特許第6890438号(P6890438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6890438浮上量算出装置、塗布装置および塗布方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890438
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】浮上量算出装置、塗布装置および塗布方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210607BHJP
   B65G 51/03 20060101ALI20210607BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20210607BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20210607BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20210607BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20210607BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   B65G51/03 C
   B05C11/00
   B05C5/02
   B05C13/02
   B05D1/26 Z
   B05D3/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-40301(P2017-40301)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-147977(P2018-147977A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】塩田 明仁
(72)【発明者】
【氏名】實井 祐介
【審査官】 湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−105623(JP,A)
【文献】 特開2008−132422(JP,A)
【文献】 特開2014−014842(JP,A)
【文献】 特開2004−321932(JP,A)
【文献】 特開2012−204500(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0034341(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0189880(US,A1)
【文献】 特開2008−310249(JP,A)
【文献】 特開2012−142583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B05C 5/02
B05C 11/00
B05C 13/02
B05D 1/26
B05D 3/00
B65G 51/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部の吸着部材によって下面が部分的に保持されながら前記搬送部によってステージに搬送される、基板に下方から浮力を与えて前記ステージから上方に前記基板を浮上させるとともに浮上状態の前記基板にノズルから塗布液を吐出して塗布する塗布装置において前記ステージからの前記基板の浮上量を算出する浮上量算出装置であって、
前記吸着部材のうち前記基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置と、前記基板のうち前記吸着部材によって吸着された被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置とを検出する板厚測定用センサと、
前記ステージの上面の鉛直方向位置と、前記ステージの上方に搬送された前記基板の上面の鉛直方向位置とを検出する浮上測定用センサと、
前記板厚測定用センサにより検出された前記吸着面の鉛直方向位置および前記被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置に基づいて前記基板の板厚を算出する板厚算出部と、
前記浮上測定用センサにより検出された前記ステージの上面の鉛直方向位置および前記基板の上面の鉛直方向位置と、前記板厚算出部により算出された前記板厚とに基づいて前記基板の浮上量を算出する浮上量算出部とを備え
前記搬送部による前記基板の搬送方向において、前記板厚測定用センサは前記浮上測定用センサより上流側に配置されていることを特徴とする浮上量算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浮上量算出装置であって、
前記板厚測定用センサは、前記搬送部によって搬送される前記基板よりも鉛直上方に配置され、前記搬送部および前記基板の上方から非接触で前記吸着面の鉛直方向位置および前記被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置を検出する非接触センサである浮上量算出装置。
【請求項3】
基板の下面を部分的に吸着して保持する吸着部材を有し、前記吸着部材により前記基板を保持しながら所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記基板に下方から浮力を与えて前記基板を浮上させるステージと、
前記ステージから浮上された前記基板に塗布液を吐出して塗布するノズルと、
前記吸着部材のうち前記基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置と、前記基板のうち前記吸着部材によって吸着された被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置とを検出する板厚測定用センサと、
前記ステージの上面の鉛直方向位置と、前記ステージの上方に搬送された前記基板の上面の鉛直方向位置とを検出する浮上測定用センサと、
前記板厚測定用センサにより検出された前記吸着面の鉛直方向位置および前記被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置に基づいて前記基板の板厚を算出する板厚算出部と、
前記浮上測定用センサにより検出された前記ステージの上面の鉛直方向位置および前記基板の上面の鉛直方向位置と、前記板厚算出部により算出された前記板厚とに基づいて前記基板の浮上量を算出する浮上量算出部とを備え
前記搬送部による前記基板の搬送方向において、前記板厚測定用センサは前記浮上測定用センサより上流側に配置されていることを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
搬送部の吸着部材によって下面が部分的に保持されながら前記搬送部によってステージに搬送される、基板に下方から浮力を与えて前記ステージから上方に前記基板を浮上させるとともに浮上状態の前記基板にノズルから塗布液を吐出して塗布する塗布方法であって、
