特許第6890473号(P6890473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890473
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】スライド式防火扉
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20210607BHJP
   E06B 7/16 20060101ALI20210607BHJP
   E05D 15/10 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   E06B5/16
   E06B7/16 C
   E05D15/10
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-108359(P2017-108359)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-204229(P2018-204229A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】川邊 直喜
(72)【発明者】
【氏名】小川 信雄
(72)【発明者】
【氏名】保坂 良裕
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴文
【審査官】 加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−314159(JP,A)
【文献】 特開昭61−113982(JP,A)
【文献】 特開2010−043433(JP,A)
【文献】 実開平04−095980(JP,U)
【文献】 特開2005−036617(JP,A)
【文献】 米国特許第03611637(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E05D 15/06−15/14
E06B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する壁体に設けられ、前記開口部を囲む開口枠部と、前記開口部を開閉する扉本体と、前記扉本体を前記壁体に沿うスライド方向に案内する案内機構と、を備えたスライド式防火扉であって、
前記案内機構は、前記スライド方向に並んで配置された複数の案内ローラにより構成されて前記扉本体を案内する案内ローラ群を備え、前記扉本体を、前記スライド方向に、前記開口部が開放される開放位置から前記開口部が閉塞される閉塞位置まで移動自在に案内し、
前記扉本体は、前記壁体に対向する第一対向面を有し、
前記開口枠部は、前記閉塞位置にある前記扉本体の前記第一対向面に対向する第二対向面を有し、
前記案内機構は、前記扉本体が前記開放位置から前記閉塞位置へ移動するに伴って、前記第一対向面を前記第二対向面に接近させる方向に前記扉本体を移動させる接近移動機構を備えており、
前記スライド方向は、水平方向に沿う方向であり、
前記扉本体は、上下方向及び前記スライド方向に沿う姿勢で設置され、
前記案内ローラ群は、回転軸まわりの外周面で前記扉本体の重量を支持する複数の支持ローラにより構成された支持ローラ群を含み、
前記支持ローラ群には、前記開放位置において前記扉本体の重量を支持する単数又は複数の開放位置支持ローラと、前記閉塞位置において前記扉本体の重量を支持する単数又は複数の閉塞位置支持ローラと、が含まれ、
前記開放位置支持ローラの外周面の形状と、前記閉塞位置支持ローラの外周面の形状とが異なり、
前記閉塞位置支持ローラの外周面の少なくとも一部が、前記壁体側に向かうに従って径が縮小する傾斜面となっており、前記閉塞位置支持ローラが前記接近移動機構を兼ねているスライド式防火扉。
【請求項2】
前記開放位置支持ローラの外周面における前記壁体側の端部の径が、前記閉塞位置支持ローラの外周面における前記壁体側の端部の径よりも大きく、
前記扉本体が前記閉塞位置にある状態において前記扉本体の前記スライド方向の後端に対して前記開放位置側に最も近い位置にある前記支持ローラが前記開放位置支持ローラである請求項に記載のスライド式防火扉。
【請求項3】
前記スライド方向における前記開放位置支持ローラと前記閉塞位置支持ローラとの間に、前記開放位置支持ローラの外周面の形状と前記閉塞位置支持ローラの外周面の形状との中間形状の外周面を有する中継支持ローラが配置されている請求項又はに記載のスライド式防火扉。
【請求項4】
前記開放位置支持ローラの外周面は、軸方向の中間部の径が、軸方向の両端部の径よりも小さくなるように形成されている請求項からのいずれか一項に記載のスライド式防火扉。
【請求項5】
前記接近移動機構は、前記扉本体の前記閉塞位置への移動により動作する動作部材を備え、
前記動作部材は、前記閉塞位置へ移動する前記扉本体に押されて動作する被動作部と、前記被動作部に連動して前記扉本体を前記壁体側へ押圧する押圧部とを備えている請求項1からのいずれか一項に記載のスライド式防火扉。
【請求項6】
前記動作部材は、前記被動作部と前記押圧部とを連結する連結部と、前記連結部を前記壁体に対して回転可能に支持する回転支持部と、を更に備え、
前記連結部における前記回転支持部に対して一方側の第一部分に前記被動作部が連結され、前記連結部における前記回転支持部に対して他方側の第二部分に前記押圧部が連結され、
前記連結部は、前記第一対向面に直交する対向方向視で、前記第一部分と前記第二部分とが交差する方向に延びるように屈曲形成され、
前記被動作部は、前記閉塞位置へ移動する前記扉本体に押されて移動し、
前記押圧部は、前記被動作部の移動に伴う前記動作部材の前記回転支持部を中心とした揺動により、前記第一対向面とは反対側の前記扉本体の面である非対向面の縁部に当接する押圧面を備え、
