(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ボウル部の汚物受け面は、上記第2リム吐水部の下流付近における後方側領域に棚状に形成された後方側汚物受け面を備え、上記第2リム吐水部から吐水された洗浄水は、上記後方側汚物受け面上を流れることにより上記凹部の前方側領域へ導かれる請求項1に記載の水洗大便器。
上記ボウル部には、上記第1リム吐水部から吐水された洗浄水が上記リム部の内周面に沿って旋回するための導水路が形成され、この導水路は、上記第1リム吐水部から上記ボウル部の前方端に向かって下方へ徐々に傾斜し、この前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜するように形成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の水洗大便器においては、溜水を上下に攪拌する第2吐水口を備えているために、浮遊系汚物を排出するには優れているものの、汚物受け面を洗浄する第1吐水口から吐水される水が少ないため、汚物受け面を洗浄するのに十分な洗浄を行うことができないという問題がある。
また、上述した特許文献2の水洗大便器においては、リムの第1吐水口及び第2吐水口の2つのリム吐水口から吐水される洗浄水により、汚物受け面の十分な洗浄を行うことができるものの、浮遊系汚物交じりの溜水を上下に攪拌することができないため、浮遊系汚物をうまく排出することができずに残存してしまうという問題がある。したがって、リムの第1吐水口及び第2吐水口のみから吐水される水洗大便器において、いかに溜水を上下に攪拌させるかについても解決するべき課題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、従来技術の問題や課題を解決するためになされたものであり、ボウル部内の浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、給水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、上記汚物受け面の上方に位置するリム部と、上記汚物受け面の下方に形成された凹部と、を備え、この凹部が溜水水位より下方に位置する底面と、この底面と上記汚物受け面の下縁部とを接続する壁面と、を備えたボウル部と、洗浄水を上記ボウル部内に供給する吐水部であって、上記ボウル部の左右方向の一方側の上記リム部に位置すると共に上記ボウル部の前方へ向けて洗浄水を吐水する第1リム吐水部と、上記ボウル部の左右方向の他方側の上記リム部に位置すると共に、上記ボウル部の上記一方側に向けて洗浄水を吐水する第2リム吐水部と、のみを有する上記吐水部と、上記凹部にその入口が接続され汚物を排出する排水管路と、を有し、上記ボウル部は、上記第1リム吐水部から吐水された洗浄水が上記ボウル部の前方側より上記凹部に流入する主流を形成するように構成され、上記第2リム吐水部から吐水され上記第2リム吐水部から上記凹部の後方の上記汚物受け面に向けて横向きに流れる
と共に上記凹部の後方において下方に傾斜する上記汚物受け面により流下を開始している洗浄水の主流が上記凹部の前方の上記汚物受け面まで旋回するまでに上記凹部に流入し、上記凹部内で上記第1リム吐水部からの主流に合流し、上記ボウル部内の汚物を溜水内に沈めるように構成されることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、第1リム吐水部から吐水された洗浄水がボウル部の前方側から凹部に主流として流入し、この凹部に流入した主流に対して、第2リム吐水部から吐水された洗浄水が横方向から合流するため、凹部内の溜水を上下方向に効果的に攪拌することができる。したがって、ボウル部の汚物受け面について、第1リム吐水部及び第2リム吐水部のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部内で上下方向に攪拌する流れを発生させることができる。これらの結果、ボウル部内の汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
また例えばこのように構成された本発明においては、第1リム吐水部から吐水された洗浄水がボウル部の前方側から凹部に主流として流入し、この凹部に流入した主流に対して、第2リム吐水部から吐水された洗浄水の大半が横方向から合流するため、凹部内の溜水を上下方向により効果的に攪拌することができる。したがって、ボウル部の汚物受け面について、第1リム吐水部及び第2リム吐水部のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部内で上下方向に攪拌する流れを発生させることができる。これらの結果、ボウル部内の汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記ボウル部の汚物受け面は、上記第2リム吐水部の下流付近における後方側領域に棚状に形成された後方側汚物受け面を備え、上記第2リム吐水部から吐水された洗浄水は、上記後方側汚物受け面上を流れることにより上記凹部の前方側領域へ導かれる。
