【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年11月1日、エディオンネットショップ、https://www.edion.com/detail.html?p_cd=00062228763 2019年11月2日、YouTube、https://www.youtube.com/watch?v=kIyPiRFCHHM
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極構造体は、陽極部材と、該陽極部材と電極間隙を隔てて配置された陰極部材と、を含み、該陰極部材に複数の孔を設け、前記孔を通して、前記原料水及び/又は前記オゾン水が前記電極間隙に出入する請求項1〜3のいずれかに記載のオゾン水生成方法。
前記電極構造体は、陽極部材と、該陽極部材と電極間隙を隔てて配置された陰極部材と、を含み、該陰極部材に複数の孔が設けられ、前記孔を通して、前記原料水及び/又は前記オゾン水が前記電極間隙に出入する請求項5〜7のいずれかに記載のオゾン水生成噴霧器。
【背景技術】
【0002】
オゾン(О
3)は強力な酸化力を有するが、水溶液においては数十分程度の時間で酸素(О
2)に変化するため残留毒性が少ない。そこで今日では、オゾンガスや、オゾンの水溶液であるオゾン水は、殺菌、脱臭、脱色、有害物質の酸化・分解など幅広い分野で利用され、塩素などに代わる酸化剤、特に殺菌剤として注目されている。オゾンによる殺菌は細菌、酵母、カビ、ウイルスなど広範囲に有効であり、作用機序が細菌の細胞膜を酸化破壊するものであるため耐性菌を生じにくく、脱臭効果を併せもつ、といった特長がある。他方、オゾンは臭気を有し、人体の呼吸器系に刺激を与えるので、空気中の濃度の室内環境基準(体積濃度で0.1ppm以下)を守る必要があること、また、オゾンは鉄やニトリルゴムなどの腐食や劣化を起こすこと、といった点に注意が必要である(非特許文献1)。
【0003】
オゾン水の主な製法として、ガス溶解法と直接電解法がある。ガス溶解法は、酸素ガスを原料として放電により生成する等の方法で製造したオゾンガスを水に溶解させてオゾン水を製造する方法である。ガス溶解法は、オゾンガスが水に難溶であるため高濃度のオゾン水を得ることが難しいという難点があり、多くは1mg/L以下という低濃度で利用されている。直接電解法は、水道水等の原料水を電気分解することでオゾン水を生成する方法である。直接電解法により、高濃度のオゾン水をより経済的に得ることができる(同文献)。
【0004】
特開2003−93479号公報(特許文献1)には、
図19に示すように、家庭で手軽に利用できるよう、片手で把持することができるボトル内で原料水を電気分解してオゾン水を生成し、それを1回に0.1mL〜1mLずつ噴霧できる簡易型のオゾン水生成噴霧器の基本的構成が開示されている。オゾン水生成噴霧器は吐出部107とボトル104からなり、ボトル104は、その平坦な内底面に立設された、原料水を電気分解してオゾン水を生成するための電極105、106を有し、ボトル104内に生成されたオゾン水は噴霧用チューブ112を通して吐出部107から噴霧される。特開2019−037946号公報、再表2003−000957号公報、及び特開2003−266073号公報にも、同様の基本的構成が開示されている。
【0005】
このような家庭用簡易型のオゾン水生成噴霧器においては、体積が数十mL、オゾン濃度が1〜2mg/L程度のオゾン水を2〜4分程度の短時間に高効率に生成することが課題である。もちろん、電気分解における電流値又は電圧値を高めることで、オゾン濃度が4mg/L以上の高濃度のオゾン水を生成することは可能であるが、噴霧時の、及び条件によっては生成時も、刺激臭が強く、家庭内での実用に耐えない。
直接電解法でオゾン水の生成効率を高める従来技術として、(1)区画内に電極を配置、(2)電極表面の工夫、(3)イオン移動の制御、(4)対流の制御、などが知られている。
【0006】
(1)区画内に電極を配置
これは、原料水を貯留する容器内に区画を設け、区画内に電気分解用の電極を配置して電気分解を行い、区画内で生成された高濃度のオゾン水のみを噴霧する技術である。例えば、
図20に示すように、特開2009−154030号公報(特許文献2)には、電解
水生成噴霧装置201において、タンク204に連通する電解槽205を設け、タンク204と電解槽205は、連通路207でのみ連通するように構成し、噴霧機構203を手でプッシュするたびに、オゾン水を噴霧用ノズルから噴霧すると同時に、タンク204内から連通路207を通して原料水が小容量の電解槽205内へ流入し、電解槽205内で電気分解されて、再び高濃度のオゾン水が電解槽205内に生成される技術が開示されている。
類似した技術は特開2011−092883号公報にも開示されている。他にも、特許第6249200号公報や特開2004−148109号公報には、噴霧用チューブの内部にオゾン水を生成する電解セルを取り付ける技術が開示されている。又、特開2003−062573号公報や特開2003−181338号公報には、吐出部の、噴霧用ノズルの直近にオゾン水を生成するための電解用電極を取り付ける技術が開示されている。これらの技術には、区画された部分等に貯留できるオゾン水の量が少ないため、単位時間当たりの噴霧量がある値を超えると、オゾン水の生成スピードが噴霧スピードに追い付かず、噴霧水中のオゾン濃度が低下する難点がある。
【0007】
(2)電極表面の工夫
これは、電極の形状や電極表面の物質を工夫することにより、オゾン水生成の効率を高める技術である。例えば、特許第6258566号公報には、原料水との接触面積を増やして電解効率を上げるために、陽極及び/又は陰極をメッシュ状にする発明が開示されている。また、再表03−000957号公報には、表面にタンタル酸化物又はニオブ酸化物からなる電極触媒を備えた電解用電極を用いることで、オゾンの生成効率を高める技術が開示されている。また、特開平08−134677号公報には、陽極電極にオゾン発生触媒機能を有した貴金属製の金網を使用し、陽極電極の外面側には耐食性金属で製造したラス網を重ねて、原料水を供送することで、網目どうしを結ぶ狭い間隙を縫うように原料水を進行させ、その撹拌作用により、発生したオゾン気泡を水に溶解させ、オゾンが気体のまま排出されることを防ぎ、オゾン水の生成効率を高める技術が開示されている。これらの技術は有用であるが、電極構造が複雑で製造コストが高くなりがちである。