前記基板への前記塗布液の塗布前に、板厚測定用センサにより前記吸着部材のうち前記基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置を検出するとともに、浮上測定用センサより前記ステージの上面の鉛直方向位置を検出する第1工程と、
前記基板を前記吸着部材で保持した後に前記基板のうち前記吸着部材によって吸着された被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置を前記板厚測定用センサにより検出する第2工程と、
前記吸着面の鉛直方向位置および前記被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置に基づいて前記基板の板厚を算出する第3工程と、
前記吸着部材で保持されながら前記搬送部により前記ステージの上方に搬送される前記基板の上面の鉛直方向位置を前記浮上測定用センサより検出する第4工程と、
前記ステージの上面の鉛直方向位置および前記基板の上面の鉛直方向位置と、前記第3工程で算出された前記板厚とに基づいて前記基板の浮上量を算出する第5工程とを備え
前記搬送部による前記基板の搬送方向において、前記板厚測定用センサは前記浮上測定用センサより上流側に配置されていることを特徴とする塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板をステージから浮上させた状態で水平方向に搬送しながらその上面に塗布液を塗布する塗布装置および塗布方法、ならびに塗布装置において浮上量を算出する浮上量算出装置に関するものである。なお、上記基板には、半導体基板、フォトマスク用基板、液晶表示用基板、有機EL表示用基板、プラズマ表示用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品等の製造工程では、基板の上面に塗布液を吐出して基板の上面に塗布する塗布装置が用いられている。例えば特許文献1に記載の塗布装置は、基板の下面に気体を吹き付けて基板をステージから浮上させた状態で当該基板を搬送しながらポンプによって塗布液をスリットノズルに送液してスリットノズルの吐出口から基板の表面に吐出して基板のほぼ全体に塗布液を塗布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5346643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載の装置では、スリットノズルに対して基板の浮上量を非接触で検知するための光学式センサが設置されている。そして、この光学式センサによる検出結果に基づいてスリットノズルの鉛直方向における位置(以下「鉛直方向位置」という)を調整している。ここで、基板が透明材料で構成されている場合には、センサによって3種類の鉛直方向位置(浮上した基板の上面の鉛直方向位置、当該基板の下面の鉛直方向位置、およびステージの上面の鉛直方向位置)を検出することが可能であり、これらの鉛直方向位置に基づいて基板の板厚およびステージからの浮上量を算出することが可能である。
【0005】
しかしながら、遮光性材料を含む基板、例えばメタル蒸着された基板等では、基板の下面の鉛直方向位置を検出することは困難である。そのため、上記装置では、基板の下面に対する気体の吹付状況、例えば気体流量に対応する浮上量で基板が浮上しているという前提で塗布処理を行っている。したがって、例えば気体流量の変動により浮上量が少なく、あるいはゼロになってしまうと、基板搬送を良好に行うことができず、その結果、塗布処理の精度が低下してしまうことがある。このように浮上量は高精度な塗布処理を良好に行う上で重要な物理量であるにもかかわらず、上記したように固定値を用いることがある。そこで、従来より、基板を浮上させながら塗布処理を行う塗布技術において、基板の種類を問わず、浮上量を正確に求める技術が要望されている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板をステージから浮上させつつ搬送しながら基板に塗布液を塗布する塗布装置において、基板の種類を問わず、ステージからの浮上量を高精度に求めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1態様は、搬送部の吸着部材によって下面が部分的に保持されながら搬送部によってステージに搬送される、基板に下方から浮力を与えてステージから上方に基板を浮上させるとともに浮上状態の基板にノズルから塗布液を吐出して塗布する塗布装置においてステージからの基板の浮上量を算出する浮上量算出装置であって、吸着部材のうち基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置と、基板のうち吸着部材によって吸着された被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置とを検出する板厚測定用センサと、ステージの上面の鉛直方向位置と、ステージの上方に搬送された基板の上面の鉛直方向位置とを検出する浮上測定用センサと、板厚計測用センサにより検出された吸着面の鉛直方向位置および被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置に基づいて基板の板厚を算出する板厚算出部と、浮上測定用センサにより検出されたステージの上面の鉛直方向位置および基板の上面の鉛直方向位置と、板厚算出部により算出された板厚とに基づいて基板の浮上量を算出する浮上量算出部とを備え、搬送部による基板の搬送方向において、板厚測定用センサは浮上測定用センサより上流側に配置されていることを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第2態様は、塗布装置であって、基板の下面を部分的に吸着して保持する吸着部材を有し、吸着部材により基板を保持しながら所定の搬送方向に搬送する搬送部と、搬送部により搬送される基板に下方から浮力を与えて基板を浮上させるステージと、ステージから浮上された基板に塗布液を吐出して塗布するノズルと、吸着部材のうち基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置と、基板のうち吸着部材によって吸着された被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置とを検出する板厚測定用センサと、ステージの上面の鉛直方向位置と、ステージの上方に搬送された基板の上面の鉛直方向位置とを検出する浮上測定用センサと、板厚計測用センサにより検出された吸着面の鉛直方向位置および被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置に基づいて基板の板厚を算出する板厚算出部と、浮上測定用センサにより検出されたステージの上面の鉛直方向位置および基板の上面の鉛直方向位置と、板厚算出部により算出された板厚とに基づいて基板の浮上量を算出する浮上量算出部とを備え、搬送部による基板の搬送方向において、板厚測定用センサは浮上測定用センサより上流側に配置されていることを特徴としている。
【0009】
