【実施例1】
【0015】
図1は、本発明のシステムの機能を示す説明図である。
破線の枠で囲んだ部分が入出力データ、実線の枠で囲んだ部分が部材割付システム12を制御するコンピュータの演算処理装置の機能ブロックである。
【0016】
図1(a)に示すように、この演算処理装置は、第一の製品引当順割付手段54と第二の製品引当順割付手段66と個体生成手段74と次世代個体生成手段86とを備える。第一の製品引当順割付手段54は、原材料18が一種類のみの場合に動作する。この第一の製品引当順割付手段54は、初期割り付け処理38と原材料分割処理48と続割り付け処理52の繰り返しとを実行し、この製品の引当順を採用した場合の、必要な原材料の枚数20と各原材料への製品14の割り付け方22とを得る。
【0017】
第二の製品引当順割付手段66は、原材料18が複数種類ある場合に動作する。これは、初期割り付け処理38と原材料分割処理48と続割り付け処理52の繰返しとを全ての種類の原材料18について実行し、製品面積当り価格計算処理62と製品面積当り価格比較判定処理64を実行して、この製品の引当順を採用した場合の、種類毎の必要な原材料の枚数20と原材料の価格24の合計と各原材料18への製品14の割り付け方22とを得る。
【0018】
即ち、このシステムは、始めに、m枚の長方形の製品14をk種類の原材料18から切り出すという条件設定をし、割付計算時の製品14の引当順を予め設定して計算を開始する。kは原材料の種類を定めるパラメータである。
【0019】
k=1の場合は原材料は1種類である。この場合には、原材料18を1枚ずつ取り出して製品を割り付ける。予め引当順に配列された各製品は必ず引当順に取り出すものとする。
【0020】
製品の引当順により割付け方が異なってくる。最も原材料費の安い割付け方を見つけるために、様々な製品の引当順を試みる。例えば、建物の壁に使用する防音用の壁材は、一棟分で数十種類の縦横寸法のものが使用される。その引当順の組み合わせの数は膨大な数になる。全ての場合を計算すると計算に長時間を要する。そこで、最適な引当順を選択するために遺伝子工学的手法を採用する。その処理を実行するのが、個体生成手段74と次世代個体生成手段86である。
【0021】
割付け方を決定する手順を
図1(b)と(c)で簡単に説明する。例えば、製品14が3枚あって、1、2、3という識別番号が付されているものとする。
図1(b)に示すように、製品14のコーナー32と対向する2辺をそれぞれ、一方の辺44と他方の辺40と呼ぶことにする。
【0022】
原材料18を一枚取り出して、その原材料のコーナー30と引当順が最初の識別番号を1と表示した製品14のコーナー32とを重ね合わせて、割付可能ならば割り付けをする。
図1(c)に示した要領である。
【0023】
これで、識別番号が1の製品14が割付済み製品36となり、以後の引当対象から除外される。何度も引当順の最初に戻って割付けの可否を判断するからこのように、未割付製品34と割付済み製品36とを区別する。以上が初期割り付け処理38である。
【0024】
次に、ここで、原材料18を、割付済み製品36の一方の辺44を通る直線42で切断して、原材料18を2分割する。さらに、2分割された原材料18のうちの、割付済み製品36の他方の辺40を通る直線46で切断する。これが原材料分割処理48である。
【0025】
その後、続割付処理52を開始する。この続割付処理は下記の処理を繰り返す。上記の処理で、割付済み製品36を含まない2枚の分割された原材料50、51ができる。ここで原材料50のコーナー30と、新たに取り出した引当順が2番目の識別番号を2と表示した未割付製品34のコーナー32とを重ね合わせて、割付可能ならば割り付けをする。割り付けたら、上記新たに取り出した識別番号を2と表示した未割付製品34を割付済み製品36としてから、上記原材料分割処理48と同じ処理を実行する。このとき上記割付済み製品36を含まない2枚の分割された原材料にはもう製品が割り付かないので、原材料51について続割付処理を継続する。
【0026】
分割されたどちらの原材料50と51にも製品が割付可能でなければ、上記新たに取り出した未割付製品34を、上記引当順を保ったまま元に戻す。そして次の未割付製品34を取り出して割付可能かどうかを判断する。即ち、続割付処理52は、割付処理と原材料分割処理とを繰り返す処理であって、分割された原材料にいずれの製品も割り付けできなくなったら続割り付け処理52を終了する。
【0027】
再び、新たな原材料18を1枚取り出す。製品は引当順の最初に戻り、先頭の未割付製品34から順に取り出す。そして、上記初期割り付け処理38と、上記原材料分割処理48と、上記続割り付け処理52を繰り返す。これを、全ての未割付製品34が割付済み製品36となるまで繰り返す。そして、必要な原材料の枚数20と、各原材料18への製品14の割り付け方22を求めるように計算を制御する。以上の処理を第一の製品引当順割付手段54が実行する。
