(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の水性プレ接着剤反応混合物の重合生成物であって、前記重合生成物が、70重量%〜98重量%のカチオン性又は両性イオン性ポリマーと、2重量%〜30重量%のフェノール樹脂とを含む接着剤組成物であり、前記重量%はカチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づくものである、重合生成物。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、カチオン性又は両性イオン性ポリマーに加えてフェノール樹脂を含む接着剤組成物を提供する。水、カチオン性又は両性イオン性ポリマーを形成するために使用されるモノマー組成物、及びフェノール樹脂を含む、水性重合性プレ接着剤反応混合物(「水性プレ接着剤反応混合物」又は「プレ接着剤反応混合物」又は「重合性プレ接着剤反応混合物」又は同様の用語とも称される)も提供される。モノマー組成物は、1つ以上のカチオン性(メタ)アクリレートモノマー、1つ以上の非イオン性(メタ)アクリレートモノマー、及び任意に1つ以上のアニオン性(メタ)アクリレートモノマーを含有する。更に、プレ接着剤反応混合物の重合生成物が提供され、並びにカチオン性又は両性イオン性ポリマーがフェノール樹脂の存在下で形成される接着剤組成物の製造方法が提供される。
【0038】
本開示のカチオン性ポリマーは、重合性モノマー、特に1つ以上のカチオン性モノマーと1つ以上の非イオン性モノマーとの反応生成物を含むコポリマーである。本開示の両性イオン性ポリマーは、重合性モノマー、特に1つ以上のカチオン性モノマー、(メタ)アクリロイル基を有する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー、及び1つ以上のアニオン性モノマーの反応生成物を含むコポリマーである。カチオン性ポリマー及び両性イオン性ポリマーは、典型的には、(メタ)アクリレート系ポリマーである。
【0039】
本開示のプレ接着剤反応混合物、プレ接着剤反応混合物の重合生成物、及び接着剤組成物は、1つ以上のフェノール樹脂を含む。フェノール樹脂は、「内部に組み込まれている」と称することができ、これは、フェノール樹脂が重合性プレ接着剤反応混合物に含まれ、カチオン性又は両性イオン性ポリマーを形成するために使用されるモノマーの重合中に存在することを意味する。このようなフェノール樹脂は、得られる接着剤組成物中で粘着付与剤として機能することができる。
【0040】
粘着付与剤は、接着剤の弾性率を低下させ、全体的な熱ガラス転移(Tg)を上昇させることによって、より多くの粘着性及びより良好な剥離性能を導入するために、接着剤組成物中のレオロジー調整剤として使用される。粘着付与剤の種類に応じて、これらはまた、所望の基材への接着力を増加させる有利な表面化学を付与することができる。例えば、テルペンフェノール樹脂粘着付与剤は、ゴム系接着剤への組み込みによって、固着が困難な塗料に対する接着力を増加させることが判明している。
【0041】
水性重合性プレ接着剤反応混合物はエマルジョンである。水性エマルジョンポリマー接着剤における粘着付与剤の使用は、一般的に、モノマーの重合後に添加される分散型粘着付与剤の使用に限定される。市販されている分散粘着付与剤はごく僅かしかないが、しかしながら、それらは、特定のカチオン性及び両性イオン性エマルジョンポリマー接着剤との非相溶性の問題(凝固物形成によって証明される)に悩まされている。この問題を克服するために、ミニエマルジョン法を使用して、粘着付与剤をモノマーと溶解させて接着剤を調製することにより接着剤を製造することができるが、このような方法は高剪断処理工程を必要とする。
【0042】
驚くべきことに、カチオン性モノマーを含む重合性プレ接着剤反応混合物にフェノール樹脂を組み込むことが、非相溶性の問題を解決する。更に、得られたポリマー接着剤は、通常、塗装された表面の色又は光沢の変化に関する問題がより少ないという点で有利である。フェノール性樹脂を重合性プレ接着剤反応混合物に組み込むことの追加の利点は、予め製造された接着剤ポリマー(即ち、モノマーの重合後にフェノール樹脂が添加されたもの)におけるフェノール樹脂の典型的な充填量と比較して、より少量のフェノール樹脂を使用して接着性能の注目すべき変化を得るための能力である。
【0043】
これは、フェノール樹脂が接着剤組成物の内部に組み込まれた結果として、フェノール樹脂が接着剤から浸出する量が少なくなるためであると考えられる。語句「接着剤の内部に組み込まれた」の使用は、モノマーの重合中に重合性プレ接着剤反応混合物中にフェノール樹脂が存在しており、プレ接着剤反応混合物の重合生成物を形成したことを意味する。限定することを意図するものではないが、フェノール樹脂は、例えば、接着剤ポリマー(カチオン性又は両性イオン性ポリマー)に結合され、相互貫入ネットワークに封入又は捕捉され、及び/又は別の方法で接着剤組成物に組み込まれて、接着剤組成物中に存在してもよい。
【0044】
このフェノール樹脂の内部組み込みは、1つ以上のカチオン性モノマー、1つ以上の非イオン性モノマー、及び任意に1つ以上のアニオン性モノマーを含むモノマー混合物にフェノール樹脂を添加することによって達成することができる。フェノール樹脂は、水にイオン性モノマーを加えた中に疎水性(メタ)アクリレートモノマーを有する分散相(即ち、液滴)を形成する。低Tg非イオン性モノマーは、疎水性(メタ)アクリレートモノマーである。別の言い方をすれば、水相は、水、水に溶解したカチオン性モノマー及び任意のアニオン性モノマーを含み、一方、分散相は疎水性(メタ)アクリレートモノマー(非イオン性低Tgモノマー)及びフェノール樹脂を含む。得られた水性重合性プレ接着剤反応混合物は、典型的には水性分散液であるエマルジョンである。
【0045】
このようなフェノール樹脂は、粘着付与剤として機能しても、又は機能しなくてもよい。接着剤ポリマー(即ち、カチオン性又は両性イオン性ポリマー)が製造された後に添加される場合に、水性分散液中でのこのような樹脂の非相溶性の問題がなく、より広範な種類のこのような樹脂を使用できるので、フェノール樹脂の内部組み込みもまた有利である。例えば、特定のフェノール樹脂は、水性分散液としては市販されていない。このような樹脂の使用は、予め製造された接着剤ポリマーに添加される場合に限定されている。本開示は、水性分散液として利用可能ではないこのような樹脂の使用を、重合性プレ接着剤反応混合物中にそれらを組み込むことによって活用することができる。このように、本開示では、より広範な種類のフェノール樹脂を使用することができ、それによって、より多くの配合寛容度並びに最終生成物のより大きな制御及び調整可能性を提供することができる。
【0046】
カチオン性モノマー
カチオン性モノマーには、トリアルキルアンモニウム官能性などのアルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルが含まれる。いくつかの実施形態では、カチオン性モノマーは、2−(トリアルキルアンモニウム)エチルアクリレート又は2−(トリアルキルアンモニウム)エチルメタクリレートである。このような実施形態では、アルキル基の性質は特に限定されるものではないが、コスト及び実用性は、有用な及び/又は利用可能なモノマーの数を制限する。いくつかの実施形態では、2−(トリアルキルアンモニウム)エチルアクリレート又は2−(トリアルキルアンモニウム)エチルメタクリレートは、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート又は2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートとハロゲン化アルキルとの反応から形成され、このような実施形態では、2−(トリアルキルアンモニウム)エチルアクリレート又は2−(トリアルキルアンモニウム)エチルメタクリレートの3つのアルキル基のうちの少なくとも2つはメチルである。いくつかの実施形態では、全ての3つのアルキル基は、メチル基である。他の実施形態では、3つのアルキル基のうちの2つはメチルであり、3番目のものは2〜24個の炭素原子、又は6〜20個の炭素原子、又は8〜18個の炭素原子、又は16個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、環状、又は脂環式基である。いくつかの実施形態では、カチオン性モノマーは、これらの化合物の2つ以上の混合物である。
【0047】
このようなカチオン性モノマー中のアンモニウム官能性に関連するアニオンは特に限定されず、多くのアニオンが本開示の様々な実施形態に関連して有用である。いくつかの実施形態では、アニオンは、塩化物、臭化物、フッ化物、又はヨウ化物などのハロゲン化物アニオンであり、いくつかのこのような実施形態では、アニオンは塩化物である。他の実施形態では、アニオンは、BF
4−、N(SO
2CF
3)
2−、O
3SCF
3−、又はO
3SC
4F
9−である。他の実施形態において、アニオンは硫酸メチルである。更に他の実施形態において、アニオンは水酸化物である。いくつかの実施形態では、1つ以上のカチオン性モノマーは、これらのアニオンの2つ以上の混合物を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、カチオン性モノマーは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、少なくとも2重量パーセント(wt−%)、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも6重量%、又は少なくとも7重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。いくつかの実施形態では、カチオン性モノマーは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、最大45重量%、又は最大40重量%、又は最大35重量%、又は最大25重量%、又は最大15重量%、又は最大10重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。3重量%、5重量%、6重量%、8重量%、及び、例えば、2重量%〜45重量%の1重量%増分によって、並びに、例えば、2重量%〜4重量%、7重量%〜38重量%、20重量%〜25重量%などの1重量%増分でのこれらの個々の値にまたがる任意の範囲で表される、全ての他のこのような個々の値などの、様々な中間レベルも可能である。これらの量はまた、本開示のカチオン性又は両性イオン性ポリマー中の反応したモノマー単位の量にも適用され、ここで、重量パーセントはポリマーの重量に基づいている。
【0049】
カチオン性モノマーは、典型的には、水性重合性プレ接着剤反応混合物に含まれている水に溶解される。
【0050】
(メタ)アクリロイル基を有する低Tg非イオン性モノマー
好適な低Tg非イオン性モノマーは、一つの(メタ)アクリロイル基(即ち、単一の(メタ)アクリロイル基)を有するものである。これらのモノマーは、典型的にはアルキル(メタ)アクリレートである。より具体的には、それらは、多くの場合、1〜18個の炭素原子を有する非第三級アルキル基を有するアルキルアクリレートである。これらのモノマーは、これが感圧性接着剤として機能するように、カチオン性又は両性イオン性ポリマーのガラス転移温度を低下させるために添加されることが多い。低Tg非イオン性モノマーは、典型的には、水中に溶解しないか、又は非常に限定された水への溶解度を有する。
【0051】
(メタ)アクリロイル基を有する低Tg非イオン性モノマーの具体例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、及びn−ドデシルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリロイル基を有する低Tg非イオン性モノマーは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリロイル基を有する低Tg非イオン性モノマーは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、最大98重量%、最大95重量%、最大90重量%、又は最大85重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。これらの量はまた、本開示のカチオン性又は両性イオン性ポリマー中の反応したモノマー単位の量にも適用され、ここで、重量パーセントはポリマーの重量に基づいている。
【0053】
アニオン性モノマー
両性イオン性ポリマーの調製のために、アニオン性モノマーが重合性プレ接着剤反応混合物中に含まれる。
【0054】
アニオン性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、それらの塩、又はそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アニオン性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられ、ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される。
【0055】
他のアニオン性モノマーには、イタコン酸、マレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビニルリン酸、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、並びにそれらの塩が挙げられる。
【0056】
アニオン性モノマーは、純粋にはカチオン性のポリマーの製造には使用されない。したがって、ある特定の実施形態では、プレ接着剤反応混合物中に存在する量は、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、0〜5重量%であり得る。
【0057】
両性イオン性ポリマーの製造においてアニオン性モノマーが存在するとき、いくつかの実施形態では、アニオン性モノマーは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.5重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。いくつかの実施形態では、アニオン性モノマーは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、最大5重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。例えば、0.3重量%、0.4重量%、0.6重量%、0.7重量%、及び、0.2重量%〜5重量%の0.1重量%増分によって、並びに、例えば、0.2重量%〜0.9重量%、1.2重量%〜3.1重量%などの0.1重量%増分でのこれらの個々の値にまたがる任意の範囲で表される、全ての他のこのような個々の値などの、様々な中間レベルも可能である。これらの量はまた、本開示の両性イオン性ポリマー中の反応したモノマー単位の量にも適用され、ここで、重量パーセントはポリマーの重量に基づいている。
【0058】
アニオン性モノマーは、典型的には、重合性プレ接着剤反応混合物に含まれるカチオン性モノマーと共に水中に溶解される。
【0059】
追加の任意のモノマー
いくつかの実施形態では、水性重合性プレ接着剤反応混合物は、1つ以上の追加のモノマーを含んでもよい。このような追加のモノマーは、構造によって特に限定されるものではないが、得られたポリマー(カチオン性又は両性イオン性)に様々な所望の特性を付与するように選択される。カチオン性ポリマーの場合には、このような追加の任意のモノマーはアニオン性ではないことが理解される。
【0060】
