(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一の実施の形態] 以下、本発明に係る第一の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0010】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る無線給電および振動抑制装置の構成例を示す図である。無線給電および振動抑制装置は、送電装置1と、受電装置2と、受電装置2が設置される振動抑制の対象物3と、を有して構成される。送電装置1は固定されており、図示はしないが外部の電源と接続されている固定部といえる。可動する制振対象物である受電装置2および制振の対象物3は、例えば回転体であって可動状態にあり、受電装置2および対象物3が一体となって回転し振動しうる構造である。また、受電装置2および対象物3は、外部電源とは接続されておらず、受電装置2内の回路は全て送電装置1から無線給電される電力によって動作する。無線給電および振動抑制装置は、受電装置2内に内蔵される制振部23によって対象物3の振動を抑制するものであり、例えば、電動ドリル等の振動抑制機能の恩恵を受けやすい回転工具である。
【0011】
[動作の説明]まず、本実施形態における送電装置1の動作を説明する。送電装置1のデータ受信部13は、後述する受電装置2のデータ送信部26から非接触通信で送信されるデータを受信する。送受信されるデータは制振の対象物3の振動量を測定したセンサデータであり、受信された振動量のデータは制御回路14に入力される。
【0012】
次に、送信波生成部15は、無線給電の電力伝送に用いられる送信波を生成する。無線給電の方式は、いわゆる電磁誘導方式または磁界共鳴方式のどちらの方式を用いてもよく、例えば磁界共鳴方式であれば6.78MHz(メガヘルツ)や13.56MHzの周波数が一般的に用いられている。送電装置1ならびに受電装置2の設計要件に応じて、無線給電方式や周波数を選定する事ができる。送信波生成部15からの出力電圧は一定であり、電圧変化部11において、制御回路14の制御信号に応じて電圧が変化される。制御回路14で生成する制御信号については後述する。
【0013】
電圧変化部11で生成された電圧変化する送信波は、送信コイル12に入力され、無線給電の送信波として受電装置2に対して放射される。送信コイル12は、磁界共鳴方式であれば、コイルの共振周波数が送信周波数と一致するように、インダクタンス値と付加キャパシタンス値が設計されており、受電装置2の受信コイル21と共振することで高効率な無線給電が可能となる。なお、送信コイル12は、コイルに限られず、磁気アンテナであればよい。
【0014】
次に、受電装置2の動作を説明する。受電装置2の受信コイル21は、前述したように送電装置1の送信コイル12から放射された電力を受信する。受信コイル21は、磁界共鳴方式であれば、送信コイル12と同様に、コイルの共振周波数が送信周波数と同一となるようにインダクタンス値と付加キャパシタンス値が設計されている。なお、受信コイル21は、コイルに限られず、磁気アンテナであればよい。
【0015】
受信コイル21で受信された受信波は、送信周波数を有する交流である。そのため、検波整流部22において検波整流を行い、直流電力を取り出す。本発明では検波整流部22の種類には特に制約は無く、例えば一般的な全波整流回路を用いればよい。
【0016】
ここまでの送電装置1および受電装置2の動作について、
図3を用いて送信波形の説明を補足する。
図3は、送信装置および受信装置の内部動作波形を示す図である。
図3において、(a)は送信波生成部15で生成した送信波を示しており、中心値となるグラウンドからの振幅電圧はVaである。この生成送信波が電圧変化部11で特に変化を受けず、そのまま送信コイル12で送信されると仮定する。
【0017】
受信コイル21は送信コイル12からの送信波を受信し、
図3(b)に示す受信波を検波整流部22に入力する。通常、このときの振幅電圧VbはVaと同一ではなく、伝送効率や受電側インピーダンスにより異なる電圧となる。もし伝送効率も受電側インピーダンスも変化しない場合は、送信波の振幅電圧Vaと受信波の振幅電圧Vbは比例関係となる。続いて
図3(b)の受信波を検波整流部22で整流することにより、
図3(c)に示す電圧Vcの直流である整流後波形を取出す事ができる。
