特許第6890727号(P6890727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6890727
(24)【登録日】2021年5月27日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】空気調和システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20210607BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20210607BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20210607BHJP
【FI】
   F25B1/00 304F
   F24F11/84
   F24F110:10
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-545600(P2020-545600)
(86)(22)【出願日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2020017449
【審査請求日】2020年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】中安 悟
(72)【発明者】
【氏名】浦田 和幹
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 太樹
(72)【発明者】
【氏名】徳地 幹人
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−058200(JP,A)
【文献】 特開2017−072298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/84
F24F 110/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と室外機とを備える空気調和システムであって、
前記室内機が、
熱交換器と、
室内の温度を検出する室内温度検出手段と、
冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
前記室外機が、
熱交換器と、
圧縮機と、
前記圧縮機の運転周波数を検出する周波数検出手段と、
前記冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と、所定時間における該室内の温度の変化量と、前記周波数検出手段により検出された前記運転周波数とに応じて、前記室内機の前記弁の開度を制御する制御手段
を含んでおり、
前記制御手段は、前記周波数検出手段により検出された前記運転周波数が周波数閾値より小さく、かつ、空調負荷と空調能力との差分を、前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と設定温度との差と、前記所定時間における室内温度の変化量とから検出し、検出された前記差分が負荷閾値より小さい場合に、前記室内機の前記弁の開度を小さくする制御を行う、空気調和システム。
【請求項2】
室内機と室外機とを備える空気調和システムであって、
前記室内機が、
熱交換器と、
室内の温度を検出する室内温度検出手段と、
冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
前記室外機が、
熱交換器と、
圧縮機と、
前記圧縮機の運転周波数を検出する周波数検出手段と、
前記冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と、所定時間における該室内の温度の変化量と、前記周波数検出手段により検出された前記運転周波数とに応じて、前記室内機の前記弁の開度を制御する制御手段
を含んでおり、
前記制御手段は、前記周波数検出手段により検出された前記運転周波数が周波数閾値以上、または、空調負荷と空調能力との差分を、前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と設定温度との差と、前記所定時間における室内温度の変化量とから検出し、検出された前記差分が負荷閾値以上である場合に、前記室内機の前記弁の開度を大きくする制御を行う、空気調和システム。
【請求項3】
前記室内機は、
前記熱交換器と前記室外機とを接続する2本の配管のそれぞれの温度を検出する2つの配管温度検出手段
を含み、
