(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態が本発明を限定することはない。
以下、油性インクジェットインクを、単に「インク」と称することがある。
【0011】
一実施形態による油性インクジェットインクは、顔料及び非水系溶剤を含み、非水系溶剤は、表面張力が19.0mN/m以上24.0mN/m未満のシリコーンオイル及び表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤を含み、インクの表面張力が23.0mN/m以上27.0mN/m未満である、油性インクジェットインクである。
この油性インクジェットインクによれば、画像濃度に優れる印刷画像を得ることができるとともに、裏抜け、ミストの発生、及びローラ転写汚れを低減することができる。
【0012】
この理由として、特定の理論に拘束されるわけではないが、吐出されたインクが飛翔する飛翔過程、インク液滴が記録媒体上に濡れ広がる濡れ広がり過程、及びインクが記録媒体に浸透する浸透過程で、以下のように作用するためと推測される。
【0013】
吐出されたインクが記録媒体の飛翔過程におけるミストの発生には、インクの表面張力が影響する傾向があり、インクの表面張力が低いと、ミストが発生しやすい。また、静電気が発生すると、ミストが発生しやすい。インクが極性溶剤を含むとき、静電気の発生が抑制される傾向がある。このため、インクの表面張力が23.0mN/m以上であり、かつ、インクが極性溶剤を含むことで、ミストの発生を低減することができると考えられる。
インクが記録媒体に着弾すると、インク液滴が記録媒体上に濡れ広がる濡れ広がり過程及び記録媒体に浸透する浸透過程とを経て、ドットが形成される。
濡れ広がり過程では、インクの表面張力が影響する傾向があり、インクの表面張力が低いと、ドット径が広がる傾向がある。インクの表面張力が27.0mN/m未満であることで、大きなドット径を得やすく、これにより白地が埋まりやすくなって、高い画像濃度を得やすいと考えられる。
浸透過程では、溶剤の表面張力が浸透に影響する傾向がある。表面張力が24.0mN/m未満という低表面張力のシリコーンオイルは、浸透が速い傾向があるため、これを用いることでローラ転写汚れを低減させることができると考えられる。
一方、紙等の記録媒体の裏まで溶剤が浸透すると、記録媒体が透けやすくなり、裏抜けが発生しやすい。シリコーンオイルの表面張力が19.0mN/m以上であることで、シリコーンオイルの過度な浸透を抑制することができる。また、表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤は、表面張力が高いため浸透が遅く、かつ、極性溶剤は、シリコーンオイルと比較すると、顔料分散剤となじみやすい傾向がある。このため、表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤を用いることで、顔料と分散剤は極性溶剤と共に記録媒体上に残りやすい傾向がある。このように、表面張力が19.0mN/m以上のシリコーンオイル及び表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤を用いることで、裏抜けを低減させることができると考えられる。
また、上述のように、インクの表面張力は27.0mN/m未満と低いため、濡れ広がり過程では、記録媒体にインク着弾したインク液滴の濡れ広がりが大きく、ベタ画像の形成時に白地が埋まりやすい。更に、上述のように、表面張力が高い極性溶剤により、浸透過程では顔料が紙等の記録媒体上に残りやすい。これらにより、ベタ画像を印刷する場合でも、画像濃度が高いベタ画像を、かつ、裏抜けが少ない状態で印刷することができると考えられる。
【0014】
ここで、インク及び各溶剤の表面張力は、バブルプレッシャー法(最大泡圧法)に従って求めることができる。例えば、SITA Process Solutions社製「SITA Messtechnik GmbH science line t60」を用いて表面張力を測定することができる。
【0015】
インクは、色材として顔料を含むことが好ましい。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
顔料の分散形態は、顔料を非油溶性樹脂で被覆したいわゆるカプセル顔料や着色樹脂粒子を顔料分散剤で分散させた分散体であってもよいが、顔料分散剤を顔料表面に直接吸着させて分散させた分散体であることが好ましい。
【0017】
顔料の平均粒子径としては、吐出安定性と保存安定性の観点から、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下である。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることが一層好ましい。
【0018】
インク中で顔料を安定して分散させるために、顔料とともに顔料分散剤を用いることができる。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
【0019】
顔料分散剤の市販品例としては、例えば、アイ・エス・ピー・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)、V220(ビニルピロリドン・エイコセン共重合体)」(いずれも商品名);
日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、16000、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名);
BASFジャパン株式会社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名);
楠本化成株式会社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名);
第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名);
ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK2155、9077」(いずれも商品名);
クローダジャパン株式会社製「HypermerKD2、KD3、KD11、KD12」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0020】
顔料分散剤は、上記顔料を十分にインク中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。例えば、質量比で、顔料1に対し顔料分散剤を0.1〜5で配合することができ、好ましくは0.1〜1である。また、例えば、顔料分散剤は、インク全量に対し、0.01〜10質量%で配合することができ、好ましくは0.01〜5質量%である。
インクには、顔料分散剤を含む樹脂成分は、インク全量に対し10質量%以下で配合することができ、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。これによって、インク粘度の上昇を防止し、吐出性能をより改善することができる。
【0021】
インクは、表面張力が19.0mN/m以上24.0mN/m未満のシリコーンオイルを含むことが好ましい。
シリコーンオイルの表面張力は、19.0mN/m以上が好ましく、20.0mN/m以上がより好ましい。これによって、シリコーンオイルの記録媒体中への過度な浸透が抑制されやすく、裏抜けを低減させやすい。
シリコーンオイルの表面張力は、24.0mN/m未満が好ましく、23.0mN/m以下より好ましい。これによって、シリコーンオイルを速やかに浸透させて、ローラ転写汚れを低減させることができる。
【0022】
シリコーンオイルは、表面張力が19.0mN/m以上24.0mN/m未満であれば特に限定されず、1分子中にケイ素原子及び炭素原子をし、23℃において液体状の化合物を用いることができる。
シリコーンオイルとしては、シリル基を有する化合物、シリルオキシ基を有する化合物、シロキサン結合を有する化合物等を用いることができ、特にポリシロキサン化合物を好ましく用いることができる。
【0023】
シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状シリコーンオイル、環状シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等を用いることができる。
鎖状シリコーンオイルは、ケイ素数が7〜30の鎖状ポリシロキサンであることが好ましく、7〜20がより好ましく、7〜10が一層好ましい。鎖状シリコーンオイルとしては、例えば、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン等の直鎖ジメチルシリコーンオイル、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン等の分岐ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。
環状シリコーンオイルとしては、ケイ素数が5〜9の環状ポリシロキサンであることが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン、オクタデカメチルシクロノナシロキサン等の環状ジメチルシリコーンオイルを好ましく用いることができる。
【0024】
変性シリコーンオイルとしては、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルの一部のケイ素原子に各種有機基を導入したシリコーンオイルを用いることができる。変性シリコーンオイルとしては、すべてのケイ素原子が炭素原子またはシロキサン結合の酸素原子のいずれかとのみ結合していることが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、非反応性シリコーンオイルであることが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、その構成原子がケイ素原子、炭素原子、酸素原子、水素原子のみからなることが好ましい。
変性シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる、少なくとも1つのメチル基が、アルキル基、カルボン酸エステル結合含有基、芳香環含有基、及びエーテル結合含有基からなる群から選択される1種以上によって置換された化合物を用いることができる。
また、変性シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる、少なくとも1つのケイ素原子にアルキレン基を介してさらに別の鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルのケイ素原子が結合する化合物を用いることができる。この場合、アルキレン基を介して結合する鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる、少なくとも1つのメチル基は、アルキル基、カルボン酸エステル結合含有基、芳香環含有基、及びエーテル結合含有基からなる群から選択される1種以上によって置換されていてもよい。
変性シリコーンオイルとしては、例えば、アルキル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルやアラルキル変性シリコーンオイル等のアリール変性シリコーンオイル、カルボン酸エステル変性シリコーンオイル、アルキレン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、ケイ素数が2〜20であることが好ましく、2〜10がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、3〜6が一層好ましい。
【0025】
フェニル変性シリコーンオイルとしては、例えば、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−3−フェニル−3−(トリメチルシリルオキシ)トリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン等を用いることができる。