前記押圧面は、前記揺動による前記押圧部の移動方向に沿って前記非対向面の縁部に向かうに従って前記壁体から離れる方向に傾斜した傾斜面である請求項に記載のスライド式防火扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を有する壁体に設けられ、前記開口部を囲む開口枠部と、前記開口部を開閉する扉本体と、前記扉本体を前記壁体に沿うスライド方向に案内する案内機構と、を備えたスライド式防火扉に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるスライド式防火扉の従来例が、特開平07−176587号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1のスライド式防火扉は、扉本体を案内する案内機構として、スライド方向に沿ってガイドレールを備えており、当該ガイドレールにより、扉本体に備えられたガイドローラを支持して、扉本体をスライド方向に沿って移動自在としている。
そして、特許文献1のスライド式防火扉は、火災が発生した場合に、開放位置の扉本体を、スライド方向に沿って閉塞位置まで移動させて、扉本体により開口部を閉塞するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−176587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなスライド式防火扉では、扉本体がスライド方向に移動するときの抵抗を減らすために、扉本体における壁体に対向する第一対向面と、開口枠部における第一対向面と対向する第二対向面と、の間には隙間が形成されている。第一対向面と第二対向面との間に隙間が形成されていると、扉本体による開口部の閉塞性が低下するため、扉本体による開口部の閉塞性を高める余地があった。また、このようなスライド式防火扉では、製造コストを抑えることが求められている。
そこで、扉本体による開口部の閉塞性を高めながら製造コストを抑えることができるスライド式防火扉の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑みた、スライド式防火扉の特徴構成は、開口部を有する壁体に設けられ、前記開口部を囲む開口枠部と、前記開口部を開閉する扉本体と、前記扉本体を前記壁体に沿うスライド方向に案内する案内機構と、を備え、
前記案内機構は、前記スライド方向に並んで配置された複数の案内ローラにより構成されて前記扉本体を案内する案内ローラ群を備え、前記扉本体を、前記スライド方向に、前記開口部が開放される開放位置から前記開口部が閉塞される閉塞位置まで移動自在に案内し、前記扉本体は、前記壁体に対向する第一対向面を有し、前記開口枠部は、前記閉塞位置にある前記扉本体の前記第一対向面に対向する第二対向面を有し、前記案内機構は、前記扉本体が前記開放位置から前記閉塞位置へ移動するに伴って、前記第一対向面を前記第二対向面に接近させる方向に前記扉本体を移動させる接近移動機構を備えており、
前記スライド方向は、水平方向に沿う方向であり、前記扉本体は、上下方向及び前記スライド方向に沿う姿勢で設置され、前記案内ローラ群は、回転軸まわりの外周面で前記扉本体の重量を支持する複数の支持ローラにより構成された支持ローラ群を含み、前記支持ローラ群には、前記開放位置において前記扉本体の重量を支持する単数又は複数の開放位置支持ローラと、前記閉塞位置において前記扉本体の重量を支持する単数又は複数の閉塞位置支持ローラと、が含まれ、前記開放位置支持ローラの外周面の形状と、前記閉塞位置支持ローラの外周面の形状とが異なり、前記閉塞位置支持ローラの外周面の少なくとも一部が、前記壁体側に向かうに従って径が縮小する傾斜面となっており、前記閉塞位置支持ローラが前記接近移動機構を兼ねている点にある。
【0006】
この構成によれば、扉本体は、スライド方向に並んで配置された複数の案内ローラによって案内されるため、扉本体を開放位置から閉塞位置に円滑に移動させることができる。
このように複数の案内ローラをスライド方向に沿って配置して扉本体を案内することで、扉本体にローラを備えた場合のように、スライド方向に沿うレールを設置しなくてもよくなるため、スライド式防火扉のコスト低下を図ることができる。
そして、扉本体は、開放位置から閉塞位置に移動するに伴って、接近移動機構により扉本体の第一対向面が開口枠部の第二対向面に接近する方向に移動する。これによって、扉本体と開口枠部との間の隙間を無くす又は小さくできるため、扉本体による開口部の閉塞性を高めることができる。
このように、本構成によれば、扉本体による開口部の閉塞性を高めながらスライド式防火扉のコストを抑え易くなる。
さらに、閉塞位置に位置する扉本体は、閉塞位置支持ローラ群により支持されている。閉塞位置支持ローラは、その外周面の少なくとも一部が傾斜面となっているため、閉塞位置支持ローラ群により支持される扉本体は、傾斜面を滑り落ちて壁体側に移動し、それによって第一対向面が第二対向面に接近する。
このように構成された閉塞位置支持ローラ群は、接近移動機構としても機能する。そのため、第一対向面を第二対向面に接近させる方向に移動させる機構を別途設ける必要がない。従って、接近移動機構を別途設ける場合に比べてスライド式防火扉の構成を簡略化することができ、スライド式防火扉のコストを更に抑え易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】スライド式防火扉の斜視図
図2】扉本体が開放位置に位置するスライド式防火扉の正面図
図3】扉本体が閉塞位置に位置するスライド式防火扉の正面図
図4】扉本体が開放位置に位置するスライド式防火扉の縦断側面図
図5】扉本体が閉塞位置に位置するスライド式防火扉の縦断側面図
図6】開放位置支持ローラの側面図
図7】閉塞位置支持ローラの側面図
図8】支持ローラ及びローラ支持体の正面図
図9】第二動作部材の斜視図
図10】第一動作部材の斜視図
図11】第二動作部材の正面図と側面図
図12】第一動作部材の正面図と側面図
図13】扉本体が閉塞位置に位置するスライド式防火扉の横断平面図
図14】別実施形態(1)の開放位置支持ローラの側面図
図15】別実施形態(2)の閉塞位置支持ローラの側面図
図16】別実施形態(3)の閉塞位置支持ローラの側面図
図17】別実施形態(4)の閉塞位置支持ローラの側面図
図18】別実施形態(5)の中継支持ローラの側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態