前記制御手段は、前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と、前記所定時間における室内の温度の変化量とに基づいて、前記熱交換器から排出される前記冷媒の目標過熱度を計算し、前記2つの配管温度検出手段により検出された2つの温度の差から得られる過熱度が、計算した前記目標過熱度になるような前記室内機の前記弁の開度の変化量を計算する、請求項1または2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
複数の室内機と室外機とを備える空気調和システムであって、
前記各室内機が、
熱交換器と、
室内の温度を検出する室内温度検出手段と、
冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
前記室外機が、
熱交換器と、
圧縮機と、
前記圧縮機の運転周波数を検出する周波数検出手段と、
前記冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
前記各室内機の前記各室内温度検出手段により検出された前記各室内の温度と、所定時間における該各室内の温度の変化量と、前記各室内機の前記各周波数検出手段により検出された前記各運転周波数とに応じて、前記各室内機の前記各弁の開度を制御する制御手段
を含んでおり、
前記制御手段は、1以上の前記室内機につき、該室内機の前記周波数検出手段により検出された前記運転周波数が周波数閾値より小さく、かつ、空調負荷と空調能力との差分を、前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と設定温度との差と、前記所定時間における室内温度の変化量とから検出し、検出された前記差分が負荷閾値より小さい場合に、該室内機の前記弁の開度を小さくする制御を行う、空気調和システム。
【請求項5】
複数の室内機と室外機とを備える空気調和システムであって、
前記各室内機が、
熱交換器と、
室内の温度を検出する室内温度検出手段と、
冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
前記室外機が、
熱交換器と、
圧縮機と、
前記圧縮機の運転周波数を検出する周波数検出手段と、
前記冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
前記各室内機の前記各室内温度検出手段により検出された前記各室内の温度と、所定時間における該各室内の温度の変化量と、前記各室内機の前記各周波数検出手段により検出された前記各運転周波数とに応じて、前記各室内機の前記各弁の開度を制御する制御手段
を含んでおり、
前記制御手段は、1以上の前記室内機につき、該室内機の前記周波数検出手段により検出された前記運転周波数が周波数閾値以上、または、空調負荷と空調能力との差分を、前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と設定温度との差と、前記所定時間における室内温度の変化量とから検出し、検出された前記差分が負荷閾値以上である場合に、該室内機の前記弁の開度を大きくする制御を行う、空気調和システム。
【請求項6】
前記各室内機は、
前記熱交換器と前記室外機とを接続する2本の配管のそれぞれの温度を検出する2つの配管温度検出手段
を含み、
前記制御手段は、1以上の前記室内機につき、該室内機の前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と、前記所定時間における室内の温度の変化量とに基づいて、該室内機の前記熱交換器から排出される前記冷媒の目標過熱度を計算し、該室内機の前記2つの配管温度検出手段により検出された2つの温度の差から得られる過熱度が、計算した前記目標過熱度になるような該室内機の前記弁の開度の変化量を計算する、請求項4または5に記載の空気調和システム。
【請求項7】
熱交換器と、室内の温度を検出する室内温度検出手段と、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁とを含む室内機と、
熱交換器と、圧縮機と、前記圧縮機の運転周波数を検出する周波数検出手段と、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁とを含む室外機と、
制御手段と
を含む、空気調和システムの前記制御手段により実行される制御方法であって、
前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度から所定時間における該室内の温度の変化量を計算するステップと、
前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と、前記周波数検出手段により検出された前記運転周波数と、計算した前記室内の温度の変化量とに応じて、前記室内機の前記弁の開度を制御するステップと
