(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
橋軸方向、前記橋軸方向に直交する橋軸直角方向、及び、前記橋軸方向と前記橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向、に延びる第1のコンクリートプレキャスト床版と第2のコンクリートプレキャスト床版とが互いに接合される継手部構造であって、
前記第1のコンクリートプレキャスト床版、及び前記第2のコンクリートプレキャスト床版は、共に、前記橋軸直角方向及び前記高さ方向に延びる端面から前記橋軸方向に突出する複数の継手用鉄筋と、前記端面の上端から前記橋軸方向に延びる凹部と、を有し、
前記第1のコンクリートプレキャスト床版の前記端面と前記第2のコンクリートプレキャスト床版の前記端面との間に形成される継手空間の上方に配置されると共に、前記第1のコンクリートプレキャスト床版の前記凹部、及び前記第2のコンクリートプレキャスト床版の前記凹部に設置される覆工板を備え、
前記覆工板は、前記継手空間において下方に延びる支持部を備え、
前記覆工板は、前記第1のコンクリートプレキャスト床版の上面、及び前記第2のコンクリートプレキャスト床版の上面と連続するように設置される、
継手部構造。
前記第1のコンクリートプレキャスト床版の前記端面、及び前記第2のコンクリートプレキャスト床版の前記端面の少なくともいずれかからは、前記継手空間の下側に延びる底版が突出しており、
前記支持部は、前記底版に支持される、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の継手部構造。
橋軸方向、前記橋軸方向に直交する橋軸直角方向、及び、前記橋軸方向と前記橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向、に延びる第1のコンクリートプレキャスト床版と第2のコンクリートプレキャスト床版とを互いに接合する接合方法であって、
前記第1のコンクリートプレキャスト床版、及び前記第2のコンクリートプレキャスト床版は、共に、前記橋軸直角方向及び前記高さ方向に延びる端面から前記橋軸方向に突出する複数の継手用鉄筋と、前記端面の上端から前記橋軸方向に延びる凹部と、を有し、
前記第1のコンクリートプレキャスト床版の底版と前記第2のコンクリートプレキャスト床版の底版とを突き合わせるように、前記第1のコンクリートプレキャスト床版、及び前記第2のコンクリートプレキャスト床版を設置する工程と、
前記第1のコンクリートプレキャスト床版の前記端面と前記第2のコンクリートプレキャスト床版の前記端面との間に形成される継手空間において下方に延びる支持部を備えた覆工板を、前記第1のコンクリートプレキャスト床版の前記凹部、及び前記第2のコンクリートプレキャスト床版の凹部に設置する工程と、
前記継手空間に充填材を充填させる工程と、
を備える接合方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレキャストコンクリート床版の接合作業は、速やかに行うことが求められる場合がある。しかしながら、前述したように、2体のプレキャストコンクリートの間の間詰め部に継手鉄筋を配置し、更に、間詰め部にコンクリートを打設して硬化を待たなければならないため、コンクリートプレキャスト床版の施工を速やかに行えないという現状がある。
【0006】
また、前述した継手構造では、一方のプレキャストコンクリート床版の下部から突出する突出部を他方のプレキャストコンクリート床版の突出部に突き合わせた後にコンクリートが打設される。このため、各突出部を突き合わせたときに割れたり欠けたりする懸念がある。よって、コンクリートプレキャスト床版の接合部分の強度において改善の余地がある。
【0007】
本発明は、施工を速やかに行うことができると共に、接合部分の強度を高めることができる継手部構造、及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る継手部構造は、橋軸方向、橋軸方向に直交する橋軸直角方向、及び、橋軸方向と橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向、に延びる第1のコンクリートプレキャスト床版と第2のコンクリートプレキャスト床版とが互いに接合される継手部構造であって、第1のコンクリートプレキャスト床版、及び第2のコンクリートプレキャスト床版は、共に、橋軸直角方向及び高さ方向に延びる端面から橋軸方向に突出する複数の継手用鉄筋と、端面の上端から橋軸方向に延びる凹部と、を有し、第1のコンクリートプレキャスト床版の端面と第2のコンクリートプレキャスト床版の端面との間に形成される継手空間の上方に配置されると共に、第1のコンクリートプレキャスト床版の凹部、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の凹部に設置される覆工板を備え、覆工板は、継手空間において下方に延びる支持部を備え、覆工板は、第1のコンクリートプレキャスト床版の上面、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の上面と連続するように設置される。