いくつかの実施形態では、追加のモノマーは、1つ以上の追加のモノマーを含まない接着剤ポリマーと比較して、接着剤ポリマー(即ち、カチオン性又は両性イオン性ポリマー)の粘着性のレベルを更に提供しながら、選択された基材への測定可能な接着力の低減したレベルを提供するように選択される。他の実施形態では、追加のモノマーは、1つ以上の追加のモノマーを含まないポリマーと比較して、選択された基材に対する実質的に一定のレベルの接着力を維持しながら、得られた接着剤ポリマーに粘着性の低減したレベルを付与するように選択される。他の実施形態では、追加のモノマーは、1つ以上の追加のモノマーを含まない接着剤ポリマーと比較して、選択された基材に対する実質的に一定のレベルの接着力を維持しながら、得られた接着剤ポリマーに粘着性の上昇したレベルを付与するように選択される。
【0061】
多くの実施形態では、追加の任意のモノマーは、a)(メタ)アクリロイル基(即ち、単一の(メタ)アクリロイル基)を有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基である極性基を有する1つ以上の極性モノマー、c)(メタ)アクリロイル基を含まない1つ以上のビニルモノマー、又はd)それらの2つ以上の混合物から選択される。
【0062】
多くの実施形態では、任意の追加のモノマーには、(メタ)アクリロイル基を有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマーが含まれる。本明細書に記載される1つ以上の炭化水素粘着付与剤と組み合わせて使用するとき、このような高Tg非イオン性モノマーは、低表面エネルギー基材(LSEの)、特にポリオレフィン(例えば、低密度又は高密度ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリカーボネート、フルオロプラスチック、及び例えば自動車(例えば、バンパー)に使用されるエンジニアリング熱可塑性樹脂、並びにガラスなどの他の表面への接着力を増加させることが判明している。
【0063】
単一の(メタ)アクリロイル基を有する例示の高Tg非イオン性モノマーには、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
任意の極性モノマーは、上述したアニオン性モノマー又はカチオン性モノマーではない。むしろ、極性モノマーは、ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基である極性基を有する。1つ以上の異なる極性モノマーを使用することができる。
【0065】
ヒドロキシル基を有する極性モノマーの例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド)、エトキシル化ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、Sartomer(Exton,PA,USA)からCD570、CD571、及びCD572という商品名で市販されているモノマー)、及びアリールオキシ置換ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシ−2−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)が挙げられるが、これらに限らない。
【0066】
第一級アミド基を有する極性モノマーの例としては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0067】
第二級アミド基を有する極性モノマーの例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−tert−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、及びジアセトン(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
第三級アミド基を有する極性モノマーの例としては、カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、並びにN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジブチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0069】
アミノ基を有する極性モノマーの例としては、各種のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。例としては、これらに限定されるものではないが、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0070】
エポキシ基を有する極性モノマーの例には、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられるであろう。
【0071】
エーテル基を有する極性モノマーの例には、2−メトキシエチルアクリレート及びメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられるであろう。
【0072】
任意のビニルモノマーは、(メタ)アクリロイル基を有しないモノマーである。極性モノマーに特有の極性基を有するビニルモノマーは、本明細書では極性モノマーであるとみなされる。ビニルモノマーの例には、アクリロニトリル、様々なビニルエーテル(例えば、ビニルメチルエーテル)、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート及びビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン)、ハロゲン化ビニル、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の任意のモノマー、特に(メタ)アクリロイル基を有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマーは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、0重量%超、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加のモノマーは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、最大30重量%、又は最大20重量%、又は最大15重量%、又は最大10重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在し得る。1重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、及び、例えば、0重量%〜30重量%の1重量%増分によって、並びに、例えば、2重量%〜4重量%、11重量%〜28重量%、7重量%〜17重量%などの1重量%増分でのこれらの個々の値にまたがる任意の範囲で表される、全ての他のこのような個々の値などの、様々な中間レベルも可能である。それらの量はまた、本開示のカチオン性又は両性イオン性ポリマー中の反応したモノマー単位の量にも適用され、ここで、重量パーセントはポリマーの重量に基づいている。
【0074】
それらのモノマーの水への溶解度に応じて、任意の追加のモノマーを水中に溶解させるか、水に分散させるか、又はその両方であってもよい。
【0075】
任意の架橋性モノマー
いくつかの実施形態では、重合性プレ接着剤反応混合物は、2つ以上の重合性官能性を有する任意の追加のモノマーを含み、このようなモノマーは架橋剤と称される。カチオン性又は両性イオン性ポリマーの形成で有用である架橋剤には、エチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート、グリセロールトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリアクリレート、エリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのテトラアクリレート、ジビニルベンゼン、及びその誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、架橋剤は光活性架橋剤である。光活性架橋剤には、例えば、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、アントラキノン、置換アントラキノン、共重合性ベンゾフェノンなどの様々なベンゾフェノン型化合物(例えば、アクリロイルベンゾフェノン(ABP))、及び2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−1,3−トリアジンなどの特定の発色団置換ビニルハロメチル−1,3−トリアジンが挙げられる。
【0076】
いくつかの実施形態では、追加のモノマーとしての1つ以上の架橋剤(即ち、架橋性モノマー)は、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、最大10重量%、最大5重量%、又は最大2重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の架橋剤は、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、0重量%超、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1.0重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。それらの量はまた、カチオン性又は両性イオン性ポリマーを形成するために使用される反応したモノマーの量にも適用され、ここで、重量パーセントはポリマーの重量に基づいている。
【0077】
プレ接着剤反応混合物中の全モノマー組成物
いくつかの実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー組成物:
モノマーの総重量に基づいて、2重量%〜45重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルを含む1つ以上のカチオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、10重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する1つ以上の低Tg非イオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する1つ以上の極性モノマー、c)(メタ)アクリロイル基を含まない1つ以上のビニルモノマー、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、1つ以上の架橋性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、カルボン酸塩モノマー、又はそれらの2つ以上の混合物を含む1つ以上のアニオン性モノマー(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)から形成される。
【0078】
いくつかの実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー組成物:
モノマーの総重量に基づいて、2重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルを含む1つ以上のカチオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、45重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する1つ以上の低Tg非イオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜20重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する1つ以上の極性モノマー、c)(メタ)アクリロイル基を含まない1つ以上のビニルモノマー、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、1つ以上の架橋性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物を含む1つ以上のアニオン性モノマー(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)から形成される。
【0079】
他の例示的な実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー組成物:
モノマーの総重量に基づいて、5重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルを含む1つ以上のカチオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、60重量%〜95重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する1つ以上の低Tg非イオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する1つ以上の極性モノマー、c)(メタ)アクリロイル基を含まない1つ以上のビニルモノマー、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、1つ以上の架橋性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物を含む1つ以上のアニオン性モノマー(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)から形成される。
【0080】
更に他の例示の実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー組成物:
モノマーの総重量に基づいて、5重量%〜15重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルを含む1つ以上のカチオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、65重量%〜95重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する1つ以上の低Tg非イオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する1つ以上の極性モノマー、c)(メタ)アクリロイル基を含まない1つ以上のビニルモノマー、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、1つ以上の架橋性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物を含む1つ以上のアニオン性モノマー(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)から形成される。
【0081】
任意の追加のモノマー又は任意の架橋性モノマーが存在しない更に他の例示的な実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー組成物:
モノマーの総重量に基づいて、2重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルを含む1つ以上のカチオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、45重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する1つ以上の低Tg非イオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する1つ以上の極性モノマー、c)(メタ)アクリロイル基を含まない1つ以上のビニルモノマー、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物を含む1つ以上のアニオン性モノマー(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)から形成される。
【0082】