【0008】
(3)イオン移動の制御
これは、電極近傍でのイオン移動を制御することにより、オゾン水の生成効率を高める技術である。一般に、直接電解法においては、次の化学反応式に示すように、酸素(О
2)及び水素(H
2)が生成される水の電気分解反応(式1)及び(式3)が主であり、それに、微量のオゾン(O
3)が生成される反応(式2)が付随する。
[陽極反応]
(式1)2H
2O → O
2+4H
++4e
-
(式2)3H
2O → O
3+6H
++6e
-
[陰極反応]
(式3)2H
++2e
- → H
2
(式2)からわかるように、原料水の電気分解により陽極で生じた水素イオン(H
+)が陽極近傍にとどまって高濃度で存在するとオゾンの生成反応(式2)の進行が妨げられる。
上記の特許文献2には、陽極と線状の陰極とが陽イオン交換膜で隔てられてなる電解セルが開示されている。陽極で生成した水素イオンは、陽イオン交換膜を通って陰極へと進み、(式3)が示すように陰極において電子を受け取り、水素(H
2)となる。その結果、陽極付近に水素イオンが高濃度にとどまらないため、オゾン生成を効率的に行うことができる。また、特許第4723627号公報及び上記の特許第6258566号公報にも、陽イオン交換膜で陽極と陰極を隔ててなる膜−電極構造体が開示されている。しかし、イオン交換膜は、膜−電極構造体の構造が複雑になりがちで、保守管理のコストがかかる。
【0009】
(4)対流の制御
これは、原料水の対流を制御することにより、高濃度のオゾン水を噴霧できるようにする方法である。
【0010】
実登第3207605号公報(特許文献3)には、
図21に示すように、容器320の下端内部に取着されたホルダ340に電極部材が収容固定され、該電極部材は、上から、複数の孔口を有する飾り片331、負極電解片332、絶縁ワッシャ333、正極電解片334が積み重ねられてなり、飾り片331とホルダ340が熱融合されることにより、ホルダ340に前記電極部材が収容固定される、スプレーの発明が開示されている。この発明においては、電解水が生成されるホルダ340を背が低く底面積が広い円筒状に構成することで電気分解時に容器320内に発生する対流を抑制し、ホルダ340の直上に噴霧用チューブの吸水口を設けることで、少量であれば濃度の高い電解水を噴霧することができる。しかし、容器320内の対流が弱いから、ホルダ340付近の電解水の濃度だけが高くなり、容器320全体の濃度はあまり上がらない難点がある。
【0011】
特開2003−334557号公報(特許文献4)には、
図22に示すように、電極部(電解装置)401が水平方向に貫設された電解槽402と、電源装置404が取り外し可能となる様に構成された殺菌洗浄水生成装置の発明が開示されている。電解槽402に電極部401を貫設するために、電解槽402の下部には、陽極受電端子405−1及び陰極受電端子405−2を有する端子カバー部415が設けられている。そのため、電解槽402の下部の水平断面は、その上部より小さい。電気分解時には、電解槽402内の原料水に、電極部401からの上昇水流と、主に電解槽402の内側面に沿った下降水流が生じる。下降水流は最終的に電解槽402の内底面に行き着く。しかし、電解槽の内底面と電極部401との間には上下方向の隙間があるため、上記下降水流が直接、電極部401に当たるわけではないから、下降水流に含まれる濃度の低い電解水が電気分解を受けて高濃度化するまでに時間を要する。また、電極部401が水平方向に配向しているから、鉛直方向に配向している場合と比べると、ジュール加熱及び微気泡生成の影響を受ける原料水の体積が大きく、その分、上昇水流の速さも遅く、また、下降水流と衝突して対流の速さが減りやすい。電解槽402における電極部401の配置には大いに改善の余地がある。
【0012】
特開2017−05191号公報(特許文献5)には、
図23に示すように、電解槽510と、電解槽510に着脱可能に装着される本体部と、電解槽510内に配置される電極部520と、電極部520に給電するための給電部530とを備える電解装置であって、給電部530は本体部に取り付けられ、本体部から電解槽510の底面側へ延伸しており、電極部520は給電部530に取着され、電極部520と電解槽510の内側面および底面との間には隙間D1,D2が設けられ、電極部520の外面には外郭部524が配置され、外郭部524の上面側には同心円状の溝部525が設けられ、下面側は解放され、電極部520を軸方向に沿って水が循環可能になっている電解装置の発明が開示されている。この電界装置においては、隙間D2が形成されていることにより、電解処理に伴う電解水の温度上昇によって電極部520を通って上方へ流れる水流を発生させ、電極部520に電解処理前の水を効率的に補給できる。また、隙間D1が形成されていることにより、電極部520よりも上方に貯水されている電解処理前の水を電極部520と電解槽510の側面との間を介して電極部520の下方へ循環させ、電極部520の下方から電極部520に補給することができる。これにより、電解槽510内の水を電極部520に効率よく循環させることができるので、電解処理の効率を向上させ、電解処理に要する時間を短縮することができる。しかし、この電解装置は、電極部が本体部から垂下しており、電源部が本体部に設けられているから、電解槽の蓋を構成する本体部が重くなり、取り扱いが不便になる短所がある。
【0013】
(5)その他
上記の特許第6249200号公報には、噴霧用チューブの内部にオゾン水を生成する電解セルを取り付ける構成において、さらにスパイラル状の小さな構造物を噴霧用チューブの内部に設けることにより、電解セルで発生したオゾンの気泡を砕いて微細な気泡に変換してオゾンの溶存率を高め、オゾン水の生成効率を向上する技術が開示されているが、構造が複雑で保守に手間を要する。
