特許第6890669号(P6890669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6890669微小毛細血管における生体分子の高効率な光学的検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890669
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】微小毛細血管における生体分子の高効率な光学的検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/05 20060101AFI20210607BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20210607BHJP
   G01N 15/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   G01N21/05
   G01N21/64 G
   G01N15/00 A
   G01N15/00 B
【請求項の数】26
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-544876(P2019-544876)
(86)(22)【出願日】2018年2月19日
(65)【公表番号】特表2020-510191(P2020-510191A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(86)【国際出願番号】US2018018648
(87)【国際公開番号】WO2018152479
(87)【国際公開日】20180823
【審査請求日】2019年10月16日
(31)【優先権主張番号】62/461,166
(32)【優先日】2017年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505093840
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー シュミット
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−536129(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/038015(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/038108(WO,A1)
【文献】 実開平04−070607(JP,U)
【文献】 特開2013−088367(JP,A)
【文献】 特開2005−141009(JP,A)
【文献】 特表2004−529349(JP,A)
【文献】 特開平07−027927(JP,A)
【文献】 特表2016−503489(JP,A)
【文献】 米国特許第06020207(US,A)
【文献】 特表2010−519557(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0032730(US,A1)
【文献】 Optical waveguides with an aqueous core and a low-index nanoporous cladding,OPTICS EXPRESS,2004年12月27日,Vol. 12, No. 26,pp. 6446-6455,doi: 10.1364/OPEX.12.006446
【文献】 A Multi-D-Shaped Optical Fiber for Refractive Index Sensing,Sensors,2010年,Vol. 10,pp. 4794-4804
【文献】 Integrated optical waveguides with liquid cores,APPLIED PHYSICS LETTERS,2004年,Vol. 85, No. 16,pp. 3477-3479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/74
G01N 15/00−15/14
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
OSA Publishing
Scitation
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子検出のための方法であって、
光源により、液体コア導波路における1つ又は複数の粒子に光を当てるステップであって、前記液体コア導波路が
第1屈折率を有する第1クラッド層と、
中空コアであって、前記導波路を通って延在するとともに前記中空コア内部に液体を含む中空コアであり、前記液体が前記第1屈折率より高い第2屈折率を有する中空コアと
前記第1クラッド層と前記中空コアとの間の第2クラッド層であって、前記第2屈折率と同じ第3屈折率を有するか、前記第2屈折率の+/−10%以内である第3屈折率を有し、少なくとも1μm以上の厚さを有する第2クラッド層と
を含むステップと、
検出器により、前記1つ又は複数の粒子から放射された光を検出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数の粒子に光を当てる前に前記1つ又は複数の粒子を前記液体に導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の粒子に光を当てる前に前記液体を前記中空コアに導入するステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1屈折率が2以下、1.8以下、1.6以下、又は1.4以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2屈折率が2以上、1.8以上、1.6以上、又は1.4以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記導波路が、総内部反射を介して前記光源から光を伝送するように構成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記導波路が、前記光源からの光が連結する基本横電磁モードを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記導波路が、前記基本横電磁モードの強度が、前記第1クラッド層と前記中空コアとの間のインターフェイスで非ゼロ値を有するように構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記導波路が、前記第1クラッド層と前記中空コアとの間のインターフェイスでの前記基本横電磁モードの強度が、前記基本横電気モードの最大強度の20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は99%以上であるように構成される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記中空コアが、幅が20μm以下、10μm以下、5μm以下、又は1μm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1クラッド層が、厚さが10μm