【0018】
ここで、
図1の説明に戻る。検波整流部22の出力、すなわち
図3(b)に示す整流後波形は、制振部23に入力される。制振部23は、制振の対象物3に固定されており、対象物の振動と逆方向に力(加速度)を発生させる事により対象物3の振動を抑制する機能を持つ装置である。本発明では制振部23の種類を特に限定しないが、例えばボイスコイルやピエゾ素子を適用することができる。また、本発明の制振部23は電圧駆動型の装置を想定しており、入力する電圧に応じて振動抑制量が変化する。すなわち、入力される整流後波形の電圧が高ければ振動抑制量が大きく、低ければ振動抑制量が小さい。
【0019】
本実施形態においては、検波整流部22が生成する整流後波形を電圧変換して所望の入力電圧を得るのではなく、整流後波形を直接、制振部23に入力する。そのため、受電装置2の回路規模を大きくすることなく電圧駆動型の制振装置を利用できる。
【0020】
さらに動作を説明すると、検波整流部22の出力である整流後波形は、定電圧生成部24にも入力される。定電圧生成部24は、振動センサ等のセンサ25およびデータ送信部26の動作に必要な電源定電圧を整流後波形から生成し供給する。このとき、生成する電圧は必ずしも1つの電圧に限定されるものではなく、もしセンサ25とデータ送信部26の電源電圧が異なる場合は、定電圧生成部24は、それぞれに必要な電圧を生成する。センサ25およびデータ送信部26が複数の電源電圧を必要とするときも、定電圧生成部24は、それぞれの定電圧を生成する。
【0021】
センサ25は、対象物3に固定されており、対象物3の振動を測定しその振動量をデータとしてデータ送信部26に入力する。データ送信部26は、入力されたデータを無線通信方式を用いて送信する。データ送信部26は、送電装置1のデータ受信部13に対しデータを送信する。また、センサ25の種類は振動計測に限定されるものではなく、結果的に制振部23の制御信号を生成できるデータが計測できればよい。例えば対象物3のひずみを測定して制振に利用することも考えられる。
【0022】
以上、第一の実施形態に係る無線給電および振動抑制装置の構成と動作を説明した。ここで、振動抑制装置の目的である対象物3の振動を抑制する動作について、
図4を用いて詳細に説明する。
【0023】
図4は、送信装置および受信装置の内部動作波形を示す図である。
図4(a)に示すグラフは、センサ25で測定した対象物3の振動データを示している。
図4(a)は、横軸は時間、縦軸が振動量である。時間経過とともに振動量がほぼ正弦波として変動しており、負の方向に一定のバイアスがかかっている。この振動を抑制するには、制振部23を、振動している方向と逆方向に作動させればよい。したがって、
図4(a)と逆位相となるような
図4(b)の作動を制振部23で発生させる、すなわち
図4(b)で示す電圧を制振部23に入力すれば、制振できる。
【0024】
そのためには、まず送電装置1の制御回路14において、
図4(a)の波形から
図4(b)の波形を生成する必要がある。このような波形の生成のための制御回路14の一例を、
図2に示す。
【0025】
図2は、本発明に係る制御回路の構成例を示す図である。
図2において、入力部1400は、データ受信部13からの入力を受け付ける。出力部1401は、電圧変化部11への出力を行う。データ受信部13から入力されたデータは、積分器140で積分され、アンプ141において所定のゲインで増幅される。さらにハイパスフィルタ142およびローパスフィルタ143において、センサ25で取得したデータのうち制御に不要な帯域のノイズを除去する。
【0026】
続いて、アンプ144において所定のゲインでセンサデータを増幅し、ハイパスフィルタ145を通して積分器146で積分を行なう。そして、ハイパスフィルタ147、ローパスフィルタ148を通り、出力部1401より制御信号として出力される。ハイパスフィルタ145、147およびローパスフィルタ148は、最終的に制振部23に信号を入力する段階で、制振部23の動作周波数帯域外であって不要な帯域の信号を除去するために用いられている。上記で説明した制御回路14の構成は一例であり、発生している振動を抑制するような制御信号を生成する他の構成を用いてもなんら問題はない。
【0027】
ここまでにおいて説明したように、制御回路14において、データ受信部13で受信した
図4(a)に示す振動データを用いて、制振部23に入力すべき制御信号(