スライド式防火扉を備えた物品搬送設備の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、開口部1を有する壁体2と、壁体2に設けられて開口部1を開閉するスライド式防火扉3と、天井搬送車(図示せず)を支持して天井搬送車を走行経路に沿って案内する走行レール5と、が設けられている。
【0009】
走行レール5は、開口部1を貫通する状態で天井近くに設置されており、壁体2に対して前後方向第一側X1に形成された領域と壁体2に対して前後方向第二側X2に形成された領域に亘って設置されている。天井搬送車は、開口部1を前後方向Xに通過するように走行レール5に沿って走行して、物品を搬送する。尚、壁体2の厚み方向を前後方向Xとし、前後方向Xの一方側を前後方向第一側X1、その反対側を前後方向第二側X2としている。また、上下方向Z視で、前後方向Xに対して直交する方向を左右方向Yとし、左右方向Yの一方側を左右方向第一側Y1、その反対側を左右方向第二側Y2とする。
【0010】
スライド式防火扉3は、壁体2の前後方向第二側X2を向く面に設置されている。スライド式防火扉3は、開口部1を囲む開口枠部7と、開口部1を開閉する扉本体8と、扉本体8を左右方向Yに案内する案内機構9と、扉本体8を開閉操作する操作機構10と、を備えている。案内機構9は、案内ローラ群31と接近移動機構32とを備えている。尚、左右方向Yが、壁体2に沿う方向であり且つ水平方向に沿う方向であるスライド方向に相当する。
【0011】
〔開口枠部〕
図1から図3に示すように、開口枠部7は、基枠11と下枠12と上枠13と第一縦枠14と第二縦枠15と第三縦枠16とを備えている。基枠11は、壁体2の鉄骨17に固定されている。尚、壁体2がコンクリートで構成されている場合に、基枠11を壁体2のコンクリートに直接固定してもよい。下枠12と上枠13と第一縦枠14と第二縦枠15と第三縦枠16との夫々は、基枠11に固定されている。下枠12と上枠13と第一縦枠14と第二縦枠15と第三縦枠16との夫々は長尺状に形成されている。下枠12と上枠13と第一縦枠14と第二縦枠15と第三縦枠16とは別体に構成されている。また、下枠12を、その長手方向に分割された複数の枠材によって構成してもよく、また、上枠13と第一縦枠14と第二縦枠15と第三縦枠16との夫々についても同様に、それらの長手方向に分割された複数の枠材によって構成してもよい。
【0012】
下枠12と上枠13とは左右方向Yに沿う姿勢で設置されている。上枠13は、下枠12に対して上方側に間隔を空けた位置に設置されている。
第一縦枠14と第二縦枠15と第三縦枠16とは、上下方向Zに沿う姿勢で設置されている。第二縦枠15は、第一縦枠14に対して左右方向第一側Y1に間隔を空けた位置に設置され、第三縦枠16は、第二縦枠15に対して左右方向第一側Y1に間隔を空けた位置に設置されている。第一縦枠14と第二縦枠15と第三縦枠16との夫々は、下端が下枠12に連結され、且つ、上端が上枠13に連結されている。
開口枠部7は、下枠12の一部と上枠13の一部と第一縦枠14と第二縦枠15とによって形成される矩形状の枠内に開口部1が位置するように、壁体2に固定されている。
【0013】
図4及び図5に示すように、下枠12には、下方に凹入する下凹部12Aが左右方向Yに沿って備えられている。上枠13には、上方に凹入する上凹部13Aが左右方向Yに沿って備えられている。図13に示すように、第一縦枠14には、左右方向第二側Y2に凹入する閉凹部14Aが上下方向Zに沿って備えられている。図1に示すように、第二縦枠15には、左右方向Yに貫通する貫通部15Aが備えられている。
これら下凹部12A、上凹部13A、閉凹部14A、貫通部15Aの夫々は、互いに対向する第一枠面F1と第二枠面F2とを有している。第一枠面F1は、前後方向第二側X2を向き、第二枠面F2は、前後方向第一側X1を向いている。
【0014】
〔扉本体〕
図1から図3に示すように、扉本体8は、上下方向Z及び左右方向Yに沿う姿勢で設置されており、当該扉本体8は、開口枠部7により左右方向Yに移動自在に支持されている。扉本体8は、左右方向Yに沿って移動させることで、開口部1が開放される開放位置(図1及び図2参照)と開口部1が閉塞される閉塞位置(図3参照)とに移動する。扉本体8は、壁体2に対して前後方向第二側X2に位置しており、扉本体8における前後方向第一側X1を向く面である第一扉面F3は、壁体2と対向している。
【0015】
扉本体8は、下端部が下凹部12Aに挿入されており、扉本体8の下端部は、前後方向X視で、下凹部12Aの第一枠面F1及び第二枠面F2と重なっている。また、扉本体8は、上端部が上凹部13Aに挿入されており、扉本体8の上端部は、前後方向X視で、上凹部13Aの第一枠面F1及び第二枠面F2と重なっている。
扉本体8が閉塞位置に位置する状態では、扉本体8は、左右方向第二側Y2の端部が閉凹部14Aに挿入されており、扉本体8の左右方向第二側Y2の端部が、前後方向X視で、閉凹部14Aの第一枠面F1及び第二枠面F2と重なっている。また、扉本体8が閉塞位置に位置する状態では、扉本体8の左右方向第一側Y1の部分は、前後方向X視で貫通部15Aの第一枠面F1及び第二枠面F2と重なっている。
尚、第一扉面F3が、壁体2に対向する第一対向面に相当する。また、第一枠面F1が、閉塞位置にある扉本体8の第一対向面に対向する第二対向面に相当する。
【0016】
扉本体8が閉塞位置に位置する状態において、扉本体8の第一扉面F3は、前後方向X視で壁体2と重なる第一重複部分を有している。この第一重複部分は、開口部1の全周を囲むように存在している。また、扉本体8が閉塞位置に位置する状態において、開口枠部7の第一枠面F1は、前後方向X視で扉本体8の第一重複部分と重なる第二重複部分を有している。この第二重複部分は、開口部1の全周を囲むように存在している。
【0017】
扉本体8における左右方向第一側Y1の端部に被検出部18が備えられている。この被検出部18は、扉本体8が開放位置にある状態で第一検出部19に検出され、扉本体8が閉塞位置にある状態で第二検出部20に検出される位置に設置されている。尚、本実施形態では、第一検出部19及び第二検出部20は、被検出部18としてのドグによりオン操作されるリミットスイッチにより構成されている。
【0018】
