特許第6890599号(P6890599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソイテックの特許一覧

特許6890599表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890599
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20210607BHJP
   H03H 3/10 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   H03H9/25 C
   H03H3/10
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-539954(P2018-539954)
(86)(22)【出願日】2017年1月17日
(65)【公表番号】特表2019-510391(P2019-510391A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】FR2017050092
(87)【国際公開番号】WO2017134357
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2019年12月9日
(31)【優先権主張番号】1650774
(32)【優先日】2016年2月1日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オレグ コノンチュク
(72)【発明者】
【氏名】エリック ビュトー
(72)【発明者】
【氏名】エリック デボネ
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−536217(JP,A)
【文献】 特開昭50−099249(JP,A)
【文献】 特開平08−097675(JP,A)
【文献】 特開2008−006766(JP,A)
【文献】 特開2012−085286(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/027538(WO,A1)
【文献】 特開昭62−040811(JP,A)
【文献】 特開平07−176975(JP,A)
【文献】 特開2001−053579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/08− 3/10
H03H 9/145−9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有用層(1)の圧電材料よりも低い熱膨張係数を有するキャリア基板(5)に接合された前記圧電材料の前記有用層(1)を備えた表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)であって、前記有用層(1)と前記キャリア基板(5)との間に配置された中間層(4)を備え、前記中間層(4)は、前記中間層(4)の平面内において複数の周期的モチーフ(6、7)を有する、少なくとも2つの異なる材料から形成された構造化された層であり、
前記中間層(4)は、当該ハイブリッド構造(10)の界面上において反射される表面音響波を制限するように、前記周期的モチーフ(6、7)の少なくとも1つの横寸法を調節することによって、前記有用層(1)に侵入した表面音響波の前記中間層(4)上における透過又は拡散を促進させるように構成され、前記周期的モチーフ(6、7)の少なくとも1つの横寸法は、前記中間層(4)の音響インピーダンスが、前記有用層(1)の音響インピーダンスと前記キャリア基板(5)の音響インピーダンスの積の平方根に実質的に等しくなるように選択されたことを特徴とする表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項2】
前記周期的モチーフ(6、7)の周期は、前記デバイスの前記表面音響波の周波数に従って選択されることを特徴とする請求項1に記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項3】
前記キャリア基板(5)は、シリコン、ガラス、シリカ、サファイア、アルミナ、および窒化アルミニウムの中から選択される材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項4】
前記有用層(1)は、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、石英、および酸化亜鉛(ZnO)の中から選択される圧電材料を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項5】
前記中間層(4)の厚さは、前記デバイスの前記表面音響波の波長よりも大きいことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項6】
前記周期的モチーフ(6、7)の少なくとも1つの横寸法は、前記デバイスの前記表面音響波の波長よりも小さいことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項7】
前記周期的モチーフ(6、7)は、前記有用層(1)の材料から構成される第1のモチーフ(6)と、前記キャリア基板(5)の材料と同じ種類の材料から構成される第2のモチーフ(7)との交互の配置を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項8】
