特許第6890689号(P6890689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890689
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】プラズマ処理機
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/34 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   H05H1/34
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-568440(P2019-568440)
(86)(22)【出願日】2018年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2018003026
(87)【国際公開番号】WO2019150447
(87)【国際公開日】20190808
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池戸 俊之
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−039256(JP,A)
【文献】 特開平09−029443(JP,A)
【文献】 特開2008−284580(JP,A)
【文献】 特開2017−144459(JP,A)
【文献】 実開平05−053780(JP,U)
【文献】 国際公開第2017/024160(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0183171(US,A1)
【文献】 米国特許第04168822(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ化ガスを発生させてノズルからそのプラズマ化ガスを噴出させるプラズマヘッドと、
そのプラズマヘッドを移動させるヘッド移動装置と、
そのヘッド移動装置の取付部に前記プラズマヘッドを着脱可能に取り付けるための取付機構と
を備えたプラズマ処理機であって、
前記取付機構が、
前記取付部に設けられて第1方向およびそれと直角な第2方向とに拡がる取付面と、
前記プラズマヘッドに設けられ、当該プラズマヘッドが取り付けられた状態で前記取付面と接触する被取付面と、
前記取付部の前記第1方向における一方側の部分に設けられた第1係合部、および、他方側の部分に設けられた第2係合部と、
前記プラズマヘッドに設けられて前記第1係合部と係合する第1被係合部、および、前記第2係合部と係合する第2被係合部と
を含んで構成され、
前記第1係合部が、前記第1方向における一方側への前記プラズマヘッドの前記取付部に対する変位を禁止すべく前記第1被係合部を係止するように構成され、
前記第2係合部が、前記第2被係合部を前記第1方向における一方側に付勢する付勢機構を有し、かつ、
前記第1係合部と前記第1被係合部とが係合し、かつ、前記第2係合部と前記第2被係合部とが係合した状態で、前記プラズマヘッドの前記第2方向の変位を禁止する第2方向変位禁止機構を有するプラズマ処理機。
【請求項2】
前記取付機構が、
前記第1被係合部が前記第1係合部に係止された状態において、前記第2被係合部が前記第1方向と前記第2方向との両方と交差する第3方向に移動するように前記プラズマヘッドを動かし、前記被取付面を前記取付面に接触させるようにして、前記第2被係合部と前記第2係合部とを係合させることで、前記プラズマヘッドの取り付けが完了するように構成された請求項1に記載のプラズマ処理機。
【請求項3】
前記第2方向変位禁止機構が、前記第1被係合部を前記第1係合部に係止させた状態において、少なくとも前記第1被係合部の前記第2方向への変位を禁止するように構成された請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理機。
【請求項4】
前記取付機構が、
前記プラズマヘッドへのガスの供給のための管路を、前記取付面と前記被取付面とが接触した状態において接続するためのガスコネクタを含んで構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のプラズマ処理機。
【請求項5】
前記プラズマヘッドが前記取付部に取り付けられた状態において当該プラズマヘッドに電力を供給するためのワイヤが、前記取付部から延び出しており、
前記取付機構が、
