特許第6890708号(P6890708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890708
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】1,3−ブチレングリコール製品
(51)【国際特許分類】
   C07C 31/20 20060101AFI20210607BHJP
   C07C 29/80 20060101ALN20210607BHJP
   C07C 29/141 20060101ALN20210607BHJP
【FI】
   C07C31/20 B
   !C07C29/80
   !C07C29/141
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-186340(P2020-186340)
(22)【出願日】2020年11月9日
(62)【分割の表示】特願2019-162351(P2019-162351)の分割
【原出願日】2019年9月5日
(65)【公開番号】特開2021-42214(P2021-42214A)
(43)【公開日】2021年3月18日
【審査請求日】2020年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 泰照
(72)【発明者】
【氏名】中西 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】平井 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】梅原 碧
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/007969(WO,A1)
【文献】 特開2001−213825(JP,A)
【文献】 特表2007−517882(JP,A)
【文献】 特開2003−096006(JP,A)
【文献】 特開昭62−246529(JP,A)
【文献】 特開昭61−065834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、
1,3−ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり
,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、
前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む、1,3−ブチレングリコール製品であって、
空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが40以下である、前記1,3−ブチレングリコール製品
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【請求項2】
1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である請求項1に記載の1,3−ブチレングリコール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1,3−ブチレングリコール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブチレングリコールは無色透明、無臭の液体であり、低揮発性、低毒性、高吸湿性等の性質を備え、化学的安定性に優れる。このため、1,3−ブチレングリコールの用途は各種の合成樹脂、界面活性剤の原料をはじめ、化粧品、吸湿剤、高沸点溶剤、不凍液の素材等の多岐にわたっている。特に近年では、1,3−ブチレングリコールは保湿剤として優れた性質を有することが注目されており、化粧品業界での需要が拡大している。
【0003】
従来の製造方法で得られる1,3−ブチレングリコールは、副産物の影響により臭気を有することがあった。また、製造直後には透明なものであっても経時により着色が生じることもあり、長期間貯蔵する際に問題となっていた。
【0004】
例えば、化粧品を使用する際や使用後の保管時は、その化粧品は空気にさらされることになる。また、化粧品を製造する際は、空気雰囲気化で作業が行われることが一般的であり、さらに滅菌等の目的で加熱することもある。従来の方法で得られた1,3−ブチレングリコールを化粧品に使用する場合、空気の存在や加熱の影響により着色が進行することがあった。この様な問題を解決するため、粗1,3−ブチレングリコールから副産物を除去し、1,3−ブチレングリコールを高純度化することが求められていた。
【0005】
純度の高い1,3−ブチレングリコールを得る方法として、アセトアルドール類の水素還元により得られた粗1,3−ブチレングリコールに対し、苛性ソーダを添加して蒸留を行う方法が提案されている。また、高沸点物を除いた粗1,3−ブチレングリコールにアルカリ金属塩基を添加して加熱処理した後、1,3−ブチレングリコールを留出させアルカリ金属化合物及び高沸点物を残渣として分離し、続いて1,3−ブチレングリコール留分から低沸点物を留去する方法等が提案されている(特許文献1〜6)。この様に、純度の高い1,3−ブチレングリコールを得るために様々な1,3−ブチレングリコールの精製方法が提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−258129号公報
