(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890455
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】キャリッジ
(51)【国際特許分類】
B41J 19/00 20060101AFI20210607BHJP
B41J 25/308 20060101ALI20210607BHJP
B41J 19/20 20060101ALI20210607BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
B41J19/00 D
B41J25/308
B41J19/20 N
B41J2/01 303
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-73987(P2017-73987)
(22)【出願日】2017年4月3日
(65)【公開番号】特開2018-176434(P2018-176434A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】山辺 勝利
【審査官】
加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−231706(JP,A)
【文献】
特開2013−111968(JP,A)
【文献】
特開2013−063530(JP,A)
【文献】
特開2006−181848(JP,A)
【文献】
米国特許第06027264(US,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0492118(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
B41J 19/00 − 19/98
B41J 23/00 − 25/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ユニット本体に取り付けられたメイン筐体と、
前記メイン筐体に回転自在に設けられた偏心カムと、
インクの液滴を吐出するヘッドを保持し、前記偏心カムのカム面に当接して前記偏心カムの回転により前記メイン筐体に対して上下動するサブ筐体と、
前記サブ筐体の前記偏心カムの軸回りの回転を規制する回転規制部と、
を備え、
前記偏心カムは、そのカム面が複数の連続する平面を有し、
前記サブ筐体は、前記カム面の平面に面接触する当接板を備え、
前記サブ筐体が前記偏心カムの軸回りに回転する方向に向けて前記サブ筐体を押し付ける付勢部を備え、
前記付勢部による前記サブ筐体への付勢力により、前記当接板が前記カム面の平面に押し付けられ、且つ前記回転規制部において前記メイン筐体と前記サブ筐体との何れか一方が他方に押し付けられることを特徴とするキャリッジ。
【請求項2】
前記回転規制部は、前記メイン筐体と前記サブ筐体の一方に設けられ、前記偏心カムの回転軸を挟んで前記サブ筐体と前記偏心カムの当接部に対向する位置に設けられて前記メイン筐体と前記サブ筐体の他方に当接することを特徴とする請求項1に記載のキャリッジ。
【請求項3】
前記回転規制部は、前記メイン筐体に設けられ、前記サブ筐体の回転軌道上に突出して前記サブ筐体に当接することを特徴とする請求項1に記載のキャリッジ。
【請求項4】
前記付勢部は、一端が前記メイン筐体に取り付けられ、他端が前記サブ筐体に取り付けられ、前記偏心カムの回転軸心を通る垂線に対して交差する方向に延在して前記サブ筐体を付勢することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のキャリッジ。
【請求項5】
前記メイン筐体に対する前記サブ筐体の前記偏心カムの回転軸線方向へのスライド移動を規制するスライド規制部を備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のキャリッジ。
【請求項6】
前記スライド規制部は、一端が前記メイン筐体に取り付けられ、他端が前記サブ筐体に取り付けられ、前記偏心カムの回転軸線方向に沿って延在して前記サブ筐体を付勢することを特徴とする請求項5に記載のキャリッジ。
【請求項7】
前記偏心カムを軸回りに回転させる操作部を備えることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載のキャリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に備えられ、インクの液滴を吐出するヘッドを保持するキャリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
布や紙等の記録媒体にインクを吐出して画像を形成する画像形成装置としてインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)が知られている。
