(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において用いられるホスファゼン化合物(A)とは、下記式(3)で表される構造を有する環状及び/又は鎖状ホスファゼン化合物である。
【0020】
【化3】
(式中、nは3〜10を表し、R
1、R
2はそれぞれ独立して、少なくとも1つはグリシジルオキシ基置換フェニル基であり、その他はフェニル基、ヒドロキシ基置換フェニル基、または炭素数1〜11のアルキルエーテル基置換フェニル基を表す。)
【0021】
ホスファゼン化合物(A)のエポキシ当量は通常180〜400g/equiv、好ましくは180〜300g/equivの範囲である。
【0022】
ホスファゼン化合物(A)が樹脂組成物(D)に含まれる割合は、通常1〜20質量%、着色を少なくすることを考慮すると好ましくは1〜10質量%である。
【0023】
ホスファゼン化合物(A)は、公知の方法に従って製造できる。例えば、ヒドロキシフェニル基置換ホスファゼン化合物とエピハロヒドリンとを、塩基性物質存在下で反応させることにより製造できる。
【0024】
塩基性物質存在下のヒドロキシフェニル基置換ホスファゼン化合物とエピハロヒドリンの反応では、反応の進行とともにハロゲン化水素を補足して生成したハロゲン化物塩が生じる。この塩をろ過して除去した後、ろ液を濃縮することでホスファゼン化合物(A)の粗生成物が高収率で得られる。これを適当な溶媒に溶解し、水洗後濃縮してから減圧乾燥すると純度の高いホスファゼン化合物(A)が得られる。
【0025】
ヒドロキシフェニル基置換ホスファゼン化合物としては公知のものを使用でき、例えば、ヒドロキシフェノキシ−ペンタフェノキシシクロトリホスファゼン、ジ(ヒドロキシフェノキシ)−テトラフェノキシシクロトリホスファゼン、トリ(ヒドロキシフェノキシ)−トリフェノキシシクロトリホスファゼン、テトラ(ヒドロキシフェノキシ)−ジフェノキシシクロトリホスファゼン、ペンタ(ヒドロキシフェノキシ)−フェノキシシクロトリホスファゼン等のヒドロキシフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロトリホスファゼン類及びヘキサヒドロキシフェノキシシクロトリホスファゼン類等が挙げられる。また、ヒドロキシフェノキシ基とメトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブチルオキシフェノキシ基、sec−ブチルオキシフェノキシ基、tert−ブチルオキシフェノキシ基等のアルキルオキシ基置換フェノキシ基とを混合置換したシクロトリホスファゼン等が挙げられる。更に、ヒドロキシフェノキシ基とフェノキシ基を混合置換したシクロテトラホスファゼン、シクロペンタホスファゼン、シクロヘキサホスファゼン、シクロホスファゼン混合物(一般式(1)のnが3〜10の混合物)、および上記で環化していない鎖状ホスファゼン混合物等が挙げられる。このうち本発明においては、樹脂との相溶性、耐熱性が良好な点でヒドロキシフェノキシ基とフェノキシ基とを混合置換したシクロトリホスファゼンが好ましい。これを主成分とするホスファゼン化合物の市販品としては、大塚化学(株)製のSPH−100等が挙げられる。
【0026】
ヒドロキシフェニル基置換ホスファゼン化合物とエピハロヒドリンの反応は、無溶媒下又は適当な溶媒中にて実施することが出来る。溶媒を使用する場合、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のエーテル溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のようなケトン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等のような非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
【0027】
エピハロヒドリンとしては、公知のものを使用でき、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられる。使用量は、ヒドロキシホスファゼン化合物の水酸基1モルに対して通常1〜50モル、好ましくは3〜15モルの範囲である。
【0028】
ヒドロキシフェニル基置換ホスファゼン化合物とエピハロヒドリンとの反応の際は、反応温度は通常20〜130℃、好ましくは30〜100℃である。
【0029】
塩基性物質は、反応により生成するハロゲン化水素を補足するために用いる。この際、使用される塩基性物質の種類としては特に限定されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が安価で入手できる点で好ましい。
【0030】
使用される塩基性物質の量は特に制限はないが、過剰に使用すると生成物に混入したり、精製負荷が大きくなったりするので、ヒドロキシフェニル基置換ホスファゼン化合物の水酸基のモル数を1.0とした場合、通常1.0〜2.0モル倍、好ましくは1.0〜1.5モル倍が用いられる。
【0031】
こうして得られたホスファゼン化合物(A)をさらに精製することも可能である。その場合の精製方法としては、再結晶、洗浄、活性炭処理、カラムクロマトグラフィーなど任意に行うことができる。またこれら精製法を繰り返しても、組み合わせて実施することも可能である。
