(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも浸炭室および冷却室を有する熱処理炉と、該熱処理炉内に投入されるアセンブリを組み立てる組立装置とを備え、前記アセンブリが、環状ワークを相互に非接触の状態で複数個吊り下げ支持した軸状の治具と、該治具の両端を支持した容器とを含む熱処理システムであって、
前記組立装置は、所定姿勢で保持された前記治具に対して環状ワークを一個ずつ吊り下げていくワーク取付作業を繰り返し実行可能な組立ロボットと、所定姿勢で保持された前記治具が有するワーク支持部の位置情報を取得する組立用検出装置とを備え、
前記ワーク取付作業の実行時、前記組立用検出装置が取得した前記位置情報に基づいて、前記組立ロボットに装着されたワーク取付作業用ハンドの位置制御が行われることを特徴とする熱処理システム。
前記組立ロボットは、前記組立装置内で前記治具を搬送する治具搬送作業および前記容器を搬送する容器搬送作業が実行可能であると共に、前記ワーク取付作業用ハンド、前記組立装置内での治具搬送作業用ハンドおよび容器搬送作業用ハンドの群から選択される一のハンドから他のハンドへの自動交換が実行可能である請求項1又は2に記載の熱処理システム。
前記解体ロボットは、前記解体装置内で前記治具を搬送する治具搬送作業および前記容器を搬送する容器搬送作業が実行可能であると共に、前記ワーク取外し作業用ハンド、前記解体装置内での治具搬送作業用ハンドおよび容器搬送作業用ハンドの群から選択される一のハンドから他のハンドへの自動交換が実行可能である請求項4又は5に記載の熱処理システム。
前記治具および前記容器のそれぞれを、前記解体装置から前記組立装置に向けて搬送可能な治具搬送装置および容器搬送装置をさらに備える請求項4〜6の何れか一項に記載の熱処理システム。
環状ワークを相互に非接触の状態で複数個吊り下げ支持した軸状の治具と、該治具の両端を支持した容器とを含むアセンブリを組み立てた後、該アセンブリを、少なくとも浸炭室および冷却室を有する熱処理炉に投入することにより、複数の環状ワークのそれぞれに浸炭熱処理を施す熱処理方法であって、
前記アセンブリの組み立てを、所定姿勢で保持された前記治具に対して環状ワークを一個ずつ吊り下げていくワーク取付作業を繰り返し実行可能な組立ロボットを用いて実行し、前記ワーク取付作業の実行時、所定姿勢で保持された前記治具が有するワーク支持部の位置情報に基づいて、前記組立ロボットに装着したワーク取付作業用ハンドの位置制御を行うことを特徴とする熱処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記態様で環状ワークに浸炭熱処理を施すにあたり、治具を繰り返し使用すると、熱処理炉に繰り返し投入される(加熱および加熱後の冷却が繰り返される)治具には反り・曲がり等の変形が生じる。治具の変形態様には個体間でばらつきがあることから、治具に対する環状ワークの取り付け作業(を含むアセンブリの組立作業)や、熱処理済の環状ワークを治具から取り外す作業(を含むアセンブリの解体作業)を自動化した場合(例えば、三次元動作可能なアームを有する産業用ロボットによって上記作業を自動で実行するようにした場合)には作業ミスが生じ易い。作業ミスが生じると、その都度復旧作業が必要となるため、アセンブリの組立作業、アセンブリ(を構成する複数の環状ワーク)に対する浸炭熱処理、およびアセンブリの解体作業が同時的に(並行して)実行される熱処理工程の生産性が低下する。そのため、アセンブリの組立作業および/または解体作業の大半を人手作業で行っており、熱処理工程の自動化が進まないのが実情である。
【0005】
例えば、熱変形し難い材料で形成された治具を使用する、あるいは治具の交換頻度を上げる、などの対策を講じれば、アセンブリの組立作業および/または解体作業を自動化した場合でも上記作業ミスの発生頻度を低減し、熱処理工程を効率良くかつ低コストに実施することが可能になるとも考えられる。しかしながら、熱変形し難い材料で形成された治具を使用しても熱変形を完全に防止できるわけではなく、また、治具の交換頻度を上げると、上記作業の自動化によるコスト低減分が治具費の増大によって相殺されてしまう。
【0006】
以上の実情に鑑み、本発明は、複数の環状ワークに同時に浸炭熱処理を施す熱処理(浸炭熱処理)工程を自動化可能とし、浸炭熱処理工程の生産性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、少なくとも浸炭室および冷却室を有する熱処理炉と、熱処理炉内に投入されるアセンブリを組み立てる組立装置とを備え、アセンブリが、熱処理対象の環状ワークを相互に非接触の状態で複数個吊り下げ支持した軸状の治具と、治具の両端を支持した容器とを含む熱処理システムであって、組立装置は、所定姿勢で保持された治具に環状ワークを一個ずつ吊り下げていくワーク取付作業を繰り返し実行可能な組立ロボットと、所定姿勢で保持された治具が有するワーク支持部の位置情報を取得する組立用検出装置とを備え、ワーク取付作業の実行時、組立用検出装置で取得された上記位置情報に基づいて、組立ロボットに装着されたワーク取付作業用ハンドの位置制御が行われることを特徴とする。