【0028】
次は、第二の製品引当順割付手段66の処理である。原材料が複数種類の、k>1の場合は、各原材料の価格24を設定し、i=1からkまでのうちのi種類目の原材料18iを一枚取り出す。引当順を定めた製品14は、上記のとおり引当順に取り出す。
【0029】
上記初期割り付け処理38と、上記原材料分割処理48と、上記続割り付け処理52とを繰返す。分割されたいずれの原材料18iにも割り付け可能な製品14が無くなったとき、原材料18iに割り付いた製品14を求める。上記の原材料iの価格と、割り付けられた製品の面積16の合計から製品面積当り価格piを求める。これが、製品面積当り価格計算処理62である。
【0030】
k種類の原材料18全て(i=1からkまで)について実行して、最も安い製品面積当り価格piの、原材料18と製品14の組合せを得る。そして、該当する製品14を割付済み製品36とする。これが製品面積当り価格比較判定処理64である。
【0031】
残りの未割付製品34を引当順に取り出して、初期割り付け処理38と、上記原材料分割処理48と、上記続割り付け処理52を繰返し、製品面積当り価格計算処理62と、製品面積当り価格比較判定処理64とを実行する。全ての製品14が割付済み製品36となるまでこの処理を繰り返し実行する
【0032】
こうして、種類毎の原材料18の必要枚数と、原材料の価格24の合計と、各原材料18への製品14の割り付け方22を求める。以上の処理を第二の製品引当順割付手段66が実行する。
【0033】
上記の処理により、製品の特定の引当順を設定したときの原材料18への製品14の割り付け方22が求められる。その後、様々な製品の引当順を選択して同様の計算を繰り返せば、より経済的な割り付け方が求められる。その引当順を遺伝子工学的手法で求める。ここで、その説明の前に、上記の第一の製品引当順割付手段と第二の製品引当順割付手段の動作をフローチャートにより具体的に説明する。
【0034】
(第一の製品引当順割付手段)
図2は、第一の製品引当順割付手段54の演算処理例フローチャートである。ステップS12、13、14の具体的な処理は、それぞれ
図3、
図4、
図5で説明する。
演算処理を開始すると、まず、ステップS11で、製品の引当順を定める。そして全ての製品を未割り付け製品とする。ステップS12では、初期割付処理を実行する。ここで、最初にとりだした製品を原材料に割り付ける。
【0035】
その後、ステップS13では、原材料分割処理を実行する。ここで、原材料の余った部分を切り分けて、2枚の新たな原材料を得る。次に、ステップS14で続割付処理を実行する。ここでは、2枚の新たな原材料にいずれかの未割り付け製品を割り付けできるか判断する。
【0036】
初期割付処理と原材料分割処理と続割付処理で、1枚の原材料に割り付けできる限りの製品の割り付けを実行する。切り分けた新たな原材料にどの製品も割り付けできないと判断されると、続割付処理を終了する。
【0037】
ステップS15では、全製品が割り付け済みかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS16の処理に移行し、ノーのときはステップS12の処理に移行する。
【0038】
新たな原材料を1枚取り出すたびに、初期割付処理と原材料分割処理と続割付処理を実行して、全ての製品をいずれかの原材料に割り付けたら、ステップS15からステップS16の処理に移行する。
【0039】
ステップS16では、これまでの演算処理の結果に基づいて、各原材料に対する製品の割付け方を決定する。ステップS17では、全ての製品を切り出すために必要な原材料の合計枚数を決定する。この結果を、後で説明する遺伝子工学的手法で製品の引当順を変更しながら繰り返し比較をして最も原材料費が少なくなる割付け方を求める。
【0040】
図3は初期割付処理の具体的な動作フローチャートである。
ステップS21で初期割付処理を開始する。ステップS22では、原材料を1枚取り出す。ステップS23では、未割付製品を1枚取り出す。ステップS24では、
図1(c)に示すように、その原材料18のコーナー30と製品14のコーナー32を重ね合わせる。
【0041】
ステップS25では割付可能かどうかを判断する。そして、割付可能ならば、ステップS26に進み、その製品の割付位置を決定する。そして、ステップS27で、その製品を割付済製品にする。
【0042】
また、ステップS25で割付できないと判断すると、ステップS23に戻り、新たな未割付製品を取り出して、再度ステップS24以下の処理を実行する。なお、原材料の寸法は製品の寸法に比べて十分大きなものに選定しておくので、製品の向きによって原材料にそのまま割付できないことがある場合を除き、必ずステップS27まで処理が進む。
