【文献】
Boriana Atanasova et al.,Olfactory anhedonia and negative olfactory alliesthesia in depressed patients,Psychiatry Research,2010年,176,pp.190-196
【文献】
Olga Pollatos et al.,Reduced olfactory sensitivity in subjects with depressive symptoms,Journal of Affective Disorders,2007年,102,pp.101-108
【文献】
T. Hummel et al.,'Sniffin' Sticks': Olfactory Performance Assessed by the Combined Testing of Odor Identification, Odor Discrimination and Olfactory Threshold,Chem. Senses,1997年,22,pp.39-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
気分消沈を含む精神障害又は精神疾患のインビボ診断における前記デバイスの使用が、健康で正常嗅覚を有する対照の対象と比較して、前記対象が、低下した嗅覚識別能力を有しているか否かを決定することを更に含み、嗅覚識別能力の低下が気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の指標である、請求項1又は2に記載の使用のためのデバイス。
気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の重篤度のインビボ診断における前記デバイスの使用が、前記対象の嗅覚識別能力の低下の程度の測定を更に含み、前記程度が高ければ、前記重篤度が高くなる、請求項1又は2に記載の使用のためのデバイス。
前記第3の組成物の臭気物質が前記第2の組成物の臭気物質と同一であり、前記第3の組成物中の臭気物質の相互の割合が前記第2の組成物中の臭気物質の割合と同一である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのデバイス。
前記第1の組成物が、健康な正常嗅覚のヒトによって、前記第2及び第3の組成物が発する臭い又は香りと異なる臭い又は香りを発していると意識的に知覚される割合で前記臭気物質を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのデバイス。
前記第1の組成物の臭気物質が無臭の液体溶媒との混合物中にあり、前記第2の組成物の臭気物質が無臭の液体溶媒との混合物中にあり、前記第3の組成物の臭気物質が無臭の液体溶媒との混合物中にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のためのデバイス。
前記第1、第2及び前記第3の組成物がそれぞれ、鼻の化学的感覚性能を評価するための臭気放出デバイスの中に別々に収容されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のためのデバイス。
前記臭気放出デバイスが、鼻の化学的感覚性能を評価するのに適したフェルトチップペンであり、前記フェルトチップペンが、ペンのフェルトチップに付随する貯蔵槽又は吸収材料の中に前記組成物を含むことにより、前記フェルトチップを通して前記組成物の臭気物質を放出する、請求項8に記載の使用のためのデバイス。
前記少なくとも2種の異なる臭気物質のそれぞれが、R-カルボン、S-カルボン、イソアミルアセテート、アネトール及びユージノールからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のためのデバイス。
対象の嗅覚検知閾値を測定するための複数の組成物を更に含み、前記複数の組成物のそれぞれが1種のみの臭気物質を含み、前記複数の全ての組成物が、同一の1種の臭気物質を含み、前記同一の1種の臭気物質の段階希釈を形成している、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のためのデバイス。
対象における気分消沈を含む精神障害もしくは精神疾患の診断又は治療、あるいは対象における気分消沈を含む精神障害もしくは精神疾患の重篤度の診断をするための、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイスを少なくとも2つ含む、キット。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願は、出願した特許請求の範囲に定義し、本明細書に記述する主題に関する。
【0018】
本出願は、従来技術から予想され又は推論されることに反して、嗅覚識別は、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した対象において顕著に低下していることを示す。
【0019】
本出願において、前記精神障害又は精神疾患は、特にうつ病性障害及びうつ、より詳細にはうつ病エピソード、大うつ病エピソード及び大うつ病障害(MDD)を包含する。
【0020】
本出願において、用語「精神障害」、「精神疾患」、「気分障害」、「気分消沈」、「うつ病性障害」、「うつ」、「大うつ病エピソード」及び「大うつ病障害」は、当分野におけるそれぞれの通常の意味を有する。
【0021】
例えばAmerican Psychiatric Association (1000 Wilson Boulevard, Suite 1825, Arlington, VA 22209-3901, U.S.A.; http://www.psychiatry.org/home)編、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM)、例えばDSM-IV-TR版(第4版、テキスト修正、2000年7月出版)又はDSM-V版、2013年出版予定[http://psychiatryonline.org/]を参照されたい。
【0022】
例えば、BECK DEPRESSION INVENTORY(登録商標)(BDI)、より詳細にはBDI-II 版、1996年出版(Beck, A.T., Steer, R.A., & Brown, G.K. 1996, Manual for the Beck Depression Inventory-II. San Antonio, TX: The Psychological Corporation, U.S.A.)を参照されたい。
【0023】
本出願は、嗅覚識別能力における前記喪失が、対象を少なくとも2種の異なる臭気物質を含む混合物、より詳細には前記少なくとも2種の異なる臭気物質を異なる割合で含む混合物に曝すことによって観察されることを示す。
【0024】
より詳細には、本出願は、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した対象が、少なくとも2種の異なる臭気物質をある割合で含む混合物を、同一の少なくとも2種の異なる臭気物質を異なる割合で含む混合物から識別する能力が低下していることを示す。本出願は、前記嗅覚識別能力の喪失が、フルオキセチン治療(PROZAC(登録商標))等の標準的なSSRI/SNRI治療によって回復しないことを更に示す。この実証を
図4Aに示す。
【0025】
本出願はまた、嗅覚検知能力、即ち対象が1種の(単)臭気物質の検知を停止し又は開始する閾濃度に関する実証を提供する(閾値試験は他のいかなる臭気物質とも混合していない単一の臭気物質を段階希釈することによって実施される)。本出願は、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した対象においては嗅覚検知能力が低下しているが、フルオキセチン治療(PROZAC(登録商標))等の標準的なSSRI/SNRI治療によって回復することを示す。この実証を
図4Bに示す。
【0026】
したがって、本出願は、
- 嗅覚検知能力及び嗅覚識別能力の両方は、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した対象においては低下していること、及び
- フルオキセチン治療(PROZAC(登録商標))等の標準的なSSRI/SNRI治療によって嗅覚検知閾値は回復するが、嗅覚識別能力は回復しないことを示す。「嗅覚検知閾値」、「嗅覚識別」及び「嗅覚識別能力」という用語は、当分野におけるそれぞれの通常の意味に沿った意味を有する。Hummelら1997 (Chem. Senses 22: 39-52)参照。
【0027】
上述のように(及び以下に示すように)、本出願の実証は、特に本発明者らが当技術における先入観、より詳細には嗅覚識別能力に関する先入観(背景技術の項を参照)を克服したという事実に、及び少なくとも2種の異なる臭気物質を異なる割合で含む混合物を用いる、改善された嗅覚識別試験を実行するという概念及び簡約化に根差している。本出願の手段は非侵襲的な手段であるという更なる利点を有している。
【0028】
したがって、本出願は臭気物質の混合物及び混合物中の臭気物質を含む組成物に関する。前記臭気物質は少なくとも2種の異なる臭気物質、より詳細には2種の異なる臭気物質からなる。
【0029】
前記2種の、又は少なくとも2種の臭気物質は、哺乳類によって、又は少なくとも1種の哺乳類の種又は種類によって、有利には少なくともヒトによって無臭と感じられる(即ち嗅覚認知によって臭い及び香りが感知されない)、(薬学的に許容される)ビヒクル、より詳細にはビヒクルの中に、これと混合されて存在し得る。有利には、前記ビヒクルは、前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質のそれぞれが発する臭い又は香りを変化させない。より詳細には、前記ビヒクルは、前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質を共に均一に混合するために構造的に適した、例えば溶媒、クリーム又はペーストである。有利には、前記ビヒクルは溶媒である。より詳細には、前記ビヒクルは水、鉱油又はプロピレングリコール等の無臭の液体溶媒である。
【0030】
本出願の混合物又は組成物は、臭い又は香りを放出するための、より詳細には嗅覚試験のためのデバイス又は機器の上又は中に含まれ得る。したがって本出願は、本出願の混合物又は組成物を含む、臭い又は香りを放出するための、より詳細には嗅覚試験のためのデバイス又は機器に関する。本出願のデバイス又は機器は、前記デバイス又は機器の中に、又はその上に含まれる本出願の混合物又は組成物が発する臭い、香り又は匂いを放出するための構造を含む。より詳細には、本出願のデバイス又は機器の構造は、哺乳類が嗅ぎ、又は匂うことに、より詳細には哺乳類が能動的に嗅ぎ、又は匂うことに適合し、又は特に適合している。より詳細には、本出願のデバイス又は機器の構造は、前記混合物又は組成物が発する臭い、香り又は匂いを哺乳類が[能動的に]嗅ぎ又は匂うことを可能にするように適合し、又は特に適合している。
【0031】