図4(b)の信号)を生成する。もし、送電装置1と受電装置2が有線接続されている場合であれば、
図4(b)信号を直接、制振部23に入力すればよい。しかしながら本発明は送電装置1と受電装置2が有線接続できない環境であることを前提としており、そのために無線給電動作を経由して制御信号
図4(b)を受電装置2に伝達する。
【0028】
図4(c)は、送信波生成部15で生成された搬送波となる送信波の波形である。
図4(c)に示される波形は、振幅電圧Vaの所定の周期を有する定周波数であり、所定の電圧の波形である。電圧変化部11において、
図4(b)に示した制御信号に応じて
図4(c)に示した送信波の電圧を変化させ、
図4(d)に示した電圧変化後送信波が生成される。生成された
図4(d)の電圧変化後送信波は、送信コイル12に入力される。このとき、
図4(d)の包絡線が
図4(b)と一致することとなる。
【0029】
送信コイル12から送信波が送信された以降の動作については、
図3を用いて行った説明と同様であり、受電装置2の受信コイル21で受信された受信波は、検波整流部22で整流され、整流後波形である
図4(e)が制振部23に入力されることとなる。本来、制振部23に
図4(b)の制御信号が入力されれば、制振部23が
図4(a)に示した振動を打ち消す方向に作動し、対象物3の振動を抑制する事ができるものである。
【0030】
ここで、
図4(b)と
図4(e)の波形を比較すると、
図4(b)の最大電圧V141と、
図4(e)の最大電圧V221とは、同一とは限らない。また、
図4(b)の最小電圧V142と、
図4(e)の最大電圧V222とについても、同一とは限らない。これは
図3を用いて説明したように、送信波電圧と受信波電圧が伝送効率や受電側インピーダンスとの関係によって変動するためである。この場合、
図4(b)が制振部23に入力されれば理論上は完全に対象物3の振動を抑制することができるが、
図4(e)の電圧は
図4(b)と若干異なるため、対象物3の振動が完全には抑制されず残ることになることが懸念される。
【0031】
しかしながら、対象物3に残存した振動は、センサ25で振動量を計測されることとなり、振動データはデータ送信部26およびデータ受信部13を経由して制御回路14に伝達され、制御回路14において再び制振のための制御信号が演算される。そして、制御信号は電圧変化部11、送信コイル12、受信コイル21、検波整流部22を経由して制振部23に入力され、制振動作がなされる、というフィードバックループが形成されている。
【0032】
このフィードバックループによって、
図4(e)が完全に振動を抑制するのに必要な電圧となるように、
図4(b)の電圧が生成されるように収束していくため、
図4(e)に示した整流後波形を用いて制振部23によって対象物3の振動を抑制することができる。
【0033】
また、センサ25で計測した振動量データを用いて制御回路14で制御信号を生成し、電圧変化部11において電圧を変化させることで、送電装置1から受電装置2に無線給電する電力量が変化するため、消費する電力の変動が大きな制振部23を用いることが可能となり、振動抑制量の制約を少なくすることができる。
【0034】
さらに、検波整流部22の整流後波形の電圧が
図4(e)に示すように変動しても、定電圧生成部24は、センサ25およびデータ送信部26に対し必要な電源電圧を常時供給できるため、センサ25およびデータ送信部26は常時、正常動作が可能である。
【0035】
以上は、伝送効率や受電側インピーダンスの変動が発生しない場合に、
図4(e)に示した整流後波形を用いて制振部23によって対象物3の振動を抑制できることを説明した。
【0036】
これに加え、本発明においては、伝送効率や受電側インピーダンスが変動するとしても、特定の条件下では対象物3の振動を抑制する事が可能である。その詳細を以下説明する。
【0037】
例えば、対象物3およびそれに付随する受電装置2が回転体の場合、伝送効率が回転に応じて変動することが予想される。伝送効率の変動は、送信コイル12と受信コイル21間の距離の変動、送信コイル12と受信コイル21の偏心による相対的な位置ずれ、送信コイル12および受信コイル21の形状の非対称性などによって、送信コイル12と受信コイル21の結合係数が変動することで発生し、変動の周波数は回転周波数と同一となる。
【0038】