【0026】
変性シリコーンオイルの一例には、1分子中のケイ素数が2〜6であり、ケイ素原子に炭素原子が直接結合し、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基を有し、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる炭素数及び酸素数の合計が4〜20であるシリコーンオイルが含まれる。以下、このシリコーンオイルを変性シリコーンオイルSとも記す。
【0027】
変性シリコーンオイルSは、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基として、下記の(A)〜(D)からなる群から選択される1種以上を有することができる。
(A)炭素数4以上のアルキル基。
(B)炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基。
(C)炭素数6以上の芳香環含有基。
(D)炭素数4以上のアルキレン基。
【0028】
変性シリコーンオイルSは、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる炭素数及び酸素数の合計が4〜12であることが好ましい。
また、変性シリコーンオイルSは、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる炭素数及び酸素数の合計が8〜20であることが好ましい。
変性シリコーンオイルSの1分子中に炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基が2個以上含まれる場合は、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基の炭素数及び酸素数の合計は、2個以上の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基の炭素数及び酸素数の合計である。
【0029】
変性シリコーンオイルSの一例には、下記一般式(X)で表される化合物であるシリコーンオイルが含まれる。
【0031】
一般式(X)において、
R
1は、酸素原子、又はケイ素原子に炭素結合が直接結合する2価の有機基であり、R
2は、それぞれ独立的に、ケイ素原子に炭素結合が直接結合する1価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立的に、0〜4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0〜2の整数であり、1分子中のケイ素数が2〜6であり、R
1及びR
2のうち少なくとも1個は、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基であり、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4〜20である。
【0032】
一般式(X)において、R
1は、酸素原子、又は炭素数及び酸素数の合計が4以上である2価の有機基であり、R
2は、それぞれ独立的に、メチル基、又は炭素数及び酸素数の合計が4以上である1価の有機基であることが好ましい。
【0033】
好ましくは、一般式(X)において、R
1は、酸素原子、又は炭素数4以上のアルキレン基であり、R
2は、それぞれ独立的に、メチル基、炭素数4以上のアルキル基、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基、又は炭素数6以上の芳香環含有基であり、R
1及びR
2のうち少なくとも1個は、炭素数4以上のアルキレン基、炭素数4以上のアルキル基、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基、及び炭素数6以上の芳香環含有基からなる群から選択され、1分子中の炭素数4以上のアルキレン基、炭素数4以上のアルキル基、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基、及び炭素数6以上の芳香環含有基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4〜20である。
【0034】
変性シリコーンオイルSの他の例には、下記一般式(X−1)で表される化合物であるシリコーンオイルが含まれる。
【0036】
一般式(X−1)において、R
2は、それぞれ独立的に、ケイ素原子に炭素原子が直接結合する1価の有機基であり、nは、0〜4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0又は1であり、1分子中のケイ素数が2〜6であり、R
2のうち少なくとも1個は、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基であり、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4〜20である。
【0037】
一般式(X−1)において、R
2は、それぞれ独立的に、メチル基、又は炭素数及び酸素数の合計が4以上である1価の有機基であることが好ましい。
一般式(X−1)において、R
2のうち少なくとも1個は、炭素数が4以上であるアルキル基、炭素数及び酸素数の合計が6以上であるカルボン酸エステル結合含有基、及び炭素数が6以上である芳香環含有基からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0038】
変性シリコーンオイルSにおいて、炭素数4以上のアルキル基は、直鎖または分岐鎖を有してもよく、鎖状または脂環式であってもよい。
このアルキル基の炭素数は、4以上が好ましく、より好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。
このアルキル基の炭素数は、例えば、20以下であってよく、18以下が好ましく、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下である。
