(コース選択)。ここで、使用者は、ドア9を開けて、ドラム3の内部に洗濯する洗濯物207を投入し、ドア9を閉じる。そして、使用者は、操作スイッチ12,13を操作することにより、運転工程のコースを選択し入力する。操作スイッチ12,13が操作されることにより、選択された運転工程のコースが工程制御部112に入力される。工程制御部112は、入力された運転工程のコースに基づいて、運転パターンデータベース111から対応する運転パターンを読み込み、ステップS2に進む。なお、以下の説明において、40℃温水洗濯コース(予洗いなしの洗い〜すすぎ2回〜脱水)が選択されたものとして説明する。
【0054】
ステップS2において、工程制御部112は、ドラム3に投入された洗濯物の重量(布量)を検出する工程を実行する(布量センシング)。具体的には、工程制御部112は、モータM10aを駆動してドラム3を回転させるとともに、衣類重量算出部114が注水前の洗濯物207の重量(布量)を算出する。
【0055】
ステップS3において、工程制御部112は、コース選択の一つである予洗い工程の選択の有無を判断し、制御アルゴリズムの分岐選択を行う。以下、予洗いなしが選択されているものとする。
【0056】
ステップS4において、工程制御部112は、洗剤量・運転時間を算出する工程を実行する(洗剤量運転時間算出)。具体的には、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第4電磁弁を開弁して)、外槽2の給水口2aに直接給水する。電導度測定部115は、給水された水の電導度(硬度)を検出する。また、センサT1で、給水された水の温度を検出する。その後、給水電磁弁16を制御して、外槽2への給水を終了する。
【0057】
洗剤量・洗い時間決定部116は、ステップS2で検出した布量、水の電導度(硬度)、水の温度に基づいて、マップ検索により、投入する洗剤量と運転時間を決定する。すなわち布の量、水の電導度と温度に対して各々洗浄性能を確保できる洗剤量と運転時間をデータのマップとして記憶しておき、測定した値をマップと照らし合わせて、測定値が収まる範囲内に基づいた洗剤量と運転時間を決定する。そして、工程制御部112は、決定された洗剤量・運転時間を表示器14に表示する。なお、外槽2に給水して水の電導度(硬度)および水温を検出するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、前回運転時の水の電導度(硬度)および水温をマイコン110の記憶部(図示せず)に記憶しておき、それを用いてもよい。
【0058】
ステップS5において、工程制御部112は、洗剤投入待ち工程を実行する(洗剤投入待ち工程)。例えば、工程制御部112は所定時間待機して、ステップS6に進む。なお、工程制御部112は、洗剤投入部7の開閉を検知する手段(図示せず)により、洗剤投入部7が開けられた後に閉じられた場合、洗剤が投入されたものとして、ステップS6に進む構成であってもよい。
【0059】
ステップS6において、工程制御部112は、洗剤溶かし工程を実行する(洗剤溶かし工程)。例えば、工程制御部112は給水電磁弁16を制御して、給水管を介して粉末洗剤投入室73aおよび液体洗剤投入室73bに給水する。粉末洗剤投入室73aおよび液体洗剤投入室73bの洗剤と水は、給水口2aから外槽2の水受け部54まで流入する(図9及び10参照)。所定水量まで給水すると、工程制御部112は給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁を閉弁して)、給水を停止させる。そして、工程制御部112は洗剤溶かし動作を実行する(洗剤溶かし動作)。具体的には、工程制御部112は、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだ水と洗剤を水受け部54の循環吐出口54bから吐出させる。循環吐出口54bから吐出された水と洗剤は水受け部54を流れ、排水口21へと向かい、循環するようになっている(図7参照)。これにより、水と洗剤が攪拌され、洗剤が水に溶かされるようになっている。所定時間(例えば、10秒)が経過した後、生成した高濃度洗剤液を外槽上部の散水ノズル223までくみ上げて、散布する。少ない高濃度洗剤液を、極力、洗濯物207に均一に散布するために、散布直前にドラム3を高速で回転させて、遠心力でドラム3内面に洗濯物207を張り付かせておく。ドラム3の回転を保ちながら、循環ポンプ18で外槽2上部の散水ノズル231までくみ上げた高濃度洗剤液を散布する。高濃度洗剤液は散水時の速度エネルギーと、洗濯物207に到達してから働く遠心力により、ドラム3内壁に向かって洗濯物207に浸透していく。またドラム3は洗濯物207が遠心力で張り付く回転速度で回っているため、たとえばドラム3を80r/minで回した場合、散布時間が20秒でも、ドラム上の同一点に対して約26回散水された水を浴びせることができる。