また、送信コイル12および受信コイル21上に異物が付着することでも結合係数が変動する。このような場合には、
図3(a)の振幅電圧Vaと
図3(b)の振幅電圧Vbの比率が回転周波数に応じて変動する事になる。
【0039】
一方で、
図4(a)に示した対象物3の振動周波数は、一般的には回転周波数と振動発生要因数の乗算となると考えられる。例えば対象物3が回転切削工具であれば、切削用の切歯が振動発生要因に相当する。回転数100Hz、切歯の歯数が10と仮定すると、100Hz×10=1000Hzを基本周波数とした振動が発生すると予想される。この1000Hzの振動が発生していることをセンサ25で正しく計測するためには、標本化定理より振動周波数の2倍以上のサンプリング周波数で計測することが必要である。言い換えると、本発明が正しく動作する、センサ25の最小サンプリング周波数は、回転工具の回転数と切歯の歯数と2を乗算した数である。なお、振動発生要因が明確でない場合、例えば振動抑制の対象物3が単なる回転体の場合には、回転周波数の2倍以上のサンプリング周波数で計測するのが良い。
【0040】
上記の最小サンプリング周波数を用いてセンサ25で振動を計測すれば、振動量を正しく把握でき、振動周波数の方が伝送効率の変動周波数より速いことから、上記のような回転切削工具においてはフィードバックループによる制御回路14が生成する制御信号の収束が期待でき、制振部23で対象物3の振動を抑制する事ができる。
【0041】
以上、第一の実施形態に係る送電装置1および受電装置2について具体的に説明した。第一の実施形態に係る送電装置1および受電装置2によれば、電圧制御型の振動抑制部品を適用可能となる無線給電で動作する振動抑制装置を提供することができる。本発明は第一の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。続いて、本発明の第二の実施形態について
図5を用いて説明する。
【0042】
[第二の実施の形態]
図5は、本発明の第二の実施形態に係る無線給電および振動抑制装置の構成例を示す図である。
図1に示した第一の実施形態と異なる点は、電圧監視部243と、充電部244と、二次電池240と、第一のスイッチ241と、第二のスイッチ242、および受電側の制御回路200が追加され、定電圧生成部24に供給する電力を二次電池に切り替え可能とした点である。
【0043】
第一の実施形態では、検波整流部22が生成した整流後波形を定電圧生成部24に直接入力していた。このため、もし整流後波形の電圧が定電圧生成部24の入力電圧以下となった場合は、定電圧生成部24がセンサ25およびデータ送信部26に電源を供給することができなくなる。そのため、センサ25およびデータ送信部26が動作できないという問題が発生しえた。第二の実施の形態においては、整流後波形の電圧が低下した時に備えて二次電池240が追加され、定電圧生成部24の動作に支障が出ないようになっている。以降、第二の実施形態の動作フローについて、
図6を用いて説明する。
【0044】
図6は、本発明の第二の実施形態に係る動作フローを示す図である。
図5において図示はされていないが、受電側の制御回路200は、電圧監視部243、充電部244、二次電池240、第一のスイッチ241、第二のスイッチ242のそれぞれと接続しており、各部あるいは各回路の状態判別と、各部あるいは各回路の制御を行うことができる。
【0045】
まずは、受電側の制御回路200は、ステップS2401で動作を開始すると、まず、初期状態として第一のスイッチ241を「OFF」、第二のスイッチ242を「ON」にそれぞれ設定し、定電圧生成部24には二次電池240からの電源供給を開始する(ステップS2402)。
【0046】
続いて、受電側の制御回路200は、割込み許可状態にフラグを設定する(ステップS2403)。ここで、受電側の制御回路200が許可する割込み処理は、ステップS2421〜S2424に示す割込み処理である。ここで、割込み処理に関して、説明する。
【0047】
割込みの条件は、検波整流部22の出力電圧Vcを電圧監視部243において常時監視しておき、定電圧生成部24の定格最低入力電圧VdcdcよりVcが低い電圧となることである(ステップS2421)。
【0048】
割込みの条件を満たすと、受電側の制御回路200は、充電部244から二次電池240に充電している動作を停止する(ステップS2422)。そして、受電側の制御回路200は、第一のスイッチ241を「OFF」、第二のスイッチ242を「ON」に設定し、定電圧生成部24には二次電池240から電源供給するようにする(ステップS2423)。この動作は、
