(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1から
図7を参照して、本発明の第1実施形態に係る排気ガス処理装置10について説明する。
図1は、第1実施形態に係る排気ガス処理装置10を示す側面図である。
図2は、排気ガス処理装置10の背面図である。
図3は、排気ガス処理装置10の
図1におけるIII−III線に沿う断面図である。
図4は、排気ガス処理装置10の
図1におけるIV−IV線に沿う断面図である。
図5は、排気ガス処理装置10の
図2におけるV−V線に沿う断面図である。
図6は、排気ガス処理装置10の
図1におけるVI−VI線に沿う断面図である。
図7は、排気ガス処理装置10のケース30内における排気ガスGの流れを示す部分斜視図である。
【0011】
排気ガス処理装置10は、例えば、車両に搭載され、エンジン(図示せず)から排出される排気ガスGを処理するものであり、下記実施形態では、小型で優れた排気ガス浄化性能を有する触媒コンバータとしての構造例を示す。具体的には、排気ガス処理装置10は、排気ガスGに含まれる炭化水素や一酸化炭素を酸化して、二酸化炭素と水分にするとともに、窒素酸化物の還元、微小粒子状物質の除去を行い、排気ガスGを浄化する。
【0012】
図1から
図5に示すように、排気ガス処理装置10は、排気タービン(図示せず)の排気出口部に接続される入口側フランジ11と排気ガスGを外部へ導く排気管(図示せず)に接続される出口側フランジ39とを有するケース30と、ケース30内に設けられ排気ガスGを浄化する第1触媒担体としてのTWC(三元触媒)12と、ケース30内のTWC12の下流側に設けられ、TWC12を通過した排気ガスGを浄化する第2触媒担体としてのGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルタ)14と、TWC12を通過した排気ガスGの酸素濃度を測定するためのセンサとしての空燃比センサ40と、を備える。
【0013】
ケース30は、入口側フランジ11が取り付けられるディフューザ部25と、内部にTWC12を収容する入口側筒部31と、入口側筒部31に接合され内部にGPF14を収容する中間筒部37と、一端が中間筒部37に接合され、他端に排気側管路(図示せず)に接続するための出口側フランジ39が設けられた出口側筒部38と、を有する。
【0014】
図4及び
図5に示すように、ディフューザ部25は、下流に向かって徐々に径が拡大する円錐面状のディフューザ板26によって形成される。ディフューザ板26の上流側開口部26aの外周面には、溶接等によって入口側フランジ11が取り付けられる。ディフューザ板26の下流側開口部26bは、溶接などによって入口側筒部31の入口側開口部31aの内周面に取り付けられる。
【0015】
図5に示すように、入口側筒部31は、排気ガスGが流入する入口側開口部31aと、排気ガスGが流出する出口側開口部31bと、を有する。入口側筒部31は、入口側筒部31を通過する排気ガスGの流れを所定角度(例えば、90°)屈曲させるように、つまり、略L字型の流路を形成するように構成される。入口側筒部31は、排気ガスGの流れ方向に沿って対称に形成された2つの金属製板状部材を溶接などによって接合することで形成される(
図2から
図4参照)。
【0016】
図6に示すように、中間筒部37は、金属製板状部材によって楕円筒形状に形成される。
図5に示すように、中間筒部37の入口側開口部37aの外周面は、入口側筒部31の出口側開口部31bの内周面に溶接などによって接合される。また、中間筒部37の出口側開口部37bの外周面は、出口側筒部38の入口側開口部38aの内周面に溶接などによって接合される。
【0017】
TWC12は、例えば、円柱状のハニカム構造体によって構成される。TWC12は、その外周面12aが緩衝材13を介して金属製で筒状のインナケース20に嵌合される。TWC12は、インナケース20内に軸方向の全体にわたって収容される。
【0018】
インナケース20は、上流側開口部20bがディフューザ板26における下流側開口部26bの内周に挿入される。インナケース20は、ディフューザ板26の内周面に溶接などによって接合されることにより、ケース30に対して固定される。このとき、インナケース20は、インナケース20の外周面20aと入口側筒部31との間に所定の間隔Wの隙間が設けられるようにして、ケース30内に設けられる。この隙間は、排気ガスGが流れる外周流路35を形成する。また、
図3に示すように、インナケース20の外周面20aと入口側筒部31との間には、インナケース20のガタつきを防止する複数のスペーサ34が設けられる。
【0019】