前記ワイヤの先端に設けられ、そのワイヤを前記プラズマヘッドに接続するためのコネクタを含んで構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のプラズマ処理機。
【請求項6】
プラズマ化ガスを発生させてノズルからそのプラズマ化ガスを噴出させるプラズマヘッドと、
そのプラズマヘッドを移動させるヘッド移動装置と、
そのヘッド移動装置の取付部に前記プラズマヘッドを着脱可能に取り付けるための取付機構と
を備えたプラズマ処理機であって、
前記取付機構が、
前記取付部に設けられて第1方向およびそれと直角な第2方向とに拡がる取付面と、
前記プラズマヘッドに設けられ、当該プラズマヘッドが取り付けられた状態で前記取付面と接触する被取付面と
を有し、前記取付面に対して前記被取付面が合わさるようにして前記プラズマヘッドを取り付け、前記取付面に対して前記被取付面が離れるようにして前記プラズマヘッドを取り外すように構成されプラズマ処理機。
【請求項7】
該プラズマ処理機が、
前記プラズマヘッドが前記取付部に取り付けられた状態において、前記プラズマヘッドへのガスの供給のために前記プラズマヘッドから前記第1方向に延び出すチューブ、および、前記プラズマヘッドに電力を供給するために前記プラズマヘッドから前記第1方向に延び出すワイヤを備えた請求項6に記載のプラズマ処理機。
【請求項8】
前記取付機構が、前記プラズマヘッドが前記取付部に取り付けられた状態において、前記プラズマヘッドと前記取付部とを電気的に絶縁するように構成された請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載のプラズマ処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ化されたガスをワークに照射してそのワークの表面に処理を施すためのプラズマ処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献に記載されているようなプラズマ発生装置を、照射ヘッドであるプラズマヘッドとし、そのプラズマヘッドを、ヘッド移動装置によってワークに対して移動させ、そのプラズマヘッドから照射(射出)されるプラズマ化ガスによってそのワークの表面に処理(以下、「プラズマ処理」と言う場合がある)を施すプラズマ処理機が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−38940号公報
【発明の概要】
【発明の解決しようとする課題】
【0004】
プラズマ処理は、ワークの形状,処理の程度等によって、異なる型式のプラズマヘッドを使用することが望ましく、また、プラズマヘッドは、定期的にメンテナンスすることが望ましい。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用的なプラズマ処理機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマ処理機は、
プラズマ化ガスを発生させてノズルからそのプラズマ化ガスを噴出させるプラズマヘッドと、
そのプラズマヘッドを移動させるヘッド移動装置と、
そのヘッド移動装置の取付部に上記プラズマヘッドを着脱可能に取り付けるための取付機構と
を備えたことを前提とし、
第1のプラズマ処理機では、
前記取付機構が、
前記取付部に設けられて第1方向およびそれと直角な第2方向とに拡がる取付面と、
前記プラズマヘッドに設けられ、当該プラズマヘッドが取り付けられた状態で前記取付面と接触する被取付面と、
前記取付部の前記第1方向における一方側の部分に設けられた第1係合部、および、他方側の部分に設けられた第2係合部と、
前記プラズマヘッドに設けられて前記第1係合部と係合する第1被係合部、および、前記第2係合部と係合する第2被係合部と
を含んで構成され、
前記第1係合部が、前記第1方向における一方側への前記プラズマヘッドの前記取付部に対する変位を禁止すべく前記第1被係合部を係止するように構成され、
前記第2係合部が、前記第2被係合部を前記第1方向における一方側に付勢する付勢機構を有し、かつ、
前記第1係合部と前記第1被係合部とが係合し、かつ、前記第2係合部と前記第2被係合部とが係合した状態で、前記プラズマヘッドの前記第2方向の変位を禁止する第2方向変位禁止機構を有することを特徴とし、
第2のプラズマ処理機では、
前記取付機構が、
前記取付部に設けられて第1方向およびそれと直角な第2方向とに拡がる取付面と、
前記プラズマヘッドに設けられ、当該プラズマヘッドが取り付けられた状態で前記取付面と接触する被取付面と