このように構成された本発明においては、第2リム吐水部から吐水された洗浄水が、棚状に形成された後方側汚物受け面を流れることにより凹部の前方側領域へと導かれるため、第1リム吐水部からの主流に対して第2リム吐水部からの洗浄水を横方向から確実に合流させることができ、凹部内の溜水を上下方向に効果的に攪拌することができる。したがって、ボウル部の汚物受け面において、第1リム吐水部と第2リム吐水部のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部内で上下方向の攪拌する流れを発生させることができる。これらの結果、浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記棚状に形成された後方側汚物受け面の幅(L)と上記第2リム吐水部の幅(w2)との比(L/w2)は、2〜10である。
このように形成された本発明においては、棚状に形成された後方側汚物受け面の幅(L)と第2リム吐水部の幅(w2)との比(L/w2)が2〜10であることにより、第2リム吐水部から吐水された洗浄水は、棚状に形成された後方側汚物受け面を流れて凹部の前方側領域へと導かれるため、第1リム吐水部からの主流に対して第2リム吐水部からの洗浄水を横方向から確実に合流させることができ、凹部内の溜水を上下方向に効果的に攪拌することができる。したがって、ボウル部の汚物受け面において、第1リム吐水部と第2リム吐水部のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部内で上下方向の攪拌する流れを発生させることができる。これらの結果、浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記凹部は、平面視で、上記底面が前側領域に形成されており、この底面の面積は、溜水面の面積の半分以上に設定されている。
このように構成された本発明においては、平面視で凹部の前側領域に形成されている底面の面積が溜水面の面積の半分以上に設定されていることにより、第2リム吐水部から吐水された洗浄水は、凹部の底面に潜り込み、凹部の壁面に沿って上下方向に溜水を攪拌させる流れを効果的に形成することができる。したがって、ボウル部の汚物受け面について、第1リム吐水部及び第2リム吐水部のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部内で上下方向に攪拌する流れを発生させることができる。これらの結果、ボウル部内の浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記ボウル部には、上記第1リム吐水部から吐水された洗浄水が上記リム部の内周面に沿って旋回するための導水路が形成され、この導水路は、上記第1リム吐水部から上記ボウル部の前方端に向かって下方へ徐々に傾斜し、この前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜するように形成されている。
このように構成された本発明においては、第1リム吐水部から吐水された洗浄水がリム部の内周面に沿って旋回するための導水路がボウル部に形成され、この導水路が、第1リム吐水部からボウル部の前方端に向かって下方へ徐々に傾斜し、この前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜するように形成されていることにより、第1リム吐水部からの洗浄水をボウル部の前方側から凹部に主流として効果的に流入させることができる。また、この凹部に流入する主流に対して、第2リム吐水部からの洗浄水が横方向から合流するために、凹部内の溜水を上下方向に効果的に攪拌することができる。したがって、ボウル部の汚物受け面において、第1リム吐水部と第2リム吐水部のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部内で上下方向の攪拌する流れを発生させることができる。これらの結果、浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記汚物受け面は、その後方側汚物受け面の中央部付近から
上記凹部の前方の上記汚物受け面に向かって下方へ徐々に傾斜
すると共に上記凹部を迂回するように形成される面を形成している。
このように構成された本発明においては、汚物受け面が、その後方側汚物受け面の中央部付近から
上記凹部の前方の上記汚物受け面に向かって下方へ徐々に傾斜
すると共に上記凹部を迂回するように形成される面を形成していることにより、第1リム吐水部からの吐水された洗浄水に加えて、第2リム吐水部から吐水された洗浄水の一部についても前方側から凹部に流入させることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記第1リム吐水部の開口は、縦長の扁平形状に形成されている。
このように構成された本発明においては、第1リム吐水部の開口が、縦長の扁平形状に形成されていることにより、第1リム吐水部から吐水される洗浄水が汚物受け面に落ちてしまうことがなく、ボウル部の前方端まで旋回することができ、前方側から凹部に流入する主流を効果的に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水洗大便器によれば、ボウル部内の浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、
図1〜