図4(e)のV222が非常に低電圧となった状態に相当し、その場合には定電圧生成部24の電源供給を二次電池240に切り替えて、定電圧生成部24の出力電圧が正常に継続されることを目的としている。最後にステップS2424で割込み処理は終了する。
【0049】
メインフローに戻ると、受電側の制御回路200は、検波整流部22の出力電圧Vcと、二次電池240の充電可能電圧Vcharge(Vchargeは、二次電池240の充電に最低限必要な電圧)とを比較する(ステップS2404)。
【0050】
VcがVchargeと同じか下回る場合(ステップS2404で「no」の場合)には、Vcの電圧不足で二次電池240への充電動作はできないため、受電側の制御回路200は、Vcが上昇するまで待ち状態に入る。
【0051】
VcがVchargeを上回る場合(ステップS2404で「yes」の場合)には、受電側の制御回路200は、ステップS2405に制御を進める。なお、定電圧生成部24と充電部244の両方が動作できないという状態が発生するのを防止するため、VchargeよりVdcdcの方が低い電圧となるように設計する必要があることはいうまでもない。
【0052】
受電側の制御回路200は、二次電池240が満充電状態かどうかを検出する(ステップS2405)。満充電状態の場合(ステップS2405にて「yes」の場合)には、受電側の制御回路200は、充電は不要であるとしてステップS2404に制御を戻す。
【0053】
満充電状態でない場合(ステップS2405にて「no」の場合)には、受電側の制御回路200は、第一のスイッチ241を「ON」、第二のスイッチ242を「OFF」に設定し、定電圧生成部24には検波整流部22から電源供給させる。
【0054】
そして、受電側の制御回路200は、充電部244を動作させ、二次電池240を充電させる(ステップS2407)。
【0055】
続いて、受電側の制御回路200は、二次電池240が満充電状態かどうかを判定する(ステップS2408)。満充電状態でない場合(ステップS2408において「no」の場合)には、受電側の制御回路200は、所定の時間経過後に、ステップS2408へ制御を戻す。
【0056】
満充電状態である場合(S2408において「yes」の場合)には、受電側の制御回路200は、充電部244を停止させ、二次電池240の充電を終了する(ステップS2409)。そして、受電側の制御回路200は、制御をステップS2404へ戻す。
【0057】
以上説明した処理のフローにより、検波整流部22の出力電圧が低下した場合は二次電池240の出力を定電圧生成部24に供給することにより、定電圧生成部24は安定してセンサ25およびデータ送信部26に電源供給を行うことができる。
【0058】
[第三の実施の形態] 続いて、本発明の第三の実施形態について
図7および
図8を用いて説明する。
【0059】
図7は、本発明の第三の実施形態に係る無線給電および振動抑制装置の構成例を示す図である。
図1に示した第一の実施形態と異なる点は、送電装置1において電圧変化部11を設けず、送信コイル12を可変送信コイル120に変更した点である。
【0060】
上述のように、送信コイル12と受信コイル21間の伝送効率が変化すると、
図3(a)に示した送信コイル12の振幅電圧Vaと
図3(b)に示した受信コイル21の振幅電圧Vbとの比率が変化する。第三の実施形態においては、この現象を利用し、送信コイル12を可変送信コイル120に置き換えて可変送信コイル120と受信コイル21間の伝送効率を意図的に変化させ、受信コイル21の受信する振幅電圧を変化させる。可変送信コイル120の例を
図8に示す。
【0061】
図8は、本発明の第三の実施形態に係る可変送信コイルの構成例を示す図である。
図8(a)は、入力端子1201、可変コンデンサ1202およびコイル1200から構成されている例である。可変送信コイル120は直列型共振回路となっており、共振周波数fは可変コンデンサ1202のキャパシタンス値Cとコイル1200のインダクタンス値Lから、式(1)で求められる。
【0063】
磁界共鳴方式の無線給電の場合、可変送信コイル120の共振周波数と受信コイル21の共振周波数を同一とした場合が最も伝送効率が高く、共振周波数が相違すると伝送効率が下がる。そこで、