【特許文献2】国際公開第00/07969号
【特許文献3】特開2001−213822号公報
【特許文献4】特開2001−213824号公報
【特許文献5】特開2001−213825号公報
【特許文献6】特開2001−213828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの精製方法から得られる1,3−ブチレングリコール製品も依然として副産物が含まれており、臭気を有するという問題があった。また、経時により着色が生じるという問題もあった。
【0008】
従って、本発明の目的は、無色・無臭であって、さらに経時による着色が生じにくい、高純度の1,3−ブチレングリコール製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、粗1,3−ブチレングリコールの製造方法を改良することにより、無臭・無色であって、さらに経時による着色が生じにくい、高純度の1,3−ブチレングリコール製品が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明では、下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、
1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が1000ppm以下である1,3−ブチレングリコール製品を提供する。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【0011】
上記1,3−ブチレングリコール製品は、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが60以下であることが好ましい。
【0012】
上記1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールは、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品は無色透明であり、経時により着色することが少ないため、化粧品や保湿剤等の用途に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の1,3−ブチレングリコール製品に関する製造方法(精製方法)のフローチャートである。
図2】実施例1における1,3−ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析のチャートである。
図3】比較例1における1,3−ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品は、下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が1000ppm以下であることを特徴とする。
【0016】
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【0017】
上記ピークの面積率は、例えば、500ppm以下が好ましく、より好ましくは250ppm以下、さらに好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。なお、本発明において、ピークの「面積率」とは、チャートに現れる全てのピークの面積の和に対する特定のピークの面積の割合を意味するものである。また、全てのピークとは、例えば、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が7.8まで分析を継続して停止した場合に現れるピークの全てを意味する。上記ピークの面積率が上記範囲にあることにより、臭気の発生や経時による着色が低減される傾向がある。
【0018】
上記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたときの相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分としては、例えば、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が挙げられる。前記アセタール体は1,3−ブチレングリコールよりも沸点の高い副生物である。すなわち、本発明の1,3−ブチレングリコール製品は、副産物としての前記アセタール体の含有量が少ないことが好ましい。
【0019】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品において、上記条件のガスクロマトグラフィー分析における1,3−ブチレングリコールのピークの面積率は、例えば、99.5%以上であることが好ましく、より好ましくは99.7%以上、さらに好ましくは99.8%以上、特に好ましくは99.9%以上である。上記ピークの面積率が上記範囲にあることにより、臭気の発生や経時による着色が低減される傾向がある。