【0032】
本発明において用いられる一分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(B)(以下、「化合物(B)」)とは、ホスファゼン化合物(A)を除き、1分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物であればいずれを用いてもよい。また、複数種類の化合物(B)を併用してもよい。以下に本発明において好適に用いられる化合物(B)として芳香族型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂について説明する。
【0033】
化合物(B)が樹脂組成物(D)に含まれる割合は、通常20〜80質量%、高い耐熱性を付与することを考慮すると好ましくは30〜70質量%である。
【0034】
芳香族型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル−フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、及びそれらの多官能変性樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、グリオキサール型エポキシ樹脂、(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち本発明においては、耐熱性、透明性、耐着色性を考慮すると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、多官能性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂が好ましい。
【0035】
脂肪族型エポキシ樹脂としては、脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂と脂肪族環状構造をもたないエポキシ樹脂が挙げられる。脂肪側環状構造を有するエポキシ樹脂は一分子中に少なくとも一つ以上の環状脂肪族構造を有することを特徴とする。例えばテルペンジフェノールや、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と脂肪族環構造ジエン(ジシクロペンタジエンやノルボルナジエン、ヘキサヒドロキシインデン等)との重縮合物及びこれらの変性物から誘導されるグリシジルエーテル化物、水添ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF)型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、分子内にシクロヘキシル構造を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造をもつエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート構造をもつエポキシ樹脂等が挙げられる。具体的には例えば、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシアルキル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が挙げられる。
【0036】
脂肪族環状構造を持たない化合物(B)としては、ヘキサンジグリシジルエーテル等の直鎖または分岐アルコールから誘導されるグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0037】
これらのうち、本発明においては樹脂組成物(D)の硬化物の屈折率を調整するために、化合物(B)として高屈折な芳香族型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂の混合物がより好ましい。また、樹脂組成物(D)の硬化物の屈折率を調整するために、芳香族型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂及び脂肪族環状構造を持たない化合物(B)から選ばれる2種類以上の化合物(B)を併用することも好ましい。
【0038】
本発明において示される硬化剤(C)は、分子内にカルボキシ基を2つ以上、好ましくは3つ以上、もしくはカルボン酸無水物基を1つ以上有するカルボン酸又はカルボン酸無水物であれば、特に限定は無く、公知一般のものが使用できる。
【0039】
カルボン酸無水物基はエポキシ樹脂に含まれている水酸基、もしくは先にエポキシ基がカルボキシレート化して生じた水酸基と反応しカルボキシ基を生じる。このため、カルボン酸無水物は、2官能のカルボキシ基として数える。
【0040】
化合物(C)が樹脂組成物(D)に含まれる割合は、通常20〜80質量%、高い耐熱性を付与することを考慮すると好ましくは30〜70質量%である。
【0041】