を有し、前記取付面に対して前記被取付面が合わさるようにして前記プラズマヘッドを取り付け、前記取付面に対して前記被取付面が離れるようにして前記プラズマヘッドを取り外すように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプラズマ処理機は、プラズマヘッドの着脱が可能であるため、例えば、異なる型式のプラズマヘッドに交換したり、メンテナンスのための取り外し,メンテナンス後の取付等を行うことが容易である。つまり、本発明のプラズマ処理機は、汎用性,利便性に優れることで、実用性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例のプラズマ処理機の全体構成を示す図である。
図2】第1実施例のプラズマ処理機のプラズマヘッドをカバーを外した状態で示す斜視図である。
図3図2のプラズマヘッドの断面図である。
図4】第1実施例のプラズマ処理機において採用可能な別のプラズマヘッドを示す断面図である。
図5】第1実施例のプラズマ処理機におけるプラズマヘッドの着脱のイメージを示す図である。
図6】第1実施例のプラズマ処理機において採用されているプラズマヘッドの取付機構を説明するための図である。
図7】プラズマヘッドの取付機構を説明するための図であり、図6とは反対の視点における図である。
図8図6図7の取付機構が有する付勢機構を示す断面図である。
図9】プラズマヘッドと取付部との間においてガスの供給のための管路を接続するコネクタの構造を示す断面図である。
図10】第2実施例のプラズマ処理機において採用されているプラズマヘッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態を、実施例として、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【第1実施例】
【0009】
[A]プラズマ照射装置の全体構成
第1実施例のプラズマ処理機は、図1に示すように、ワークWが載置されるテーブル10と、テーブル10の傍らに配置されたシリアルリンク型ロボット(「多間接型ロボット」と呼ぶこともでき、以下、単に「ロボット」と略す)12と、ロボット12に保持されてプラズマ化ガスを照射するためのプラズマヘッド14と、プラズマヘッド14の電源でありかつプラズマヘッド14へのガスの供給を担う電源・ガス供給ユニット16と、当該プラズマ処理機の制御を司る制御装置としてのコントローラ18とを含んで構成されている。ちなみに、ロボット12は、ワークWにプラズマ化ガスを照射するためにプラズマヘッド14を移動させるヘッド移動装置として機能する。
【0010】
プラズマヘッド14は、カバーを外した状態を示す図2、および、断面図である図3を参照しつつ説明すれば、概してセラミック製のハウジング20を有しており、そのハウジング20の内部に、プラズマ化ガスを発生させるための反応室22が形成されている。そして、反応室22に突き出るようにして、1対の電極24が保持されている。また、ハウジング20内には、上方から反応室22に反応ガスを流入させるための反応ガス流路26と、キャリアガスを流入させるための1対のキャリアガス流路28とが形成されている。反応ガス(種ガス)は、酸素(O2)であるが、反応ガス流路26からは、酸素と窒素(N2)との混合気体(例えば、乾燥空気(Air))が、電極24の間に流入させられる(以下、この混合気体をも、便宜的に「反応ガス」と呼び、酸素を「種ガス」と呼ぶ場合があることとする)。キャリアガスは、窒素であり、それぞれのキャリアガス流路28から、それぞれの電極24を取り巻くようにして流入させられる。プラズマヘッド14の下部は、ノズル30とされており、ノズル30には、複数の放出口32が一列に並ぶようにして形成されている。そして、反応室22から下方に向かって各放出口32に繋がるように複数の放出路34が形成されている。
【0011】
1対の電極24の間には、電源・ガス供給ユニット16の電源部によって、交流の電圧が印加される。この印加によって、例えば、図3に示すように、反応室22内において、1対の電極24の各々の下端の間に、擬似アークAが発生させられる。この擬似アークAを反応ガスが通過する際に、その反応ガスがプラズマ化され、プラズマ化されたガスであるプラズマ化ガスが、キャリアガスとともに、ノズル30から放出(噴出)される。
【0012】