【0008】
上記構成の熱処理システムによれば、組立ロボットによるワーク取付作業の実行時には、治具のワーク支持部の位置に応じて組立ロボットに装着されたワーク取付作業用ハンド(およびこれに保持される環状ワーク)の位置を制御(補正)することができるので、反り等の変形が生じた治具が使用される場合でも、ワーク取付作業の実行時に作業ミスが生じるのを効果的に防止することができる。これにより、アセンブリの組立作業の一部を自動化しても特段の問題は生じず、組立作業に介在する人手作業を適切に減じることが可能となるので、浸炭熱処理工程の生産性を高めることが可能となる。
【0009】
組立用検出装置は、撮像画像に基づいて上記位置情報を取得するもの、すなわち、カメラ等の撮像装置を備えたものとすることができる。これにより、正確な上記位置情報を容易に取得することができる。
【0010】
組立ロボットは、組立装置内で治具を搬送する治具搬送作業および容器を搬送する容器搬送作業が実行可能であると共に、ワーク取付作業用ハンド、組立装置内での治具搬送作業用ハンドおよび容器搬送作業用ハンドの群から選択される一のハンドから他のハンドへの自動交換が実行可能なものとすることができる。係る構成を採用すれば、アセンブリの組立作業の自動化を推進することができるので、浸炭熱処理工程の生産性を一層高めることが可能となる。
【0011】
本発明に係る熱処理システムには、熱処理炉外に搬出されたアセンブリを解体する解体装置をさらに設けることもできる。解体装置は、所定姿勢で保持された治具(熱処理済の環状ワークを吊り下げ支持した状態で所定姿勢で保持された治具)から環状ワークを一個ずつ取り外すワーク取外し作業を繰り返し実行可能な解体ロボットと、取外し対象の環状ワークの位置情報を取得する解体用検出装置とを備え、ワーク取外し作業の実行時、解体用検出装置が取得した上記位置情報に基づいて、解体ロボットに装着されたワーク取外し作業用ハンドの位置制御が行われるように構成できる。
【0012】
係る構成であれば、熱処理後の治具(熱処理炉から搬出された治具)に反り等の変形が生じていても、その変形量に応じて解体ロボットに装着されたワーク取外し用ハンドの位置制御を行うことができるので、ワーク取外し作業の実行時における作業ミスの発生を効果的に防止することができる。これにより、アセンブリの解体作業の一部を自動化しても特段の問題は生じず、解体作業に介在する人手作業を適切に減じることが可能となるので、浸炭熱処理工程の生産性をより一層高めることが可能となる。
【0013】
解体用検出装置は、組立用検出装置と同様に、撮像画像に基づいて上記位置情報を取得するもの、すなわち、カメラ等の撮像装置を備えたものとすることができる。
【0014】
解体ロボットは、解体装置内で治具を搬送する治具搬送作業および容器を搬送する容器搬送作業が実行可能であると共に、ワーク取外し作業用ハンド、解体装置内での治具搬送作業用ハンドおよび容器搬送作業用ハンドの群から選択される一のハンドから他のハンドへの自動交換が実行可能なものとすることができる。係る構成を採用すれば、アセンブリの解体作業の自動化を推進することができる。
【0015】
本発明に係る熱処理システムには、治具(熱処理済の環状ワークが取り外された空の治具)および容器(治具が取り外された空の容器)のそれぞれを、解体装置から組立装置に向けて搬送する容器搬送装置および治具搬送装置をさらに設けることができる。このようにすれば、治具および容器を熱処理システム内で循環使用することが可能となり、治具および容器を人手作業で準備・補充等する必要がなくなるので、浸炭熱処理工程の自動化を推進する上で有利となる。
【0016】
本発明に係る熱処理システムは、ロット数が大きい環状ワーク、例えば、スラスト軸受の軌道輪や転がり軸受の軌道輪に浸炭熱処理を施す場合に好ましく適用することができる。
【0017】
また、上記の目的を達成するため、本発明では、環状ワークを相互に非接触の状態で複数個吊り下げ支持した軸状の治具と、この治具の両端を支持した容器とを含むアセンブリを組み立てた後、このアセンブリを、少なくとも浸炭室および冷却室を有する熱処理炉に投入することにより、複数の環状ワークのそれぞれに浸炭熱処理を施す熱処理方法であって、アセンブリの組み立てを、所定姿勢で保持された治具に対して環状ワークを一個ずつ吊り下げていくワーク取付作業を繰り返し実行可能な組立ロボットを用いて実行し、上記ワーク取付作業の実行時、所定姿勢で保持された治具が有するワーク支持部の位置情報に基づいて、組立ロボットに装着したワーク取付作業用ハンドの位置制御を行うことを特徴とする熱処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