を含み、
前記制御手段は、前記周波数検出手段により検出された前記運転周波数が周波数閾値より小さく、かつ、空調負荷と空調能力との差分を、前記室内温度検出手段により検出された前記室内の温度と設定温度との差と、前記所定時間における室内温度の変化量とから検出し、検出された前記差分が負荷閾値より小さい場合に、前記室内機の前記弁の開度を小さくする制御を行う、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システムおよび該空気調和システムの運転を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和システムでは、室内機の負荷に応じて室外機の圧縮機周波数を制御し、室温を調整する手法が広く採用されている。室外機の圧縮機には、運転可能な周波数範囲があり、室内機の負荷が小さく、圧縮機が最低運転周波数で運転しても室温を維持できない場合は、圧縮機の停止(サーモオフ)と圧縮機の運転(サーモオン)を繰り返す運転、いわゆる断続運転を実施して、室温を安定させている。
【0003】
しかしながら、断続運転は、室温の上下変動があり、快適性を損ない、連続運転に比較して機器の効率が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、断続運転を回避する目的で、起動用運転周波数より低い最低運転周波数に、あるいは圧縮機の使用上の下限運転周波数以上の範囲で一時的に周波数を下げる技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、室外機の膨張弁の開度を小さくし、冷媒循環量を減少させる技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−202885号公報
【特許文献2】特開2015−102252号公報
【特許文献3】特開平10−141740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1、2に記載の技術では、室温を設定温度に保つために必要な圧縮機周波数が、圧縮機の使用上の下限運転周波数より低下することになる場合、断続運転を回避することができなくなるという問題があった。
【0007】
上記の特許文献3に記載の技術では、室外機の膨張弁の開度を強制的に小さくし、冷媒循環量を減少させて能力を低下させるため、複数の室内機が接続されている場合には、すべての室内機の冷房能力を低下させてしまう。そのため、室内機が負荷の異なる部屋に位置する場合には、負荷の大きい部屋で室温を維持することができなくなり、快適性を維持することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、室内機と室外機とを備える空気調和システムであって、
室内機が、
熱交換器と、
室内の温度を検出する室内温度検出手段と、
冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
室外機が、
熱交換器と、
圧縮機と、
圧縮機の運転周波数を検出する周波数検出手段と、
冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁と
を含み、
室内温度検出手段により検出された室内の温度と、所定時間における該室内の温度の変化量と、周波数検出手段により検出された運転周波数とに応じて、室内機の弁の開度を制御する制御手段
を含む、空気調和システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、断続運転を抑制し、快適性を維持することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】空気調和システムの第1の構成例を示した図。
図2】空気調和システムが備える制御装置のハードウェア構成を例示した図。
図3】室内膨張弁の開度制御の第1の例を示したフローチャート。
図4】従来の制御と本制御における運転開始後の消費電力の時間履歴を示した図。
図5】室内膨張弁の開度制御の第2の例を示したフローチャート。
図6】室内膨張弁の開度制御の第3の例を示したフローチャート。
図7】室内膨張弁の開度制御の第4の例を示したフローチャート。
図8】空気調和システムの第2の構成例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、空気調和システムの第1の構成例を示した図である。空気調和システムは、住宅やビル等の室内に設置される室内機10と、室外に設置される室外機20とを含んで構成される。空気調和システムは、室内機10が設置される室内に、室内機10と無線により通信を行い、室内機を操作するための操作装置(リモートコントローラ)を含むことができる。