【0043】
図4は原材料分割処理の具体的な動作フローチャートである。
ステップS31で原材料分割処理を開始する。ステップS32では、原材料を製品の一辺を通る直線で切断する。ステップS33では、原材料を製品のもう一方の辺を通る直線で切断する。ステップS34では、分割された2枚の原材料を取り出して、続割付処理の対象にする。
【0044】
図5は続割付処理の具体的な動作フローチャートである。
ステップS41で続割付処理を開始する。S42では、最後の引当順の製品が終了したかどうかを判断する。終了していなければS43へ進む。その他の場合には、続割付処理を終了する。
ステップS43では、原材料分割処理で得られた一枚の原材料を取り出す。ステップS44では次の引当順の未割付製品を1枚取り出す。
【0045】
ステップS45では、その原材料と製品のコーナーを重ね合わせる。ステップS46では、割付可能かどうかを判断する。割付け可能でなければステップS42に戻り、判断する。
【0046】
割付可能な場合には、ステップS47でその製品の割付位置を決定する。ステップS48では、その製品を割付済製品にする。ステップS49では、原材料分割処理をし、S42へ戻り製品が終了したかどうかを判断する。
【0047】
(第二の製品引当順割付手段)
図6は第二の製品引当順割付手段の動作例フローチャートである。
始めに、ステップS51で製品の引当順を定める。次のステップS52では、取り出す原材料を選択する。寸法の違う複数の原材料があるから、例えば、そのうちの縦方向に見て一番長いものから順番に選択をして取り出す。ステップS53では、原材料の価格表等を参照してその価格を設定する。
【0048】
その後、ステップS54で、上記の初期割付処理を実行する。さらに、ステップS55で、上記の原材料分割処理を実行する。そして、ステップS56で、続割付処理を実行する。
【0049】
ここで、ステップS52で取り出した一枚の原材料に割り付け可能な製品を全て割り付けた。ステップS57では、製品単位面積あたりの価格p iを計算する。ステップS53で設定した原材料の価格を割付けられた製品の合計面積で割り算することにより求められる。
【0050】
次のステップS58で、全原材料についてp iを計算済みかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS59の処理に移行し、ノーのときはステップS25の処理に戻る。このステップS52からステップS58のループにより、全ての種類の原材料について、可能な限りの製品割付けを終える。
【0051】
そして、全ての原材料についてp iを計算済みの場合には、ステップS59に進み、最も安いp iを検出をする。ステップS60で原材料を決定し、ステップS61で製品の割付け方を決定する。ステップS62では、全製品が割り付け済みかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときは、ステップS63に進み、種類毎の原材料の必要枚数と原材料の価格の合計を求めて、処理を終了する。ノーのときはステップS52の処理に移行する。
【0052】
以上の処理によって、第二の製品引当順割付手段66も、種類毎の必要原材料枚数とそれらの原材料への製品の割付け方を求めることができる。そして、その最初のステップS51で遺伝子工学的処理に基づく製品の引当順の選択をして、同様の演算処理を繰り返し、最適値を求める。
【0053】
(遺伝子工学的引当順の選択)
【0054】
図7は遺伝子工学的手法の説明図である。
長方形の製品は予め例えば全て縦長に配列され、長いものから順番に並べて、引当順の初期値とされる。製品を90度回転してもよい場合は、
図7(a)に示すように、製品14の向きが、ある状態と90度回転させた状態とで、それぞれ別の遺伝子として扱う。
【0055】
即ち、製品1の遺伝子を1Aとしたとき、90度回転させたときは、別の遺伝子1Bとみなす。製品1がひとつのときは、あるひとつの個体の染色体中には1Aか1Bのどちらかひとつのみがある。製品が正方形の場合は回転させてもおなじなので、3と表示した製品にはA,Bは付かない。図の例では、製品が1A−2A−3と、1A−2B−3と、1B−2A−3の3種類の引当順を例示した。これが遺伝子配列である。
【0056】
遺伝子工学的手法では、m枚の長方形の製品14をそれぞれ指定する遺伝子68と、その遺伝子68を上記選択された引当順に配列させる遺伝子座70を有する複数の染色体72を個体として生成する。そして、
図7(b)に示すように、例えば、個体生成手段74は、3個の遺伝子座70に、何種類もの引当順を代わる代わる配列させて、上記の演算処理を繰り返す。
【0057】
図7(c)に示すように、次世代個体生成手段86は、上記生成した個体を親個体76とし、交叉処理、または突然