このように、インナケース20の上流側開口部20bがディフューザ板26の下流側開口部26bに接合されることで、入口側フランジ11の排気入口11aから流入した排気ガスGの全量をTWC12に導くことができる。
【0020】
GPF14は、例えば、微小粒子状物質を除去する楕円柱状のセラミックフィルタによって構成される(
図4及び
図6参照)。GPF14は、その外周面14aが緩衝材15を介して中間筒部37の内周面に嵌合されることによって、中間筒部37内に固定される。これにより、TWC12とGPF14とは、側面視で所謂T字型に配置されることとなる。
【0021】
また、GPF14の流路断面積は、TWC12の流路断面積よりも大きくなるように形成される。このとき、
図4に示すように、GPF14は、長径がTWC12の軸線方向に位置するようにして中間筒部37内に設けられる。このように配置することにより、例えば、排気ガス処理装置10の幅方向(
図4における上下方向)にスペースが確保できない場合にも、GPF14の流路断面積を確保することができる。
【0022】
出口側筒部38は、GPF14を通過した排気ガスGを、排気ガスGを外部へ排出する排気管(図示せず)に導くものである。出口側筒部38は、排気ガスGの流れ方向に沿って対称に形成された2つの金属製板状部材を溶接などによって接合することで形成される。
【0023】
空燃比センサ40は、棒状部材を有しており、その先端には、排気ガスGを計測する計測部41が設けられる。空燃比センサ40の本体部分は、TWC12とGPF14との間の流路上に計測部41が位置するようにして、入口側筒部31に設けられる平面部31dにケース30の外部から取り付けられる。空燃比センサ40の詳細な取付位置については、後で詳しく説明する。
【0024】
続いて、入口側筒部31のより詳細な構成について説明する。なお、以下では、排気ガスGがTWC12を通過する方向、即ち、TWC12の軸方向を「第1方向P」といい、排気ガスGがGPF14を通過する方向、即ち、GPF14の軸方向を「第2方向Q」という(
図5参照)。なお、本実施形態では、第1方向Pと第2方向Qとが直交する場合を例にしているが、必ずしも直交している必要はなく、第1方向Pと第2方向Qとが交差していればよい。
【0025】
入口側筒部31は、TWC12を通過した排気ガスGを受ける入口側筒部31の内壁面31cに設けられるとともに、TWC12を通過した排気ガスGの一部をGPF14に導くように分岐させる分岐部33と、分岐部33によって分岐した残りの排気ガスGを外周流路35に導くガイド部32と、をさらに備える。
【0026】
分岐部33は、入口側筒部31内における排気ガスGの流れ方向外側の管壁の一部が内径方向に突出した形状に形成される。分岐部33の頂部33aがなす角度αは、70°〜120°程度であることが望ましい。角度αが70°未満であると、入口側筒部31の加工が難しくなる。一方、角度αが120°よりも大きいと、外周流路35に導かれる排気ガスGの流量を充分に確保できないおそれがある。
【0027】
図5に示すように、ガイド部32は、第1方向Pと直交する平面Xに対して、分岐部33から第1方向Pにおける下流側に所定角度θで傾斜する傾斜部32aと、傾斜部32aを通過した排気ガスGを外周流路35に導く湾曲部32bと、を有する。
【0028】
傾斜部32aは、略平面状に形成され、傾斜部32aを含む平面Yと平面Xとがなす所定角度θが3°〜20°の間になるように形成される。所定角度θがこのような角度に設定されることにより、分岐部33によって分岐した排気ガスGを緩やかに湾曲部32bに導き、ケース30の内壁面31cに沿わせながら外周流路35に導くことができる。よって、TWC12を通過して分岐部33に向かう排気ガスGの流れを妨げずに、排気ガスGをスムーズに外周流路35に導くことができる。
【0029】
また、第1方向P及び第2方向Qに対して直交する方向(
図4参照、以下では、「第3方向R」ともいう。)からTWC12及びGPF14を見たときに(
図5に示す状態)、第1方向PにおけるTWC12の両端は、第1方向PにおけるGPF14の両端の間に位置している(
図4及び
図5参照)。これにより、TWC12がGPF14から第1方向Pの外側に突出しないので、排気ガス処理装置10を小型化することが可能である。
【0030】
次に、排気ガス処理装置10における排気ガスGの流れについて説明する。
【0031】
図5に示すように、入口側フランジ11の排気入口11aから流入した排気ガスGは、ディフューザ部25を通ってTWC12に導かれる。TWC12内に流入した排気ガスGは、含まれる炭化水素や一酸化炭素が酸化され二酸化炭素と水分に分解されるとともに、窒素酸化物が還元される。
【0032】