前記第2のモチーフ(7)は多結晶シリコンから構成され、および前記キャリア基板(5)はシリコンから作成されることを特徴とする請求項に記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項9】
前記中間層(4)の厚さは、前記デバイスの前記表面音響波の波長以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項10】
前記周期的モチーフ(6、7)の少なくとも1つの横寸法は、前記デバイスの前記表面音響波の波長以下であることを特徴とする請求項に記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項11】
前記周期的モチーフ(6、7)は、前記有用層(1)の前記材料から構成される第1のモチーフ(6)と、別の材料から構成される第2のモチーフ(7)との交互の配置を含むことを特徴とする請求項9または10に記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項12】
前記第2のモチーフ(7)は、二酸化ケイ素または窒化ケイ素から構成されることを特徴とする請求項11に記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)。
【請求項13】
表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)を製造する方法であって、該方法は、以下のステージ、
i)圧電材料の有用層(1)と、前記有用層(1)の圧電材料よりも低い熱膨張係数を有するキャリア基板(5)とを提供するステップと、
ii)第1の材料のエッチングされたモチーフおよびエッチングされていないモチーフのセットを形成する、周期的モチーフに従って局所的エッチングをするステップと、
iii)前記エッチングされたモチーフに前記第1の材料とは異なる第2の材料の追加層を適用するステップであって、前記エッチングされていない周期的モチーフおよび前記追加層が、中間層(4)を形成する、該ステップと、
iv)前記中間層(4)が前記有用層(1)と前記キャリア基板(5)との間に配置されるように、前記有用層(1)と前記キャリア基板(5)とを組み立てるステップと
を含み、前記中間層(4)は、前記ハイブリッド構造(10)の界面上において反射される表面音響波を制限するように、前記周期的モチーフ(6、7)の少なくとも1つの横寸法を調節することによって、前記有用層(1)に侵入した表面音響波の前記中間層(4)上における透過又は拡散を促進させるように構成され、前記周期的モチーフ(6、7)の少なくとも1つの横寸法は、前記中間層(4)の音響インピーダンスが、前記有用層(1)の音響インピーダンスと前記キャリア基板(5)の音響インピーダンスの積の平方根に実質的に等しくなるように選択されたことを特徴とする表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)を製造する方法。
【請求項14】
ステージi)において提供される前記有用層(1)は、圧電材料のドナー基板であることを特徴とする請求項13に記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)を製造する方法。
【請求項15】
前記音響波デバイスの製造について所望の前記有用層(1)の厚さまで前記ドナー基板を薄化するステージv)を含むことを特徴とする請求項14に記載の表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造(10)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面音響波デバイスの分野に関する。それは、詳細には、表面弾性波デバイスを製造するのに適したハイブリッド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
表面音響波(SAW)デバイスなどの音響共振器構造は、電気信号を音響波に変換し、音響波を電気信号に変換するために、圧電基板上に作られた1つまたは複数のインターデジタルトランスデューサを使用する。この種類のSAWデバイスまたは共振器は、フィルタリング応用例においてしばしば使用される。無線周波数(RF)SAW技術は、高レベルの絶縁および低い挿入損失を含む優れた性能を提供する。これは、それが無線通信応用例におけるRFデュプレクサのために使用される理由である。それにもかかわらず、バルク音響波(BAW)技術に基づいたRFデュプレクサに対して、より競争力を高めるために、RF SAWデバイスの性能は、改善される必要があり、特に、周波数応答が温度安定的であることが、必要とされる。
【0003】
SAWデバイスの動作周波数の温度依存、または周波数の温度係数(TCF)は、一方では、使用される圧電基板の相対的に高い熱膨張係数(CTE)に一般に起因する、トランスデューサのインターデジタル電極間の間隔の変化に依存し、圧電基板の膨張または収縮には、表面音響波速度の増加または減少が同伴するので、TCFは、他方では、熱運動速度係数に依存する。したがって、周波数の温度係数(TCF)を最小化するには、特に、音響波が伝搬する表面エリアにおける、圧電基板の膨張/収縮を最小化することが、目的となる。
【0004】
非特許文献1は、SAWデバイスの周波数応答の温度依存問題を克服するために一般に使用される手法の概要を提供している。
【0005】