フェノール樹脂
本開示において有用なフェノール樹脂には、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかのフェノール樹脂は、粘着付与剤として特徴付けられてもよく、本開示の接着剤組成物中で粘着付与剤として機能し得る。例えば、テルペンフェノール樹脂は、本開示の接着剤組成物中の粘着付与剤として機能してもよい。
【0083】
1つ以上のフェノール樹脂を、重合性プレ接着剤反応混合物で、及びそれから形成された得られた接着剤組成物で使用することができる。「フェノール樹脂」又は「フェノール基含有樹脂」(又は本明細書で使用される類似の語句)は、2つ以上のこのような樹脂のブレンドを含むことができることが理解されよう。2つ以上のフェノール樹脂のブレンドは、本明細書のいくつかの実施形態において有用である。いくつかの実施形態では、フェノール樹脂のブレンドは、分子量、分枝の程度、又はフェノール樹脂を製造するための出発物質として使用されるテルペン及び/若しくはフェノール化合物の種類に関してのみ異なる樹脂のブレンドを含む。他の実施形態では、フェノール樹脂のブレンドは2つ以上のこのような差異を有する。
【0084】
好適なテルペンフェノール樹脂(即ち、テルペンフェノール粘着付与剤、又はテルペンフェノール樹脂)は、芳香族基に直接結合した少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する少なくとも1つの芳香族基と、芳香族基に直接結合された少なくとも1つの分枝アルキル又はアルケニル基とを有する。いくつかの実施形態では、分枝アルキル又はアルケニル基は、イソプレンのオリゴマーに由来する。いくつかの実施形態では、テルペンフェノール樹脂は、1つ以上のヒドロキシル基と、それに直接結合した1つ以上の分枝アルキル又はアルケニル基とを有する、単一の芳香族基を有する。他の実施形態では、テルペンフェノール樹脂は、1つ以上のヒドロキシル基を有する2つ以上の芳香族基と、1つ以上の芳香族基に直接結合した1つ以上の分枝アルキル又はアルケニル基とを有する。いくつかの実施形態では、テルペンフェノール樹脂は非反応性であり、他の実施形態では、テルペンフェノール樹脂は反応性であってもよい(例えば、それは1つ以上の反応性基を含んでもよい)。
【0085】
従来の方法を使用してテルペンフェノール樹脂を製造することができる。テルペンフェノール樹脂を形成するために有用ないくつかの代表的な方法には、米国特許第3,347,935号(Kauppら)、同第3,692,844号(Hollisら)、同第3,976,606号(Gobran)、同第5,457,175号(Scharrerら)及び同第6,160,083号(Thompsonら)、並びにEP1504074(Deshpandeら)に記載されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、テルペンフェノール樹脂は、フェノール化合物のテルペン化合物との1:1付加生成物である。いくつかのこのような実施形態では、反応は、酸性触媒又は酸形成触媒によって触媒される。単に例示を目的とするものとして、リモネン及びフェノールを例示の試薬として用いて、反応が以下の経路a又は経路bを介して進行し、典型的には生成物A、B、Cの混合物をもたらす。
【化1】
【0086】
化合物Aは芳香族エーテルであり、一方、化合物B及びCは変性フェノールである。多くの実施形態では、反応経路bは、生成物のカバー生成物Bの形成に有利である。反応経路bのみが残留ヒドロキシル官能性をもたらす。反応経路bを超える反応経路aの選択性の程度、したがって、最終生成物のヒドロキシル官能性の程度は、どのテルペンフェノール樹脂が本明細書の接着剤組成物において有用であるかを決定する1つの要因である。樹脂中にA、B、及びC型の生成物の混合物が許容可能であることに留意することが重要であり、本明細書で有用なフェノール樹脂にとって重要であることは、ヒドロキシル価として測定及び表現される樹脂の全ヒドロキシル含有量である。
【0087】
上記の反応スキームにおいて、いくつかの実施形態では、反応は、描写したような1:1の付加反応生成物のみを生じない。いくつかの実施形態では、2つ以上のテルペンが1つのフェノール化合物と反応する。他の実施形態では、2つ以上のフェノール化合物が1つのテルペンと反応する。フェノール化合物がテルペン化合物との反応に利用可能な2つ以上の部位(フェノールそれ自体の場合、3つの可能な反応部位がある)を有する、又はテルペンがフェノール化合物との反応に利用可能な2つ以上の部位を有する実施形態では、X:Yフェノール化合物:テルペン化合物の反応生成物を生じることができる。例えば、いくつかの実施形態では、反応比3:1、2:1、1:2、1:3などを生じることができる。これは、複数の芳香族ヒドロキシルを有するオリゴマーフェノール化合物がフェノール化合物出発物質として使用される場合に特に当てはまる。このような実施形態では、プレ接着剤反応混合物中に、又は反応後に形成されたブレンド中に存在する1:1、1:2、又は他の反応生成物の相対量は、例えば、1:1.5、1.7:1、1:1.02などの平均フェノール:テルペン反応生成物の比として表すことができる。本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂の目的のために、このような比は特に限定されない。いくつかの実施形態では、平均フェノール:テルペン反応生成物の比は、2:1〜1:2、又は1.5:1〜1:1.5である。
【0088】
いくつかの実施形態では、適切なテルペンフェノール樹脂は、200g/mol〜3000g/mol、又は200g/mol〜1600g/mol、又は250g/mol〜1500g/mol、又は300g/mol〜1000g/mol、又は300g/mol〜800g/mol、又は400g/mol〜800g/mol、又は500g/mol〜700g/molの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、テルペンフェノール樹脂は、1〜3、又は1〜2、又は1〜1.5の多分散度を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂は、40℃〜120℃、又は50℃〜100℃のガラス転移温度を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂は、80℃〜200℃、又は80℃〜150℃、又は90℃〜130℃、又は100℃〜120℃、又は105℃〜160℃、又は105℃〜125℃、又は110℃〜120℃、又は115℃、130℃、又は160℃の軟化点を有する。
【0090】
様々な実施形態では、本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂には、非常に低い酸価を有するものが含まれる。一例として、いくつかの実施形態では、本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂は、0.5未満の酸価を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂は、0.25未満の酸価を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂は、0.1未満の酸価を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂は、約0の酸価を有することができる。酸価は、フェノール樹脂の1グラム(g)のアリコート中の酸官能性を中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数である。酸価を決定するために、当業者によって様々な方法が使用される。1つの典型的な手順では、既知の量のフェノール樹脂を有機溶媒中に溶解し、既知の濃度のKOH溶液で滴定し、フェノールフタレインを変色指示薬として使用する。他の酸価試験には、ASTM D974及びASTM D664が挙げられる。「約0」の定義に含まれるのは、試験測定における不純物又は誤差の最小量を考慮するために、0.05などの、0に非常に近い酸価である。
【0091】
テルペンフェノール樹脂は、約0(ほぼ純粋な、上に示した芳香族エーテル型反応生成物である化合物Aの場合など)〜220のヒドロキシル価を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で有用なテルペンフェノール樹脂は、20〜220、又は50〜220、又は100〜220の範囲のヒドロキシル価を有するものを含む。ヒドロキシル価は、フェノール樹脂の1gアリコート中のヒドロキシル官能性に対応するKOHのmg数として定義される。ヒドロキシル価を決定するために、当業者によって様々な方法が使用される。最も頻繁に記載される方法は、試料をピリジン中で無水酢酸で変換し、続いて放出された酢酸を滴定することである(ASTM D1957−86(2001)脂肪酸及び酸のヒドロキシル価の標準試験法(Withdrawn 2007)にも記載されている)。また広く使用されているのは、ASTM E1899による方法であり、ここで、第一級及び第二級ヒドロキシル基をトルエン−4−スルホニル−イソシアネート(TSI)で酸カルバメートに変換し、次いで、それを非水性媒体中の水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)で滴定する。
【0092】
多くの実施形態では、市販のテルペンフェノール樹脂が本明細書で有用である。テルペンフェノール樹脂粘着付与剤は、例えば、Arizona Chemical Company(Jacksonville,FL,USA)によって商品名SYLVARESで、DRT(Cedex,France)によって商品名DERTOPHENEで、及びヤスハラケミカル株式会社(広島、日本)によって商品名POLYSTERで販売されている。特定のテルペンフェノール樹脂粘着付与剤には、SYLVARES TP 300、SYLVARES TP 7042、POLYSTER S145、POLYSTER TH130、POLYSTER UH115、DERTOPHENE 1510、及びDERTOPHENE H150が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
適切なアルキルフェノール樹脂には、パラ−アルキルフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂が挙げられる。いくつかの実施形態では、ノボラック樹脂は、p−アルキル基が9〜15個の炭素原子を含有する、p−アルキルフェノールから製造される。このようなフェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、ホルムアルデヒドと異性体p−アルキルフェノールの酸触媒反応を通して製造されるものである。このようなアルキル基の実例は、異性体ノニル基、異性体デシル基、異性体ウンデシル基、異性体ドデシル基、異性体トリデシル基、異性体テトラデシル基、異性体ペンタデシル基などである。本明細書で使用される場合、用語アルキル基及び混合物とは、それらの混合物が主として分枝鎖p−アルキル基から構成され、50%未満の任意の1つの直鎖アルキル基を含有することを意味する。
【0094】
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の調製に有用であるアルキルフェノールは、従来の縮合反応によって、9〜15個の炭素原子を含有し、かつ1個の残存する不飽和結合を有する異性体オレフィンとフェノールとを縮合させることにより調製することができる。オルト異性体の分離は、必要に応じて、蒸留又は他の簡便な手段によって達成することができる。しかしながら、少量のオルト異性体が許容され得る。
【0095】
例示として、1個の不飽和結合を含有する異性体プロピレン三量体(即ち、ノニレン)は、9個の炭素原子を有するような異性体の混合物である。それは、フェノールと反応させて、オルト及びパラ置換されたノニルフェノールの混合物を得ることができ、パラ異性体は大半を占める。したがって、この生成物は、主として、異性体p−ノニルフェノールの混合物である。同様の方法により、異性体p−デシルフェノールは、プロピレンをブチレンと共重合させて、フェノールと反応させる前にデシル異性体を分画することによって製造することができ、異性体p−ウンデシルフェノールは、オレフィンの比を変えることによって同じ方法で調製することができる。異性体p−ドデシルフェノールは、プロピレンの四量体として調製され、次いでフェノールなどと縮合される。より高分子量の炭化水素を分解するなどのような他の調製方法も使用でき、当該技術分野において周知である。
【0096】
本明細書で有用な好適なアルキルフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂は、既知の方法によって調製することができる。この調製は、酸性触媒の存在下でアルキルフェノール1モル当たり少なくとも0.7モルのホルムアルデヒドを反応させることによって達成することができる。アルキルフェノール及びホルムアルデヒド反応物は、触媒量の酸触媒の存在下で、20℃〜150℃の温度でそれらを反応させることによって概ね縮合される。
【0097】
フェノール樹脂の封入は、特に高湿度の条件下で、少なくともいくつかの建築用コーティング(例えば、様々な低VOC塗料)に対する向上した接着力を提供し得る。多種多様な建築用コーティング組成物があるために、このような向上は、必ずしも全ての建築用コーティングに対して同じ程度で生じるとは限らない場合がある(別様に表現すれば、異なるレベルのフェノール樹脂及び/又は異なる組成のフェノール樹脂は、異なる建築用塗料と共に使用するのに最適であり得る)。
【0098】
いくつかの実施形態では、フェノール樹脂は、全モノマー100部当たり少なくとも2部(pph)、又は少なくとも3pph、又は少なくとも4pph、又は少なくとも5pphの量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。いくつかの実施形態では、フェノール樹脂は、最大30pph、又は最大25pph、又は最大20pph、又は最大15pphの量で反応混合物中に存在する。3pph、6pph、7pph、及び、例えば、2pph〜20pphの1pph増分によって、並びに、例えば、2pph〜4pph、又は11pph〜20pph、又は5pph〜10pphなどの1pph増分でのこれらの個々の値にまたがる任意の範囲で表される、全ての他のこのような個々の値などの、様々な中間レベルも可能である。
【0099】
重合プロセス
カチオン性及び両性イオン性ポリマーの重合は、当業者になじみのある従来の熱重合技術を用いて行われる。
【0100】
エマルジョン重合の場合、水溶性開始剤が好ましい。熱分解を使用して重合を開始するいくつかの実施形態では、本開示のカチオン性又は両性イオン性ポリマーを製造するために使用されるモノマーのエマルジョン重合は、モノマー、フェノール樹脂及び熱開始剤を水に配合し、その後エマルジョンを、開始剤の分解が適切な重合速度を維持するために適した速度で生じる温度に加熱することによって行われる。好適な熱開始剤の非限定的な例には、過酸化ジクミル、過酸化ベンゾイル、又は2,2’−アゾ−ビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、及び)のDuPont USA(Wilmington,DE)から商品名VAZOで販売されている熱開始剤などの、重合の熱開始のために当業者によって従来使用される有機過酸化物又はアゾ化合物のいずれかが挙げられる。エマルジョン重合の場合、水溶性開始剤が好ましい。開始剤の量は、モノマーの総重量に基づいて、典型的には0.05〜2重量%の範囲、又は0.1〜1重量%の範囲、又は0.1〜0.5重量%の範囲である。
【0101】