硬化剤(C)の具体例としては、例えば、2つのカルボキシ基を有するものとして、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物類、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸類が挙げられる。また、3つ以上のカルボキシ基を有するものとして、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,2,4,5−二無水物等の酸無水物類、ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等のその他飽和酸無水物類、シクロヘキサントリカルボン酸等の脂肪族カルボン酸類が挙げられる。
【0042】
その他の硬化剤(C)の具体例としては、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジオール等の炭化水素ジオール類、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の炭化水素多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール類、更にはシリコーンジオール等の無機ジオール類等、その他ジオール類とこれらに例示される酸無水物を反応させたカルボン酸類、又はシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物ハライド等のカルボン酸ハライドを反応させた酸無水物類が挙げられる。
【0043】
更なる硬化剤(C)の具体例としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸等の不飽和環構造を有する酸無水物系化合物類が挙げられる。
【0044】
これらのうち、本発明においては樹脂組成物(D)の硬化物の透明性が高まるように、硬化剤(C)として高い透明性を有する飽和カルボン酸類およびその酸無水物類を用いることが好ましい。
【0045】
本発明において樹脂組成物(D)の硬化物の黄色度は、2未満であることが好ましい。
【0046】
本発明おいて好適に用いられるガラス繊維を構成するガラスの種類としては、特に限定はなく、公知一般のガラスを用いることが出来る。例えば、所謂E−ガラス、S−ガラス、T−ガラス、D−ガラス、UN−ガラス、NE−ガラス、Q−ガラス等が挙げられる。
【0047】
これらのうち、E−ガラスは入手の容易性から本発明の用途には最も適している。また樹脂との密着性や表面張力を制御するためのガラス繊維はシランカップリング剤により処理してあるものも好適に用いることが出来る。
【0048】
樹脂組成物(D)の硬化物とガラス繊維の光学的屈折率は、樹脂硬化後の段階においてほぼ同一であることがこのましく、差異は0.01以下、より好ましくは0.005以下であることが好ましい。これは、光学的屈折率をほぼ同じ値にすることで、得られる積層ガラスシートを透明にすることができるためである。この範囲を超える場合には、積層ガラスシートの透明性が失われる。
【0049】
ガラス繊維を構成するガラスの種類、樹脂組成物(D)の構成には密接な関係を有し、最も好適な特性を有するE−ガラス(1.55〜1.57程度)からなるガラス繊維は、比較的屈折率が高い。このため、実質的には、樹脂組成物(D)には脂肪族構造のみを有する硬化性樹脂では、この屈折率を達成することはできず、脂肪族構造と芳香族構造を有する硬化性樹脂をバランスよく併用する必要がある。
【0050】
したがって、E−ガラスを用いる場合には、樹脂組成物(D)には、化合物(B)として芳香族型エポキシ樹脂と、硬化剤(C)として、飽和カルボン酸類およびその酸無水物類を用いることが好ましい。
【0051】
樹脂組成物(D)には、前記成分に加えて他の成分を含めてもよい。これら他の成分としては酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0052】
樹脂組成物(D)において、熱による反応を促進させるために、熱に感応して反応を促進させる、または硬化温度を調整するために、硬化触媒を添加することも一般的に行われる。これらは、上記硬化反応を促進させる効能を有するものであれば、公知一般のものが使用できる。
【0053】
樹脂組成物(D)に用いられうる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤等公知一般のものであれば制限はない。しかし、本発明の特徴を鑑みれば、無色であり、かつ、硬化時の熱や、封止後の回路基板として長期間使用した場合でも着色しにくいものを選択することが好ましい。
【0054】
フェノール系酸化防止剤としてはモノフェノール類、ビスフェノール類、及び高分子型フェノール類などが挙げられる。
【0055】
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0056】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト類、オキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
【0057】
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用してもよい。酸化防止剤の使用量は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、通常0.008〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。また、本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0058】