また、扉本体8における左右方向第二側Y2の端部に、被係合部25が備えられている。この被係合部25は、扉本体8が閉塞位置に移動するに伴って係合部26に係合し、扉本体8の左右方向Yへの移動を規制する。また、被係合部25は、係合部26の被係合部25に対する係合を、作業者の手動操作により解除可能に構成されている。
【0019】
〔操作機構〕
操作機構10は、第一操作部22と第二操作部23とを有する。第一操作部22及び第二操作部23は、開口枠部7に固定されている。
第一操作部22は、扉本体8の左右方向第二側Y2の端部に連結された第一ワイヤー24を巻き取る第一ドラム(図示せず)と、第一ワイヤー24を巻き取る方向に第一ドラムを付勢するバネ(図示せず)と、を備えている。第一操作部22は、バネの付勢力により第一ドラムを回転させて第一ワイヤー24を巻き取ることで扉本体8を左右方向第二側Y2に移動させ、開放位置の扉本体8を閉塞位置まで移動させる。
第二操作部23は、扉本体8の左右方向第一側Y1の端部に連結された第二ワイヤー27を巻き取る第二ドラム(図示せず)と、第二ドラムを回転操作するための着脱自在なハンドル(図示せず)と、第二ワイヤー27を繰り出す方向への第二ドラムの回転を規制し且つ第二ワイヤー27を巻き取る方向への第二ドラムの回転を許容する保持機構と、を備えている。第二操作部23は、第一操作部22のバネの付勢力により扉本体8が左右方向第二側Y2移動することを、保持機構によって規制している。また、第二操作部23は、ハンドルにより第二ドラムを回転させて第二ワイヤー27を巻き取ることで扉本体8を左右方向第一側Y1に移動させ、閉塞位置の扉本体8を開放位置まで移動させる。尚、第二操作部23は、床面に立って操作する者が操作し易いように、床面近くの開口枠部7から離れた箇所に固定してもよい。また、第二操作部23を、ハンドルに替えて電動モータを設けた電動式に構成してもよい。
【0020】
〔案内ローラ〕
図2及び図3に示すように、案内ローラ群31は、前後方向Xに沿う回転軸周りに回転する複数の支持ローラ36により構成されており、扉本体8の重量を支持する支持ローラ群37として備えられている。そして、支持ローラ群37は、扉本体8を、左右方向Yに、開口部1が開口される開放位置から開口部1が閉塞される閉塞位置まで移動自在に案内する。尚、支持ローラ36は、扉本体8を案内する案内ローラを兼ねている。
【0021】
支持ローラ群37には、開放位置において扉本体8の重量を支持する複数の開放位置支持ローラ39と、閉塞位置において扉本体8の重量を支持する閉塞位置支持ローラ40と、が含まれている。このように、支持ローラ群37には、複数の開放位置支持ローラ39としての複数の支持ローラ36と、複数の閉塞位置支持ローラ40としての複数の支持ローラ36と、が備えられている。
【0022】
複数の閉塞位置支持ローラ40は、複数の開放位置支持ローラ39に対して、左右方向第二側Y2に設置されている。そして、支持ローラ群37を構成する複数の支持ローラ36には、開放位置の扉本体8の重量と閉塞位置の扉本体8の重量との双方を支持する兼用の支持ローラ36が存在する。この兼用の支持ローラ36は、本実施形態では、閉塞位置支持ローラ40としている。
このように複数の開放位置支持ローラ39及び複数の閉塞位置支持ローラ40を設置することで、扉本体8が閉塞位置にある状態において、扉本体8の左右方向第一側Y1の端部に対して左右方向第一側Y1に最も近い位置に位置する支持ローラ36が開放位置支持ローラ39となり、扉本体8が閉塞位置にある状態において、扉本体8の左右方向第一側Y1の端部に対して左右方向第二側Y2に最も近い位置に位置する支持ローラ36が閉塞位置支持ローラ40となっている。
【0023】
開放位置支持ローラ39と閉塞位置支持ローラ40とは、これらの支持ローラ36の回転軸心が同じ高さとなる状態で設置されている。
開放位置支持ローラ39の外周面の形状と閉塞位置支持ローラ40の外周面の形状とは異なっている。次に、開放位置支持ローラ39の外周面の形状と閉塞位置支持ローラ40の外周面の形状とについて説明する。
【0024】
図6に示すように、開放位置支持ローラ39は、第三部39Cと、この第三部39Cより前後方向第一側X1の第一部39Aと、第三部39Cより前後方向第二側X2の第二部39Bと、を有している。これら、第一部39Aと第二部39Bと第三部39Cとは一体形成されている。
開放位置支持ローラ39の外周面の形状は、第一部39Aと第二部39Bと第三部39Cとで異なっている。第一部39Aの外周面は、前後方向第二側X2に向かうに従って径が縮小する傾斜面となっている。第二部39Bの外周面は、前後方向第一側X1に向かうに従って径が縮小する傾斜面となっている。第三部39Cの外周面は、前後方向Xの何れの位置においても同じ径となっており、第一部39Aの前後方向第二側X2の端縁及び第二部39Bの前後方向第一側X1の端縁と同じ径となっている。第三部39Cの前後方向Xの幅は、扉本体8の下端における前後方向Xの幅と同じ又はそれより広くなっている。
【0025】
このように、開放位置支持ローラ39の外周面は、前後方向X(軸方向)の第三部39C(中間部)の径が、前後方向X(軸方向)の両端部(第一部39A及び第二部39B)の径より小さくなっている。そのため、第三部39Cに対して前後方向Xにずれて位置している扉本体8を、第一部39A及び第二部39Bにより第三部39C上に案内することができる。また、第三部39C上に位置する扉本体8が前後方向Xに移動することを、第一部39A及び第二部39Bにより抑制できる。
【0026】
図7に示すように、閉塞位置支持ローラ40は、第四部40Aと、この第四部40Aより前後方向第一側X1の第五部40Bと、を有している。これら第四部40Aと第五部40Bとは一体形成されている。
閉塞位置支持ローラ40の外周面の形状は、第四部40Aと第五部40Bとで異なっている。第四部40Aは、前後方向第一側X1に向かうに従って径が縮小する傾斜面となっている。第五部40Bの外周面は、前後方向Xの何れの位置においても同じ径となっており、第四部40Aの外周面の前後方向第一側X1の端縁と同じ径となっている。第五部40Bの外周面の前後方向Xの幅は、扉本体8の下面の幅より狭くなっている。また、第五部40Bの前後方向第二側X2の端縁から第一枠面F1までの幅は、扉本体8の下面の幅と同じ又はそれより狭くなっている。尚、第五部40Bの前後方向第二側X2の端縁から第一枠面F1までの幅は、扉本体8の下面の幅と同じ又はそれより広くてもよい。