【0009】
前述した継手部構造では、第1のコンクリートプレキャスト床版及び第2コンクリートプレキャスト床版は、共に、端面の上端から橋軸方向に延びる凹部を有し、各凹部には、継手空間の上方に位置する覆工板が設けられる。覆工板は、第1のコンクリートプレキャスト床版の凹部の上面、及び第2コンクリートプレキャスト床版の凹部の上面に載せられるので、覆工板の配置を行って継手空間を上から容易に塞ぐことができる。また、覆工板は、第1のコンクリートプレキャスト床版の上面、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の上面と連続するように設置される。よって、覆工板の設置により、各コンクリートプレキャスト床版の上面を揃えることができるので、各コンクリートプレキャスト床版の上面及び覆工板の上面に車両等を通すことができる。従って、各コンクリートプレキャスト床版の施工を速やかに行うことができる。また、覆工板からは、継手空間において下方に延びる支持部が突出しており、この支持部は継手空間において充填材に埋設される。従って、覆工板の支持部が継手空間において支持されることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版と第2のコンクリートプレキャスト床版との接合部分の強度を高めることができる。
【0010】
また、覆工板は、凹部の上面に形成された穴部に上方から挿入される位置合わせ用のピンを有してもよい。この場合、位置合わせ用のピンを凹部の上面に形成された穴部に挿入することにより、凹部に対する覆工板の位置合わせを容易に行うことができる。従って、覆工板の設置作業を容易に行うことができる。
【0011】
また、穴部は、橋軸方向に延びる長円状とされていてもよい。この場合、橋軸方向において、穴部に対するピンの位置に若干のずれがあったときでも、穴部にピンを容易に挿入することができる。従って、凹部に対する覆工板の設置を一層容易に行うことができる。
【0012】
また、覆工板は、高さ方向に貫通すると共に充填材が注入される注入孔を有してもよい。この場合、注入孔から継手空間に充填材を注入することができるので、各コンクリートプレキャスト床版の接合作業をより効率よく行うことができる。
【0013】
また、覆工板は、継手空間において下方に延びるアンカー筋を有してもよい。この場合、継手空間においてアンカー筋が充填材に埋設されることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版と第2のコンクリートプレキャスト床版との接合部分の強度をより高めることができる。
【0014】
また、支持部は、継手空間を下方から覆う型枠に支持されてもよい。この場合、充填材の打設時に用いる型枠を、支持部を支持する部材として有効利用することができる。
【0015】
また、第1のコンクリートプレキャスト床版の端面、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の端面の少なくともいずれかからは、継手空間の下側に延びる底版が突出しており、支持部は、底版に支持されてもよい。この場合、継手空間を形成するコンクリートプレキャスト床版の底版を、支持部を支持する部位として有効利用することができる。また、コンクリートプレキャスト床版が底版を備えることにより、継手空間に充填材を注入するときに型枠を不要とすることができるので、施工性を高めることができる。
【0016】
また、前述の継手部構造は、支持部の先端を覆う防錆部材を備えてもよい。この場合、支持部の先端が外方に露出しても、防錆部材によって支持部の先端における錆の発生を抑制することができる。
【0017】
本発明に係る接合方法は、橋軸方向、橋軸方向に直交する橋軸直角方向、及び、橋軸方向と橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向、に延びる第1のコンクリートプレキャスト床版と第2のコンクリートプレキャスト床版とを互いに接合する接合方法であって、第1のコンクリートプレキャスト床版、及び第2のコンクリートプレキャスト床版は、共に、橋軸直角方向及び高さ方向に延びる端面から橋軸方向に突出する複数の継手用鉄筋と、端面の上端から橋軸方向に延びる凹部と、を有し、第1のコンクリートプレキャスト床版の
底版と第2のコンクリートプレキャスト床版の
底版とを突き合わせるように、第1のコンクリートプレキャスト床版、及び第2のコンクリートプレキャスト床版を設置する工程と、第1のコンクリートプレキャスト床版の端面と第2のコンクリートプレキャスト床版の端面との間に形成される継手空間において下方に延びる支持部を備えた覆工板を、第1のコンクリートプレキャスト床版の凹部、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の凹部に設置する工程と、継手空間に充填材を充填させる工程と、を備える。
【0018】