本出願において、「哺乳類」という用語は、任意の哺乳類、より詳細には非ヒト哺乳類、齧歯類(より詳細にはマウス)、又はヒト、更により詳細には罹患した非ヒト哺乳類若しくは罹患したヒト、更により詳細には気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した、又は罹患したと疑われる、疾患を有する非ヒト哺乳類若しくは疾患を有するヒトを意味する。
【0032】
本出願の1つの特定の実施形態によれば、「哺乳類」という用語は、ヒト、より詳細には疾患を有するヒト、更により詳細には気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した、又は罹患したと疑われる、疾患を有するヒトを意味する。
【0033】
より詳細には、本出願の嗅覚デバイス又は機器は、鼻の化学的感覚能力を評価するための臭気放出デバイスである。これは、完全に鼻の外又は鼻孔の外のデバイス若しくは機器、又は(部分的に)鼻の中又は鼻孔の中のデバイス若しくは機器として機能し得る。
【0034】
臭い又は香りを放出するための、より詳細には嗅覚試験のためのデバイス又は機器は、当業者には入手可能である。これらの中には、
- 例えばSensonics社(P.O. Box 112 Haddon Heights, NJ 08035, USA)から「Smell Identification TestT」として市販されている「University of Pennsylvania Smell Identification Test」(UPSIT) [Dotyら1984, Physiol. Behav. 32: 489-502; Dotyら1984, Laryngoscope 94 (2Pt1): 176-178]、
- その小スケール版である「Cross Cultural Smell Identification Test」(CC-SIT) [Doty ら1996, Laryngoscope 106 (3Pt1): 353-356]、
- 「Connecticut Chemosensory Clinical Research Center Test」(CCCRC) [Cainら1988, Laryngoscope 98:83-88; Cain 1989, Ear Nose Throat J. 68: 316, 322-328]、及び
- 例えばBurghardt Messtechnik社(Tinsdaler Weg 175, D-2280 Wedel, Germany;商品参照LA-13-00134, LA-13-00136, LA-13-00138, LA-13-00135及びLA-13-00137; http://www.burhart-mt.de)によって商品化された嗅覚試験バッテリー「SNIFFIN' STICKS(商標)」[Kobalら1996, Rhinology 34: 222-226; Hummelら1997, Chem. Senses 22: 39-52; Kobalら2000, Eur. Arch. Otorhinolaryngol. 257: 205-211; Hummelら2001, Ann. Otol. Rhinol. and Laryngol. 110: 976-981; Hummelら2007, Eur. Arch. Otorhinolaryngol. 364(3): 237-243]
において用いられている嗅覚デバイス又は機器が含まれる。
【0035】
UPSIT及びCCSIT試験等の試験において用いられる嗅覚デバイス又は機器は複数のカード又は小冊子のページを含み、これらはそれぞれ、例えばバインダーでマイクロカプセル化することによってその中に埋め込まれた1種の臭気物質(又は対照物質)を含む。カード又はページの表面を引っ掻くことによって、臭気物質が放出される。
【0036】
CCCRC試験等の試験において用いられる嗅覚デバイス又は機器は例えばポリエチレンボトル等の複数のボトル又はジャーを含み、これらはそれぞれ、1種の臭気物質(又は対照物質)、例えば液体状態の臭気物質を含む。ボトル又はジャーには一般に、一方又は両方の鼻孔に適合し、嗅ぐ人に臭気物質を放出する飛び出し式の吐出口が設けられている。
【0037】
SNIFFIN' STICKS(商標)試験等の試験において用いられる嗅覚デバイス又は機器はキャップされた複数のフェルトチップペンを含み、これらはそれぞれ、ペンのフェルトチップに付随する貯蔵槽又は吸収材料の中に1種の臭気物質(又は対照物質)を含む。ペンからキャップを取り外し、フェルトチップを鼻孔から数cm(例えば約2cm)のところに置き、フェルトチップを通して放出される臭気物質を匂い又は嗅ぐ。
【0038】
したがって、本出願の嗅覚デバイス又は機器の例は、
- 任意選択により臭気物質をトラップするのに適したマイクロカプセルを含むフィルター、カード又はページ等の吸収材料、より詳細には吸収性の繊維及び/又はセルロース材料、
- ボトル又はジャー、例えば任意選択により一方又は両方の鼻孔に適合する飛び出し式の吐出口が設けられたポリエチレンボトル、
- 前記「SNIFFIN'STICKS(商標)」バッテリーのフェルトチップペン等のペン様放出デバイス
等の、臭気物質の貯蔵槽として、及び前記臭気物質の放出器として機能し得る任意の構造を含む。
【0039】
有利には、デバイスの構造は、鼻の化学的感覚能力の評価、より詳細にはヒトの鼻の化学的感覚能力の評価に適合し、又は特に適合している。
【0040】
臭気物質は臭い又は香りを発する任意の物質若しくは化合物、又は特有の匂いを有する任意の物質若しくは化合物である。臭い、香り又は匂いは、鼻孔を通して匂い、又は嗅ぐことにより哺乳類によって意識的に知覚される(嗅覚認知)臭い、香り又は匂いである。
【0041】
有利には、臭気物質は前記哺乳類、より詳細には臭気物質が意図しているヒト集団、より詳細にはヒトによって(嗅覚認知によって)特定することができる物質又は化合物である。
【0042】
臭気物質は揮発性及び/又は疎水性、有利には揮発性かつ疎水性の物質又は化合物であり得る。
【0043】
有利には、臭気物質は一般に哺乳類、より詳細にはヒトに安全であると認められる物質又は化合物である。
【0044】
有利には、臭気物質は化合物、より詳細には単分子化合物である。
【0045】
本出願の1つの態様によれば、前記少なくとも2種の臭気物質のそれぞれ、より詳細には前記2種の臭気物質のそれぞれは、単分子化合物、より詳細にはヒトの嗅覚認知によって特定することができる単分子化合物、更により詳細にはヒトの嗅覚認知によって特定することができる揮発性、疎水性の単分子化合物、更により詳細には揮発性、疎水性でヒトの嗅覚認知によって特定することができ、一般にヒトに安全であると認められる単分子化合物である。
【0046】
「異なる臭気物質」という表現は、異なる臭い又は香りを発する臭気物質を意味する。したがって、臭気物質は他の臭気物質と異なる、又は異なっていると知覚される臭い又は香りを発すれば、前記他の臭気物質と異なっている。より詳細には、臭気物質は同じ哺乳類の種又は種類に属する代表的な数の正常嗅覚の健康な哺乳類の大多数が異なる臭い又は香りを発すると知覚すれば、別の臭気物質と異なっている。例えば、臭気物質は同じ哺乳類の種又は種類に属する代表的な数の正常嗅覚の健康な哺乳類の40%超が異なる臭い又は香りを発すると知覚すれば、別の臭気物質と異なっている。より詳細には前記百分率は45%超、より詳細には50%超、より詳細には55%超、より詳細には60%超、より詳細には65%超である。同じ哺乳類の種又は種類に属する正常嗅覚の健康な哺乳類の代表的な数は、試験をする哺乳類の種又は種類により、当業者によって決定することができる。その数は一般に10を超え、より詳細には20を超える。
【0047】
本出願の1つの態様によれば、前記少なくとも2種の臭気物質のそれぞれ、より詳細には前記2種の臭気物質のそれぞれは、アニス、リンゴ、バナナ、キャラメル、チョコレート、シナモン、クローブ、ココア、ココナッツ、コーヒー、コーラ、ディル、ユーカリプタス、魚、花、蜂蜜、ニンニク、ショウガ、グレープフルーツ、草、ラベンダー、皮革、レモン、ライラック、スズラン、リコリス、メロン、ミント、マッシュルーム、タマネギ、オレンジ、モモ、ナシ、ペパーミント、パイナップル、バラ、スペアミント、ターペンタイン、ラズベリー、ゴマ油、燻製肉、醤油及びバニラからなる群から選択される(健康な正常嗅覚のヒトによって知覚される)臭い又は香りを発する単分子化合物である。
【0048】
本出願の1つの態様によれば、前記少なくとも2種の臭気物質のそれぞれ、より詳細には前記2種の臭気物質のそれぞれは、アニス、バナナ、クローブ、ディル及びスペアミントからなる群から選択される(健康な正常嗅覚のヒトによって知覚される)臭い又は香りを発する単分子化合物である。
【0049】
そのような臭い又は香りを発する単分子化合物の例には:
- スペアミントの臭い又は香りのためのR-カルボン(又はL-カルボン若しくはカルボン-)、
- ディルの臭い又は香りのためのS-カルボン(又はD-カルボン若しくはカルボン+)、
- バナナの臭い又は香りのためのイソアミルアセテート又はn-ブタノール、より詳細にはイソアミルアセテート、
- アニスの臭い又は香りのためのアネトール、
- クローブの臭い又は香りのためのユージノール、
- バラの臭い又は香りのための2-フェニルエタノール、
- バラの臭い又は香りのためのゲラニオール、
- スズランの臭い又は香りのためのリナロール、
- ユーカリプタスの臭い又は香りのためのシネオール、
- オレンジの臭い又は香りのためのD-リモネン(又はR-リモネン若しくはリモネン+)、
- ターペンタインの臭い又は香りのためのL-リモネン(又はS-リモネン若しくはリモネン-)、
- ミントの臭い又は香りのためのメントール、及び
- シナモンの臭い又は香りのためのシナモンアルデヒド
が含まれる。
【0050】
例えばArctander atlas (Arctander S.“Perfume and flavor chemicals: (aroma chemicals)", Allured Publishing Corporation, Carol Stream IL, 1994)を参照されたい。
【0051】
またhttp://senselab.med.yale.edu/odordb/eavObList.aspx?db=5&cl=1から入手可能なOdorDB database (Yale Center for Medical Informatics, U.S.A.)を参照されたい。
【0052】
本出願の1つの態様によれば、前記少なくとも2種の臭気物質のそれぞれ、より詳細には前記2種の臭気物質のそれぞれは、R-カルボン、S-カルボン、イソアミルアセテート、アネトール及びユージノールからなる群から選択される単分子化合物である。
【0053】
上述のように、上記少なくとも2種の臭気物質のそれぞれ、又は上記2種の臭気物質のそれぞれは相互に異なっている。例えば:
- 前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の一方はスペアミントの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばR-カルボン)であり、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の他方は:
ディルの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばS-カルボン)若しくは
バナナの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばイソアミルアセテート)若しくは
アニスの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばアネトール)若しくは
クローブの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばユージノール)であり、
又は
- 前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の一方はディルの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばS-カルボン)であり、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の他方は:
スペアミントの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばR-カルボン)若しくは
バナナの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばイソアミルアセテート)若しくは
アニスの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばアネトール)若しくは
クローブの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばユージノール)であり、
又は
- 前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の一方はバナナの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばイソアミルアセテート)であり、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の他方は:
ディルの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばS-カルボン)若しくは
スペアミントの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばR-カルボン)若しくは
アニスの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばアネトール)若しくは
クローブの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばユージノール)であり、
又は
- 前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の一方はアニスの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばアネトール)であり、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の他方は:
ディルの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばS-カルボン)若しくは
バナナの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばイソアミルアセテート)若しくは
スペアミントの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばR-カルボン)若しくは
クローブの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばユージノール)であり、
又は
- 前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の一方はクローブの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばユージノール)であり、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の他方は:
ディルの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばS-カルボン)若しくは
バナナの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばイソアミルアセテート)若しくは
アニスの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばアネトール)若しくは
スペアミントの臭い又は香りを発する単分子化合物(例えばR-カルボン)である。
【0054】
本出願の混合物又は組成物において、前記少なくとも2種の臭気物質、又は前記2種の臭気物質は、当業者が適切とみなす任意の割合で混合物中に含まれる。
【0055】
例えば、前記少なくとも2種の臭気物質、又は前記2種の臭気物質は、本出願の混合物又は組成物中に1:1〜1:5の範囲の割合で、より詳細には1:1.5〜1:4の範囲の割合で、例えば1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5又は1:4の割合で含まれる。「X:Y」の割合は、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の一方のX部に対する、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の他方のY部を意味する(X及びYは同一でも異なっていてもよい)。前記部の値は体積部又は重量部であり、より詳細には体積部である。
【0056】
例えば前記少なくとも2種の臭気物質、又は前記2種の臭気物質は、本出願の混合物又は組成物中に0.8%/0.2%〜0.2%/0.8%〜0.2%/0.8%の範囲の割合で、より詳細には0.6%/0.4%〜0.4%/0.6%の範囲の割合で、例えば0.8%/0.2%、0.6%/0.4%、0.4%/0.6%又は0.2%/0.8%の割合で含まれる。「X%/Y%」の割合は、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の一方のX%に対して前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の他方のY%を意味する。臭気物質の%値は前記混合物中の混合物の全体積又は全重量、より詳細には前記混合物の全体積に対して表わした前記臭気物質の体積又は重量、より詳細には体積である。
【0057】
例えば、前記少なくとも2種の臭気物質、又は前記2種の臭気物質は、本出願の混合物又は組成物中に8/2〜2/8の範囲の割合で、より詳細には6/4〜4/6の範囲の割合で、例えば8/2、6/4、4/6又は2/8の割合で含まれる。「X/Y」の割合は、前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の一方の濃度Xに対して前記少なくとも2種の、又は前記2種の臭気物質の他方の濃度Yを意味する。X及びYの濃度は同じ単位で、例えば体積/体積パーセントで、体積/重量パーセントで、又は重量/重量パーセントで、より詳細には体積/体積パーセントで表わされ、前記混合物中の混合物の全体積又は全重量、より詳細には前記混合物の全体積に対して表わされる。
【0058】
より詳細には、本出願は連続的な使用のための本出願のいくつかの(異なる)混合物又は組成物の機能的組合せに関する。前記いくつかの混合物のそれぞれは、上述のように(及び以下に説明するように)臭い又は香りを放出するためのデバイス又は機器の中又は上に(別々に)含まれ得る。
【0059】
本出願の機能的組合せにおいて、前記いくつかの(異なる)混合物又は組成物は、相互に区別され、又は分離されている(及び区別され又は分離されたままになっている)。したがって、これらが臭い又は香りを放出するためのデバイス又は機器の中又は上に含まれる場合、これらは一緒に混合されない。有利には、これらは同じデバイス又は機器の中には収容されない。例えば、前記いくつかの混合物又は組成物のそれぞれは、上述の(及び以下に説明する)鼻の化学的感覚能力を評価するための臭気放出デバイスの中に別々に収容される。
【0060】
臭気物質は、同一の機能的組合せに属するそれぞれの混合物又は組成物において同一である。即ち、これらは同一の物質又は組成物である。
【0061】
前記いくつかの混合物又は組成物の少なくとも1つは、前記臭気物質を同一の機能的組合せの他の混合物又は組成物とは異なる割合で含む。
【0062】
したがって、組み合わせの第1の組成物中の前記(少なくとも)2種の臭気物質の一方の、前記(少なくとも)2種の臭気物質の他方に対する割合は、同一の機能的組合せの少なくとも1つの第2の組成物中のそれらの割合とは異なる。
【0063】
したがって、本出願は、
- 臭気物質を含む少なくとも1つの第1の混合物又は組成物であって、前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物の臭気物質が(少なくとも)2種の異なる臭気物質からなる、少なくとも1つの第1の混合物又は組成物、
及び、前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物とは分離され、又は区別されて、
- 臭気物質を含む少なくとも1つの第2の混合物又は組成物であって、前記少なくとも1つの第2の混合物又は組成物の臭気物質が(少なくとも)2種の異なる臭気物質からなる、少なくとも1つの第2の混合物又は組成物
を含み、前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物の臭気物質が前記少なくとも1つの第2の混合物又は組成物の臭気物質と同一の化合物であり、
前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物中の前記臭気物質の(相互の)割合が前記少なくとも1つの第2の混合物又は組成物中のそれらの割合と異なる、機能的組合せに関する。
【0064】
例えば、前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物中の少なくとも1種の臭気物質の濃度は、前記少なくとも1つの第2の混合物又は組成物中のその割合とは異なる。
【0065】
例えば、前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物中の(少なくとも2種の)臭気物質のそれぞれの濃度は、前記少なくとも1つの第2の混合物又は組成物中のそれぞれの濃度とは異なる。
【0066】
本出願の1つの有利な態様によれば、前記少なくとも1つの第1の組成物及び前記少なくとも1つの第2の組成物は、連続的な使用、より詳細にはヒト、より詳細には疾患を有するヒトの嗅覚識別障害の検出における連続的な使用のためのものである。
【0067】
本出願の機能的組合せは、当業者が適切とみなす任意の数の本出願の混合物又は組成物を含み得る。例えば、本出願の機能的組合せは、2つ又は3つの本出願の混合物又は組成物を含み得る。