【0039】
炭素数4以上のアルキル基は、例えば、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル、ヘキサデシル基、オクタデシル等を挙げることができる。
好ましくは、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基であり、より好ましくはデシル基、ドデシル基である。
【0040】
アルキル基を有する変性シリコーンオイルSには、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
【0042】
一般式(1)中、Rは、炭素数4〜20の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基であり、m及びnは、それぞれ独立的に0〜2の整数であり、m+n≦2である。
【0043】
一般式(1)において、Rは、炭素数4〜20の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基である。Rで表されるアルキル基の炭素数は、4以上が好ましく、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。
また、Rで表されるアルキル基の炭素数は、20以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下である。
【0044】
一般式(1)で表される化合物は、m及びnがそれぞれ0である下記化合物であることが好ましい。下記化合物において、Rは一般式(1)と同様のものである。
【0046】
変性シリコーンオイルSにおいて、カルボン酸エステル結合含有基は、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子にアルキレン基を介してカルボン酸エステル結合が結合する−R
Bb−O−(CO)−R
Baで表される基、または、−R
Bb−(CO)−O−R
Baで表される基を好ましく用いることができる。
ここで、R
Baは、炭素数1以上の直鎖または分岐鎖を有してもよく、鎖状または脂環式のアルキル基であることが好ましい。また、R
Bbは、炭素数1以上の直鎖又は分岐鎖を有してもよく、鎖状または脂環式のアルキレン基であることが好ましい。主鎖のシロキサン結合のケイ素原子とカルボン酸エステル結合を結ぶアルキレン基は、炭素数2以上であることがより好ましい。
カルボン酸エステル結合含有基の炭素数及び酸素数の合計は、エステル結合(−O−(CO)−)の1個の炭素原子と2個の酸素原子と、アルキル基(R
Ba)の炭素数と、アルキレン基(R
Bb)の炭素数との合計になる。
【0047】
カルボン酸エステル結合含有基において、アルキル基(R
Ba)は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基等を挙げることができる。
好ましくは、ペンチル基、ヘプチル基、ノニル基、トリデシル基であり、より好ましくはヘプチル基、ノニル基である。
【0048】
カルボン酸エステル結合含有基において、アルキレン基(R
Bb)は、炭素数1〜8の直鎖アルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、n−ブチレン、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソオクチレン基等を挙げることができる。
好ましくは、エチレン基である。
【0049】
カルボン酸エステル結合含有基を有する変性シリコーンオイルSには、上記一般式(X−1)において、R
2は、それぞれ独立的に、メチル基、又はケイ素原子に炭素原子が直接結合し、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基であり、 nは、0〜4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0又は1であり、1分子中のケイ素数が2〜6であり、R
2のうち少なくとも1個は、上記カルボン酸エステル結合含有基であり、1分子中の上記カルボン酸エステル結合含有基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4〜20である化合物を好ましく用いることができる。
【0050】
変性シリコーンオイルSにおいて、芳香環含有基は、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子に芳香環が直接結合する−R
Caで表される基、または、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子にアルキレン基を介して芳香環が結合する−R
Cb−R
Caで表される基を好ましく用いることができる。
ここで、R
Caは、炭素数6以上の芳香環であることが好ましい。また、R
Cbは、炭素数1以上の直鎖又は分岐鎖を有してもよく、鎖状または脂環式のアルキレン基であることが好ましい。
芳香環含有基が、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子に芳香環が直接結合する−R
Caで表される基である場合、主鎖のシロキサン結合からトリメチルシリルオキシ基等の分岐鎖が側鎖として分岐していていることが好ましい。芳香環含有基は、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子にアルキレン基を介して芳香環が結合する−R
Cb−R
Caで表される基であることがより好ましい。
芳香環含有基の炭素数は、芳香環(R
Ca)の炭素数と、任意のアルキレン基(R
Cb)の炭素数との合計になる。
【0051】
芳香環含有基において、芳香環部分(R
Ca)は、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等、又はこれらの少なくとも1個の水素原子がアルキル基に置換された官能基を挙げることができる。
【0052】