オゾン水の生成効率を向上する技術ではないが、特表2012−501385号公報には、電解セルに流れる電流値が所定の範囲内にあるときには表示灯を点灯し、範囲外にあるときには表示灯を消灯する技術が開示されている。また、特表2006−518666号公報(特許文献6)には、スプレーヘッド部に、電解水の効力を表示するためのオキシダント効力表示灯を有するスプレー装置の技術が開示されているが、オキシダント効力表示灯の点灯及び消灯のための制御の詳細については全く記載されていない。
【0014】
このように、直接電解法でオゾン水の生成効率を高める従来技術(1)〜(5)は、簡易かつ安価な家庭用の、片手で把持できるボトルを有するオゾン水生成噴霧器に利用するには、満足できる技術ではない。そして、いずれの技術も、原料水を貯留する容器の内底面の形状を工夫することにより、電気分解の際に、容器の内底面に取着された電極構造体の近傍から生じる上昇水流と、容器の内側面に沿って生じる下降水流の流れを制御して、オゾン水の生成効率を上げる、という発想を有していない。例えば、特許文献4には、容器の内底面が平坦ではない構成が開示されているが、それは容器の側面に電極部を貫設するためであり、容器内の水流を制御するためではない。また、特許文献5には、容器内の上昇水流と下降水流の流れを制御するという発想は見られるが、その流れの制御を容器の内底面の形状を工夫することにより行うという発想は存在しない。更に、噴霧されるオゾン水の除菌・消臭作用の効力を、リアルタイムで使用者にわかりやすく表示する構成が実現されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、簡易かつ安価な、家庭で利用できるオゾン水の生成方法、片手で保持可能な生成噴霧器、及び生成噴霧装置を提供することである。本発明の更なる目的は、原料水を貯留する容器の内底面の形状を工夫することにより、容器内の原料水及び生成されたオゾン水に生じる上昇水流と下降水流の流れを制御して、オゾン水の生成効率を上げて、上記の目的を達成することである。本発明の更なる目的は、オゾン水の除菌・消臭の効力をわかりやすく表示するオゾン水の生成噴霧装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の形態は、原料水を貯留するための容器と、前記容器内の原料水から生成されたオゾン水を噴霧するための噴
霧機構と、を少なくとも備えるオゾン水生成噴霧器におけるオゾン水生成方法であり、前記容器の内底面に下方に凹んだ凹盆部を設け、該凹盆部は、凹盆部底面とその周囲を囲う凹盆部斜面とで構成され、前記容器内の前記凹盆部底面に電極構造体を立設し、前記電極構造体に電圧を印加して前記原料水を電気分解することでオゾン水を生成し、電気分解の際に前記電極構造体内の前記原料水に鉛直方向に作用する浮力によって生じる上昇水流と、前記原料水が前記凹盆部斜面を前記凹盆部底面に向かって流れ下る下降水流と、を生じさせて前記容器内の前記原料水の対流を促進し、前記電極構造体に前記原料水を供給して、電気分解によるオゾン生成反応を進行させ、生成されるオゾン水におけるオゾン濃度を高くすることを特徴とするオゾン水生成方法である。
【0019】
本発明の第2の形態は、前記凹盆部斜面が前記凹盆部底面と垂直であるオゾン水生成方法である。
【0020】
本発明の第3の形態は、前記凹盆部斜面が前記容器の内側面となめらかに接続されているオゾン水生成方法である。
【0021】
本発明の第4の形態は、前記電極構造体は、陽極部材と、該陽極部材と電極間隙を隔てて配置された陰極部材と、を含み、該陰極部材に複数の孔を設け、前記孔を通して、前記原料水及び/又は前記オゾン水が前記電極間隙に出入するオゾン水生成方法である。
【0022】
本発明の第5の形態は、原料水を貯留するための容器と、前記容器内の原料水を電気分解してオゾン水を生成するための電極構造体と、前記オゾン水を噴霧するための噴霧機構と、を備えるオゾン水生成噴霧器であり、前記容器の内底面は下方に凹んだ凹盆部を有し、該凹盆部は、凹盆部底面とその周囲を囲う凹盆部斜面とで構成され、前記容器内の前記凹盆部底面に前記電極構造体が立設されていることを特徴とするオゾン水生成噴霧器である。
【0023】
本発明の第6の形態は、前記凹盆部斜面が前記凹盆部底面と垂直であるオゾン水生成噴霧器である。
【0024】
本発明の第7の形態は、前記凹盆部斜面が前記容器の内側面となめらかに接続されているオゾン水生成噴霧器である。
【0025】
本発明の第8の形態は、前記電極構造体は、陽極部材と、該陽極部材と電極間隙を隔てて配置された陰極部材と、を含み、該陰極部材に複数の孔が設けられ、前記孔を通して、前記原料水及び/又は前記オゾン水が前記電極間隙に出入するオゾン水生成噴霧器である。
【0026】
本発明の第9の形態は、前記オゾン水生成噴霧器と、前記オゾン水生成噴霧器を載置するための電源部と、を有するオゾン水生成噴霧装置であり、前記電源部又は前記オゾン水生成噴霧器は、制御部、主ランプ及び副ランプを有し、前記制御部は、オゾン水の生成処理中は前記主ランプを点灯させ、オゾン水の生成処理完了後は、前記容器内のオゾン水のオゾン濃度が有効な濃度であることを表示するために、所定の時間の間、前記副ランプを点灯させる制御を行うことを特徴とするオゾン水生成噴霧装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の形態によれば、原料水を貯留するための容器と、前記容器内の原料水から生成されたオゾン水を噴霧するための噴霧機構と、を少なくとも備えるオゾン水生成噴霧器におけるオゾン水生成方法であり、前記容器の内底面に下方に凹んだ凹盆部を設け、該凹盆部は、凹盆部底面とその周囲を囲う凹盆部斜面とで構成され、前記容器内の前記凹