さらに、この発明の第3態様は、搬送部の吸着部材によって下面が部分的に保持されながら搬送部によってステージに搬送される、基板に下方から浮力を与えてステージから上方に基板を浮上させるとともに浮上状態の基板にノズルから塗布液を吐出して塗布する塗布方法であって、基板への塗布液の塗布前に、板厚測定用センサにより吸着部材のうち基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置を検出するとともに、浮上測定用センサよりステージの上面の鉛直方向位置を検出する第1工程と、基板を吸着部材で保持した後に基板のうち吸着部材によって吸着された被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置を板厚測定用センサにより検出する第2工程と、吸着面の鉛直方向位置および被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置に基づいて基板の板厚を算出する第3工程と、吸着部材で保持されながら搬送部によりステージの上方に搬送される基板の上面の鉛直方向位置を浮上測定用センサより検出する第4工程と、ステージの上面の鉛直方向位置および基板の上面の鉛直方向位置と、第3工程で算出された板厚とに基づいて基板の浮上量を算出する第5工程とを備え、搬送部による基板の搬送方向において、板厚測定用センサは浮上測定用センサより上流側に配置されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、基板の下面の一部(被吸着部位の下面)が搬送部の吸着部材に吸着されて搬送部に保持されるため、基板の下面の鉛直方向位置は吸着部材のうち基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置と一致する。したがって、基板が吸着部材による基板の保持前に吸着面の鉛直方向位置が検出されることで被吸着部位の下面の鉛直方向位置が実質的に検出される。そして、基板の保持後に被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置が検出されることで基板の上面および下面の鉛直方向位置が出揃い、基板の板厚を正確に算出することができる。一方、基板の搬送前にステージの上面の鉛直方向位置が検出され、ステージの上方に搬送された基板の上面の鉛直方向位置が検出されると、それらの鉛直方向位置と上記基板の板厚とに基づいて基板の浮上量が高精度に算出される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置と被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置とに基づいて基板の板厚を算出するとともに、当該板厚と、ステージの上面の鉛直方向位置と、基板の上面の鉛直方向位置とに基づいて基板の浮上量を算出しているため、ステージからの浮上量を高精度に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかる浮上量算出装置の一実施形態を装備する塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。
図2】塗布装置を鉛直上方から見た平面図である。
図3図2から塗布機構を取り外した平面図である。
図4図2のA−A線断面図である。
図5】この塗布装置による浮上量算出処理および塗布処理の流れを示すフローチャートである。
図6】処理過程における各部の位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明にかかる浮上量算出装置の一実施形態を装備する塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。この塗布装置1は、図1の左手側から右手側に向けて水平姿勢で搬送される基板Wの上面Wfに塗布液を塗布するスリットコータである。なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、基板Wの搬送方向を「X方向」とし、図1の左手側から右手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「−X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向Yのうち、装置の正面側を「−Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「+Y方向」と称する。さらに、鉛直方向Zにおける上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「−Z方向」と称する。
【0014】
まず図1を用いてこの塗布装置1の構成および動作の概要を説明し、その後で各部のより詳細な構造について説明する。なお、塗布装置1の基本的な構成や動作原理は、本願出願人が先に開示した特許第5346643号(特許文献1)に記載されたものと共通している。そこで、本明細書では、塗布装置1の各構成のうちこれらの公知文献に記載のものと同様の構成を適用可能なもの、およびこれらの文献の記載から構造を容易に理解することのできるものについては詳しい説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を主に説明することとする。
【0015】
塗布装置1では、基板Wの搬送方向Dt(+X方向)に沿って、入力コンベア100、入力移載部2、浮上ステージ部3、出力移載部4、出力コンベア110がこの順に近接して配置されており、以下に詳述するように、これらにより略水平方向に延びる基板Wの搬送経路が形成されている。なお、以下の説明において基板Wの搬送方向Dtと関連付けて位置関係を示すとき、「基板Wの搬送方向Dtにおける上流側」を単に「上流側」と、また「基板Wの搬送方向Dtにおける下流側」を単に「下流側」と略することがある。この例では、ある基準位置から見て相対的に(−X)側が「上流側」、(+X)側が「下流側」に相当する。
【0016】
処理対象である基板Wは図1の左手側から入力コンベア100に搬入される。入力コンベア100は、コロコンベア101と、これを回転駆動する回転駆動機構102とを備えており、コロコンベア101の回転により基板Wは水平姿勢で下流側、つまり(+X)方向に搬送される。入力移載部2は、コロコンベア21と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構22とを備えている。コロコンベア21が回転することで、基板Wはさらに(+X)方向に搬送される。また、コロコンベア21が昇降することで基板Wの鉛直方向位置が変更される。このように構成された入力移載部2により、基板Wは入力コンベア100から浮上ステージ部3に移載される。
【0017】
浮上ステージ部3は、基板の搬送方向Dtに沿って3分割された平板状のステージを備える。すなわち、浮上ステージ部3は入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33を備えており、これらの各ステージの上面は互いに同一平面の一部をなしている。入口浮上ステージ31および出口浮上ステージ33のそれぞれの上面には浮上制御機構35から供給される圧縮空気を噴出する噴出孔がマトリクス状に多数設けられており、噴出される気流から付与される浮力により基板Wが浮上する。こうして基板Wの下面Wbがステージ上面から離間した状態で水平姿勢に支持される。基板Wの下面Wbとステージ上面との距離、つまり浮上量は、例えば10マイクロメートルないし500マイクロメートルとすることができる。