【0027】
このように、閉塞位置支持ローラ40の外周面の少なくとも一部(第四部40Aの外周面)が、壁体2側(前後方向第一側X1)に向かうに従って径が縮小する傾斜面となっており、閉塞位置支持ローラ40は、接近移動機構32を兼ねている。
【0028】
第三部39Cの外周面の径と、第五部40Bの外周面の径と、は同じ径となっている。また、第一部39Aの外周面の前後方向第一側X1の端縁の径と、第二部39Bの外周面の前後方向第二側X2の端縁の径と、第四部40Aの外周面の前後方向第二側X2の端縁の径と、は同じ径となっている。
そのため、開放位置支持ローラ39の外周面における壁体2側の端部の径(第一部39Aの外周面の前後方向第一側X1の端部の径)が、閉塞位置支持ローラ40の外周面における壁体2側の端部の径(第五部40Bの外周面の前後方向第一側X1の端部の径)よりも大きくなっている。
【0029】
図6及び図7に示すように、支持ローラ36は、ローラ支持体42により片持ち状に支持されている。説明を加えると、ローラ支持体42は、左右方向Y及び上下方向Zに延びる板状に形成されており、当該ローラ支持体42には、前後方向第一側X1に突出する状態で支持ピンが支持されている。支持ローラ36は、支持ピンに回転自在に支持させることでローラ支持体42に片持ち状に支持されている。図8に示すように、支持ローラ36は、左右方向Yに沿って複数並設されている。
尚、支持ローラ36を支持する構成は、上述のように片持ち状に支持する他に、中間支持の状態で支持する、両端支持の状態で支持する等、適宜変更してもよい。ちなみに、中間支持の状態で支持ローラ36を支持する場合は、次のように支持することが考えられる。つまり、ローラ支持体42に、前後方向第一側X1の両側に突出する状態で支持ピンを支持すると共に、支持ローラ36を前後方向Xに2つのローラ部に分割する。そして、ローラ部がローラ支持体42に対して前後方向Xの両側に位置するように2つのローラ部を支持ピンに回転自在に支持させる。また、両端支持の状態で支持ローラ36を支持する場合は、次のように支持することが考えられる。つまり、ローラ支持体42を左右方向Y視で角ばったU字状に形成して、左右方向Y及び上下方向Zに延びる板状部を一対備え、ローラ支持体42の一対の板状部により支持ピンの両端を支持する。そして、支持ローラ36を一対の板状部の間に位置するように支持ピンに支持させる。
ローラ支持体42は、当該ローラ支持体42に対して前後方向第一側X1に支持ローラ36が位置する状態で、支持ローラ36を回転自在に支持している。支持ローラ群37を構成する複数の支持ローラ36の夫々は、複数のローラ支持体42に分散して支持されている。ローラ支持体42の左右方向Yの長さは、任意の長さでよいが、本実施形態では、ローラ支持体42の左右方向Yの長さは、開口枠部7の10分の1程度の長さとしており、具体的には、ローラ支持体42の左右方向Yの長さは、300mm以下としている。
【0030】
図8に示すように、ローラ支持体42には、ローラ支持体42の左右方向第一側Y1の端部及びローラ支持体42の左右方向第二側Y2の端部との夫々に、規制部43が備えられている。一対の規制部43は、前後方向Xに沿う回転軸心周りに回転自在にローラ支持体42に支持されている。尚、規制部43は、必要に応じて備えればよく、支持ローラ36を両端支持の状態で支持するためにローラ支持体42を左右方向視でU字状に形成した場合等、ローラ支持体42の形状によっては規制部43を備えなくてもよい。
ローラ支持体42の左右方向第一側Y1の端部に備えられた規制部43は、ローラ支持体42から左右方向第一側Y1に突出する円弧状の部分を有している。また、ローラ支持体42の左右方向第二側Y2の端部に備えられた規制部43は、ローラ支持体42から左右方向第二側Y2に突出する円弧状の部分を有している。
【0031】
図6及び図7に示すように、複数のローラ支持体42は、下凹部12Aに上方から嵌合されており、前後方向Xへの移動が第一枠面F1及び第二枠面F2により規制されている。また、複数のローラ支持体42は、左右方向Yに並べた状態で設置されており、左右方向Yへの移動が、隣接する他のローラ支持体42、又は、下凹部12Aの端部に備えられた壁部(図示せず)により規制されている。そして、ローラ支持体42は、下凹部12A内に設置された状態で、ボルト及びナット等の固定具により下枠12に固定されていてもよく、また、ローラ支持体42と第二枠面F2との間に押圧具を設置して押圧具によりローラ支持体42を前後方向第一側X1に押圧させた状態で下枠12に固定されていてもよい。
【0032】
図8に示すように、上述の如くローラ支持体42に規制部43を支持させることで、左右方向Yに隣接するローラ支持体42同士が接触することを回避でき、接触している規制部43同士は、点接触又はそれに近い状態で接触している。そのため、左右方向Yに並ぶ複数のローラ支持体42のうちの中間に位置するローラ支持体42を、下凹部12Aから上方に取り外す場合に、当該ローラ支持体42を下凹部12Aから取り外し易くなっている。
【0033】
〔接近移動機構〕
接近移動機構32は、扉本体8が開放位置から閉塞位置に移動するに伴って、扉本体8の第一扉面F3を開口枠部7の第一枠面F1に接近させる方向(前後方向第一側X1)に扉本体8を移動させる。本実施形態では、接近移動機構32として、上述した閉塞位置支持ローラ40に加えて、扉本体8の閉塞位置への移動により動作する動作部材46(図9及び図10参照)と、固定状態で設置された固定部材47(図13参照)と、を備えている。
【0034】
図9から図12に示すように、動作部材46は、閉塞位置へ移動する扉本体8に押されて動作する被動作部51と、被動作部51に連動して扉本体8を前後方向第一側X1へ押圧する押圧部52と、被動作部51と押圧部52とを連結する連結部53と、連結部53を壁体2に対して回転可能に支持する回転支持部54と、を備えている。
【0035】