以上から、本発明によれば、複数の環状ワークに同時に浸炭熱処理を施す浸炭熱処理工程で実施される各種作業の少なくとも一部を自動化することができる。これにより、浸炭熱処理工程の生産性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理システムの全体構造を示す概略平面図である。同図に示す熱処理システム1は、鋼材からなる環状ワークW(ここでは、スラスト軸受の軌道輪)に浸炭熱処理としての浸炭焼入れ焼戻しを施すために使用されるものであって、熱処理炉2と、熱処理炉2に投入されるアセンブリA(熱処理対象の環状ワークWを含む複数部材の組立体。詳細は後述する。)を組み立てる組立装置20と、熱処理炉2外に搬出されたアセンブリAを解体する解体装置30と、組立装置20と解体装置30の間に設置された容器搬送装置8および治具搬送装置9とを備える。組立装置20は、熱処理炉2の入口付近の組立エリアに設置され、解体装置30は、熱処理炉2の出口付近の解体エリアに設置されている。以下の説明では、熱処理対象(熱処理前)の環状ワークと熱処理済の環状ワークとを区別するため、前者を「環状ワークW」と、また、後者を「環状ワークW’」ともいう。
【0022】
熱処理炉2は、その入口側から出口側に向けて加熱室3、浸炭室4、冷却室5および焼戻し室6が連続的に設けられた連続式の浸炭熱処理炉であり、上記アセンブリAは、搬送コンベア等の炉内搬送装置(図示せず)によって熱処理炉2内を搬送され、上記の各室3〜6に順に投入される(
図1中の二点鎖線を参照)。そして、アセンブリAが加熱室3内に位置している間に各環状ワークWが所定温度に加熱され、アセンブリAが浸炭室4内に位置している間に各環状ワークWに浸炭処理が施される。また、アセンブリAが冷却室5内に位置している間に各環状ワークWが所定温度に冷却されて焼入れされ、アセンブリAが焼戻し室6内に位置している間に各環状ワークWが焼戻しされる。
【0023】
浸炭室4では、公知の各種浸炭用ガスを用いて環状ワークWに浸炭処理を施す、いわゆるガス浸炭、真空浸炭又はプラズマ浸炭(イオン浸炭)の何れかが実行される。また、冷却室5は、冷却媒体に不活性ガス(例えば窒素ガス)等の冷却ガスを用いる、いわゆるガス冷却室とされる。冷却ガスは、冷却室5への充填圧力等を調整することによって環状ワークWの冷却速度を制御することができるため、環状ワークWに所望の硬度や機械的強度を付与し易く、また、熱処理歪みの発生を抑制あるいは防止できるという利点がある。
【0024】
容器搬送装置8および治具搬送装置9は、それぞれ、解体装置30でアセンブリAが解体されることにより生じる空の容器13および空の治具10を、解体装置30(が設置された解体エリア)から組立装置20(が設置された組立エリア)に向けて搬送する。これらの搬送装置8,9には、例えば、ローラコンベア、ベルトコンベア、スラットコンベア等のコンベア装置が採用される。
【0025】
図2に基づき、熱処理炉2に投入されるアセンブリAの詳細を説明する。
図2に示すように、アセンブリAは、環状ワークWを複数個吊り下げ支持した軸状の治具10(以下、これを「サブアセンブリA’」ともいう)と、サブアセンブリA’を構成する治具10の両端を支持した容器13とを含む。
図2は、サブアセンブリA’を支持した容器13を三段積みしたアセンブリAを示しているが、環状ワークW(容器13)のサイズによっては、サブアセンブリA’を支持した容器13が一段のみのアセンブリAや、サブアセンブリA’を支持した容器を二段積み又は四段積み以上したアセンブリAが熱処理炉2に投入される場合もある。また、
図2では、サブアセンブリA’を二列配置した容器13を示しているが、環状ワークWのサイズによっては、サブアセンブリA’が一列のみ配置される容器13が使用される場合や、サブアセンブリA’が三列以上配置される容器13が使用される場合もある。
【0026】
治具10は、
図3(a)(b)に示すように、軸状部11と、軸状部11の長手方向(軸方向)に沿って所定間隔で設けられたワーク支持部12とを有する。ワーク支持部12は、軸状部11の長手方向に沿って交互に設けられた凹部と凸部のうちの凹部で構成され、環状ワークWを1個ずつ吊り下げ支持する。そのため、
図3(a)に示すように、治具10に複数個の環状ワークWを吊り下げ支持したとき、隣り合う2つの環状ワークWは相互に非接触の状態に保持される。これにより、上記アセンブリAを熱処理炉2に投入すると、各環状ワークWの表層部全域に浸炭層(を含む硬化層)を精度良く形成することができる。
【0027】
図2に示すように、容器13は、互いに平行な一対の第1壁部13aと、互いに平行な一対の第2壁部13bとを有する平面視矩形状の枠体からなり、天板や底板は有していない。各第1壁部13aには治具10の端部を支持するための切欠き状の治具支持部13cがそれぞれ設けられており、一対の治具支持部13cで治具10の両端部を支持すると、治具10に吊り下げ支持された環状ワークWは第1壁部13aおよび第2壁部13bとは非接触の状態で容器13の内側に収容される。このとき、環状ワークWの上端部は容器13の上端部よりも所定寸法下方側に、また、環状ワークWの下端部は容器13の下端部よりも所定寸法上方側に位置するようになっている。そのため、
図2に示すように、容器13を段積みしたときでも、上下で隣り合う環状ワークW同士の接触は回避される。容器13の第2壁部13bにはフランジ部13dが設けられており、後述する組立ロボット21に装着される容器搬送作業用ハンド53および解体ロボット31に装着される容器搬送作業用ハンド56(