【0068】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に区別され、又は分離された2つ又は3つの本出願の混合物又は組成物を含み、前記2つ又は3つの混合物又は組成物の臭気物質は同一であるが、前記2つ又は3つの混合物又は組成物の1つに、残りの1つ又は2つの混合物又は組成物とは異なる割合で含まれる。本出願の3つの混合物又は組成物の数の場合、前記残りの2つの混合物又は組成物は同一、即ち重複であってもよい。
【0069】
したがって、本出願は、
- 臭気物質を含む第1の組成物であって、前記第1の組成物の臭気物質が少なくとも2種の異なる臭気物質からなる、第1の組成物、
及び、前記第1の組成物とは分離され、又は区別されて、
- 臭気物質を含む第2の組成物であって、前記第2の組成物の臭気物質が少なくとも2種の異なる臭気物質からなる、第2の組成物
を含み、前記第2の組成物が重複して含まれている、機能的組合せに関する。
【0070】
したがって本出願は、
- 臭気物質を含む第1の組成物であって、前記第1の組成物の臭気物質が少なくとも2種の異なる臭気物質からなる、第1の組成物、
及び、前記第1の組成物とは分離され、又は区別されて、
- 臭気物質を含む第2の組成物であって、前記第2の組成物の臭気物質が少なくとも2種の異なる臭気物質からなる、第2の組成物、
及び、前記第1の組成物及び前記第2の組成物とは分離され、又は区別されて、
- 臭気物質を含む第3の組成物であって、前記第3の組成物の臭気物質が少なくとも2種の異なる臭気物質からなる、第3の組成物
を含み、前記第3の組成物が前記第2の組成物と重複している、機能的組合せに関する。
【0071】
前記第3の組成物は前記第2の組成物と重複しているので、前記第2の組成物の臭気物質は前記第3の組成物の臭気物質と同一の化合物であり、前記第2の組成物中の臭気物質の相互の割合は前記第3の組成物中のそれらの割合と同一である。
【0072】
前記第1の組成物は前記第2及び第3の組成物と同一の機能的組合せに属しているので、前記第1の組成物の臭気物質は前記第2の組成物の臭気物質及び前記第3の組成物の臭気物質と同一の化合物であるが、前記第1の組成物中の臭気物質の相互の割合は、前記第2の組成物中及び前記第3の組成物中のそれらの割合とは異なる。
【0073】
有利には、同一の機能的組合せの中の割合の差異は、健康な正常嗅覚のヒトが識別するのに十分である。したがって、本出願の1つの有利な態様によれば、同一の組み合わせの他の混合物又は組成物とは異なる割合で前記臭気物質を含む少なくとも1つの混合物又は組成物は、その組み合わせの他の混合物又は組成物が発する臭い又は香りと異なる臭い又は香りを発していると意識的に知覚(嗅覚認知)される。
【0074】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物を含み、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は、同一の2種又は同一の少なくとも2種の臭気物質であり、前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質の一方は前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方に8/2の割合で含まれ、一方前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質の他方は前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方に2/8の割合で含まれる。
【0075】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に分離された3つの本出願の混合物又は組成物を含み(前記3つの混合物又は組成物の2つは上述のように重複した組成物である)、前記3つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は同一の2種又は同一の少なくとも2種の臭気物質であり、前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質の一方は前記3つの混合物又は組成物の一方に8/2の割合で含まれ、一方前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質の他方は他の2つの(重複した)混合物又は組成物のそれぞれに2/8の割合で含まれる。
【0076】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物を含み、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は、同一の2種又は同一の少なくとも2種の臭気物質であり、前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質の一方は前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方に6/4の割合で含まれ、一方前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質の他方は前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方に4/6の割合で含まれる。
【0077】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に分離された3つの本出願の混合物又は組成物を含み(前記3つの混合物又は組成物の2つは上述のように重複した組成物である)、前記3つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は同一の2種又は同一の少なくとも2種の臭気物質であり、前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質の一方は前記3つの混合物又は組成物の一方に6/4の割合で含まれ、一方前記2種の、又は前記少なくとも2種の臭気物質の他方は他の2つの(重複した)混合物又は組成物のそれぞれに4/6の割合で含まれる。
【0078】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物を含み、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のR-カルボン及びS-カルボンであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はR-カルボン及びS-カルボンを8/2の割合で含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はR-カルボン及びS-カルボンを2/8の割合で含む。
【0079】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に分離された3つの本出願の混合物又は組成物を含み(前記3つの混合物又は組成物の2つは上述のように重複した組成物である)、前記3つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のR-カルボン及びS-カルボンであり、前記3つの混合物又は組成物の一方はR-カルボン及びS-カルボンを8/2の割合で含み、一方他の2つの(重複した)混合物又は組成物のそれぞれはR-カルボン及びS-カルボンを2/8の割合で含む。
【0080】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物を含み、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のイソアミルアセテート及びアネトールであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はイソアミルアセテート及びアネトールを8/2の割合で含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はイソアミルアセテート及びアネトールを2/8の割合で含む。
【0081】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に分離された3つの本出願の混合物又は組成物を含み(前記3つの混合物又は組成物の2つは上述のように重複した組成物である)、前記3つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のイソアミルアセテート及びアネトールであり、前記3つの混合物又は組成物の1つはイソアミルアセテート及びアネトールを8/2の割合で含み、一方他の2つの(重複した)混合物又は組成物のそれぞれはイソアミルアセテート及びアネトールを2/8の割合で含む。
【0082】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物を含み、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のアネトール及びユージノールであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はアネトール及びユージノールを8/2の割合で含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はアネトール及びユージノールを2/8の割合で含む。
【0083】
例えば、本出願の機能的組合せは、相互に区別され、又は分離された3つの本出願の混合物又は組成物を含み(前記3つの混合物又は組成物の2つは上述のように重複した組成物である)、前記3つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のアネトール及びユージノールであり、前記3つの混合物又は組成物の1つはアネトール及びユージノールを8/2の割合で含み、一方他の2つの(重複した)混合物又は組成物のそれぞれはアネトール及びユージノールを2/8の割合で含む。
【0084】
本出願はまた、少なくとも1つの本出願の機能的組合せを含むキットに関する。
【0085】
本出願は更に、連続的使用のための少なくとも2つの(異なる) 本出願の機能的組合せの集合体、より詳細には少なくとも2つの本出願の機能的組合せを含むキットに関する。
【0086】
前記少なくとも2つの(異なる) 本出願の機能的組合せは、相互に区別され、又は分離されている(及び区別され、又は分離されたままになっている)。前記少なくとも2つの(異なる)機能的組合せのそれぞれの臭気物質は、同一の化合物又は異なる化合物であってよい。これらが前記少なくとも2つの(異なる)機能的組合せのそれぞれに含まれる割合は、同一の割合又は異なる割合であってよい。
【0087】
したがって、本出願は、
- 臭気物質を含む少なくとも1つの第1の混合物又は組成物であって、前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物の臭気物質は(少なくとも)2種の異なる臭気物質からなる、第1の混合物又は組成物、