図4(b)に示した制御電圧V141が最大となる状態で、共振周波数が同一となるように可変コンデンサ1202のキャパシタンス値Cを設定し、
図4(b)のV142のように制御電圧が低い場合は可変コンデンサ1202のキャパシタンス値Cを変更して可変送信コイル120の共振周波数を意図的に受信コイル21の共振周波数と相違させる。
【0064】
受信コイル21側では、可変送信コイル120と同一の共振周波数の場合に最も伝送効率が高く、受信波形の電圧も最も高くなり、可変送信コイル120の共振周波数がずれると伝送効率が低下する。そのため、可変送信コイル120の共振周波数を意図的に受信コイル21の共振周波数と相違させると、受信波系の電圧も低下する。したがって、上記のような制御を行うことにより、可変送信コイル120に入力する波形は
図4(c)のような一定電圧としたまま、受信コイル21の受信波形を
図4(d)のように変化させる事が可能となる。
図4(d)の受信波形が得られることで、第一の実施の形態と同様に、検波整流部22で整流し整流後波形である
図4(e)を制振部23に入力することにより、対象物3の振動を抑制する事ができる。
【0065】
また、
図8(b)は、可変送信コイル120の別の構成例であり、入力端子1201、高周波スイッチ1204、コンデンサ群1205およびコイル1200から構成される。コンデンサ群1205はキャパシタンス値の異なるコンデンサが複数並列に接続されたもので、各コンデンサのうち一つまたは複数を高周波スイッチ1204で接続状態とすることで高周波スイッチ1240とコンデンサ群1205からなる総キャパシタンス値を離散的に変更する事ができる。したがって、
図8(a)と同様の制御を行うことにより、可変送信コイル120に入力する波形は
図4(c)のような一定電圧としたまま、受信コイル21の受信波形を
図4(d)のように変化させ、検波整流部22の整流後波形である
図4(e)の波形を制振部23に入力することにより、対象物3の振動を抑制する事ができる。
【0066】
以上、可変送信コイル120の構成と動作について説明した。すなわち、電圧変化部11を用いずに、可変送信コイル120を用いることで、同様の効果を得ることができる。ただし、この例に限られず、可変送信コイル120は、入力波形を
図4(c)のような一定電圧としたまま、受信コイル21の受信波形を
図4(d)のように変化しうるならば、異なる構成としてもよい。例えば、可変コンデンサ1202を固定キャパシタンス値の固定コンデンサに変更し、コイル1200のインダクタンス値を可変とすることが考えられる。この例としては、コイル1200の両端以外に中間にも接点を配し、スイッチにより接点を変更することでインダクタンス値を変更可能とする構成が考えられる。以上が、第三の実施の形態である。
【0067】
[第四の実施の形態] 続いて、本発明の第四の実施形態について
図9、10、11を用いて説明する。
【0068】
図9は、本発明の第四の実施形態に係る無線給電および振動抑制装置の構成例を示す図である。
図1に示す第一の実施形態と異なる点は、送電装置1において、制御回路14で生成した制御信号の極性を変換する片極性変換部16を追加し、受電装置2において、整流後波形の極性を変換する両極性変換部27を追加した点である。より詳細な構成と動作を、
図10および
図11を用いて説明する。
【0069】
図10は、本発明の第四の実施形態に係る無線給電および振動抑制装置の詳細な構成例を示す図である。まず、送電装置1には片極性変換部16が追加されている。この片極性変換部16は、電子回路により構成され、制御回路14の出力がプラス側電圧とマイナス側電圧、すなわち両極性の電圧を持つ信号である場合に、その出力をプラス側電圧のみの片側極性の信号に変換する回路である。
【0070】
図11は、本発明の第四の実施形態に係る内部動作波形を示す図である。
図11(a)は、
図4(a)と同じく、センサ25で測定した制振の対象物3の振動データを示している。
図11(a)においても、横軸は時間、縦軸が振動量である。時間経過とともに振動量がほぼ正弦波として変動している点では
図4(a)と同じであるが、中心すなわち対象物の重心を跨いだ振動が発生している状態を示している点で異なる。この状態で、対象物3の振動を抑制するには、
図11(b)で示す電圧を制振部23に入力すればよい。
【0071】