以下、5μm以下、1μm以下、0.5μm以下、又は0.1μm以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1クラッド層が、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、又は窒化ケイ素、PDMS、又は1つ若しくは複数のプラスチックの1つ又は複数を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体コア導波路が、幅が2cm以下、1cm以下、5mm以下、又は2mm以下であるとともに、長さが2cm以下、1cm以下、5mm以下、又は2mm以下である基板に配置されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記光源が前記基板に配置されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記検出器が前記基板に配置されている、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記液体が、ヨウ化亜鉛、エチレングリコール、又はヨウ化ナトリウムの1つ又は複数を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ又は複数の粒子が、分子、バイオマーカー、核酸、タンパク質、及びDNAの1つ又は複数を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
記第2屈折率と同じ前記第3屈折率を有するか、前記第2屈折率の+/−5%以内、+/−2%以内、+/−1%以内、+/−0.5%以内、+/−0.1%以内、又は+/−0.01%以内である前記第3屈折率を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記導波路が、前記第2クラッド層と前記中空コアとの間のインターフェイスでの前記基本横電磁モードの強度が、前記基本横電気モードの最大強度の20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は99%以上であるように構成される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第2クラッド層が二酸化ケイ素、五酸化タンタル、窒化ケイ素、PDMS、又はプラスチックの1つ又は複数を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
検出された特徴に基づき前記検出された粒子の1つ又は複数を特定するステップをさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
粒子検出システムであって、
1つ又は複数の粒子を励起するように構成された光源と、
液体コア導波路であって、
第1屈折率を有する第1クラッド層と、
中空コアであって、前記導波路を通って延在するとともに前記中空コア内部に液体を含む中空コアであり、
前記液体が前記第1屈折率より高い第2屈折率を有し、
前記液体が前記1つ又は複数の粒子を含む、中空コアと
前記第1クラッド層と前記中空コアとの間の第2クラッド層であって、前記第2屈折率と同じ第3屈折率を有するか、前記第2屈折率の+/−10%以内である第3屈折率を有し、少なくとも1μm以上の厚さを有する第2クラッド層と
を含む液体コア導波路と、
前記1つ又は複数の粒子から放射された光を検出するように構成された検出器と
を含む、粒子検出システム。
【請求項23】
記第2屈折率と同じ前記第3屈折率を有するか、前記第2屈折率の+/−5%以内、+/−1%以内、+/−0.5%以内、+/−0.1%以内、又は+/−0.01%以内である前記第3屈折率を有する、請求項22に記載の粒子検出システム。
【請求項24】
前記液体コア導波路が、幅が2cm以下、1cm以下、5mm以下、又は2mm以下であるとともに、長さが2cm以下、1cm以下、5mm以下、又は2mm以下である基板に配置されている、請求項22又は23に記載の粒子検出システム。
【請求項25】
前記光源が前記基板に配置されている、請求項24に記載の粒子検出システム。
【請求項26】
前記検出器が前記基板に配置されている、請求項24又は25に記載の粒子検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、概して、流体光学に、より詳細には、バイオマーカー及び他の物体の光学的検出のために生成された光の捕捉及び検出に関する。
【背景技術】
【0002】
生物試料(例えば、分子、粒子、バイオマーカー、核酸、タンパク質など)の光学的検出の1つの既知の方法は、固体導波路からのエバネセント場を使用した表面ベースの励起/検出である。別の既知の方法は、検出されるべき粒子を含有する水、生理的食塩水、又は緩衝溶液で満たされたマイクロチャネル/マイクロキャピラリー内部での励起/検出である。
【0003】
別の既知の解決策は、ARROW(反共振反射光学導波路)又はブラッグ導波路を使用することであり、これは、特別に設計されたクラッド層からの波干渉を使用することにより低インデックス材料に光を閉じ込める。これらの導波路は、低い伝搬損失でマイクロチャネルを通じて光を案内することが分かっており、単一の核酸レベルまでのバイオマーカーの高感度検出を可能にするために、固体コア導波路と連動し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、生物試料の光学的検出のための既知の方法には、固体導波路からのエバネセント場を使用した表面ベースの励起/検出、水、生理的食塩水、又は緩衝溶液で満たされたマイクロチャネル/マイクロキャピラリー内部での励起/検出、並びに特別に設計されたクラッド層からの波干渉を使用することにより低インデックス材料に光を閉じ込めるARROW又はブラッグ導波路の使用が含まれる。しかしながら、これら既知の方法には全て欠点がある。
【0005】
例えば、固体導波路からのエバネセント場を使用した表面ベースの励起/検出は極めて光学的に非効率であり、表面へのターゲット搬送及び結合を必要とし、ダイナミックレンジが極めて限られている。生体液体、例えば、水、生理的食塩水、及び緩衝溶液は、チャネルを構成する固体の材料の屈折率未満である屈折率を有するため、流体で満たされたマイクロチャネル内部での励起/検出は困難である。
【0006】
ARROW又はブラッグ導波路を使用することは、上述の他の方法に対して優れた性能を提供するが、標的分子及び被検物質の不完全な検出を含む他の欠点及び限界があり、検出器バックグラウンドに近い信号対雑音比(SNR)を生成し、単一の又はわずかな蛍光性染料のみで標識された標的を検出することを極めて困難にする。
【0007】
これらの限界の背景にある主な理由は、リーキーモード導波路原理の性質にあり、図1A及び1Bに示されている。図1Aは、液体コア102の屈折率がクラッド104の屈折率未満である液体コア導波路100の断面図を示す。図1Bは、ARROW/ブラッグ閉じ込めを使用して液体コア導波路100の低インデックス媒体に閉じ込められた基本光学モードのための電界プロファイル110を示す。
【0008】