なお、ノズル30の周囲には、ノズル30を囲うようにしてスリーブ36が設けられている。スリーブ36とノズル30との間の環状空間38には、供給管40を介して、シールドガスとしてのヒートガス(本プラズマ処理機では、空気が採用されている)が供給され、そのヒートガスは、ノズル30から射出されるプラズマ化ガスの周囲を取り巻くようにして、プラズマ化ガスの流れに沿って放出される。ヒートガスは、名前のとおり、プラズマ化ガスの効能を担保するために加熱されたものが放出される。そのため、供給管40の途中には、加熱のためのヒータ42が設けられている。
【0013】
本プラズマ処理機は、上述のプラズマヘッド14に代えて、別のプラズマヘッドをロボット12に取り付け可能とされている。図4は、別のプラズマヘッドの一例である、プラズマヘッド14’を示す。図に示すプラズマヘッド14’は、ノズル30’において、比較的径の大きい1つの放出口32’が設けられており、反応室22から下方に向かって放出口32’に繋がるように1つの放出路34’が形成されている。スリーブ36’,環状空間38’は、ノズル30’に合致するように変更されている。他の構成は、プラズマヘッド14と同様であるため、説明を省略する。このように、プラズマ処理機は、型式の異なるプラズマヘッドを装着可能とされているのである。
【0014】
電源・ガス供給ユニット16は、図示は省略するが、電源部とガス供給部とを含んで構成されている。電源部は、プラズマヘッド14の1対の電極24間に電圧を印加するための電源を有しており、電極24間に電圧を印加するための電力が、ワイヤ(ケーブル)44aによってプラズマヘッド14に供給される。また、制御のための信号も、ワイヤ(ケーブル)44bを介してプラズマヘッド14に送信される。ガス供給部は、上述の反応ガス,キャリアガス,ヒートガスの供給を行う。反応ガスは、1本のガスチューブ46aによって、キャリアガスは、2本のガスチューブ46b,46cによって、ヒートガスは、1本のガスチューブ46dによって、それぞれ、プラズマヘッド14に供給される。ちなみに、それらのガスチューブ46a〜46dは、各ガスを供給するための管路を構成するものとなっている。なお、以下の説明において、ワイヤ44a,44b,ガスチューブ46a〜46dを、総称して、それぞれ、ワイヤ44,ガスチューブ46と呼ぶ場合があることとする。
【0015】
[B]プラズマヘッドの取付機構
本プラズマ処理機では、図5に示すように、ロボット12に対して、プラズマヘッド14を着脱可能に取り付けるための取付機構50が設けられている。図5(a)は、取付機構50によって、プラズマヘッド14が取り付けられた状態を、図5(b)は、プラズマヘッド14が外された状態を示している。図6は、取付機構50を説明するために、電極24への給電,制御のための信号を送信するためのコネクタ(後に詳しく説明する)を省いて表した図であり、詳しくは、図6(a)は、取付機構50の全体を、図6(b)は、後に説明する第2係合部を拡大して示す図である。図7は、取付機構50を説明するために、図6(a)とは反対の視線で表した図である。以下、それらの図を参照しつつ、取付機構を説明する。
【0016】
取付機構50は、ロボットに設けられた取付部52に、プラズマヘッド14を取り付けるための機構である。取付部52には、第1方向である上下方向(Z方向)、および、第1方向と直角な第2方向である左右方向(X方向)に拡がる取付面54が設けられている。一方、プラズマヘッド14には、プラズマヘッド14が取り付けられた状態において取付面54と接触する、言い換えれば、取付面54と合わさる被取付面56が設けられている。取付部52には、上下方向における一方側の部分、つまり、下側の部分には、第1係合部58が、他方側の部分、つまり、上側の部分には、第2係合部60が設けられている。簡単に言えば、第1係合部58,第2係合部60は、取付面54を挟むようにして設けられている。それに対して、プラズマヘッド14には、第1係合部58と係合する第1被係合部62、および、第2係合部60と係合する第2被係合部64が設けられている。
【0017】
第1係合部58は、それぞれが互いに左右方向に隔てて配設された1対の受部66および1対のローラ68を有している。一方で、第1被係合部62は、互いに左右方向に隔てて配設された1対の脚70を有している。プラズマヘッド14が取り付けられた状態において、つまり、第1係合部58と第1被係合部62とが係合した状態において、1対の受部66は、1対の脚70の下端を係止し、プラズマヘッド14が取付部52に対して下方に向かって変位することを禁止する。また、その状態において、1対のローラ68の外周面が、1対の脚70の内側面(互いに向かい合う面)にそれぞれ当接することで、1対のローラ68は、プラズマヘッド14が取付部52に対して左右方向に変位することを禁止する。つまり、1対のローラ68および1対の脚70は、第1被係合部62の第2方向への変位を禁止することで、プラズマヘッド14の第2方向の変位を禁止する第2方向変位禁止機構を構成するものとされているのである。