第1の手法は、トランスデューサの金属構造を含む圧電基板の表面を、シリコン酸化物(SiO2)の層で覆うことを含む。SiO2の非常に低いCTEは、圧電基板の温度膨張/収縮を制限する。それは、温度性能を改善するが、この手法は、限界を有し、すなわち、一方では、(金属の存在を所与として)この酸化物層を適用するための温度制約は、制限された音響性能を有する相対的に貧弱な品質の材料の利用しか提供せず、他方では、この手法を用いると、圧電基板の最終的な厚さは、構造の機械的強度を保証するために、200ミクロンよりも大きくなければならず、それは、デバイスの最終的なパッケージングの可能性を制限する。
【0006】
第2の手法は、例えば、シリコン基板に適用される圧電材料の層から構成される、ハイブリッド基板を使用することを含む。このケースにおいても、シリコンの低いCTEは、圧電層の温度膨張/収縮を制限する。タンタル酸リチウム(LiTaO3)の圧電層のケースにおいては、上記の非特許文献1は、LiTaO3の厚さとシリコン基板の厚さとの間の比が10であると、周波数の温度係数(TCF)を適切に改善することを示している。この手法の難点の1つは、(非特許文献2において「スプリアス音響モード」として知られる)寄生音響波の存在にあり、それは、ハイブリッド基板上に作られた共振器の周波数特性に悪影響を及ぼす。これらのスプリアス共振は、(LiTaO3層の表面エリア内を主に伝搬する)主音響波の、特に、LiTaO3とシリコンとの間の界面を含む、下にある界面上における、スプリアス反射に特に関連する。これらのスプリアス共振を低減させるためのソリューションは、LiTaO3の層の厚さを増加させることを含み、これは、TCFにおける改善を維持するための、Si基板の厚さの増加を暗示するので、ハイブリッド基板の合計の厚さは、特にセルフォン市場向けの、最終コンポーネントの厚さを低減させることを求める要件と両立できるものではもはやない。K. Hashimoto他によって提案された別のソリューション(先に言及された非特許文献1)は、(基板との接合界面における)LiTaO3の層の下面を粗くして、その面上での音響波の反射を制限することを含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K.Hashimoto, M.Kadota et al, “Recent development of temperature compensated SAW devices”, IEEE Ultrason. Symp. 2011, pages 79 − 86, 2011
【非特許文献2】“Characterization of bonded wafer for RF filters with reduced TCF”, B. P. Abbott et al, Proc 2005 IEEE International Ultrasonics Symposium, Sept 19 − 21, 2005, pp.926 − 929
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、最新のソリューションに対する代替ソリューションを提供することである。本発明の目的は、特に、前記スプリアス音響波の低減および/または除去を可能にするハイブリッド構造を提供することを含む。
【0009】
本発明は、有用層の圧電材料よりも低い熱膨張係数を有するキャリア基板に接合された有用層を備える、表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造に関し、ハイブリッド構造は、有用層とキャリア基板との間に配置された中間層を備え、中間層は、前記中間層の平面内において複数の周期的モチーフを有する、少なくとも2つの異なる材料から形成された構造化された層である点で注目に値する。
【0010】
横寸法、中間層の平面内におけるモチーフの周期、および中間層の厚さは、ハイブリッド構造の界面上において通常は反射される音響波を透過または拡散させるために、SAWデバイスに特徴的な音響波の周波数に従って定義される。したがって、ハイブリッド構造内における中間層の存在は、SAWデバイスの周波数特性に悪影響を及ぼす、音響波の寄生反射を劇的に低減させる。
【0011】
本発明の有利な特性に従えば、以下のことが、別々に、または組み合わせて利用される。
・モチーフの周期は、デバイスの表面音響波の周波数に従って選択される。
・キャリア基板は、シリコン、ガラス、シリカ、サファイア、アルミナ、および窒化アルミニウムの中から選択される材料を含む。
・有用層は、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、石英、および酸化亜鉛(ZnO)の中から選択される圧電材料を含む。
・中間層の平均音響インピーダンスは、有用層の音響インピーダンスとキャリア基板の音響インピーダンスとの積の平方根に実質的に等しい。
・中間層の厚さは、デバイスの表面音響波の波長よりも大きい。
・モチーフの少なくとも1つの横寸法は、デバイスの表面音響波の波長よりも小さい。
・周期的モチーフは、有用層の材料から構成される第1のモチーフと、キャリア基板の材料と同じ種類の材料から構成される第2のモチーフとの交替を含む。
・第2のモチーフは、多結晶シリコンから構成され、キャリア基板は、シリコンから作成される。
・中間層の厚さは、デバイスの表面音響波の波長に等しく、または実質的にそれよりも小さい。
・モチーフの少なくとも1つの横寸法は、デバイスの表面音響波の波長以下である。
・周期的モチーフは、有用層の材料またはキャリア基板の材料から構成される第1のモチーフと、別の材料から構成される第2のモチーフとの交替を含む。
・第2のモチーフは、二酸化ケイ素(silicon dioxide)、窒化ケイ素(silicon nitride)から構成される。
【0012】