TWC12を通過した排気ガスGは、入口側筒部31の内壁面31cに形成された分岐部33によって、GPF14の上流側端面14bに直接向かう流れと、ガイド部32を通って外周流路35に向かう流れと、に分けられる。
【0033】
GPF14の上流側端面14bに直接向かう流れは、排気ガスGの主流を形成し、分岐部33によって略90°向きが変えられて、外周流路35へ回り込むことなく、直接GPF14の上流側端面14bに流れ込む。
【0034】
ガイド部32を通って外周流路35に流入した排気ガスGは、インナケース20の外周面20aに沿ってGPF14の上流側端面14bに向かって流れる(
図7参照)。このとき、外周流路35を流れる排気ガスGは、インナケース20を通じてTWC12を外周から加熱する。このように外周流路35に排気ガスGを導くことにより、エンジン始動直後に、TWC12の温度を短時間で上昇させることができるので、TWC12の活性化を図ることができる。特に、TWC12の温度が上昇しくい第1方向下流側部分(下流側端面12c側)を外周から加熱できるので、TWC12の活性化のための時間を短くすることができる。
【0035】
TWC12は、ケース30内に設けられ外周流路35を挟んで入口側筒部31と対向するインナケース20内に第1方向Pの全体にわたって収容される。このように、TWC12が全体にわたってインナケース20内に設けられることで、外周流路35を流れる排気ガスGは、TWC12内に入って行かずにTWC12を外周から加熱する。これにより、TWC12の保温効果が得られ、触媒の浄化性能を高めることができる。また、このようなケース30とインナケース20で構成される二重管構造により、ケース30の外部への熱逃げを有効に防止するとともに、インナケース20によってTWC12を覆うことで外周流路35を流れる排気ガスGがTWC12内へ入っていかないため、外周流路35からGPF14へ向かう排気ガスGの流路抵抗を小さくできるという効果もある。また、外周流路35を流れる排気ガスGがTWC12内に入って行かないので、TWC12内を第1方向Pへ流れる排気ガスGの流れを妨げることが防止される。さらに、TWC12が全体にわたってインナケース20内に設けられることで、TWC12に流入した排気ガスGがTWC12の全域を通過することになるので、排気ガスGをより浄化することができる。これにより、TWC12の全長を短くすることができる。
【0036】
以上のようにして、外周流路35を通過した排気ガスGは、入口側筒部31内のインナケース20の外周面20aとGPF14の上流側端面14bとの間の空間16において、分岐部33によって分岐されたGPF14の上流側端面14bに直接向かう流れと合流し、GPF14内に流入する。
【0037】
GPF14内に流入した排気ガスGは、微小粒子状物質が除去され、出口側筒部38を通じて排気管に排出される。
【0038】
次に、
図8から
図11を参照して、変形例に係る排気ガス処理装置10’について説明する。
図8は、排気ガス処理装置10’の正面図である。
図9は、
図8におけるIX−IX線に沿う断面図である。
図10は、排気ガス処理装置10’の側面図であり、
図11は、
図10におけるXI−XI線に沿う断面図である。
【0039】
図8から
図11に示す変形例は、GPF14’を円柱形状とした構成である。この変形例では、
図9及び
図10に示すように、TWC12の軸線方向(第1方向P)におけるGPF14’及び中間筒部37’の長さが短くなるので、その分、排気ガス処理装置10’を小型化することができる。このように、GPF14’を円柱形状としてもGPF14’の流路断面積を確保できるのであれば、このような構成とすることにより、排気ガス処理装置10’を小型化することができる。
【0040】
次に、
図12を参照して、他の変形例に係る排気ガス処理装置110について説明する。
図12は、他の変形例に係る排気ガス処理装置10の側面の断面図である。
【0041】
図12に示す変形例は、第1方向Pと第2方向Qとがなす角が鋭角とされた排気ガス処理装置110である。
図12に示す変形例では、GPF14及び中間筒部37をTWC12の軸線方向(第1方向P)におけるTWC12の中心側に配置することができる。これにより、TWC12の軸線方向(第1方向P)の長さが短くなるので、その分、排気ガス処理装置10を小型化することができる。
【0042】
次に、
図13及び
図14を参照して、空燃比センサ40の詳細な取付位置について説明する。
【0043】
本実施形態の排気ガス処理装置10では、ケース30に取り付けられる空燃比センサ40は、TWC12とGPF14との間の流路上であって、ケース30の内壁面31cの形状に沿って排気ガスGの流速が高い領域を形成し、その排気ガスGの流速が他と比べて速くなった位置に、空燃比センサ40が有する計測部41が位置するようにしている。