【0060】
高濃度洗剤液を洗濯物207に浸み込ませた後、次の工程において温風を効率よく生成し吹き付けることで、消費電力をおさえつつ、洗浄力を向上できる。
【0061】
ステップS7において、工程制御部112は、前洗い洗浄工程を実行する(前洗い洗浄工程)。前洗い洗浄工程では、高濃度洗剤液を散布された洗濯物207に、兼用ヒータ237で加熱した温風を送風ファン20により洗濯物207に吹き付け、押し広げるとともに加熱していく。本工程において、洗濯物207は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、洗濯物207の見かけの熱伝導率は高く、効率よく加熱できる。また温度を上げることで、保水されている高濃度洗剤液の表面張力と粘度をさげることができて、さらに洗濯物207の繊維を膨潤させるので、高濃度洗剤液の繊維への浸透をより促進できる。これにより、繊維から汚れを効率よく分離できる。分離できた汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。工程を開始してから所定時間が経過すると、給水電磁弁16を制御して、外槽2内の洗浄水の水位を上昇させる。そして外槽2内の洗浄水の水位が、洗剤溶かし工程時の水位WL0に対して所定の水位WL1(WL0<WL1)まで上昇すると給水を停止させ、前洗い工程を終了し、ステップS8に進む。
【0062】
ステップS7の前洗い工程が終了すると、工程制御部112は、本洗い工程を実行する。ここで、本洗い工程とはドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げてドラム3内の上方から落下させることにより、洗濯物207に機械的な力を与えてたたき洗いをする工程である。本洗い工程は、ステップS8の本洗い1工程(第1本洗い工程)と、ステップS9の本洗い2工程(第2本洗い工程)と、で構成されている。
【0063】
ステップS8において、工程制御部112は、第1本洗い工程を実行する(第1本洗い工程)。具体的には、工程制御部112は循環ポンプ18を所定の流量PF1となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗浄水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を所定の回転速度DR1で回転させることにより、ドラム3の内部の洗濯物207をたたき洗いする。このとき水受け部の兼用ヒータ237に通電して追加給水した水を選択設定された所定温度(40℃)まで温める。また設定温度が高い場合や洗濯負荷が大きい場合には、ドラム3の回転と循環ポンプ18を間欠運転とした状態で、送風ファン20を駆動させて温風をドラム3内へ送風することで、洗濯物と含水されている洗浄水を主体にあたためる。ドラム3を連続的に回転させて追加給水を通常の循環ポンプ18で散布させると洗濯物207の温度は急激に低下してしまうが、このように温風を送風しつつドラムと循環ポンプによる散水を間欠運転とすることで、洗濯物207に含まれる水を僅かずつ入れ替えることができるため、洗濯物207の急激な温度低下も抑えることができる。とくに高温環境で落としやすい付着した固形汚れなどの洗浄性能を向上させることができる。
【0064】
所定の時間(T1)が経過すると、工程制御部112は、第1本洗い工程を終了し、ステップS9に進む。ステップS9において、工程制御部112は第2本洗い工程を実行する(第2本洗い工程)。具体的には、工程制御部112は給水電磁弁16を制御して、所定の水位WL2(WL1<WL2)まで外槽2に給水する。また、工程制御部112は循環ポンプ18を所定の流量PF2(PF1<PF2)となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗浄水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を所定の回転速度DR2(DR1>DR2)で回転させることにより、ドラム3の内部の洗濯物207をたたき洗いする。所定の時間(T2)が経過すると、工程制御部112はモータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水ポンプ230を駆動して外槽2内の洗浄水を排水する。