盆部底面に電極構造体を立設し、前記電極構造体に電圧を印加して前記原料水を電気分解することでオゾン水を生成し、電気分解の際に前記電極構造体内の前記原料水に鉛直方向に作用する浮力によって生じる上昇水流と、前記原料水が前記凹盆部斜面を前記凹盆部底面に向かって流れ下る下降水流と、を生じさせて前記容器内の前記原料水の対流を促進し、前記電極構造体に前記原料水を供給して、電気分解によるオゾン生成反応を進行させ、生成されるオゾン水におけるオゾン濃度を高くすることを特徴とするオゾン水生成方法を提供できる。
【0028】
容器の内底面に下方に凹んだ凹盆部が設けられていない場合には、前記上昇水流があるのみで原料水が凹盆部斜面を凹盆部底面に向かって流れ下る下降水流が存在しないから、容器内の原料水の対流が弱く、容器内を局所的に原料水が循環し、生成したオゾン水が容器の下部に滞留し、電極構造体に供給されるオゾン濃度の低い原料水が少なくなる。そのため、電極構造体内の原料水のオゾン濃度が高くなり、(式2)で示されるオゾンの生成反応があまり進行しない。それに対して、容器の内底面に下方に凹んだ凹盆部が設けられている場合には、前記上昇水流に加えて、原料水が凹盆部斜面を凹盆部底面に向かって流れ下る下降水流が存在し、容器内の原料水の対流が強くなり、容器内の原料水が大規模に循環し、電極構造体にはオゾン濃度の低い原料水が豊富に供給される。そのため、電極構造体内の原料水のオゾン濃度が低くなり、(式2)で示されるオゾンの生成反応が進行して効率的にオゾンが生成され、生成されたオゾン濃度の高いオゾン水が前記上位水流及び前記下降水流によって容器全体に行き渡る。なお、前記上昇水流が生じる原因は浮力であるが、該浮力は、電解に伴うジュール加熱により電極構造体内の原料水の温度が上がって熱膨張すること、及び電解に伴って発生した酸素、水素、オゾン等の気体の微細な気泡が該原料水に混入するために該原料水の実質的な密度が下がること、により生じる。
【0029】
本形態において、電極構造体は、凹盆部底面に立設される。「立設」とは、電極構造体を構成する電極の表面の方向が、凹盆部底面に交差する方向(好ましくは垂直な方向)を成すように、凹盆部底面をその表面として有している部材に、電極構造体を取着する、という意味である。電極構造体が立設されているから、原料水は電極構造体内を下方から上方へと進む間に継続的に浮力を受け、強い上昇水流が生じる。
【0030】
なお、本発明における原料水としては、家庭で容易に利用できるという観点から主に、水道水や市販のミネラルウォータ等を想定しているが、それに限られるものではなく、電気分解及びオゾン生成反応の速度を調節する観点から、塩素等の気体や塩化ナトリウム等の塩類などの溶質を水に溶存させた水溶液であってもよく、又、蒸留水や脱イオン水、精製水等であってもよい。
【0031】
本発明の第2の形態によれば、前記凹盆部斜面が前記凹盆部底面と垂直であるオゾン水生成方法を提供できる。本形態の凹盆部は、切削加工、射出成形等の加工法で作製することが容易である。
【0032】
本発明の第3の形態によれば、前記凹盆部斜面が前記容器の内側面となめらかに接続されているオゾン水生成方法を提供できる。本形態では、凹盆部斜面が容器の内側面となめらかに接続されているから、容器の内側面に沿って下降してきた原料水を、凹盆部底面及び凹盆部底面に立設された電極構造体へと、スムーズに導くことができ、オゾン濃度の高いオゾン水を効率的に生成することができる。
【0033】
本発明の第4の形態によれば、前記電極構造体は、陽極部材と、該陽極部材と電極間隙を隔てて配置された陰極部材と、を含み、該陰極部材に複数の孔を設け、前記孔を通して、前記原料水及び/又は前記オゾン水が前記電極間隙に出入するオゾン水生成方法を提供できる。陰極部材に複数の孔を設けることにより、外部から原料水を電極間隙に効率的に
導くことができ、又、生成したオゾン水を電極間隙から外部へと効率的に送り出すことができるので、オゾン水を効率的に生成することができる。更に、陰極部材に複数の孔を設けることにより、陰極部材の表面に曲率が大きく局所的に電場の強い領域を作り出して、(式2)で示されるオゾンの生成反応を加速することができる。加えて、陰極部材に複数の孔を設けることにより、陰極部材の表面の単位面積当たりの電流密度を高めて、(式2)で示されるオゾンの生成反応を加速し、オゾン水を効率的に生成することができる。なお、本発明においては、電極構造体の陰極部材に孔を設けない形態も可能である。孔を設けない形態では、陰極部材の表面積を大きくして電気分解の有効面積を稼ぎ、生成するオゾン水の濃度を高める。陰極部材に孔がある形態と孔がない形態のいずれがオゾン水を効率的に生成できるかは、陰極部材の形状や、孔の大きさ、数、配置等の諸条件に依存する。
【0034】
本発明の第5の形態によれば、原料水を貯留するための容器と、前記容器内の原料水を電気分解してオゾン水を生成するための電極構造体と、前記オゾン水を噴霧するための噴霧機構と、を備えるオゾン水生成噴霧器であり、前記容器の内底面は下方に凹んだ凹盆部を有し、該凹盆部は、凹盆部底面とその周囲を囲う凹盆部斜面とで構成され、前記容器内の前記凹盆部底面に前記電極構造体が立設されていることを特徴とするオゾン水生成噴霧器を提供できる。
【0035】
本形態のオゾン水生成噴霧器は、電気分解の際に電極構造体内の原料水に鉛直方向に作用する浮力によって生じる上昇水流と、原料水が凹盆部斜面を凹盆部底面に向かって流れ下る下降水流と、を生じさせて容器内の前記原料水の対流を促進し、電極構造体に原料水を供給して、電気分解によるオゾン生成反応を進行させ、生成されるオゾン水におけるオゾン濃度を高くすることができる。
【0036】
本発明の第6の形態によれば、前記凹盆部斜面が前記凹盆部底面と垂直であるオゾン水生成噴霧器を提供できる。
【0037】
本発明の第7の形態によれば、前記凹盆部斜面が前記容器の内側面となめらかに接続されているオゾン水生成噴霧器を提供できる。
【0038】
本発明の第8の形態によれば、前記電極構造体は、陽極部材と、該陽極部材と電極間隙を隔てて配置された陰極部材と、を含み、該陰極部材に複数の孔が設けられ、前記孔を通して、前記原料水及び/又は前記オゾン水が前記電極間隙に出入するオゾン水生成噴霧器を提供できる。
【0039】