変異処理、または選択処理をして、複数の子個体を生成し、その複数の子個体84を次世代の親個体76とし、世代交代を繰返して、製品14の引当順を表す個体を生成する。
【0058】
交叉処理78においては、上記親個体76の任意の2つを「親1」と「親2」とし、その両方から遺伝子配列の一部を承継した子個体84の遺伝子を上記親個体76と同数生成する。
【0059】
突然変異処理においては、いずれかの子個体84に対して遺伝子座70の任意に2つの遺伝子を交換して、新たな子個体84を生成する。
【0060】
その後、親個体76と上記子個体84の表す製品引当順のうち、上記必要な原材料の枚数20が少ないものからか、または上記必要な原材料18の費用が少ないものから親個体76と同数を選択して次世代とする、個体の選択処理82を実行する。
【0061】
具体的には、次世代個体生成手段86は、以下の手順で製品引当順を選択する。
(1)初期の個体集団(第一世代)をランダムにM個生成する。
(2)そのM個の個体集団から2個の親個体76をランダムに選択する。
(3)2個の親個体76から交叉処理78で子個体84をM個つくる。
(4)得られたM個の子個体84のうち設定した数の子個体84に突然変異処理を行う。
(5)親個体76がM個、子個体84がM個で合せて2M個の個体について、それぞれ引当順を設定し、必要な原材料の枚数20か、または原材料費を算出する。
(6)ここで、必要な原材料の枚数20か、または原材料費の少ないほうからM個の個体を取り出して、次世代(第二世代)の個体集団とする。
(7)その後、上記(1)から(6)の世代交代を繰返し、必要な原材料の枚数かまたは原材料費が収束判定基準に達したとき、あるいは設定した世代交代回数に達したときに、計算を終了する。
(8)原材料の枚数かまたは原材料費が最小もしくは最小に近い固体の中から、それらの染色体72を参照して製品引当順を選択する。
【0062】
以上のように引当順に相当する染色体72を進化させながら必要な原材料の枚数かまたは原材料費を求める計算を繰り返して、最適な原材料を選択し、製品の割り付け方を決定する。
【0063】
図8は、実施例に使用する製品データを例示した図表である。
この図に示したとおり、製品は60枚である。その寸法の種類は7種類とした。同じ寸法の製品には同じ製品番号をつけた。製品の面積は合計で34.32平方メートルである。原材料は例えば幅が910ミリメートルで長さが1,820ミリメートルのものと、幅が同じで長さが半分の2種類が使用できるものとする。
【0064】
図9は、本発明により最適化された割付結果の図表である。
図10は、本発明により最適化された割付結果の図解である。また、
図15は下記の3種類の演算処理結果の比較表である。
上記の本発明の方法で製品を原材料に割りつけたところ、この図に示すような結果を得た。すなわち、原材料の長さの長いものを25枚、長さが半分のものを1枚を使用して、全ての製品を割りつけることができる。
図10−1の割付け方は10枚、
図10−2の割付け方は3枚、
図10−3の割付け方は8枚、
図10−4の割付け方は2枚、
図10−5、
図10−6の割付け方はそれぞれ1枚の原材料を使用し、
図10−7の割付け方では2分の1の寸法の原材料を1枚使用した。この場合に原材料の合計面積は42.2平方メートルになった。その結果、歩留まりは81.3%になった。
【0065】
図11は、ファーストフィット法による割付結果の図表である。
図12は、その割付結果の図解である。
これは、既知のファーストフィット法を使用した計算結果である。
図12−1の割付け方は10枚、
図12−2の割付け方は1枚、
図12−3の割付け方は12枚、
図12−4、
図12−5、
図12−6、
図12−7の割付け方はそれぞれ1枚の原材料を使用した。この計算結果によると、原材料の長さの長いものが27枚で、長さが半分のものは使用しないと言う結果になっている。この場合原材料の合計面積は47平方メートルで歩留まりは76.7%と言う結果になった
【0066】
図13は、特許文献1の方法により最適化された割付結果の図表である。
図14は、その割付結果の図解である。
図14−1の割付け方は10枚、
図14−2の割付け方は3枚、
図14−3の割付け方は8枚、
図14−4の割付け方は2枚、
図14−5、
図14−6の割付け方はそれぞれ1枚の原材料を使用し、
図14−7の割付け方では2分の1の寸法の原材料を1枚使用した。この場合には本発明の場合と同様に、原材料の長さの長いものを25枚長さが半分のものを1枚使用して、全ての製品を割りつけることができる。このとき原材料の合計面積は42.2平方メートルになった。その結果、歩留まりは81.3%になった。
【0067】
本発明の方法と特許文献1の方法とは同等の結果が得られるが、本発明の方法は、特許文献1の方法よりも演算処理時間が短縮できるという利点がある。