【0065】
ステップS9において、工程制御部112は第1すすぎ工程を実行する(第1すすぎ工程)。例えば、第1すすぎ工程において、工程制御部112は、給水電磁弁16および排水弁V1を制御して、給水と排水を繰り返すとともに、モータM10aを制御してドラム3を回転させ、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだすすぎ水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させて、衣類をすすぐ。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112はモータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水ポンプ230を駆動して外槽2内のすすぎ水を排水する。
【0066】
ステップS11において、工程制御部112は第2すすぎ工程を実行する(第2すすぎ工程)。例えば、第2すすぎ工程において、工程制御部112は排水ポンプ230を停止し、給水電磁弁16を制御して、所定の水位まで外槽2に給水する。また、工程制御部112はモータM10aを制御してドラム3を回転させ、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだすすぎ水を外槽2の開口部に設けた散水ノズル223からドラム3の内部に散水させて、洗濯物207をすすぐ。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112はモータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水ポンプ230を駆動して外槽2内のすすぎ水を排水する。
【0067】
ステップS12において、工程制御部112は脱水工程を実行する(脱水工程)。具体的には、工程制御部112は排水ポンプ230を駆動させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を本洗い工程時よりも高速で回転させ、洗濯物207を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112はモータM10aを停止させ、排水ポンプ230を停止して、洗濯コース(洗い〜すすぎ〜脱水)を終了する。なお,この工程において、送風ファン20を駆動させ、兼用ヒータ237に通電させて温風をドラム3内に送ることで、洗濯物207に含まれる水を温めて表面張力を下げて脱水を促進させてもよい。
【0068】
なお、ステップS7及びステップS8における本洗い工程においては、洗濯物207の黒ずみ、ごわつきを抑制させる運転特性としており、以下にそのメカニズムを中心に説明する。第1本洗い工程(ステップS8)の後に第2本洗い工程(ステップS9)を行うが、第2本洗い工程の水位WL2は、第1本洗い工程の水位WL1よりも高くなっている(WL1<WL2)。即ち、外槽2内の洗浄水の水量を増やすことにより、洗濯物207から剥がされた汚れを洗浄水に分散させることができ、洗濯物207から剥がされた汚れが再び洗濯物207に付着することにより生じる「洗濯物の黒ずみ」を抑制することができる。
【0069】