本発明の第9の形態によれば、前記オゾン水生成噴霧器と、前記オゾン水生成噴霧器を載置するための電源部と、を有するオゾン水生成噴霧装置であり、前記電源部又は前記オゾン水生成噴霧器は、制御部、主ランプ及び副ランプを有し、前記制御部は、オゾン水の生成処理中は前記主ランプを点灯させ、オゾン水の生成処理完了後は、前記容器内のオゾン水のオゾン濃度が有効な濃度であることを表示するために、所定の時間の間、前記副ランプを点灯させる制御を行うことを特徴とするオゾン水生成噴霧装置を提供できる。
【0040】
所定時間の電気分解による生成直後のオゾン水のオゾン濃度が高くても、オゾンの自己分解反応により、放置しておくと容器内のオゾン水のオゾン濃度は徐々に減少する。本形態のオゾン水生成噴霧装置は、現在の容器内のオゾン水が、スプレーして除菌・消臭を行うために十分なオゾン濃度を有しているのか否かを、使用者にとって分かりやすいようにランプで表示する。すなわち、前記制御部は、オゾン水の生成処理完了後は、容器内のオゾン水のオゾン濃度が有効な濃度であることを表示するために、所定の時間の間、副ランプを点灯させる制御を行う。この所定の時間(副ランプを点灯させる時間)は、生成反応
に供した容器内の原料水の水量に応じて、予め決めた複数の時間から制御部が選択することが好ましい。オゾンの自己分解反応の速度は温度に依存するから、より好ましくは、この所定の時間は、生成反応に供した容器内の原料水の水量と、温度センサーにより計測される、気温又は容器内のオゾン水の水温に応じて、予め決めた複数の時間から制御部が選択することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0042】
次に、本発明に係るオゾン水の生成方法、生成噴霧器及び生成噴霧装置の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0043】
<オゾン水生成噴霧装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るオゾン水生成噴霧装置7を示す斜視図であり、オゾン水生成噴霧装置7は、オゾン水生成噴霧器1と、オゾン水生成噴霧器1を載置するための電源部6から構成される。オゾン水生成噴霧器1は、原料水43を貯留するための容器4と、容器4の内底面46に立設され、容器4内の原料水43を電気分解してオゾン水42を生成するための電極構造体2と、オゾン水42を噴霧するための噴霧機構5と、を備える。
図2は、オゾン水生成噴霧器1を電源部6か
ら取り外した状態を示す斜視図である。オゾン水生成噴霧器1の下部の形状はスカート状になっており、電源部6の電源部凸部66に載置される。
【0044】
<電源部> 電源部6は、家庭用のコンセントに接続し、交流電圧を直流電圧に変換するためのAC−DCアダプタ61と、オゾン水生成噴霧器1に直流電圧及び直流電流を供給するための電源コード61aと、3つの操作ボタン64と、3つの表示ランプ65と、を備える。操作ボタン64は、電源ボタン64aと、長時間生成用の第1生成ボタン64bと、短時間生成用の第2生成ボタン64cと、を含む。表示ランプ65は、電源ランプ65aと、第1生成ランプ65bと、第2生成ランプ65cを含み、それぞれのランプに対応するボタンが押圧されたときに、所定の時間だけ点灯する。電気分解のための通電は、オゾン水生成噴霧器1を電源部6に載置した状態でのみ実行される。安全に配慮し、室内の空気中のオゾン濃度が室内環境基準である0.1ppm(0.1mg/L)を超えないことを保証するため、第1生成ボタンを押圧すると所定の時間、例えば4分間だけ電気分解が行われ、又、第2生成ボタンを押圧すると所定の時間、例えば2分間だけ電気分解が行われて、光又は音で電気分解の終了を使用者に告知すると同時に、電気分解のための通電を完了する。なお、
図1の実施形態においては、AC−DCアダプタ61は電源部6の筐体とは別に設けられているが、本実施形態の変形形態においては、AC−DCアダプタ61を電源部6の筐体内に内蔵してもよい。
【0045】
<オゾン水生成噴霧器の容器と回路室> 容器4の下側には、介装リング94を介して回路室9が取着されている。
図3も参照して、回路室9には、電源部6の電極部62を接続するための、接続端子部91が設けられている。接続端子部91からプリント基板92を介して、直流電圧及び直流電流が電極構造体2に供給される。
【0046】
<噴霧機構>
図1において、噴霧機構5は、容器4に取り外し可能な態様で取着されるヘッド部51と、容器4内のオゾン水42をヘッド部51に輸送するためのチューブ52と備え、ヘッド部51は、レバ―54と、ノズル53とを備える。使用者がレバ―54を手で握って回動させるとポンプ作用により、0.1〜1.0mL程度の少量のオゾン水42がチューブ52を通って、容器4内からヘッド部51へと輸送され、輸送されたオゾン水42はノズル53を通過して噴霧流となって外へと噴射される。噴霧後に使用者がレバ―54から手を放すと、ヘッド部51に設けられたバネ(図示せず)の作用により、先ほど回動したレバ―54はもとの位置に戻る。なお、容器4の外側表面に、レバ―収容溝部と、レバ―収容溝部に沿って移動可能なスライド部材と、を設けて、非使用時にレバ―54をレバ―収容溝部に収容して、スライド部材を移動させてレバ―54の先端部を覆止して固定することで、レバ―54を容器4の外側表面に密着させてコンパクトに収容する構成としてもよい。容器4には、取り外し可能な態様でヘッド部カバー51aが装着されている。ヘッド部カバー51aには、レバ―54の回動動作を邪魔しないよう切欠部が設けられており、ヘッド部カバー51aを容器4に装着した状態でもオゾン水42を噴霧することが可能である。なお、
図1に示す実施形態では噴霧機構5は手動式であるが、本実施形態の変形形態においては、噴霧機構5として電動式のポンプを用いた噴霧機構を用いてもよい。
【0047】
<電極構造体支持枠>
図1において、電極構造体2は、電極構造体支持枠28に嵌め込み等により支持されているから、保守時にブラシを用いて洗浄等を行う際に、倒壊や割れ等の損傷を受ける心配が少ない。なお、電極構造体支持枠28は、容器4の底板49に固定されているか、又は、底板49と一体に形成されている。
