【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0035】
(毛髪用組成物)
毛髪用組成物1として、ビサボロールを0.05質量%、デカメチルシクロペンタシロキサンを99.95質量%配合したものを調製した。毛髪用組成物2として、グルコシルヘスペリジンを0.0001質量%、水を99.9999質量%配合したものを調製した。
【0036】
(毛髪処理1a、1b、2a、2bにおける処理対象毛束)
10代〜20代の日本人女性5名から、ヘアカラー処理及びパーマ処理を行ったことがない毛髪をそれぞれ0.2g採取し、毛束として準備した。この毛束を、アニオン界面活性剤が配合されたシャンプーを用いて洗浄し、乾燥させた。この乾燥後の毛束を、下記毛髪処理1a、1b、2a、2bにおける処理対象毛束とした。
【0037】
(毛髪処理3a、3b、3c、3dにおける処理対象毛束)
10代〜20代の日本人女性から、ヘアカラー処理及びパーマ処理を行ったことがない毛髪をそれぞれ0.2g採取した(毛髪処理3a、3bでは、日本人女性3名から採取し、毛髪処理3cでは、日本人女性2名から採取し、毛髪処理3dでは、日本人女性4名から採取した。)。この毛束を、毛髪処理3a〜3dにおける処理対象として準備した。この毛束を、アニオン界面活性剤が配合されたシャンプーを用いて洗浄し、乾燥させた。この乾燥後の毛束を、下記毛髪処理3a、3b、3c、3dにおける処理対象毛束とした。
【0038】
(毛髪処理1a、1b)
上記毛束に対して、次の(1)から(3)までの処理を360回行った。下記(1)において、毛髪用組成物1を使用した処理を毛髪処理1aとし、デカメチルシクロペンタシロキサンを使用した処理を毛髪処理1bとした。
(1)0.2gの毛束に対して、毛髪用組成物1又はデカメチルシクロペンタシロキサンを約0.04g滴下。
(2)毛束を、90〜105℃の恒温槽内に3分間放置。
(3)毛束を水洗。
【0039】
(毛髪処理2a、2b)
上記毛髪処理1a、1bにおける(1)を下記の通りとした以外は、毛髪処理1a、1bと同様にして、毛髪処理2a、2bを行った。下記(1)において、毛髪処理2aでは、毛髪用組成物2を使用し、毛髪処理2bでは、水を使用した。
(1)0.2gの毛束を、毛髪用組成物2又は水に浸漬。
【0040】
(毛髪処理3a)
上記毛束に対して、次の(1)から(3)までの処理を360回行った。
(1)0.2gの毛束に対して、毛髪用組成物1を約0.04g滴下し、塗布。
(2)毛束を、90〜105℃の恒温槽内に3分間放置。
(3)毛束を水洗。
【0041】
(毛髪処理3b)
上記毛束に対して、次の(1)から(3)までの処理を360回行った。
(1)0.2gの毛束を、毛髪用組成物2に浸漬。
(2)毛束を、90〜105℃の恒温槽内に3分間放置。
(3)毛束を水洗。
【0042】
(毛髪処理3c)
上記毛束に対して、次の(1)から(4)までの処理を360回行った。
(1)0.2gの毛束を、毛髪用組成物2に浸漬。
(2)毛束に対して、毛髪用組成物1を約0.04g滴下し、塗布。
(3)毛束を、90〜105℃の恒温槽内に3分間放置。
(4)毛束を水洗。
【0043】
(毛髪処理3d)
上記毛髪処理3aにおける(1)を省略した以外は、毛髪処理3aと同様にして、毛髪処理3dを行った。
【0044】
(カルボニル化の抑制評価)
毛髪のカルボニル化の程度(カルボニル化度)は、特開2015−210263号公報で開示の蛍光測定を用いる方法により、評価可能である。この方法を使用し、「毛髪処理1bの毛束のカルボニル化度」に対する「毛髪処理1a後の毛束のカルボニル化度」、及び「毛髪処理2bの毛束のカルボニル化度」に対する「毛髪処理2a後の毛束のカルボニル化度」を算出し、カルボニル化の抑制評価を行った。
【0045】
なお、上記カルボニル化度の評価は、詳しくは、以下の「毛髪溶液調製」、「標識」、「回収」、及び「測定」の手順により行ったものである。
【0046】
毛髪溶液調製
DL−ジチオスレイトールが50mM、ウレアが8M、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩が50mMであるpH7.5の水溶液を調製した。この水溶液50mlに、細断した毛束0.2gを浸漬してから、50℃、2日間の条件で水溶液を振とうさせた。その後、水溶液の上澄み液を取り出し、市販の総タンパク質定量キットを使用して、毛髪から抽出されたケラチンが40μg/lである毛髪溶液(I)を調製した。