インクジェット記録装置においては、インクの液滴を吐出するヘッドがキャリッジに保持されており、キャリッジは走査方向に沿って往復移動する。これにより、キャリッジが移動しながら、ヘッドからインクを吐出することで記録媒体に画像を形成することができる。
キャリッジにおいては、記録媒体の種類や印刷用途に応じて記録媒体からヘッドのノズルまでの間隔(ギャップ)を調節するため、ヘッドの位置(高さ)を調節することができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、ヘッドは、位置を調節した後、キャリッジから外れないように、キャリッジに螺子によって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−124121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヘッドをキャリッジに螺子で固定すると、ヘッドの着脱作業に手間がかかる。また、ヘッドの位置(高さ)の微調整も螺子を緩めた状態で行うので、手間がかかるものとなっていた。その一方で、ヘッドをキャリッジに螺子で固定しない場合には、ヘッドの自重によってヘッドの位置が下がってしまい、記録媒体からヘッドのノズルまでの間隔が小さくなって印刷品質の低下を招いてしまう。また、キャリッジの移動に伴うヘッドのがたつきによって記録媒体からヘッドのノズルまでの間隔を一定に保つことができず、印刷品質の低下を招いてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、螺子で固定しなくても簡易な構成でキャリッジにおけるヘッドの位置を固定することができ、印刷品質の低下を防止することができるキャリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明はキャリッジであって、印刷ユニット本体に取り付けられたメイン筐体と、前記メイン筐体に回転自在に設けられた偏心カムと、インクの液滴を吐出するヘッドを保持し、前記偏心カムのカム面に当接して前記偏心カムの回転により前記メイン筐体に対して上下動する前記サブ筐体と、前記サブ筐体の前記偏心カムの軸回りの回転を規制する回転規制部と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、サブ筐体はメイン筐体に固定されておらず、偏心カムに当接しているだけであるため、サブ筐体は自身の自重で偏心カムの回転軸を中心として回転しようとするが、回転規制部によってサブ筐体の回転を規制することができ、サブ筐体に保持されているヘッドの回転を防止することができる。よって、ヘッドを保持するサブ筐体をメイン筐体に螺子で固定しなくても、簡易な構成でキャリッジにおけるヘッドの位置を固定することができ、印刷品質の低下を防止することができる。
【0007】
また、前記回転規制部は、前記メイン筐体と前記サブ筐体の一方に設けられ、前記偏心カムの回転軸を挟んで前記サブ筐体と前記偏心カムの当接部に対向する位置に設けられて前記メイン筐体と前記サブ筐体の他方に当接することが好ましい。
この構成によれば、サブ筐体(メイン筐体)に設けられた回転規制部は、メイン筐体(サブ筐体)に当接することでサブ筐体の回転が規制され、サブ筐体に保持されているヘッドの回転を防止することができる。
【0008】
また、前記回転規制部は、前記メイン筐体に設けられ、前記サブ筐体の回転軌道上に突出して前記サブ筐体に当接することが好ましい。
この構成によれば、回転規制部はサブ筐体の回転軌道上に突出しているので、サブ筐体が偏心カムの回転軸を中心として回転しようとしても、サブ筐体は回転規制部に当接して回転を遮られ、サブ筐体に保持されているヘッドの回転を防止することができる。
【0009】
また、前記サブ筐体が前記偏心カムの軸回りに回転する方向に向けて前記サブ筐体を押し付ける付勢部を備えることが好ましい。
この構成によれば、付勢部は、回転規制部がサブ筐体の回転を規制する方向に向けてより強く押し付けるので、サブ筐体の回転をより強く規制し、ヘッドの回転の防止効果をより高めることができる。
【0010】
また、前記付勢部は、一端が前記メイン筐体に取り付けられ、他端が前記サブ筐体に取り付けられ、前記偏心カムの回転軸心を通る垂線に対して交差する方向に延在して前記サブ筐体を付勢することが好ましい。
この構成によれば、付勢部は、偏心カムの回転中心から外れた方向に向けてサブ筐体を押し付けるので、サブ筐体が回転しようとする方向にサブ筐体を的確に押し付けることができる。
【0011】
また、前記メイン筐体に対する前記サブ筐体の前記偏心カムの回転軸線方向へのスライド移動を規制するスライド規制部を備えることが好ましい。