本発明は、表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造を製造する方法にも関し、該方法は、以下のステージ、
i)圧電材料の有用層と、有用層の圧電材料よりも低い熱膨張係数を有するキャリア基板とを提供するステップと、
ii)第1の材料のエッチングされたモチーフおよびエッチングされていないモチーフのセットを形成する、有用層またはキャリア基板の前面の周期的モチーフに従って、局所的エッチングをするステップと、
iii)エッチングされたモチーフに第1の材料とは異なる第2の材料の追加層を適用するステップであって、エッチングされていない周期的モチーフおよび追加層が、中間層を形成する、該ステップと、
iv)中間層が有用層とキャリア基板との間に配置されるように、有用層とキャリア基板とを組み立てるステップと
を含む点で注目に値する。
【0013】
本発明の有利な特性に従えば、以下のことが、別々に、または組み合わせて利用される。
・ステージi)において提供される有用層は、圧電材料のドナー基板である。
・方法は、音響波デバイスの製造について所望の有用層の厚さまでドナー基板を薄化するステージv)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明のさらなる特性および利点は、添付の図を参照しながら行われる、以下の詳細な説明から明らかになる。
図1】本発明に従ったハイブリッド構造を示す図である。
図2】SAWデバイスを備える本発明に従ったハイブリッド構造を示す図である。
図3a】本発明に従った実施形態に従ったハイブリッド構造を示す図である。
図3b】本発明に従った実施形態に従ったハイブリッド構造を示す図である。
図4a】本発明に従ったハイブリッド構造の中間層の周期的モチーフの例を示す図である。
図4b】本発明に従ったハイブリッド構造の中間層の周期的モチーフの例を示す図である。
図4c】本発明に従ったハイブリッド構造の中間層の周期的モチーフの例を示す図である。
図4d】本発明に従ったハイブリッド構造の中間層の周期的モチーフの例を示す図である。
図5a】本発明に従ったハイブリッド構造の中間層のモチーフの例の断面図である。
図5b】本発明に従ったハイブリッド構造の中間層のモチーフの例の断面図である。
図5c】本発明に従ったハイブリッド構造の中間層のモチーフの例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
説明セクションにおいては、以下、同じ参照符号が、同じ種類の要素に対して使用されることがある。図は、読みやすいように、実寸に比例していない、概略図である。特に、z軸方向の層の厚さは、xおよびy軸方向の横寸法に対して、実寸に比例していない。
【0016】
本発明は、図1に示されるような、第1の面2および第2の面3を有する、圧電材料の有用層1を備える、表面音響波(SAW)デバイスを製造するのに適した、ハイブリッド構造10に関する。ハイブリッド構造10は、有用層の下(図1に示されるz軸方向)に、第2の面2に接触して配置された、中間層4も含む。中間層4は、少なくとも2つの異なる材料から形成された、厚さeの構造化された層である。構造化された層は、層の平面内における(すなわち、図1の(x,y)平面内における)周期的モチーフから構成された層を暗示する。これらのモチーフは、定義された横寸法(すなわち、(x,y)平面内における寸法)、およびe以下の厚さ(すなわち、z軸方向)のブロックに対応し、それらは、少なくとも2つの異なる材料から成る。図1に示される例に従えば、中間層4は、第1の材料から形成された第1のモチーフ6と、第2の材料から形成された(第1のモチーフに対して相補的な)第2のモチーフ7とから構成される。(x,y)平面内において、第1のモチーフ6および第2のモチーフ7は、定義された形状(正方形、長方形、円、...)を取り、定義された横寸法を有する。
【0017】
最後に、ハイブリッド構造10は、中間層4の下(図1に示されるz軸方向)に配置された、有用層1のそれよりも低い熱膨張係数を有する、キャリア基板5を備える。ハイブリッド構造10の有用層1は、以下のグループ、すなわち、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、窒化アルミニウム(AlN)、および酸化亜鉛(ZnO)から選択される材料から構成されてよい。キャリア基板5は、以下のグループ、すなわち、シリコン、III−V族半導体、炭化シリコン、ガラス、およびサファイアから選択される材料から構成されてよい。
【0018】
図2に示されるように、ハイブリッド構造10は、有用層1上に、特に、音響信号がその間を伝搬する金属電極20を備える、表面音響波(SAW)デバイスを製造するのに適している。音響信号の伝搬の方向は、図2の例においては、矢印によって示されたy軸の方向である。
【0019】
本発明のハイブリッド構造10の第1の実施形態に従えば、中間層4は、2つの材料から成り、(第1のモチーフ6を構成する)第1の材料は、有用層のそれ(圧電材料)であり、(第2のモチーフ7を構成する)第2の材料は、ハイブリッド構造10のキャリア基板と同じ種類である。中間層4の厚さeは、SAWデバイスによって使用される音響信号の波長λよりも大きく、一般に、eは、2λないし50λの間に含まれてよく、この特性は、圧電材料の層内を伝搬する音響波が、中間層4に遭遇し、それの影響を被ることができることを保証する。さらに、第1および第2の周期的モチーフの少なくとも1つの横寸法(デバイス内における音響波の伝搬の軸方向の寸法)は、波長よりも小さく、一般に、それは、λ/2ないしλ/50の間であってよい。
【0020】