プレ接着剤反応混合物は、得られたカチオン性又は両性イオン性モノマーの分子量を制御するための連鎖移動剤を含有する場合が多い。例示的な連鎖移動剤には、四臭化炭素、四塩化炭素、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、2−メルカプトエタノール、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、3−メルカプトプロピオン酸、イソオクチル3−メルカプトプロプリオネートなどのメルカプタン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
いくつかの実施形態では、連鎖移動剤の量は、全モノマー100部当たり少なくとも0.001部(pph)、又は少なくとも0.005pph、又は少なくとも0.01pph、又は少なくとも0.05pph、又は少なくとも0.1pphの量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤の量は、最大2pph、又は最大1pphの量でプレ接着剤反応混合物中に存在する。
【0103】
いくつかの実施形態では、モノマー及びフェノール樹脂が混合され、テープ裏材又は他の支持体上にコーティングされ、加熱されて重合を開始させる。いくつかのこのような実施形態では、空気は重合中に部分的に排除又は制限される。
【0104】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加のモノマー、架橋剤、開始剤、連鎖移動剤、又はそれらの組み合わせは、次いで、モノマー及びフェノール樹脂の予備重合混合物に添加される。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加のモノマー、架橋剤、開始剤、連鎖移動剤、又はそれらの組み合わせは、予備重合される混合物に添加されるものと同じ比率で存在する、同じ化合物の一部又は全部を含む。次いで、予備重合混合物を支持体上にコーティングし、硬化させ、ここで、予備重合した混合物の粘度は、予備重合無しのコーティングによって実施可能と思われる厚さよりも厚い層にコーティングされることを可能にする。
【0105】
他の実施形態では、モノマーとフェノール樹脂とのエマルジョンが形成され、重合は重合反応の熱開始反応を用いて行われる。エマルジョンは、油中水型又は水中油型エマルジョンである。いくつかのこのような実施形態では、エマルジョンは水中油型エマルションであり、1つ以上のモノマーは、1つ以上の界面活性剤を使用することによってバルク水相で安定化される。様々な実施形態では、界面活性剤は、本質的にカチオン性、両性イオン性、又は非イオン性であり、その構造は別段特に限定されない。いくつかの実施形態では、界面活性剤はモノマーでもあり、カチオン性又は両性イオン性ポリマー分子内に組み込まれるようになる。他の実施形態では、界面活性剤は重合反応容器中に存在するが、重合反応の結果として、カチオン性又は両性イオン性ポリマー内には組み込まれない。
【0106】
カチオン性又は両性イオン性ポリマーを形成するために使用されるモノマー及びフェノール樹脂の水中油型エマルジョンを形成するのに有用な非イオン性界面活性剤の非限定的な例は、BASF Corporation(Charlotte,NC,USA)によって商品名PLURONIC、KOLLIPHOR、又はTETRONICで販売されているものなどのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー;Dow Chemical Company(Midland,MI,USA)によって商品名TRITONで販売されているものを含む、エチレンオキシドと脂肪族アルコール、ノニルフェノール、ドデシルアルコールなどとの反応によって形成されたエトキシレート;オレイルアルコール;ソルビタンエステル;ドデシルグルコシドなどのアルキルポリグリコシド;ソルビタントリステアレート、及びそれらの1つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0107】
カチオン性又は両性イオン性ポリマーを形成するために使用されるモノマー及びフェノール樹脂の水中油型エマルジョンを形成するのに有用なカチオン性界面活性剤の非限定的な例には、ココアルキルメチル[ポリオキシエチレン(15)]アンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化デメチルジオクタデシルアンモニウム、ラウリルメチルグルセト−10ヒドロキシプロピルジアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロリド、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルエチルメチルアンモニウムエトスルフェート、トリアルキルメチルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンモノアルキルメチルアンモニウムクロリド、及びジ−第四級アンモニウムクロリド、Akzo Nobel N.V.(Amsterdam,the Netherlands)によって商品名ETHOQUAD、ARQUAD及びDUOQUADで販売されているアンモニウム官能性界面活性剤、及びそれらの混合物が挙げられる。本開示の両性イオン性ポリマーの重合のための水中油型エマルジョンの形成において特に使用されるものは、ETHOQUAD界面活性剤、例えばETHOQUAD C/12、C/25、C/12−75などである。いくつかの実施形態では、ETHOQUAD C/25は、本開示の両性イオン性ポリマーを製造するために使用されるモノマーの水中に高固形分のエマルジョンを製造するために有効に使用される。
【0108】
いくつかの実施形態では、カチオン性界面活性剤が水中油型エマルジョン重合反応において使用される場合、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、それは少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1.0重量%、又は少なくとも2.0重量%の量で使用される。カチオン性界面活性剤が水中油型エマルジョン重合反応において使用されるいくつかの実施形態では、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、最大6.0重量%、又は最大4.0重量%の量で使用される。1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.1重量%、2.2重量%、及び、例えば、0.1重量%〜6.0重量%の0.1重量%増分によって、並びに、例えば、2.3重量%〜4.6重量%、4.5重量%〜4.7重量%などの0.1重量%増分でのこれらの個々の値にまたがる任意の範囲で表される、全ての他のこのような個々の値などの、様々な中間レベルも有用である。
【0109】
カチオン性又は両性イオン性ポリマーを形成するために使用されるモノマーの水中油型エマルジョンを形成するために有用な両性イオン性界面活性剤の非限定的な例には、コカミドプロピルベタイン、ヒドロキシスルタイン、及びコカミドプロピルヒドロキシスルタインなどのベタイン及びスルタインが挙げられ、他には、レシチン、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、及び2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ウンデシル−4,5−ジヒドロイミダゾール−1−イウム−1−イル]酢酸ナトリウム(ラウロアンホ酢酸ナトリウム)が挙げられる。
【0110】
両性イオン性界面活性剤が水中油型エマルジョン重合反応において使用されるいくつかの実施形態では、これは、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、少なくとも1.0重量%、又は少なくとも2.0重量%の量で使用される。両性イオン性界面活性剤が水中油型エマルジョン重合反応において使用されるいくつかの実施形態では、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、最大10.0重量%、又は最大6.0重量%の量で使用される。1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.1重量%、2.2重量%、及び、例えば、1.0〜10.0重量%の0.1重量%増分によって、及び、例えば、2.3重量%〜4.6重量%、4.5重量%〜4.7重量%などの0.1重量%増分でのこれらの個々の値にまたがる任意の範囲で表される、全ての他のこのような個々の値などの、様々な中間レベルも有用である。
【0111】
他の実施形態では、本開示のカチオン性又は両性イオン性ポリマーを製造するために使用されるモノマー及びフェノール樹脂のエマルジョン重合は、モノマー、及びフェノール樹脂、界面活性剤及び熱開始剤を水中で混合し、次いで熱開始剤の分解が適切な速度で誘導される温度にエマルジョンを加熱することによって行われる。
【0112】
メタクリル酸又はアクリル酸がモノマー混合物中で使用されるいくつかの実施形態では、ナトリウム、リチウム、アンモニウム又は水酸化カリウムをモノマー混合物に添加して、酸性官能性を中和して対応する塩を形成する。他の実施形態では、このような中和は、重合反応の完了後に行われる。実施形態では、中和は、水相のpHを2〜3から4〜7、例えば5〜6に調整することを意味する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ココアルキルメチル[ポリオキシエチレン(15)]アンモニウムクロリドであるETHOQUAD C/25は、モノマー及びフェノール樹脂の高固形分エマルジョンを製造するために有効に使用される。この文脈において、「固形分」は、水以外のエマルジョンの全ての成分として定義される。
【0114】
いくつかの実施形態では、高固形分エマルジョンは、例えば、少なくとも15重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%の水中の固形分の固形分含量で形成される。いくつかの実施形態では、高固形分エマルジョンは、例えば、最大60重量%、又は最大50重量%の水中の固形分の固形分含量で形成される。16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、26重量%、27重量%、及び、例えば、15重量%〜60重量%水中固形分の1重量%増分によって、並びに例えば、23重量%〜46重量%、45重量%〜57重量%などの1重量%増分でのこれらの個々の値にまたがる任意の範囲で表される、全ての他のこのような個々の値などの、様々な中間レベルも有用である。
【0115】
いくつかの実施形態では、水は、例えば少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%の量で、重合性プレ接着剤反応混合物中に存在する。いくつかの実施形態では、水は、例えば最大85重量%、又は最大75重量%、又は最大70重量%、又は最大60重量%の量で、重合性プレ接着剤反応混合物中に存在する。
【0116】
一般的に、使用されるエマルジョン重合及び方法論の条件は、従来のエマルジョン重合法で使用されるものと同じであるか又は同様である。いくつかの実施形態では、水中油型エマルジョン重合は、熱開始反応を用いて行われる。このような実施形態では、1つの有用な重合開始剤は、水溶性カチオン性アゾ開始剤であるV−50(和光純薬工業(株)(大阪、日本))から入手)である。いくつかのこのような実施形態では、エマルジョンの温度は、重合前及び重合中に、30℃〜100℃、又は40℃〜80℃、又は40℃〜60℃、又は45℃〜55℃に調整される。
【0117】
高温でのエマルジョンの撹拌は、熱開始剤の実質的に全てを分解し、エマルジョンに添加された実質的に全てのモノマーを反応させて、重合エマルジョンを形成するために適切な時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、高温は、2時間〜24時間、又は4時間〜18時間、又は8時間〜16時間の間維持される。
【0118】
重合の間に、いくつかの実施形態では、追加の熱開始剤を添加して、反応容器に添加されたモノマー含量の実質的に全ての反応を完了させることが必要である。重合の完了は条件の慎重な調整によって達成され、残留モノマー含量のガスクロマトグラフィー分析などの標準的な分析技術は、重合の完了について当業者に知らせることが理解されよう。
【0119】
他の実施形態では、重合は、有機溶媒も含み得る水性混合物中で起こる。適切な有機溶媒及び溶媒混合物の例には、様々な実施形態では、エタノール、メタノール、トルエン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、1−メチル−2−ピロリジノン、2−ブタノン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、t−ブタノール、メチルイソブチルケトン、メチルt−ブチルエーテル、及びエチレングリコールのうちの1つ以上が挙げられる。使用される場合、10重量%以下の有機溶媒が、本明細書に記載のプレ接着剤反応混合物中で使用される。
【0120】
接着剤組成物及びコーティング
本開示の接着剤組成物は、少なくとも1つのカチオン性ポリマー又は両性イオン性ポリマー、その中に組み込まれた1つ以上のフェノール樹脂、及び任意に1つ以上の追加の成分を含む。追加の成分には、1つ以上の接着力促進剤、界面活性剤、防汚剤、熱安定剤若しくは酸化安定剤、着色剤、補助剤、可塑剤、溶媒、架橋剤、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0121】
いくつかの実施形態では、エマルジョン重合プロセスの最後に、1つ以上のフェノール樹脂が組み込まれた乳化カチオン性又は両性イオン性ポリマーが接着剤組成物として使用され、マスキング物品を形成するために1つ以上の支持体上にそのままコーティングされる。このような実施形態では、重合に使用される水及び1つ以上の界面活性剤は、任意の残留する未反応モノマー又は開始剤と共に、接着剤組成物と結合したままであろう。接着剤組成物は、水の実質的な部分を除去するために十分な時間にわたってコーティングされ、乾燥されるが、ほとんどの実施形態では、使用される界面活性剤は、このような界面活性剤がポリマーと反応してポリマーの一部となるか否かにかかわらず、乾燥したコーティング中に残るであろう。
【0122】
いくつかの実施形態では、エマルジョンの乾燥は、いかなる未反応の揮発性モノマーの一部又は実質的な部分の除去ももたらす。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の成分が、カチオン性又は両性イオン性ポリマーを含有するエマルジョンに添加されて、接着剤組成物を形成し、修正されたエマルジョンを用いて1つ以上の支持体をコーティングし、乾燥させて、水の実質的な部分及び任意の他の残留する揮発性成分の一部又は実質的な部分を除去する。乾燥後に、乳化接着剤組成物は、未反応モノマーを、エマルジョン重合反応容器に添加されたモノマーの総重量に基づいて、1重量%以下、例えば0.5重量%〜5ppm、又は500ppm〜10ppm、又は100ppm〜1ppm含むことが望ましい。
【0123】
ある特定の実施形態では、接着剤コーティングは、カチオン性又は両性イオン性ポリマーに加えて、2重量%〜30重量%の(カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて)フェノール樹脂を含有する。カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、プレ接着剤反応混合物に含まれるモノマーに由来するモノマー単位を含有する。即ち、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、カチオン性モノマーに由来するモノマー単位、非イオン性モノマーに由来するモノマー単位、任意のアニオン性モノマーに由来する任意のモノマー単位、いずれかの任意の追加のモノマーに由来する任意のモノマー、及び架橋性モノマーに由来する任意のモノマーを含有する。モノマー単位は、様々なモノマーの重合変形型である(例えば、それらはもはやエチレン性不飽和基を有しない)。