また、第2本洗い工程のドラム3の回転速度DR2は、第1本洗い工程のドラム3の回転速度DR1よりも遅くなっている(DR1>DR2)。ドラム3の回転速度DR2を回転速度DR1より遅くすることにより、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げてドラム3内の上方から落下させる際、落下を開始する位置が低くなる。即ち、たたき洗いされる洗濯物207に加わる落下衝撃(機械力)が抑制され、「洗濯物のごわつき」を抑制することができる。また、水位WL2を高くすることによっても、落下衝撃(機械力)が抑制され、「洗濯物のごわつき」を抑制することができる。一方、ドラム3の回転速度DR1は、遠心力によってドラム3内壁に張り付いた洗濯物207が、上方に持ち上げられるまでに、重力により全て剥がれ落ちてしまうよりも速い回転速度で回して(遠心力>重力)、すべての洗濯物207に対して、たたき洗いのような落下をさせない運転としても、差支えない。即ち、たたき洗いを極力抑えつつ、通常の洗濯運転よりも多い循環量を洗濯物207に通過させることで、洗浄する運転としてもよい。しかしながら、たたき洗いによる洗浄性能が低下するおそれがあるが、これに対し、第2本洗い工程の循環ポンプ18の流量PF2を、第1本洗い工程の循環ポンプ18の流量PF1よりも大きくすることで(PF1<PF2)、水流による洗浄性能を確保させることができる。たとえば循環ポンプ18の循環流量は、30L/min以上80L/min以下とすることが望ましい。また、第1本洗い工程の運転時間(T1)と第2本洗い工程の運転時間(T2)は、第2本洗い工程の運転時間(T2)の方が第1本洗い工程の運転時間(T1)よりも長くなるように設定するのが望ましい(T1<T2)。このようにすることにより、「洗濯物のごわつき」をより抑制することができる。
【0070】
ステップS13において、工程制御部は乾燥工程を実行する(乾燥工程)。具体的にはモータM10を制御してドラム3を約40r/minで左右30sずつをインターバル10sをはさんで回転を繰り返す。すなわち洗濯物207がドラム3内壁にへばりつくよりも低い回転数での運転とする。この間、連続もしくは間欠的に送風ファン20を駆動してドラム3内に送風するが、兼用ヒータ237も所定の温風温度となるように、連続もしくは間欠的に通電する。乾燥工程の間、排水ポンプ230は間欠的に駆動させておくことで、ドラム3下部から糸くずフィルタ222付近までに残留している水を排水させる。また換気のための給気トビラ235と排気トビラ234を開いて、循環空気の湿度を調節する。開度は乾燥コースや負荷に応じて予め用意しておいたデータテーブルに基づいて決めておき、規定時間経過後もしくは送風ファン20の吸気側に向かうドラム3出口の空気温度T2が、初期温度に対して規定値以上に上昇してきたのを確認したら、乾燥が進んだものと判断して温風温度レベルを上げるために吸気トビラ235と排気トビラ234の開度を狭めて、換気量を減らすのが好ましい。乾燥開始から規定時間経過したら終了判定を行う。具体的には、乾燥初期の送風ファン20の吸気側に向かうドラム3出口温度T2と判定時のT2との差ΔT2を求め、筐体内雰囲気T4の乾燥初期値と判定時の値との差ΔT4を求め、その比ΔT2/ΔT4が規定値以上となった場合には、乾燥を終了させる。すなわち雰囲気温度の変化に対してドラム3出口の温風温度の変化が規定よりも大きくなった場合、洗濯物207からの水分蒸発が治まったものと判定し、乾燥を終了させる。
【0071】
また本実施例では、スチーム乾燥機能を有しており、この機能を選択した場合は、乾燥工程の初期もしくは途中において、給水電磁弁16を間欠的に開閉して外槽2下部に僅かに給水する。兼用ヒータ237の上半分のフィン238も加熱状態にあるため、このフィンに接触した水は速やかに蒸発し、ドラム3内に拡散していく。乾燥負荷に応じて給水量とタイミングを調節することで、しわを伸ばす程度の適度な湿り気を与えつつ乾燥させていくことで、よりしわの少ない上質な仕上がりを伴った乾燥ができる。
【0072】
以上のように、第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機の運転工程によれば、洗浄時には各コースの洗浄水量に応じて温水及び温風を生成して、洗濯物207や洗浄水のいわゆる洗浄温度を、効率よく適正値まで温めることができる。また乾燥時には、送風と熱交換させるための兼用ヒータ237に設けた下半分のフィン239の伝熱面積を十分確保した構成としているため、乾燥負荷や乾き具合に応じて兼用ヒータ237の入力と送風量を幅広く調節することができるので、効率よく短時間で乾燥させることができる。さらに衣類の黒ずみと衣類のごわつきを抑制することができる。
【0073】