樹脂組成物(D)に用いられうる光安定剤としては公知一般のものが使用でき、特に限定は無い。しかし、本発明の特徴を鑑みれば、無色であり、かつ、硬化時の熱や、長期間使用した場合でも着色しにくい材料を選択することが好ましい。これらの代表的な例として、ヒンダードアミン類等が挙げられる。
【0059】
樹脂組成物(D)に用いられうる紫外線吸収剤としては公知一般のものが使用でき、特に限定は無い。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系等が挙げられ、前記光安定剤と併用することも可能である。
【0060】
本発明においては、経時的な着色性の低い紫外線吸収剤を用いることが好ましい。例えば、プロパン酸−2−[4−[4,6−ビス([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−3−ヒドロキシフェニル]−イソオクチルエステル(例えばチヌビン479、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0061】
本発明の耐着色性を向上させる際は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を共に用いる。
【0062】
樹脂組成物(D)には、透明性や硬度などの特性を損なわない範囲でブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などの樹脂成分を必要に応じて添加することもできる。
【0063】
樹脂組成物(D)には公知一般の金属塩の添加をすることもできる。例えばカルボン酸金属塩(2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸などの亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩)やリン酸エステル金属(オクチルリン酸、ステアリルリン酸等の亜鉛塩)、アルコキシ金属塩(トリブチルアルミニウム、テトラプロピルジルコニウム等)、アセチルアセトン塩(アセチルアセトンジルコニウムキレート、アセチルアセトンチタンキレート等)等の金属化合物等が挙げられる。これらは単独或いは二種以上を用いてもよい。金属塩の添加により、本発明の耐熱性、耐着色性を向上させることができる。
【0064】
硬化触媒としては例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシアルキルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシアルキル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラブチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ヘキサフロロスチビンホスホニウム塩等のホスフィン類やホスホニウム化合物類、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等の有機金属化合物等が挙げられる。さらに、硬化促進剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化触媒等が挙げられる。
【0065】
これら硬化触媒のいずれを用いるかは、要求される特性によって適宜選択されるべきものである。硬化触媒は、樹脂組成物(D)中の、全樹脂100質量部に対し通常0.001〜15質量部の範囲で使用される。
【0066】
さらに樹脂組成物(D)には一次粒径が1〜200nmの微粒子を添加してもよい。微粒子としては例えばガラス、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化アンチモン、酸化セレン、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウムなどが挙げられ,分散溶媒を含有しない微粉末や溶媒に分散させたコロイド溶液として市場から入手して用いることができる。また、これらを1種または2種以上を混合して用いることが出来る。分散溶媒はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルジメチルアセトアミドなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒など、本発明の熱硬化性樹脂組成物の各成分が溶解するものを選定して用いればよい。
【0067】
その他にもシランカップリング剤、離型剤、レベリング剤、界面活性剤、染料、顔料、無機あるいは有機の光拡散フィラー等も添加することができる。
【0068】