【0044】
ここで、
図13を参照して、空燃比センサ40のより具体的な取付位置について説明する。
図13は、排気ガス処理装置10のTWC12からGPF14へ向かう排気ガスGの流れについてのシミュレーションを行った結果である。
図13は、流速の分布を示している。また、
図14は、排気ガス処理装置10,10’,110それぞれにおける分岐部33のあり、なしの場合におけるTWC12からGPF14へ向かう排気ガスGの流れについてのシミュレーションを行った結果の一覧である。
【0045】
図13における太線で囲んだ部分(領域A)における色の濃い部分、及びその周辺の白い部分は、特に流速が速くなっている部分である。この第2領域としての領域Aは、分岐部33より下流側であって、分岐部33の第1方向Pに最も突出する頂部33aの接線方向Dに沿って延在する。
【0046】
そこで、排気ガス処理装置10では、空燃比センサ40の計測部41が領域Aに位置するようにして入口側筒部31に取り付けられる。これにより、空燃比センサ40によって、TWC12を通過した排気ガスGの酸素濃度を高精度に測定することができる。このような空燃比センサ40は、上述した計測部41が領域Aに位置するようにすれば、ケース30に対してどのような角度で挿入固定されてもよい。なお、空燃比センサ40をTWC12に向かって傾けて配置してもよいし、GPF14に向かって傾けて配置してもよい。ただし、空燃比センサ40が排気ガスGの流れ方向に沿うように配置されるのが好ましく、上記計測部41に水滴等が付着しないように計測部41を重力方向下側にむけて配置するのが好ましい。
図5などに示す構成において第2方向Qを天地方向としたときには、計測部41をGPF14に向けて配置するのが好ましい。
【0047】
なお、スペース上の制約や、入口側筒部31に空燃比センサ40を取り付けるための平面部31dを設けるスペースが確保できない場合(例えば、入口側筒部31を製作する際にできる接合部31e付近や、入口側筒部31の曲面部付近の場合)には、排気ガスGの流速が比較的高い第1領域としての領域A1(
図13及び
図14に太い点線で示す領域)に空燃比センサ40の計測部41が位置するように、入口側筒部31に空燃比センサ40を取り付けてもよい。つまり、空燃比センサ40の計測部41は、TWC12とGPF14の間の空間内であって排気ガスGの流速が最も遅い領域を外して、排気ガスGの流速が高い領域に配置するのが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、空燃比センサ40の本体部分の固定位置や実装スペース等の制約を考慮し、センサ感度を確保できる程度の領域(例えば、最も流速が高い領域に近い周辺領域など)に空燃比センサ40の計測部41を配置することも可能である。
【0048】
領域A1は、TWC12の下流側端面12cと、GPF14の上流側端面14bと、入口側筒部31におけるTWC12を通過した排気ガスGを受ける内壁面31c、とによって囲われる領域であって、TWC12の中央よりもGPF14側に設定される。なお、TWC12の中央とは、第3方向RにおけるTWC12の中心線Oを含む平面の領域をいう。領域A1では、TWC12からGPF14へ向かう排気ガスGの流れが主流を構成するので、排気ガスGの流速が比較的高くなる。よって、計測部41が領域A1に位置するようにして入口側筒部31に空燃比センサ40を取り付けることで、TWC12を通過した排気ガスGの酸素濃度を正確に測定することができる。なお、ここでいう領域A1は、本実施形態では、TWC12の下流側端面12cと、GPF14の上流側端面14bと、排気ガスGを受ける内壁面31c(TWC12の下流側端面12cに対向するケース30の内壁面)とで実質的に取り囲まれ、TWC12を通過した排気ガスGがGPF14側に向かって流れる排気ガスGの流路(空間)であり、より具体的には、TWC12の下流側端面12cのうちGPF14側の下端面とケース30の内壁面31cとの間に挟まれた空間からTWC12の下流側端面12cの面方向に沿ってGPF14の上流側端面14b側に延びる流路である。また、ケース30の内壁面31cとは、TWC12の下流側端面12cに対向する壁面であり、これにGPF14側に達するまで伸びる壁面を含めてもよいし、当該壁面は、例えば、平坦面だけで構成されてもよいし、平坦面及び変形した面とで構成されてもよい。
【0049】
また、接合部31eを避けた位置にはボスを形成しやすいので、空燃比センサ40をこのような位置に取り付けてもよい。
【0050】
図15A及び