したがって、音響波のスケールにおいて、中間層は、第1および第2の材料を含む合成材料として現れる。周期的モチーフの横寸法は、中間層4の音響インピーダンスが、有用層1の音響インピーダンスとキャリア基板5の音響インピーダンスの積の平方根に実質的に等しくなるように選択される。材料の音響インピーダンスZは、
【0021】
【数1】
【0022】
と表され、ここで、vは、材料内における音響波の速度であり、ρは、材料の密度であり、Eおよびνは、それぞれ、材料のヤング率およびポアソン比であることを思い出されたい。
【0023】
中間層4のケースにおいて、それが構成される材料の各々の体積分率を、V1およびV2とすると、それの音響インピーダンスは、
【0024】
【数2】
【0025】
と表すことができ、ここで、ρ1およびρ2は、それぞれ、第1および第2の材料の密度であり、E1およびE2は、それぞれ、第1および第2の材料のヤング率であり、ν1およびν2は、それぞれ、第1および第2のポアソン比である。
【0026】
体積分率V1およびV2は、中間層4の厚さeと、第1および第2の材料のモチーフ6、7の横寸法とによって定義される。
【0027】
したがって、中間層4の特性(第1および第2の材料、周期的モチーフの横寸法)は、それの平均音響インピーダンスが、有用層1の音響インピーダンスとキャリア基板5の音響インピーダンスの積の平方根にできるだけ近くなるように定義される。
【0028】
【数3】
【0029】
この構成は、(音響インピーダンスの適合による)ハイブリッド構造の界面において通常は反射される有用層1から基板5に向かう音響波の部分の透過に都合がよく、したがって、それは、ハイブリッド構造10上に作られたSAWデバイスの周波数特性に悪影響を及ぼす寄生反射を劇的に低減させることを可能にする。
【0030】
本発明に従ったハイブリッド構造10の第2の実施形態に従えば、中間層4は、同様に、2つの材料から成るが(図3a)、第1の実施形態のそれらとは異なる物理的特性を示す。一方では、中間層の厚さeは、SAWデバイスのために使用される音響信号の波長λに等しく、または実質的にそれよりも小さく、例えば、λないしλ/8の間に含まれる。他方では、周期的モチーフの少なくとも1つの横寸法(デバイス内における音響波の伝搬の軸方向のそれ)は、音響波の波長λ以下であり、一般に、それは、λ/10ないしλの間に含まれてよい。この構成は、音響波と中間層4との間の相互作用を促進する。特に、ハイブリッド構造の界面において通常は反射される音響波の部分は、中間層4によって有利に拡散され、これは、寄生効果を引き起こす音響波の反射された成分の実質的な制限という結果になる。
【0031】
本発明の第2の実施形態の変形に従えば、中間層は、(キャビティを形成する第1のモチーフ6のレベルにおいて)空気または気体から、また(第2のモチーフ7のレベルにおいて)第2の材料から成ってよく(図3b)、例えば、第2のモチーフ7は、キャリア基板5と同じ材料から形成されてよい。有利には、第1および第2のモチーフを構成する材料は、それぞれ、第1のモチーフと第2のモチーフとの間で音響コントラストを発生させるように選択される。
【0032】
第1および第2のモチーフの横寸法(ならびに、したがって、モチーフの周期)は、中間層4の厚さに加えて、SAWデバイスに特徴的な音響波の周波数に従って、また、さらには、ハイブリッド構造の界面上において通常は反射される音響波を透過または拡散するために定義される。
【0033】
図4aないし図4dは、中間層4の周期的モチーフ6、7の配置の変形を示している。中間層4の上面図を示す、図4aの例においては、(x,y)平面内において、第1のモチーフ6および第2のモチーフ7は、ストリップ形状である。このケースにおいては、SAWデバイスは、音響波の伝搬が、y軸に平行に、すなわち、ストリップに垂直に生じるように作られなければならないことを思い出されたい。第1および第2のモチーフのy軸方向の横寸法(ストリップの幅)は、実施形態に従って選択される(音響波の波長よりも小さい、またはそれに実質的に等しい)。図4bにおける代替ソリューションに従えば、いくつかの連続する第1のモチーフ6の寸法は、異なり、例えば、y軸方向において、異なる幅のストリップ61、62、63を用いる第1のモチーフ6の交替が、観察される。同様の交替は、異なる幅のストリップ71、72、73を用いる第2のモチーフ7においても、実行されることができる。この交替は、中間層4の表面全体にわたって、周期的に繰り返される。この種類の構成は、より広い幅の周波数範囲にわたって音響波を拡散させる際に、本発明の第2の実施形態において特に好ましい。
【0034】
図4cに示される別の代替ソリューションに従えば、第1のモチーフは、例えば、正方形形状である、パッドであり、x軸およびy軸方向のそれの寸法は、本発明の第1および第2の実施形態の基準に従って定義される。第2のモチーフは、(x,y)平面内において、第1のモチーフに対して相補的なモチーフである。モチーフのそのような配置は、ハイブリッド構造10を、デバイスの向きとは、また音響波の伝搬の方向とは無関係にする。図4dの別の代替ソリューションに従えば、第1のモチーフは、周期的に繰り返される、異なる寸法の正方形である。この種類の構成は、より広い幅の周波数範囲にわたって音響波を拡散させる際に、本発明の第2の実施形態において興味深い。
【0035】
図5aないし図5cは、本発明に従ったハイブリッド構造の断面図を示している。中間層4の周期的モチーフ6、7は、z軸方向において異なる形状を有してよい。1つの代替バージョンに従えば、それらは、スロットを形成し(図5aおよび図5b)、第1のモチーフ6は、中間層4の厚さ以下のz軸方向の寸法を有する。別の代替ソリューションに従えば(図5c)、それらは、中間層4内のモチーフ間の反射平面を方向付けることによって、スプリアス波の拡散を最適化することが可能な、V形状のモチーフを形成する。