本発明においては、耐熱性、耐光特性を改良する目的で金属塩の添加が好ましい。具体的にはカルボン酸金属塩(2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸などの亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩)やリン酸エステル金属(オクチルリン酸、ステアリルリン酸等の亜鉛塩)、アルコキシ金属塩(トリブチルアルミニウム、テトラプロピルジルコニウム等)、アセチルアセトン塩(アセチルアセトンジルコニウムキレート、アセチルアセトンチタンキレート等)等の金属化合物等が挙げられる。これらは単独或いは2種以上を用いてもよい。
【0069】
溶剤は、樹脂組成物(D)を使用する際の粘度や乾燥速度などを考慮し、1種あるいは2種以上の混合溶剤として用いることができる。溶剤の使用割合は使用時の作業性や乾燥速度によるが、樹脂組成物(D)100質量部に対して、通常10〜200質量部、好ましくは15〜100質量部である。
【0070】
溶剤で希釈した樹脂組成物(D)を得る場合も、各成分を常法に従い混合溶解することにより調製することができる。例えば、撹拌装置、温度計のついた丸底フラスコに各成分を仕込み、40〜80℃にて0.5〜6時間撹拌することにより樹脂組成物(D)のワニスを得ることができる。この際に、エポキシ樹脂のワニスと、硬化剤(C)+硬化触媒や添加剤のワニスとを別々に調整しておき、使用時に混合する方法は特に好ましい。先に記載したとおり、微粒子を添加する場合には、ホモミキサー、サンドミル等高速撹拌機やマイクロフルイダイザー、三本ロール等、一般に公知の分散方法で処理を行うこともできる。
【0071】
本発明の透明難燃シートは、一般的には、液状の樹脂組成物(D)であればそのまま、高粘度又は固形の樹脂組成物(D)の場合は溶剤等に希釈し溶液としたもの、いわゆる樹脂ワニスとしたものにガラス繊維、例えばガラスクロスを浸漬し、溶剤を揮発乾燥させた後、プリプレグを経由して得ることができ、又はプリプレグとして取り出さず直接硬化することで得ることもできる。
【0072】
樹脂組成物(D)をガラス繊維シートに含浸させたものを半硬化状態で形状を付与したプリプレグも本発明に含まれる。
【0073】
本発明のプリプレグの製造は公知一般の方法が適用でき、特に限定は無い。例えば、溶剤に溶解させた樹脂組成物(D)をガラス繊維に含浸させ、その後溶剤を揮発させる方法や、熱溶融させた樹脂組成物(D)をガラス繊維に含浸させ、その後冷却する方法、平面状に成型した未硬化の樹脂組成物(D)に、ガラス繊維を重ねロール等により圧力等をかける方法、型中にガラス繊維(B)を置き、そこに加熱した樹脂組成物(D)をトランスファー成型機等を用いて流し込む方法等が挙げられる。
【0074】
本発明のプリプレグを作製した後、乾燥、硬化して得られる硬化物も本発明の透明難燃シートである。前述したとおり、樹脂組成物(D)は硬化の際に硬化剤が揮発することによる屈折率の変化がないため、本発明の透明難燃シートの製造に適している。なお、樹脂組成物(D)の硬化温度、時間としては80〜200℃で2〜200時間である。硬化方法としては高温で一気に硬化させることもできるが、150℃以下の低温で長時間硬化させても良い。80〜150℃の間で初期硬化を行い、100℃〜200℃の間で後硬化を行うなど、ステップワイズに昇温し硬化反応を進めても良い。
【0075】
なお、樹脂組成物(D)のワニスを用いてプリプレグを得る際の乾燥温度は、使用する溶剤や風量にもよるが通常は60〜200℃が好ましい。ガラスクロス等のガラス繊維シート状基材に前記ワニスを含浸させ、溶剤を乾燥する際に、樹脂組成物(D)を半硬化状態にすることにより、プリプレグを得ることも可能である。この際の乾燥条件は特に限定はされないが、温度100〜180℃、時間は1〜30分が好ましい。
【0076】
なお、本発明のプリプレグは、少なくとも、硬化反応が完結していない状態、即ち完全未硬化、もしくは半硬化の状態として使用する。この際、好ましい反応率(即ち、プリプレグの反応量/硬化反応が完了した場合の反応量で示される値)が、0〜0.95、好ましくは0.1〜0.5であることが好ましい。
【0077】
本発明の透明難燃シートは、建築物、又は輸送機械において、透明性と不燃性を兼ね備えた内装材料として用いることができる。具体的には防煙垂壁材料やドア部材、壁材や仕切り板、照明部材、窓、テーブルや椅子などの材料が挙げられる。
また、本発明には、本発明の透明難燃シートを用いた建築部材や輸送機械も含まれる。
【実施例】
【0078】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。化合物の合成においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により原料アルコール類の消失を確認した時点で反応終了とした。なお、実施例においてECHはエピクロルヒドリンを、MEKはメチルエチルケトンを、それぞれ示す。
【0079】
合成例1〜3:ホスファゼン化合物(A)のグリシジル化体合成
攪拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、ホスファゼン化合物としてSPH−100(大塚化学(株)製、水酸基当量240g/equiv)を30g、ECHを表中記載量加え、30%水酸化ナトリウム水溶液18gを60分かけて滴下し、90〜105℃3時間撹拌した。続いて、反応液を20℃まで冷却し、濃縮した後、得られた濃縮物を酢酸エチルに溶解させ、水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ去した後、ろ液を濃縮し、生成物を得た。エポキシ当量の測定は、JIS K7236:2009に示されるA法にて、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量を測定した。