【0012】
室内機10と室外機20とは、熱媒体としての冷媒が循環する2本の配管30、31により接続される。冷媒としては、例えばR410aやR32等のハイドロフルオロカーボンが用いられる。また、室内機10と室外機20とは、互いに通信を行うために通信ケーブル等により接続される。なお、室内機10と室外機20とは、通信ケーブル等により有線接続されることに限定されるものではなく、WiFi(登録商標)等を使用して無線接続されていてもよい。
【0013】
室内機10は、ユーザの操作を受けて起動し、または停止する。室内機10は、起動した際、室外機20に対して起動を指令し、室内機10において設定された設定温度や測定した室温等を通知する。室内機10は、ユーザから運転モードや設定温度等の運転条件の変更を受け付けた場合、室外機20に対して変更された運転条件も通知する。室内機10は、停止する際、室外機20に対して運転の停止を指令する。
【0014】
室内機10は、運転中、室内の空気を取り込み、取り込んだ空気と、室外機20から供給される冷媒との間で熱交換し、冷却された空気または暖められた空気を吹き出し、室内を設定温度になるように冷却または暖める。
【0015】
このため、室内機10は、室内の空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器11と、室内の空気を熱交換器11へ取り込み、熱交換器11により熱交換された空気を吹き出す送風機(ファン)12とを備える。
【0016】
室内機10は、室外機20へ室内の温度を通知するために、室内の温度を検出する室内温度検出手段を備える。室内温度検出手段としては、室温センサ13を用いることができる。また、室内機10は、熱交換器11と接続される2本の配管30、31の外壁面温度を検出するための配管温度検出手段を備える。配管温度検出手段としては、配管温度センサ14、15を用いることができる。さらに、室内機10は、冷媒を膨張させ、熱交換器11を流れる冷媒の流量を調整するための室内膨張弁16を含む。
【0017】
室内機10を冷房として使用する場合、熱交換器11は、蒸発器として機能し、冷媒は液とガスが混在した二相流の状態(液冷媒)として熱交換器11へ流入する。冷媒は、熱交換器11においてファン12により取り込まれた空気と熱交換を行うことで液成分が蒸発し、ガス冷媒として熱交換器11から排出され、室外機20へ送られる。液成分は、熱交換器11内の圧力に対応する一定の温度(飽和温度)で蒸発し、飽和温度または飽和温度より高い温度で熱交換器11から排出される。飽和温度よりΔtほど高い温度で排出される場合のΔtは、飽和温度からの温度上昇を示し、過熱度と呼ばれる。
【0018】
室外機20は、室内機10からの指定を受けて起動し、設定された、または室内機10から通知された運転モードで運転を開始する。運転モードは、冷房モード、暖房モード、送風モード等である。室外機20は、設定された、または室内機10から通知された設定温度、室内温度、配管温度等に応じて、冷媒の温度、圧力、流量等を制御する。また、室外機20は、室内機10からの指令を受けて運転を停止する。
【0019】
室外機20は、配管30、31を介して室内機10と接続され、冷媒を循環させる。このため、冷媒を循環させるための圧縮機21を備える。圧縮機21によって圧縮された冷媒ガスは、熱交換器22においてファン23によって取り込まれた空気と熱交換を行い、高圧の液冷媒となる。また、室外機20は、暖房運転も可能にするため、冷媒が流れる方向を逆にするための四方弁25を備える。室外膨張弁24は、暖房時に高圧の状態となった冷媒を、低温、低圧の冷媒にするとともに、冷媒の流量を調整するために備えられる。
【0020】
圧縮機21は、運転周波数を変えることで冷媒の流量が変えられる。
【0021】
室外機20は、制御装置26を備える。制御装置26は、室温センサ13により検出された室内温度と、設定温度と、配管温度と、運転モードとに基づき、圧縮機21の運転周波数と、室外膨張弁24の開度とを制御する。また、設定された運転モードに応じて、四方弁25を切り替える。
【0022】
圧縮機21の運転周波数には下限があり、圧縮機21が最低運転周波数で運転しても発生能力が室内負荷よりも大きい場合には、連続運転で室内温度を設定温度に維持することができない。そのため、サーモオンとサーモオフとを繰り返す断続運転を実施して、室内温度を設定温度に維持する。しかしながら、断続運転を行うと、連続運転に比較して機器の効率や信頼性が低下し、室内温度も変動するため、快適性を損なうという問題がある。