【0018】
一方、塗布ステージ32の上面では、圧縮空気を噴出する噴出孔と、基板Wの下面Wbとステージ上面との間の空気を吸引する吸引孔とが交互に配置されている。浮上制御機構35が噴出孔からの圧縮空気の噴出量と吸引孔からの吸引量とを制御することにより、基板Wの下面Wbと塗布ステージ32の上面との距離が精密に制御される。これにより、塗布ステージ32の上方を通過する基板Wの上面Wfの鉛直方向位置が規定値に制御される。浮上ステージ部3の具体的構成としては、例えば特許第5346643号(特許文献1)に記載のものを適用可能である。なお、塗布ステージ32での浮上量については後で詳述するセンサ61、62による検出結果に基づいて制御ユニット9により算出され、また気流制御によって高精度に調整可能となっている。
【0019】
なお、入口浮上ステージ31には、図には現れていないリフトピンが配設されており、浮上ステージ部3にはこのリフトピンを昇降させるリフトピン駆動機構34が設けられている。
【0020】
入力移載部2を介して浮上ステージ部3に搬入される基板Wは、コロコンベア21の回転により(+X)方向への推進力を付与されて、入口浮上ステージ31上に搬送される。入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33は基板Wを浮上状態に支持するが、基板Wを水平方向に移動させる機能を有していない。浮上ステージ部3における基板Wの搬送は、入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33の下方に配置された基板搬送部5により行われる。
【0021】
基板搬送部5は、基板Wの下面周縁部に部分的に当接することで基板Wを下方から支持するチャック機構51と、チャック機構51上端の吸着部材(後の図3図4図6中の符号513)に設けられた吸着パッド(図示省略)に負圧を与えて基板Wを吸着保持させる機能およびチャック機構51をX方向に往復走行させる機能を有する吸着・走行制御機構52とを備えている。チャック機構51が基板Wを保持した状態では、基板Wの下面Wbは浮上ステージ部3の各ステージの上面よりも高い位置に位置している。したがって、基板Wは、チャック機構51により周縁部を吸着保持されつつ、浮上ステージ部3から付与される浮力により全体として水平姿勢を維持する。なお、チャック機構51により基板Wの下面Wbを部分的に保持した段階で基板Wの上面の鉛直方向位置を検出するために板厚測定用のセンサ61がコロコンベア21の近傍に配置されている。このセンサ61の直下位置に基板Wを保持していない状態のチャック(後の図3図4図6中の符号51R参照)が位置することで、センサ61は吸着部材の上面、つまり吸着面(後の図6中の符号513a参照)の鉛直方向位置を検出可能となっている。
【0022】
入力移載部2から浮上ステージ部3に搬入された基板Wをチャック機構51が保持し、この状態でチャック機構51が(+X)方向に移動することで、基板Wが入口浮上ステージ31の上方から塗布ステージ32の上方を経由して出口浮上ステージ33の上方へ搬送される。搬送された基板Wは、出口浮上ステージ33の(+X)側に配置された出力移載部4に受け渡される。
【0023】
出力移載部4は、コロコンベア41と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構42とを備えている。コロコンベア41が回転することで、基板Wに(+X)方向への推進力が付与され、基板Wは搬送方向Dtに沿ってさらに搬送される。また、コロコンベア41が昇降することで基板Wの鉛直方向位置が変更される。コロコンベア41の昇降により実現される作用については後述する。出力移載部4により、基板Wは出口浮上ステージ33の上方から出力コンベア110に移載される。
【0024】
出力コンベア110は、コロコンベア111と、これを回転駆動する回転駆動機構112とを備えており、コロコンベア111の回転により基板Wはさらに(+X)方向に搬送され、最終的に塗布装置1外へと払い出される。なお、入力コンベア100および出力コンベア110は塗布装置1の構成の一部として設けられてもよいが、塗布装置1とは別体のものであってもよい。また例えば、塗布装置1の上流側に設けられる別ユニットの基板払い出し機構が入力コンベア100として用いられてもよい。また、塗布装置1の下流側に設けられる別ユニットの基板受け入れ機構が出力コンベア110として用いられてもよい。
【0025】
このようにして搬送される基板Wの搬送経路上に、基板Wの上面Wfに塗布液を塗布するための塗布機構7が配置される。塗布機構7は、スリットノズルであるノズル71と、ノズル71に対しメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット75とを備えている。ノズル71には、図示しない塗布液供給部から塗布液が供給され、ノズル下部に下向きに開口する吐出口から塗布液が吐出される。
【0026】
ノズル71は、位置決め機構73によりX方向およびZ方向に移動位置決め可能となっている。位置決め機構73により、ノズル71が塗布ステージ32の上方の塗布位置(点線で示される位置)に位置決めされる。塗布位置に位置決めされたノズルから塗布液が吐出されて、塗布ステージ32との間を搬送されてくる基板Wに塗布される。こうして基板Wへの塗布液の塗布が行われる。なお、ノズル71には、後で詳述するように浮上量を測定するために、塗布ステージ32の上面の鉛直方向位置や基板Wの上面の鉛直方向位置を検出する浮上測定用のセンサ62が取り付けられている。
【0027】
メンテナンスユニット75は、ノズル71を洗浄するための洗浄液を貯留するバット751と、予備吐出ローラ752と、ノズルクリーナ753と、予備吐出ローラ752およびノズルクリーナ753の動作を制御するメンテナンス制御機構754とを備えている。メンテナンスユニット75の具体的構成としては、例えば特開2010−240550号公報に記載された構成を適用することが可能である。
【0028】
ノズル71が予備吐出ローラ752の上方で吐出口が予備吐出ローラ752の上面に対向する位置(予備吐出位置)では、ノズル71の吐出口から予備吐出ローラ752の上面に対して塗布液が吐出される。ノズル71は、塗布位置へ位置決めされるのに先立って予備吐出位置に位置決めされ、吐出口から所定量の塗布液を吐出して予備吐出処理を実行する。このように塗布位置へ移動させる前のノズル71に予備吐出処理を行わせることにより、塗布位置での塗布液の吐出をその初期段階から安定させることができる。
【0029】
メンテナンス制御機構754が予備吐出ローラ752を回転させることで、吐出された塗布液はバット751に貯留された洗浄液に混合されて回収される。また、ノズル71がノズルクリーナ753の上方位置(第1洗浄位置)にある状態では、ノズルクリーナ753が洗浄液を吐出しながらY方向に移動することにより、ノズル71の吐出口およびその周囲に付着した塗布液が洗い流される。
【0030】