芳香環含有基において、任意のアルキレン基(R
Cb)は、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖を有してもよいアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソオクチレン基等を挙げることができる。
好ましくは、プロピレン基、メチルエチレン基、エチレン基である。
【0053】
芳香環含有基を有する変性シリコーンオイルSには、上記一般式(X−1)において、 R
2は、それぞれ独立的に、メチル基、又はケイ素原子に炭素原子が直接結合し、炭素数が6以上である芳香環結合含有基であり、nは、0〜4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0又は1であり、1分子中のケイ素数が2〜6であり、R
2のうち少なくとも1個は、上記芳香環結合含有基であり、1分子中の上記芳香環結合含有基に含まれる炭素数の合計が6〜20である化合物を好ましく用いることができる。
【0054】
変性シリコーンオイルSの一実施形態としては、2〜6個のケイ素原子と、炭素数4以上のアルキレン基とを有する化合物であり、好ましくは、炭素数が4以上であるアルキレン基の両端の炭素原子にそれぞれシリル基又は少なくとも1個のシロキサン結合が結合する化合物である。
【0055】
炭素数4以上のアルキレン基は、例えば、n−ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソオクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、ヘキサデシレン基、エイコシレン基等を挙げることができる。
好ましくは、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基であり、より好ましくは、オクチレン基、デシレン基である。
【0056】
アルキレン基を有する変性シリコーンSには、上記一般式(X)において、R
1は、炭素数が4以上であるアルキレン基であり、R
2は、メチル基であり、m及びnは、それぞれ独立的に、0〜4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0〜2の整数であり、1分子中のケイ素数が2〜6である化合物を好ましく用いることができる。
【0057】
上記した変性シリコーンオイルSは、これに限定されないが、以下の方法によって製造することができる。
例えば、シロキサン原料と、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基とともに反応性基を有する反応性化合物とを、有機溶媒中で反応させることで、変性シリコーンオイルSを得ることができる。シロキサン原料と反応性化合物とは、シロキサン原料の反応性基と反応性化合物の反応性基とがモル比で1:1〜1:1.5で反応させることが好ましい。また、反応に際し、0価白金のオレフィン錯体、0価白金のビニルシロキサン錯体、2価白金のオレフィン錯体ハロゲン化物、塩化白金酸等の白金触媒等の触媒を好ましく用いることができる。
【0058】
シロキサン原料としては、例えば、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,7,7,7−ノナメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,3,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−3−(トリメチルシリルオキシ)トリシロキサン、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−(ジメチルシリルオキシ)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−3−(トリメチルシリルオキシ)トリシロキサン等を用いることができる。
【0059】
反応性化合物は反応性基として炭素二重結合を有することが好ましい。
変性シリコーンオイルSにアルキル基を導入するためには、反応性化合物として、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等の炭素数が4以上であるアルケン等を用いることができる。
また、アルケンの他にも、ビニルシクロヘキサン等のエチレン性不飽和2重結合を有する脂環式炭化水素基を用いることができる。
【0060】
変性シリコーンオイルSにエステル結合含有基を導入するためには、反応性化合物として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソブタン酸ビニル、ペンタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、イソオクタン酸ビニル、ノナン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、エイコ酸ビニル、ヘキサン酸アリル等の炭素数及び酸素数の合計が6以上である脂肪酸ビニル又は脂肪酸アリル化合物等を用いることができる。
【0061】
変性シリコーンオイルSに芳香環含有基を導入するためには、反応性化合物として、スチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、アリルベンゼン、1−アリルナフタレン、4−フェニル−1−ブテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1−ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、2−メチル−1−フェニルプロペン、1,1−ジフェニルエチレン、トリフェニルエチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、シス−β−メチルスチレン、トランス−β−メチルスチレン、 3−フェニル−1−プロペン等のビニル結合と炭素数6以上の芳香環とを有するアリール化合物等を用いることができる。
【0062】