【0023】
そこで、室外機20は、圧縮機21の運転周波数を検出する周波数検出手段として、周波数センサ27を備え、制御装置26が、室温センサ13により検出された室温および該室温の所定時間における変化量と、周波数センサ27により検出された運転周波数とに応じて、室内膨張弁16の開度を制御するように構成される。
【0024】
制御装置26は、圧縮機21が最低運転周波数付近で運転している場合に、室内膨張弁16の開度を小さくして、熱交換器11へ流入する冷媒の流量を減少させ、発生する空調能力(冷房能力)を小さくする。これにより、圧縮機21が最低運転周波数で動作していても、さらなる冷房能力の低減が可能となるため、従来では圧縮機21の断続運転が必要となる空調負荷であっても、圧縮機21の断続運転を回避することができる。この詳細については以下に説明する。
【0025】
図2は、空気調和システムに用いられる制御装置26のハードウェア構成の一例を示した図である。制御装置26は、CPU40と、フラッシュメモリ41と、RAM42と、通信I/F43と、制御I/F44とを備える。CPU40等の構成要素は、バス45に接続され、バス45を介して情報等のやりとりを行う。
【0026】
フラッシュメモリ41は、CPU40により実行されるプログラムや各種のデータ等を記憶する。RAM42は、CPU40に対して作業領域を提供する。CPU40は、フラッシュメモリ41に記憶されたプログラムをRAM42に読み出し実行することで、上記の制御を実現する。
【0027】
通信I/F43は、室内機10と接続し、室内機10から室内温度、液配管温度、ガス配管温度等の情報を受信する。また、通信I/F43は、周波数センサ27からの情報も受信する。制御I/F44は、圧縮機21、ファン23、室外膨張弁24、四方弁25、室内膨張弁16と接続し、それぞれの機器の制御を行う。
【0028】
ここでは、制御装置26は、CPU40がフラッシュメモリ41からプログラムを読み出し実行することにより上記の制御を実現するが、回路等のハードウェアを使用して上記の制御を実現してもよい。
【0029】
以下に具体的な制御を、冷房運転時の制御として詳細に説明する。図3は、室内膨張弁16の開度制御の第1の例を示したフローチャートである。この制御は、冷房運転を開始した段階で、ステップ100から開始する。ステップ101では、運転周波数Fが、最低運転周波数Fminより大きい任意の周波数(周波数閾値)Fより小さいか否かを判定する。周波数閾値Fは、室内膨張弁16の開度の制御を開始する前に断続運転に入らないように、最低運転周波数Fminに一定の余裕をみて決定される。室内膨張弁16の開度制御は、FがFより小さいと判定されるまでステップ101の判定が繰り返される。
【0030】
ステップ101でFがFより小さいと判定された場合、ステップ102へ進み、室内の空調負荷と発生冷房能力との差分RLが、負荷閾値RLthより小さいか否かを判定する。
【0031】
室内の空調負荷と発生能力との差分RLは、設定温度と、室温センサ13により検出された検出値(室温)と、所定時間内の室温の変化量とを用いて検出することができる。所定時間は、室内膨張弁16の制御にかかる時間(数秒程度)のように短い時間では、変化量が小さすぎて、変化量を検出することができず、長い時間では、その間に断続運転に入ってしまう可能性があることから、例えば数十秒から数分程度とすることができる。
【0032】
RLがRLth以上と判定された場合、空調負荷に対して冷房能力が相対的に小さく能力を減少させる必要がないため、室内膨張弁16の開度制御を行わない。このため、ステップ101へ戻り、制御を継続する。
【0033】
一方、ステップ102でRLがRLthより小さいと判定された場合、空調負荷に対して冷房能力が相対的に大きいため、ステップ103へ進み、冷媒の流量を低下させるべく、室内膨張弁16の開度を小さくする。室内膨張弁16の開度を小さくすると、冷媒の流量を低下させるとともに、圧力が低いために二相冷媒はより小さい熱交換量で気相となるので、熱交換器11の蒸発器として機能する伝熱管の部分の面積(有効面積)も小さくなる。室内の空気は、主に冷媒が蒸発する際の潜熱により冷却されるため、有効面積が小さくなることにより冷房能力を低下させることができる。冷房能力が低下することで、冷媒を全て蒸発させ、さらには過熱度を付与して熱交換器11から排出させることができる。
【0034】
制御装置26は、設定温度と、室温センサ13の検出値に基づき、圧縮機21の回転数を制御し、過熱度を一定の範囲に保つように室外膨張弁24の開度を制御する。したがって、室内負荷が大きい場合、制御装置26は、圧縮機21の回転数を上げて冷媒の循環量を増加させ、室内負荷が小さくなると、圧縮機21の回転数を下げて冷媒の循環量を減少させる。