図1Bに示されるとおり、電界は、コアの中心における極大112からクラッドとのインターフェイス114a及び114bでの厳密にゼロまで減少する。電界はチャネル壁ではゼロであるため、チャネル壁の近くに位置する液体コア導波路100の低インデックス媒体における粒子は、非効率的に励起及び検出されるか、全く励起も検出もされないが、これは、蛍光体は導波路モード内へ連結し得ないためである。この効果は又図1Aにおけるモードの表現においても見ることができ、図1Aは、モードの最も明るい部分が液体コア102の中心に閉じ込められることと、モードは液体コア102及びクラッド104のインターフェイスの近くでは極めて弱いことを示す。液体コアの壁から離れたところに位置する粒子のみが検出され得るため、これはデジタル検出体制における被検物質粒子の検出可能な数の減少をもたらす。
【0009】
第2に、リーキーモード導波路が、低いが常に有限の(例えば、非ゼロの)損失を伴って生じ得る。このことは、生成された光学的蛍光又は散乱信号は、有限の効率で導波路に沿って伝達され得るのみであることを意味する。これは、低インデックス媒体液体コア導波路の壁に近い粒子の検出の困難さをさらに悪化させる。
【0010】
したがって、光学導波路を使用したチップ上での高感度での生物試料の光学的検出(例えば、分子、粒子、バイオマーカー、核酸、タンパク質など)は、既知の方法によっては難しい。したがって、光学導波路を使用したチップ上での高感度での生物試料の光学的検出のための改良された方法が必要である。特に、標的分子及び被検物質、特に液体コア導波路のチャネル壁の近くに位置する粒子の改良された検出を可能にするとともに、単一の又はわずかな蛍光性染料のみで標識された標的の改良された検出を可能にする方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書において開示されているのは、上で検討された既知の方法の欠点を克服するとともに上で検討された必要性に対応し得る、液体コア導波路を使用したバイオマーカー及び他の物体の改良された光学的検出のためのシステム、方法、及び技術である。本明細書において開示されているシステム、方法、及び技術は、生成された光の改良された捕捉及び光検出器へのその伝達を可能にし得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、液体コア導波路は、クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有する液体コアを含む。これは、基本光学モードが液体コアとクラッドとの間のインターフェイスで非ゼロの電界強度を有することを可能にし得、したがって、液体コアにおけるインターフェイスに近接して位置する粒子の効率的な励起及び検出を可能にし得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、液体コア導波路は、液体コア、内側クラッド層、及び外側クラッド層を含む。液体コアの屈折率を内側クラッド層の屈折率と一致させることにより、並びに内側クラッド層及び液体コアの両方より低い屈折率を有する外側クラッド層を選択することにより、基本光学モードは、液体コアと内側クラッド層との間のインターフェイスで非ゼロの電界強度を有することができ、したがって液体コアにおけるインターフェイスに近接して位置する粒子の効率的な励起及び検出を可能にし得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、粒子検出のための方法が提供され、この方法は、光源により、液体コア導波路における1つ又は複数の粒子に光を当てるステップであって、液体コア導波路が、第1屈折率を有する第1クラッド層と、中空コアであって、導波路を通って延在するとともに中空コア内部に液体を含む中空コアであり、液体が第1屈折率より高い第2屈折率を有する中空コアとを含むステップと、検出器により、1つ又は複数の粒子から放射された光を検出するステップとを含む。
【0015】
本方法のいくつかの実施形態において、本方法は、1つ又は複数の粒子に光を当てる前に1つ又は複数の粒子を液体に導入するステップをさらに含む。
【0016】
本方法のいくつかの実施形態において、本方法は、1つ又は複数の粒子に光を当てる前に液体を中空コアに導入するステップをさらに含む。
【0017】
本方法のいくつかの実施形態において、第1屈折率は2、1.8、1.6、又は1.4以下である。
【0018】
本方法のいくつかの実施形態において、第2屈折率は2、1.8、1.6、又は1.4以上である。
【0019】
本方法のいくつかの実施形態において、導波路は、総内部反射を介して光源から光を伝送するように構成されている。
【0020】
本方法のいくつかの実施形態において、導波路は、光源からの光の基本横電磁モードを支持するように構成されている。
【0021】
本方法のいくつかの実施形態において、導波路は、基本横電磁モードの強度が、第1クラッド層と中空コアとの間のインターフェイスで非ゼロ値を有するように構成される。
【0022】
本方法のいくつかの実施形態において、導波路は、第1クラッド層と中空コアとの間のインターフェイスでの基本横電磁モードの強度が、基本横電気モードの最大強度の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は99%以上であるように構成されている。
【0023】
本方法のいくつかの実施形態において、中空コアは、幅が20μm、10μm、5μm、又は1μm以下である。
【0024】
本方法のいくつかの実施形態において、第1クラッド層は、厚さが10μm、5μm、1μm、0.5μm、又は0.1μm以下である。
【0025】
本方法のいくつかの実施形態において、第1クラッド層は、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、又は窒化ケイ素、PDMS、又は1つ若しくは複数のプラスチックの1つ又は複数を含む。
【0026】
本方法のいくつかの実施形態において、液体コア導波路は、幅が2cm、1cm、5mm、又は2mm以下であるとともに、長さが2cm、1cm、5mm、又は2mm以下である基板に配置されている。
【0027】
本方法のいくつかの実施形態において、光源は基板に配置されている。
【0028】
本方法のいくつかの実施形態において、検出器は基板に配置されている。
【0029】
本方法のいくつかの実施形態において、液体は、ヨウ化亜鉛、エチレングリコール、又はヨウ化ナトリウムの1つ又は複数を含む。
【0030】
本方法のいくつかの実施形態において、1つ又は複数の粒子は、分子、粒子、バイオマーカー、核酸、タンパク質、及びDNAの1つ又は複数を含む。
【0031】
本方法のいくつかの実施形態において、液体コア導波路は第1クラッド層と中空コアとの間に第2クラッド層を含み、第2クラッド層は第2屈折率と同じ第3屈折率を有するか、又は第2屈折率の+/−10%、+/−5%、+/−2%、+/−1%、+/−0.5%、+/−0.1%、若しくは+/−0.01%以内である。
【0032】
本方法のいくつかの実施形態において、導波路は、第2クラッド層と中空コアとの間のインターフェイスでの基本横電磁モードの強度が、基本横電気モードの最大強度の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は99%以上であるように構成される。
【0033】
本方法のいくつかの実施形態において、第2クラッド層は厚さが1μm、0.5μm、又は0,1μm以下である。