この構成によれば、スライド規制部は、ヘッドの偏心カムの回転軸線方向へのがたつきを抑えることができるので、簡易な構成でキャリッジにおけるヘッドの位置を固定することができ、印刷品質の低下を防止することができる。
【0012】
また、前記スライド規制部は、一端が前記メイン筐体に取り付けられ、他端が前記サブ筐体に取り付けられ、前記偏心カムの回転軸線方向に沿って延在して前記サブ筐体を付勢することが好ましい。
この構成によれば、スライド規制部は、サブ筐体の回転軸線方向に向けてメイン筐体及びサブ筐体を押し付けるので、サブ筐体が回転軸線方向にスライド移動しようとする方向にサブ筐体を的確に押し付けることができる。
【0013】
また、前記偏心カムは、そのカム面が複数の連続する平面を有し、前記サブ筐体は、前記カム面の平面に面接触する当接板を備えることが好ましい。
この構成によれば、当接板と偏心カムのカム面とが面接触することになるので、ヘッドの位置のずれを抑えることができる。
【0014】
また、前記偏心カムを軸回りに回転させる操作部を備えることが好ましい。
この構成によれば、操作部を回転させる簡単な操作でヘッドの位置を調節することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、螺子で固定しなくても簡易な構成でキャリッジにおけるヘッドの位置を固定することができ、印刷品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】ヘッドを取り付けたキャリッジの斜視図である。
【
図3】ヘッドを取り外したキャリッジの斜視図である。
【
図6】回転規制部(ストッパ)の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るキャリッジの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ここで、キャリッジは、画像形成装置に設けられているため、以下では、画像形成装置の説明の中でキャリッジについて詳細に説明する。
【0018】
[画像形成装置]
図1に示すように、画像形成装置100は、複数色のインクを用いて記録媒体Mの上に画像を形成するインクジェットプリンタである。画像形成装置100は、本体ユニット10と、印刷ユニット20と、制御ユニット40とを備えている。
ここで、記録媒体Mの種類としては、例えば、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリン、或いはアクリル板を含む種々の材質からなるメディア(浸透性/非浸透性を問わない)が用いられる。インクの種類としては、例えば、溶剤系インク(典型的には、光硬化型インク)、水系インク(典型的には、染料インク・顔料インク)、或いは固体インクが用いられる。
【0019】
<本体ユニット、制御ユニット>
図1に示すように、本体ユニット10は、脚部を有する基台11と、基台11の上方に設けられ、上面に記録媒体Mが載置されるプラテン12とを備えている。
基台11は、プラテン12を下方から支持し、プラテン12の上面をほぼ水平に保つ台であり、プラテン12の高さや傾きの調節ができるようになっている。
図1に示すように、制御ユニット40は、印刷ユニット20の側方、すなわち、記録媒体Mの上方から外れた位置に設けられている。制御ユニット40は、制御部40aと、操作部40bとを備えている。制御部40aは、印刷ユニット20による印刷の制御を行う。具体的には、ヘッドからのインクの吐出制御、キャリッジの駆動制御、記録媒体Mの搬送制御、ヘッドのクリーニング制御等を行う。操作部40bは、例えば、タッチパネル式のディスプレイ、スピーカ、各種ボタン等を備えて構成されており、ユーザは操作部40bを介して印刷の指示を入力する。
【0020】
<印刷ユニット>
図1〜
図10に示すように、印刷ユニット20は、インクの液滴を吐出するノズルを有するヘッド3と、ヘッド3を保持するヘッド保持部4と、ガイドレール(Yバー)5と、ガイドレール5に沿ってY方向に移動可能なキャリッジ6とを備えている。
ここで、印刷ユニット20は、キャリッジ6を主走査方向(Y方向)に往復移動させながら、記録媒体Mの上の同じ位置(所定幅の画像領域)に向けてインクの液滴を複数回に分けて吐出することで画像を完成させる記録方式である。主走査方向に相当するY方向は、記録媒体Mの搬送方向に相当するX方向に直交する。
【0021】
(ヘッド)
図2に示すように、ヘッド3は、略箱状に形成されており、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインクの液滴を吐出するように、底面には複数のノズルが形成されている。底面に対向する上面にはインクをヘッド3に供給するインク供給管が接続されるインク供給口31が設けられている。ヘッド3の底面と上面との間には一時的に少量のインクを貯留する貯留部32が設けられている。なお、ノズルの数はインクの色数に応じて形成される。
【0022】