【0048】
<噴霧機構の使用> 図(3B)は、本発明の一実施形態における、噴霧機構5の構造と、容器4に原料水43を入れる際などに噴霧機構5を取り外す方法を説明したものである。ヘッド部カバー51aをあらかじめ取り外し、スプレーキャップ5xを回転矢印5zの
示す方向に回転させると、ネジ式の結合がはずれて、矢印5yが示すように噴霧機構5を容器4から取り外すことができ、原料水43を容器4の注水口4xから容器4に入れることができる。原料水の注入後は、噴霧機構5を容器4の注水口4xに嵌め、スプレーキャップ5xを回転矢印5zとは逆方向に回転させて、噴霧機構5を容器4に固定する。噴霧機構5は、スプレーキャップ5xとレバ―54の間にレバ―ロック54aを有する。レバ―ロック54aは、通常位置と90度回転した位置の2つの角度位置をとることができる。レバ―ロック54aが通常位置にあるときには、レバー54を手で把持して回動させるとオゾン水43を噴霧できるが、レバ―ロック54aが90度回転した位置にあるときには、レバー54は固定されており、手で把持して回動させることができず、オゾン水43を噴霧できない。
【0049】
<水位線> 図(3C)は、本発明の一実施形態において、容器4に設けられた水位線43について説明するための斜視図である。容器4には、第1水位線43bと第2水位線43cの複数の水位線が設けられている。使用者は、いずれかの水位線が示す位置まで容器4に原料水42を入れ、容器4にスプレーキャップ5xを取り付け、容器4を電源部6に載置し、操作ボタン64を押圧してオゾン水の生成を行う。例えば、第1水位線43bまで原料水42を入れたときには、長時間生成用の第1生成ボタン64bを押圧し、第2水位線43cまで原料水42を入れたときには、短時間生成用の第2生成ボタン64cを押圧する。長時間生成を標準とするが、急ぐ場合には短時間生成を行うことができる。このように、複数の水位線を設けることで、短時間生成の場合には電解の対象となる原料水42の水量を長時間生成の場合より減らして、生成されるオゾン水のオゾン濃度を高く保つことができる。
【0050】
<凹盆部>
図4は、本発明の一実施形態において、オゾン水生成噴霧器1の電極構造体2が、容器4の内底面46に立設されている様子を示す斜視図である。容器4の内底面46は下方に凹んだ凹盆部48を有し、凹盆部48は、凹盆部底面48aとその周囲を囲う凹盆部斜面48bとで構成され、容器4内の凹盆部底面48aに電極構造体2が立設されている。また、電極構造体支持枠28が容器4の内底面46に立設されている。オゾン水生成噴霧器1は、電極構造体2に電圧を印加して原料水43を電気分解することでオゾン水42を生成し、電気分解の際に電極構造体2内の原料水43に鉛直方向に作用する浮力によって生じる上昇水流81と、原料水43が凹盆部斜面48bを凹盆部底面48aに向かって流れ下る下降水流82と、を生じさせて容器4内の原料水43の対流を促進し、電極構造体2に原料水43を供給して、電気分解によるオゾン生成反応を進行させ、生成されるオゾン水42におけるオゾン濃度を高くすることができる。電極構造体2は、「コの字」型の電極構造体支持枠28に嵌め込み等により支持されているから、保守時にブラシを用いて洗浄等を行う際に、倒壊や割れ等の損傷を受ける心配が少ない。電極構造体支持枠28の支持枠上部部材28bには、前記上昇水流を妨げないように、支持枠開口部28aが設けられている。
【0051】
<電極構造体> 本実施形態においては、電極構造体2は、板状の陽極部材21と、間に紐状絶縁スペーサ30を挟むことにより陽極部材21と電極間隙を隔てて配置された、水平断面が「コの字」形の陰極部材22と、を含む。陰極部材22には複数の孔27を設けられ、孔27を通して原料水43及び/又はオゾン水42が前記電極間隙に出入することができる。なお、本発明においては、電極構造体2の陰極部材21に孔が設けられていない実施形態も可能である。
【0052】
<凹盆部の効果>
図5は、容器4の内底面46に設けられた凹盆部48の作用と効果を説明するための断面説明図である。図(5A)は本発明の一実施形態を示し、図(5B)は従来技術を示す。本発明においては、図(5A)に示すように、容器4の容器底板49の上表面である内底面46には、凹盆部48が設けられ、凹盆部48は、凹盆部底面48
aとその周囲を囲う凹盆部斜面48bとで構成され、容器4内の凹盆部底面48aに電極構造体2が立設されている。電極構造体2に電圧を印加して原料水43を電気分解することでオゾン水42が生成される。電気分解の際に、電極構造体2内の原料水43に鉛直方向に作用する浮力によって生じる上昇水流81と、原料水43が凹盆部斜面48bを凹盆部底面48aに向かって流れ下る凹盆部下降水流82aと、原料水43が容器4の内側面47に沿って下降する下降水流82と、が生じて容器4内の原料水43の対流を促進し、電極構造体2にオゾン濃度の低い原料水43を供給して、電気分解によるオゾン生成反応を進行させ、生成されるオゾン水42におけるオゾン濃度を高くすることができる。なお、図(5A)に示す実施形態では凹盆部斜面48bは鉛直であるが、凹盆部斜面が斜面である実施形態も可能であり、同様な作用と効果を奏する。
【0053】
一方、従来技術においては、図(5B)に示すように、容器4の内底面49には凹盆部48が設けられず、平坦な内底面46に電極構造体2が立設されている。そのため、電気分解の際に、電極構造体2内の原料水43に鉛直方向に作用する浮力によって生じる上昇水流81は存在するものの、凹盆部下降水流82aは存在せず、その分、原料水43が容器4の内側面47に沿って下降する下降水流82が弱くなり、電極構造体2へ向かう底部水流82bも弱い。したがって容器4内の原料水43の対流が弱くなり、生成したオゾン水42が電極構造体2の存在する容器4の底部に滞留し、電極構造体2にオゾン濃度の低い原料水43が十分に供給されず、電気分解によるオゾン生成反応があまり進行せず、生成されるオゾン水42におけるオゾン濃度を十分に高くすることができない。