【0034】
本方法のいくつかの実施形態において、第2クラッド層は二酸化ケイ素、五酸化タンタル、窒化ケイ素、PDMS、又はプラスチックの1つ又は複数を含む。
【0035】
本方法のいくつかの実施形態において、本方法は、検出された特徴に基づき検出された粒子の1つ又は複数を特定するステップをさらに含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、粒子検出システムが提供され、本システムは、1つ又は複数の粒子を励起するように構成された光源と、液体コア導波路であって、第1屈折率を有する第1クラッド層と、中空コアであって、導波路を通って延在するとともに中空コア内部に液体を含む中空コアであり、液体が第1屈折率より高い第2屈折率を有し、液体が1つ又は複数の粒子を含む中空コアとを含む液体コア導波路と、1つ又は複数の粒子から放射された光を検出するように構成された検出器とを含む。
【0037】
本システムのいくつかの実施形態において、システムは第1クラッド層と中空コアとの間に第2クラッド層をさらに含み、第2クラッド層は第2屈折率と同じ第3屈折率を有するか、又は第2屈折率の+/−10%、+/−5%、+/−1%、+/−0.5%、+/−0.1%、又は+/−0.01%以内である。
【0038】
本システムのいくつかの実施形態において、液体コア導波路は、幅が2cm、1cm、5mm、又は2mm以下であるとともに、長さが2cm、1cm、5mm、又は2mm以下である基板に配置されている。
【0039】
本システムのいくつかの実施形態において、光源は基板に配置されている。
【0040】
本システムのいくつかの実施形態において、検出器は基板に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】液体コアの屈折率がクラッドの屈折率未満である液体コア導波路の断面図を示す。
図1B】ARROW/ブラッグ閉じ込めを使用して液体コア導波路の低インデックス媒体において閉じ込められた基本光学モードのための電界プロファイルを示す。
図2A】いくつかの実施形態による、液体コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも高い、液体コア導波路の断面図を示す。
図2B】いくつかの実施形態による、高インデックス液体コア導波路における基本光学モードのための電界プロファイルを示す。
図3A】いくつかの実施形態による、ヨウ化亜鉛を含有する液体コアチャネルにおける蛍光性ビーズの検出に対応する信号を示す。
図3B】いくつかの実施形態による、水を含有する液体コアチャネルにおける蛍光性ビーズの検出に対応する信号を示す。
図3C】いくつかの実施形態による、図3Aにおける信号及び図3Bにおける信号のピークの下の領域を比較するヒストグラムを示す。
図4A】いくつかの実施形態による、エチレングリコールを含有する液体コアチャネルにおける蛍光性ビーズの検出に対応する信号を示す。
図4B】いくつかの実施形態による、水を含有する液体コアチャネルにおける蛍光性ビーズの検出に対応する信号を示す。
図4C】いくつかの実施形態による、図4Aにおける信号及び図4Bにおける信号のピークの下の領域を比較するヒストグラムを示す。
図5A】いくつかの実施形態による、ヨウ化亜鉛を含有する液体コアチャネルにおける蛍光性ビーズの検出に対応する信号と、水を含有する液体コアチャネルにおける蛍光性ビーズの検出に対応する信号とを示す。
図5B】いくつかの実施形態による、図5Aにおける2つの信号のピークの下の領域を比較するヒストグラムを示す。
図6A】いくつかの実施形態による、2つのクラッド層を備えた液体コア導波路の断面図を示す。
図6B】いくつかの実施形態による、2つのクラッド層を備えた液体コア導波路のための屈折率プロファイルを示す。
図6C】いくつかの実施形態による、2つのクラッド層を備えた液体コア導波路における基本光学モードのための電界プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書において開示されているのは、上で検討された既知の方法の欠点を克服し得るとともに上で検討された必要性に対応し得る、液体コア導波路を使用したバイオマーカー及び他の物体の改良された光学的検出のためのシステム、方法、及び技術である。本明細書において開示されているシステム、方法、及び技術は、生成された光の改良された捕捉及び光検出器へのその伝達を可能にし得る。説明されたとおり、本明細書における技術及びシステムによる高インデックス液体における標的検出は、単一被検物質の制限での生物学的標的のチップベースの検出を制限している主な課題を解決し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明された導波路は「高インデックス液体コア導波路」と呼ばれ得る。「高インデックス」という用語は、本明細書で使用される場合、液体コア導波路であって、キャリア液体のコア屈折率が包囲クラッド層(例えば、ガラスチャネル内部のエチレングリコール液体)のコア屈折率より高い液体コア導波路を指し得る。「高インデックス」という用語は又、本明細書で使用される場合、このような液体コア導波路において含まれる液体を指すのに使用され得る(例えば、エチレングリコール液体は、エチレングリコール液体の屈折率より低い屈折率のクラッド層を備えた液体コア導波路におけるその使用との関連において、「高インデックス液体」と呼ばれ得る)。
【0044】
いくつかの実施形態において、液体コア導波路は、クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有する液体コアを含む。これは、基本光学モードが液体コアとクラッドとの間のインターフェイスで非ゼロの電界強度を有することを可能にし得、したがって、液体コアにおけるインターフェイスに近接して位置する粒子の効率的な励起及び検出を可能にし得る。
【0045】
本明細書において説明されたとおり、高インデックス液体コア導波路を用いることの効果は、液体コア導波路を、光が総内部反射を介して案内される従来の光学導波路と同様のやり方で機能させることであり得る。このアプローチの結果は、図2A及び2Bにおいて一例において示されている。
【0046】
図2Aは、いくつかの実施形態による液体コア導波路200の断面図を示す。いくつかの実施形態において、液体コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも高い。
【0047】
液体コア202の屈折率は、いくつかの実施形態において、ヨウ化亜鉛液体、エチレングリコール液体、ヨウ化ナトリウム溶液、又は、例えば以下を含む、クラッド204の屈折率より大きい屈折率を有する他の任意の好適な液体を含み得る液体コアの全て又は一部を満たす流体の屈折率であり得る:
・水に溶解しているヨウ化亜鉛、
・水に溶解しているヨウ化ナトリウム、
・水に溶解しているZnCl2、
・イオン性液体、例えば(カチオン/アニオン):
〇(1−Et−3−Me−Im−N)/(SOF))、
〇(1−Et−3−Me−Im−N/(CN))、
〇(1−Et−3−Me−Im/TCB)、
〇(1−Et−3−Me−Im/SCN)、
〇(1−Et−3−Me−Im/SOOH)、
〇(1−Et−3−Me−Im/SOCH)、
〇(Et−Py−N/(SOF))、及び/又は
〇(He−Py−N/(SOF))、