【0047】
標識
20μMのフルオレセイン−5−チオセミカルバジドを、溶液(I)に対して等容量加えた。この後、溶液(I)を暗所内にて室温で1時間振盪させた。
【0048】
回収
上記標識手順を経た溶液(I)に9倍容量のアセトンを加えた後に、激しく撹拌してから暗所内で1時間放置した。次に、遠心を行って不溶化したケラチンを沈殿させてから、液相部を除去した。そして、ケラチンを含む固体部にアセトンを加え、上記同様、撹拌、遠心、液相部の除去を行ってから、ケラチンを回収した。
【0049】
測定
上記の回収したケラチンに、300μlの50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(pH7.5)を加えて溶液(II)を調製した。この溶液(II)の蛍光測定を、コロナ電気社製「マイクロプレートリーダSH−9000」を使用して行い、蛍光強度の値を得た。このときの測定条件は、励起波長:485〜495nm、測定蛍光波長:538nm、ホトマル電圧:High設定、半値幅:12nm、測定感度:X1とした。
【0050】
上記蛍光測定で得られた値(蛍光強度)の平均値を、カルボニル化の抑制評価のために使用する値とした。その平均値は、5名から採取した毛束の平均値であり、各毛束の蛍光強度は、毛髪溶液調整で得られた溶液(I)から3回採取し、測定した蛍光強度の平均とした。
【0051】
下記表1に、カルボニル化の抑制評価の結果を示す。表1において、「カルボニル化の抑制」の数値が1未満であればカルボニル化が抑制されたことを意味し、ビサボロール又はグルコシルヘスペリジンにより、カルボニル化を抑制できたことを確認できる。
【0052】
【表1】
【0053】
(初期弾性率の評価1)
初期弾性率の測定は、次の通り行った。毛髪一本につき、20mmの長さでカットし、両端にテープを貼りつけた。その毛髪の毛径を測定した後、この毛髪試料を、蒸留水に終夜浸漬した。その後、初期弾性率をTENSILON YTM−II−20(ORIENTEC社製)を用いて、2mm/minの速度で延伸したときの応力を測定し、得られたデータを解析プログラム(X軸を延伸率、Y軸を応力としたときの初期の傾き、いわゆるフックの傾きを算出)を使って求めた。
【0054】
上記初期弾性率の測定対象は、1名から採取した毛髪であり、毛髪処理1a、1b、2a又は2bで処理した毛髪と、未処理の毛髪である。また、初期弾性率の評価1においては、10本の初期弾性率の平均値を算出し、評価した。
【0055】
下記表2に、初期弾性率の測定結果を示す。毛髪処理1a及び1bと未処理と対比した場合、ビサボロールを配合した毛髪用組成物を使用した毛髪処理1aは、その配合がない毛髪処理1bよりも初期弾性率の低下が抑制されていたことを確認できる。これは、ビサボロールによるカルボニル化の抑制と、相関する。
【0056】
【表2】
【0057】
下記表3に、初期弾性率の測定結果を示す。毛髪処理2a及び2bと未処理と対比した場合、グルコシルヘスペリジンを配合した毛髪用組成物を使用した毛髪処理2aは、その配合がない毛髪処理2bよりも初期弾性率の低下が抑制されていたことを確認できる。これは、グルコシルヘスペリジンによるカルボニル化の抑制と、相関する。
【0058】
【表3】
【0059】
(初期弾性率の評価2)
毛髪処理3a〜3dの処理を行った処理毛髪及び未処理の毛髪の初期弾性率を、上記「初期弾性率の評価1」と同様にして、測定し、平均値を算出した。そして、初期弾性率の維持率を「初期弾性率の維持率(%)=(処理毛髪の初期弾性率)/(未処理毛髪の初期弾性率)×100」に基づき算出した。
【0060】
下記表4に、初期弾性率の維持率を示す。毛髪処理3a及び3bと、毛髪処理3dとを対比した場合、ビサボロール又はグルコシルヘスペリジンを配合した毛髪用組成物を使用した毛髪処理3a、3bは、その使用がない毛髪処理3dよりも初期弾性率の維持率が高かったことを確認できる。これは、ビサボロール又はグルコシルヘスペリジンによるカルボニル化の抑制と相関すると考えられる。
【0061】
また、毛髪処理3a及び3bと、毛髪処理3cとを対比した場合、毛髪用組成物1、2の併用した毛髪処理3cは、一方の組成物のみを使用した毛髪処理3a及び3bよりも初期弾性率の維持率が高かったことを確認できる。これは、ビサボロール及びグルコシルヘスペリジンの併用が、カルボニル化の抑制に特に有意になると考えられる。
【0062】
【表4】