連結部53における回転支持部54に対して一方側の第一部分53Aに被動作部51が連結され、連結部53における回転支持部54に対して他方側の第二部分53Bに押圧部52が連結されている。尚、被動作部51と押圧部52と連結部53と回転支持部54とは一体形成されている。
【0036】
連結部53は、前後方向X視(第一対向面に直交する対向方向視)で、第一部分53Aと第二部分53Bとが交差する方向に延びるように屈曲形成されている。
被動作部51は、閉塞位置へ移動する扉本体8に押されて移動する。押圧部52は、被動作部51の移動に伴う動作部材46の回転支持部54を中心とした揺動により、第二扉面F4の縁部に当接する押圧面を備えている。この押圧面は、揺動による押圧部52の移動方向に沿って第二扉面F4の縁部に向かうに従って壁体2から離れる方向に傾斜した傾斜面である。尚、扉本体8における第一扉面F3とは反対側の扉本体8の面を第二扉面F4(非対向面に相当)としている。
【0037】
動作部材46として、第一動作部材48と第二動作部材49とがあり、これら第一動作部材48及び第二動作部材49について説明を加える。
図10に仮想線で示すように、第一動作部材48は、第一部分53Aが上方側に延び、第二部分53Bが左右方向第一側Y1に延びるように設置されている。また、第一動作部材48は、前後方向Xに沿う軸心周りに揺動自在に、第一縦枠14の下端部に設置されている。また、閉塞位置の扉本体8に対して左右方向第二側Y2で且つ下方側に位置するように設置されている。そして、第一部分53Aは、扉本体8より左右方向第二側Y2に位置しており、第二部分53Bは、押圧面が、扉本体8の下端より下方に位置している。そして、扉本体8が閉塞位置に移動するに伴って、扉本体8の左右方向第二側Y2の端部により被動作部51が押されることで、第一動作部材48は、図10に実線で示すように回転支持部54を中心に揺動する。第一動作部材48は、このように揺動することで、押圧部52が扉本体8の第二扉面F4と開口枠部7の第二枠面F2との間に挿入され、押圧部52の押圧面により扉本体8が前後方向第一側X1に押される。
【0038】
図9の仮想線で示すように、第二動作部材49は、第一部分53Aが下方側に延び、第二部分53Bが左右方向第一側Y1に延びるように設置されている。また、第二動作部材49は、前後方向Xに沿う軸心周りに揺動自在に、第一縦枠14の上端部に設置されている。また、閉塞位置の扉本体8に対して左右方向第二側Y2で且つ上方側に位置するように設置されている。そして、第一部分53Aは、扉本体8より左右方向第二側Y2に位置しており、第二部分53Bは、押圧面が、扉本体8の上端より上方に位置している。そして、扉本体8が閉塞位置に移動するに伴って、扉本体8の左右方向第二側Y2の端部により被動作部51が押されることで、第二動作部材49は、図9に実線で示すように回転支持部54を中心に揺動する。第二動作部材49は、このように揺動することで、押圧部52が扉本体8の第二扉面F4と開口枠部7の第二枠面F2との間に挿入され、押圧部52の押圧面により扉本体8が前後方向第一側X1に押される。
【0039】
図13に示すように、固定部材47は、第一縦枠14の閉凹部14A内に設置された第一固定部57と、第二縦枠15の貫通部15A内に設置された第二固定部58と、を有する。第一固定部57は、第一縦枠14における扉本体8に対して前後方向第二側X2の部分に、上下方向Zに沿って連続的又は断続的に備えられている。第二固定部58は、第二縦枠15における扉本体8に対して前後方向第二側X2の部分に、上下方向Zに沿って連続的又は断続的に備えられている。第一固定部57における左右方向第一側Y1を向く面が、左右方向第二側Y2に向かうに従って第一枠面F1に近づく傾斜面に形成されている。
また、扉本体8の左右方向第一側Y1の端部に、前後方向第二側X2に突出する突出部59が上下方向Zに沿って連続的又は断続的に形成されている。当該突出部59における左右方向第二側Y2を向く面が、左右方向第一側Y1に向かうに従って第一枠面F1から離れる傾斜面に形成されている。
固定部材47は、扉本体8を閉塞位置に移動させるに伴って、扉本体8の左右方向第二側Y2の端部が第一固定部57により前後方向第一側X1に案内され、扉本体8の突出部59が第二固定部58により前後方向第一側X1に案内される。
【0040】
詳細な説明は省略するが、物品搬送設備には、天井搬送車及びスライド式防火扉3を制御する制御部(図示せず)が備えられている。制御部は、第一検出部19及び第二検出部20の検出情報から扉本体8の位置を把握し、扉本体8が開放位置に位置していない場合は、天井搬送車をスライド式防火扉3の手前で停止させる。そして、制御部は、火災報知機からの火災情報に基づいて、第二操作部23の保持機構による第二ドラムに対する規制を解除するように第二操作部23を制御する。これにより、第一操作部22のバネの付勢力により扉本体8を開放位置から閉塞位置に移動する。
【0041】
2.その他の実施形態
次に、スライド式防火扉のその他の実施形態について説明する。
【0042】
(1)上記実施形態では、開放位置支持ローラ39に、外周面の形状が異なる第一部39Aと第二部39Bと第三部39Cとを備えて、開放位置支持ローラ39の外周面の形状を、前後方向Xの中央部が下方に凹入する形状としたが、開放位置支持ローラ39の外周面の形状は適宜変更してもよい。具体的には、図14に示すように、開放位置支持ローラ39の外周面の全体を、前後方向Xの何れの位置においても同じ径となる形状に形成してもよい。
【0043】
(2)上記実施形態では、閉塞位置支持ローラ40に、外周面の形状が異なる第四部40Aと第五部40Bとを備えて、閉塞位置支持ローラ40の外周面の一部のみを、前後方向第一側X1に向かうに従って径が縮小する傾斜面としたが、閉塞位置支持ローラ40の外周面の形状は適宜変更してもよい。具体的には、図15に示すように、閉塞位置支持ローラ40の外周面の全体を、前後方向第一側X1に向かうに従って径が縮小する傾斜面としてもよい。
【0044】
(3)上記実施形態では、閉塞位置支持ローラ40が接近移動機構32を兼ねたが、閉塞位置支持ローラ40が接近移動機構32を兼ねなくてもよい。具体的には、図16に示すように、閉塞位置支持ローラ40の第四部40A及び第五部40Bの夫々を、前後方向Xの何れの位置においても同じ径となる形状に形成すると共に、第四部40Aを第五部40Bに比べて大径に形成する。このように、閉塞位置支持ローラ40を構成した場合、閉塞位置支持ローラ40は、接近移動機構32としての機能は有しないが、前後方向第一側X1に移動して第五部40Bに支持された扉本体8が前後方向第二側X2に移動することを、第四部40Aにより規制できる。