・他のイオン性液体、例えば:
〇リン酸二水素型コリン、及び/又は
〇深共晶溶媒、
・エチレングリコール
・有機液体、例えば:
〇安息香酸ベンジル、
〇2−ブロメチルベンゼン、
〇DMSO、
〇1,1,2,2−テトラブロモエタン、
〇1,1,2,2−テトラクロロエタン、及び/又は
〇テトラクロロエチレン、及び/又は
・水溶液、例えば:
〇AgNO
〇CdCl
〇KBr+HgBr、
〇Hg(NO:HO+HgBr、及び/又は
〇Hg(NO:HO+HgI
【0048】
いくつかの実施形態において、液体コア202の屈折率は、1.25、1.33、1.5、1.75、2.0、又は2.25以上であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア202の屈折率は、1.25、1.33、1.5、1.75、2.0、又は2.25以下であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア202の屈折率は1.33〜2.0であり得る。
【0049】
クラッド204の屈折率は、クラッドを作り出すために使用される固体(及び/又は可撓性)材料の屈折率であってもよく、これは、いくつかの実施形態において、PDMS、1つ又は複数のプラスチック、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、窒化ケイ素、又は任意の好適なガラス及び/又は酸化物を含み得る。いくつかの実施形態において、クラッド204の屈折率は、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、又は1.8以下であり得る。いくつかの実施形態において、クラッド204の屈折率は、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、又は1.8以上であり得る。いくつかの実施形態において、クラッド204の屈折率は1.4〜1.6であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、液体コア導波路200の液体コア202の幅(図2Bに示される「w」)は0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、又は50μm以下であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア導波路200の液体コア202の幅は0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、又は50μm以上であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア202の幅は1μm〜20μmであり得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、液体コア202の高さは0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm以下であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア202の高さは0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm以上であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア202の高さは1μm〜10μmであり得る。
【0052】
液体コア202は図2A及び2Bの例においては長方形として示されているが、これは、いくつかの実施形態において、四角形、円形、半円形、又は任意の好適な断面形状を有していてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、クラッド204は、0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm未満の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、クラッド204は、0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μmより大きい厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、クラッド204は.01μm〜10μmの厚さを有し得る。
【0054】
図2Bは、いくつかの実施形態による、高インデックス液体コア導波路、例えば導波路200における基本光学モードのための電界プロファイルを示す。図示のとおり、モードプロファイルは、ヘルムホルツ方程式に対する解の性質を原因として、液体コア202とクラッド204との間のインターフェイス214a及び214bで有限の、非ゼロの強度を有する。これは、モードプロファイルが低インデックス液体コア102及びクラッド104のインターフェイスで強制的にゼロになる図1Bに示されたモードと区別可能である。いくつかの実施形態において、インターフェイス214a及び/又は214bでのモード強度は、液体コア202の中心での極大212で、モード強度の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%以上であり得る。いくつかの実施形態において、214a及び/又は214bでのモード強度は、液体コア202の中心での極大212で、モード強度の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%以下であり得る。液体コア202の中心での電界強度極大212と比べて、インターフェイス214a及び/又は214bでのモードの電界強度の値は、コア及びクラッド材料のチャネル寸法及び相対インデックスを介して制御され得る。
【0055】
本明細書において(図2Bの例に関して且つ図6Cに関して)図示及び検討された電界プロファイルは、基本横電磁モードの横方向寸法(例えば、導波路にわたる幅方向)についての電界プロファイルを示すとともにこれを指すことに留意されるべきである。しかしながら、本明細書において開示されている導波路を通って伝搬する光のモードの電界は、横方向寸法における垂直寸法(例えば、導波路にわたる高さ方向)において同様の特性を有し得ることに留意されるべきである。
【0056】
図2Bにおけるモードのプロファイルの効果は、図2Aにおけるモードの表現にも見ることができ、図2Aは、液体コアの中心にのみ集結された、すなわちチャネル壁の近くで極めて弱い液体コア102におけるモードスポットと比較して、液体コア202全体にわたって延在するより均一な明るさを示す。
【0057】
したがって、インターフェイス114a又は114bの近くの液体コア102における粒子が、そこでの弱いモード強度を理由として、励起可能及び/又は検出可能ではない一方で、インターフェイス214a又は214bの近くでの液体コア202における粒子は、そこでのモード強度が、クラッド204内へのモードの延在を原因として、及びモードがインターフェイス214a又は214bで強制的にゼロにならないという事実を原因として実質的により強いことから、励起可能及び検出可能であり得る。
【0058】