図13を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、
図2は、
図1のII−II線に沿って見た断面図であり、
図3は、
図1のIII−III線に沿って見た断面図である。また、
図4は、
図1のIV−IV線に沿って見た断面図であり、
図5は、
図1のV−V線に沿って見た断面図であり、
図6は、
図1のVI−VI線に沿って見た断面図である。さらに、
図7は、
図1のVII−VII線に沿って見た断面図であり、
図8は、
図1のVIII−VIII線に沿って見た断面図である。
【0017】
図1〜
図3に示すように、水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器であり、便器本体2と、この便器本体2を洗浄する洗浄水を貯水する貯水タンク4とを備えている。便器本体2は、表面に釉薬層が形成された陶器製であり、下部にスカート部6が形成され、上半分のうち前方にボウル部8が形成されている。また、ボウル部8の後方上部には、その上流端が貯水タンク4に連通する共通通水路10が形成され、さらに、ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水管路12が形成されている。
【0018】
上述した貯水タンク4は、洗浄水源であり、この貯水タンク4内には、排水弁14が設けられており、操作レバー(図示せず)により開閉するようになっている。なお、本実施形態では、貯水タンク4を持たず水道から直接洗浄水が供給される直圧式水洗大便器や、フラッシュバルブにより洗浄水が供給されるタイプの水洗大便器等にも適用することができる。
【0019】
ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面16(詳細は後述する)と、上縁に位置するリム部18と、汚物受け面16の下方に形成された凹部20(詳細は後述する)とを備えている。ここで、リム部18の内周面18aは、
図2〜
図7に示すように、内側に向かってオーバハングした形状となっており、後述する旋回する洗浄水が外部へ飛び出ないようになっている。
【0020】
ボウル部8のリム部18の内周面の前方から見て左側の中央部の少し後方側に、洗浄水を吐水する第1吐水口22(詳細は後述する)が形成され、前方から見て右側後方側(下流側)に、第2吐水口24(詳細は後述する)が形成されている。これらの第1吐水口22及び第2吐水口24は、同一方向(
図1では反時計回りの方向)に旋回し、後述する旋回流を形成するようになっている。
【0021】
また、上述した水洗大便器1の後方上部に形成された共通通水路10は、便器前方に向かって、第1通水路26及び第2通水路28に分岐している。第1通水路26は、第1吐水口22に洗浄水を供給するためのものであり、第2通水路28は、第2吐水口24に洗浄水を供給するためのものである。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、第1吐水口22を含む第1通水路26と、第2吐水口24を含む第2通水路28について、陶器製の便器本体2と一体に形成されている形態について説明するが、このような形態に限られず、第1吐水口を含む第1通水路と、第2吐水口を含む第2通水路については、便器本体とは別体のディストリビユータ等により形成するようにしても良い。
【0022】
ここで、
図2〜
図7に示すように、本実施形態による水洗大便器1のボウル部8の汚物受け面16は、排水管路12の入口に向かった放射状の線に沿って、その全域において、上方に凸形状に形成されている。
【0023】
さらに、
図2及び
図3に示すように、ボウル部8のリム部18の内周面18aの下方領域には、洗浄水を導く導水路30が形成されている。この導水路30は、第1吐水口22から吐水された洗浄水がリム部18の内周面18aに沿って旋回するためのものであり、第1吐水口22からボウル部8の前方端に向かって下方に徐々に傾斜し(
図2参照)、この前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜している(
図3参照)。第1吐水口22から吐水された洗浄水は、この導水路30に沿って旋回するので、後述するボウル部8の前方側より排水管路12の導水管路32の入口32aに向けて流れる大流量の主流M(詳細は後述する)を形成することができるようになっている。
【0024】
つぎに、
図2及び
図3に示すように、排水管路12は、凹部20の底面と接続し且つ後方下方へ延びる導入管路32と、この導入管路32と接続し上方へ延びる排水トラップ管路34とを備えている。また、排水トラップ管路34は、上昇管路34aと下降管路34bとから構成されている。
この導水管路32は、凹部20の底面と滑らかな連続湾曲面として繋がっており、凹部20から導入管路32に流入した洗浄水が導入管路32内をスムーズに流れるようになっている。
【0025】
つぎに、
図1〜
図7及び
図9〜
図11により、ボウル部8における汚物受け面16と凹部20について詳細に説明する。
図9は、
図1のIX−IX線に沿って見た断面図であり、
図10は、
図1のX−X線に沿って見た断面図であり、
図11は、
図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体のボウル部を部分的に拡大した部分拡大平面図である。