変性シリコーンオイルSにアルキレン基を導入するためには、反応性化合物として、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,13−テトラデカジエン、ヘキサデカジエン、エイコサジエン等の炭素数が4以上であるジエン化合物等を用いることができる。
【0063】
シリコーンオイルとしては、例えば、信越化学工業株式会社製「KF−96L−5CS」、「KF−56A」;東レ・ダウコーニング株式会社製「DC246Fluid」、「DC345Fluid」「FZ−3196」、「SS−3408」;東京化成工業株式会社製「1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−3−フェニル−3−(トリメチルシリルオキシ)トリシロキサン」、「デカメチルシクロペンタシロキサン」、「ドデカメチルシクロヘキサシロキサン」等の市販品を用いてもよい。
【0064】
表面張力が19.0mN/m以上24.0mN/m未満のシリコーンオイルは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
インク中の表面張力が19.0mN/m以上24.0mN/m未満のシリコーンオイルの量は、裏抜け低減及びローラ転写汚れの低減の効果をさらに向上させる観点から、インク中の非水系溶剤全量に対し、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
インク中の表面張力が19.0mN/m以上24.0mN/m未満のシリコーンオイルの量は、インク中の非水系溶剤全量に対し、例えば、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、または60質量%以下であってよい。
【0065】
インク全量に対するインク中の表面張力が19.0mN/m以上24.0mN/m未満のシリコーンオイルの量は、非水系溶剤全体の使用量に応じて異なるが、裏抜け低減及びローラ転写汚れの低減の効果をさらに向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
インク全量に対するインク中の表面張力が19.0mN/m以上24.0mN/m未満のシリコーンオイルの量は、例えば、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下又は55質量%以下であってよい。
【0066】
インクは、表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤を含むことが好ましい。これにより、画像濃度を向上させやすく、ミストの発生を低減させやすい。
極性溶剤の表面張力は、27.0mN/m以上が好ましく、30.0mN/m以上がより好ましい。
表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤の表面張力は、40.0mN/m以下が好ましく、35.0mN/m以下がより好ましい。
【0067】
表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤は、23℃において液体状の化合物であることが好ましい。
表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤として、例えば、表面張力が27.0mN/m以上の、エステル系溶剤(脂肪酸モノ、ジ又はトリエステル系溶剤等の脂肪酸エステル系溶剤、脂肪酸エステル系溶剤以外の一塩基酸、二塩基酸又は三塩基酸エステル系溶剤)、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、グリコールエーテル系溶剤(グリコールモノアルキルエーテル、グリコールジアルキルエーテル等)等が使用できる。
アルコール系溶剤のなかでも、例えば、高級アルコール系溶剤は、一般にエタノールなどの低級アルコール系溶剤に比べて極性がそれほど高くないため、安定性にも優れる。
【0068】
表面張力が27.0mN/m以上のエステル系溶剤としては、例えば、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチルなどの1分子中の炭素数が好ましくは、13以上、より好ましくは15〜30の脂肪酸エステル系溶剤;
デカノール、テトラデカノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、イソステアリルアルコール、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12〜20の高級アルコール系溶剤などの1分子中の炭素数が6以上、好ましくは10〜20の高級アルコール系溶剤;
ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14〜20の高級脂肪酸系溶剤;
テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。
【0069】
表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
【0070】
表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
インク中の表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤の量は、画像濃度の向上効果及びミスト発生の低減効果をさらに向上させる観点から、インク中の非水系溶剤全量に対し、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
インク中の表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤の量は、インク中の非水系溶剤全量に対し、例えば、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、または55質量%以下であってよい。
【0071】