40℃洗浄コースを基準にして説明したが、温度に対して色落ち、色あせが気になる洗濯物や、加温により繊維の縮みが目立ってしまう洗濯物に関しては、通常の洗濯コースを選ぶことができる。この場合には消費電力量を低減できる。さらに、黒ずみが気になる白物や薄い柄物、ごわつきが気になるタオルなど以外の洗濯物で、どちらかというと節水を望む洗濯では、節水洗濯コースを選ぶことができる。この場合は、本洗い工程において水位を上げず、循環流量も、15〜20L/minに設定することで、洗濯全体の使用水量を抑えることができる。
【0074】
(実施例2)
図9は、本発明の第2の実施例におけるドラム3の基本構成について示した斜視図である。本実施例におけるドラム3は、外槽2と面する側面に、外槽下部の洗浄水を強制的に掻き揚げるための掻き揚げ具233を設けた構成となっている。このような構成とすることで、第1の実施例の説明で述べてきた循環ポンプ18を設けずに、ドラム3の回転時の掻き揚げ動作のみで、十分な循環水量を確保できる。
【0075】
(実施例3)
図10は、本発明の第3の実施例におけるタテ型洗濯乾燥機の基本構成について示した全体断面図である。内槽78が床面に対して略垂直となるいわゆる縦型の洗濯乾燥機に適用したものである。前述のように、ドラム式とタテ型では、各工程の概要と制御アルゴリズムには大きな差はないため、本発明に関係した構成についてのみ説明する。送風ファン20からの温風を送る送風ダクト29は、外槽下部中心にある内槽駆動用のメインモータM10aとの干渉を避けて、内槽78の中心軸から外周側に設けた構成となっている。このため、兼用ヒータ237も内槽78の中心軸から外周側に位置させることで、兼用ヒータ237周囲の洗浄水の攪拌を良好にできる。また熱交換ダクト231からの温風を吹き出す吹き出しノズル203は、直接、内槽78の内部に設けずに、外槽2内から内槽78側壁に向けて吹くように設けてある。さらに内槽78は、吹き出しノズル203と同じ高さにおいて、脱水孔の開口率を大きくした側面80を設けた構成としている。このような構成とすることで、開口率を大きくした脱水孔を通して、温風を、比較的低速で回転中の内槽内に、一様に導くことが出来る。とくに内槽の回転は断続とし、パルセータ79の回転頻度を上げておけば、パルセータ79から換気ダクト232入口に向かう空気流れ内に吹き出すことができるので、パルセータ79に連動した洗濯物207に温風を効率よく当てることが出来る。
【符号の説明】
【0076】
1 筐体
1a,1b 側板
1c 前面カバー
1d 背面に背面カバー
1e 上面に上面カバー
1h ベース
2 外槽
2a 給水口
2b 循環空気出口
3 ドラム
4 電導度検出手段
5 ダンパ
7 洗剤投入部
9 ドア
9a ドアガラス
9b ドア枠
10 ゴム製のベローズ
M10 駆動装置
M10a モータ
M10b 取付具
12、13 操作スイッチ
14 表示器
15 給水ユニット(給水手段)
16 給水電磁弁
16a 給水ホース接続口
18 循環ポンプ
20 送風ファン
21 排水口
26 排水ホース
27 加速度センサ
28 回転検出装置
29 送風ダクト
34 水位センサ
54 水受け部
54a 底面
54b 循環吐出口
71 引き出し式のトレイ
73 洗剤投入室
73a 粉末洗剤投入室
73b 液体洗剤投入室
74 柔軟仕上剤投入室
78 内槽
79 パルセータ
80 排水孔の開口率を大きくした側面

100 制御装置(運転制御手段)

110 マイクロコンピュータ
111 運転パターンデータベース
112 工程制御部
113 回転速度算出部
114 衣類重量算出部
115 電導度測定部
116 洗剤量・洗い時間決定部
117 濁度判定部
118 閾値記憶部

123 兼用ヒータスイッチ
124 ファン駆動回路
125 循環ポンプ駆動回路

V1 排水弁
T1〜T4 温度センサ

203 吹出しノズル
207 洗濯物
208 流体バランサー
209 リフター
210 金属製フランジ
211 主軸
212 ゴム製の蛇腹管
215 ジャバラホース

222 糸くずフィルタ
223 散水ノズル
224 散水機構

230 排水ポンプ
231 熱交換ダクト
232 換気ダクト
233 掻き揚げ具
234 排気トビラ
235 給気トビラ
236 ヒータユニット
237 兼用ヒータ
238 上半分のフィン
239 下半分のフィン
240 掻き揚げ具

EC1 (第1本洗い工程前の)電導度(電気伝導度)
EC2 (第1本洗い工程後の)電導度(電気伝導度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10