【0026】
まず、
図1〜
図7及び
図9〜
図11に示すように、汚物受け面16は、その後方側汚物受け面16aの中央部C1付近からボウル部6の前方側汚物受け面16bの前方端に向かって下方へ徐々に傾斜し、この前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜するように形成されている。
また、
図2及び
図7に示すように、後方側汚物受け面16aは、第2吐水口24の下流付近における汚物受け面16の後方側領域に棚状に形成されている。これにより、
図11に示されているように、第2吐水口24から後方側汚物受け面16aの中央部C1付近に吐水された洗浄水の大半の流れmは、後方側汚物受け面16aに沿って凹部20の後方側を迂回し、凹部20の側方側(凹部20を前方側から見て左側)へ旋回し、凹部20内に向かって横方向の流れを形成するようになっている。
この第2吐水口24からの吐水の流れmの洗浄水量は、第1吐水口22から吐水される大流量の主流Mの洗浄水量よりも少なく設定されている。例えば、共通通水路10を通過した洗浄水量の60%〜90%が第1通水路26を経て第1吐水口22から吐水され、共通通水路10を通過した洗浄水量の10%〜40%が第2通水路28を経て第2吐水口24から吐水されるようになっている。
さらに、第2吐水口24から吐水の大半の流れmの洗浄水量は、第2吐水口24から吐水される洗浄量全体に対して、ほぼ50%以上の洗浄水量に設定されるのが好ましい。
また、第2吐水口24から吐水された洗浄水の主流mの一部m1については、第1吐水口22から吐水されて前方側から凹部20に大流量の主流Mとして流入する洗浄水に加えて、前方側から凹部20に主流Mと共に流入することができるようになっている。
【0027】
つぎに、
図2、
図3及び
図11に示すように、ボウル部8の凹部20は、溜水水位Wより下方に位置する底面36と、この底面36と汚物受け面16の下縁部とを接続する壁面38とを備えている。また、この底面36は、導水管路32の入口32aから前側の領域(前側領域)に形成された前側底面40と、導水管路32の入口32aから後側の領域に形成された後側底面42とを備えている。
【0028】
凹部20の底部36の前側底面40は、水平に形成されている。この前側底面40は、後方に向けて下方に傾斜させてもよい。
また、凹部20の前側底面40は、この面の全領域が、溜水水位Wより下方に位置し、後側底面42の下端42aよりも上方に位置するように形成されている。
【0029】
凹部20の底部36の後側底面42は、導入管路32の前側領域へ指向し、内側に向けて下方に傾斜するように形成されている。また、凹部20の後側底面42は、この面の全領域が、溜水水位Wより下方に位置するように形成されている。なお、凹部20の後側底面42は、平坦面である必要はなく、上方に凸状に僅かに湾曲した湾曲面で形成してもよい。
【0030】
つぎに、前側底面40の面積A1は、
図11に示す平面視において、溜水面Sの面積A2の半分よりも大きく設定されている。これにより、
図11に示されているように、第2吐水口24から後方側汚物受け面16aの中央部C1付近に吐水された洗浄水の大半の流れmは、後方側汚物受け面16aに沿って凹部20の後方側を迂回し、凹部20の側方側(凹部20を前方側から見て左側)へ旋回し、凹部20内に向かって横方向の流れを形成するようになっている。そして、この洗浄水の横方向の流れmは、凹部20の左側壁面38aの上方付近から左側壁面38aに沿って前側底面40に潜り込むようになっている。
また、この凹部20内に潜り込んだ洗浄水の流れmは、凹部20の前側底面40から右側壁面38bに沿って上方に旋回し、上下方向に溜水を効果的に攪拌させる流れを形成するようになっている。そして、この流れmは、第1吐水口22から吐水されて前方側から凹部20に流入する大流量の主流Mに合流するようになっている。
なお、本実施形態では、前側底面40の面積A1が、
図11に示す平面視において、溜水面Sの面積A2の半分よりも大きく設定されて形態について説明するが、前側底面40の面積A1が溜水面Sの面積A2の半分と等しくてもよく、要するに、前側底面40の面積A1については、溜水面Sの面積A2の半分以上に設定すればよい。
【0031】
つぎに、
図11〜
図13により、ボウル部8における第1吐水口22と第2吐水口24について詳細に説明する。
図12は、本発明の一実施形態による水洗大便器の第1吐水口の断面図であり、
図13は、本発明の一実施形態による水洗大便器の第2吐水口の断面図である。
まず、
図12に示すように、第1吐水口22の開口断面D1、及びこの第1吐水口22の開口断面D1に至る第1通水路26の流路断面は、第1通水路26のほぼ全域に亘って縦長の扁平形状に形成されている。これにより、第1通水路26を通過して第1吐水口22から吐水された洗浄水は、吐水直後に大半が前方側汚物受け面16bに落ちることなく、少なくともボウル部8内の前方端まで旋回することができるようになっており、ボウル部8内の前方側から凹部20に流入する主流Mを効果的に形成することができるようになっている。
なお、第1吐水口22の開口断面D1における最大の縦寸法h1と最大の幅寸法w1との比(h1/w1)は、1〜5に設定されているのが好ましく、1.5〜3に設定されているのがより好ましい。