【0045】
(4)上記実施形態では、前後方向X視で閉塞位置支持ローラ40と重ならない位置に固定部材47を備えたが、前後方向X視で閉塞位置支持ローラ40と重なる位置に固定部材47を備えてもよい。具体的には、図17に示すように、閉塞位置支持ローラ40の外周面の全体を、前後方向Xの何れの位置においても同じ径となる形状に形成すると共に、閉塞位置支持ローラ40の前後方向Xの幅を、扉本体8の前後方向Xの幅より狭くする。そして、閉塞位置支持ローラ40の前後方向第二側X2で、且つ、前後方向X視で閉塞位置支持ローラ40と重なる位置に、固定部材47を設ける。この固定部材47の上面を、前後方向第一側X1に向かうに従って下方に位置する傾斜面に形成することで、固定部材47により、当該傾斜面上の扉本体8を前後方向第一側X1に移動させることができる。
【0046】
(5)上記実施形態では、開放位置の扉本体8の重量と閉塞位置の扉本体8の重量との双方を支持する兼用の支持ローラ36を、閉塞位置支持ローラ40としたが、兼用の支持ローラ36を、開放位置支持ローラ39としてもよい。また、兼用の支持ローラ36を、図18に示すような、開放位置支持ローラ39の外周面の形状と閉塞位置支持ローラ40の外周面の形状との中間形状の外周面を有する中継支持ローラ60としてもよい。尚、支持ローラ群37における兼用の支持ローラ36以外の支持ローラ36の一部を中継支持ローラ60としてもよい。
【0047】
(6)上記実施形態では、案内ローラ群31は、支持ローラ群37により構成したが、支持ローラ群37とは別に、上下方向Zに沿う回転軸心周りに回転して扉本体8の前後方向Xを向く面に当接する規制ローラ群として機能する案内ローラ群31を備える構成としてもよい。この場合、案内ローラ群31は、支持ローラ群37と規制ローラ群とにより構成されてもよい。
【0048】
(7)上記実施形態では、扉本体8を左右方向Yに移動させることで、扉本体8を開放位置と閉塞位置とに移動させたが、扉本体8を上下方向Zに移動させることで、扉本体8を開放位置と閉塞位置とに移動させてもよい。
また、上記実施形態では、前後方向Xに貫通する開口部1に対して、扉本体8を、上下方向Z及び左右方向Yに沿う姿勢で設置したが、上下方向Zに貫通する開口部1に対して、扉本体8を前後方向X及び左右方向Yに沿う姿勢で設置して、左右方向Y又は前後方向Xに移動させることで、扉本体8を開放位置と閉塞位置とに移動させてもよい。
【0049】
(8)上記実施形態では、開放位置支持ローラ39の回転軸心の高さと閉塞位置支持ローラ40の回転軸心の高さとを同じ高さとしたが、開放位置支持ローラ39の回転軸心の高さと閉塞位置支持ローラ40の回転軸心の高さとを異ならせてもよい。具体的には、例えば、開放位置支持ローラ39の回転軸心の高さを、閉塞位置支持ローラ40の回転軸心の高さより高くしてもよい。このように開放位置支持ローラ39と閉塞位置支持ローラ40とを設置することで、開放位置支持ローラ39により支持される扉本体8の高さに比べて、閉塞位置支持ローラ40により支持される扉本体8の高さを低くして、扉本体8を開放位置から閉塞位置に移動させ易くすると共に、扉本体8を閉塞位置から開放位置に移動させ難くできる。
【0050】
(9)上記実施形態では、接近移動機構32として、閉塞位置支持ローラ40と動作部材46と固定部材47とを備えたが、接近移動機構32としては、これら閉塞位置支持ローラ40と動作部材46と固定部材47とのうちの少なくとも1つを備えればよい。
【0051】
(10)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0052】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明したスライド式防火扉の概要について説明する。
【0055】
また、スライド式防火扉は、開口部を有する壁体に設けられ、前記開口部を囲む開口枠部と、前記開口部を開閉する扉本体と、前記扉本体を前記壁体に沿うスライド方向に案内する案内機構と、を備え、前記案内機構は、前記スライド方向に並んで配置された複数の案内ローラにより構成されて前記扉本体を案内する案内ローラ群を備え、前記扉本体を、前記スライド方向に、前記開口部が開放される開放位置から前記開口部が閉塞される閉塞位置まで移動自在に案内し、前記扉本体は、前記壁体に対向する第一対向面を有し、前記開口枠部は、前記閉塞位置にある前記扉本体の前記第一対向面に対向する第二対向面を有し、前記案内機構は、前記扉本体が前記開放位置から前記閉塞位置へ移動するに伴って、前記第一対向面を前記第二対向面に接近させる方向に前記扉本体を移動させる接近移動機構を備えており、前記スライド方向は、水平方向に沿う方向であり、前記扉本体は、上下方向及び前記スライド方向に沿う姿勢で設置され、前記案内ローラ群は、回転軸まわりの外周面で前記扉本体の重量を支持する複数の支持ローラにより構成された支持ローラ群を含み、前記支持ローラ群には、前記開放位置において前記扉本体の重量を支持する単数又は複数の開放位置支持ローラと、前記閉塞位置において前記扉本体の重量を支持する単数又は複数の閉塞位置支持ローラと、が含まれ、前記開放位置支持ローラの外周面の形状と、前記閉塞位置支持ローラの外周面の形状とが異なり、前記閉塞位置支持ローラの外周面の少なくとも一部が、前記壁体側に向かうに従って径が縮小する傾斜面となっており、前記閉塞位置支持ローラが前記接近移動機構を兼ねていると好適である。
【0056】
この構成によれば、扉本体は、スライド方向に並んで配置された複数の案内ローラによって案内されるため、扉本体を開放位置から閉塞位置に円滑に移動させることができる。このように複数の案内ローラをスライド方向に沿って配置して扉本体を案内することで、扉本体にローラを備えた場合のように、スライド方向に沿うレールを設置しなくてもよくなるため、スライド式防火扉のコスト低下を図ることができる。