前述した接合方法は、第1のコンクリートプレキャスト床版の凹部、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の凹部に、継手空間の上方に位置する覆工板を設置する。このとき、覆工板を、第1のコンクリートプレキャスト床版の凹部の上面、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の凹部の上面に載せるので、覆工板の配置を行って継手空間を上から容易に塞ぐことができる。よって、第1のコンクリートプレキャスト床版、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の施工を速やかに行うことができる。また、覆工板からは、継手空間において下方に延びる支持部が突出し、支持部は継手空間において充填材に埋設される。従って、覆工板の支持部が継手空間において支持されることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版と第2のコンクリートプレキャスト床版との接合部分の強度を高めることができる。
【0019】
また、覆工板は、凹部の上面に形成された穴部に上方から挿入される位置合わせ用のピンを有し、覆工板を凹部に設置する工程では、穴部にピンを挿入し、第1のコンクリートプレキャスト床版の上面、及び第2のコンクリートプレキャスト床版の上面の高さに、覆工板の上面の高さを合わせてもよい。この場合、位置合わせ用のピンを凹部の上面に形成された穴部に挿入することにより、凹部に対する覆工板の位置合わせを容易に行うことができる。従って、覆工板の設置作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、施工を速やかに行うことができると共に、接合部分の強度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る継手部構造及び接合方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1のコンクリートプレキャスト床版10(コンクリートプレキャスト床版)、第1のコンクリートプレキャスト床版10とは異なる他の第2のコンクリートプレキャスト床版20(相手側コンクリートプレキャスト床版)、及び覆工板30を備えた継手部構造1を示す平面図である。継手部構造1は、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20とを覆工板30を介して連結する連結構造である。
【0024】
例えば、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20は、道路橋を成すプレキャスト床版である。道路橋において、複数のプレキャスト床版は、橋軸方向D1に沿って配置されており、複数のプレキャスト床版の一部のコンクリートプレキャスト床版を第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20としている。
【0025】
第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20は工場で予め製造され、予め製造された第1のコンクリートプレキャスト床版10、第2のコンクリートプレキャスト床版20及び覆工板30が現場に搬送される。第1のコンクリートプレキャスト床版10、覆工板30及び第2のコンクリートプレキャスト床版20が連結する方向と橋軸方向D1とは互いに一致する。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、覆工板30は、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20の間に形成される継手空間S(目地空間)を上から覆う部材であり、継手空間Sに充填材40を充填させるための注入孔33を有する。注入孔33は、例えば、格子状となるように橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に沿って複数並設されている。
【0027】
第1のコンクリートプレキャスト床版10は、直方体状を成すプレキャストブロック11と、橋軸方向D1に延びる複数の継手用鉄筋12とを備える。第2のコンクリートプレキャスト床版20は、プレキャストブロック11及び継手用鉄筋12と同様のプレキャストブロック21及び継手用鉄筋22を備える。プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21は、例えば、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる路面部位を構成する。すなわち、プレキャストブロック11の上面11a、及びプレキャストブロック21の上面21aは、共に路面を構成する。
【0028】
プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21は、高さ方向D3に厚みを有する。高さ方向D3は、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2の双方に直交する方向であり、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2も互いに直交する。プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21の高さ方向D3の厚さは、例えば、16cm以上且つ30cm以下である。継手空間Sの橋軸方向D1の長さも16cm以上且つ30cm以下である。但し、これらの値は適宜変更可能である。
【0029】
プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21は、例えば、道路橋を成す部位であるため、車両等の荷重を受ける。プレキャストブロック11の橋軸方向D1の一端に位置する端面11bと、プレキャストブロック21の橋軸方向D1の一端に位置する端面21bとが連結することによって継手部構造1が構築される。端面11bは、端面21bに橋軸方向D1に対向する面である。端面11b及び端面21bは、例えば、共に平坦面であり、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延在している。
【0030】
継手用鉄筋12は、プレキャストブロック11に埋め込まれると共に端面11bから棒状に突出している。継手用鉄筋12は、第2のコンクリートプレキャスト床版20に向かって直線状に延びている。各継手用鉄筋12の先端部には、各継手用鉄筋12から拡径する拡径部材13が取り付けられている。継手用鉄筋12は、橋軸直角方向D2に沿って複数配置されており、且つ高さ方向D3に沿って複数本ずつ(例えば2本ずつ)配置されている。
【0031】
端面11bからは、底版17が突出している。底版17は、端面11bの下側から橋軸方向D1に突出しており、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる板状を成している。底版17は、継手空間Sの約半分を下側から覆うように、橋軸直角方向D2の全体にわたって設けられている。例えば、底版17の突出長さは、継手用鉄筋12の突出長さよりも短い。
【0032】
第2のコンクリートプレキャスト床版20の継手用鉄筋22は、端面21bから第1のコンクリートプレキャスト床版10に向かって突出している。継手用鉄筋22には、継手用鉄筋12と同様に、拡径部材13が取り付けられている。継手用鉄筋22の配置、構成及び作用は、例えば、継手用鉄筋12の配置、構成及び作用と同様である。継手用鉄筋12及び継手用鉄筋22は、端面11b及び端面21bの間において、例えば、千鳥状に配置されている。また、端面21bからは、底版27が突出している。底版27の形状は、例えば、底版17の形状と同様であり、底版27は端面21bの下側から底版17に向かって突出している。底版27は、底版17が覆っていない継手空間Sの残り半分を下側から覆うように、橋軸直角方向D2の全体にわたって設けられている。
【0033】
プレキャストブロック11の上面11a、及びプレキャストブロック21の上面21aのそれぞれには、覆工板30が配置される凹部11c,21cが形成されている。凹部11c及び凹部21cは、共に、端面11b,21bの上端から橋軸方向D1に延びている。凹部11c,21cの深さは、覆工板30の厚さと一致する。また、平面視における凹部11c,21cと継手空間Sを含む矩形状の領域の面積は、平面視における覆工板30の面積と同一である。
【0034】
従って、端面11bと端面21bの間に継手空間Sを形成した状態で、プレキャストブロック11の凹部11c、及びプレキャストブロック21の凹部21cに覆工板30を載せることにより、覆工板30の上面30aは、第1のコンクリートプレキャスト床版10の上面11a、及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の上面21aと連続する。すなわち、覆工板30は、平面視における凹部11cと継手空間Sと凹部21cとを含む矩形状の領域にちょうど入り込むと共に、上面11a,21a及び覆工板30の上面30aが同一平面上に位置するように設置される。
【0035】
覆工板30は、上面11a,21aと凹部11c,21cとの間の段差部11f,21fに対向する。すなわち、覆工板30の橋軸方向D1を向く側面30c,30dのそれぞれが段差部11f,21fに対向する。また、橋軸方向D1において、段差部11f,21f及び側面30c,30dの位置と、端面11b,21bの位置とは、互いにずれている。よって、上から端面11b,21bに水等を侵入させにくくすることができる。すなわち、端面11b,21bへの水みちを長くすることができるので、接合部分全体としての耐久性を高めることができる。
【0036】
覆工板30は、端面11bと端面21bの間に位置する継手空間Sに配置される。覆工板30は、例えば、超高強度繊維補強コンクリート(UFC;Ultra high strength Fiber reinforced Concrete)によって構成されていてもよく、この場合、継手部構造1の強度を更に高めることが可能である。但し、覆工板30の材料は適宜変更可能である。覆工板30は、継手空間Sにおいて橋軸直角方向D2に長く延びており、平面視における覆工板30の形状は橋軸直角方向D2に長く延びる長方形状とされている。覆工板30は、位置決め用のピン31と、橋軸方向D1に一対に設けられるアンカー筋32と、継手空間Sにおいて下方に延びる支持部35とを備える。