【0032】
また、
図13に示すように、第2吐水口24の開口断面D2は、第1吐水口22の開口断面D1よりも小さい大きさとなっているが、第1吐水口22の開口断面D1と同様に、縦長の扁平形状に形成されている。これにより、第2通水路28を通過して第2吐水口24から吐水された洗浄水についても、第2吐水口24の吐水直後に、大半が後方側汚物受け面16aから凹部20内の後方領域に落ちることなく、凹部20の左側壁面38aの上方付近まで旋回することができるようになっている。
なお、第2吐水口24の開口断面D2における最大の縦寸法h2と最大の幅寸法w2との比(h2/w2)は、1〜5に設定されているのが好ましく、1.5〜3に設定されているのがより好ましい。
【0033】
つぎに、
図2、
図3、
図11及び
図13に示すように、棚状に形成された後方側汚物受け面16aの中央部C1における前後方向の幅Lと第2吐水口24の最大の幅寸法w2との比L/w2は、2〜10に設定されているのが好ましく、3〜9に設定されているのがより好ましく、4〜8に設定されているのが最も好ましい。これにより、
図11に示されているように、第2吐水口24から後方側汚物受け面16aの中央部C1付近に吐水された洗浄水の大半の流れmは、後方側汚物受け面16aに沿って凹部20の後方側を迂回し、凹部20の側方側(凹部20を前方側から見て左側)へ旋回し、凹部20内に向かって横方向の流れを形成し、凹部20の前方側領域へと導かれるようになっているため、第1吐水口22からの主流Mに対して第2吐水口24からの洗浄水の主流mを横方向から確実に合流させることができ、凹部20内の溜水を上下方向に効果的に攪拌することができるようになっている。
【0034】
つぎに、
図1〜
図16を参照して、本実施形態による水洗大便器における洗浄動作を説明する。
図14は本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄水の流れの様子を示す平面図であり、
図15は
図14の断面図であり、
図16は本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄水の流れの様子を示す概略斜視図である。
【0035】
まず、使用者が貯水タンク4の操作レバー(図示せず)を操作すると、排水弁14が開き、貯水タンク4内の洗浄水が、共通通水路10に流れ、この共通通水路10から分岐した第1通水路26及び第2通水路28を経て、第1吐水口22及び第2吐水口24のそれぞれから、洗浄水が吐水される。
【0036】
第1吐水口22から吐水された洗浄水は、ボウル部8のリム部18の内周面18aに形成された導水路30に沿って、まず、前方に向けて流れ、ボウル部8の前方端を通過した後は、後方に向けて流れる。このとき、洗浄水の一部は、旋回しながらボウル部8を落下し、汚物受け面16を洗浄する。
【0037】
また、第1吐水口22から吐水され導水路30に沿って流れる洗浄水の相当量は、ボウル部8の前方側より排水管路12の導水管路32の入口32aに向けて流れる大流量の主流Mを形成する(
図14及び
図16参照)。この主流Mの一部の流れM1は、凹部20の底面36の後側底面42に衝突し、その後、導水管路32内の前方領域に向けて斜め下方前方に流出する(
図15参照)。また、主流Mの他の一部の流れM2は、導水管路32の入口32aに直接流入する(
図15参照)。
【0038】
ここで、本実施形態においては、洗浄水がリム部18の内周面18aに沿って旋回するための導水路30が形成され、この導水路30が第1吐水口22からボウル部8の前方端に向かって下方へ徐々に傾斜し、前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜するように形成されているので、大流量の主流Mを形成することができる。また、この主流Mの一部M1が凹部20の底面36の後側底面42に衝突し、この衝突した主流の一部M1が導水管路32内の前方領域に向けて流れる。特に、底面36の後側底面42は、内側に向けて下方に傾斜するように形成されているため、この後側底面42に衝突した主流の一部の流れM1を導水管路32の前側領域に向けてスムーズに導くことができる。また、導水管路32内の後方領域には、洗浄水の主流の他の一部の流れM2が流入する。
【0039】
一方、第2吐水口24から吐水された洗浄水は、旋回しながらボウル部8を落下し、汚物受け面16の後方領域を洗浄する。さらに、
図14〜
図16に示すように、第2吐水口24から後方側汚物受け面16aの中央部C1付近に吐水された洗浄水の大半の流れmは、後方側汚物受け面16aに沿って凹部20の後方側を迂回し、凹部20の側方側(凹部20を前方側から見て左側)へ旋回し、凹部20内に向かって横方向の流れを形成する。
【0040】
また、
図14に示すように、第2吐水口24から吐水された洗浄水の主流mの一部m1は、ボウル部8の前方側から凹部20に主流Mとして流入する第1吐水口22からの洗浄水に合流し、主流Mと共に前方側から凹部20に流入する。
【0041】