そして、扉本体は、開放位置から閉塞位置に移動するに伴って、接近移動機構により扉
本体の第一対向面が開口枠部の第二対向面に接近する方向に移動する。これによって、扉
本体と開口枠部との間の隙間を無くす又は小さくできるため、扉本体による開口部の閉塞
性を高めることができる。
このように、本構成によれば、扉本体による開口部の閉塞性を高めながらスライド式防火扉のコストを抑え易くなる。
さらに、閉塞位置に位置する扉本体は、閉塞位置支持ローラ群により支持されている。閉塞位置支持ローラは、その外周面の少なくとも一部が傾斜面となっているため、閉塞位置支持ローラ群により支持される扉本体は、傾斜面を滑り落ちて壁体側に移動し、それによって第一対向面が第二対向面に接近する。
このように構成された閉塞位置支持ローラ群は、接近移動機構としても機能する。その
ため、第一対向面を第二対向面に接近させる方向に移動させる機構を別途設ける必要がな
い。従って、接近移動機構を別途設ける場合に比べてスライド式防火扉の構成を簡略化す
ることができ、スライド式防火扉のコストを更に抑え易くなる。
【0057】
また、前記開放位置支持ローラの外周面における前記壁体側の端部の径が、前記閉塞位置支持ローラの外周面における前記壁体側の端部の径よりも大きく、前記扉本体が前記閉塞位置にある状態において前記扉本体の前記スライド方向の後端に対して前記開放位置側に最も近い位置にある前記支持ローラが前記開放位置支持ローラであると好適である。
【0058】
この構成によれば、扉本体は閉塞位置において壁体側に寄った状態では、開放位置支持ローラより小径の閉塞位置支持ローラに支持される。そして、扉本体が閉塞位置にある状態において扉本体の前記スライド方向の後端に対して開放位置側に最も近い位置にある支持ローラとして、比較的大径の開放位置支持ローラが設置されている。そのため、扉本体が閉塞位置から開放位置に向けて移動するためには、小径の閉塞位置支持ローラから比較的大径の開放位置支持ローラに乗り上げる必要があり、これによって、一旦閉塞位置に移動した扉本体が開放位置に戻ることが抑制される。
【0059】
また、前記スライド方向における前記開放位置支持ローラと前記閉塞位置支持ローラとの間に、前記開放位置支持ローラの外周面の形状と前記閉塞位置支持ローラの外周面の形状との中間形状の外周面を有する中継支持ローラが配置されていると好適である。
【0060】
この構成によれば、扉本体を開放位置から閉塞位置に移動させる場合に、扉本体は開放位置支持ローラ、中継支持ローラ、閉塞位置支持ローラの順に順次乗り移っていくが、開放位置支持ローラと閉塞位置支持ローラとの間に配置されている中継支持ローラの形状がこれらの支持ローラの形状の中間形状である。そのため、扉本体を開放位置支持ローラから直接的に閉塞位置支持ローラに載り移らせる場合に比べて、扉本体を開放位置から閉塞位置に移動する際の動きを円滑にすることができる。
【0061】
また、前記開放位置支持ローラの外周面は、軸方向の中間部の径が、軸方向の両端部の径よりも小さくなるように形成されていると好適である。
【0062】
この構成によれば、開放位置支持ローラの中間部により支持されている扉本体は、軸方向の両端部の存在により、壁体側やその反対側に移動することを抑制又は規制できる。そのため、扉本体に対して壁体側やその反対側に位置する他物に扉本体が接触することを抑制できるので、扉本体をスライド方向に移動させ易くなる。
【0063】
また、前記接近移動機構は、前記扉本体の前記閉塞位置への移動により動作する動作部材を備え、前記動作部材は、前記閉塞位置へ移動する前記扉本体に押されて動作する被動作部と、前記被動作部に連動して前記扉本体を前記壁体側へ押圧する押圧部とを備えていると好適である。
【0064】
この構成によれば、扉本体が閉塞位置に移動するに伴って、当該扉本体により被動作部が押され移動し、この被動作部の移動に連動して押圧部が移動する。そして、移動する押圧部により扉本体を壁体側に押圧することで、扉本体を壁体側に移動させることができ、扉本体による開口部の閉塞性を高めることができる。
【0065】
また、前記動作部材は、前記被動作部と前記押圧部とを連結する連結部と、前記連結部を前記壁体に対して回転可能に支持する回転支持部と、を更に備え、前記連結部における前記回転支持部に対して一方側の第一部分に前記被動作部が連結され、前記連結部における前記回転支持部に対して他方側の第二部分に前記押圧部が連結され、前記連結部は、前記第一対向面に直交する対向方向視で、前記第一部分と前記第二部分とが交差する方向に延びるように屈曲形成され、前記被動作部は、前記閉塞位置へ移動する前記扉本体に押されて移動し、前記押圧部は、前記被動作部の移動に伴う前記動作部材の前記回転支持部を中心とした揺動により、前記第一対向面とは反対側の前記扉本体の面である非対向面の縁部に当接する押圧面を備え、前記押圧面は、前記揺動による前記押圧部の移動方向に沿って前記非対向面の縁部に向かうに従って前記壁体から離れる方向に傾斜した傾斜面であると好適である。
【0066】
この構成によれば、被動作部に連動する押圧部に設けられた押圧面により、扉本体が閉塞位置へ移動するエネルギーを利用して扉本体を壁体側へ押圧して移動させることができる。従って、被動作部と押圧部とを連動させるために複雑な連動機構が必要なく、動作部材の構成を簡素にできる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示に係る技術は、開口部を有する壁体に設けられたスライド式防火扉に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1:開口部
2:壁体
7:開口枠部
8:扉本体
9:案内機構
31:案内ローラ群
32:接近移動機構
36:支持ローラ(案内ローラ)
37:支持ローラ群
39:開放位置支持ローラ
40:閉塞位置支持ローラ
46:動作部材
51:被動作部
52:押圧部
53:連結部
53A:第一部分
53B:第二部分
54:回転支持部
60:中継支持ローラ
F1:第一枠面(第二対向面)
F3:第一扉面(第一対向面)
F4:第二扉面(非対向面)
Y:左右方向(スライド方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18