【0020】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品では、上記条件のガスクロマトグラフィー分析における1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたときの、相対保持時間が1.6〜1.8の範囲に現れるピークの面積率が、例えば、2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは600ppm以下、特に好ましくは200ppm以下である。上記ピークの面積率が上記範囲にあることにより、臭気の発生や経時による着色が低減される傾向がある。上記面積率の下限は、例えば、10ppm、20ppm、50ppm、又は100ppmであってもよい。
【0021】
上記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたときの相対保持時間が1.6〜1.8の範囲に現れるピークに該当する成分としては、例えば、原料(アセトアルデヒド)の三量体の水素化物が挙げられる。すなわち、本発明の1,3−ブチレングリコール製品は、副産物としての前記水素化物の含有量が少ないことが好ましい。
【0022】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品の、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のハーゼン色数(APHA)は特に限定されないが、例えば、60以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。また、空気雰囲気下、100℃で75日保持した後のAPHAは特に限定されないが、40以下であることが好ましく、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは15以下である。上記のいずれのAPHAについても、下限は、例えば、1、3、5、又は10であってもよい。
【0023】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品のAPHA(高温保存を行っていない1,3−ブチレングリコール製品のAPHA)は特に限定されないが、例えば、20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。上記APHAの下限は、例えば、1又は2であってもよい。
【0024】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品のAPHAについて、180℃で3時間保持した後のAPHAの保持前のAPHAに対する比率[(180℃3時間保持後のAPHA)/(保持前のAPHA)]は、特に限定されないが、15以下が好ましく、より好ましくは12以下である。また、上記比率は、1以上であればよく、2以上、5以上であってもよい。
【0025】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品のAPHAについて、100℃で75日間保持した後のAPHAの保持前のAPHAに対する比率[(100℃75日間保持後のAPHA)/(保持前のAPHA)]は、特に限定されないが、10以下が好ましく、より好ましくは7以下である。また、上記比率は、1以上であればよく、2以上であってもよい。
【0026】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールは、例えば、(1)アセトアルドール類の還元体、(2)1,3−ブチレンオキサイドの加水分解物、(3)エリスリトールの選択的水素化分解物、(4)ブタジエンへの選択的水付加物、(5)n−ブタナール−3−オンの水素化物、(6)1−ブタノール−3−オンの水素化物、(7)3−ヒドロキシ−1−ブタン酸の水素化物、(8)β−ブチロラクトンの水素化物、及び(9)ジケテンの水素化物が挙げられる。なお、本発明の1,3−ブチレングリコールは上記(1)〜(9)のうちの一種又は二種以上の混合物であってもよい。
【0027】