さらに、凹部20内に流入する洗浄水の横方向の流れmは、凹部20の左側壁面38aの上方付近から左側壁面38aに沿って前側底面40に潜り込む。この凹部20内に潜り込んだ洗浄水の流れmは、凹部20の前側底面40から右側壁面38bに沿って上方に旋回し、上下方向に溜水を効果的に攪拌させる流れを形成するようになっている。そして、この第2吐水口24からの洗浄水の流れmは、第1吐水口22から吐水されて前方側から凹部20に流入する大流量の主流Mに合流する。このとき、第2吐水口24から吐水された洗浄水の流れmは、前側底面40に衝突して上昇し、その上方を流れる主流M1,M2と混合される。これにより、汚物が効果的に攪拌され、導水管路32内にスムーズに流入することになる。
【0042】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、第1吐水口22から吐水された洗浄水がボウル部8の前方側から凹部20に主流Mとして流入し、この凹部20に流入した主流Mに対して、第2吐水口24から吐水された洗浄水の大半が主流mとして凹部20の横方向から合流するため、凹部20内の溜水を上下方向に効果的に攪拌することができる。したがって、ボウル部8の汚物受け面16について、第1吐水口22及び第2吐水口24のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部20内で上下方向に攪拌する流れmを発生させることができる。これらの結果、ボウル部8内の浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、ボウル部8の汚物受け面16が、第2吐水口24の下流付近における後方側領域に棚状に形成された後方側汚物受け面を備えており、この棚状に形成された後方側汚物受け面16aの幅Lと第2吐水口24の最大の幅寸法w2との比L/w2が2〜10となっているため、第2吐水口24から吐水された洗浄水は、後方側汚物受け面16aを流れることにより凹部20の前方側領域へと導かれる。よって、第1吐水口22からの主流Mに対して第2吐水口24からの洗浄水を凹部20の横方向から確実に合流させることができ、凹部20内の溜水を上下方向に効果的に攪拌することができる。したがって、ボウル部8の汚物受け面16について、第1吐水口22及び第2吐水口24のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部20内で上下方向に攪拌する流れmを発生させることができる。これらの結果、ボウル部8内の浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路12内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、平面視で凹部20の前側領域に形成されている前側底面40の面積A1が溜水面の面積A2の半分以上に設定されていることにより、第2吐水口24から吐水された洗浄水の主流mは、凹部20の左側壁面38aから前側底面40に潜り込み、凹部20の右側壁面38bに沿って上下方向に溜水を攪拌させる流れを効果的に形成することができる。したがって、ボウル部8の汚物受け面16の全体について、第1吐水口22及び第2吐水口24のそれぞれから吐水された洗浄水で十分に洗浄することができ、凹部20内で上下方向に攪拌する流れmを発生させることができる。これらの結果、ボウル部8内の浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路12内へと効率よく排出することができ、汚物排出性能を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、第1吐水口22から吐水された洗浄水の主流Mがリム部18の内周面18aに沿って旋回するための導水路30がボウル部8に形成され、この導水路30が、第1吐水口22からボウル部8の前方端に向かって下方へ徐々に傾斜し、この前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜するように形成されていることにより、第1吐水口22からの洗浄水をボウル部8の前方側から凹部20に主流Mとして効果的に流入させることができる。
【0046】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、
図9及び
図10に示すように、汚物受け面16が、その後方側汚物受け面16aの中央部C1付近からボウル部8の前方端に向かって下方へ徐々に傾斜し、この前方端から後方側に向かって上方へ徐々に傾斜するように形成されていることにより、第1吐水口22から吐水され、ボウル部8の前方側から凹部20に主流Mとして流入する洗浄水に加えて、第2吐水口24から吐水された洗浄水の主流mの一部m1についても前方側から凹部20に流入させることができる。
【0047】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、第1吐水口22の開口断面D1が、縦長の扁平形状に形成されていることにより、第1吐水口22から吐水される洗浄水が汚物受け面16に落ちてしまうことがなく、ボウル部8の前方端まで旋回することができ、前方側から凹部20に流入する主流Mを効果的に形成することができる。
【0048】
なお、上述した本実施形態による水洗大便器1においては、例として、洗い落し式の水洗大便器について説明したが、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式の水洗大便器であってもよい。