また、位置決め機構73は、ノズル71を第1洗浄位置よりも下方でノズル下端がバット751内に収容される位置(待機位置)に位置決めすることが可能である。ノズル71を用いた塗布処理が実行されないときには、ノズル71はこの待機位置に位置決めされる。なお、図示を省略しているが、待機位置に位置決めされたノズル71に対し吐出口における塗布液の乾燥を防止するための待機ポッドが配置されてもよい。
【0031】
この他、塗布装置1には、装置各部の動作を制御するための制御ユニット9が設けられている。制御ユニット9は所定の制御プログラムや各種データを記憶する記憶手段91、この制御プログラムを実行することで装置各部に所定の動作を実行させるCPUなどの演算手段92、ユーザーや外部装置との情報交換を担うインターフェース手段93などを備えている。本実施形態では、後述するように演算手段92がセンサ61、62の検出結果に基づいて基板Wの板厚や浮上量を算出し、板厚算出部921および浮上量算出部922として機能する。
【0032】
図2は塗布装置を鉛直上方から見た平面図である。また、図3図2から塗布機構を取り外した平面図である。また、図4図2のA−A線断面図である。以下、これらの図を参照しながら塗布装置1の具体的な機械的構成を説明する。幾つかの機構については特許第5346643号(特許文献1)の記載を参照することでより詳細な構造を理解することが可能である。なお、図2および図3においては入力コンベア100等が有するコロの記載が省略されている。
【0033】
塗布機構7のノズルユニット70は、図2および図4に示すように架橋構造を有している。具体的には、ノズルユニット70は、浮上ステージ部3の上方でY方向に延びる梁部材731のY方向両端部を、基台10から上方に立設された1対の柱部材732,733で支持した構造を有している。柱部材732には例えばボールねじ機構により構成された昇降機構734が取り付けられており、昇降機構734により梁部材731の(+Y)側端部が昇降自在に支持されている。また、柱部材733には例えばボールねじ機構により構成された昇降機構735が取り付けられており、昇降機構735により梁部材731の(−Y)側端部が昇降自在に支持されている。制御ユニット9からの制御指令に応じて昇降機構734,735が連動することにより、梁部材731が水平姿勢のまま鉛直方向(Z方向)に移動する。
【0034】
梁部材731の中央下部には、ノズル71が吐出口711を下向きにして取り付けられている。したがって、昇降機構734,735が作動することで、ノズル71のZ方向への移動が実現される。
【0035】
柱部材732,733は基台10上においてX方向に移動可能に構成されている。具体的には、基台10の(+Y)側および(−Y)側端部上面のそれぞれに、X方向に延設された1対の走行ガイド81L,81Rが取り付けられており、柱部材732はその下部に取り付けられたスライダ736を介して(+Y)側の走行ガイド81Lに係合される。スライダ736は走行ガイド81Lに沿ってX方向に移動自在となっている。同様に、柱部材733はその下部に取り付けられたスライダ737を介して(−Y)側の走行ガイド81Rに係合され、X方向に移動自在となっている。
【0036】
また、柱部材732,733はリニアモータ82L,82RによりX方向に移動される。具体的には、リニアモータ82L,82Rのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に沿って延設され、コイルモジュールが移動子として柱部材732,733それぞれの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモータ82L,82Rが作動することで、ノズルユニット70全体がX方向に沿って移動する。これにより、ノズル71のX方向への移動が実現される。柱部材732,733のX方向位置については、スライダ736,737の近傍に設けられたリニアスケール83L,83Rにより検出可能である。
【0037】
このように、昇降機構734,735が動作することによりノズル71がZ方向に移動し、リニアモータ82L,82Rが動作することによりノズル71がX方向に移動する。すなわち、制御ユニット9がこれらの機構を制御することにより、ノズル71の各停止位置(塗布位置、予備吐出位置等)への位置決めが実現される。したがって、昇降機構734,735、リニアモータ82L,82Rおよびこれらを制御する制御ユニット9等が一体として、図1の位置決め機構73として機能している。
【0038】
メンテナンスユニット75は、バット751に予備吐出ローラ752およびノズルクリーナ753が収容された構造を有している。また、図示を省略しているが、メンテナンスユニット75には予備吐出ローラ752およびノズルクリーナ753を駆動するためのメンテナンス制御機構754が設けられている。バット751はY方向に延設された梁部材761により支持され、梁部材761の両端部が1対の柱部材762,763により支持されている。1対の柱部材762,763はY方向に延びるプレート764のY方向両端部に取り付けられている。
【0039】
プレート764のY方向両端部の下方には、基台10上に1対の走行ガイド84L,84RがX方向に延設されている。プレート764のY方向両端部は、スライダ766,767を介して走行ガイド84L,84Rに係合されている。このため、メンテナンスユニット75が走行ガイド84L,84Rに沿ってX方向に移動可能となっている。プレート764の(−Y)方向端部の下方には、リニアモータ85が設けられている。リニアモータ85はプレート764の(+Y)方向端部の下方に設けられてもよく、Y方向両端部の下方にそれぞれ設けられてもよい。
【0040】
リニアモータ85では、マグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に沿って延設され、コイルモジュールが移動子としてメンテナンスユニット75に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモータ85が作動することで、メンテナンスユニット75全体がX方向に沿って移動する。メンテナンスユニット75のX方向位置については、スライダ766,767の近傍に設けられたリニアスケール86により検出可能である。
【0041】
次にチャック機構51の構造について図3および図4を参照して説明する。チャック機構51は、XZ平面に関して互いに対称な形状を有しY方向に離隔配置された1対のチャック51L,51Rを備える。これらのうち(+Y)側に配置されたチャック51Lは、基台10にX方向に延設された走行ガイド87LによりX方向に走行可能に支持されている。具体的には、チャック51Lは、X方向に位置を異ならせて設けられた2つの水平なプレート部位と、これらのプレート部位を接続する接続部位とを有するベース部512を備えている。ベース部512の2つのプレート部位の下部にはそれぞれスライダ511が設けられ、スライダ511が走行ガイド87Lに係合されることで、ベース部512は走行ガイド87Lに沿ってX方向に走行可能になっている。
【0042】
ベース部512の2つのプレート部位の上部には、上方に延びてその上端部に図示を省略する吸着パッドが設けられた吸着部材513,513が設けられている。ベース部512が走行ガイド87Lに沿ってX方向に移動すると、これと一体的に2つの吸着部材513,513がX方向に移動する。なお、ベース部512の2つのプレート部位は互いに分離され、これらのプレート部位がX方向に一定の距離を保ちながら移動することで見かけ上一体のベース部として機能する構造であってもよい。この距離を基板の長さに応じて設定すれば、種々の長さの基板に対応することが可能となる。