図4参照)は、フランジ部13dを把持して容器13を搬送する。
【0028】
図1に示すように、組立装置20は、三次元動作可能なアーム部を有する組立ロボット21と、組立ロボット21の周囲に設置されたワーク支持台22、治具固定台23、治具支持台24、ハンド支持台25およびアセンブリ(容器)支持台26と、ワーク移載用ロボット28とを備える。この組立装置20は、ワーク搬送装置27によって図示外の前工程から搬送されてくる環状ワークWを用いてアセンブリAを組み立てる。
【0029】
ワーク支持台22は、熱処理設備1の稼働時に、ワーク移載用ロボット28によってワーク搬送装置27から移載される環状ワークWを一時的に支持(仮置き)する。
【0030】
治具固定台23は、環状ワークWを吊り下げ支持するための治具10を所定の姿勢で固定的に保持する。本実施形態の治具固定台23は、
図3(a)(b)に示すように、治具10の一端が取り付けられる取り付け穴23aを有し、この取り付け穴23aに治具10の一端が取り付けらると、治具10が横姿勢(治具10の長手方向を水平方向に沿わせた姿勢)で保持される。治具支持台24は、所定個数の治具10を支持しており、アセンブリA(サブアセンブリA’)の組立時には、治具支持台24に支持された治具10、あるいは治具搬送装置9によって解体装置30から搬送されてくる治具10の何れかが治具固定台23に取り付けられる。
【0031】
図3(b)に示すように、治具固定台23には、この固定台23に治具10が横姿勢で固定的に保持されたとき、治具10に設けられたワーク支持部12の位置情報を取得(検出)するための組立用検出装置40が設置されている。組立用検出装置40は、治具固定台23に保持される治具10の側方に配置され、治具10の側面画像を撮像可能な撮像装置41と、治具10を挟んで撮像装置41のレンズ面41aと対向配置された面発光パネル(平面照明)42と、撮像装置41に電気的に接続された制御装置43とを具備する。制御装置43は、組立ロボット21(
図1参照)の動作を制御するために各種情報から指令情報を演算し、動作指令を組立ロボット21に対して出力するものである。すなわち、制御装置43は、撮像装置41が撮像した治具10の側面画像のデータを取り込み、このデータに基づいて各ワーク支持部12の位置情報(鉛直方向および水平方向の位置情報)を検出すると共に、この位置情報およびワークサイズ等に基づき動作指令を組立ロボット21に対して出力する。
【0032】
面発光パネル42は、発光しない平板状の部材に置き換えても構わないが、撮像装置41が撮像した治具10のシルエットを際立たせ、各ワーク支持部12の正確な位置情報を取得可能とする上では面発光パネル42を使用するのが好ましい。
【0033】
ハンド支持台25は、
図4に概念的に示すように、組立ロボット21のアーム部先端に装着される各種ハンド、ここでは、ワーク取付作業用ハンド51、治具搬送作業用ハンド52および容器搬送作業用ハンド53を支持する。ワーク取付作業用ハンド51は、ワーク支持台22に支持された環状ワークWを一個取得し、取得した環状ワークWを治具固定台23(
図1参照)に横姿勢で保持された治具10のワーク支持部12に対して吊り下げる作業(ワーク取付作業)を実行するためのハンドであり、ここでは環状ワークWの側面(端面)を吸着可能な吸着パッド51aを備えたものが使用される。治具搬送作業用ハンド52は、組立装置20内(
図1参照)で治具10(環状ワークWを吊り下げ支持しているか否かは問わない)を搬送する治具搬送作業を実行するためのハンドであり、ここでは治具10の端部を把持可能な一対のチャック爪52aを備えたものが使用される。容器搬送作業用ハンド53は、組立装置20内で容器13(治具10を支持しているか否かは問わない)を搬送する容器搬送作業を実行するためのハンドであり、ここでは容器13のフランジ部13dを把持可能な一対のチャック爪53aを備えたものが使用される。
【0034】
図4に示すように、組立ロボット21のアーム部先端には、各種ハンドの装着および交換作業を自動で実行するためのハンドチェンジャーの雄部50aが取り付けられており、各ハンド51〜53は、ハンドチェンジャーの雄部50aと結合する雌部50bを備えている。これにより、熱処理システム1の稼働時(組立ロボット21の作動時)には、
図3(b)に示す制御装置43から出力される動作指令に基づき、組立ロボット21によって実行される各種作業に応じた一のハンドが組立ロボット21のアーム部先端に自動で装着され、また、組立ロボット21によって実行される作業が切り換わる時には、アーム部先端に装着された上記一のハンドが他のハンドに自動的に交換される。
【0035】
本実施形態のアセンブリ支持台26は、
図1に示すように、第1支持台26Aと、熱処理炉2の入口に隣接配置された第2支持台26Bとを有する。詳細な図示は省略しているが、第2支持台26Bは、その上面で支持するアセンブリAに対して熱処理炉2内に向かう方向の搬送力を付与可能に構成されており、アセンブリAの完成後には、所定のタイミングでアセンブリAを熱処理炉2内に自動投入する。
【0036】