本発明の1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールは(1)アセトアルドール類の還元体であることが好ましい。また、アセトアルドール類の還元体としては、1,3−ブチレングリコールの収率の観点からは、アセトアルドール類の液相還元体であることが好ましい。その理由は、アセトアルドール類が高沸点であることと、アセトアルドール類が熱に不安定であって、高温では容易に脱水反応を起こしてクロトンアルデヒド等になること、さらに、高温における脱水反応と還元反応(水添反応)は前者の反応速度が速いこと、にある。すなわち、アセトアルドール類を気相還元する場合には反応系内を高温とする必要があるが、アセトアルドール類を高温に付すと脱水反応を起こしてクロトンアルデヒド等が生じ、その後の還元反応によりブタノール等の副産物が生じる。このため、目的とする1,3−ブチレングリコールの収率が相対的に低下することとなる。したがって、高純度の1,3−ブチレングリコール製品を得るためには、気相還元よりも液相還元を行うことが好ましい。ここで、アセトアルドール類の還元体としての1,3−ブチレングリコールとは、アセトアルドール類を水素還元する方法により得られる1,3−ブチレングリコールと言い換えることができる。同様に、アセトアルドール類の液相還元体としての1,3−ブチレングリコールとは、アセトアルドール類を液相にて水素還元する方法により得られる1,3−ブチレングリコールと言い換えることができる。また、1,3−ブチレンオキサイドの加水分解物としての1,3−ブチレングリコールとは、1,3−ブチレンオキサイドを加水分解することにより得られる1,3−ブチレングリコールと言い換えることができる。
【0028】
一般的に、1,3−ブチレングリコールを製造する場合、その製造過程において副産物が産生する。例えば、アセトアルドール類の水素還元により1,3−ブチレングリコールを製造する場合、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アセトン、メチルビニルケトン等の不飽和結合を有する低沸点物(低沸点化合物)や、これらの縮合物、1,3−ブチレングリコールと上記低沸点物との縮合物(例えば、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体)等が副生する。また、他にも、クロトンアルデヒドと1,3−ブチレングリコールのアセタール体、アセトアルデヒドと1,3−ブチレングリコールとのアセタール体、アセトアルドールやアセトアルデヒドとアセトアルデヒドの三量体の水素化物とのアセタール体などが副生する。
【0029】
そして、これらの副産物は着色原因物質や臭気原因物質としての性質を有する。上記アセタール体は、着色原因物質と臭気原因物質のいずれであるかは確かではなく、双方の性質を有することも考えられる。具体的には、上記アセタール体そのものは臭気原因物質である可能性は低いものの、経時変化や加熱により臭気原因物質が発生する可能性がある。また、上記アセタール体は加水分解でアセトアルドールが発生することがあるが、これは臭気原因物質であるとともに酸化(着色)促進作用を有するものであるため、着色原因物質であるともいえる。ここで、着色原因物質とは、それ自身が現に色相を有している物質だけでなく、経時的に色相を有するものに変化する物質も含むものとして定義される。また、臭気原因物質とは、それ自身が現に臭気を発している物質だけでなく、経時的に臭気を発するものに変化する物質も含むものとして定義される。
【0030】
これらの副産物、特に、上記のアセタール体は、従来の蒸留等の精製手段を用いても完全に取り除くことは難しい。これは、粗1,3−ブチレングリコールの精製段階において、粗1,3−ブチレングリコールが高温条件に付されることや、アルカリ処理に付されることにより、新たな副産物が産生するためであると考えられる。このため、上述の通り、特許文献1〜6の1,3−ブチレングリコール製品が多くの副産物を含むことから臭気を有し、さらに経時により着色が生じる。したがって、純度の高い1,3−ブチレングリコール製品を得るためには粗1,3−ブチレングリコールを精製する方法を改良するだけでは充分でなく、粗1,3−ブチレングリコールの製造方法そのものを改良することが必要であるといえる。
【0031】
1,3−ブチレングリコールの製造にはアセトアルドール類を含む水添原料が使用される。アセトアルドール類は水素還元により1,3−ブチレングリコールとなる化合物であれば特に限定されないが、例えば、アセトアルドール、その環化二量体であるパラアルドール、アセトアルデヒドの一種の環状3量体であるアルドキサン、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0032】
アセトアルドール類(例えば、アセトアルドールやパラアルドール)の製造方法は特に限定されないが、例えば、塩基性触媒の存在下におけるアセトアルデヒドのアルドール縮合反応により得られたものでも、アルドキサンの熱分解等で得られたものであってもよい。上記の反応により得られたアセトアルドール類を含む反応粗液を酸により中和して、1,3−ブチレングリコールの製造に使用してもよい。この様な反応粗液は、アセトアルドール類以外にも、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、他のアルデヒド成分、低沸点物、アルデヒドダイマーやトリマー等の高沸点物、水、塩等が含まれ得る。なお、本明細書において、1,3−ブチレングリコールよりも沸点の低い化合物を「低沸点物」、1,3−ブチレングリコールよりも沸点の高い化合物を「高沸点物」とそれぞれ称する場合がある。
【0033】