【0035】
室内負荷が次第に小さくなり、圧縮機21の運転が最低運転周波数になった場合であっても、室内膨張弁16の開度を小さくして冷房能力を低下させることで、圧縮機21が最低運転周波数で運転し続けても、室温を維持することができる。このため、圧縮機21の連続運転を維持することが可能となる。
【0036】
ステップ103で室内膨張弁16の開度を小さくした後は、ステップ101へ戻り、制御を継続する。なお、空気調和システムの運転を停止した場合は、この制御も終了する。
【0037】
図4に、従来の制御と図3に示した室内膨張弁16の開度制御における運転開始後の消費電力の時間履歴を示す。従来の制御は、断続運転を繰り返す制御であり、時間履歴を破線で示す。従来の制御は、サーモオフになると、消費電力がゼロになるが、サーモオン時に電力を多く消費する。一方、室内膨張弁16の開度制御(本制御)を行うと、サーモオフ/サーモオンが発生せず、一定の低い電力を消費するのみであるため、時間軸と実線とにより囲まれるトータルの消費電力(消費電力の時間積分の値)は、同じく時間軸と破線とにより囲まれる従来の制御のトータルの消費電力に比較して小さくなる。したがって、本制御は、従来制御に比較して消費電力を低減することができる。
【0038】
図3に示した制御は、室内膨張弁16の開度を小さくするのみの制御であったが、外気温の上昇等により、室温が上昇し、空調負荷が大きくなると、低下した冷房能力を向上させたい場合がある。また、空調負荷が大きくなった場合に冷媒の循環量が小さく、蒸発器の有効面積も小さいままであると、非効率な運転となる。そこで、冷房能力を向上させることができる制御について、図5を参照して説明する。
【0039】
図5は、室内膨張弁16の開度制御の第2の例を示したフローチャートである。ステップ200から開始し、図3に示した制御と同様、ステップ201では、運転周波数Fが、周波数閾値Fより小さいか否かを判定する。FがFより小さいと判定された場合、ステップ202へ進み、室内の空調負荷と発生冷房能力との差分RLが、閾値RLthより小さいか否かを判定する。そして、RLがRLthより小さいと判定された場合、ステップ203へ進み、冷媒の流量を低下させるべく、室内膨張弁16の開度を小さくする。室内膨張弁16の開度を小さくした後、ステップ201へ戻り、制御を継続する。
【0040】
ステップ201でFがF以上と判定された場合、またはステップ202でRLがRLth以上と判定された場合、ステップ204へ進み、室内膨張弁16の開度を大きくする。FがF以上である場合、冷房能力を向上させる必要があることを示しており、冷房能力を向上させるために、冷媒の循環量を増加させ、熱交換器11の出口側の過熱度を減少させて有効面積を増加させるべく、室内膨張弁16の開度を大きくする。RLがRLth以上である場合、発生冷房能力に比較して空調負荷が相対的に大きくなったことを示しており、空調負荷が大きくなったのに、冷媒の循環量が少なく、有効面積も小さいままであると、非効率な運転となることから、室内膨張弁16の開度を大きくし、冷媒の循環量を増加させる。
【0041】
室内膨張弁16の開度を大きくした後は、ステップ201へ戻り、制御を継続する。この場合も、空気調和システムの運転を停止した場合、制御を終了する。
【0042】
図5に示した制御は、室内膨張弁16の開度を小さく、または大きくする制御であったが、一度に開度を大きく変化させると、室温に変動が生じる。また、空調負荷によっては室内膨張弁16の開度を変更せず、維持したほうが室温の変動が小さい場合もある。室温に変動が生じ、その変動が大きいと、快適性が損なわれるからである。そこで、室内膨張弁16の開度を調整し、維持することができる制御について、図6を参照して説明する。
【0043】
図6は、室内膨張弁16の開度制御の第3の例を示したフローチャートである。図6に示すステップ301、302については、図5に示したステップ201、202と同様であるため、その説明については省略する。
【0044】
ステップ302でRLがRLthより小さいと判定された場合、ステップ303へ進み、所定時間における室温の変化量dTinが、予め設定された開度減少開始変化量dTdecより小さいか否かを判定する。dTdecは、室内膨張弁16の開度の減少を開始させる基準となる室温の変化量である。なお、室温の変化量dTinは、所定時間における室温センサ13の検出値の変化量として算出することができる。
【0045】
ステップ303でdTinがdTdecより小さいと判定された場合は、室温が急激に下がっているので、冷房能力を低下させる必要があることから、ステップ304へ進み、室温の変化量dTinに応じて、室内膨張弁16の開度の変化量を演算し、その変化量に応じて室内膨張弁16の開度を減少させる。そして、ステップ301へ戻り、制御を継続する。