図1に示すように、解体装置30は、熱処理炉2外に搬出されたアセンブリAを解体するためのものであり、三次元動作可能なアーム部を有する解体ロボット31と、解体ロボット31の周囲に設置されたワーク支持台32、治具固定台33、治具支持台34、ハンド支持台35およびアセンブリ支持台36と、ワーク移載用ロボット38とを備える。
【0037】
アセンブリ支持台36は、熱処理炉2の出口に隣接配置され、熱処理炉2外に搬出されたアセンブリAを受け取る第1支持台36Aと、第1支持台36Aに隣接配置された第2支持台36Bとを有する。
【0038】
ワーク支持台32は、治具10から取り外された環状ワークW’を一時的に支持(仮置き)する。このワーク支持台32に支持された環状ワークW’は、ワーク移載用ロボット38によってワーク搬送装置37に移載された後、ワーク搬送装置37によって図示外の後工程に搬送される。
【0039】
治具固定台33は、アセンブリA(サブアセンブリA’)の解体作業を実行するに際し、環状ワークW’を吊り下げ支持した治具10(サブアセンブリA’を構成する治具10)を所定の姿勢で固定的に保持する。本実施形態では、
図5(a)に示すように、組立装置20に設けられた治具固定台23[
図3(a)参照]と同様の構造を有する治具固定台33が使用され、治具10を横姿勢で保持する。治具支持台34は、全ての環状ワークW’が取り外されることによって空になった治具10を支持する。
【0040】
図5(b)に示すように、治具固定台33には、この固定台33に環状ワークW’を吊り下げ支持した治具10が横姿勢で固定的に保持されたとき、治具10が吊り下げ支持した各環状ワークW’の位置情報(例えば、各環状ワークW’の上端部の位置情報)を取得するための解体用検出装置44が設置されている。解体用検出装置44は、組立装置20に設けられた組立用検出装置40[
図3(b)参照]と同様に、治具固定台33に保持される治具10の側方に配置され、治具10および環状ワークW’の側面画像を撮像可能な撮像装置45と、治具10(サブアセンブリA’)を挟んで撮像装置45のレンズ面45aと対向配置された面発光パネル(平面照明)46と、撮像装置45に電気的に接続された制御装置47とを具備する。制御装置47は、解体ロボット31(
図1参照)の動作を制御するために各種情報から指令情報を演算し、動作指令を出力するものである。すなわち、制御装置47は、撮像装置45が撮像した治具10および環状ワークW’の側面画像のデータを取り込み、このデータに基づいて各環状ワークW’の位置情報(鉛直方向および水平方向の位置情報)を検出すると共に、この位置情報およびワークサイズ等に基づき動作指令を解体ロボット31に対して出力する。
【0041】
図4に併せて示すように、ハンド支持台35は、解体ロボット31のアーム部先端に装着される各種ハンド、ここでは、ワーク取外し作業用ハンド54、治具搬送作業用ハンド55および容器搬送作業用ハンド56を支持する。ワーク取外し作業用ハンド54は、治具固定台33に固定的に保持された治具10から環状ワークW’を一個取得し、取得した環状ワークW’をワーク支持台32に移載するワーク取外し作業を実行するために用いられるハンドであり、前述したワーク取付作業用ハンド51と同様のものが使用される。治具搬送作業用ハンド55は、解体装置30内(
図1参照)で治具10を搬送する作業を実行するために用いられるハンドであり、前述した治具搬送作業用ハンド52と同様のものが使用される。容器搬送作業用ハンド56は、解体装置30内で容器13を搬送する作業を実行するために用いられるハンドであり、前述した容器搬送作業用ハンド53と同様のものが使用される。また、解体ロボット31のアーム部先端には、各ハンド54〜56の装着および交換作業を自動で実行するためのハンドチェンジャーの雄部50aが取り付けられており、各ハンド54〜56は、ハンドチェンジャーの雄部50aに結合される雌部50bを備えている。
【0042】
以上の構成を有する熱処理システム1の連続稼働時には、アセンブリAの組立作業、アセンブリAを構成する複数の環状ワークWに対する浸炭熱処理、およびアセンブリAの解体作業が同時的に実行される。
【0043】
以下、以上で説明した組立装置20の動作態様、すなわちアセンブリAの組立に際して組立ロボット21およびワーク移載ロボット28がそれぞれ実行する作業について説明する。
図6を参照して組立ロボット21が順に実行する作業を簡単に説明すると、組立ロボット21は、治具搬送作業としての治具固定作業S11と、ワーク取付作業S12と、治具搬送作業としての治具移載作業S13と、容器搬送作業としての容器移載作業S14とを自動で実行する。一方、移載ロボット28はワーク移載作業を自動で実行する。以下、各作業の詳細を説明する。
【0044】
[ワーク移載作業]
熱処理設備1が稼働され、図示外の前工程から搬送コンベア27によって環状ワークWが搬送されてくると、ワーク移載用ロボット28は環状ワークWを搬送コンベア27からワーク支持台22に移載する。このワーク移載作業は、前工程から環状ワークWが搬送されてくる間、継続して実行される。
【0045】
[治具固定作業S11]