【0037】
図2、
図3及び
図4に示されるように、ピン31は、橋軸方向D1において一対に設けられる。また、凹部11cの上面、及び凹部21cの上面のそれぞれには、穴部11e,21eが形成されている。穴部11e,21eは、共に、橋軸方向D1に延びる長円状とされている。よって、穴部11e,21eに対するピン31の橋軸方向D1の位置が多少ずれたとしても、穴部11e,21eへのピン31のスムーズな挿入が可能となる。
【0038】
穴部11e,21e及び橋軸方向D1に並ぶ一対のピン31は、例えば、継手空間Sの橋軸方向D1の中央に対して互いに対称となる位置に配置される。穴部11e,21eは、例えば、プレキャストブロック11,21に埋め込まれたインサートであり、穴部11e,21eのそれぞれにはピン31が圧入される。穴部11e,21e及びピン31は、プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21に対する覆工板30の位置決めを行う位置決め部として機能する。なお、位置決め部は、凹部及び凸部、又は波形の凹凸部等、穴部11e,21e及びピン31とは異なる形態であってもよい。
【0039】
アンカー筋32は、橋軸方向D1において一対に設けられる。一対のアンカー筋32は、例えば、継手空間Sの橋軸方向D1の中央に対して互いに対称となる位置に配置されている。各アンカー筋32は、覆工板30の下面30bから下方に延びており、各アンカー筋32の先端には折り返し部32aが設けられている。各折り返し部32aは、アンカー筋32の下部から覆工板30の中央側に曲がると共にU字状に上方に湾曲して折り返されている。各アンカー筋32は、継手空間Sに配置されると共に充填材40に埋設される。覆工板30に設けられるピン31及びアンカー筋32の数及び配置態様は適宜変更可能であり、例えば、橋軸直角方向D2に沿って複数のピン31が配置されると共に、橋軸直角方向D2に沿って複数のアンカー筋32が配置される。
【0040】
図5に示されるように、覆工板30は、橋軸直角方向D2に沿って配置される複数の支持部35を備える。なお、
図5では、簡略化のためピン31及びアンカー筋32の図示を省略している。各支持部35は、覆工板30の下面30bから下方に突出しており、棒状を成している。各支持部35の突出長さは、各アンカー筋32の突出長さよりも長く、例えば、各支持部35の下端は前述した底版17,27に当接する。これにより、各支持部35は、底版17,27に支持される。例えば、複数の支持部35は、橋軸直角方向D2に沿って一定間隔ごとに設けられており、複数の支持部35の間隔は、一例として、50cm以上且つ200cm以下である。覆工板30に設けられる支持部35の数は、例えば、5以上且つ20以下である。なお、これらの値は適宜変更可能である。
【0041】
図5及び
図6に示されるように、支持部35の先端には防錆部材36が設けられる。防錆部材36は、例えば、セラミックによって構成されている。この場合、支持部35の先端の強度を高めることができると共に、剥がれにくいという利点がある。なお、防錆部材36の材料は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)、ステンレス、又は、エポキシコーティングによる防錆処理が施された金属等、セラミック以外のものであってもよい。防錆部材36は、例えば、下方に向かうに従って拡径する拡径形状とされている。このように防錆部材36が拡径形状とされていることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10、第2のコンクリートプレキャスト床版20及び覆工板30の接合強度を一層高めることが可能である。
【0042】
次に、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20とを接合する接合方法について説明する。まず、第1のコンクリートプレキャスト床版10、第2のコンクリートプレキャスト床版20及び覆工板30を準備する(第1のコンクリートプレキャスト床版、第2のコンクリートプレキャスト床版及び覆工板を準備する工程)。次に、第1のコンクリートプレキャスト床版10、第2のコンクリートプレキャスト床版20及び覆工板30を現場まで搬送する。そして、吊り上げ及び吊り降ろしを行うことにより第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20を設置する。
【0043】
このとき、
図2に示されるように、第1のコンクリートプレキャスト床版10の端面11bと第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bとを対面させると共に、底版17を底版27に対向させる。そして、第1のコンクリートプレキャスト床版10の継手用鉄筋12と第2のコンクリートプレキャスト床版20の継手用鉄筋22とが千鳥状となるように、底版17及び底版27の突合せを行う。