インク全量に対するインク中の表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤の量は、非水系溶剤全体の使用量に応じて異なるが、画像濃度の向上効果及びミスト発生の低減効果をさらに向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
インク全量に対するインク中の表面張力が27.0mN/m以上の極性溶剤の量は、例えば、70質量%以下、60質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下であってもよい。
【0072】
インクには、その他の非水系溶剤が含まれてもよい。
その他の非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び表面張力が27.0mN/m未満の極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、本実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0073】
非極性有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN−10、カクタスノルマルパラフィンN−11、カクタスノルマルパラフィンN−12、カクタスノルマルパラフィンN−13、カクタスノルマルパラフィンN−14、カクタスノルマルパラフィンN−15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製);モレスコホワイトP−40、モレスコホワイトP−60、モレスコホワイトP−70、モレスコホワイトP−80、モレスコホワイトP−100、モレスコホワイトP−120、モレスコホワイトP−150、モレスコホワイトP−200、モレスコホワイトP−260、モレスコホワイトP−350P(いずれも株式会社MORESCO製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
【0074】
表面張力が27.0mN/m未満の極性有機溶剤としては、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、2−メチルペンタン酸エチル等の脂肪酸エステル系溶剤等が挙げられる。
極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
【0075】
これらの非水系溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0076】
上記各成分に加えて、油性インクには、本発明の効果を損なわない限り、各種添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
【0077】
インクは、色材及び非水系溶剤を含む各成分を混合することで作製することができる。
好ましくは、各成分を一括ないし分割して混合及び撹拌してインクを作製することができる。具体的には、ビーズミル等の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより調製できる。
【0078】
インクの表面張力は、23.0mN/m以上が好ましく、24.0mN/m以上がより好ましい。これにより、ミストの発生を低減させやすい。
インクの表面張力は、27.0mN/m未満が好ましく、26.0mN/m未満がより好ましい。これにより、ドット径を大きくし、画像濃度を高めやすい。
インクの表面張力は、23.0mN/m以上27.0mN/m未満が好ましく、24.0mN/m以上26.0mN/m未満がより好ましい。
【0079】
油性インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、一層好ましい。
【0080】
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよいが、ピエゾ方式であることが好ましい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
【0081】
本実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
【0082】
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm〜数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
【0083】
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0085】
「変性シリコーン2〜4の合成」
表1に変性シリコーン2〜4の処方を示す。変性シリコーン2は次のように合成した。
四つ口フラスコに、ヘキサンを50質量部、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンを10質量部、1−テトラデセンを9.7質量部で仕込んだ。これに、白金触媒(シグマアルドリッチ社製「1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体」)を0.02質量部滴下し、室温にて2〜3時間撹拌した。その後、減圧蒸留により反応溶媒(ヘキサン)、未反応原料を留去し目的物を得た。
変性シリコーン3及び4は、シロキサン化合物及び反応性化合物を表1に示す処方で配合した他は、上記と同様にして合成した。
変性シリコーン2〜4の合成では、シロキサン化合物と、反応性化合物とのモル比が1:1.1となるように配合した。
表1の1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン及び反応性化合物は、東京化成工業株式会社より入手することができる。
【0086】
【表1】
【0087】
<インクの作製>
インクの処方を表2〜5に示す。
各表に示す配合量にしたがって、顔料、顔料分散剤、及び各表に示す各種溶剤を混合し、ビーズミル「ダイノーミルKDL−A」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で、十分に顔料を分散した。続いて、メンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、インクを得た。