上記反応粗液は、必要に応じて、脱アルコール蒸留、脱水蒸留、脱塩、脱不純物等の前処理に付し、未反応アセトアルデヒドやクロトンアルデヒド等の副産物を除去したものを使用してもよい。前処理の方法としては、蒸留、吸着、イオン交換、加熱高沸点物化、分解等が挙げられる。蒸留は、減圧、常圧、加圧、共沸、抽出、反応等の種々の蒸留方法が使用できる。
【0034】
水添原料におけるアセトアルドール類の含有量は特に限定されないが、例えば、50重量%以上(例えば50〜99重量%)であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上(例えば60〜98重量%)、さらに好ましくは65〜98重量%、特に好ましくは80〜95重量%、最も好ましくは85〜95重量%である。アセトアルドール類の含有量が上記範囲内であることにより、粗1,3−ブチレングリコールに含まれる不純物が低減される傾向がある。
【0035】
水添原料は水を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、1,3−ブチレングリコール製品の純度の観点からは含んでいることが好ましい。水添原料における水の含有量は特に限定されないが、例えば、2重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。なお、その上限値は、例えば、50重量%、40重量%、又は35重量%であってもよい。水の含有量が上記範囲内である場合、得られる粗1,3−ブチレングリコールに含まれる1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減されるため、最終的に得られる1,3−ブチレングリコール製品の純度が高くなる傾向がある。これは、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記アセタール体が加水分解されて1,3−ブチレングリコールになるとともに、共生したアセトアルドールが還元されて1,3−ブチレングリコールとなることに起因する。
【0036】
以下、粗1,3−ブチレングリコールの製造方法について説明する。本製造方法では、アセトアルドール類を含む水添原料を水添触媒の存在下で還元することにより粗1,3−ブチレングリコールを得ることを特徴とする。
【0037】
水添触媒としては、例えば、ラネーニッケル等が挙げられる。水添触媒は、鹸濁又は充填して使用することができるが、鹸濁させて使用することが好ましい。使用する水添触媒の量は特に限定されないが、水添原料100重量部に対して、例えば、1〜30重量部が好ましく、より好ましくは4〜25重量部、さらに好ましくは8〜20重量部、特に好ましくは12〜18重量部である。還元反応に使用する水素量は特に限定されないが、水添原料100重量部に対して、例えば、0.5〜40重量部が好ましく、より好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは4〜20重量部、特に好ましくは8〜12重量部である。還元反応における反応系内の圧力(全圧)は特に限定されないが、例えば、150〜500atmが好ましく、より好ましくは180〜450atm、さらに好ましくは200〜400atm、特に好ましくは250〜350atmである。反応系内の全圧に対する水素圧(水素の分圧)の割合は特に限定されないが、例えば、全圧の80%以上(80〜100%)であることが好ましく、より好ましくは85〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.5%、特に好ましくは95〜99%である。反応系内の水素圧(水素の分圧)は特に限定されないが、例えば、100〜500atmが好ましく、より好ましくは150〜450atm、さらに好ましくは150〜400atm、特に好ましくは200〜350atmである。還元反応における反応温度は特に限定されないが、例えば、110〜140℃が好ましく、より好ましくは120〜140℃である。還元反応における反応時間(滞留時間)は特に限定されないが、例えば、30〜300分間が好ましく、より好ましくは80〜280分間、さらに好ましくは120〜250分間である。
【0038】
還元反応に使用する水添触媒の量、水素量、還元反応における水素圧、反応温度、反応時間(滞留時間)が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3−ブチレングリコールへの反応速度(水添速度)が向上する。このため、例えば、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールのアセタール化反応が低減され、高い純度である本発明の1,3−ブチレングリコール製品が得られる傾向がある。この傾向は、特に還元反応における水素圧に強く影響される。すなわち、還元反応における水素圧が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3−ブチレングリコールへの反応速度(還元速度)が著しく向上し、その結果、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減され、高い純度である本発明の1,3−ブチレングリコール製品が得られることになる。本反応は、回分式、半回分式、又は連続式のいずれでも行うことができる。