そのためには、マイナス側電圧を含んだ波形を受電装置2内で生成する必要があるが、
図1に示した検波整流部22はプラス側電圧しか生成することができない。この問題を解決するため、
図11(b)の波形をプラス電圧側にオフセットしてプラス側電圧のみの制御信号に変換、無線給電後に受電装置2側でマイナス電圧側にオフセットすることで両極性信号を得る構成とする。
【0072】
まず、片極性変換部16において、
図11(b)の制御信号に対しプラス電圧を加算し、制御信号全域がプラス側となるような
図11(c)に示した片極性制御信号に変換する。続いて、電圧変化部11において、
図11(c)に示した制御信号に応じて
図11(d)に示した送信波の電圧を変化させ、
図11(e)に示した電圧変化後送信波を生成し、送信コイル12に入力する。このとき、
図11(e)の包絡線が
図12(c)に一致する。
【0073】
受電装置2では、受信コイル21および検波整流部22までの動作は第一の実施形態と同様である。検波整流部22が生成した整流後波形は
図11(f)で示されるものであり、定電圧生成部24に入力されるとともに、正電圧生成部290、負電圧生成部291および減算部292に入力される。
【0074】
減算部292は、その内部構成の回路が後述する
図13に示されている。減算部292は、プラス電源とマイナス電源を持ち、第一の入力の電圧から第二の入力の電圧を減算した結果を出力する回路である。入出力電圧の関係は、下式(2)で示される。なお、Voは出力電圧、V1は第一の入力の電圧、V2は第二の入力の電圧である。
【0075】
V=Ro/Ri×(V1−V2)・・・式(2)
【0076】
正電圧生成部290および負電圧生成部291は、減算部292のプラス電源およびマイナス電源にそれぞれ必要な所定の電圧を生成し、供給する。例えば、減算部292の必要電源が±15V(ボルト)であれば、正電圧生成部290は+15Vを常時出力し、負電圧生成部291は−15Vを常時出力する。また、負電圧生成部291の生成電圧は減算部292の入力2にも入力される。したがって、式(2)に従い、
図12(f)に示した整流後波形から一定の電圧を減算する事により、
図12(g)の制御信号を得る事ができる。この
図12(g)の制御信号を制振部23に入力することにより、対象物3の振動を抑制する事ができる。
【0077】
以上説明したように、本発明に係る第四の実施形態によれば、マイナス側電圧を含んだ波形を生成し、制振部23を動作することができるため、制振部23に両極性入力の特性を有する制振装置を用いることが可能となる。
【0078】
[第五の実施の形態]
図9で示した本発明の第四の実施形態の変形例となる第五の実施形態について、
図12〜14を用いて説明する。
【0079】
図12は、本発明の第五の実施形態に係る無線給電および振動抑制装置の詳細な構成例を示す図である。送電装置1の構成および動作は第四の実施形態と同様であるため、説明を省略する。第四の実施形態と相違する点は、受電装置2において、受信コイル21がセンタータップ受信コイル210に変更されている点と、負電圧生成部291が平滑部293に変更されている点である。センタータップ受信コイル210および検波整流部22のより詳細な回路構成を、
図13を用いて説明する。
【0080】
図13は、本発明の第五の実施形態に係る受電装置の詳細な構成例を示す図である。
図13において、センタータップ受信コイル210は、コイルの中点を引き出して受電装置2のグラウンドとし、コイル両端を検波整流部22に接続されている。この接続により、検波整流部22は整流後波形としてプラス電圧とマイナス電圧を出力することができる。すなわち、センタータップ受信コイル210は、送信コイル12から送信される送信波を受電して、電位基準点と、当該電位基準点よりも高い電圧と、当該電位基準点よりも低い電圧と、を出力する両極性受電磁気アンテナであるといえる。
【0081】
図14は、本発明の第五の実施形態に係る内部動作波形を示す図である。
図14(f)がプラスの整流後波形、
図14(g)がマイナスの整流後波形を示しており、センタータップ受信コイルの受信波形である
図14(e)のプラス側の包絡線検波整流波形とマイナス側の包絡線検波整流波形となる。
【0082】
平滑部293は、
図13にその構成の一例を示すが、ダイオード、コイルおよびコンデンサで交流波形を直流波形に変換する回路である。平滑部293は、