【0018】
第2係合部60は、1対のローラ72を有しており、一方で、第2被係合部64は、第2係合部60と係合した状態において、1対のローラ72によって挟持される被挟持部74を有している。それら1対のローラ72および被挟持部74は、第2被係合部64の第2方向への変位を禁止することで、上記1対のローラ68および1対の脚70とともに、プラズマヘッド14の第2方向の変位を禁止する第2方向変位禁止機構を構成するものとされているのである。また、第2係合部60には、付勢機構76が設けられている。第2係合部60の断面を示す図8を参照しつつ具体的に説明すれば、第2係合部60は、スプリング78によって第1方向における下方側に付勢されたプランジャ80を有しており、プランジャ80の下端部には、1対の傾斜面82,84を有している。一方で、第2被係合部64は、ローラ86を有しており、第2被係合部64が第2係合部60と係合している状態において、ローラ86は、第1方向および第2方向と直角な第3方向、つまり、前後方向(Y方向)における後方側に位置する傾斜面84と係合している。スプリング78の付勢力により、プランジャ80は、ローラ86を下方側に付勢する。つまり、付勢機構76は、プラズマヘッド14を、第1方向における一方側である下方側に付勢する機能を有しているのである。
【0019】
傾斜面84とローラ86とが係合することで、付勢機構76による付勢力によって、プラズマヘッド14の第2被係合部64は、後方側に付勢される。また、先に説明した第1係合部58の1対の受部66、および、第1被係合部62の1対の脚70の下端には、それぞれ、互いに係合する傾斜面88,傾斜面90がそれぞれ設けられており、付勢機構76の付勢力によって、第1被係合部62も、後方側に付勢される。したがって、本プラズマ処理機では、付勢機構76による付勢力によって、プラズマヘッド14の全体が後方側に付勢されることで、取付部52の取付面54と、プラズマヘッド14の被取付面56とがぴったりと合わさることになるのである。
【0020】
上述の各ガスの供給のためのガスチューブ46は、図では詳細に示していないが、取付部52の後方側の部分に接続されており、各ガスチューブ46のプラズマヘッド14へ繋がる管路の接続は、プラズマヘッド14が取付部52に取り付けられた状態において、それぞれがガスコネクタである4つのコネクタ92の各々によって行われる。図9をも参照しつつ説明すれば、取付面54には、4つのコネクタ92に対応して4つの供給孔94が設けられており、また、被取付面54には、4つの供給孔94とそれぞれ合致する位置に4つの受入孔96が設けられている。4つのコネクタ92は互いに同じ構造であり、1つのコネクタ92について説明すれば、供給孔94には、短いゴム管98と、それを支持するとともに外周がシールされたスリーブ100と、スリーブ100を前方に付勢するためのスプリング102が内蔵されている。プラズマヘッド14が取り付られていない場合には、ゴム管98の先端が取付面54から突出しているが、プラズマヘッド14が取り付られることで、つまり、取付面54と被取付面56とが接触した状態において、スプリング102の付勢力に抗してゴム管98が後退して、供給孔94と受入孔96とがシールされつつ繋がることになる。つまり、取付機構50は、ガスの供給のための管路を接続する4つのコネクタ92を含んで構成されており、各コネクタ92は、供給孔94,受入孔96,ゴム管98,スリーブ100,スプリング102等を含んで構成されているのである。
【0021】
図5を参照しつつ説明すれば、プラズマヘッド14の電極24に電力を供給するワイヤ44a、および、制御信号を送るためのワイヤ44bは、取付部52の上部において前方側に延び出しており、それらワイヤ44a,44bの各々の先端には、コネクタ104a,104bが設けられている。コネクタ104a,104bは、取付機構50を構成するものであり、プラズマヘッド14が取り付けられた後に、プラズマヘッド14に設けられたコネクタ106a,106bと接続される。
【0022】