【0088】
表2〜5に示す各インク及び各溶剤の表面張力は、SITA Process Solutions社製の「SITA Messtechnik GmbH science line t60」を用いて、23℃、0.05Hzの測定条件で求めた。
【0089】
用いた材料は、以下の通りである。
(顔料)
「カーボンブラック1」:三菱化学株式会社製「MA77」
「カーボンブラック2」:エボニックジャパン製「NEROX500」
【0090】
(顔料分散剤)
「ソルスパース18000」:日本ルーブリゾール株式会社製(有効成分100質量%)
「ソルスパース13940」:日本ルーブリゾール株式会社製(有効成分40質量%)
【0091】
(シリコーンオイル)
「鎖状シリコーン1」:信越化学工業株式会社製「KF96L−2CS」、ジメチルシリコーンオイル
「鎖状シリコーン2」:信越化学工業株式会社製「KF96L−5CS」、ジメチルシリコーンオイル
「変性シリコーン1」:東レ・ダウコーニング株式会社製「FZ−3196」、アルキル変性シリコーンオイル(3−オクチルヘプタメチルトリシロキサン)
「変性シリコーン2」:上記で合成、アルキル変性シリコーンオイル(3−テトラデシルヘプタメチルトリシロキサン)
「変性シリコーン3」:上記で合成、アルキル変性シリコーンオイル(1−ドデシルペンタメチルジシロキサン)
「変性シリコーン4」:上記で合成、アルキル変性シリコーンオイル(3−エイコシルヘプタメチルトリシロキサン)
【0092】
(極性有機溶剤:エステル系溶剤)
「2−メチルペンタン酸エチル」:東洋合成工業株式会社製
「オレイン酸エチル」:東京化成工業株式会社製
「イソノナン酸イソトリデシル」:高級アルコール工業株式会社製「KAK139」
「ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール」:高級アルコール工業株式会社製「KAK NDO」
【0093】
(極性有機溶剤:アルコール系溶剤)
「エタノール」:東京化成工業株式会社製
「デカノール」:東京化成工業株式会社製
「テトラデカノール」:東京化成工業株式会社製
【0094】
(極性有機溶剤:グリコールエーテル系溶剤)
「テトラエチレングリコールジメチルエーテル」:東京化成工業株式会社製
「トリエチレングリコールモノブチルエーテル」:東京化成工業株式会社製
【0095】
(石油系炭化水素溶剤:パラフィン系溶剤)
「ヘキサン」:東京化成工業株式会社製
(石油系炭化水素溶剤:イソパラフィン系溶剤)
「アイソパーM」:エクソンモービル社製
(石油系炭化水素溶剤:ナフテン系溶剤)
「エクソールD130」:エクソンモービル社製
【0096】
<評価>
上記した各インクをライン式インクジェットプリンタ「オルフィスFW5230」(理想科学工業株式会社製)に装填し、普通紙「理想用紙薄口」(日本製紙株式会社製)に、ベタ画像を100枚印刷して、印刷物を得た。印刷は、解像度300×300dpiにて、1ドット当りのインク量が42plの吐出条件で行った。
なお、「オルフィスFW5230」は、ライン型インクジェットヘッドを使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印刷を行うシステムである。
得られた100枚目の印刷物及び100枚印刷後のインクジェットプリンタについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表2〜5に示す。
【0097】
(ローラ転写汚れ)
上記で得られた100枚目の印刷物のベタ画像部と非印刷部の境界部分のローラ転写汚れを目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
A:ほとんど汚れが確認できない。
B:汚れが確認されるが実際の使用上問題ないレベル。
C:汚れが顕著であり実際の使用上問題あるレベル。
【0098】
(画像濃度(表濃度))
上記で得られた100枚目の印刷物の1日放置後のベタ画像部の画像濃度(表濃度)を測定し、測定値を下記評価基準で評価した。画像濃度の測定には、光学濃度計(RD920、マクベス社製)を用いた。
A:OD値1.10以上
B:OD値1.05以上1.10未満
C:OD値1.05未満
【0099】
(裏抜け(裏濃度))
上記で得られた100枚目の印刷物の1日放置後のベタ画像部の裏側のOD値を測定し、測定値を下記評価基準で評価した。
A:裏側のOD値0.15未満
B:裏側のOD値0.15以上0.20未満
C:裏側のOD値0.20以上
【0100】
(ミストの発生)
ベタ画像100枚印刷後の機体内のミスト汚れを下記評価基準で評価した。
A:ほとんど汚れが確認できない。
B:汚れが確認されるが実際の使用上問題ないレベル。
C:汚れが顕著であり実際の使用上問題あるレベル。
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
各表に示す通り、各実施例のインクでは、ローラ転写汚れ、裏抜け及びミストの発生を抑制することができ、且つ、画像濃度の高い画像が得られた。
【0106】
これに対して、シリコーンオイルの表面張力が低い比較例1では、裏抜けを抑制できない。また、シリコーンオイルの表面張力が高い比較例2では、ローラ転写汚れを抑制できない。また、極性溶剤の表面張力が低い比較例3及び4では、画像濃度が低い。また、極性溶剤ではなく、表面張力が28.0mN/mの石油系炭化水素溶剤が用いられた比較例5では、ミストの発生を抑制できない。また、シリコーンオイルではなく、表面張力が22.3mN/mと比較的低い極性溶剤が用いられた比較例6では、画像濃度が低く、裏抜けも抑制できない。また、シリコーンオイルではなく、表面張力が20.3mN/mと比較的低い石油系炭化水素溶剤が用いられた比較例7でも、画像濃度が低く、裏抜けも抑制できない。また、インクの表面張力が低い比較例8では、ミストの発生を抑制できない。また、インクの表面張力が高い比較例9では、画像濃度が低い。