図15Bを参照して、空燃比センサ40のさらに具体的な取付位置について説明する。
【0051】
図15A及び
図15Bは、
図1のXV−XV線に沿う断面での排気ガスGの流れについてのシミュレーションを行った結果である。なお、
図15A及び
図15Bにおけるケース1、ケース2、及びケース3は、順にエンジン回転速度が、低回転、中回転、及び高回転としてシミュレーションを行った結果である。また、
図15Aは、空燃比センサ40が
図4に示す位置に取り付けられている場合であり、
図15Bは、空燃比センサ40が接合部31eを挟んで
図4に示す位置とは反対側に取り付けられた場合のシミュレーション結果である。
【0052】
図15A及び
図15Bから明らかなように、入口側筒部31の第3方向Rにおける中心位置から外れていても、排気ガスGの流速が比較的高い領域、つまり、領域A1が存在する。そのため、例えば、接合部31eの存在などにより、空燃比センサ40を入口側筒部31の第3方向Rにおける中心に取り付けることができない場合であっても、計測部41が領域A1に位置するようにして入口側筒部31に空燃比センサ40を取り付けることで、TWC12を通過した排気ガスGの酸素濃度を高精度に測定することができる。
【0053】
以上の第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0054】
本実施形態の排気ガス処理装置10では、排気ガスGの浄化性能を高めるため2つの触媒(具体的にはTWC12、GPF14)を互いが重なるように配置して小型化を図りつつ、更に、TWC12を通過した排気ガスGをケース30の内壁面に衝突させながらGPF14側に流れる排気ガスGの主流の速度(流速)を高め、そのTWC12とGPF14との間の排気ガスGの流速が高い領域Aまたは領域A1に空燃比センサ40の計測部41が位置するように空燃比センサ40を設置しているので、排気ガスGを測定する空燃比センサ40が高精度に数値を検出できる小型で優れた排気ガス浄化性能を有する排気ガス処理装置を実現することができる。
【0055】
また、排気ガス処理装置10では、第1方向P及び第2方向Qに対して直交する方向からTWC12及びGPF14を見たときに、第1方向PにおけるTWC12の両端は、第1方向PにおけるGPF14の両端の間に位置している。これにより、TWC12がGPF14から第1方向Pの外側に突出しないので、排気ガス処理装置10の小型化が可能である。また、TWC12の第1方向Pの上流側に加熱ヒータ(または加熱ヒータ付き触媒)を設ける場合にも、第1方向Pへの加熱ヒータ(または加熱ヒータ付き触媒)の突出量を小さくすることができる。すなわち、本実施形態では、TWC12の上流側に排気ガスGを加熱するヒータを更に備えた排気ガス処理装置10としてもよく、このような構成によれば、排気ガスGを媒体としてTWC12を加熱することが可能となり、エンジン始動時などの状況において優れた排気ガス浄化性能を発揮する排気ガス処理装置となる。なお、TWC12がGPF14から第1方向Pに重なるように配置されることで、TWC12がGPF14から少し突出した構成としても、全体として小型で優れた排気ガス浄化性能を有する排気ガス処理装置を実現できる。
【0056】
(第2実施形態)
図16を参照して、本発明の第2実施形態に係る排気ガス処理装置210について説明する。
図16は、排気ガス処理装置210の側面の断面図であり、
図2におけるV−V線に沿う断面に相当する図である。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態の排気ガス処理装置10と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。なお、
図16では、入口側フランジ11、ディフューザ部25、及び出口側筒部38の図示を省略している。
【0057】
第2実施形態は、EHC(電熱触媒)250を備えている点が異なっている点で、上記第1実施形態と相違する。具体的には、排気ガス処理装置210は、排気ガスGを浄化するTWC212の上流側に排気ガスGを浄化するEHC250をさらに備える。また、排気ガス処理装置210では、分岐部233の近傍に平面部231dを設け、この平面部231dに空燃比センサ40を取り付けている。これにより、ケース30内で水滴等が空燃比センサ40の計測部41に付着することを有効に防止できる。
【0058】
EHC250は、電極252a、252bを有するヒータ部251と、ヒータ部251及び電極252a、252bを支持するハニカム構造体からなる電極支持体253と、を備える。
【0059】