【0054】
<凹盆部の種々の形態>
図6は、本発明における、容器4の底板49、内底面46、及び凹盆部48の様々な実施形態を示す断面説明図である。図(6A)は、図(5A)に示した実施形態に似ているが、凹盆部斜面48bが鉛直面ではなく、斜面である実施形態を示している。図(6B)は、凹盆部48が2段から構成された実施形態を示す。本実施形態における凹盆部48は、電極構造体2が立設されている略平坦面である凹盆部底面48aと、その周囲を囲う斜面である凹盆部斜面48bと、更にその周囲を囲う略平坦面である第2の凹盆部底面48a2と、更にその周囲を囲う斜面である第2の凹盆部斜面48b2と、で構成される。凹盆部斜面48b及び/又は第2の凹盆部斜面48b2は、鉛直面であってもよい。また、凹盆部48が3段以上から構成された実施形態も可能である。図(6C)は、凹盆部斜面48bが容器3の内側面47となめらかに接続されている実施形態を示す。図(6C)においては凹盆部斜面48bは凹盆部底面48aとなめらかに接続されていない。しかし、凹盆部斜面48bが凹盆部底面48aとなめらかに接続された実施形態も可能である。
図6に示したいずれの実施形態も、図(5A)に示した実施形態と同様な作用を有し、同様な効果を奏する。
【0055】
図7は、本発明における、容器4の内底面46、凹盆部48、及び電極構造体2の様々な実施形態を示す平面説明図である。図(7A)に示す実施形態においては、容器4の内底面46に略四角形状の凹盆部48が設けられ、凹盆部48は、平面視四角形状の電極構造体2が立設された略四角形状の凹盆部底面48aと、その周囲を囲う斜面である平面視略四角環状の凹盆部斜面48bと、からなる。
図(7B)に示す実施形態においては、容器4の内底面46にだ円形状の凹盆部48が設けられ、凹盆部48は、平面視四角形状の電極構造体2が立設されただ円形状の凹盆部底面48aと、その周囲を囲う斜面である平面視だ円環状の凹盆部斜面48bと、からなる。
図(7C)に示す実施形態においては、容器4の内底面46に六角の多角形状の凹盆部48が設けられ、凹盆部48は、平面視四角形状の電極構造体2が立設された多角形状の凹盆部底面48aと、その周囲を囲う斜面である平面視多角環状の凹盆部斜面48bと、からなる。
【0056】
図(7D)に示す本発明に係る2段の実施形態においては、容器4の内底面46に凹盆部48が設けられ、凹盆部48は、平面視円形状の電極構造体2が立設された円形状の略平坦面である凹盆部底面48aと、その周囲を囲う斜面である平面視円環状の凹盆部斜面48bと、更にその周囲を囲う略平坦面である平面視円環状の第2の凹盆部底面48a2と、更にその周囲を囲う斜面である平面視円環状の第2の凹盆部斜面48b2と、からなる。
図(7E)に示す本発明に係る2段の実施形態においては、容器4の内底面46に凹盆部48が設けられ、凹盆部48は、平面視四角形状の電極構造体2が立設された略四角形状の略平坦面である凹盆部底面48aと、その周囲を囲う斜面である平面視略四角環状の凹盆部斜面48bと、更にその周囲を囲う略平坦面である平面視環状の第2の凹盆部底面48a2と、更にその周囲を囲う斜面である平面視円環状の第2の凹盆部斜面48b2と、からなる。
図(7F)は、容器4の内底面46の形状を等高線で示している。図(7F)に示す本発明の実施形態においては、容器4の内底面46は凹盆部48に一致し、凹盆部斜面48bは容器4の内側面47となめらかに接続されている。凹盆部48は、平面視円形状の電極構造体2が立設された円形状の略平坦面である凹盆部底面48aと、その周囲を囲う斜面である平面視円環状の凹盆部斜面48bと、からなる。本実施形態の変形形態においては、凹盆部斜面46に、凹盆部底面48aから放射状に延びる溝46gが設けられている。溝46gを設けることで、原料水43が凹盆部斜面48bを凹盆部底面48aに向かって流れ下る水流である凹盆部下降水流82aを溝46gに沿って導き、凹盆部下降水流82aを強め、容器4内の原料水43の対流を促進し、電極構造体2にオゾン濃度の低い原料水43を供給して、電気分解によるオゾン生成反応を進行させ、生成されるオゾン水42におけるオゾン濃度を高くすることができる。
図7に示した種々の実施形態における諸構成は組み合わせて用いることができる。いずれの実施形態も、図(5A)に示した実施形態と同様な作用を有し、同様な効果を奏する。また、
図7では容器4の断面形状は円形であるが、だ円形、四角、六角等の多角形又は略多角形、星型などの様々な断面形状も可能であり、図(5A)に示した実施形態と同様な作用を有し、同様な効果を奏する。
【0057】
<オゾン水生成噴霧器の下部構造> 図(3A)は、本発明の一実施形態であるオゾン水生成噴霧器1の下部の構造、及び電源部6の構造を示す断面説明図である。電源部6は、電源コード61a、制御部63、操作ボタン64、表示ランプ65、電極部62を有する。電源部6の電源部凸部66の上面には、半径が異なる同心円状の3つの環状の電極であるプラス電極62a、マイナス電極62b及び制御電極63cからなる電極部62が設けられている。操作ボタン64からの操作入力に応じて、制御部63は、電極部62の各電極の電位と、各電極を通して流れる電流を制御する。
【0058】
容器4の容器側壁4aは、介装リング94を介して、回路室9の回路室側壁95に嵌合により装着されている。容器底板49に設けられた容器底板凸部49b、環状のプリント基板92、回路室9の回路室底板96に設けられた回路室底板凸部96aにはそれぞれ対応する位置に、ネジ穴49z、ネジ穴92z、ネジ穴96zが設けられており、これらのネジ穴に共通に挿入されるネジにより、容器底板凸部49bとプリント基板92と回路室底板凸部96aは螺着されている。
【0059】
容器4の容器底板49には容器底板開口部49aが設けられており、容器底板開口部49aを下方から覆うように、電極構造体保持板29が(図示していないネジにより)容器底板49に螺着により、若しくは接着等の他の方法により固定されている。電極構造体保持板29には電極構造体2が立設されている。電極構造体2は容器底板開口部49aから容器4の内部へ、すなわち上方へと延伸しており、その背丈は容器4の容器底板49の上面より高い。