【0046】
ステップ303でdTinが、dTdec以上と判定された場合、ステップ305へ進み、室温Tinと設定温度Tsetとの温度差が、予め設定された開度減少開始温度差ΔTdecより小さいか否かを判定する。ΔTdecは、室内膨張弁16の開度の減少を開始させる基準となる室温と設定温度との温度差である。温度差がΔTdecより小さいと判定された場合、室温の変化量としてはdTdecより大きいが、室温が低いため冷房能力を低下させる必要があることから、ステップ304へ進み、室内膨張弁16の開度を減少させる。そして、ステップ301へ戻り、制御を継続する。
【0047】
一方、ステップ305で温度差がΔTdec以上と判定された場合、室温が下がっていないと判断でき、室内膨張弁16の開度を減少する制御を行うと、発生能力を小さくしすぎて室温が上昇する可能性がある。このため、ステップ306へ進み、室内膨張弁16の開度を現在の開度に維持する。そして、ステップ301へ戻り、制御を継続する。
【0048】
ステップ301でFがF以上と判定された場合、またはステップ302でRLがRLth以上と判定された場合、ステップ307へ進み、dTinが、予め設定された開度増加開始変化量dTincより大きいか否かを判定する。dTincは、室内膨張弁16の開度の増加を開始させる基準となる室温の変化量である。dTinがdTincより大きい場合、外気温の上昇等により室温が大きく変化していることを示すため、室内膨張弁16の開度を増加して冷媒の流量を増加させる必要がある。このため、dTinがdTincより大きいと判定された場合、ステップ308へ進み、室温センサ13の検出値の変化量に応じて、室内膨張弁16の開度の変化量を演算し、室内膨張弁16の開度を増加させる。
【0049】
ステップ307でdTinがdTinc以下と判定された場合、ステップ309へ進み、室温Tinと設定温度Tsetとの温度差が、予め設定された開度増加開始温度差ΔTincより大きいか否かを判定する。ΔTincは、室内膨張弁16の開度の増加を開始させる基準となる室温と設定温度との温度差である。温度差がΔTincより大きい場合、室内膨張弁16の開度を増加して冷媒の流量を増加させる必要があるため、ステップ308へ進む。一方、温度差がΔTinc以下である場合に室内膨張弁16の開度を増加する制御を行うと、室温が上がっていないのに冷房能力を高め、室温を低下させる可能性がある。このため、ステップ310へ進み、室内膨張弁16の開度を現在の開度に維持する。そして、ステップ301へ戻り、制御を継続する。
【0050】
このようにして、室内膨張弁16の開度を調整し、維持する制御を行うことで、室温をより安定させることができる。この場合も、空気調和システムの運転を停止した場合、制御を終了する。
【0051】
図6に示した制御は、室内膨張弁16の開度を調整し、維持する制御であったが、配管温度センサ14、15の検出値を使用することで、室内熱交換器出口側の冷媒過熱度を目標値とする制御が可能となる。そこで、配管温度センサ14、15の検出値を用いた制御について、図7を参照して説明する。
【0052】
図7は、室内膨張弁16の開度制御の第4の例を示したフローチャートである。この場合も、図5に示した処理とは異なる部分についてのみ説明する。ステップ403では、dTinが過熱度増加開始変化量dTincより小さいか否かを判定する。図6に示した例では、dTincが開度増加開始変化量であったが、この例では過熱度増加開始変化量とされている。同様に、この例ではdTdecが過熱度減少開始変化量とされ、ΔTincが過熱度増加開始温度差、ΔTdecが過熱度増加開始温度差とされている。
【0053】
dTincは、過熱度の増加を開始させる基準となる室温の変化量であり、dTdesは、過熱度の減少を開始させる基準となる室温の変化量である。ΔTincは、過熱度の増加を開始させる基準となる室温と設定温度との温度差であり、ΔTdecは、過熱度の減少を開始させる基準となる室温と設定温度との温度差である。
【0054】
ステップ404では、室温センサ13の検出値と、所定時間における室温センサ13の検出値の変化量とに基づき、熱交換器11の冷媒の出口側の目標過熱度を演算する。この場合、冷媒の流量を減少させ、過熱度を付与して有効面積を減少させることにより、冷房能力を低下させるため、過熱度が増加する。
【0055】
ステップ405では、室内熱交換器出口側の冷媒過熱度がステップ404で求めた目標過熱度となるような室内膨張弁16の開度の変化量を演算し、室内膨張弁16の開度を制御する。ここでは、室内膨張弁16の開度を減少させる。そして、ステップ401へ戻り、制御を継続する。