- 臭気物質を含む少なくとも1つの第2の混合物又は組成物であって、前記少なくとも1つの第2の混合物又は組成物の臭気物質は(少なくとも)2種の異なる臭気物質からなる、第2の混合物又は組成物、
- 臭気物質を含む少なくとも1つの第3の混合物又は組成物であって、前記少なくとも1つの第3の混合物又は組成物の臭気物質は2種の異なる臭気物質からなる、第3の混合物又は組成物、
- 臭気物質を含む少なくとも1つの第4の混合物又は組成物であって、前記少なくとも1つの第4の混合物又は組成物の臭気物質は2種の異なる臭気物質からなる、第4の混合物又は組成物、
の集合体であって、
前記少なくとも1つの第1、第2、第3及び第4の混合物又は組成物は相互に分離され、又は区別され、
前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物の臭気物質は、前記少なくとも1つの第2の混合物又は組成物の臭気物質と同一の化合物であり、
前記少なくとも1つの第1の混合物又は組成物中の臭気物質の(相互の)割合は、前記少なくとも1つの第2の混合物又は組成物中のそれらの割合とは異なり、
前記少なくとも1つの第3の混合物又は組成物の臭気物質は、前記少なくとも1つの第4の混合物又は組成物の臭気物質と同一の化合物であり、
前記少なくとも1つの第3の混合物又は組成物中の臭気物質の(相互の)割合は、前記少なくとも1つの第4の混合物又は組成物中のそれらの割合とは異なる、
集合体に関する。
【0088】
前記少なくとも1つの第1及び第2の混合物又は組成物の(少なくとも2種の)臭気物質は、前記少なくとも1つの第3及び第4の混合物又は組成物の(少なくとも)2種の臭気物質と異なっていてもよい。
【0089】
前記少なくとも1つの第1及び第2の混合物又は組成物の(少なくとも2種の)臭気物質は、前記少なくとも1つの第3及び第4の混合物又は組成物の(少なくとも)2種の臭気物質と同一の化合物で、異なる割合であってもよい。
【0090】
前記(少なくとも1つの)第2の混合物又は組成物は、上述のように重複して含まれていてもよい。前記(少なくとも1つの)第4の混合物又は組成物は、上述のように重複して含まれていてもよい。
【0091】
例えば、本出願のキットは、臭気物質が8/2及び2/8の割合である少なくとも1つの(第1の)本出願の機能的組合せ、並びに前記第1の機能的組合せと同一の臭気物質を異なる割合、例えば6/4及び4/6の割合で含む少なくとも1つの他の(第2の)機能的組合せを含む。前記第1及び第2の組み合わせのそれぞれにおいて、(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは重複して含まれていてもよい(上述のように)。
【0092】
例えば、本出願のキットは、臭気物質が8/2及び2/8の割合である少なくとも1つの(第1の)本出願の機能的組合せ、並びに前記第1の機能的組合せと異なる臭気物質を同一の又は異なる割合、例えば8/2及び2/8の割合又は6/4及び4/6の割合で含む少なくとも1つの他の(第2の)機能的組合せを含む。前記第1及び第2の組み合わせのそれぞれにおいて、(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは重複して含まれていてもよい(上述のように)。
【0093】
例えば、本出願のキットは、
- 相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物であって、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のR-カルボン及びS-カルボンであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はR-カルボン及びS-カルボンを8/2の割合で含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はR-カルボン及びS-カルボンを2/8の割合で含む、(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物(前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは上述のように重複して含まれていてもよい)と、
- 相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物であって、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のR-カルボン及びS-カルボンであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はR-カルボン及びS-カルボンを6/4の割合で含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はR-カルボン及びS-カルボンを4/6の割合で含む、(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物(前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは上述のように重複して含まれていてもよい)
とを含む。
【0094】
例えば、本出願のキットは、
- 相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物であって、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のR-カルボン及びS-カルボンであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はR-カルボン及びS-カルボンを(例えば8/2又は6/4の割合で)含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はR-カルボン及びS-カルボンを(例えばそれぞれ2/8又は4/6の割合で)含む、(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物(前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは上述のように重複して含まれていてもよい)と、
- 相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物であって、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のイソアミルアセテート及びアネトールであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はイソアミルアセテート及びアネトールを(例えば8/2又は6/4の割合で)含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はイソアミルアセテート及びアネトールを(例えばそれぞれ2/8又は4/6の割合で)含む、(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物(前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは上述のように重複して含まれていてもよい)
とを含む。
【0095】
例えば、本出願のキットは、
- 相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物であって、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のR-カルボン及びS-カルボンであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はR-カルボン及びS-カルボンを(例えば8/2又は6/4の割合で)含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はR-カルボン及びS-カルボンを(例えばそれぞれ2/8又は4/6の割合で)含む、(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物(前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは上述のように重複して含まれていてもよい)と、
- 相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物であって、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のアネトール及びユージノールであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はアネトール及びユージノールを(例えば8/2又は6/4の割合で)含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はアネトール及びユージノールを(例えばそれぞれ2/8又は4/6の割合で)含む、(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物(前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは上述のように重複して含まれていてもよい)
とを含む。
【0096】
例えば、本出願のキットは、
- 相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物であって、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のイソアミルアセテート及びアネトールであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はイソアミルアセテート及びアネトールを(例えば8/2又は6/4の割合で)含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はイソアミルアセテート及びアネトールを(例えばそれぞれ2/8又は4/6の割合で)含む、(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物(前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは上述のように重複して含まれていてもよい)と、
- 相互に区別され、又は分離された(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物であって、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物のそれぞれの臭気物質は混合物中のアネトール及びユージノールであり、前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の一方はアネトール及びユージノールを(例えば8/2又は6/4の割合で)含み、一方前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の他方はアネトール及びユージノールを(例えばそれぞれ2/8又は4/6の割合で)含む、(少なくとも)2つの本出願の混合物又は組成物(前記(少なくとも)2つの混合物又は組成物の1つは上述のように重複して含まれていてもよい)