ワーク支持台22に環状ワークWが移載されてくると組立ロボット21が作動し、そのアーム部先端にハンド支持台25に支持された治具搬送作業用ハンド52が装着される。治具搬送作業用ハンド52を装着した組立ロボット21は、治具支持台24に予め支持された治具10を一個取得し、取得した治具10を治具固定台23の取り付け孔23aに取り付ける治具固定作業S11を実行する。なお、熱処理設備1が連続稼働され、解体装置30に設けた解体ロボット31によって環状ワークW’が取り外された空の治具10が治具搬送装置9によって組立装置20に返送されている間、組立ロボット21に装着された治具搬送作業用ハンド52は、治具搬送装置9によって返送されてくる治具10を取得する。
【0046】
[ワーク取付作業S12]
治具固定作業S11の完了後、組立ロボット21のアーム部先端に装着された治具搬送作業用ハンド52がハンド支持台25に支持されたワーク取付作業用ハンド51に自動で交換される。ハンド交換後、組立ロボット21は、ワーク支持台22に支持された環状ワークWを一個取得(吸着)し、取得した環状ワークWを治具固定台23に横姿勢で保持された治具10のワーク支持部12に対して吊り下げるワーク取付作業S12を実行する。このワーク取付作業S12は、所定回数(通常は、ワーク支持部12の個数に応じた回数)繰り返し実行される。これにより、治具10に所定個数の環状ワークWが吊り下げ支持されたサブアセンブリA’が完成する。
【0047】
図3(b)を参照して説明したように、組立装置20には組立用検出装置40が設けられており、組立ロボット21がワーク取付作業S12を実行するときには、組立用検出装置40によって取得されたワーク支持部12の位置情報に基づく動作指令が制御装置43から組立ロボット21に入力される。組立ロボット21は、入力された動作指令に基づき、そのアーム部先端に装着されたワーク取付作業用ハンド51の位置(特に鉛直方向位置)を補正しながらワーク取付作業S12を実行する。すなわち、組立ロボット21によるワーク取付作業S12の実行時には、組立用検出装置40で取得されたワーク支持部12の位置情報に基づいて、組立ロボット21に装着されたワーク取付用ハンド51の位置制御が行われる。
【0048】
そのため、反り等の変形が生じた治具10が使用されている場合でも、その変形(変形量)に応じて組立ロボット21に装着されたワーク取付作業用ハンド51(およびこれに保持される環状ワークW)の位置制御を行うことができるので、ワーク取付作業S12の実行時に作業ミスが生じるのを効果的に防止することができる。これにより、サブアセンブリA’の組立作業を自動化しても特段の問題は生じず、アセンブリAの組立作業に介在する人手作業を適切に減じることができる。
【0049】
なお、ワーク支持部12の位置情報は、ワーク取付作業S12の実行前に1回だけ取得(検出)するようにしても良いし、ワーク取付作業S12が実行される毎に取得するようにしても良い。治具10の変形量は、環状ワークWの支持個数によって変化する可能性があることから、ワーク取付作業S12が実行される毎にワーク支持部12の位置情報を取得するようにすれば、ワーク取付作業S12の作業ミスの発生確率を低減する上で有利となる。
【0050】
[治具移載作業S13]
ワーク取付作業S12の完了後、組立ロボット21のアーム部先端に装着されたワーク取付作業用ハンド51が、ハンド支持台25に支持された治具搬送作業用ハンド52に自動で交換される。ハンド交換後、組立ロボット21は、所定個数の環状ワークWを吊り下げ支持してなる治具10(サブアセンブリA’)を治具固定台23から取り外し、取り外したサブアセンブリA’をアセンブリ支持台26の第1支持台26Aに載置された容器13に取り付ける治具移載作業S13を実行する。本実施形態の容器13は、
図2に示すように、治具10(サブアセンブリA’)を二列支持可能であることから、組立ロボット21は、以上で説明した治具固定作業S11〜治具移載作業S13を計2サイクル実行する。
【0051】
[容器移載作業S14]
治具移載作業S13の完了後(本実施形態では治具固定作業S11〜治具移載作業S13が2サイクル実行された後)、組立ロボット21のアーム部先端に装着された治具搬送作業用ハンド52が、ハンド支持台25に支持された容器搬送作業用ハンド53に自動で交換される。ハンド交換後、組立ロボット21は、アセンブリ支持台26の第1支持台26Aに載置された容器13を取得し、取得した容器13を第2支持台26Bに移載する容器移載作業S14を実行する。容器13の移載後、組立ロボット21は、空の容器13を取得し、取得した容器13をアセンブリ支持台26の第1支持台26Aに載置する。なお、組立ロボット21は、図示外の容器置き場、あるいは容器搬送装置8によって解体装置30から組立装置20に向けて返送されてくる空の容器13を取得する。
【0052】
サブアセンブリA’を支持した容器13を三段積みしてなるアセンブリAが熱処理炉2に投入される本実施形態では、組立ロボット21は、以上で説明した治具固定作業S11〜容器移載作業S14を計3サイクル実行する。3サイクル実行すると、アセンブリ支持台26の第2支持台26Bにおいて、サブアセンブリA’を支持した容器13が三段積みされることになる。これにより、