このようにして、標的被検物質の不完全な検出という上で検討された問題は、被検物質が液体コアの全ての部分で検出可能であることを確実にするために高インデックス液体を使用することにより対応され得る。さらに、単一の又はわずかな蛍光性染料のみで標識された標的を検出することの困難さという上で検討された問題も対応され得、その理由は、総内面反射案内導波路は理論上は無損失であり、したがって実際には極めて効率的(例えば、本質的に無損失)であるように作られ得るからである。実際には、唯一の損失は製造欠陥を原因とするものであり得、これは独立して対応及び最小化され得る。したがって、チャネル、例えば、導波路200により画定されたものに沿った光の伝達は、例えば導波路100でのリーキーモード案内と比べて著しく改良され得る。
【実施例】
【0059】
図3A〜3Cは、液体コア導波路における488nm光で照らされた、10ビーズ毎mLの濃度での液体における100nm蛍光体からの放射についての実験データを示す。図3Aは、60%ヨウ化亜鉛及び約1.49の屈折率及び約2cPの粘度を有する40%HOを包含する液体コアチャネルにおけるビーズの検出に対応する信号を示す。図3Bは、底部側にARROW層及び他の3つの側にSiO層(1.46の屈折率を有する)を有する液体コアチャネルにおけるビーズの検出に対応する信号を示し、チャネルは約1.33の屈折率及び約1cPの粘度を有する水を含有する。
【0060】
図3A及び3Bに示されるとおり、ヨウ化亜鉛溶液における蛍光性ビーズからの放射の山形(図3A)は、水における蛍光性ビーズからの山形(図3B)より実質的に高かった。図3A及び3Bにおけるx軸は秒単位での時間を示し、y軸は1ms毎の光度計のカウントを示す。
【0061】
図3Cは、図3Aにおける信号及び図3Bにおける信号のピークの下の領域を比較するヒストグラムを示す。ヒストグラムの左にあるより濃い色のバーが水におけるビーズに対応し、一方で、より薄い色のバーはヨウ化亜鉛溶液におけるビーズに対応する。
【0062】
表1(下記)は、水におけるビーズ、及びヨウ化亜鉛におけるビーズに対応するデータ、並びに各液体からのデータを比較する比率を示す。示されたとおり、ヨウ化亜鉛溶液におけるビーズは、より高い平均ピーク強度及びより高いバックグラウンド信号を示した。
【0063】
【表1】
【0064】
図4A〜4Cは、液体コア導波路における488nm光で照らされた、10ビーズ毎mLの濃度での液体における100nm蛍光体からの放射についての実験データを示す。図4Aは、約1.43の屈折率及び約16cPの粘度を有する、エチレングリコール液体を含有する液体コアチャネルにおけるビーズの検出に対応する信号を示す。図4Bは、底部側にARROW層及び他の3つの側にSiO層(1.46の屈折率を有する)を有する液体コアチャネルにおけるビーズの検出に対応する信号を示し、チャネルは約1.33の屈折率及び約1cPの粘度を有する水を含有する。
【0065】
図4A及び4Bに示されるとおり、エチレングリコール液体における蛍光性ビーズからの放射の山形(図4A)は、水における蛍光性ビーズからの山形(図4B)より実質的に高かった。図4A及び4Bにおけるx軸は秒単位での時間を示し、y軸は時間毎の光度計のカウントを示す。
【0066】
図4C図4Aにおける信号及び図4Bにおける信号のピークの下の領域を比較するヒストグラムを示す。ヒストグラムの左にあるより薄い色のバーが水におけるビーズに対応し、一方で、より濃い色のバーはエチレングリコール液体におけるビーズに対応する。
【0067】
表2(下記)は、水におけるビーズ及びエチレングリコール液体におけるビーズに対応するデータ、並びに各液体からのデータを比較する比率を示す。示されたとおり、エチレングリコール液体におけるビーズはより高い平均ピーク強度及び同様のバックグラウンド信号を示した。
【0068】
【表2】
【0069】
図5A及び5Bは、液体コア導波路において488nm光で照らされた、10ビーズ毎mLの濃度での液体における2μm蛍光性ビーズからの放射についての実験データを示す。図5Aにおいて、より高いピークを含む信号502は、1.53の屈折率及び3cPの粘度を有する70%ヨウ化亜鉛を含有する液体コアチャネルにおけるビーズの検出に対応する。より低いピークを含む信号504は、底部側にARROW層及び他の3つの側にSiO層(1.46の屈折率を有する)を有する液体コアチャネルにおけるビーズの検出に対応し、チャネルは約1.33の屈折率及び約1cPの粘度を有する水を含有する。図5Aに示されるとおり、ヨウ化亜鉛溶液における蛍光性ビーズからの放射の山形は、水における蛍光性ビーズからの山形より実質的に高かった。
【0070】
図5Bは、信号502のピークの下の領域と信号504のピークの下の領域とを比較するヒストグラムを示す。ヒストグラムの左にあるより薄い色のバーが水におけるビーズに対応し、一方で、より濃い色のバーはヨウ化亜鉛溶液におけるビーズに対応する。
【0071】
表3(下記)は、水におけるビーズ及びヨウ化亜鉛溶液におけるビーズに対応するデータ、並びに各液体からのデータを比較する比率を示す。示されたとおり、ヨウ化亜鉛溶液におけるビーズは、水におけるビーズと比べて、より高い平均ピーク強度、同様のバックグラウンド信号、及び事象ごとの光子取集におけるほぼ25倍の増加を見せた。
【0072】
【表3】
【0073】
二層クラッドを備えた高インデックス液体コア導波路
いくつかの実施形態において、液体コア導波路は、液体コア、内側クラッド層、及び外側クラッド層を含む。液体コアの屈折率を内側クラッド層の屈折率と一致させることにより、並びに内側クラッド層及び液体コアの両方より低い屈折率を有する外側クラッド層を選択することにより、基本光学モードは、液体コアと内側クラッド層との間のインターフェイスで非ゼロの電界強度を有することができ、したがって、液体コアにおけるインターフェイスに近接して位置する粒子の効率的な励起及び検出を可能にし得る。このアプローチの結果は、図6A〜6Cにおいて一例において示されている。
【0074】
図6Aは、いくつかの実施形態による液体コア導波路600の断面図を示す。図示のとおり、導波路600は、液体コア602、内側クラッド604、及び外側クラッド606を含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の追加的なクラッド(例えば、他のクラッド層)も又含められ得る。いくつかの実施形態において、本明細書において説明されたとおり、液体コア602の屈折率はクラッド604の屈折率と一致させられてもよく(例えば、それと均等又はそれと同様であってもよく)、一方で、クラッド606はクラッド604及び液体コア602の両方より低い屈折率を有してもよい。本明細書において説明されたとおり、この配置構成は、基本モードの電界プロファイルを、液体コア602の幅全体にわたって、比較的均一及び強くし得る。
【0075】