ヒータ部251は、電極252a、252bに印加された電流によって発熱する、例えば、渦巻き形状のヒータである。ヒータ部251は、インナケース20の外周面20aに溶接によって固定された延長筒部236に電極252a、252bを溶接することによって延長筒部236内に保持される。
【0060】
電極支持体253は、その外周面253aが緩衝材215を介して、TWC12の上流側に位置するようにしてインナケース20内に保持される。
【0061】
ヒータ部251と電極支持体253との間には、ヒータ部251と電極支持体253との間隔を維持するとともに、ヒータ部251及び電極252a、252bを保持するための複数のピン254が設けられる。複数のピン254は、ヒータ部251及び電極支持体253のそれぞれに差し込まれるようにして、ヒータ部251と電極支持体253との間に設けられる。
【0062】
排気ガス処理装置210では、エンジンの始動時のコールド始動時(冷態始動時)に、ヒータ部251に電極252a、252bを通じて電流を流すことで、延長筒部236内を流れる排気ガスGの温度が200℃〜300℃になるまで加熱し、この加熱された排気ガスGによりTWC212を加熱する。これにより、TWC212の触媒成分を短い時間で活性化温度にすることができる。このように、排気ガス処理装置210では、短時間でTWC212の触媒成分の活性化を図ることができるので、エンジンの始動時における浄化性能を向上させることができる。
【0063】
なお、
図16に示すように、排気ガス処理装置210では、第3方向RからTWC212及びGPF14を見たときに、第1方向PにおけるTWC212の両端が、第1方向PにおけるGPF14の両端の間に位置するように形成している。これにより、排気ガス処理装置210を設けるスペースが限られている場合であっても、EHC250を設けるスペースを確保できる。言い換えると、上記構成を採用することにより、排気ガス処理装置210の大型化を抑制できる。
【0064】
上記実施形態では、ヒータ部251を1つ設けた構成を例に説明したが、排気ガス処理装置210では、ヒータ部251を複数設けてもよい。
【0065】
以上の第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0066】
排気ガス処理装置210では、EHC250を備えているので、短時間でTWC212の触媒成分の活性化を図ることができる。これにより、エンジンの始動時における浄化性能を向上させることができる。
【0067】
排気ガス処理装置210では、第3方向RからTWC212及びGPF14を見たときに、第1方向PにおけるTWC212の両端が、第1方向PにおけるGPF14の両端の間に位置するように形成している。これにより、排気ガス処理装置210を設けるスペースが限られている場合であっても、EHC250を設けるスペースを確保できる。なお、排気ガス処理装置210を設置するスペースの制約がある場合等には、EHC250を設けなくてもよい。例えば、TWC212またはGPF14の外周面に金属層を設け、外部からの通電によりTWC212またはGPF14を直接加熱する構成としてもよい。これにより、EHC250を設けるスペースを省きつつ、TWC212またはGPF14の加熱により短時間で触媒成分の活性化を実現することができる。なお、このような場合には、TWC212またはGPF14については、例えば、導電性を有するハニカム担体とし、その材料は導電性が付与(電流路が形成)されていれば金属製でもセラミックス製でもよい。
【0068】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0069】
排気ガス処理装置10,10’,110,210は、第1方向Pに沿って流れる排気ガスGを浄化する第1触媒担体(TWC12)と、第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGであって第1方向Pと交差する第2方向Qに沿って流れる排気ガスGを浄化する第2触媒担体(GPF14)と、第1触媒担体(TWC12)と第2触媒担体(GPF14)とを収容するケース30と、排気ガスGを計測する計測部41を有し第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGを測定するためのセンサ(空燃比センサ40)と、を備える。センサ(空燃比センサ40)が有する計測部41は、第1触媒担体(TWC12)の下流側端面12cと第2触媒担体(GPF14)の上流側端面14bとケース30における第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGを受ける内壁面31cとによって囲われる領域であって第1触媒担体(TWC12)の中央よりも第2触媒担体(GPF14)側の領域(領域A1)に配置される。