図2に示すアセンブリAが完成する。完成したアセンブリAは熱処理炉2内に投入され、アセンブリAに含まれる複数の環状ワークWのそれぞれに対して浸炭熱処理としての浸炭焼入れ焼戻しが施される。
【0053】
以上で説明したように、本実施形態の熱処理設備1では、熱処理炉2に投入されるアセンブリAの組立時に実行される全ての作業が、組立ロボット21によって自動で実行される。そのため、アセンブリAの組立に際して人手作業が実質的に不要となるので、複数の環状ワークWに対して同時に浸炭熱処理を施す浸炭熱処理工程の生産性を格段に高めることが(浸炭熱処理工程を効率良くかつ低コストに実施することが)可能となる。
【0054】
次に、前述した解体装置30の動作態様、すなわちアセンブリAの解体に際して解体ロボット31およびワーク移載ロボット38がそれぞれ自動で実行する作業について説明する。
図7を参照して解体ロボット31が実行する作業を簡単に説明すると、解体ロボット31は、容器搬送作業としての第1の容器移載作業S21と、治具搬送作業としてのサブアセンブリ取外し作業S22と、ワーク取外し作業S23と、治具搬送作業としての治具取外し作業S24と、容器搬送作業としての第2の容器移載作業S25とを順に実行する。一方、ワーク移載ロボット38は、解体ロボット31がワーク取外し作業S23を実行することによってワーク支持台32に支持された環状ワークW’をワーク搬送装置37に移載する。以下、各作業の詳細を説明する。
【0055】
[第1の容器移載作業S21]
熱処理炉2外にアセンブリAが搬出され、当該アセンブリAがアセンブリ支持台36の第1支持台36Aに載置されると、解体ロボット31が作動し、そのアーム部先端にハンド支持台35に支持された容器搬送作業用ハンド56が装着される。容器搬送作業用ハンド56を装着した解体ロボット31は、アセンブリ支持台36の第1支持台36Aに載置されたアセンブリAのうち、最上段の容器13を取得し、取得した容器13をアセンブリ支持台36の第2支持台36Bに移載する第1の容器移載作業S21を実行する。
【0056】
[サブアセンブリ取外し作業S22]
第1の容器移載作業S21の完了後、解体ロボット31のアーム部先端に装着された容器搬送作業用ハンド56がハンド支持台35に支持された治具搬送作業用ハンド55に自動で交換される。ハンド交換後、解体ロボット31は、第2支持台36Bに載置された容器13が支持しているサブアセンブリA’を取得して取り外し、取り外したサブアセンブリA’の治具10を治具固定台33の取り付け穴33aに取り付けるサブアセンブリ取外し作業S22を実行する。
【0057】
[ワーク取外し作業S23]
サブアセンブリ取外し作業S22の完了後、解体ロボット31のアーム部先端に装着された治具搬送作業用ハンド55がハンド支持台35に支持されたワーク取外し用ハンド54に自動で交換される。ハンド交換後、解体ロボット31は、治具固定台33に横姿勢で保持されたサブアセンブリA’(治具10)から環状ワークW’を一個取得(吸着)して取り外し、取り外した環状ワークW’をワーク支持台32に移載するワーク取外し作業S23を実行する。このワーク取外し作業S23は、治具10に吊り下げ支持された環状ワークW’の個数に応じた回数繰り返し実行される。
【0058】
図5(a)(b)を参照して説明したように、解体装置30には解体用検出装置44が設けられており、解体ロボット31がワーク取外し作業S23を実行するときには、治具10に支持された環状ワークW’の位置情報(特に鉛直方向の位置情報)が解体用検出装置44によって取得(検出)され、取得された環状ワークW’の位置情報に基づく動作指令が制御装置47から解体ロボット31に入力される。解体ロボット31は、入力された動作指令に基づき、そのアーム部先端に装着されたワーク取外し作業用ハンド54の位置を補正しながらワーク取外し作業S23を実行する。すなわち、解体ロボット31によるワーク取外し作業S23の実行時には、解体用検出装置44で取得された環状ワークW’の位置情報に基づいて、解体ロボット31に装着されたワーク取外し用ハンド54の位置制御が行われる。
【0059】
そのため、熱処理炉2から非出された治具10に反り等の変形が生じていても、その変形量に応じて解体ロボット31に装着されたワーク取外し作業用ハンド54(およびこれに保持される環状ワークW’)の位置制御が行われるので、ワーク取外し作業S23の実行時における作業ミスの発生を効果的に防止することができる。これにより、アセンブリA(サブアセンブリA’)の解体作業を自動化しても特段の問題は生じず、アセンブリAの解体作業に介在する人手作業を適切に減じることができる。
【0060】
環状ワークW’の位置情報は、ワーク取外し作業S23の実行前に1回だけ取得するようにしても良いし、ワーク取外し作業S23が実行される毎に取得するようにしても良い。治具10の変形量は、環状ワークW’の支持個数によって変化する可能性があることから、ワーク取外し作業S23が実行される毎に環状ワークW’の位置情報を取得するようにすれば、解体ロボット21によるワーク取外し作業S23の実行時における作業ミスの発生確率を低減する上で有利となる。
【0061】