液体コア602の屈折率は、いくつかの実施形態において、ヨウ化亜鉛液体、エチレングリコール液体、又はクラッド606の屈折率より大きい屈折率を有する任意の好適な液体を含み得る液体コアの全て又は一部を満たす流体の屈折率であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア602は、図2に関して上で検討された液体コア202と任意の1つ又は複数の特徴を共通して有してもよい。いくつかの実施形態において、液体コア602の屈折率は、1.25、1.35、1.45、1.75、2.0、又は2.25以上であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア602の屈折率は1.25、1.35、1.45、1.75、2.0、又は2.25以下であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア602の屈折率は1.45〜2.0であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、液体コア導波路600の液体コア602の幅(図6Bに示される「d」)は、0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、又は50μm以下であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア導波路600の液体コア602の幅は0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、又は50μm以上であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア602の幅は1μm〜20μmであり得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、液体コア602の高さは0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm以下であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア602の高さは0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm以上であり得る。いくつかの実施形態において、液体コア602の高さは1μm〜10μmであり得る。
【0078】
液体コア602は図2A及び2Bの例においては長方形として示されているが、これは、いくつかの実施形態において、四角形、円形、半円形の、又は任意の好適な断面形状を有していてもよい。
【0079】
クラッド604の屈折率は、いくつかの実施形態において、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、窒化ケイ素、又は任意の好適なガラス及び/若しくは酸化物、PDMS、又はプラスチックを含み得るクラッド604を作り出すために使用される中実(及び/又は可撓性)材料の屈折率であり得る。いくつかの実施形態において、クラッド604は、図2に関して上で検討されたクラッド204と任意の1つ又は複数の特徴を共通して有してもよい。いくつかの実施形態において、クラッド604の屈折率は、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、又は2.2以下であり得る。いくつかの実施形態において、クラッド604の屈折率は1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、又は2.2以上であり得る。いくつかの実施形態において、クラッド204の屈折率は1.4〜2.0であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、クラッド604の屈折率は、モードが図6Aに示される領域の両方にわたって連続的に支持されるように、液体コア602の屈折率の+/−0.5%、+/−1%、+/−2%、+/−3%、又は+/−5%内になるように選択され得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、クラッド604は、0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm以下の厚さ(図6Bに示されるとおり(d−d))を有し得る。いくつかの実施形態において、クラッド604は、0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm以上の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、クラッド604は1μm〜10μmの厚さを有し得る。
【0082】
クラッド606の屈折率は、いくつかの実施形態において、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、窒化ケイ素、又は任意の好適なガラス及び/若しくは酸化物、又はPDMS若しくはプラスチックを含み得るクラッド606を作り出すために使用される中実(及び/又は可撓性)材料の屈折率であり得る。いくつかの実施形態において、クラッド606は、上で検討されたクラッド604と、又は図2に関して上で検討されたクラッド204と任意の1つ又は複数の特徴を共通して有していてもよい。いくつかの実施形態において、クラッド606の屈折率は、0.8、0.9、1、1.1、1.25、1.5、1.75、1.9、2、2.1、又は2.2以下であり得る。いくつかの実施形態において、クラッド606の屈折率は0.8、0.9、1、1.1、1.25、1.5、1.75、1.9、2、2.1、又は2.2以上であり得る。いくつかの実施形態において、クラッド606の屈折率は1〜2であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、クラッド606の屈折率は、クラッド604の屈折率より少なくとも1%、5%、10%、50%、75%、又は100%少なくなるように選択され得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、クラッド606は、0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm以下の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、クラッド606は、0.25μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、又は20μm以上の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、クラッド606は1μm〜10μmの厚さを有し得る。
【0085】
図6Bは、いくつかの実施形態による、液体コアの屈折率と一致する屈折率を有する内側クラッド層を備えた、高インデックス液体コア導波路、例えば、導波路600のための屈折率プロファイルを示す。図示のとおり、液体コア602の屈折率nは、内側クラッド層604の屈折率nと等しくてもよい(又は所定の百分率又は絶対範囲内で同様であってもよい)。さらに示されているとおり、液体コアの屈折率n及び内側クラッド層の屈折率nは、両方とも外側クラッド層606の屈折率より大きくてもよい。
【0086】