(ヘッド保持部)
図2に示すように、ヘッド保持部4は、ヘッド3の底面のノズルが露出するようにヘッド3を保持する。ヘッド保持部4は、キャリッジ6に着脱自在に構成されるとともに、キャリッジ6に保持される。ヘッド保持部4は、ヘッド3を底面側から保持するとともに、ヘッド3の外側からヘッド3の側壁面を囲むように形成されている。
【0023】
(ガイドレール)
図1に示すように、ガイドレール5は、プラテン12の上方において、プラテン12上の記録媒体Mの搬送方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に延在するように設けられている。ガイドレール5は、キャリッジ6をY方向に沿って往復移動自在に保持するものであり、Yバーとも呼ばれる。
【0024】
(キャリッジ)
図2〜
図4に示すように、キャリッジ6は、ガイドレール(Yバー)5に沿ってY方向に往復移動自在に設けられている。キャリッジ6は、ヘッド3の底面のノズルが露出するようにヘッド保持部4を保持する。なお、本実施の形態においては、キャリッジ6は、二つのヘッド保持部4を保持することができるものであるが、キャリッジ6は、一つのヘッド保持部4を保持するものであってもよいし、三つ以上のヘッド保持部4を保持するものであってもよい。
【0025】
キャリッジ6は、ガイドレール5にY方向に沿って往復移動自在に係合されているメイン筐体61と、メイン筐体61に係止されているサブ筐体62と、サブ筐体62に固定されているベースプレート63と、ベースプレート63に回転自在に設けられた蓋部64と、蓋部64に設けられた固定レバー65と、ベースプレート63に回転自在に設けられた偏心カム66と、メイン筐体61に対するサブ筐体62の回転を規制する回転規制部67と、サブ筐体62を自重による回転方向に押し付ける付勢部68と、メイン筐体61に対するサブ筐体62の左右方向(サブ筐体62の回転軸線に沿った方向)へのスライド移動を規制するスライド規制部69と、を備えている。
【0026】
図2〜
図5に示すように、メイン筐体61は、キャリッジ6の背面壁を構成するものであり、背面がガイドレール5に往復移動自在に係合されている。メイン筐体61の正面側には、サブ筐体62、ベースプレート63が設けられている。
メイン筐体61には回転軸61aが軸線回りに回転自在に設けられており、回転軸61aにはサブ筐体62に係合してヘッド3の位置(高さ)を調節するための調節カム61bが軸支されている。調節カム61bは、中心からカム面までの距離が変化する偏心カムである。調節カム61bは、そのカム面が複数の連続する平面61r,61s,61tを有しており、調節カム61bの回転中心から各平面までの距離がそれぞれ異なるように形成されている。回転軸61aの端部には、回転軸61aを軸線回りに回転させて、ヘッド3の位置を調節するための操作部(操作ハンドル)61cが設けられている。
【0027】
図2〜
図5に示すように、サブ筐体62は、メイン筐体61の正面側において、メイン筐体61に係止されている。サブ筐体62は、螺子等で完全にメイン筐体61に固定されているわけではなく、ヘッド3の高さ方向(上下方向)に沿って上下動自在にメイン筐体61に係止されている。サブ筐体62は、メイン筐体61の正面壁に沿った壁部62aと、この壁部の両端部から壁部とは反対側(キャリッジ6の前方)に突出して延びる腕部62bとを有している。サブ筐体62には、調節カム61bに当接する当接板62cが設けられている。当接板62cは、板材が折り曲げられて側面視略L字状に形成されており、当接板62cの一面が調節カム61bのカム面(平面)61r,61s,61tに択一的に面接触するように載置されている。
【0028】
図2、
図3に示すように、ベースプレート63は、サブ筐体62の壁部62aと腕部62bとに囲まれた空間に設けられている。ベースプレート63は、サブ筐体62に螺子等によって固定されている。ベースプレート63には、付勢部材としての板バネ7が設けられている。板バネ7は、ベースプレート63に取り付けられたヘッド保持部4をベースプレート63に向かって押し付けることにより、ヘッド3のがたつきを防止し、ヘッド3の位置を決める機能を有している。
【0029】
図2、
図3に示すように、蓋部64は、ベースプレート63に取り付けられたヘッド保持部4を上方から押し付けてヘッド保持部4がベースプレート63から離脱しないように保持する。蓋部64は、その一端が、ベースプレート63に回転自在に設けられた回転軸64aに取り付けられている。これにより、蓋部64は、ベースプレート63に回転自在に設けられていることになる。蓋部64は、ヘッド保持部4毎に回転軸64aに設けられている。蓋部64は、ベースプレート63に保持されたヘッド保持部4の上方に進出する位置と上方から退避する位置との間で進退自在となるように回転軸64aに設けられている。蓋部64は、ヘッド保持部4の上方に進出した際に、ヘッド保持部4の上面に対向するように形成されており、蓋部64は、ヘッド保持部4の上面を上方からベースプレート63に押し付ける。蓋部64におけるヘッド保持部4との対向面には、付勢部材としての板バネ8が設けられている。板バネ8は、ベースプレート63に取り付けられたヘッド保持部4を上方からベースプレート63に向かって押し付けることにより、ヘッド3及びヘッド保持部4のベースプレート63からの離脱を防止する。