【0036】
言及された例は、もちろん、網羅的ではなく、モチーフは、本発明の範囲を逸脱することなく、(x,y)平面内において、または垂直平面内において、様々な形状を取ってよい。
【0037】
ハイブリッド構造10の第1および第2の実施形態に適用可能な代替ソリューションに従えば、中間層は、3つ以上の異なる材料から形成されてよい。
【0038】
本発明は、表面音響波デバイスのためのハイブリッド構造10を製造する方法にも関する。方法は、圧電材料の有用層1を提供する第1のステージを含む。実施の有利なモードに従えば、有用層は、マイクロエレクトロニクス業界における厚さおよび直径規格(例えば、直径150mm、厚さ675ミクロン)の、圧電材料の基板の形態を採用する。
【0039】
第1のステージは、ドナー基板のそれ(すなわち、また有用層1のそれ)よりも低い熱膨張係数を有する、キャリア基板5を提供するステージも含む。
【0040】
本発明に従った製造方法は、周期的モチーフに従ったドナー基板の前面の局所的エッチングを含み、それによって、エッチングされたモチーフおよびエッチングされていないモチーフのセットを形成する第2のステージを含む。上で説明されたハイブリッド構造を参照すると、エッチングされたモチーフは、第1または第2のモチーフであってよい(同じことが、エッチングされていないモチーフにも当てはまる)。このエッチングステージは、例えば、ドライもしくはウェット化学攻撃、レーザエッチング、またはマイクロメータモチーフの局所的エッチングに適した別の技法によって実施されることができる。エッチングステージの前に、エッチングされるエリアを定義するために、フォトリソグラフィステージが、実行されることができる。
【0041】
あるいは、第2のエッチングステージは、ドナー基板上の代わりに、キャリア基板の前面上において実行されることができる。
【0042】
製造プロセスは、エッチングされていないモチーフを形成する第1の材料とは異なる第2の材料の追加層を、エッチングされたモチーフに適用する第3のステージを含む。この追加層は、例えば、化学気相堆積、化学液相堆積、またはエピタキシなどによって形成されてよい。
【0043】
エッチングされていない周期的モチーフおよび追加層は、本発明に従ったハイブリッド構造10の中間層4を形成する。有利には、(エッチングされていないモチーフのz軸方向の高さを定義する)エッチングの深さは、中間層4の厚さeを定義する。追加層は、有利には、次の組み立てステージの前に、平坦化または表面平滑化処理を経験することができる。
【0044】
方法は、ドナー基板とキャリア基板5とを組み立てて、中間層4がこれら2つの基板間に配置されるようにする第4のステージを含む。有利には、組み立てステージは、直接接合によって、接触して配置された2つの表面の分子付着によって(すなわち、中間層4の表面と基板の表面がいかなる中間層も有さずに)実施される。分子付着の原理は、現状技術においてよく知られており、さらに詳細には説明されない。あるいは、組み立ては、接着剤の層を追加することによって、または意図された応用に適した他の任意の接合技法によって、実施されることができる。
【0045】
本発明に従った製造方法は、ドナー基板を、音響波デバイスの製造にとって望ましい有用層1の厚さまで薄化する第5のステージをさらに含む。このステージは、有用層1にとって良好な表面仕上げを保証するために、例えば、機械研削と、それに続く、乾式または化学機械研磨とを含んでよい。最終ハイブリッド構造10の品質および清浄度を保証するために、薄化ステージ中に、またはその後に、もちろん、様々な異なる洗浄シーケンスが、実施されてよい。
【0046】
例1:
本発明の例示的な実施においては、150mmの直径および675ミクロンの厚さをともに有する、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)から作成されたドナー基板、およびシリコンから作成されたキャリア基板5が、提供される。キャリア基板の抵抗率は、例えば、1000オームcm超になるように選択される。LiNbO3ドナー基板は、モチーフを定義するためのフォトリソグラフィステージを経験し、第1のモチーフ6は、エッチングされていないエリアとして定義され、第2のモチーフ7は、エッチングされたモチーフとして定義される。第1のモチーフは、0.2ミクロンの間隔を空けた、0.3ミクロン平方のタブに対応する。第2のモチーフは、ストリップ幅が0.2ミクロンである、タブ間のグリッドに、すなわち、ドナー基板の表面上における、タブに対して相補的なエリアに対応する。ドナー基板の表面をエッチングするステージは、5ミクロンの深さにわたるドライエッチングによって実行される。ドナー基板の表面上のフォトリソグラフィマスクを除去し、(マイクロエレクトロニクス業界において従来使用されてきた、例えば、RCAシーケンスによって)前者を洗浄した後、多結晶シリコンの追加層が、例えば、CVD(化学気相堆積)によって適用される。
【0047】
エッチングされたエリア(第2のモチーフ)を埋めるために、6ないし12ミクロンの間の、有利には、8ミクロンの厚さが、適用されることができる。その後、p−Siの適用に続いて、いかなる残余の形態および粗さも除去するために、化学機械研磨による平坦化のステージが、達成される。
【0048】