【0124】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%のカチオン性又は両性イオン性ポリマーを含有する。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、最大98重量%、又は最大95重量%のカチオン性又は両性イオン性ポリマーを含有する。
【0125】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%のフェノール樹脂を含有する。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、最大30重量%、最大25重量%、最大20重量%、又は最大15重量%のフェノール樹脂を含有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、70重量%〜98重量%のカチオン性又は両性イオン性ポリマーに加えて、2重量%〜30重量%のフェノール樹脂を含有する。例えば、接着剤組成物は、80重量%〜98重量%のカチオン性若しくは両性イオン性ポリマーと2重量%〜20重量%のフェノール樹脂、又は85重量%〜98重量%のカチオン性若しくは両性イオン性ポリマーと2重量%〜15重量%のフェノール樹脂、又は85重量%〜95重量%のカチオン性若しくは両性イオン性ポリマーと5重量%〜15重量%のフェノール樹脂を含有し得る。
【0127】
任意の接着剤組成物中のカチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー単位:
モノマー単位の総重量に基づいて、2重量%〜45重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、10重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、1つ以上の架橋性モノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、カルボン酸塩モノマー、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー単位:
モノマー単位の総重量に基づいて、2重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、45重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜20重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、1つ以上の架橋性モノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)を含む。
【0129】
他の例示の実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー単位:
モノマー単位の総重量に基づいて、5重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、60重量%〜95重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、1つ以上の架橋性モノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)を含む。
【0130】
更に他の例示の実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー単位:
モノマー単位の総重量に基づいて、5重量%〜15重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、65重量%〜95重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、1つ以上の架橋性モノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)を含む。
【0131】
任意の追加のモノマー又は任意の架橋性モノマーが存在しない更に他の例示の実施形態では、カチオン性又は両性イオン性ポリマーは、以下のモノマー単位:
モノマー単位の総重量に基づいて、2重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、45重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)を含む。
【0132】
本開示のカチオン的に乳化された接着剤組成物は、優れたコーティング粘度及び高い剪断安定性を特徴とする。実施形態では、本開示のカチオン的に安定化された接着剤組成物の粘度は、20センチポアズ(cP)〜2500cP、又は100cP〜1500cP、又は400cP〜1000cPである。エマルジョン粘度は、一部分において、エマルジョンの固形分含量及び形成されたカチオン性又は両性イオン性ポリマーの分子量によって決定される。エマルジョンは、剪断不安定性の開始が80Pa以上、例えば90Pa〜300Pa又は100Pa〜200Paで起こる、剪断応力下で安定である。
【0133】
本開示のカチオン的に乳化された接着剤組成物の粘度及び剪断安定性は、マスキング物品を形成するために接着剤組成物を1つ以上の支持体上にコーティングするためのコーティング方法の選択において幅広い柔軟性を提供する。接着剤組成物と共に使用される有用なコーティングプロセスの非限定的な例には、ナイフコーティング、スロットコーティング、ダイコーティング、フラッドコーティング、ロッドコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、浸漬コーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、例えば、フレキソ、インクジェット、又はスクリーンプリントコーティングなどの印刷コーティング作業などが挙げられる。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、連続コーティングとしてコーティングされ、他の実施形態では、それらはパターンコーティングを施されている。
【0134】
乳化された接着剤組成物のコーティングに続いて、エマルジョン混合物に付随する水及び任意の他の揮発性物質の実質的な部分を除去するために十分な乾燥のための適切な温度及び時間を用いる乾燥が行われる。
【0135】
接着剤物品
本開示の接着剤物品は、少なくとも本開示の接着剤組成物及び支持体を含む。本開示の接着剤物品が、製造が容易であり、多くの実施形態では、接着剤物品を作製するために単一のパスコーティング作業を用いていることは、本開示の利点である。接着剤組成物がエマルジョンとしてコーティングされる実施形態では、単一コーティングパスの後に乾燥ステップが続く。本開示の接着剤物品を作製するために、追加のステップは必要とされない。
【0136】
本開示の接着剤物品は、支持体の種類及び形状に関して特に限定されるものではないが、多くの実施形態では、支持体は、テープ物品に変換するために好適なシート又はフィルムである。支持体は又、ロール形態で提供されてもよい。テープ物品は、典型的にはより大型のシート又はロールから所望の幅及び長さに変換される矩形ストリップである。このような変換は、典型的には、接着剤組成物をテープフィルム又はシート上にコーティングした後に行われる。接着剤コーティングプロセスにおける変数には、支持体のフィルム又はシートの厚さ、支持体の化学組成、及びコーティングされる接着剤組成物の性質が挙げられる。
【0137】
本開示の接着剤物品は、それらがそのまま使用されているか否かにかかわらず、マスキング物品とすることができる。マスキング物品として使用するために、本明細書に記載される接着剤物品のいずれも更なる改質がなく、そのままで有用である。
【0138】
接着剤物品は、直線状、非直線状形状、及び不規則な形状を含む任意の形態又は形状で使用される。本開示の接着剤物品の形成において使用される支持体は、典型的には12マイクロメートル〜3センチメートル(cm)の厚さ、又は25マイクロメートル〜200マイクロメートルであり、又は「標準」寸法の物品については75マイクロメートル〜150マイクロメートルの厚さであり、又は特殊な物品については200マイクロメートル〜3cmである。特殊な接着剤物品には、例えば、発泡支持体を含む物品が挙げられる。
【0139】
好適な支持体の化学組成物には、多種多様なポリマー及びそれらのブレンドから選択されるものが挙げられる。好適な支持体の非限定的な例としては、平坦又は滑らかな紙並びにクレープ紙などの織地状の表面にした紙の両方を含む紙、天然又は合成ポリマーフィルム、天然及び/又は合成繊維、並びにこれらの組み合わせで製造される不織布、織布強化ポリマーフィルム、繊維又は糸強化ポリマーフィルム又は不織布、並びに複数層積層構造が挙げられる。
【0140】
好適な合成ポリマーフィルムの例には、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン並びにフッ素化及び非フッ素化モノマーとのそのコポリマー、ポリ塩化ビニリデン並びにそのコポリマー、ポリフッ化ビニリデン並びにそのコポリマー、ナイロン6、ナイロン6,6、及びナイロン12などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ乳酸、及びポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネートなど、並びにそのような材料の2つ以上のブレンドから作製されたものが挙げられる。このような支持体材料には、いくつかの実施形態では、例えば、充填剤、安定剤、着色剤などの追加の材料が含まれる。スズ若しくはアルミニウムフィルム又はシート支持体などの金属支持体もいくつかの実施形態では有用である。いくつかの実施形態では、支持体を形成するポリマーは発泡支持体の形態である。いくつかの実施形態では、支持体は、金属蒸着フィルムである。いくつかの実施形態では、支持体は、2つ以上の層を有する多層支持体であり、いくつかのこのような実施形態では、層は積層されている。2つ以上のこのような組成物及び構造物の組み合わせもまた、本開示の様々な実施形態において有用である。
【0141】
いくつかの実施形態では、支持体はエンボス加工又はマイクロエンボス加工されており、エンボス加工又はマイクロエンボス加工された支持体は、上述した支持体材料及び構造物のいずれかを含む。いくつかのこのような実施形態では、エンボス加工又はマイクロエンボス加工された特徴部は、接着剤組成物と接触する支持体の主側面上に配置されている。他の実施形態では、エンボス加工又はマイクロエンボス加工された特徴部は、接着剤組成物で被覆された側面の反対側の支持体の主側面上に配置されている。更に他の実施形態では、エンボス加工又はマイクロエンボス加工された特徴部は、支持体の両主側面に配置されており、2つの主側面上に配置された特徴部は、様々な実施形態では同じであるか、又は異なる。いくつかの実施形態では、接着剤組成物それ自体が、エンボス加工された表面上にコーティングを施すことによるか、又は支持体とエンボス加工された剥離ライナーとの間に接着剤組成物を配置することによるかのいずれかで、エンボス加工された特徴部を含む。
【0142】
接着剤組成物それら自体に付与されたエンボス加工された特徴部は、例えば、本開示のマスキング物品に再設置性を付与するために、又は接着剤物品とマスクされた表面との間からのエアー抜きを可能にするために有用である。エンボス加工及びマイクロエンボス加工は、当業者に既知の技術を用いて達成され、パターン付きニップロールを使用するニップロールエンボス加工、及び異形押出を含み、いくつかの実施形態では、エンボス加工又はマイクロエンボス加工プロセスによって付与される表面構造を改変するために、幅出し及びスライシングなどの二次プロセスが更に使用される。
【0143】
支持体を構成する材料は特に限定されるものではなく、テープ支持体として有用な同じ材料は、フィルム又はシート以外の支持体の形態において同様に有用である。様々な実施形態では、このような支持体は、本開示の接着剤組成物と有用に組み合わされて、テープ以外の接着剤物品を製造する。いくつかのこのような実施形態では、接着剤物品はマスキング物品である。他の実施形態では、接着剤物品はマスキング用途には使用されない。本開示の接着剤組成物でコーティングを施すことによって有用に形成される接着剤物品には、例えば屋根板、角型カーペット材、カーペット裏地、角型ビニル床材、接着壁タイル、壁紙、装飾転写シール若しくはステッカー、自動車用転写特徴部若しくは転写シール、及び脚、スペーサ、栓として用いられるプラスチック又はゴムの「隆起」、又は様々な物品上の保護材、及び感圧接着剤が有用に用いられる任意の数の他の用途が挙げられる。テープ支持体としては従来使用されていない、ガラス、又はいくつかの剛性/脆性プラスチック、又は金属などの追加の材料もまた、本開示の接着剤組成物と共に、いくつかの用途において何らかの有用性を有する。
【0144】
本開示の接着剤物品の幅及び長さは、特に限定されない。いくつかの実施形態では、本開示の接着剤物品は、コーティングされたシート若しくはフィルム又はロールを0.25cm〜10cm、又は0.5cm〜7.6cmの幅にスライスすることによってテープ物品に変換されるが、テープ物品の幅は特に限定されない。更に、いくつかの実施形態では、本開示の接着剤物品は、消費者による使用のために、より小さいシート又はロールに、例えば20cm×28cmのシートに適切に変換される。いくつかの実施形態では、シート又はロールは、消費者が特定の用途で使用するために、その後シート又はロールを所望の形状及び寸法に自由に分割するように、消費者に提供される。
【0145】
本開示の接着剤物品がそのように使用されるかどうかに関わらず、マスキング物品であることが、本開示の利点である。マスキング物品として使用するために、記載される接着剤物品のいずれも更なる改質を伴わず、それ自体として有用である。
【0146】
本開示の接着剤組成物がその上にコーティングされる支持体と共に容易に利用される形状は、製造の容易さに関して、更に、例えば、ハサミ、カッターナイフ、穴あけ器、ダイカッター、又は任意の他の切断器具を用いるハンドカットによる、供給された形状をカスタマイズされた形状に変換することでのエンドユーザの容易さに関しても実際には限定されない。したがって、例えば、消費者は、本開示のマスキングテープの20cm×28cmのシートを購入し、それを特定の最終用途のために所望の形状に切断することができる。このような最終用途には、例えば、接着剤物品が、塗装される領域をマスキングするために採用され、塗料が適用された後に除去されるステンシル又はパターニングが挙げられる。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示の接着剤組成物を支持体にコーティングし、乾燥させる前に、支持体が予備処理される。予備処理は、テープ物品又は他のマスキング物品を使用中にそれを適用した表面から除去するときに、支持体と接着剤組成物との間の接着剤結合の増加が、支持体と接着剤との境界面の破損を防止するために必要である場合に、接着剤組成物がその上にコーティングされる支持体の主表面に適用されるか、又はその上で行われる。
【0148】
予備処理は、支持体表面に施されるコーティングを含む。当業者であれば、このような「下塗り」コーティングの性質が各支持体及び特定の接着剤組成物に特異的であり、様々な下塗りコーティングを利用可能であることを理解するであろう。実際には、いくつかの支持体材料は、この目的のために予め下塗りされた状態で利用可能である。別の種類の好適な予備処理は、コーティングの前に支持体の表面の粗面化であり、これは、コーティングされた本開示の接着剤組成物による接着力に対して表面積を増加させる。更に別の種類の好適な予備処理は、本開示の接着剤組成物の支持体に対する接着力を増加させることができる化学変化を誘発するための表面のコロナ処理又はプラズマ処理である。このような予備処理はいくつかの実施形態では有用であるが、他の実施形態では、紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、及びポリカーボネートを含む多くの好適な支持体が、支持体−接着剤境界面における結合を改善するために、任意の種類の予備処理の不在下で、本組成物を用いてコーティングされる。