【0043】
チャック51Lは、リニアモータ88LによりX方向に移動可能となっている。すなわち、リニアモータ88Lのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に延設され、コイルモジュールが移動子としてチャック51Lの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモータ88Lが作動することで、チャック51LがX方向に沿って移動する。チャック51LのX方向位置についてはリニアスケール89Lにより検出可能である。
【0044】
(−Y)側に設けられたチャック51Rも同様に、2つのプレート部位および接続部位を有するベース部512と、吸着部材513,513とを備えている。ただし、その形状は、XZ平面に関してチャック51Lとは対称なものとなっている。各プレート部位はそれぞれスライダ511により走行ガイド87Rに係合される。また、チャック51Rは、リニアモータ88RによりX方向に移動可能となっている。すなわち、リニアモータ88Rのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に延設され、コイルモジュールが移動子としてチャック51Rの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモータ88Rが作動することで、チャック51RがX方向に沿って移動する。チャック51RのX方向位置についてはリニアスケール89Rにより検出可能である。
【0045】
制御ユニット9は、チャック51L,51RがX方向において常に同一位置となるように、これらの位置制御を行う。これにより、1対のチャック51L,51Rが見かけ上一体のチャック機構51として移動することになる。チャック51L,51Rを機械的に結合する場合に比べ、チャック機構51と浮上ステージ部3との干渉を容易に回避することが可能となる。
【0046】
図3に示すように、4つの吸着部材513はそれぞれ、保持される基板Wの四隅に対応して配置される。すなわち、チャック51Lの2つの吸着部材513,513は、基板Wの(+Y)側周縁部であって搬送方向Dtにおける上流側端部と下流側端部とをそれぞれ保持する。一方、チャック51Rの2つの吸着部材513,513は、基板Wの(−Y)側周縁部であって搬送方向Dtにおける上流側端部と下流側端部とをそれぞれ保持する。各吸着部材513の吸着パッドには必要に応じて負圧が供給され、これにより基板Wの四隅がチャック機構51により下方から吸着保持される。
【0047】
チャック機構51が基板Wを保持しながらX方向に移動することで基板Wが搬送される。このように、リニアモータ88L,88R、各吸着部材513に負圧を供給するための機構(図示せず)、これらを制御する制御ユニット9等が一体として、図1の吸着・走行制御機構52として機能している。
【0048】
図1および図4に示すように、チャック機構51は、浮上ステージ部3の各ステージ、すなわち入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33の上面よりも上方に基板Wの下面Wbを保持した状態で基板Wを搬送する。チャック機構51は、基板Wのうち各ステージ31,32,33と対向する中央部分よりもY方向において外側の周縁部の一部を保持するのみであるため、基板Wの中央部は周縁部に対し下方に撓むことになる。浮上ステージ部3は、このような基板Wの中央部に浮力を与えることで基板Wの鉛直方向位置を制御して水平姿勢に維持する機能を有する。
【0049】
浮上ステージ部3の各ステージのうち出口浮上ステージ33については、その上面位置がチャック機構51の上面位置よりも低くなる下部位置と、上面位置がチャック機構51の上面位置よりも高くなる上部位置との間で昇降可能となっている。この目的のために、出口浮上ステージ33は昇降駆動機構36によって支持されている。
【0050】
次に、上記のように構成された塗布装置における浮上量算出処理および塗布処理について図5および図6を参照しつつ説明する。図5はこの塗布装置における浮上量算出処理および塗布処理の流れを示すフローチャートである。また、図6は浮上量算出処理過程における各部の位置関係を模式的に示す図であり、同図の中央領域には浮上量算出処理におけるチャック機構51、ノズル71および基板Wの位置関係が模式的に示され、左領域にはセンサ61の直下位置でのチャック機構51および基板Wの位置関係が拡大して示され、右領域にはノズル71が塗布位置に位置決めされた際のセンサ62の直下位置でのノズル71および基板Wの位置関係が拡大して示されている。これらのセンサ61、62による検出結果に基づいて浮上量算出が塗布処理中の一動作として実行される。
【0051】
上記塗布装置1では、塗布処理の実行中に基板Wの板厚や塗布ステージ32からの基板Wの浮上量を算出するが、それらの算出には吸着面の鉛直方向位置および塗布ステージ32の上面の鉛直方向位置に関する情報(以下「基準情報」という)が必要である。基準情報は基板毎の塗布処理に必要となるものではないが、適当なタイミングを取得し、記憶手段91に記憶しておく必要がある。そこで、本実施形態では、記憶手段91に予め記憶されている制御プログラムにしたがって演算手段92が装置各部を以下のように制御することで上記基準情報を適宜取得するとともに入力コンベア100により搬送されている基板Wの板厚測定および浮上量測定を行いつつ当該基板Wに対する塗布処理を実行する。
【0052】
本実施形態では、ステップS1で基準情報を取得すべきタイミングであるか否かが判定される。当該タイミングを設定するトリガーとして、例えば電源投入、メンテナンス完了、あるいは塗布処理を施した基板Wの累積枚数の所定値への到達、あるいは操作パネル(図示省略)を介したユーザーからの指示などが含まれる。なお、当該ステップS1を実行する段階では、塗布処理は行われておらず、ノズル71は待機位置に位置決めされ、塗布液の吐出が停止された状態になっている。また、入力移載部2、浮上ステージ部3および出力コンベア110には基板Wは存在していない。さらに、チャック機構51は搬送開始位置(図6の(b)欄に示すように入力移載部2によって浮上ステージ部3に送り込まれた基板Wの直下位置)から(+X)方向に退避した位置に位置決めされている。
【0053】
ステップS1で基準情報の取得が不要であると判定した際(ステップS1においてNO)には、基準情報の取得工程(ステップS2〜S7)を実行することなく、ステップS8に進む。一方、基準情報の取得が必要であると判定した際(ステップS1においてYES)には、次に説明するステップS2〜S7を実行した後でステップS8に進む。
【0054】