【0044】
底版17と底版27とを突き合わせた後には、覆工板30を第1のコンクリートプレキャスト床版10の凹部11cの上面、及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の凹部21cの上面に設置する。このとき、一対のアンカー筋32と支持部35が継手空間Sで下方に延びると共に支持部35が底版17,27に突き当たるように覆工板30を設置する。そして、ピン31を、穴部11e,21eに挿し込む。この覆工板30の設置により、継手空間Sを上から塞ぎ込む(覆工板を設置する工程)。
【0045】
なお、覆工板30を設置した後には、覆工板30とプレキャストブロック11,21の間(側面30c,30dと段差部11f,21fとの間)に隙間を埋める埋め込み材を注入してもよい。更に、継手空間Sに充填材40を充填させる(充填材を充填する工程)。充填材40の充填は、覆工板30の注入孔33から継手空間Sに充填材40を充填することによって行う。以上のように充填材40を充填し、充填材40が硬化した後に、継手部構造1が完成する。
【0046】
次に、本実施形態に係る継手部構造1及び接合方法の作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係る継手部構造1及び接合方法では、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20は、共に、端面11b,21bの上端から橋軸方向D1に延びる凹部11c,21cを有し、各凹部11c,21cには、継手空間Sの上方に位置する覆工板30が設けられる。覆工板30は、第1のコンクリートプレキャスト床版10の凹部11cの上面、及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の凹部21cの上面に載せられるので、覆工板30の配置を行って継手空間Sを上から容易に塞ぐことができる。
【0047】
また、覆工板30は、第1のコンクリートプレキャスト床版10の上面11a、及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の上面21aと連続するように設置される。よって、覆工板30の設置により、各コンクリートプレキャスト床版10,20の上面11a,21aを揃えることができるので、各コンクリートプレキャスト床版10,20の上面11a,21a及び覆工板30の上面30aに車両等を通すことができる。従って、各コンクリートプレキャスト床版10,20の施工を速やかに行うことができる。
【0048】
また、覆工板30からは、継手空間Sにおいて下方に延びる支持部35が突出しており、支持部35は継手空間Sにおいて充填材40に埋設される。従って、覆工板30の支持部35が継手空間Sにおいて支持されることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20との接合部分の強度を高めることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る継手部構造1及び接合方法では、覆工板30は、凹部11c,21cの上面に形成された穴部11e,21eに上方から挿入される位置合わせ用のピン31を有する。よって、位置合わせ用のピン31を凹部11c,21cの上面に形成された穴部11e,21eに挿入することにより、凹部11c,21cに対する覆工板30の位置合わせを容易に行うことができる。従って、覆工板30の設置作業を容易に行うことができる。
【0050】
また、
図4に示されるように、穴部11e,21eは、橋軸方向D1に延びる長円状とされている。よって、橋軸方向D1において、穴部11e,21eに対するピン31の位置に若干のずれがあったときでも、穴部11e,21eにピン31を容易に挿入することができる。従って、凹部11c,21cに対する覆工板30の設置を一層容易に行うことができる。
【0051】
また、
図1に示されるように、覆工板30は、高さ方向D3に貫通すると共に充填材40が注入される注入孔33を有する。よって、注入孔33から継手空間Sに充填材40を注入することができるので、各コンクリートプレキャスト床版10,20の接合作業をより効率よく行うことができる。
【0052】
また、
図2に示されるように、覆工板30は、継手空間Sにおいて下方に延びるアンカー筋32を有する。よって、継手空間Sにおいてアンカー筋32が充填材40に埋設されることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20との接合部分の強度をより高めることができる。
【0053】