【0149】
接着剤物品がテープであるいくつかの実施形態では、接着剤組成物がその上にコーティングされることになる支持体の側面と反対側の主側面は、エンドユーザがテープを巻き戻す間に、接着剤コーティングされた側面と反対側の主側面からの接着剤の剥離を促進するように処理される。このようなコーティングは、工業界では「低接着性バックサイド」又はLABと称されることが多く、当業者に周知であり、従来採用されているLAB処理及びコーティングのうちの任意のものは、本開示のマスキングテープ物品を形成するために用いられるテープ支持体に好適に適用される。従来のLAB処理は、従来の巻き出し力(unwind force)の値、例えば、228.6cm/分の速度での180°剥離強度、及び5秒の設定時間にて測定されるとき、50グラム毎センチメートル(g/cm)〜500g/cm、又は100g/cm〜350g/cmの値を有するテープ物品を提供するために、本開示の様々な実施形態で好適に使用される。
【0150】
特定の実施形態では、接着剤物品は剥離ライナーを含む。例えば、いくつかの実施形態では、シート形態で接着剤物品を形成することが望ましいか、又はいくつかの他の理由のために、接着剤テープで通常行われるように、それ自体の上に巻かれる接着剤物品を有することを避けることが有用である。例えば、最終用途がステンシル用途である場合、支持体上に存在するコーティング及び乾燥接着剤組成物に適用される剥離ライナー、即ち、分離した支持体型シート又はフィルムを用いることが、一般的に望ましい。このような実施形態では、支持体は、その1つの主側面上に、接着剤組成物でコーティングされ、必要に応じて接着剤組成物が乾燥され、剥離ライナーが乾燥した接着剤層の上部に適用される。剥離ライナーは、剥離ライナー材料のいかなる残留物も接着剤上又は接着剤中に実質的に移さない実施形態において、エンドユーザによって剥がされるときに、接着剤からきれいに剥離する材料で形成されるか、あるいはこのような材料でコーティングされる。そのような剥離ライナーについては、当業者に周知であり、従来採用されてきた剥離ライナーのいずれかが、本開示のマスキングテープ物品を形成するために使用されるテープ支持体に好適に適用される。
【0151】
接着剤物品がテープ物品である実施形態では、本開示の接着剤組成物は、5グラム毎平方メートル(g/m
2)〜90g/m
2、又は10g/m
2〜70g/m
2、又は15g/m
2〜50g/m
2の支持体上の乾燥接着剤組成物のコーティング重量で、選択された支持体上にコーティングされる。しかしながら、本開示の接着剤物品は、マスキングテープ物品に、又はマスキング用途に限定されるものではなく、様々な用途に対して、接着剤のより厚い又はより薄いコーティングが有用であり、当業者よって容易に最適化されることが理解されよう。
【0152】
いくつかの実施形態では、本開示の接着剤組成物は、追加の接着剤がその上にコーティングされない支持体の主側面上に不連続にコーティングされる。いくつかの実施形態では、テープ支持体の一端又は両端が接着剤組成物で被覆されている「縁部のみが被覆された」接着剤物品を提供するために、パターンコーティング及びストライプコーティングが有用である。このような物品は、マスキング用途で、表面に接触する主側面の一部のみにわたる感圧性接着剤の性能を有し、その残部の全体にわたっては接着力を有しない。いくつかの実施形態では、縁部のみが被覆された接着剤物品は、テープ構造の形成で、単位面積当たりの被覆材料の総量を低減する。いくつかの実施形態では、縁部のみが被覆された接着剤物品は、低減した単位テープ面積当たりの接着力を有し、これが、次には、適用後の表面からの物品の除去の助けとなる。いくつかの実施形態では、縁部のみが被覆されたマスキング物品を使用することによって、接着剤が、例えば、表面の非常にデリケートな部分には接触しない状態で、表面は効果的にマスキングされ得る。このような物品は、例えば、美術工芸品の復元、デリケートな布材に隣接する表面の塗装、オリジナルの仕上げを有する非常に古い木工細工に隣接する表面の塗装、又はコーティングプロセス中の半導体表面の保護などの高度に敏感な用途において有用である。このような縁部のみが被覆された部品において、縁部コーティングそれ自体が感圧性接着剤であり、このようなマスキング物品が形成され得る。
【0153】
本開示の縁部被覆接着剤物品の追加の利点は、縁部コーティングの接着力(例えば、剥離接着力レベルによって立証されるような)が、本開示の接着剤組成物で全体的に被覆された支持体について上述したものと同じ方法で容易に調整されることである。したがって、例えば、その被覆された主側面の縁部が、主側面の残部の少なくとも一部に配置された追加の接着剤と比べて、意図された基材に対する、より大きな又はより小さな接着力の大きさを有するマスキング物品が、容易に形成される。同様に、その被覆された主側面の縁部が、主側面の残部の少なくとも一部に配置された追加の接着剤と比べて、より大きな又はより小さな粘着力を有するマスキング物品が、容易に形成される。
【0154】
様々な実施形態では、縁部被覆接着剤物品は、1g/m
2〜90g/m
2、又は5g/m
2〜70g/m
2、又は10g/m
2〜50g/m
2の乾燥接着剤組成物のコーティング重量で、本開示の接着剤組成物で好適にコーティングされる。しかしながら、本開示の縁部被覆接着剤物品は、マスキングテープ物品に、又はマスキング用途に限定されるものではなく、様々な用途に対して、接着剤組成物のより厚い又はより薄いコーティングが有用であり、当業者よって容易に最適化されることが理解されよう。更に、縁部コーティングの幅は、特に限定されず、即ち、主被覆面の外縁部と縁部コーティングの内縁部との間の距離は、100%未満である支持体の全幅の任意のパーセントを包含し得る。多くの実施形態では、縁部コーティングは、支持体の全幅の5%〜50%を包含する。
【0155】
接着剤組成物の縁部コーティングは、当業者に既知の任意の方法を用いて好適に行われる。例えば、ストライプコーティング、ナイフコーティング、ブラシコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、又はカーテンコーティングは、本開示の接着剤組成物を支持体の縁部に適用するために有用な手段である。
【0156】
接着剤物品の用途
様々な実施形態では、本開示の接着剤物品は、接着剤組成物が感圧性接着剤として働く際に、選択された基材に適用される。感圧性接着剤は、標準的な部類の材料であると認識される。感圧性接着剤は、15℃〜25℃の範囲の温度で粘着性を有し、手による圧力を超える圧力の必要なく接触だけで、様々な異なる表面に接着するものと、概ね認識される。感圧性接着剤は、紙、セロファン、ガラス、プラスチック、木材、及び金属などの材料に対して強力な接着保持力を及ぼすために、水、溶媒、又は熱による活性化の必要がない。感圧性接着剤は十分に粘着力のある保持及び弾性性質を有し、それらの強力な粘着度にもかかわらず指で扱うことができ、かつ滑らかな表面から多くの残留物を残さずに除去することができる(例えば、Test Methods for Pressure sensitive Tapes,6th Ed.,Pressure Sensitive Tape Council,1953を参照のこと)。感圧性接着剤及びテープは周知であり、そのような接着剤において望ましい様々な特性及び特性のバランスは、十分に分析されている(例えば、米国特許第4,374,883号(Winslowら)、及び「Pressure sensitive Adhesives」in Treatise on Adhesion and Adhesives Vol.2,「Materials」、R.I.Patrick編、Marcel Dekker,Inc.,N.Y.,1969を参照のこと)。
【0157】
接着剤物品において好適な支持体と組み合わされるときに、本開示の接着剤組成物がその上で感圧性接着剤として良好な性能を有する基材には、ガラス、金属、木材(ボール紙又はパーティクルボードなどの木製生成物を含む)、壁板、例えば、塩化ポリビニル、ポリエチレンテレフタレート又はポリ乳酸などのポリエステル、天然若しくは合成ゴム、ポリアミド、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィンを含む、充填、着色、架橋結合、又は表面改質されたポリマーを含む合成又は天然ポリマー、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどの器具又は設備ケーシング材料、及び例えば、ポリマー−木複合物などの混合又は複合材料、並びに任意の塗装又は下塗されたその表面が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
更に、カチオン性又は両性イオン性ポリマー中に存在するカチオン性及び/又はアニオン性モノマーのレベルを維持しながら、選択された表面への接着力が、所望のレベルまで容易に最適化されることが、本開示の接着剤組成物の特徴である。例えば、PSTC−101、Test Method A(Harmonized International Standard,Peel Adhesion of Pressure Sensitive Tape、http://www.pstc.org/ftles/public/101.pdfにて入手可能)によって測定するときに、約50g/cm〜450g/cmに調整することが可能である。これは、例えば、一定レベルのカチオン性モノマーと、様々な種類及び比率の他のモノマーとをカチオン性又は両性イオン性ポリマー中に使用して行うことができる。
【0159】
選択される基材表面に適用された後、本開示の接着剤物品は、1つ以上のマスキング用途に有用に用いられる。マスキング物品としての本開示の接着剤物品の性能は、本開示の接着剤組成物とマスク基材に適用される液体及び/又は液中固体材料との相互作用によって特徴付けられ、相互作用は、液体又は液中材料のマスクされた表面との接触の実質的な防止をもたらす。マスキング物品を使用して、コーティングから遮断されるマスク基材と液体コーティングが適用される基材の非マスク領域との間にはっきりした、きれいな、滑らかな分離線を生成するために、接着剤物品はまず、コーティングから遮断される基材の領域に接着される。次に、コーティングは、基材の非マスク領域に適用され、接着剤物品の少なくとも縁部に適用される。続いて、コーティングを少なくとも部分的に乾燥させる。最後に、接着剤物品は、基材から除去する。接着剤物品は、マスクされた表面の縁部を越えたコーティングの移動を阻止するため、基材のコーティング領域と基材のマスクされた表面との間に明確で均一な境界線が生成される。
【0160】
多くのマスキング用途において、マスク基材に適用される液体コーティングは、塗料配合物である。塗料配合物は、典型的には、懸濁液中に分散される固体、半固体、又は液体粒子、即ち、分散液又はエマルジョンであるが、常に水性懸濁液というわけではない。多くの実施形態では、塗料配合物は、アニオン的に安定化されたエマルジョンである。いくつかのこのような実施形態では、塗料配合物は、顔料粒子が、1つ以上の水溶性ポリマーの安定化効果によって分散された状態に維持される、1つ以上のアニオン荷電性水溶性ポリマーと分散された無機顔料粒子とを含む水性ラテックス(例えば、エマルジョンポリマー)である。他の実施形態では、塗料は、1つ以上の水溶性ポリマーに加えて、1つ以上のアニオン荷電性界面活性剤を用いて顔料粒子を安定化することによって形成される、水性ラテックスである。このような実施形態では、本開示の接着剤組成物は、接着剤組成物と接触しているマスク基材の部分であるマスクされた表面上での、塗料配合物構成成分の流出を阻止する。接着剤組成物は、そのどちらもが妨げる障壁を形成しやすいメカニズムである塗料配合物中の粒子の凝集を誘発することか、又は塗料配合物の粘度を上昇させることかのいずれかにより、塗料配合物を不安定化することによって、この流出を妨げ、ないしは別の方法で、マスク基材と接着剤組成物との境界面の縁部を越える塗料配合物の移動を阻止する。接着剤組成物のカチオン性ポリマーか、又は両性イオン性ポリマーかのいずれかの中に存在するカチオン性モノマーは、塗料配合物のアニオン性部分と相互作用し、観察される効果を引き起こす。
【0161】
いくつかの実施形態では、液体コーティングは、塗料配合物か、又はいくつかの他の液体コーティング材料かに関わらず、上述した塗料配合物など、アニオン的に安定化される代わりにカチオン的に安定化される。接着剤物品が両性イオン性ポリマーを含む実施形態において、このようなカチオン的に安定化された液体コーティング組成物は、アニオン的に安定化された水性ラテックスが安定化されるものと同一の様式で効果的に安定化されることは、本開示の特徴である。即ち、両性イオン性ポリマー中に存在するアニオン性モノマーは、アニオン性モノマーとラテックス中に存在するカチオン性部分との相互作用によって、不安定化による凝集を誘発するか、又は粘度の上昇を誘発する。
【0162】
本開示の接着剤物品のマスキング性質は、従来のマスキングテープによって画定される縁部と比較して、より低い変動度を有する塗装ラインを、マスクされた表面の縁部によって画定される中心線の周囲に生成するように機能する。即ち、全ての他の変数は一定のままで、本開示の接着剤物品を選択される基材上に適用することによって形成されるマスクされた表面の縁部は、標準的なマスキングテープによって提供される縁部よりも、中心線の周囲により低い変動度を有する塗装ラインを生成するであろう。中心線及び変動度は、最小二乗法、直線回帰法、及び分散分析法などの既知の統計的手法を使用して決定され得る。それに加えて、全ての他の変数は一定のままで、本開示の接着剤物品を選択される基材上に適用することによって形成されるマスクされた表面の縁部は、市販の縁部処理されたマスキングテープによって提供される縁部と比べて、中心線の周囲に同一か又はより低い変動度を有する塗装ラインを生成するであろう。
【0163】
マスキング用途の別の態様は、コーティング作業を行った後のマスキング物品の除去である。接着剤物品がその上に適用される基材に関わらず、除去が実質的にきれいである、即ち、物品の除去に際して残る観察可能な残留物が存在せず、また接着剤物品の除去の結果として基材への損傷が存在しないということは、本開示の接着剤物品の特徴である。重要なことに、本開示の接着剤物品を、マスキング用途を行った後に基材から除去するときに、マスクされた表面の縁部に、マスクされた表面の周囲に残る観察可能な残留物は存在しない。理論によって限定されることを望むものではないが、本開示の接着剤物品のきれいな除去は、一部には、接着剤組成物の高い貼着強度の維持、及び接着剤物品全体にわたる、また更には接着剤物品の適用、マスキング、及び除去を通した接着剤組成物と支持体との間の高い接着剤結合に起因すると考えられる。それに加えて、理論によって限定されることを望むものではないが、マスキング作業中に適用される液体コーティングの、マスクされた表面として画定される境界面内への移動を防止すること、及び該移動の防止手段として、任意の液体の吸収を防止することは、マスキング用途全体にわたって接着剤物品の完全性の維持をもたらし、マスキングが達成された後、基材からの容易できれいな除去をもたらすと考えられる。
【0164】
例示的な実施形態
実施形態1Aは、水と、水中に溶解した1つ以上のカチオン性(メタ)アクリレートモノマーと、1つ以上の非イオン性(メタ)アクリレートモノマー及び1つ以上のフェノール樹脂を含む分散相とを含む、水性重合性プレ接着剤反応混合物である。
【0165】
実施形態2Aは、1つ以上のフェノール樹脂が、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0166】
実施形態3Aは、1つ以上のフェノール樹脂が、テルペンフェノール樹脂を含む、実施形態2Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0167】
実施形態4Aは、テルペンフェノール樹脂が、樹脂1グラム当たり20〜220mg KOHのヒドロキシル価を有する、実施形態3Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0168】