【0056】
ステップ406でTinとTsetとの温度差がΔTdec以下と判定された場合、ステップ407へ進み、ステップ404と同様にして、目標過熱度を演算するが、冷房能力を低下させないため、過熱度を現在の過熱度に維持し、ステップ408では、室内膨張弁16の開度を現在の開度に維持する。そして、ステップ401へ戻り、制御を継続する。
【0057】
ステップ409でdTinがdTincより大きいと判定された場合、ステップ410へ進み、ステップ404と同様、目標過熱度を演算する。この場合、冷媒の流量を増加させ、過熱度を減じて有効面積を増加させることにより、冷房能力を向上させるため、過熱度が減少する。
【0058】
ステップ411では、ステップ405と同様にして、室内熱交換器出口側の冷媒過熱度がステップ410で求めた目標過熱度となるような室内膨張弁16の開度の変化量を演算し、室内膨張弁16の開度を制御する。この場合、室内膨張弁16の開度を増加させる。そして、ステップ401へ戻り、制御を継続する。
【0059】
ステップ412でTinとTsetとの温度差がΔTincより大きいと判定された場合、ステップ413へ進み、ステップ404と同様にして、目標過熱度を演算するが、冷房能力を増加させないため、過熱度を現在の過熱度に維持し、ステップ414では、室内膨張弁16の開度を現在の開度に維持する。そして、ステップ401へ戻り、制御を継続する。この場合も、空気調和システムの運転を停止した場合、制御を終了する。
【0060】
これまで、室内膨張弁16の開度制御を、室外機20が備える制御装置26により実施することを説明してきたが、室内膨張弁16の開度制御は、制御装置26により実施することに限定されるものではない。例えば、室内機10が備える制御装置で実施してもよいし、室内機10や室外機20とは別に設けられた集中制御装置等で実施してもよい。
【0061】
空気調和システムは、室内機10と室外機20が1台ずつで構成されるものに限定されるものではない。したがって、1台の室外機20に複数の室内機10が接続されたシステムや、複数の室外機20と複数の室内機10とを接続したシステムであってもよい。図8は、1台の室外機20に複数の室内機10が接続されたシステムの例を示している。図8に示す例では、3台の室内機10a〜10cと室外機20とが接続されている。
【0062】
各室内機10a〜10cは、各室内に設置され、各室内の室温を設定温度になるように調整する。各室内機10a〜10cは、それぞれ室内膨張弁16a〜16cを備えるため、室内ごとに冷房能力を調整することができる。このため、室内ごとに空調負荷が異なる場合でも、断続運転を回避しつつ、各室内の室温を安定させることができる。
【0063】
断続運転を回避し、連続運転を実現することにより、消費電力を低減させることもでき、また、起動、停止の回数を減少させることができるので機器の効率を向上させることができ、故障等も減少するので、信頼性を向上させることもできる。また、室温を安定させることができるため、快適性を維持することができる。
【0064】
これまで本発明の室内機、空気調和システムおよび制御方法について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
10、10a〜10c…室内機
11、11a〜11c…熱交換器
12、12a〜12c…ファン
13、13a〜13c…室温センサ
14、14a〜14c、15、15a〜15c…配管温度センサ
16、16a〜16c…室内膨張弁
20…室外機
21…圧縮機
22…熱交換器
23…ファン
24…室外膨張弁
25…四方弁
26…制御装置
27…周波数センサ
30、31…配管
40…CPU
41…フラッシュメモリ
42…RAM
43…通信I/F
44…制御I/F
45…バス
【要約】
断続運転を抑制し、快適性を維持することができるシステムや方法を提供する。空気調和システムは、室内機と、室外機とを含み、室内機が、熱交換器と、室内の温度を検出する室内温度検出手段と、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁とを含み、室外機が、熱交換器と、圧縮機と、圧縮機の運転周波数を検出する周波数検出手段と、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整するための弁とを含み、さらに、室内温度検出手段により検出された室内の温度と、所定時間における該室内の温度の変化量と、周波数検出手段により検出された運転周波数とに応じて、室内機の弁の開度を制御する制御手段を含む。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8