ステップS2では、ノズル71の待機位置から塗布位置への移動位置決めが行われる。これによって、ノズル71に取り付けられた浮上測定用のセンサ62が塗布ステージ32の上面の直上位置に位置する。この段階では、図6の(a)欄に示すようにノズル71の直下位置に基板Wは存在しておらず、塗布ステージ32の上面(以下「ステージ上面」という)321がセンサ62の検出面と直接対向している。このセンサ62の検出面上には投光器(図示省略)および受光器(図示省略)が設けられており、投光部から光が出射されるとともに、吸着面513aで反射された光が受光部で受光され、ステージ上面321の鉛直方向位置が取得される(ステップS3)。このようにセンサが投光器および受光器を有する点については、センサ61も同様である。
【0055】
そして、当該鉛直方向位置を示す信号がセンサ62から制御ユニット9に出力され、ステージ上面321の鉛直方向位置データが記憶手段91に記憶される。このステージ上面321の鉛直方向位置の取得後にノズル71の待機位置への移動が行われる(ステップS4)。なお、本実施形態では、ステップS2での浮上測定用のセンサ62の検出面と、次に説明する板厚測定用のセンサ61の検出面とは鉛直方向Zにおいて同じ高さに設定されることから、各検出面からの距離が鉛直方向位置に相当し、例えばステージ上面321の鉛直方向位置は距離Lbとなっている。
【0056】
上記ステージ上面321の鉛直方向位置の取得工程(ステップS2〜S4)と同時あるいは前後して、吸着面513aの鉛直方向位置の取得工程(ステップS5〜S7)が実行される。すなわち、ステップS5でチャック機構51が(−X)方向に移動し、搬送開始位置まで移動してくる。これによって、チャック機構51では、(−X)方向側のチャック51Rが板厚測定用のセンサ61の直下位置に位置する。また、この段階においても、図6の(a)欄に示すようにチャック機構51の上方に基板Wは存在しておらず、チャック51Rの吸着部材513の上面、つまり吸着面513aがセンサ61の検出面と直接対向している。センサ61では、投光部から光が出射されるとともに、吸着面513aで反射された光が受光部で受光され、検出面から吸着面513aまでの距離Lvが吸着面513aの鉛直方向位置として取得される(ステップS6)。そして、当該鉛直方向位置を示す信号がセンサ61から制御ユニット9に出力され、吸着面513aの鉛直方向位置データが記憶手段91に記憶される。この吸着面513aの鉛直方向位置の取得後にチャック機構51は搬送開始位置から(+X)方向に退避する。このようにしてステージ上面321の鉛直方向位置(Lb)および吸着面513aの鉛直方向位置(距離Lv)が浮上量算出の基準情報として求まると、ステップS8に進む。
【0057】
ステップS8では、塗布処理に使用されるノズル71を予備吐出位置に移動させて予備吐出処理を実行する。また、浮上ステージ部3における圧縮空気の噴出を開始して、搬入される基板Wを浮上させることができるように準備する。予備吐出位置においてノズル71が所定量の塗布液を予備吐出ローラ752に向けて吐出することで、ノズル71からの塗布液の吐出量を安定させることができる。なお、予備吐出処理に先立ってノズル71の洗浄処理が行われてもよい。
【0058】
次に、塗布装置1への基板Wの搬入を開始する(ステップS9)。上流側の別の処理ユニット、搬送ロボット等により処理対象となる基板Wが入力コンベア100に載せられ、コロコンベア101が回転することで基板Wが(+X)方向に搬送される。このときノズル71は予備吐出位置で予備吐出処理を実行している。また、チャック機構51は入口浮上ステージ31よりも下流側に退避して位置決めされている。
【0059】
入力コンベア100と、コロコンベア21の上面が入力コンベア100のコロコンベア101と同じ高さ位置に位置決めされた入力移載部2とが協働することにより、基板Wは圧縮空気の噴出により基板Wに浮力を与える入口浮上ステージ31の上部まで搬送されてくる。このとき入口浮上ステージ31の上面はコロコンベア21の上面よりも下方にあり、基板Wは上流側端部(移動方向における後端部)がコロコンベア21に乗り上げた状態となっている。したがって入口浮上ステージ31上で基板Wが滑って移動することはない。
【0060】
こうして基板Wが入口浮上ステージ31まで搬入されると、入口浮上ステージ31に設けられたリフトピンがリフトピン駆動機構34によりその上端が入口浮上ステージ31の上面よりも上方に突出する上方位置に位置決めされる。これにより、基板W、より具体的にはリフトピンが当接する基板WのY方向両端部が持ち上げられる。
【0061】
そして、チャック機構51が(−X)方向に移動し、基板W直下の搬送開始位置まで移動してくる(ステップS10)。基板WのY方向両端部がリフトピン311により持ち上げられているため、基板Wの下方に進入するチャック機構51が基板Wと接触することは回避される。この状態から、コロコンベア21およびリフトピンがその上面がチャック機構51の上面よりも下方まで下降することにより、基板Wはチャック機構51に移載される(ステップS11)。チャック機構51は基板Wの周縁部を吸着保持する(ステップS12)。
【0062】
以後、基板Wはチャック機構51により周縁部を保持され、浮上ステージ部3により中央部が水平姿勢に維持された状態で搬送されるが、それに先立って基板Wの板厚算出が行われる。チャック機構51が搬送開始位置で基板Wを保持した状態では、図6の(b)欄に示すように基板Wのうちチャック51Rの吸着部材513で吸着された被吸着部位Wcの上面領域Wfaがセンサ61の検出面と直接対向している。そこで、被吸着部位Wcの上面領域Wfaの鉛直方向位置がセンサ61により検出される。つまり、センサ61では、投光部から光が出射されるとともに、被吸着部位Wcの上面領域Wfaで反射された光が受光部で受光され、検出面から基板Wの被吸着部位Wcの上面までの距離Laが当該被吸着部位Wcの上面の鉛直方向位置として取得される(ステップS13)。そして、当該鉛直方向位置を示す信号がセンサ61から制御ユニット9に出力される。これを受けた演算手段92は記憶手段91から吸着面513aの鉛直方向位置(距離Lv)を基板Wの下面Wbの鉛直方向位置として読み出す。というのも、吸着面513aでは基板Wの下面Wbが吸着されており、その鉛直方向位置は吸着面513aの鉛直方向位置と一致するからである。こうして、基板Wの上面および下面の鉛直方向位置が得られたことから、演算手段92は基板Wの板厚Dを次式
D=Lv−La
にしたがって算出する(ステップS14)。なお、こうして算出された板厚Dについては記憶手段91に記憶される。
【0063】
それに続いて、チャック機構51が(+X)方向に移動することで基板Wが塗布開始位置まで搬送される(ステップS15)。また、これと並行してノズル71の予備吐出位置から塗布位置への移動位置決めが行われる(ステップS16)。図6の(c)欄に示すように、塗布開始位置は、基板Wの下流側(移動方向においては先頭側)の端部が塗布位置に位置決めされたノズル71の直下位置に来るような基板Wの位置である。なお、基板Wの端部は余白領域として塗布液が塗布されない場合が多く、このような場合には、基板Wの下流側端部がノズル71の直下位置から余白領域の長さだけ進んだ位置が塗布開始位置となる。
【0064】