【0039】
上記水添原料の水素還元により得られた粗1,3−ブチレングリコールは、例えば、脱水工程、脱塩工程、脱高沸点物蒸留工程、アルカリ反応工程、脱アルカリ工程、蒸留工程を経ることにより、1,3−ブチレングリコール製品として得ることができる。
【0040】
上記粗1,3−ブチレングリコールの高沸点物の含有率は特に限定されないが、例えば、0.1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。粗1,3−ブチレングリコール中の高沸点物の含有率が上記範囲内にあることにより、最終的に得られる1,3−ブチレングリコール製品に含まれる副産物の量が低減される傾向がある。
【0041】
脱高沸点物蒸留工程後の粗1,3−ブチレングリコール中の高沸点物の含有率は、1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下である。高沸点物の含有率が少ない粗1,3−ブチレングリコールを使用することにより、アルカリ反応工程において、塩基と共に加熱処理されても高沸点物の分解反応による低沸点物の生成が無いか、あるいは極めて少なくなる。その結果、着色がなく、さらに経時による着色の少ない極めて高品質の1,3−ブチレングリコール製品が得られる傾向がある。
【0042】
図1は本発明の1,3−ブチレングリコール製品を得るための実施態様の一例を示した装置のフローシートである。Aは脱水塔であり、脱水工程に関連する。Bは脱塩塔であり脱塩工程に関連する。Cは脱高沸点物蒸留塔であり脱高沸点物蒸留工程に関連する。Dはアルカリ反応器でありアルカリ反応工程に関連する。Eは脱アルカリ塔であり脱アルカリ工程に関連する。Fは製品蒸留塔であり蒸留工程に関連する。A−1、B−1、C−1、E−1、F−1はコンデンサーである。A−2、C−2、F−2はリボイラーである。以下、本フローシートを用いて本発明の1,3−ブチレングリコール製品を得るための実施態様の一例を説明する。
【0043】
水添原料の水素還元により得られた粗1,3−ブチレングリコール(「X−1」に相当)は、脱水塔Aに供給される。脱水塔Aでは蒸留により塔頂部から水が留出され、塔底部より1,3−ブチレングリコールを含む粗1,3−ブチレングリコール流が得られる。上記粗1,3−ブチレングリコール流は脱塩塔Bに供給される。脱塩塔Bでは蒸留により塔頂部から脱塩後の粗1,3−ブチレングリコール流が得られ、塔底部から塩や高沸点物等が排出される。
【0044】
上記の脱塩後の粗1,3−ブチレングリコール流は脱高沸点物蒸留塔Cに供給される。脱高沸点物蒸留塔Cでは、塔底部から高沸点物が排出される。一方、塔頂部からは脱高沸点物後の粗1,3−ブチレングリコール流が得られる。脱高沸点物蒸留塔Cにより蒸留された粗1,3−ブチレングリコールは、アルカリ反応器(例えば流通式管型反応器)Dに供給され、塩基処理される。アルカリ反応器D又はその上流では、塩基が脱高沸点物後の粗1,3−ブチレングリコール流に対して0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%添加される。塩基の添加量が10重量%を超えると、蒸留塔、配管等で塩基が析出し、閉塞の原因となる傾向がある。また、高沸点化合物の分解反応が起こることもあり、かえって副産物が発生する傾向がある。0.05重量%未満の場合は、副産物を分解する効果が小さいため、いずれも好ましくない。
【0045】
アルカリ反応器D又はその上流で添加される塩基は特に限定されないが、例えば、アルカリ金属化合物が好ましい。アルカリ金属化合物としては、例えば、苛性ソーダ、苛性カリ、(重)炭酸ソーダ、(重)炭酸カリが挙げられるが、最終的に得られる1,3−ブチレングリコール製品に含まれる副産物を低減する観点からは、苛性ソーダ、苛性カリが好ましい。塩基は固体状のものをそのまま加えてもよいが、操作上及び対象液との接触を促進するため水溶液で添加することが好ましい。なお、上記の塩基は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。
【0046】
アルカリ反応器Dでの反応温度は特に限定されないが、例えば、90〜140℃が好ましく、より好ましくは110〜130℃である。反応温度が90℃未満である場合は長い反応滞留時間が必要になるため、反応器容量が大きくなり不経済であること、反応温度が140℃を超えると最終的に得られる1,3−ブチレングリコール製品の着色が増加することにある。反応滞留時間は、例えば、5〜120分が好ましく、より好ましくは10〜30分である。反応滞留時間が5分未満である場合は反応が不十分となり、最終的に得られる1,3−ブチレングリコール製品の品質が悪化すること、反応滞留時間が120分を超えると大きな反応器が必要になり設備費が高くなるため、経済性の観点から不利であることにある。
【0047】