【0070】
この構成によれば、第1触媒担体(TWC12)の下流側端面12cと第2触媒担体(GPF14)の上流側端面14bとケース30の内壁面31cとによって囲われる領域であって第1触媒担体(TWC12)の中央よりも第2触媒担体(GPF14)側の領域(領域A1)にセンサ(空燃比センサ40)の計測部41が位置する。この領域(領域A1)では、第1触媒担体(TWC12)から第2触媒担体(GPF14)へ向かう排気ガスGの流れの主流を構成するので、排気ガスGの流速が比較的高くなる。したがって、第1触媒担体(TWC12)を流れる排気ガスGの流れ方向と第2触媒担体(GPF14)を流れる排気ガスGの流れ方向とが交差する場合に、排気ガスGを測定するセンサ(空燃比センサ40)による高精度な数値の検出が可能となる。よって、複数の触媒を実装しつつ排気ガス成分を高精度に測定できる小型の排気ガス処理装置10,10’,110,210を提供できる。
【0071】
また、例えば、エンジンの気筒数やターボチャージャー装着などの構成、あるいはエンジンの駆動状態等によって排気ガス処理装置10に流入する排気ガスGの流入条件が変化する場合でも、上述した第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGをケース30の内壁面31cに衝突させつつ第2触媒担体(GPF14)側へ流れる排気ガス流路(主流であって流速が他と比べて相対的に高い流路)を構成したことで、センサ(空燃比センサ40)による排気ガスGの計測を高精度に且つ安定的に行うことができる。すなわち、様々なエンジン仕様やエンジン駆動の状況変化に対して適応可能な排気ガス処理装置10を実現できる。
【0072】
また、ケース30は、第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGを分岐させて一部を第2触媒担体(GPF14)に導くように分岐させる分岐部33を有し、計測部41は、分岐部33によって分岐して第2触媒担体(GPF14)に導かれる排気ガスGの流速が速くなる領域(領域A)に配置される。
【0073】
また、ケース30は、内壁面31cに設けられるとともに、第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGの一部を第2触媒担体(GPF14)に導くように分岐させる分岐部33を有する。計測部41は、分岐部33における第1方向Pに最も突出する頂部33aの接線方向Dであって分岐部33によって分岐して第2触媒担体(GPF14)に向かって排気ガスGが流れる領域(領域A)に配置される。
【0074】
これらの構成では、第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGの一部は、ケース30の内壁面31cに形成される分岐部33に衝突し、分岐部33の頂部33aの接線方向Dに方向転換して第2触媒担体(GPF14)に流れる。第2触媒担体(GPF14)に向かって流れる排気ガスGが流れる領域(領域A)では、分岐部33に衝突して方向転換した排気ガスGが導かれるので、領域A1の中でも排気ガスGの流速が高い。よって、領域Aにセンサ(空燃比センサ40)を設置することで、排気ガスGを測定するセンサ(空燃比センサ40)が高精度に数値を検出できるようにすることができる。なお、上述した実施形態では、上述したようにケース30に分岐部33を設けた構成について説明したが、このような分岐部33を設けずに、例えば、ケース30の内壁面31cの形状によって第2触媒担体(GPF14)側へ流れる排気ガスGの流速だけを調整するようにしてもよい。
【0075】
また、センサ(空燃比センサ40)の本体部分は、ケース30に設けられる平面部31dにケース30の外部から取り付けられる。
【0076】
この構成によれば、ケース30に設けられる平面部31dには、曲面部よりもボスを形成しやすいので、センサ(空燃比センサ40)を取り付けるためのボスを容易に形成することができる。
【0077】
また、ケース30は、板状部材が突き合わされ接合されてなる接合部31eを有し、センサ(空燃比センサ40)は、接合部31eを避けた位置に取り付けられる。
【0078】
この構成によれば、板状部材の接合部31eにはボスを形成しにくいので、接合部31eを避けることでセンサ(空燃比センサ40)を取り付けるためのボスを容易に形成することができる。また、ケース30を分割する板状部材の一方のうち接合部31eを避けた部分にセンサ(空燃比センサ40)を配置することで、接合部31eの強度を確保することができる。
【0079】