【0080】
【表1】
【0081】
合成例4:多官能酸無水物の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物ハライド78.6gに、THFを加えて均一溶液にした。この溶液を撹拌しながら5℃まで冷却後、ペンタエリスリトール28.5gにピリジンを33.6g加え、THFを加えて均一にした溶液を、液温を10℃以下に保ちながら徐々に滴下した。滴下終了後、室温で1時間撹拌し、次いで50℃まで昇温し、反応を8時間継続した。続いて、反応液を20℃まで冷却し、不溶解分であるピリジン塩酸塩をろ去した後、ろ液を濃縮した。得られた濃縮物を酢酸エチルに溶解させ、水で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ去した後、ろ液を濃縮し、生成物を得た。
【0082】
実施例1−1〜10および比較例1−1〜4:ホスファゼン化合物を用いた樹脂組成物(D)の調製
合成例1〜3で得たホスファゼン化合物、比較例としてエポキシ化されていないSPH−100を5.6g、エポキシ樹脂(B)を30g、カルボン酸及びカルボン酸無水物硬化剤(C)を20g、溶剤としてMEKを24g、その他の成分としてオクタン酸亜鉛を0.1g、あわせたものを70℃に加温、混合し、固形分が70質量%である樹脂組成物(D)の希釈組成物を得た。
【0083】
【表2】
【0084】
表中略語
NC-6300:4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製、
jER828:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、三菱化学(株)製
NER-1302:多官能性ビスフェノールAエポキシ樹脂、日本化薬(株)製
EHPE3150:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、(株)ダイセル製
H-TMAn:1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物、三菱ガス化学(株)製
MH:4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、新日本理化(株)製
TCD-DM/MH:トリシクロデカンジメタノール/4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物当量付加物
TMP/MH:トリメチロールプロパン/4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物当量付加物
IPDA:イソホロンジアミン
【0085】
実施例2−1〜10、および比較例2−1〜4:硬化物の作製(ガラスクロス―エポキシ複合シート)
実施例1および比較例1で得られた硬化性樹脂組成物にMEKを添加して固形分50質量%に調整し、市販のガラスクロス(Eガラスクロス:約30μm厚、平織)を入れ、含浸させた。ガラスクロスを引き上げた後、120℃で7分乾燥した。乾燥後のシートは固形のフィルムであった。それをさらに離型処理したPETフィルムにはさんでプレスしながら150℃にて10分処理し、半硬化させてプリプレグを得た。その後150℃乾燥機にて3時間硬化し、本発明の硬化物を得た。硬化性樹脂(C)の硬化後の屈折率測定は、JIS K7142:2014に示されるA法にて、589nmにおける屈折率を測定した。今回の実施例で使用するガラスクロスの589nmにおける屈折率は、1.555であることから、比較例2−1は屈折率が高く、比較例2−5は屈折率が低い。
得られた硬化物についてそれぞれ耐熱性、透明性、黄色度、難燃性を評価した。
【0086】
硬化物についての評価方法及び評価基準は以下の通りであった。
(1)透明性
目視で評価を行った。
(2)黄色度
JIS Z 8722に示される方法で測定した黄色度YIによって評価を行った。
YI<1.0:◎
1.0≦YI<1.5:○
1.5≦YI<2.0:△
2.0≦YI:×
(3)難燃性
UL94規格VTM試験法に基づき難燃性の評価を行い、VTM-0に達したものを○、達しなかったものを×とした。
【0087】
【表3】
【0088】
以上の結果から明らかなように本発明の透明難燃シートは、着色もなく、耐熱性、透明性、難燃性に優れている。特に実施例2−1〜2の硬化物に用いられたホスファゼン化合物はグリシジル基を多く含有しているため架橋密度の低下が抑制され、またホスファゼン構造がエポキシ樹脂に均一に組み込まれたことから、高い耐熱性、難燃性、透明性が得られたと考えられる。一方、比較例2−1および2−3はガラスクロスと樹脂の屈折率が合っていないため、透明性が低い。また比較例2−2では、反応性基としてフェノール性水酸基を有するが、相分離が原因と考えられる透明性および耐熱性の低下がみられ、難燃性も付与できなかった。比較例2−4では硬化剤として使用したアミン由来のものと考えられる着色が見られた。