中間層4は、圧電材料から作成された第1のモチーフ6と、第2のモチーフ7を満たす追加層(p−Si)とから成る。第1の代替ソリューションにおいては、中間層4の厚さは、エッチング深さに、すなわち、この例においては、5ミクロンに対応し、このケースにおいては、平坦化ステージは、第1のモチーフとともに洗い流すまでに、ドナー基板の表面からの多結晶シリコンの除去を可能にしている(図5bに示される構成)。第2の代替ソリューションにおいては、追加層の厚さが第1のモチーフ上に残っているので、中間層4の厚さeは、エッチング深さよりも大きい。(図5aに示される構成、この図に表される最終ハイブリッド構造10においては、第1のモチーフ6の間および下に追加層が存在する)。例として、第1のモチーフ上の追加層は、厚さ1ミクロンであってよく、したがって、中間層は、厚さ6ミクロンになる。
【0049】
ドナー基板の表面が、ひとたび準備されると、キャリア基板5との組み立てのステージが、実行される。特に、組み立てられる表面上における汚染または粒子の存在に特に敏感な、分子付着による直接接合のケースにおいては、組み立ての前に、2つの基板を洗浄するシーケンスが、達成されてよい。基板間の接着力を高めるために、それらの表面は、接触して配置される前に、酸素または窒素プラズマ処理を経験してよい。
【0050】
組み立てられる基板の材料間において熱膨張の大きい差を仮定した場合、接合の後、通常は、80ないし120℃の範囲内の低温強化アニーリングが、実施される。
【0051】
20ミクロンの厚さを有する、ハイブリッド構造の有用層を獲得するために、機械薄化のステージと、それに続く、ドナー基板の後面の化学機械研磨のステージが、達成される。
【0052】
したがって、獲得されるハイブリッド構造は、厚さが20ミクロンのLiNbO3の有用層と、(上で言及された代替ソリューションに従えば)5ないし6ミクロンの間の厚さの中間層とから構成され、中間層は、2つの材料、すなわち、LiNbO3から作成される第1のモチーフと、ポリシリコンから作成される第2のモチーフとから構成される。(x,y)平面内における第1のモチーフのサイズは、0.3ミクロンであり、それらの隔たりは、0.2ミクロンである。したがって、この層の平均音響インピーダンスは、近似的に1.5e6 g/cm2/secであり、すなわち、LiNbO3のインピーダンスとシリコンのインピーダンスとの積の平方根に非常に近い値である。
【0053】
このハイブリッド構造は、波長λが2ミクロンのオーダにある、表面音響波デバイスを製造するために意図されている。制限された厚さの有用層を仮定すると、音響波の一部は、その層の中に侵入して伝搬し、中間層に到達する。これらの波は、通常は、界面(例えば、LiNbO3/Si)上において反射され、デバイスの性能を損なうスプリアス波を発生させる。
【0054】
本発明に従ったハイブリッド構造10の中間層4の構成は、有用層1の深さに侵入した音響波の、シリコンキャリア基板5への透過を促進する。中間層4の平均音響インピーダンスは、周囲材料(LiNbO3およびSi)に適切に適合させられる。中間層4の厚さeは、デバイスの音響波の波長よりも大きく、第1のモチーフ間のサイズおよび距離は、波長よりも小さい。
【0055】
さらに、ここで説明されるハイブリッド構造10は、デバイスのRF性能に関して、著しい利点を有する。実際に、ポリシリコンの追加層は、シリコンキャリア基板5内において、後者が高周波数信号にさらされるときに発生させられる電荷のためのトラッピング層を形成する。これらの電荷は、キャリア基板5の抵抗率の低下を引き起こすことが知られており、それは、RFデバイスの線形性および挿入損失性能に悪影響を及ぼす。したがって、p−Siの追加層は、トラッピング層としての補足的な役割を果たし、キャリア基板5内において発生させられた電荷を中和する。
【0056】
例2:
本発明の別の例示的な実施においては、150mmの直径および675ミクロンの厚さをともに有する、タンタル酸リチウム(LiTaO3)から作成されたドナー基板、およびシリコンから作成されたキャリア基板が、提供される。キャリア基板の抵抗率は、例えば、1000オームcm超になるように選択される。LiTaO3ドナー基板は、(x,y)平面内においてモチーフを定義するためのフォトリソグラフィステージを経験し、第1のモチーフ6は、エッチングされていないエリアとして定義され、第2のモチーフ7は、エッチングされたモチーフとして定義される。第1のモチーフ6は、1.25ミクロンの間隔を空けた、幅1.25ミクロンのストリップに対応する。第2のモチーフ7は、ドナー基板の表面上において、第1のモチーフ6のストリップに対して相補的なストリップに対応する。ドナー基板の表面をエッチングするステージは、約1.5ミクロンの深さにわたるドライエッチングによって実行される。ドナー基板の表面上のフォトリソグラフィマスクを除去し、前者を洗浄した後、シリコン酸化物の追加層が、例えば、CVD(化学気相堆積)によって適用される。エッチングされたエリア(第2のモチーフ)を埋めるために、2ないし6ミクロンの間の、有利には、4ミクロンの厚さが、適用される。その後、酸化物の適用に続いて、いかなる残余の形態および粗さも除去するために、追加層の化学機械研磨による平坦化のステージが、達成される。
【0057】
中間層4は、圧電材料(LiTaO3)から作成された第1のモチーフ6と、第2のモチーフ7を満たす追加層(SiO2)とから成る。第1の代替ソリューションにおいては、中間層4の厚さは、エッチング深さに、すなわち、この例においては、1.5ミクロンに対応し、このケースにおいては、平坦化ステージは、第1のモチーフ6とともに洗い流すまでに、ドナー基板の表面からのシリコン酸化物の除去を可能にしている。第2の代替ソリューションにおいては、追加層の厚さが第1のモチーフ6上に残っているので、中間層4の厚さは、エッチング深さよりも大きい。例えば、第1のモチーフ6上の追加層は、厚さ0.5ミクロンであってよく、したがって、中間層4は、厚さ2ミクロンになる。