図6Cは、いくつかの実施形態による、液体コアの屈折率と一致する屈折率を有する内側クラッド層を備えた、高インデックス液体コア導波路、例えば導波路600における基本光学モードのための電界プロファイルを示す。図示のとおり、モードプロファイルは、ヘルムホルツ方程式に対する解の性質を原因として、液体コア602とクラッド604との間のインターフェイス614a及び614bで有限の、非ゼロの強度を有する。さらに、モードは、(内側クラッド層604の屈折率は液体コア602の屈折率と等しくてもよいため)内側クラッド層604の屈折率の結果としてではなく外側クラッド層606におけるより低い屈折率の結果として、減衰することから、液体コア602にわたるモードの電界のプロファイルは、上で検討された液体コア202にわたるモードの電界のプロファイルよりさらに強くより安定的であり得る、すなわち、液体コア202におけるモードは、インターフェイス214a及び214bのすぐ外側のインデックス変化を原因としてより速やかに減衰し、一方で、液体コア602におけるモードは、インターフェイス614a及び614bから離間したインデックス変化を原因として減衰する。
【0087】
いくつかの実施形態において、インターフェイス614a及び/又は614bでのモード強度は、液体コア602の中心での極大612でのモード強度の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%以上であり得る。いくつかの実施形態において、614a及び/又は614bでのモード強度は、液体コア602の中心での極大612でのモード強度の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%以下であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、インターフェイス614a及び/又は614bでのモード強度は、内側クラッド層604と外側クラッド層606との間のインターフェイス616a及び/又は616bでのモード強度の、101%、105%、110%、150%、2倍、3倍、又は5倍以上であり得る。いくつかの実施形態において、インターフェイス614a及び/又は614bでのモード強度は、インターフェイス616a及び/又は616bでのモード強度より105%、110%、150%、2倍、3倍、5倍、又は10倍以下だけ大きくてもよい。
【0089】
極大612、インターフェイス614a及び/若しくは614b、並びに/又はインターフェイス616a及び/若しくは616bでのモードの電界強度の相対的値は、コア及び複数のクラッド材料のチャネル寸法及び相対インデックスを介して制御され得る。
【0090】
したがって、インターフェイス114a又は114bの近くの液体コア102における粒子は、そこでの弱いモード強度を原因として、励起可能及び/又は検出可能ではない一方で、インターフェイス614a又は614b近くの液体コア602における粒子は、そこでのモード強度は、クラッド604内へのモードの延在を原因として、及びモードはインターフェイス614a又は614bで強制的にゼロとならないという事実を原因として、実質的により強いことから、励起可能及び検出可能であり得る。さらに、インターフェイス214a又は214b近くの液体コア202における粒子は励起可能及び検出可能であり得る一方で、インターフェイス614a又は614b近くの液体コア602における粒子は、インターフェイス614a及び/又は614bでのインデックス変化がない(又は極めてわずかである)ことから液体コア602におけるモードはそれほど速やかに減衰しないため、より大きい強度でより励起可能であるとともにより検出可能であり得る。
【0091】
このようにして、被検物質が液体コアの全ての部分で検出可能であることを確実にするために高インデックス液体を使用することにより、標的被検物質の不完全な検出の上で検討された問題は対応され得る。さらに、単一の又はわずかな蛍光性染料のみで標識された標的を検出することの困難さという上で検討された問題が対応され得るが、その理由は、総内面反射案内導波路は理論上は無損失であり、したがって実際には極めて効率的(例えば、本質的に無損失)であるように作られ得るからである。実際には、唯一の損失は製造欠陥を原因とするものであり得、これは独立して対応及び最小化され得る。したがって、チャネル、例えば、導波路200及び/又は導波路600により画定されたものに沿った光の伝達は、例えば導波路100でのリーキーモード案内と比べて著しく改良され得る。
【0092】
高インデックス液体コア導波路を使用するシステム
本明細書において説明されたとおり粒子検出のために高インデックス液体コア導波路を使用するためのいくつかの実施形態において、全ての試料調製ステップが、典型的には水性であるオリジナルのマトリクス(例えば、血液)を使用して実施されてもよく、光学活性された(例えば、蛍光標識した)標的は、中空マイクロチャネルにおける検出のすぐ前又は少し前に高インデックス液体内へ放出され得る。いくつかの実施形態において、標的は、検出の1秒、30秒、1分、5分、10分、又は30分未満前に高インデックス液体内へ放出され得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、DNAを破壊せず、タンパク質を変性させず、及び/又は被検物質を他の方法で損傷又は変化させない高インデックス液体が、高インデックス液体コア導波路における使用のために選択され得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、高インデックス液体コア導波路を使用した粒子検出のためのシステムは、細胞溶解、蛍光性ラベリング、標的抽出、被検物質流体の濾過(例えば、被検物質チャネルにとって大きすぎる片を取り除くため)、(例えば1つ又は複数のマイクロバルブに基づくコンポーネントによる)試料フロー制御、又は他の試料調製プロセスのための1つ又は複数のコンポーネントを含み得る。いくつかの実施形態において、これらのコンポーネントの任意の1つ又は複数が、本明細書において検討された他のコンポーネントの1つ又は複数と同じ基板(例えば、チップ)に配置され得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されたシステム及び/又は技術を使用しての粒子の検出は、1つ又は複数の検出された粒子を特定するために使用されてもよい。例えば、検出された粒子は、その放射波長、その放射強度、検出された速度、又は、検出された粒子のアイデンティティを決定するために1つ又は複数のデータベース若しくは他の既知の情報に比較し得る粒子についての他の任意の検出された特徴に基づき特定され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の高インデックス液体コア導波路が、チップ又は別の好適な基板に配置され得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の高インデックス液体コア導波路が配置された基板又はチップは、幅が1mm、2mm、5mm、1cm、2cm、又は3cm未満であってもよく、長さが1mm、2mm、5mm、1cm、2cm、又は3cm未満であり得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の高インデックス液体コア導波路が配置された基板又はチップは、幅が1mm、2mm、5mm、1cm、2cm、又は3cmより大きくてもよく、長さが1mm、2mm、5mm、1cm、2cm、又は3cmより大きくてもよい。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の高インデックス液体コア導波路が配置された基板又はチップは2x2mm〜2x2cmであり得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C