【0030】
図2、
図3に示すように、固定レバー65は、回転軸64aの両端部にそれぞれ設けられており、回転軸64aの回転とともに回転する。固定レバー65は、回転軸64aの軸線方向に直交する方向に延びる軸体65aを中心に回転自在となるように回転軸64aに設けられている。固定レバー65は、軸体65aを中心に回転することにより、ベースプレート63に係合する位置と係合しない位置との間で回転が可能となる。すなわち、固定レバー65は、ベースプレート63に下側から係止されることで回転が規制され、回転軸64aの回転も規制され、蓋部64の回転が規制される。一方、固定レバー65は、軸体65a回りに回転してベースプレート63との係止が外れることにより、回転が規制されることがなくなり、回転軸64a及び蓋部64が回転軸64a回りに回転することができる。
【0031】
図2、
図3に示すように、偏心カム66は、ベースプレート63に回転自在に設けられている。偏心カム66は、ベースプレート63に保持されているヘッド保持部4の外壁面に当接するように設けられており、偏心カム66の回転により偏心カム66の回転中心からの距離に応じてヘッド保持部4をベースプレート63上で移動させる。
【0032】
図5〜
図8に示すように、回転規制部67は、例えば、二箇所に設けられている。
一つは、
図5、
図8に示すように、サブ筐体62の壁部62aの背面側に設けられた突起67aである。突起67aは、サブ筐体62の壁部62aの背面からメイン筐体61に向けて突出するように設けられている。突起67aは、調節カム61bの回転軸61aを挟んでサブ筐体62と調節カム61bの当接部(当接板62cとカム面61r,61s,61tとの当接面)に対向する位置に設けられており、メイン筐体61に当接する。なお、突起67aは、メイン筐体61の壁面に設けられていてもよく、この場合には、突起67aがサブ筐体62の壁部62aの背面に当接する。
もう一つは、
図5〜
図7に示すように、メイン筐体61に設けられたストッパ67bである。ストッパ67bは、メイン筐体61のサブ筐体62側の壁面に螺子等によって固定されている。ストッパ67bは、突起67aと同様に、調節カム61bの回転軸61aを挟んでサブ筐体62と調節カム61bの当接部(当接板62cとカム面61r,61s,61tとの当接面)に対向する位置に設けられている。ストッパ67bは、その先端部がサブ筐体62の壁部62aの正面側に突出しており、サブ筐体62の壁部62aの一部をメイン筐体61とで挟み込む。すなわち、ストッパ67bは、サブ筐体62の回転軌道上に突出してサブ筐体62に当接する。ストッパ67bの先端部には、対向するサブ筐体62の壁部62aに向かって突出する凸部67cが形成されている。
【0033】
図2、
図3、
図5に示すように、付勢部68は、例えば、コイルばね68から構成されており、サブ筐体62が調節カム61bの軸回りに回転する方向に向けてサブ筐体62を押し付ける。コイルばね68は、自然長よりも圧縮された状態で、一端がメイン筐体61に設けられた受け部61fに取り付けられ、他端がサブ筐体62に設けられた受け部62fに取り付けられている。ここで、
図5に示すように、キャリッジ6にヘッド3を直立にセットした状態において、受け部61fと受け部62fとを結ぶ直線は、調節カム61bの回転軸61aの中心を通る垂線に対して交差する方向に延在している。そのため、両受け部61f、62fに支持されるコイルばね68も、調節カム61bの回転軸61aの中心を通る垂線に対して斜め方向に延在するように設けられている。これにより、コイルばね68は、自身の復元力によりサブ筐体62を斜め下方に向けて押さえ付ける方向に付勢する。
【0034】
図9、
図10に示すように、スライド規制部69は、メイン筐体61の背面側に設けられている。スライド規制部69は、例えば、コイルばね69から構成されており、サブ筐体62をメイン筐体61に押し付けてメイン筐体61に対するサブ筐体62の左右方向(回転軸61aの軸線に沿った方向)へのスライド移動を規制する。
メイン筐体61には開口61hが形成されており、開口61hの縁部には、コイルばね69の一端を取り付ける受け部61jが形成されている。