【0058】
ドナー基板の表面が、ひとたび準備されると、キャリア基板との組み立てのステージが、実行される。特に、組み立てられる表面上における汚染または粒子の存在に特に敏感な、分子付着による直接接合のケースにおいては、組み立ての前に、2つの基板を洗浄するシーケンスが、達成されてよい。基板間の接着力を高めるために、それらの表面は、接触して配置される前に、酸素または窒素プラズマ処理を経験してよい。
【0059】
組み立てられる基板の材料間において熱膨張の大きい差を仮定した場合、接合の後、通常は、80ないし120℃の範囲内の低温強化アニーリングが、実施される。
【0060】
30ミクロンの厚さを有する、ハイブリッド構造の有用層を獲得するために、機械薄化のステージと、それに続く、ドナー基板の後面の化学機械研磨のステージが、達成される。
【0061】
したがって、獲得されるハイブリッド構造は、厚さが30ミクロンのLiTaO3の有用層と、(上で言及された代替ソリューションに従えば)1.5ないし2ミクロンの間の厚さの中間層とから構成され、中間層は、2つの材料、すなわち、LiTaO3から作成される第1のモチーフと、シリコン酸化物から作成される第2のモチーフとから構成される。y軸方向における第1のモチーフのサイズは、1.25ミクロンであり、それらの隔たりは、1.25ミクロンである。
【0062】
このハイブリッド構造10は、周波数が700ないし900MHzの範囲内にあり、すなわち、波長が5ミクロンのオーダにある、表面音響波デバイスを製造するために意図されている。音響波の伝搬は、y軸方向に生じる。制限された厚さの有用層を仮定すると、音響波の一部は、その有用層1の中に侵入して伝搬し、中間層4に到達する。これらの波は、通常は、界面(例えば、LiTaO3/Si)上において反射され、デバイスの性能を損なうスプリアス波を発生させる。
【0063】
本発明に従ったハイブリッド構造10の中間層4の構成は、有用層1に侵入した音響波の、中間層4上における拡散を促進し、したがって、それらの反射を制限する。中間層4の厚さeは、デバイスの音響波の波長よりも実質的に小さく、第1のモチーフ間のサイズおよび距離は、波長よりも小さい。
【0064】
例3:
本発明の別の例示的な実施においては、150mmの直径および675ミクロンの厚さをともに有する、タンタル酸リチウム(LiTaO3)から作成されたドナー基板、およびシリコンから作成されたキャリア基板が、提供される。キャリア基板の抵抗率は、例えば、1000オームcm超になるように選択される。キャリア基板は、モチーフを定義するためのフォトリソグラフィステージを経験し、第1のモチーフ6は、エッチングされていないエリアとして定義され、第2のモチーフ7は、エッチングされたモチーフとして定義される。第1のモチーフ6は、1.25ミクロンの間隔を空けた、幅1.25ミクロンのストリップに対応する。第2のモチーフは、キャリア基板の表面上における、第1のモチーフのストリップに対して相補的なストリップに対応する。キャリア基板の表面をエッチングするステージは、1ミクロンの深さにわたるドライエッチングによって実行される。表面上のフォトリソグラフィマスクを除去した後、キャリア基板は、ドナー基板との組み立てのステージを実施することを視野に入れて、洗浄される。この第3の例においては、追加層は、適用されない。(第1のモチーフを構成する)第1の材料は、シリコンであり、第2の材料は、空気、または組み立てステージ中に接合チャンバ内に導入される雰囲気に応じた気体である。
【0065】
組み立てられる基板の材料間において熱膨張の大きい差を仮定した場合、接合の後、通常は、80ないし120℃の範囲内の低温強化アニーリングが、実施される。
【0066】
20ミクロンの厚さを有する、ハイブリッド構造の有用層を獲得するために、機械薄化のステージと、それに続く、ドナー基板の後面の化学機械研磨のステージが、達成される。
【0067】
したがって、獲得されるハイブリッド構造は、厚さが20ミクロンのLiTaO3の有用層と、1ミクロンの厚さの中間層とから構成され、中間層は、2つの材料、すなわち、シリコンから作成される第1のモチーフと、空気または気体で満たされる第2のモチーフとから構成される。y軸方向における第1のモチーフのサイズは、1.25ミクロンであり、それらの隔たりは、1.25ミクロンである。
【0068】
このハイブリッド構造は、周波数が700ないし900MHz内にあり、すなわち、波長が5ミクロンのオーダにある、表面音響波デバイスを製造するために意図されている。制限された厚さの有用層を仮定すると、音響波の一部は、その層の中に侵入して伝搬し、中間層4に到達する。これらの波は、通常は、界面(例えば、LiTaO3/Si)上において反射され、デバイスの性能を損なうスプリアス波を発生させる。
【0069】
本発明に従ったハイブリッド構造10の中間層4の構成は、有用層1に侵入した音響波の、中間層4上における拡散を促進し、したがって、それらの反射を制限する。中間層4の厚さeは、デバイスの音響波の波長よりも実質的に小さく、第1のモチーフ間のサイズおよび距離は、波長よりも小さい。
【0070】
もちろん、本発明は、説明された実施形態および例に限定されず、特許請求の範囲において確定される本発明の範囲から逸脱することなく、異形の実施形態が、提供されることができる。
【0071】
本発明に従ったハイブリッド構造10は、周波数が700MHzないし3GHzの範囲内にある、表面音響波デバイスの製造に特に適合されることができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c