図14(g)に示したマイナス側整流後波形を平滑化し、点線で示した電圧−V82の一定マイナス電圧を出力する。この一定マイナス電圧は、減算部292のマイナス電源に供給されるとともに、減算部292の入力2にも入力される。したがって、式(2)に従い
図14(f)に示した整流後波形から一定の電圧を減算する事により、
図14(h)の制御信号を得る事ができる。この
図14(h)の制御信号を制振部23に入力することにより、対象物3の振動を抑制する事ができる。
【0083】
本実施形態によれば、マイナス側電圧を含んだ波形を生成し、制振部23を動作することができるため、制振部23に両極性入力の特性を有する装置を適用することが可能となる。
【0084】
[第六の実施の形態] 続いて、本発明の第六の実施形態について、
図15を用いて説明する。
【0085】
図15は、本発明の第六の実施形態に係る制振装置の構成例を示す図である。第四および第五の実施形態では、
図11(a)に示したような中心を跨いだ振動が発生している状態に対して、送電装置1において制御信号を片極性変換して無線給電し、受電装置2において両極性に変換することで対応していた。この場合の制振部23の構成は、
図15(a)に相当するようなモデルとして考えられる。
【0086】
図15(a)では、制振の対象物3の内部に、制振用の質量部材230が、弾性体であるバネ部231、減衰部232および作動部233を介して接続されている。作動部233に制御信号を入力するとその電圧に応じた作動力が発生し、その作動力とバネ部231および減衰部232の時定数によって振動量および時間変化が決定する。
【0087】
通常は、作動部233に何も入力しなくとも対象物全体のバランスが取れるように、制振用質量部材230の中心(重心)は対象物3の中心線に合わせて設置される。この場合、発生する振動は
図11(a)に示したように中心を跨ぐ振動となり、作動部233に入力すべき制御信号は両極性が要求される。
【0088】
これに対して、第六の実施形態においては、
図15(b)に示すように、制振用質量部材230の中心(重心)を対象物3の中心線からオフセットさせて設置する。この場合、対象物3と制振部23の全体のバランスをとって振動を抑制するためには、作動部233において常にある程度の作動量を発生させ、制振用質量部材230を対象物3の中心線に移動させる必要がある。すなわちこれは、必要とする制御信号は
図4(b)に示したような、片極性の信号のみを必要とするため、第一の実施形態に示したような片極性のみに対応した回路構成であっても、問題なく対象物3の振動を抑制する事が可能となる。
【0089】
さらに、上記した実施形態は、受電装置2および制振の対象物3が回転体である例を説明してきたが、必ずしも回転体に限定されるものではない。例えば、送電装置1に対して受電装置2が回転しないが相対位置が変化する構成においても有効である。
図16に送電装置1と受電装置2の相対位置変化の一例を示す。
【0090】
図16は、送電装置と受電装置の相対位置が変化する構成の例を示す図である。
図16(a)が定常状態であり、
図16(b)は受電装置2が送信コイル12と受信コイル21の距離が変化する方向に移動しうる状態を、
図16(c)は受電装置2が送信コイル12と受信コイル21の中心がずれる方向に移動しうる状態を示す。
図16(b)や
図16(c)の状態では、送電コイル12と受信コイル21の距離や相対位置が変化することで結合係数も変動するが、結合係数の変動より早くセンサ25のサンプリングを行うことにより、振動を抑制することが可能となる。また、送電装置1と受電装置2の相対位置が変化しない場合においても、上記実施形態と同様の制御を行なうことで振動を抑制する効果が得られることは言うまでもない。
【0091】
上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、削除をすることも可能である。
【0092】
また、上記の各部、各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各部、各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0093】
なお、上述した実施形態にかかる制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えても良い。以上、本発明について、実施形態を中心に説明した。