アルカリ反応器Dを出た後、反応粗液流は脱アルカリ塔(薄膜蒸発器)Eに供給され、蒸発により塩基等が塔底部から除去される。一方、脱アルカリ塔Eの塔頂部からは脱塩基後の粗1,3−ブチレングリコール流が得られる。脱アルカリ塔Eに用いられる蒸発器は、プロセス流体への熱履歴を抑制する目的で、滞留時間の短い自然流下型薄膜蒸器、強制攪拌型薄膜蒸発器が適当である。
【0048】
脱アルカリ塔Eに用いられる蒸発器において、例えば、塔頂部は100torr以下、好ましくは5〜20torrの減圧下で蒸発が行われる。蒸発器の温度は、例えば、90〜120℃が好ましい。塔頂部から留出した低沸点物を含む粗1,3−ブチレングリコール流が製品蒸留塔Fへ供給される。
【0049】
製品蒸留塔Fは、例えば、多孔板塔、泡鐘塔等が挙げられるが、スルーザー・パッキング、メラパック(共に住友重機械工業(株)の商品名)等を充填した圧損失の低い充填塔がより好ましい。これは、1,3−ブチレングリコールは高温(例えば150℃以上)で熱分解し、着色成分である低沸点物が生成することから、蒸留温度を低くするためである。また、1,3−ブチレングリコールにかかる熱履歴(滞留時間)が長い場合も同様に影響が出るためである。従って、採用されるリボイラーはプロセス側流体の滞留時間が短いもの、例えば、自然流下型薄膜蒸発器、強制攪拌型薄膜蒸発器等の薄膜蒸発器が好ましい。
【0050】
製品蒸留塔Fは、仕込み液中の低沸点物濃度が5重量%以下である場合、その理論段数は例えば、10〜20段であることが好ましい。仕込み液は塔頂部から塔の高さの20〜70%の位置に供給されることが好ましい。製品蒸留塔Fでの蒸留は、塔頂部の圧力が、例えば、100torr以下であることが好ましく、より好ましくは5〜20torrである。還流比は、例えば、0.5〜2.0であることが好ましい。
【0051】
図1では、製品蒸留塔Fへの仕込みは、脱アルカリ塔Eの塔頂ベーパーをコンデンサーE−1で凝縮した液をフィードしているが、脱アルカリ塔Eからの塔頂ベーパーを直接製品蒸留塔Fへフィードしてもよい。製品蒸留塔Fでは、塔頂部から低沸点物等の不純物が留出され、製品としての1,3−ブチレングリコールは製品蒸留塔Fの塔底部から得られる(「Y」に相当する)。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものでない。なお、実施例で用いている「部」は、特別の説明が無い限り「重量部」を意味する。
【0053】
[実施例1]
図1を用いて1,3−ブチレングリコールの製造方法を説明する。
原料として30重量%の水を含むアセトアルドール溶液100部(アセトアルドール70部と水30部の混合溶液)に対し、水素10部を液相水素還元用反応器に仕込み、触媒としてラネーニッケルを15部加え、該反応器を135℃、300atmに保持して液相水素還元を行った。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、アルコール類を除去して粗1,3−ブチレングリコール(1)を得た。
【0054】
粗1,3−ブチレングリコール(1)(図1中における「X−1」に相当)を脱水塔Aに仕込んだ。脱水塔Aでは仕込み液量100部に対して塔頂部より水を抜き出し、還流水として真水15部を加え、圧力を50torrとして、塔底部より水が0.5重量%以下の粗1,3−ブチレングリコール(2)が得られた。なお、塔頂部より抜き出された水は排出された(図1中における「X−2」に相当)。
【0055】
次に、粗1,3−ブチレングリコール(2)を脱塩塔Bに仕込んだ。脱塩塔Bでは、塔底部より、塩、高沸点物、及び1,3−ブチレングリコールの一部が蒸発残分として排出された(図1中における「X−3」に相当)。蒸発残分の排出量は、仕込み液量100部に対して5部であった。一方、塔頂部からは、1,3−ブチレングリコール、低沸点物、及び高沸点物の一部を含む粗1,3−ブチレングリコール(3)が得られた。
【0056】
次に、粗1,3−ブチレングリコール(3)を脱高沸点物蒸留塔Cに仕込んだ。脱高沸点物蒸留塔Cでは、塔底部から、高沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部が排出された(図1中における「X−4」に相当)。排出量は、仕込み液量100部に対して20部であった。一方、塔頂部からは、低沸点物を含む粗1,3−ブチレングリコール(4)が80部得られた。次に、粗1,3−ブチレングリコール(4)をアルカリ反応器Dに仕込んだ。この際、仕込み液に対する苛性ソーダの濃度が0.2重量%となるように、10重量%苛性ソーダ水溶液を添加した。アルカリ反応器Dでの反応温度を120℃に維持し、滞留時間20分で反応を行った。
【0057】
次に、アルカリ反応器Dから出た反応粗液を脱アルカリ塔Eに仕込んだ。脱アルカリ塔Eでは、塔底部から、苛性ソーダ、高沸点物、及び1,3−ブチレングリコールの一部が排出された(図1中における「X−5」に相当)。排出量は、仕込み液量100部に対して10部であった。一方、塔頂部からは、1,3−ブチレングリコール及び低沸点物を含む粗1,3−ブチレングリコール(5)が90部得られた。
【0058】