とを含む。
【0097】
本出願の混合物又は組成物、より具体的には本出願の機能的組合せ若しくはキット、又は本出願の機能的組合せ若しくはキットの集合体により、哺乳類の嗅覚能力、より詳細には哺乳類の嗅覚識別能力の測定、より詳細には哺乳類における嗅覚識別障害の検出及び/又は測定が可能になる。より詳細には、前記哺乳類は疾患を有する哺乳類である。より詳細には、前記哺乳類はヒト、特に疾患を有するヒト、より詳細には気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した、又は罹患したと疑われる、疾患を有するヒトである。
【0098】
本出願の機能的組合せのいくつかの混合物又は組成物は、前記哺乳類が匂い、又は嗅ぐための接触において連続的に設置され得る。実験者、検査技師又は医師は、前記哺乳類が同一の組み合わせの混合物又は組成物の中で、他の混合物又は組成物とは異なる割合で(2種の、又は少なくとも2種の)臭気物質を含む少なくとも1つの混合物又は組成物を特定することに成功するか否かを記録する。
【0099】
当業者には、前記連続的に匂い又は嗅ぐことが、有利には嗅覚の混淆を防止し又は避ける条件下で実施されることが認識されよう。例えば、前記連続的に匂い又は嗅ぐことは、有利には換気が嗅覚の混淆を防止し又は避けるために十分で、時間系列に従って1つの混合物又は組成物から次の混合物又は組成物への嗅覚の混淆を防止し又は避けることができる部屋で実施される。
【0100】
当業者には、前記連続的に匂い又は嗅ぐことが、盲検法の下で実施できることが認識されよう。
【0101】
所望又は必要であれば、前記匂い又は嗅ぐことは、同じ及び/又は別の本出願の機能的組合せを用いて繰り返すことができる。
【0102】
本出願の混合物又は組成物、より具体的には本出願の機能的組合せ若しくはキット、又は本出願の機能的組合せの集合体若しくはキットは、当業者が嗅覚能力を測定するため、より詳細には嗅覚障害を検出及び/又は測定するために適切とみなす少なくとも1つの追加的な手段、デバイス、機器、組成物、物質又は化合物等の他の任意の追加的な要素と更に機能的に組み合わせてもよく、又は本出願のキットはこれらの任意の追加的な要素を更に含んでもよい。
【0103】
例えば、前記追加的な要素は、哺乳類又はヒト、より詳細には疾患を有する哺乳類又はヒトの嗅覚検知閾値を測定するための手段であってよい。
【0104】
嗅覚検知閾値を測定するための手段が、例えば複数の組成物を含み、前記複数の組成物のそれぞれが1種のみの臭気物質を含み、前記複数の組成物の全てが同一の1種の臭気物質を含み、前記同一の1種の臭気物質の段階希釈を形成する。
【0105】
前記臭気物質は上で定義することができる。例えば、前記臭気物質はn-ブタノール又は2-フェニルエタノールであってよい。Hummelら1997, Chem. Senses 22: 39-52を参照されたい。
【0106】
本出願は、本出願の少なくとも1つの製品、即ち本出願の少なくとも1つの混合物又は組成物、より具体的には本出願の少なくとも1つの機能的組合せ、集合体又はキットの医学的又は生命工学的応用に関する。前記応用は、特に方法及び使用を含む。
【0107】
より詳細には、本出願の方法又は使用は、少なくとも1つの本出願の混合物又は組成物を匂い又は嗅ぐこと、より詳細には少なくとも2つの異なる本出願の混合物又は組成物を連続的に匂い又は嗅ぐこと、より詳細には上述の(及び以下に説明する)同一の機能的組合せに属する少なくとも2つの異なる混合物又は組成物、より詳細には上述の(及び以下に説明する)少なくとも2つの異なる機能的組合せに属する混合物又は組成物を連続的に匂い又は嗅ぐことを含む。
【0108】
より詳細には、前記匂い又は嗅ぐことは、能動的に匂い又は嗅ぐことであり得る。
【0109】
本出願の方法又は使用は特に、
- 対象の少なくとも1つの鼻孔を少なくとも1つの本出願の機能的組合せと匂い又は嗅ぐために接触させること、及び
- 前記少なくとも1つの機能的組合せの中で、前記少なくとも1つの機能的組合せの他の混合物又は組成物と比較して異なる割合で臭気物質を含む少なくとも1つの混合物又は組成物を特定する前記対象の能力を決定し及び/又は測定すること
を含む。
【0110】
上述のように(及び以下に説明するように)、前記匂い又は嗅ぐこと、より詳細には前記連続的に匂い又は嗅ぐことにより、匂い又は嗅ぐ対象の嗅覚能力、より詳細には嗅覚識別能力を決定し及び/又は測定することが可能になる。
【0111】
より詳細には、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した対象は、少なくとも2種の異なる臭気物質をある割合で含む混合物を、同一の少なくとも2種の異なる臭気物質を異なる割合で含む混合物から識別する能力が低下しており、即ち本出願の同一の機能的組合せに属する2つの混合物又は組成物を識別する能力が低下している。
【0112】
対象の能力が低下していれば、精神疾患の重篤度が高くなっている。上述のように(及び以下の実施例から明らかなように)、同一の機能的組合せの混合物の間の識別能力は、前記対象の嗅覚能力、より詳細には嗅覚識別能力の指標であり、又はこれと正の相関がある。
【0113】
例えば
- 対象(対象No.1)は、前記臭気物質をある割合(例えばそれぞれ8/2及び2/8の割合)で含む第1の機能的組合せの(少なくとも)2つの混合物又は組成物を識別する[識別試験No.1]が、相互により近接した割合(例えば6/4及び4/6の割合)で前記臭気物質を含む第2の機能的組合せの(少なくとも)2つの混合物又は組成物を識別しない[識別試験No.1]。
一方
- 同じ対象(対象No.1)は、抗うつ剤治療を受ける前には2つの識別試験[識別試験No.1及びNo.2]のいずれにも成功しなかった。
【0114】
この例においては、対象No.1は抗うつ剤治療に反応すると結論できる。
【0115】
もう1つの例は以下の例である。
- 対象(対象No.1)は、前記臭気物質をある割合(例えばそれぞれ8/2及び2/8の割合)で含む第1の機能的組合せの(少なくとも)2つの混合物又は組成物を識別する[識別試験No.1]が、相互により近接した割合(例えば6/4及び4/6の割合)で前記臭気物質を含む第2の機能的組合せの(少なくとも)2つの混合物又は組成物を識別しない[識別試験No.1]。
一方
- 別の対象(対象No.2)は、2つの識別試験[識別試験No.1及びNo.2]のいずれにも成功しない。
【0116】
この例においては、対象No.2の精神疾患の重篤度は、対象No.1の精神疾患の重篤度より高いと結論できる。
【0117】
本出願の方法又は使用は、有利にはそれを必要とする対象において実施される。
【0118】
前記対象は上述の哺乳類、より詳細にはヒト、更により詳細には疾患を有するヒト、更により詳細には気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した、又は罹患したと疑われる、疾患を有するヒトである。
【0119】
本出願の1つの態様によれば、前記対象は、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の重篤なステージの症状を示さないステージにある。
【0120】
有利には、前記対象は重篤なうつを示さず、又は有しない。より詳細には、対象は最小の、穏和な又は中程度のうつ、より詳細には最小の又は穏和なうつを示し得る。
【0121】
例えば、BDI-II試験によって、前記対象のスコアは29未満(中程度、穏和又は最小のうつ)、より詳細には20未満(穏和又は最小のうつ)、更により詳細には14未満(最小のうつ)であり得る。
【0122】
前記出願は特に、診断における、より詳細には気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患のインビボ診断における前記少なくとも1つの本出願の製品の使用を含む。
【0123】
本出願の1つの態様によれば、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の(インビボ)診断における前記使用は、前記対象が健康で正常嗅覚を有する対照の対象と比較して低下した嗅覚能力、より詳細には低下した嗅覚識別能力を有しているか否かを決定することを更に含む。嗅覚能力の低下、より詳細には嗅覚識別能力の低下は、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の指標である。嗅覚能力、より詳細には嗅覚識別能力の低下の程度は、前記対象における気分障害、より詳細には気分消沈の重篤度の指標であり、又はこれと正の相関がある。
【0124】
前記出願は特に、気分障害、より詳細にはうつを含む精神障害又は精神疾患の重篤度を決定し又は測定するための、前記少なくとも1つの本出願の製品の使用を含む。前記出願はより詳細には気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の重篤度の診断、より詳細にはインビボ診断における前記少なくとも1つの本出願の製品の使用を含む。
【0125】
本出願の1つの態様によれば、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の重篤度を決定し及び/又は測定することにおける前記使用、及び/又は気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の重篤度の(インビボ)診断における前記使用は、前記対象の嗅覚識別能力の低下の程度を決定し及び/又は測定することを更に含む。前記程度が高いほど、前記重篤度が高くなる。
【0126】
前記出願は特に、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の治療における前記少なくとも1つの本出願の製品の使用を含む。
【0127】
本出願の1つの態様によれば、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の治療における前記使用は、前記対象の嗅覚能力、より詳細には嗅覚識別能力を増大させる治療、より詳細には抗うつ剤治療を選択し、前記選択された治療(又は抗うつ剤治療)を前記対象に施すことを更に含む。
【0128】
本出願の1つの代替の又は相補的な態様によれば、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の治療における前記使用は、前記対象の嗅覚能力、より詳細には嗅覚識別能力を増大させるために、患者に与える、又は適用する治療の性質及び/又は用量を改変し及び/又は調節することを更に含む。
【0129】
前記出願は特に、気分障害、より詳細にはうつを含む精神障害又は精神疾患の治療のために意図された処置の効率を決定し及び/又は測定し及び/又はモニターすることにおける前記少なくとも1つの本出願の製品の使用を含む。より詳細には、前記出願は特に、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の治療のために意図された処置に対する反応又は無反応(又は抵抗)の診断、より詳細にはインビボ診断における前記少なくとも1つの本出願の製品の使用を含む。
【0130】