ノズル71が塗布位置に位置決めされると、塗布液の吐出に先立って、基板Wの上面Wfの鉛直方向位置が取得され(ステップS16)、浮上量が算出される(ステップS17)。すなわち、ノズル71が塗布位置に位置決めされると、図6の(c)欄に示すように当該ノズル71に取り付けられたセンサ62が塗布開始位置に位置決めされた基板Wの直上に位置する。センサ62では、投光部から光が出射されるとともに、基板Wの上面Wfで反射された光が受光部で受光され、検出面から基板Wの上面Wfまでの距離Ldが塗布ステージ32により浮上された基板Wの上面の鉛直方向位置として取得される(ステップS17)。そして、当該鉛直方向位置を示す信号がセンサ62から制御ユニット9に出力される。これを受けた演算手段92は記憶手段91からステージ上面321の鉛直方向位置(Lb)および基板Wの板厚Dを読み出す。そして、演算手段92は基板Wの浮上量Hbを次式
Hb=Lb−Ld−D
にしたがって算出する(ステップS18)。なお、こうして算出された浮上量Hbは記憶手段91に記憶されるとともに、図示を省略する表示手段(液晶ディスプレイなど)に表示される。これによって、ユーザーに浮上量Hbを報知することができる。
【0065】
こうして浮上量算出処理が完了すると、以下のように塗布処理を実行する(ステップS19)。すなわち、ノズル71の吐出口から吐出される塗布液が基板Wの上面Wfに着液する。また、チャック機構51が基板Wを定速で搬送することにより、ノズル71が基板Wの上面Wfに塗布液を塗布する塗布動作が実行され、基板上面Wfには塗布液による一定厚さの塗布膜が形成される。
【0066】
塗布動作は、塗布を終了させるべき終了位置に基板Wが搬送されるまで継続される(ステップS20)。基板Wが終了位置に到達すると(ステップS20においてYES)、ノズル71は塗布位置から離脱して予備吐出位置に戻され、再び予備吐出処理が実行される。また、基板Wの下流側端部が出力移載部4上に位置する搬送終了位置にチャック機構51が到達する時点で、チャック機構51の移動は停止され、吸着保持が解除される。そして、出力移載部4のコロコンベア41の上昇および出口浮上ステージ33の上昇が順次開始される。
【0067】
そして、コロコンベア41および出口浮上ステージ33がチャック機構51の上面よりも上方まで上昇することで、基板Wはチャック機構51から離間する。この状態でコロコンベア41が回転することで基板Wに対し(+X)方向への推進力が付与される。これにより基板Wが(+X)方向へ移動すると、コロコンベア41と出力コンベア110のコロコンベア111との協働により、基板Wはさらに(+X)方向に搬出され(ステップS21)、最終的に下流側ユニットに払い出される。処理すべき次の基板がある場合には上記と同様の処理を繰り返し(ステップS22)、なければ処理を終了する。この時ノズル71は待機位置へ戻される。
【0068】
以上のように、本実施形態では、基板Wの下面Wbを保持する吸着部材513の吸着面513aの鉛直方向位置(距離Lv)が吸着部材513に吸着された基板Wの下面Wbの鉛直方向位置と一致し、これとセンサ61により検出した被吸着部位Wcの上面領域Wfaの鉛直方向位置(距離La)とに基づいて基板Wの板厚Dを算出している。したがって、基板Wの板厚Dを高精度に導出することができる。そして、塗布ステージ32により浮上されている基板Wの上面の鉛直方向位置(距離Ld)、塗布ステージ32のステージ上面321の鉛直方向位置(距離Lb)および板厚Dに基づいて基板Wの浮上量Hbを算出している。しがって、基板Wがセンサ61で使用する光に対して透過性を有する場合および非透過性を有する場合のいずれであっても、つまり基板Wの種類を問わず、塗布ステージ32からの浮上量を高精度に求めることができる。
【0069】
また、上記実施形態では、板厚測定用のセンサ61はチャック機構51により搬送される基板Wよりも鉛直上方に配置され、チャック機構51および基板Wの上方から非接触で吸着面513aの鉛直方向位置および被吸着部位Wcの上面領域Wfaの鉛直方向位置を検出している。このため、センサ61と、チャック機構51および基板Wとの干渉を確実に回避できるのみならず、基板Wの搬送中に基板Wから遊離した物質がセンサ61に付着して検出精度が低下するのを確実に防止することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、基板Wの搬送方向Xにおいて、板厚測定用のセンサ61が浮上測定用のセンサ62より上流側に配置されているため、塗布処理前に浮上量Hbを正確に算出することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、基板Wの搬送方向Xにおいて、板厚測定用のセンサ61は浮上測定用のセンサ62より上流側に配置されている。このため、基板Wに対する塗布処理の実行前に、当該基板Wの板厚や浮上量を求めることができ、それらに基づいて塗布処理を良好に制御することができる。例えば、算出された板厚や浮上量が塗布処理の許容範囲を超えている場合に塗布処理を中止することができ、無駄な塗布処理を回避することができる。
【0072】
以上説明したように、この実施形態においては、チャック機構51が本発明の「搬送部」として機能している。また、塗布ステージ32が本発明の「ステージ」の一例に相当している。また、センサ61、62がそれぞれ本発明の「板厚測定用センサ」および「浮上測定用センサ」の一例に相当しており、これらと、板厚算出部921および浮上量算出部922としての機能を有する制御ユニット9とで本発明にかかる「浮上量算出装置」が構成されている。また、ステップS3、S6が本発明の「第1工程」の一例に相当し、ステップS13、S14、S17、S18がそれぞれ本発明の「第2工程」、「第3工程」、「第4工程」および「第5工程」の一例に相当している。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、(−X)方向側のチャック51Rのみに対応して板厚測定用のセンサ61を配置しているが、センサ61の個数および配設位置についてはこれに限定されるものではなく、4つのチャック51R、51R、51L、51Lのうちの少なくとも1つに対応してセンサ61を設ければよい。
【0074】
また、上記実施形態では、浮上測定用のセンサ62をノズル71に取り付けているが、ノズル71から分離して設けてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、センサ61、62はいずれも光学式センサであるが、それ以外の非接触センサを用いることができる。また、鉛直方向においてセンサ61、62の検出面の位置を一致させているが、相違させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、基板をステージから浮上させた状態で水平方向に搬送しながらその上面に塗布液を塗布する塗布装置および塗布方法、ならびに塗布装置において浮上量を算出する浮上量算出装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…塗布装置
32…塗布ステージ(ステージ)
51…チャック機構(搬送部)
61…板厚測定用のセンサ
62…板厚測定用のセンサ
71…ノズル
92…演算手段
321…ステージ上面
513…吸着部材
513a…(吸着部材の)吸着面
921…板厚算出部
922…浮上量算出部
W…基板
Wf…(基板の)上面
Wb…(基板の)下面
Wc…(基板の)被吸着部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6