また、第1方向P及び第2方向Qに対して直交する方向から第1触媒担体(TWC12)及び第2触媒担体(GPF14)を見たときに、第1方向Pにおける第1触媒担体(TWC12)の両端は、第1方向Pにおける第2触媒担体(GPF14)の両端の間に位置している。
【0080】
この構成によれば、第1触媒担体(TWC12)が第2触媒担体(GPF14)から第1方向Pの外側に突出しないので、排気ガス処理装置10の小型化が可能である。また、第1触媒担体(TWC12)の第1方向Pの上流側に加熱ヒータ又は加熱ヒータ付き触媒を設ける場合にも、第1方向Pへの加熱ヒータ又は加熱ヒータ付き触媒の突出量を小さくすることができる。
【0081】
また、ケース30は、第1触媒担体(TWC12)の外周面との間に排気ガスGが流れる外周流路35を形成する筒状部(入口側筒部31)と、内壁面31cに形成され、第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGの一部を前記第2触媒担体(GPF14)に導くように分岐させる分岐部33と、分岐部33によって分岐した残りの排気ガスGを外周流路35に導くガイド部32と、を有する。
【0082】
この構成によれば、分岐部33によって分岐した排気ガスGのうち、第2触媒担体(GPF14)へと導かれない残りの排気ガスGは、外周流路35に導かれ外周流路35を周方向に流れて第2触媒担体(GPF14)へと向かう。このとき、外周流路35に導かれる排気ガスGが、第1触媒担体(TWC12)を外周から加熱する。よって、エンジン始動直後に、第1触媒担体(TWC12)の温度を短時間で上昇させて、第1触媒担体(TWC12)の活性化を図ることができる。特に、第1触媒担体(TWC12)の温度が上昇しくい第1方向P下流側部分を外周から加熱することで、第1触媒担体(TWC12)全体の活性化のための時間を短くすることができる。
【0083】
また、ガイド部32は、第1方向Pと直交する平面Xに対して、分岐部33から第1方向Pにおける下流側に所定角度θで傾斜する傾斜部32aを有する。
【0084】
この構成によれば、ガイド部32は、分岐部33から第1方向Pにおける下流側に傾斜する傾斜部32aを有する。傾斜部32aが設けられることで、分岐部33によって分岐した排気ガスGを緩やかに方向転換させてケース30の内壁面31cに沿わせながら外周流路35に導くことができる。よって、第1触媒担体(TWC12)を通過して分岐部33に向かう排気ガスGの流れを妨げずに、排気ガスGを外周流路35に導くことができる。
【0085】
また、ケース30は、第1触媒担体(TWC12)の外周面12aとの間に排気ガスGが流れる外周流路35を形成する筒状部(入口側筒部31)を有し、第1触媒担体(TWC12)は、ケース30内に設けられ外周流路35を挟んで筒状部(入口側筒部31)と対向するインナケース20内に第1方向Pの全体にわたって収容される。
【0086】
この構成によれば、インナケース20が設けられることで、外周流路35を流れる排気ガスGは、第1触媒担体(TWC12)内に入って行かずに第1触媒担体(TWC12)を外周から加熱する。そのため、外周流路35から第2触媒担体(GPF14)へ向かう排気ガスGの流路抵抗を小さくできる。また、外周流路35を流れる排気ガスGが第1触媒担体(TWC12)内に入って行かないので、第1触媒担体(TWC12)内を第1方向Pへ流れる排気ガスGの流れを妨げることが防止される。なお、上述した実施形態では、ケース30内にインナケース20で覆われた第1触媒担体(TWC12)を配置した二重管構造を採用したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、1つのケース内に、二つの触媒をそのまま配置してもよい。つまり、第1触媒と第2触媒を1つのケース内にレイアウトし、第1触媒を通過した排気ガスGを第2触媒へ導く流路だけを設け、その流路を構成し且つ第1触媒から流出する排気ガスGを受けるケース壁面を部分的に第1触媒から遠ざかるような形状(
図16に示すケース30の形状)とすることで、排気ガスGの流路内において流速の高い領域を作り、その領域にセンサ(空燃比センサ40)の検出点(排気ガスとGの接触点)を設ける構成についても本発明に含まれる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0088】
上記実施形態では、センサとして空燃比センサ40を例に説明したが、センサとして排気ガスGについての数値を測定するための他のセンサを適用してもよい。
【0089】
平面部231dを設ける位置は、空燃比センサ40を取り付けた際に、計測部41が領域A1または領域Aに位置するものであれば、どのような位置であってもよい。