本出願の1つの態様によれば、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の治療のために意図された処置に対する反応又は無反応(又は抵抗)の(インビボ)診断における前記使用は、前記治療を受けた対象に前記連続的に匂わせ又は嗅がせることと、前記治療が前記対象の嗅覚識別能力を増大させ又は低下させるかを決定することを更に含む。嗅覚識別能力の増大は前記治療への反応の指標である。嗅覚識別能力の低下又は不変(例えば有意でない相違)は前記治療への無反応(又は抵抗)の指標である。
【0131】
本出願の1つの態様によれば、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の治療のために意図された処置に対する反応又は無反応(又は抵抗)の(インビボ)診断における前記使用は、
- 前記対象に候補となる抗うつ剤治療を施すこと、
- 前記対象を前記少なくとも1つの本出願の製品と匂い又は嗅ぐために接触させること、
- 前記候補となる抗うつ剤治療が前記対象の嗅覚能力、より詳細には嗅覚識別能力を増大させるか否かを決定すること
を更に含む。
【0132】
前記嗅覚能力、より詳細には前記嗅覚識別能力が増大しなければ前記対象は前記候補となる抗うつ剤治療に無反応性(又は抵抗性)であると診断され得る。前記嗅覚能力、より詳細には前記嗅覚識別能力が増大すれば前記対象は前記候補となる抗うつ剤治療に反応性であると診断され得る。
【0133】
前記治療は、例えば薬物治療処置、例えば少なくとも1種の選択的セロトニン再吸収阻害剤(SSRI)及び/又は少なくとも1種のセロトニン及びノルアドレナリン再吸収阻害剤(SNRI)の投与、例えばPROZAC(登録商標)の投与を含む治療であってよい。
【0134】
代替として又は相補的に、前記治療は電気ショック、例えば電気痙攣治療の施術を含む治療であってよい。
【0135】
前記出願は特に、対象の嗅覚能力、より詳細には嗅覚識別能力を測定するための前記少なくとも1つの本出願の製品の使用を含む。
【0136】
前記出願は特に、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の治療のために好適な(又は有用な)治療を特定するための前記少なくとも1つの本出願の製品の使用を含む。前記使用は、
- 気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患に罹患した対象の嗅覚識別能力を測定するために少なくとも1つの本出願の製品を用いること、
- 前記対象に候補となる抗うつ剤治療を施すこと、
- 前記候補となる治療が前記対象における前記精神障害又は精神疾患の重篤度を低減させるか否かを決定すること
を含むことができ、
前記候補となる抗うつ剤治療は、気分障害、より詳細には気分消沈を含む精神障害又は精神疾患の治療のために好適(又は有用)として特定される。
【0137】
この使用の実施において、前記対象は有利には非ヒト哺乳類、より詳細にはマウス等の齧歯類であってよい。
【0138】
本出願はまた、気分障害、より詳細にはうつを含む精神障害又は精神疾患の診断又は治療に有用なデバイスを製造する方法に関し、この方法は、
- 少なくとも1つの本出願の混合物若しくは組成物、又は少なくとも2つの異なる本出願の混合物若しくは組成物、又は少なくとも1つの本出願の機能的組合せ、又は少なくとも1つの本出願の機能的組合せを含む少なくとも1つのキット、又は少なくとも2つの本出願の機能的組合せの少なくとも1つの集合体、又は少なくとも1つの本出願の集合体を含む少なくとも1つのキットを製造する工程、
- 前記少なくとも1つの混合物又は組成物を、前記混合物又は組成物が発する臭い又は香りを放出するための構造を含み、放出された臭い又は香りを哺乳類が嗅ぎ又は匂うことに適合したデバイスの中又は上に、より詳細には鼻の化学的感覚能力を評価するための臭気放出デバイスの中又は上に設置する工程
を含む。
【0139】
本出願はまた、前記製造方法によって得られる、又は得られたデバイスに関する。
【0140】
本出願において、他に特定しない限り、又は文脈が他に述べない限り、全ての用語は関連する分野におけるその通常の意味を有する。
【0141】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」又は「含む(containing)」と同義でオープンエンドであり、追加の、引用していない要素、成分又は方法工程を排除せず、一方、「からなる(consisting of)」という用語はクローズドタームであり、明確に引用されていない、いかなる追加の要素、工程、又は成分をも排除する。
【0142】
「本質的に〜からなる(essentially consisting of)」という用語は、部分的オープンタームであり、追加の要素、工程又は成分が本発明の基礎的で新規な特性に実質的に影響しない限り、追加の引用されていない要素、工程又は成分を排除しない。
【0143】
したがって、「含む(comprising)」(又は「含む(comprise(s))」)という用語は、「からなる(consisting of)」(「からなる(consist(s) of)」)という用語、並びに「本質的に〜からなる(essentially consisting of)」(essentially consist(s) of)という用語を包含する。したがって、本出願において、「含む(comprising)」(又は「含む(comprise(s))」)という用語は、より詳細には「からなる(consisting of)」(「からなる(consist(s) of)」)という用語、並びに「本質的に〜からなる(essentially consisting of」(「本質的に〜からなる(essentially consist(s) of)」)という用語を包含することを意味する。
【0144】
本出願の読者を助けるため、本明細書は種々のパラグラフ又はセクションに分けてある。これらの分離は、あるパラグラフ又はセクションの内容を別のパラグラフ又はセクションの内容から切り離すものと考えるべきではない。それと反対に、本明細書は種々のセクション、パラグラフ及び文の意図し得る全ての組み合わせを包含する。本明細書に引用した全ての参考文献の関連する開示のそれぞれは、参照により具体的に取り込まれる。以下の実施例は例示のために提示され、限定するためではない。
【実施例】
【0145】
(実施例1)
非ヒト哺乳類モデルにおける嗅覚試験
本発明者らは、うつの動物モデル:CORTモデル(Davidら2009, Neuron 62(4): 479-493、補足データを含む)における嗅覚を検討した。このモデルは、大うつ病障害(MDD)と診断されたヒト対象で観察される現象に類似した、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の平衡の破壊に基づいている。このモデルには、マウスにおける低用量のコルチコステロンの慢性投与が含まれ、これにより、抗うつ剤処置によって逆転され、成体の海馬のニューロン再生の強化を伴う高度の不安及びうつ様の行動状態が誘起される。
【0146】
本発明者らは、自動化されたオルファクトメーターにおける自発的識別パラダイムを用いて、臭気物質の知覚、識別及び記憶を評価した。CORTマウスにおいて、抗うつ剤処置によって逆転する嗅覚知覚の変化が見出された。更に、n-ブタノールの知覚閾値と、スプラッシュ試験によって評価したうつのレベルとの間に有意の相関があることが見出された。
【0147】
更に、非処置マウスと抗うつ剤処置CORTマウスの両方において、臭気物質混合物、より詳細には単分子臭気物質の二元混合物の識別における変化が見出され、このうつの動物モデルにおいては臭気物質の細かな識別が破壊されており、抗うつ剤処置によって回復しないことが示された。
【0148】
方法論
1.動物
Taconic Farms社(Tornbjergvej 40, DK-4623 Lille Skensved, Denmark)から入手したC57BL/6雄マウスにコルチコステロン(CORT、飲水中5mg/kg/日)を1カ月間投与して、不安/うつ様状態を誘起した。うつ様行動は、スプラッシュ試験、オープンフィールド試験、高架式十字迷路及び新奇環境摂食抑制試験によってチェックした。
【0149】
次いで、既に述べたように、これらのマウスの29匹を慢性的フルオキセチン投与計画(FLX:飲水中5mg/kg/日及びCORT,5mg/kg/日、CORT+FLXマウスと命名)に供した(David et al. 2009, Neuron 62(4): 479-493、補足データを含む)。一方8匹のマウスには慢性的にコルチコステロンの投与を続けた(CORTマウスと命名)[
図1参照]。更に、8匹の対照マウスにはビヒクルのみを投与した(VEHICLEマウスと命名)[
図1を参照]。
【0150】
2.行動試験
2.1.うつ状態の評価
うつに関連する変化には、セルフケア、即ちスプラッシュ試験によって評価できる行動の減少が含まれる(Davidら2009, Neuron 62(4): 479-493、補足データを含む)。この試験はマウスの背中に200μlの10%シュクロース溶液を吹き付けることからなる。次いで毛繕いまでの遅延時間、毛繕いの頻度及び持続時間を記録する。C57BL/6マウスの約90%は慢性的コルチコステロン投与に応答してうつ関連症状を示す。
【0151】
2.2.嗅覚の評価
臭気物質
全ての臭気物質はSigma-Aldrich社(Sigma-Aldrich Chemie S.a.r.l.; L'Isle d'Abeau Chesnes; 38297 Saint-Quentin Fallavier; France)から入手した単分子化合物であり、下記のように水又は鉱油に溶解した。
【0152】
自動化されたオルファクトメーター
マウスに1〜2mL/日の水を1週間与えることによって部分的水欠乏状態にし、次いでコンピューター制御した8チャネルのオルファクトメーターで「ゴーアウト(go-out)」識別課題について訓練した(Lazariniら2009, PlosOne 4(9): e7017)。臭気物質試料ポートの外(距離5cm)に設けられた送水チューブをなめることによって水又は鉱油等の溶媒で希釈された臭気物質溶液(正の刺激、S+)の存在に反応するように、マウスを訓練した。また、別の臭気物質又は溶媒(負の刺激、S-)の提示には反応しないようにマウスを訓練した。それぞれの試験において単一の刺激(S+又はS-)を提示した。S+及びS-の試験をランダムな順序で実施し、20回の試験のそれぞれの系列(ブロックと命名)においてそれぞれの種類の試験が同じ回数起こり、かつ1種類の試験が4回以上連続して起こらないようにした。Lazariniら2009 (PlosOne 4(9): e7017)が述べているように、S+の試験後のなめる反応及びS-の試験後のなめない反応を正答と採点し、それぞれヒット及び正しい拒絶と命名した[
図2参照]。ヒットの場合、報酬として約10μLの水を与えた。S-の試験後のなめる反応及びS+の試験後のなめない反応を誤答と採点し、それぞれ誤警報及び失敗と命名した。20回の試験のそれぞれのブロックについて正確度(正答の百分率)を採点した[(ヒット+正しい拒絶)/20×100]。単分子着臭化合物及び二元着臭混合物を用いて嗅覚能力を決定した。マウスには1日あたり8ブロックのセッションを実施した。全ての臭気物質は実験の直前に水又は鉱油で希釈し、その濃度は飽和ボトル中の臭気物質の希釈倍率として表わす。最初にイソアミルアセテート(IAA、希釈倍率10