サブ筐体62の壁部62aの背面側には、突起62hが形成されており、突起62hは、メイン筐体61の開口61hに嵌め込まれている。突起62hにおいて、受け部61jに対向する部位には、コイルばね69の他端を取り付ける受け部62jが形成されている。突起62hにおいて、受け部62jの背面側で開口61hに対向する部位には、開口61hの縁部に当接する凸部62kが形成されている。コイルばね69は、自然長よりも圧縮された状態で、受け部61jと受け部62jとの間に設けられている。ここで、受け部61jと受け部62jとを結ぶ直線は、調節カム61bの回転軸61aの軸線方向(キャリッジ6の左右方向)に沿って延在している。そのため、両受け部61j、62jに支持されるコイルばね69も、調節カム61bの回転軸61aの軸線方向に沿って延在するように設けられている。これにより、コイルばね69は、自身の復元力によりサブ筐体62の突起62hをメイン筐体61の開口61hの縁部に向けて押さえ付ける方向に付勢する。
【0035】
以上のような構成を有する画像形成装置100のキャリッジ6においては、サブ筐体62はメイン筐体61に固定されておらず、当接板62cが調節カム61bのカム面61r,61s,61tに当接しているだけであり、ヘッド3等を含めたサブ筐体62の重心が調節カム61bの回転中心の直下にないため、サブ筐体62は、自身の自重やベースプレート63やヘッド3等の重量で調節カム61bの回転軸61aを中心として下方に回転しようとする。しかし、メイン筐体31に対向する突起67aは、メイン筐体61に当接し、サブ筐体62の回転軌道上に突出するストッパ67bは、サブ筐体62の壁部62aに当接することにより、サブ筐体62の回転を規制することができ、サブ筐体62に保持されているヘッド3の回転を防止することができる。よって、ヘッド3を保持するサブ筐体62をメイン筐体61に螺子で固定しなくても、簡易な構成でキャリッジ6におけるヘッド3の位置を固定することができ、印刷品質の低下を防止することができる。
【0036】
また、付勢部としてのコイルばね68は、サブ筐体62が調節カム61bの回転軸61a回りに回転する方向に向けてサブ筐体62を押し付けるので、コイルばね68は、突起67a及びストッパ67bがサブ筐体62の回転を規制する方向に向けてサブ筐体62をより強く押し付けるので、サブ筐体62の回転をより強く規制し、ヘッド3の回転の防止効果をより高めることができる。
また、コイルばね68は、調節カム61bの回転軸61aの中心を通る垂線に対して交差する方向に延在してサブ筐体62を付勢するので、コイルばね68は、調節カム61bの回転中心から外れた方向に向けてサブ筐体62を押し付けることになり、サブ筐体62が回転しようとする方向にサブ筐体62を的確に押し付けることができる。
【0037】
また、スライド規制部としてのコイルばね69は、サブ筐体62の突起62hを左右方向(調節カム61bの回転軸61aの軸線方向)に沿ってメイン筐体61の開口61hの縁部に押し付けるように設けられているため、サブ筐体62に保持されているヘッド3の左右方向へのスライド移動(がたつき)を抑えることができ、簡易な構成でキャリッジ6におけるヘッド3の位置を固定することができ、印刷品質の低下を防止することができる。
【0038】
また、調節カム61bは、そのカム面が複数の連続する平面61r,61s,61tを有し、サブ筐体62には、カム面の平面61r,61s,61tに択一的に面接触する当接板62cが設けられているので、当接板61cと調節カム61bのカム面(平面)61r,61s,61tとが面接触することになるので、ヘッド3の位置のずれを抑えることができる。
また、調節カム61bの回転軸61aには、調節カム61bを軸回りに回転させる操作部61cが設けられているので、ユーザが操作部61cを回転させる簡単な操作でヘッド3の位置を調節することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。例えば、キャリッジ6は、二つのヘッド保持部を保持するものに限られず、保持できるヘッド保持部の数量は変更可能である。
また、平面に形成されたカム面の数も任意であって、ヘッド3の位置の調節の段階数に応じて自由に変更可能である。
また、回転規制部67を設ける箇所も二つに限られるものではなく、サブ筐体62の調節カム61bの回転軸61a回りの回転を規制するものであれば、一つでも三つ以上であってもよい。
また、スライド規制部69を設ける箇所も一つに限られるものではなく、サブ筐体62の左右方向(回転軸61aの軸線方向)へのスライド移動を規制するものであれば、二つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
3 ヘッド
6 キャリッジ
10 本体ユニット
20 印刷ユニット
40 制御ユニット
61 メイン筐体
61a 回転軸
61b 調節カム(偏心カム)
61c 操作部
61r,61s,61t カム面(平面)
62 サブ筐体
62c 当接板
67 回転規制部
67a 突起
67b ストッパ
67c 凸部
68 コイルばね(付勢部)
69 コイルばね(スライド規制部)
100 画像形成装置