[治具取外し作業S24]
ワーク取外し作業S23の完了後、解体ロボット31のアーム部先端に装着されたワーク取外し作業用ハンド54が、ハンド支持台35に支持された治具搬送作業用ハンド55に自動で交換される。ハンド交換後、解体ロボット31は、全ての環状ワークW’が取り外された治具10を治具固定台33から取り外し、取り外した治具10を治具支持台34あるいは治具搬送装置9に移載する治具取外し作業S24を実行する。熱処理システム1の連続稼働中、取り外された治具10は治具搬送装置9に移載された後、治具搬送装置9によって組立装置20に返送される。本実施形態の容器13は、
図2に示すように、治具10(サブアセンブリA’)を二列支持していることから、解体ロボット31は、以上で説明したサブアセンブリ取外し作業S22〜治具取外し作業S24を計2サイクル実行する。
【0062】
[第2の容器移載作業S25]
サブアセンブリ取外し作業S22〜治具取外し作業S24を2サイクル実行した後、解体ロボット31のアーム部先端に装着された治具搬送作業用ハンド55が、ハンド支持台35に支持された容器搬送作業用ハンド56に自動で交換される。ハンド交換後、解体ロボット31は、アセンブリ支持台36の第2支持台36Bに載置された容器13(、サブアセンブリA’が取り外されることによって空になった容器13)を取得し、取得した空の容器13を容器搬送装置8に移載する第2の容器移載作業S25を実行する。容器搬送装置8に移載された容器13は、組立装置20に返送され、再度アセンブリAの組立に供される。
【0063】
アセンブリAが三段積みされたアセンブリAで構成される本実施形態では、解体ロボット31は、以上で説明した第1の容器移載作業S21〜第2の容器移載作業S25を計3サイクル実行する。これにより、熱処理炉2外に搬出されたアセンブリAの解体作業が完了する。
【0064】
以上で説明したように、本実施形態の熱処理システム1では、熱処理炉2外に搬出されたアセンブリAの解体時に実行される全ての作業が、解体ロボット31によって自動で実行される。そのため、アセンブリAの解体作業を実行するに際して人手作業が実質的に不要となるので、浸炭熱処理工程の生産性を一層高めることができる。
【0065】
また、本実施形態の熱処理システム1は、治具10および容器13のそれぞれを解体装置30から組立装置20に向けて搬送(返送)する治具搬送装置9および容器搬送装置8を備えているので、少なくとも熱処理システム1が連続稼働され、熱処理システム1による熱処理工程が連続して実行されている間(アセンブリAの組立作業、アセンブリAを構成する複数の環状ワークWに対する熱処理およびアセンブリAの解体作業が同時的に実行されている間)は、治具10および容器13を繰り返し使用することができる。これにより、少なくとも熱処理システム1が連続稼働されている間は、治具10および/または容器13を人手作業で準備・補充等する必要がなくなるため、浸炭熱処理工程の完全自動化を実現することができる。
【0066】
以上のことから、本実施形態に係る熱処理システム1は、複数の環状ワークWに対して同時に施すべき浸炭熱処理を極めて効率良くかつ低コストに実施することができる、という特徴を有する。
【0067】
以上、本発明の一実施形態に係る熱処理システム1について説明したが、熱処理システム1には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を施すことが可能である。
【0068】
例えば、以上で説明した実施形態では、組立ロボット21によるワーク取付作業S12の実行時に、撮像装置41が撮像した治具10の画像(画像データ)に基づいて治具10に設けられたワーク支持部12の位置情報を取得するようにしたが、ワーク支持部12の位置情報は、レーザ変位センサ等の変位センサを用いて取得することも可能である。すなわち、組立装置20に設けた組立用検出装置40は、撮像装置41に替えて変位センサを備えたもので構成することも可能である。解体装置30に設けた解体用検出装置44についても同様である。
【0069】
また、以上で説明した実施形態では、横姿勢で固定的に保持された治具10のワーク支持部12に対して環状ワークWを吊り下げていくワーク取付作業S12を実行すると共に、横姿勢で固定的に保持された治具10から環状ワークW’を取り外すワーク取外し作業S23を実行するようにしたが、治具10で支持された環状ワークW(W’)が脱落等せず、検出装置40,44によって上記作業S12,S23を実行する際の位置情報取得に支障がなければ、治具10は、その長手方向が水平方向に対して多少傾いた傾斜姿勢で保持するようにしても構わない。
【0070】
また、以上では、環状ワークWの一例としてスラスト軸受の軌道輪を挙げたが、本発明に係る熱処理設備1は、ロット数が大きいその他の環状ワークW、例えば転がり軸受の軌道輪に浸炭熱処理を施す場合にも好ましく用いることができる。
【0071】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得る。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。