-3、水中、S+)と水(S-)を識別するようにマウスを訓練した。
【0153】
臭気物質混合物識別課題
鉱油で希釈した0.1%のカルボン+(S+)とカルボン-(S-)を識別するようにマウスを訓練した(単純識別課題)。次いで、以下のように2つのカルボン混合物課題について嗅覚識別能力を決定した(困難識別課題)。
- 第1の課題において:
S+は0.8%カルボン+と0.2%カルボン-の溶液であった。
S-は0.2%カルボン+と0.8%カルボン-の溶液であった。
- 第2の課題において:
S+は0.6%カルボン+と0.4%カルボン-の溶液であった。
S-は0.4%カルボン+と0.6%カルボン-の溶液であった。
【0154】
臭気物質検知閾値
水で希釈して連続的に10分の1ずつに濃度を下げたn-ブタノール(S+)を検知するように、オルファクトメーターでマウスを訓練した。20回の試験の8個のブロックで、それぞれの濃度を毎日試験した。それぞれのセッションにおいて、S-として水を用いた。1セッションあたり臭気物質を1/10に希釈して、1日に1〜2セッション(午前、午後)、マウスに与えた。最大で1日あたり16ブロックが可能であった(8ブロックの2セッション)。基準能力を達成(ブロックにおける正答が90%以上)すればセッションを中止した。同じ臭気物質希釈倍率での2回の連続セッションで基準能力が達成されなければ、その前の希釈倍率を検知閾値とみなした。
【0155】
結果
1.うつ様行動
マウスの背中にシュクロース溶液を吹き付け、毛繕いまでの遅延時間、毛繕いのセッションの回数、並びに毛繕いの全持続時間を測定することからなるスプラッシュ試験によって、マウスの毛繕い行動を評価した。この試験は、妥当性が立証されたうつ様状態の指標として記載されている(Davidら2009, Neuron 62(4): 479-493、補足データを含む)。CORTによる慢性処置を受けたマウスは、ビヒクルを受けた動物と比べて毛繕いまでの遅延時間が有意に増加することが観察された(116.1±17.9対29.1±7.5s、P<0.001)[
図3A参照]。更に、ビヒクル処置の動物と比べて、CORT処置マウスにおいては毛繕いの持続時間 (43.7±5.5対80.5±8.5、P<0.05)[
図3B参照]並びに毛繕いの頻度(2.8±0.3対5.9±0.7、P<0.05)[
図3C参照]が減少した。興味あることに、2カ月のフルオキセチン処置(18mg/kg/日)によって、毛繕いまでの遅延時間 (26.6±4.1s、P<0.001、対CORT処置)[
図3A参照] を減少させ、毛繕いの持続時間(92.2±8.9、P<0.05、対CORT処置)[
図3B参照]及び頻度(6.1±0.5、P<0.05、対CORT処置)[
図3C参照]を増大させることができた。これらをまとめると、これらのデータから、慢性的抗うつ剤処置によって、過剰のグルココルチコイドによって誘起された標準的な不安/うつ様表現型を減弱させることができることが示される。
【0156】
その他の標準化されたうつの行動試験(オープンフィールド試験、高架式十字迷路及び新奇環境摂食抑制試験、尾懸垂試験、強制水泳試験、データは示さない)で試験すると、マウスが慢性的コルチコステロン投与に反応してうつ関連症状を示すことは注目に値する。興味あることに、CORT処置マウスへのフルオキセチンの長期投与は、これらの症状を退行させた。
【0157】
2.嗅覚識別及び検知
図4Aに示すように、CORT単独又はCORTとフルオキセチンによる慢性処置では、全ての群について獲得率は同様であり、単純な嗅覚識別課題においてマウスが2種の同様のカルボン異性体を識別する能力には変化を生じなかった。50%というスコアは、偶然のみに基づいて予想される成功率に対応する(
図4A、点線)。しかし、カルボン混合物の困難な識別課題においては、CORT動物の成績はビヒクル処置動物と比較して有意に劣っていた(8/2対2/8混合物についてP<0.01、6/4対4/6混合物についてP<0.05)。フルオキセチンの慢性投与では、この喪失を回復することはできなかった。
【0158】
更に、本発明者らの嗅覚検知試験の結果より、慢性CORT処置は検知閾値の約2桁の有意な低下を誘起することが分かった(5.7±0.3対7.4±0.4、P<0.01、対ビヒクル処置)。興味あることに、フルオキセチンによる慢性処置によって、CORT処置動物の閾値を回復することができた(7.3±0.3、P<0.05、対CORT処置)(
図4B)。
【0159】
3.うつ状態と嗅覚検知閾値との相関
本発明者らの結果より、ある種のうつ様症状の程度は、嗅覚閾値スコアと有意に相関していることが分かった[
図5A及び
図5B参照]。より正確には、嗅覚閾値はスプラッシュ試験における毛繕いまでの遅延時間と負の相関があり(r
2=0.18、P=0.004、n=44)、毛繕いセッションの数と正の相関がある(r
2=0.13、P=0.017、n=43)。
【0160】
4.長期嗅覚記憶
本発明者らは、CORT動物が1カ月前に学習した2種の臭気物質を記憶する能力を評価した。嗅覚記憶を評価するため、ビヒクル群、CORT群及びCORT+FLX群のマウスを、1%カルボン(+)と1%カルボン(-)との区別を思い出すように、5日間連続で訓練した。カルボン(+)は報酬がある刺激、カルボン(-)は報酬がない刺激であった。次いでマウスに訓練セッション(t0)の終了後、30日(t30)でカルボン識別課題の試験を再度受けさせた(
図6A)。この第2のセッションにおいては、正答に対して報酬は与えなかった。獲得期間の最後のブロックの間(t0)及び30日後に行なった記憶課題の最初のブロックの間(t30、
図6A)、3群について正答率を評価した。3群のマウスの全てが訓練の最後のブロックで少なくとも90%の正答を有し(獲得:t0、
図6A)、これらのマウスの全てが臭気物質に関連する記憶を獲得することができたということが示された。しかし、セッションの間では成績の有意差が見られた。成績の正確度は、ビヒクル処置マウス及びCORT+FLX動物と比べてCORTマウスの第2セッションで有意に低かった(正答率、ビヒクル:71.25±3.62、CORT:51.88±2.66、CORT+FLX:61.35±2.88)。Bonferonniポストホック試験、***:ビヒクル群とCORT処置群の間:P<0.001、*:CORT群とCORT+FLX群との間:P<0.05)。このように、学習した臭気物質の記憶はCORTマウスと比べてビヒクル処理群で、30日を超える期間で良く保持されていた。CORT処理動物は、FLXによって顕著に減衰する記憶喪失を示した。
【0161】
5.うつ状態と長期嗅覚記憶との相関
本発明者らのデータより、ある種のうつ様症状の程度は、嗅覚記憶のスコアと有意に相関していることが示された[
図6B参照]。長期嗅覚記憶は、スプラッシュ試験における毛繕いの頻度と正の相関がある(Pearson検定、r
2=0.11、**P=0.03、n=42)。
【0162】
結論及び展望
CORTマウスモデルにおける本発明者らの知見により、嗅覚知覚閾値はうつ状態と相関することが示される。
【0163】
更に本発明者らは、うつのマウス及び抗うつ剤で処置されたうつのマウスの両方が、臭気物質の混合物、より詳細には単分子臭気物質の二元混合物の細かな識別を含む課題における成績が悪いことを示す。
図4A参照。
【0164】
上述の実験は、カルボン+及びカルボン-の混合物以外の臭気物質の混合物、例えば
- 例えば8/2及び2/8の割合のイソアミルアセテートとアネトールの混合物、
- 例えば8/2及び2/8の割合のアネトールとユージノールの混合物
を用いて行なうことができる。
【0165】
臭気物質は安全と考えられ、食品及び化粧品製品に用いられている。したがって、試験はヒトにおいて容易に実施できる(例えば以下の実施例2)。
【0166】
(実施例2)
ヒトに対する嗅覚試験
動物モデルにおいて得られたデータ(実施例1参照)より、少なくとも2種の臭気物質の混合物の識別、より詳細には少なくとも2種の単分子臭気物質の混合物の識別に基づくヒトの大うつについての嗅覚試験を提案することができる。
【0167】
混合物の例としては(上記実施例1参照)、
- 例えば8/2及び2/8の割合のカルボン+とカルボン-の混合物、
- 例えば8/2及び2/8の割合のイソアミルアセテートとアネトールの混合物、
- 例えば8/2及び2/8の割合のアネトールとユージノールの混合物
が挙げられる。
【0168】
臭気物質は例えばHummelら1997 (Chem. Senses 22: 39-52)に記載され、SNIFFIN' STICKS(商標)としてBurghardt Messtechnik社(Tinsdaler Weg 175, D-2280 Wedel, Germany)から市販されている嗅ぎ棒、例えば2フェニルエタノール等の溶媒中に臭気物質混合物を含む(4mL)嗅ぎ棒として提示することができる。
【0169】
混合物識別試験は、任意選択で検知閾値試験(例えばn-ブタノール又はフェニルエチルアルコールを用いる臭気物質知覚試験、Hummelら1997, Chem. Senses 22: 39-52、Negoiasら2010, Neuroscience 169(1): 415-421参照)と組み合わせることができる。
【0170】
混合物の識別のため、3本の棒を対象に提示することができる。2本の棒は同一の臭気物質混合物(例えば2フェニルエタノール等の溶媒中の8/2の割合のカルボン+とカルボン-の混合物)を含み、第3の棒は異なる関連する臭気物質の混合物(例えば同じ溶媒中の2/8の割合のカルボン+とカルボン-の混合物)を含む。対象は、異なる匂いのする棒を指示するように要請される。
【0171】
閾値の評価のため、2本の棒を対象に提示することができる。1本の棒は溶媒を含み、他方の棒はn-ブタノール又はフェニルエチルアルコールの希釈物を含む(濃度を増大させて。例えばプロピレングリコール中0.4体積%から出発して2倍ずつ濃度を増大させて)。
【0172】
例えば、混合物識別試験を、大うつ病障害(MDD)と診断されたヒトの集団、より詳細には、
- 抗MDD治療を受け、その治療に反応したMDDのヒト、
- 抗MDD治療を受け、そのMDD治療に抵抗性又は反応しないMDDのヒト、
- まだ抗MDD治療を受けていないMDDの患者
の集団に実施することができる。
【0173】
この集団、より詳細にはこれらの3つの副集団のそれぞれの混合物識別能力を、健康なヒト、より詳細には正常嗅覚の健康なヒトの識別能力と比較することができる。
【0174】
混合物識別試験は、うつの程度及び抗うつ剤に対する反応/抵抗を評価するために有用である。この試験は任意選択で検知閾値試験と組み合わせることができ、
- 気分障害、より詳細には大うつ病障害(又は大うつ病エピソード)の(早期)診断のため、
- そのような障害又はエピソードを治療する処置(例えばSSRI及び/又はSNRIによる処置)の有効性のレベルをモニターし又は決定するため、及び/又はそのような処置に対する反応又は無反応/抵抗を検出するため
に特に有用である。
(参考文献)