なお、図9から解るように、取付面54の表面には、絶縁層108が形成されている。また、上述した各ローラ68,72,86は樹脂製であり、また、第1被係合部62も樹脂製のものとされている。したがって、取付機構50によってプラズマヘッド14が取付部52に取り付けられた状態において、プラズマヘッド14と取付部52とは、電気的に絶縁されることになる。電源・ガス供給ユニット16の内部には、断線,リーク等を検出するために、ワイヤ44aを介して供給される電流を測定する電流センサ110(図1参照)が配設されており、上記絶縁によって、プラズマヘッド14からロボット12を経由したノイズによって電流センサ110の電流測定に悪影響を与えることが効果的に防止されている。
【0023】
取付機構50を利用してプラズマヘッド14を取付部52に取り付けるには、まず、斜め上方から第1被係合部62を第1係合部58に係止させ、その係止させた状態で、プラズマヘッド14の上部を後方に押すことで、第2係合部60に対して第2被係合部64を第3方向における後方側に移動させて、第2被係合部64を第2係合部60に係合させればよい。このような操作により、取付面54と被取付面56とがぴったり合わさる状態で、プラズマヘッド14が取り付けられる。取り付けられているプラズマヘッド14を外す場合は、逆の操作を行えばよい。具体的には、プラズマヘッド14の上部を前方に引き出して、被取付面56を取付面54から離した後、プラズマヘッド14を斜め上方に持ち上げればよい。このように、取付機構50を利用することで、ワンタッチで、プラズマヘッド14を取付部52に対して着脱することが可能とされるのである。別のプラズマヘッド14’においても同じ取付機構50が採用されており、本プラズマ処理機は、型式の異なるプラズマヘッドへの交換が容易であることで汎用性に優れ、また、プラズマヘッドのメンテナンスも容易に行えることで、利便性に優れることとなる。
【第2実施例】
【0024】
第2実施例のプラズマ処理機は、プラズマヘッドの取付部52への取付において同じ構造の取付機構50を採用しているものの、プラズマヘッドの電極への給電,制御信号の送信のためのワイヤの接続、各ガスのプラズマヘッドへの供給のためのガスチューブの接続において異なるものとなっている。
【0025】
ワイヤ,ガスチューブが接続された状態を示す図10(a),接続が解除された図10(b)を参照しつつ説明すれば、第2実施例におけるプラズマヘッド14”(内部構造は、第1実施例におけるプラズマヘッド14と同じである)には、取付面54,被取付面56を介してではなく、上部において、電極24への給電のためのワイヤ120,制御信号を送信するためのワイヤ122,グランドのためのワイヤ124,各ガスを供給するためのガスチューブ126(図では2本しか表されていない)が接続されている。ワイヤ120,ワイヤ122,ガスチューブ126の接続は、それぞれ、コネクタ128,130,132を利用して行われる。プラズマヘッド14”を取付部52に取り付けた後に、それらの接続が行われる。プラズマヘッド14”を外すときには、それらの接続を解除した後に、プラズマヘッド14”を取付部52から離脱させる。ちなみに、ワイヤ120,ワイヤ122,ワイヤ124,ガスチューブ126は、カバーチューブ134を挿通しており、1つの比較的太い紐状のものとされた態様で、電源・ガス供給ユニットに繋げられている。
【0026】
第2実施例のプラズマ処理機では、プラズマヘッド14”が取り付けられた状態において、ワイヤ120〜124,ガスチューブ126が、プラズマヘッド14の上部から、第1方向(X方向)における一方の側である上方に延び出すようにされているのである。したがって、第2実施例のプラズマ処理機は、ガスの供給における管路,給電等に関するメンテナンスを容易に行うことができ、また、ガスチューブ126,ワイヤ120〜124の着脱を含めたプラズマヘッド14”の着脱も、第1実施例のプラズマ処理機と同様の取付機構を採用することと相まって、容易に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0027】
10:テーブル 12:シリアルリンク型ロボット〔ヘッド移動装置〕 14,14’,14”:プラズマヘッド 16:電源・ガス供給ユニット 44a,44b:ワイヤ 46a〜46d:ガスチューブ 50:取付機構 52:取付部 54:取付面 56:被取付面 58:第1係合部 60:第2係合部 62:第1被係合部 64:第2被係合部 76:付勢機構 92:コネクタ 104a,104b:コネクタ 106a,106b:コネクタ 108:絶縁層 120〜124:ワイヤ 126:ガスチューブ
図1
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図10