実施形態5Aは、テルペンフェノール樹脂が、樹脂1グラム当たり100〜220mg KOHのヒドロキシル価を有する、実施形態4Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0169】
実施形態6Aは、テルペンフェノール樹脂が、40℃〜120℃のガラス転移温度を有する、実施形態3A〜5Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0170】
実施形態7Aは、テルペンフェノール樹脂が、0.5未満の酸価を有する、実施形態3A〜6Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0171】
実施形態8Aは、1つ以上のフェノール樹脂が、アルキルフェノール樹脂を含む、実施形態2Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0172】
実施形態9Aは、アルキルフェノール樹脂が、パラ−アルキルフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂を含む、実施形態8Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0173】
実施形態10Aは、フェノール樹脂が、全モノマー100部当たり2〜30部、又は2〜20部の量で、プレ接着剤反応混合物中に存在する、実施形態1A〜9Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0174】
実施形態11Aは、1つ以上のカチオン性(メタ)アクリレートモノマーが、アルキルアンモニウム官能性(例えば、トリアルキルアンモニウム官能性)を有する(メタ)アクリレートエステルを含む、実施形態1A〜10Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0175】
実施形態12Aは、1つ以上のカチオン性(メタ)アクリレートモノマーが、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、2重量%〜45重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する、実施形態1A〜11Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0176】
実施形態13Aは、1つ以上の低Tg非イオン性モノマーが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、又はn−ドデシルメタクリレートを含む、実施形態1A〜12Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0177】
実施形態14Aは、1つ以上の低Tg非イオン性モノマーが、イソオクチルアクリレート2−エチルヘキシルアクリレートを含む、実施形態13Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0178】
実施形態15Aは、1つ以上の低Tg非イオン性モノマーが、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、10重量%〜98重量%、又は50重量%〜98重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する、実施形態1A〜14Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0179】
実施形態16Aは、プレ接着剤反応混合物が、1つ以上のアニオン性(メタ)アクリレートモノマーを更に含む、実施形態1A〜15Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0180】
実施形態17Aは、アニオン性(メタ)アクリレートモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、それらの塩、又はそれらのブレンドを含む、実施形態16Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0181】
実施形態18Aは、1つ以上のアニオン性(メタ)アクリレートモノマーが、プレ接着剤反応混合物中のモノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%、又は0.2重量%〜5重量%の量でプレ接着剤反応混合物中に存在する、実施形態16A又は17Aに記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0182】
実施形態19Aは、プレ接着剤反応混合物が、モノマーの総重量に基づいて、2重量%〜45重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルを含む1つ以上のカチオン性モノマーと、
10重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する1つ以上の低Tg非イオン性モノマーと、モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する1つ以上の極性モノマー、c)(メタ)アクリロイル基を含まない1つ以上のビニルモノマー、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、1つ以上の架橋性モノマーと、モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、カルボン酸塩モノマー、又はそれらの2つ以上の混合物を含む1つ以上のアニオン性モノマー(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)
を含む、実施形態1A〜18Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0183】
実施形態20Aは、プレ接着剤反応混合物が、モノマーの総重量に基づいて、2重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルを含む1つ以上のカチオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、45重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する1つ以上の低Tg非イオン性モノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する1つ以上の極性モノマー、c)(メタ)アクリロイル基を含まない1つ以上のビニルモノマー、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマーと、
モノマーの総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物を含む1つ以上のアニオン性モノマー(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)
を含む、実施形態1A〜19Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物である。
【0184】
実施形態1Bは、実施形態1A〜20Aのいずれか一項に記載の水性プレ接着剤反応混合物の重合生成物である。
【0185】
実施形態1Cは、カチオン性又は両性イオン性ポリマーと1つ以上のフェノール樹脂とを含む接着剤組成物であって、フェノール樹脂の量が、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、2重量%〜30重量%の範囲にある、接着剤組成物である。
【0186】
実施形態2Cは、カチオン性又は両性イオン性ポリマーが、
モノマー単位の総重量に基づいて、2重量%〜45重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、モノマー単位の総重量に基づいて、10重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、1つ以上の架橋性モノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、カルボン酸塩モノマー、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)
を含む、実施形態1Cに記載の接着剤組成物である。
【0187】
実施形態3Cは、カチオン性又は両性イオン性ポリマーが、
モノマー単位の総重量に基づいて、2重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、モノマー単位の総重量に基づいて、45重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位と(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)
を含む、実施形態1C又は2Cに記載の接着剤組成物である。
【0188】
実施形態4Cは、1つ以上のフェノール樹脂が、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1C〜3Cに記載の接着剤組成物である。
【0189】
実施形態5Cは、1つ以上のフェノール樹脂が、テルペンフェノール樹脂を含む、実施形態4Cに記載の接着剤組成物である。
【0190】
実施形態6Cは、テルペンフェノール樹脂が、樹脂1グラム当たり20〜220mg KOHのヒドロキシル価を有する、実施形態5Cに記載の接着剤組成物である。
【0191】
実施形態7Cは、テルペンフェノール樹脂が、樹脂1グラム当たり100〜220mg KOHのヒドロキシル価を有する、実施形態6Cに記載の接着剤組成物である。
【0192】
実施形態8Cは、テルペンフェノール樹脂が、40℃〜120℃のガラス転移温度を有する、実施形態1C〜7Cのいずれか一項に記載の接着剤組成物である。
【0193】
実施形態9Cは、テルペンフェノール樹脂が、0.5未満の酸価を有する、実施形態1C〜8Cのいずれか一項に記載の接着剤組成物である。
【0194】
実施形態10Cは、1つ以上のフェノール樹脂が、アルキルフェノール樹脂を含む、実施形態4Cに記載の接着剤組成物である。
【0195】
実施形態11Cは、アルキルフェノール樹脂が、パラ−アルキルフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂を含む、実施形態10Cに記載の接着剤組成物である。
【0196】
実施形態12Cは、1つ以上のアニオン性(メタ)アクリレートモノマー単位が、モノマー単位の重量に基づいて0.2重量%〜5重量%の量で、両性イオン性ポリマー中に存在する、実施形態2C〜11Cのいずれか一項に記載の接着剤組成物である。
【0197】
実施形態13Cは、フェノール樹脂の量が、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、5重量%〜15重量%の範囲にある、実施形態1C〜12Cのいずれか一項に記載の接着剤組成物である。
【0198】
実施形態1Dは、互いに反対にある第1及び第2の主面を有する支持体と、互いに反対にある第1及び第2の主面のうちの少なくとも1つの少なくとも一部に配置された実施形態1C〜13Cのいずれか一項に記載の接着剤組成物とを含む接着剤物品。
【0199】
実施形態2Dは、物品がマスキングテープである、実施形態1Dに記載の接着剤物品である。
【0200】
実施形態3Dは、物品がステンシル物品である、実施形態1Dの接着剤物品である。
【0201】
実施形態4Dは、接着剤組成物の少なくとも一部に接触する剥離ライナーを更に含み、これによって接触した接着剤組成物が、支持体と剥離ライナーとの間に配置される、実施形態1Dに記載の接着剤物品である。
【0202】
実施形態1Eは、接着剤物品の製造方法であって、本方法が、
実施形態1A〜20Aのいずれか一項に記載の水性重合性プレ接着剤反応混合物を形成することと、
プレ接着剤反応混合物中のモノマーを重合して、重合混合物を形成することと、
重合混合物を支持体上にコーティングして、被覆混合物を形成することと、
被覆混合物を乾燥させることと、を含む方法である。
【0203】
実施形態2Eは、水性重合性プレ接着剤反応混合物が、1つ以上のアニオン性(メタ)アクリレートモノマーを含む、実施形態1Eに記載の方法である。
【0204】
実施形態3Eは、プレ接着剤反応混合物が、1つ以上の界面活性剤を更に含む、実施形態1E又は2Eに記載の方法である。
【0205】
実施形態4Eは、プレ接着剤反応混合物が、熱開始剤を更に含み、重合が、プレ接着剤反応混合物を約40℃〜80℃の温度に加熱することによって達成される、実施形態1E〜3Eのいずれか一項に記載の方法である。
【0206】
実施形態5Eは、重合混合物を約4〜7のpHに中和することを更に含む、実施形態1E〜4Eのいずれか一項に記載の方法である。
【0207】
実施形態6Eは、コーティングが、ダイコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング、フラッドコーティング、スプレーコーティング、又はキャストコーティングによって達成される、実施形態1E〜5Eのいずれか一項に記載の方法である。
【0208】
実施形態7Eは、支持体が、平坦な紙、滑らかな紙、織地状の表面にした紙、天然ポリマーフィルム、合成ポリマーフィルム、天然ポリマー不織布、合成ポリマー不織布、織布強化フィルム、繊維又は糸強化フィルム、繊維又は糸強化不織布、それらの複数層構造、及びそれらの積層構造を含む、実施形態1E〜6Eのいずれか一項に記載の方法である。
【0209】
実施形態1Fは、実施形態1E〜7Eのいずれか一項に記載の方法によって調製された接着剤物品である。
【0210】
実施形態2Fは、物品がマスキングテープである、実施形態1Fに記載の接着剤物品である。
【0211】
実施形態1Gは、カチオン性又は両性イオン性ポリマーとフェノール樹脂とを含むエマルジョン組成物である。
【0212】
実施形態2Gは、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、70重量%〜98重量%のカチオン性又は両性イオン性ポリマーと、2〜30重量%のフェノール樹脂とを含む、実施形態1Gに記載のエマルジョン組成物である。
【0213】
実施形態3Gは、カチオン性又は両性イオン性ポリマーが、
モノマー単位の総重量に基づいて、2重量%〜45重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、10重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜10重量%の、1つ以上の架橋性モノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、カルボン酸塩モノマー、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)
を含む、実施形態1G又は2Gに記載のエマルジョン組成物である。
【0214】
実施形態4Gは、カチオン性又は両性イオン性ポリマーが、モノマー単位の総重量に基づいて、2重量%〜20重量%の、アルキルアンモニウム官能性を有する(メタ)アクリレートエステルに由来する1つ以上のカチオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、45重量%〜98重量%の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると20℃以下のTgを有する低Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の低Tg非イオン性モノマー単位、又はそれらの2つ以上の混合物と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜30重量%の、a)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ単独重合すると少なくとも30℃のTgを有する高Tg非イオン性モノマーに由来する1つ以上の高Tg非イオン性モノマー単位、b)ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、エーテル基、又はエポキシ基を有する極性モノマーに由来する1つ以上の極性モノマー単位、c)(メタ)アクリロイル基を含まないビニルモノマーに由来する1つ以上のビニルモノマー単位、又はd)それらの2つ以上の混合物を含む、1つ以上の任意のモノマー単位と、