次に、粗1,3−ブチレングリコール(5)を製品蒸留塔Fへ仕込んだ。製品蒸留塔Fでは、仕込み液量100部に対して、塔頂部から低沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部が10部留出され(図1中における「X−6」に相当)、塔底部からは1,3−ブチレングリコール製品が90部得られた(図1中における「Y」に相当)。
【0059】
上述の1,3−ブチレングリコール製品について、後述の条件にてガスクロマトグラフィー分析を行った結果、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲におけるピークは検出限界以下(10ppm以下)であった。また、相対保持時間が1.6〜1.8の範囲に現れるピークの面積率は130ppmであった。経時着色試験1を行ったところ、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAは21であった。また、経時着色試験2を行ったところ、空気雰囲気下、100℃で75日保持した後のAPHAは10であった。なお、これらの試験を行う前のAPHAは2であった。さらに、臭気試験の点数は1であった。
【0060】
[比較例1]
株式会社ダイセル製1,3−ブチレングリコール(品番:13BGO)について、後述の条件にてガスクロマトグラフィー分析を行った結果、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率は1137ppmであった。また、相対保持時間が1.6〜1.8の範囲に現れるピークの面積率は1010ppmであった。経時着色試験1を行ったところ、空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAは80であった。また、経時着色試験2を行ったところ、空気雰囲気下、100℃で75日保持した後のAPHAは46であった。なお、これらの試験を行う前のAPHAは4であった。さらに、臭気試験の点数は2であった。
【0061】
[ガスクロマトグラフィー分析]
以下の条件で、対象となる1,3−ブチレングリコール製品のガスクロマトグラフィー分析を行った。実施例1における1,3−ブチレングリコールのガスクロマトグラフィー分析のチャートを図2に示す。また、比較例1における1,3−ブチレングリコールのガスクロマトグラフィー分析のチャートを図3に示す。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析装置:島津 GC2010
分析カラム:Agilent J&W GC カラム − DB−1(固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム、膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm、アジレント・テクノロジー株式会社製)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入及び温度:スプリット試料導入法、250℃
スプリットのガス流量及びキャリアガス:23mL/分、ヘリウム
カラムのガス流量及びキャリアガス:1mL/分、ヘリウム
検出器及び温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
注入試料:0.2μLの80重量%1,3−ブチレングリコール製品水溶液
【0062】
[経時着色試験1]
対象となる1,3−ブチレングリコール製品を広口瓶に入れて密栓し、180℃に設定した恒温槽に3時間保持した。色差計(日本電色工業社製「ZE6000」)を用い、光路長10mmの石英セルを使用して保持後の1,3−ブチレングリコール製品のハーゼン色数(APHA)を測定した。
【0063】
[経時着色試験2]
対象となる1,3−ブチレングリコール製品を広口瓶に入れて密栓し、100℃に設定した恒温槽に75日保持した。色差計(日本電色工業社製「ZE6000」)を用い、光路長10mmの石英セルを使用して保持後の1,3−ブチレングリコール製品のハーゼン色数(APHA)を測定した。
【0064】
[臭気試験]
対象となる1,3−ブチレングリコール製品を広口試薬瓶に入れ、密栓し室温に静置した後、大気中で速やかに臭いを嗅ぎ、以下の1,3−ブチレングリコール製品との相対評価にて点数を付けた。
1:臭いを感じない
2:僅かに臭気がある
【符号の説明】
【0065】
A:脱水塔
B:脱塩塔
C:脱高沸点物蒸留塔
D:アルカリ反応器
E:脱アルカリ塔
F:製品蒸留塔
A−1、B−1、C−1、E−1、F−1:コンデンサー
A−2、C−2、F−2:リボイラー
X−1:粗1,3−ブチレングリコール
X−2:水(排水)
X−3:塩、高沸点物、及び1,3−ブチレングリコールの一部
X−4:高沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部
X−5:苛性ソーダ、高沸点物、及び1,3−ブチレングリコールの一部
X−6:低沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部
Y:1,3−ブチレングリコール製品
図1
図2
図3