また、第1のコンクリートプレキャスト床版10の端面11b、及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bからは、継手空間Sの下側に延びる底版17,27が突出しており、支持部35は、底版17,27に支持されている。よって、継手空間Sを形成する第1のコンクリートプレキャスト床版10の底版17と第2のコンクリートプレキャスト床版20の底版27とを、支持部35を支持する部位として有効利用することができる。また、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20が底版17,27を備えることにより、継手空間Sに充填材40を注入するときに型枠を不要とすることができるので、施工性を高めることができる。
【0054】
また、継手部構造1は、支持部35の先端を覆う防錆部材36を備える。よって、支持部35の先端が充填材40から露出する場合であっても、防錆部材36によって支持部35の先端における錆の発生を抑制することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る継手部構造41及び接合方法について
図7を参照しながら説明する。
図7に示されるように、継手部構造41は、構築時に型枠Fを用いる点と、底版17,27を有しない点が第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0056】
第2実施形態に係る継手部構造41の接合方法では、型枠Fは、継手空間Sを下から塞ぐ位置に固定される(型枠を固定する工程)。そして、一対のアンカー筋32と支持部35が継手空間Sで下方に延びると共に支持部35が型枠Fに突き当たるように覆工板30を配置し、前述と同様に覆工板30の設置を行う(覆工板を設置する工程)。その後は、継手空間Sに充填材40を充填し、充填材40の硬化後に型枠Fを外して継手部構造41が完成する。
【0057】
以上、第2実施形態に係る継手部構造41及び接合方法では、覆工板30から支持部35が突出しており、支持部35は継手空間Sにおいて充填材40に埋設される。従って、覆工板30の支持部35が継手空間Sにおいて支持されることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20との接合部分の強度を高めることができるので、前述の実施形態と同様の効果が得られる。更に、第2実施形態では、支持部35は、継手空間Sを下方から覆う型枠Fに支持される。従って、充填材40の打設時に用いる型枠を、支持部35を支持する部材として有効利用することができる。
【0058】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る継手部構造51について
図8を参照しながら説明する。
図8に示されるように、継手部構造51は、第1のコンクリートプレキャスト床版60及び第2のコンクリートプレキャスト床版70の段差部61f,71f、及び覆工板80の橋軸方向D1の側面80c,80dの形状が前述の実施形態と異なっている。
【0059】
第1実施形態の第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20では、段差部11f,21f、及び覆工板30の側面30c,30dは、共に高さ方向D3に延びていた。しかしながら、第1のコンクリートプレキャスト床版60及び第2のコンクリートプレキャスト床版70では、段差部61f,71f、及び覆工板80の側面80c,80dは、共に高さ方向D3に対して傾斜している。具体的には、段差部61f及び側面80cは、上方に向かうに従ってプレキャストブロック61の端面61bから離れる方向に傾斜している。また、段差部71f及び側面80dは、上方に向かうに従ってプレキャストブロック71の端面71bから離れる方向に傾斜している。
【0060】
以上、第3実施形態に係る継手部構造51では、段差部61f,71f、及び覆工板80の側面80c,80dが共に端面61b,71bから離れる方向に傾斜している。従って、プレキャストブロック61,71の凹部61c,71cに覆工板80を載せやすい形状とされているので、施工を更に容易に行うことができる。
【0061】
以上、本発明に係る継手部構造及び接合方法の各実施形態について説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形してもよい。すなわち、継手部構造の各部の構成、並びに、接合方法の各工程の内容及び順序は適宜変更可能である。
【0062】
例えば、前述の実施形態では、棒状の支持部35が複数設けられる覆工板30について説明したが、支持部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述の実施形態に限定されず適宜変更可能である。
【0063】
また、前述の実施形態では、
図2に示されるように、第1のコンクリートプレキャスト床版10が底版17を備え、第2のコンクリートプレキャスト床版20が底版27を備える例について説明した。しかしながら、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20のいずれかのみが底版を備えていてもよい。この場合、例えば、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の一方から突出する底版が他方のコンクリートプレキャスト床版の端面に当接する。更に、底版の形状及び大きさは適宜変更可能である。