モノマー単位の総重量に基づいて、0重量%〜5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物に由来する1つ以上のアニオン性モノマー単位と(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づいて決定される)
を含む、実施形態1G〜3Gのいずれか一項に記載のエマルジョン組成物である。
【0215】
実施形態5Gは、1つ以上のフェノール樹脂が、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1G〜4Gに記載のエマルジョン組成物である。
【0216】
実施形態6Gは、1つ以上のフェノール樹脂が、テルペンフェノール樹脂を含む、実施形態5Gに記載のエマルジョン組成物である。
【0217】
実施形態7Gは、テルペンフェノール樹脂が、樹脂1グラム当たり20〜220mg KOHのヒドロキシル価を有する、実施形態6Gに記載のエマルジョン組成物である。
【0218】
実施形態8Gは、テルペンフェノール樹脂が、樹脂1グラム当たり100〜220mg KOHのヒドロキシル価を有する、実施形態6Gに記載のエマルジョン組成物である。
【0219】
実施形態9Gは、テルペンフェノール樹脂が、40℃〜120℃のガラス転移温度を有する、実施形態1G〜8Gのいずれか一項に記載のエマルジョン組成物である。
【0220】
実施形態10Gは、テルペンフェノール樹脂が、0.5未満の酸価を有する、実施形態1G〜9Gのいずれか一項に記載のエマルジョン組成物である。
【0221】
実施形態11Gは、1つ以上のフェノール樹脂が、アルキルフェノール樹脂を含む、実施形態1Gに記載のエマルジョン組成物である。
【0222】
実施形態12Gは、アルキルフェノール樹脂が、パラ−アルキルフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂を含む、実施形態11Gに記載のエマルジョン組成物である。
【0223】
実施形態13Gは、1つ以上のアニオン性(メタ)アクリレートモノマーが、モノマー単位の重量に基づいて、0.2重量%〜5重量%の量で、両性イオン性ポリマー中に存在する、実施形態1G〜12Gのいずれか一項に記載のエマルジョン組成物である。
【0224】
実施形態14Gは、フェノール樹脂の量が、カチオン性又は両性イオン性ポリマーにフェノール樹脂を加えた総重量に基づいて、5重量%〜15重量%の範囲にある、実施形態1G〜13Gのいずれか一項に記載のエマルジョン組成物である。
【実施例】
【0225】
以下の実施例によって、本発明の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例で列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に例示を目的とするのみであり、添付の特許請求の範囲の限定を意図するものではない。
【0226】
材料
【表1】
【0227】
試験方法
ガラス転移温度(Tg)
ポリマー(例えば、重合エマルジョン組成物)をテフロン基材上にコーティングし、70℃で乾燥させることによって、試料を調製した。乾燥させたフィルムを取り外し、数回折り畳んで、およそ1〜2ミリメートル(0.04〜0.08インチ)の厚さを有する試料を得た。直径8ミリメートル(0.31インチ)の寸法の試験試料を打ち出して、レオメーター(モデルDHR−2 Discover Hybrid Rheometer,TA Instruments,New Castle,DE)の8ミリメートルの直径の鋼製の平行プレートの間に置いて、動的機械分析を行って、Tgを決定した。以下のパラメータを使用した:1ラジアン/秒の周波数で5%の制御された剪断歪み、及び3℃/分の速度で65℃〜175℃の温度ランプ。ガラス転移温度(Tg)は、tanデルタ曲線のピークとして取られた。
【0228】
ステンレス鋼又はガラスの剥離接着強度(角度180度)
30.48センチメートル(12インチ)の長さ×12.7センチメートル(5インチ)の幅×0.13センチメートル(0.050インチ)の厚さの寸法のステンレス鋼(SS)又はガラスプレートを、メチルエチルケトン及び清浄なティッシュペーパー(Kimberly−Clark Corporation,Neenah,WIから商品名KIMWIPEで入手可能)で3回洗浄し、最後の洗浄を試料調製の直前に行うことによって、試験用に調製した。接着テープを、2.54センチメートル(1インチ)の幅及び少なくとも30.48センチメートル(12インチ)の長さの寸法のストリップに切断し、接触面積が2.54センチメートル(1インチ)の幅×およそ25.4センチメートル(10インチ)の長さである、プレートに接着させた。次いで、2キログラム(4.5ポンド)のゴムローラーを、アセンブリの上を前後に2回転がした。テープ適用後1分以内に、剥離試験を、剥離試験機(IMASS,Inc.,Accord,MAから入手可能な、モデルIMASS SP−2000 Slip/Peel Tester)を用いて、2秒の平均データ取得時間で、180度の角度及び228.6センチメートル/分(90インチ/分)の速度において行った。各接着テープ試料の少なくとも3つの剥離試験測定値を評価し、それらの結果を記録し、オンスフォース/インチ(ニュートン/デシメートル)で平均化した。
【0229】
塗装済み基材の調製:
PROMAR 200 ZERO VOC PRIMER(Sherwin−Williams Company,Cleveland,OH)のコートで下塗りされ、15.24センチメートル(6インチ)×30.48センチメートル(12インチ)の寸法にされたカバ材パネル(Mailand Wood Products,Centuria,WIから入手)を、以下の表2に示した試験塗料のうちの1つでコーティングした。
【表2】
*この塗料は、木材パネルに付随する下塗り剤とは異なる。
【0230】
試験塗料の2種のコートを、Purdy WHITE DOVE4分の1ナップ塗装用ローラー(Purdy Corporation,Cleveland,OHから入手可能)を用いて、木材パネルの下塗りした側に適用した。ローラーかけは、テープ適用の方向に垂直に、カバ材ボードに沿って長さ方向で行った。塗料の第1のコートは、第2のコートを施す前に、手で触れるくらいまで乾燥させた。塗装済み基材を、試験前に最短でも7日間、室温で放置することによって硬化させた。
【0231】
塗装済み基材の剥離接着強度(角度180度)
接着テープを、2.54センチメートル(1インチ)の幅及び少なくとも15.24センチメートル(6インチ)の長さの寸法のストリップに切断し、接触面積が2.54センチメートル(1インチ)の幅×およそ12.7センチメートル(5インチ)の長さである、塗装済み基材の幅にわたってテープ長さで接着させた。次いで、2キログラム(4.5ポンド)のゴムローラーを、アセンブリの上を前後に2回転がした。テープ適用後1分以内に、剥離試験を、剥離試験機(IMASS,Inc.,Accord,MAから入手可能な、モデルIMASS SP−2000 Slip/Peel Tester)を用いて、2秒の平均データ取得時間で、180度の角度及び228.6センチメートル/分(90インチ/分)の速度において行った。各接着テープ試料の少なくとも3つの剥離試験測定値を評価し、それらの結果を記録し、オンスフォース/インチ(ニュートン/デシメートル)で平均化した。
【0232】
一般的手順
エマルジョンポリマー合成A:フェノール樹脂を含まない
撹拌器、還流冷却器、加熱ランプ、温度計、温度制御器、及び窒素パージを装備したきれいな2リットルのガラス反応器を使用した。水及びEC−25界面活性剤をこの反応器に充填した。撹拌を250rpmで開始し、その後、MAA、VA、及びIOAを添加し、次いで、窒素で、2リットル/分で30分間パージした。次に、反応器を50℃に加熱し、この温度で安定化させた後に、V50水溶性開始剤の第1の充填量(全モノマーの0.5百分率(pph))を添加した。2時間後に、V−50の第2の充填量(0.05pph)を添加し、温度を65℃まで上昇させて、この温度で2時間保持し、その後、プレ接着剤反応混合物を室温まで冷却させた。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって、プレ接着剤反応混合物のpHを5〜7に調整し、続いて、プレ接着剤反応混合物をチーズクロスを通して濾過した。濾過された凝塊の量は、特に断りのない限り、通常、モノマーの総重量の1重量%未満であった。フェノール樹脂を含まない得られたエマルジョンは、重量分析によって、0.5重量%未満の未反応モノマーを含有することが判明した。
【0233】
エマルジョンポリマー合成B:フェノール樹脂を含む
エマルジョンポリマー合成Aを、以下の改変で繰り返した。きれいなビーカー中で、フェノール樹脂をIOAモノマーと合わせて、樹脂が完全に溶解するまで混合して、IOA/フェノール樹脂予備混合物を生成した。次いで、この予備混合物を、IOAの代わりに単独で用いて、「エマルジョンポリマー合成A」の調製で記載されたフェノール樹脂を含むエマルジョンを調製した。フェノール樹脂を含む得られたエマルジョンは、重量分析によって、0.5重量%未満の未反応モノマーを含有することが判明した。
【0234】
エマルジョンポリマー合成C:フェノール樹脂を含まない
2.54センチメートル(1インチ)のプラスチックキャップを備えた0.95リットル(32オンス)のガラス広口瓶に、IOA又は2−EHAを充填し、続いて、連鎖移動剤四臭化炭素(CBr
4)、DMAEA−MCL、MAA、VA、水、EC−25、及びV−50(0.375pph)を添加した。プレ接着剤反応混合物を、窒素で2分間パージし、その後、ビンを密閉した。次に、ビンを、50℃に設定したLAUNDER−OMETER(SDL ATLAS、Rock Hill,SCから入手可能)回転水浴中に24時間配置した。水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって、得られた溶液のpHを5〜5.5に調整し、続いて、355マイクロメートルの開口部を有するPET−50GG−355メッシュ(Sefar Inc.,Buffalo,NYから入手可能)を通して濾過した。濾過された凝塊の量は、特に断りのない限り、通常、モノマーの総重量の1重量%未満であった。フェノール樹脂を含まない得られたエマルジョンは、重量分析によって、0.5重量%未満の未反応モノマーを含有することが判明した。
【0235】
エマルジョンポリマー合成D:フェノール樹脂を含む
エマルジョンポリマー合成Cを、以下の改変で繰り返した。フェノール樹脂をIOA又は2−EHAモノマーと合わせて、樹脂が完全に溶解するまで混合して、モノマー/フェノール樹脂予備混合物を生成した。次いで、この予備混合物を、IOA又は2−EHAの代わりに単独で用いて、「エマルジョンポリマー合成C」の調製で記載された炭化水素樹脂を含むエマルジョンを調製した。フェノール樹脂を含む得られたエマルジョンは、重量分析によって、0.5重量%未満の未反応モノマーを含有することが判明した。
【0236】
接着テープの調製
接着テープ試料を、紙の厚さよりも大きい0.076〜0.102ミリメートル(0.003〜0.004インチ)の空隙設定を用いて、15.24センチメートル(6インチ)の幅及び0.14ミリメートル(0.0054インチ)の厚さの寸法にした、マスキングテープの基材として使用するのに好適な紙基材(米国特許公開第2015/0035204号(Stonerら)で開示された種類と同様なアクリル飽和剤で飽和され、ポリ塩化ビニリデン下塗り剤で下塗りされた)の下塗りされた側に、エマルジョンをナイフコーティングすることによって調製した。コーティングされた紙基材を、70℃で強制対流オーブン内でおよそ5分間乾燥させた。剥離接着強度を評価する前に、接着テープ試料を、23℃及び50%の相対湿度の恒温恒湿で一晩平衡化させた。
【0237】
比較実施例1(CE1)
フェノール樹脂を有しない比較実施例1を、上述した「エマルジョンポリマー合成A」を用いて調製した。得られたエマルジョンは、およそ45〜50重量%の固形分パーセントを有した。これを用いて、ガラス転移温度(Tg)及び180度の角度の剥離接着強度を評価するために試料を調製した。組成及び結果を下記表3及び4に示す。
【0238】
実施例1〜18
フェノール樹脂を有する実施例1〜18を、上述した「エマルジョンポリマー合成B」を用いて調製した。得られたエマルジョンは、およそ45〜50重量%の固形分パーセントを有した。これらを用いて、ガラス転移温度(Tg)及び180度の角度の剥離接着強度を評価するために試料を調製した。組成を表3に示す。フェノール樹脂は、全モノマーの百分率(pph)として示した量で添加された。結果を表4に示す。
【表3】
*固形分の2〜5%の凝塊が観察され、これを濾別した。
【0239】
凝塊は望ましくなく、例えば、濾過によって容易に除去され得る。特に断りのない限り、全ての試料は、固形分の0.2重量%未満の凝塊を有した。
【表4】
*固形分の2〜5%の凝塊が観察され、これを濾別した。
【0240】
上記実施例は、広範な範囲のフェノール樹脂が安定なエマルジョンポリマーを製造するために使用され得ることを示している。比較実施例(CE1)と比べて、本発明の実施例(1〜18)のTgにおける上昇は、フェノール樹脂による有効な粘着付与を実証している。ステンレス鋼基材への接着力は、樹脂1グラム当たり100ミリグラムのKOH又はそれ以上のヒドロキシル価を有し、5〜10phrの量で存在するフェノール樹脂によって、最適に改善される。
【0241】
比較実施例2(CE2)
フェノール樹脂を有しない比較実施例2を、上述した「エマルジョンポリマー合成C」を用いて調製した。得られたエマルジョンは、およそ50重量%の固形分パーセントを有した。これを用いて、ガラス転移温度(Tg)及び180度の角度の剥離接着力強度を評価するために試料を調製した。組成及び結果を下記表5及び6に示す。
【0242】
実施例19〜23
フェノール樹脂を有する実施例19〜23を、上述した「エマルジョンポリマー合成D」を用いて調製した。得られたエマルジョンは、およそ50重量%の固形分パーセントを有した。これらを用いて、ガラス転移温度(Tg)及び180度の角度の剥離接着力強度を評価するために試料を調製した。組成及び結果を下記表5及び6に示す。
【表5】
【表6】
【0243】
上記実施例は、基材に対する広範な接着性能を提供するために、いくつかのポリマー化学を用いる本発明のアプローチの多様性を実証している。本接着剤は、高TgのモノマーIBOA(実施例19対実施例20)を添加することによって、また連鎖移動剤CBr
4の量を増加させることによって(実施例20対実施例21)、ステンレス鋼及び塗料1に対して高接着強度を有するように調整され得る。ステンレス鋼に対する接着剤のレベルは、i−STAを添加することによって(実施例19対実施例23)、代替え的に低下させることができるが、同時に、塗料1に対する接着力はわずかに増加し、塗料2に対する接着力はわずかに減少する。
【0244】
本明細書で言及した特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容は、それぞれが個々に援用されたかのように、これらの全容を参照により援用する。当業者には、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることを意図するものではないこと、並びにこのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例示としてのみ示されることを理解されたい。