【0060】
容器底板開口部49aの形状は平面図において略四角形である。容器底板49の上面は、容器底板開口部49aの縁部において斜面となっている。そのため、容器4の内底面46は、該斜面である凹盆部斜面48bと、凹盆部斜面48bに囲われる凹盆部底面48aとからなる、下に凹んだ凹盆部48を有し、電極構造体2は凹盆部底面48aに立設されている。図(3A)に示す実施形態においては、凹盆部底面48aは、電極構造体保持板29の上面の一部により構成される。この実施形態の変形形態として、例えば図(5A)に示すように、電極構造体保持板と容器底板を一体に形成する場合には、容器底板の上面に直接、凹盆部48が設けられる。
【0061】
<電極構造体の固定> 電極構造体保持板29若しくは容器底板49に電極構造体2を固定するには、電極構造体保持板29若しくは容器底板49にスリットを設け、該スリットに電極構造体2を構成する陽極部材21に延設された陽極接続突起25と(
図3を参照)、陰極部材22に延設された陰極接続突起26と、を挿入して導線を接続し、該スリットに耐腐食性の樹脂を流し込んで硬化させることにより、容器4内と回路室9との間の水密を保つように、電極構造体2を電極構造体保持板29若しくは容器底板49に固定することができる。
【0062】
容器側壁4a、容器底板49、電極構造体保持板29、及び電極構造体支持枠28を構成する素材は特に限定されないが、例えばアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂を好適に使用することができる。ヘッド部カバー51a、レバー54、電源部6、回路室側壁95、回路室底板96を構成する素材は特に限定されないが、例えばABS樹脂やポリカーボネート樹脂を好適に使用することができる。
【0063】
<回路室と接続端子> 回路室9の回路室底板96には、載置時の電源部6の電極部62に対応する位置に、接続端子部91が設けられている。接続端子部91は、プラス端子91a、マイナス端子91b、制御端子91cの3本の針状端子からなり、いずれの針状端子にもスプリング機構(図示せず)が設けられていて、載置時にはそれぞれの針状端子が、電極部62の対応する環状電極であるプラス電極62a、マイナス電極62b、又は制御電極62cと、スプリングの復元力により確実な電気的接触を行う。接続端子部91からプリント基板92を介して、直流電圧及び直流電流が電極構造体2の陽極接続突起25及び陰極接続突起26に供給される。
【0064】
<生成後のオゾン濃度の変化>
図8は、後述する本発明の実施例において、電気分解によりオゾン水を生成した後のオゾン水のオゾン濃度の時間変化を示すグラフ図である。曲線C1は115mLの原料水を4分間だけ電気分解してオゾン水を生成した場合(実施例1)のオゾン濃度を示し、曲線C2は80mLの原料水を2分間だけ電気分解してオゾン水を生成した場合(実施例2)のオゾン濃度を示す。横軸には電気分解終了からの経過時間をとっている。電気分解の終了直後はオゾン水のオゾン濃度が均一でなく、測定濃度が安定しないため、経過時間が4分以降のデータを示している。いずれの場合にもオゾン濃度は経過時間と共に減少する。ケース1の場合には20分後のオゾン濃度が0.5mg/L以上であり、ケース2の場合は10分後のオゾン濃度が0.5mg/L以上であった。ケース1は、図(3C)において第1水位線43bまで原料水43を容器4に入れた場合に対応し、ケース2は、第2水位線43cまで入れた場合に対応する。
【0065】
<オゾン水生成中の状態表示> 本発明の一実施形態では、電気分解によるオゾン水の生成中に、主ランプ92bと、電気分解に供する原料水の体積に応じて緑色LED灯からなる第1生成ランプ65b又は第2生成ランプ65cのいずれかを点灯させて現在のオゾン水生成噴霧装置の状態を使用者に表示する。主ランプ92bは、回路室9のプリント基板92の上面に設けられた青色LED灯であり、半透明な容器底板9を透して容器4内の原
料水を照らす(
図3A参照)。オゾン水の生成が完了すれば、主ランプ92bと、第1生成ランプ65bまたは第2生成ランプ65cは消灯される。
【0066】
<オゾン水の効力の表示> 本発明の一実施形態では、電気分解によるオゾン水の生成が完了すると、青色LED灯である主ランプ92bが消灯して、替わりに緑色LED灯である副ランプ92cが点灯する。副ランプ92cは、回路室9のプリント基板92の上面に設けられた緑色LED灯であり、半透明な容器底板9を透して容器4内の原料水を照らす(
図3A参照)。副ランプ92cは、オゾン水の生成完了後、電気分解に供された原料水の体積に応じて所定の時間だけ点灯したのち、消灯される。原料水43を容器4の第1水位線43bまで入れて、第1生成ボタン64bを押圧することによりオゾン水を生成した場合には、副ランプ92cは第1有効時間(例えば20分間)だけ点灯し、原料水43を容器4の第2水位線43cまで入れて、第2生成ボタン64cを押圧することによりオゾン水を生成した場合には、副ランプ92cは第2有効時間(例えば10分間)だけ点灯する。第1有効時間及び第2有効時間は、噴霧されるオゾン水の除菌・消臭効果を考慮して決める。副ランプ92cが点灯している間に、オゾン水生成噴霧器1を手で把持し、電源部6から持ち上げて、レバー54を指で回動させることによりオゾン水を噴霧すれば、噴霧時の容器4内のオゾン水のオゾン濃度は0.5mLを下回ることはなく、一定の除菌・消臭効果が期待できる。
【0067】
<制御部の構成> 電源部6は制御部63を有する。制御部63は、操作ボタン64からの操作入力に応じて、電極部62の各電極の電位と、各電極を通して流れる電流を制御するとともに、表示ランプ65の各ランプの点灯と消灯を制御し、更に、制御電極62cを通して容器4の回路室9のプリント基板92に設けられた副制御部92aに制御信号を送る。副制御部92aは、制御部63からの制御信号を受けて、電極構造体2の陽極接続突起25及び陰極接続突起26の電位と、各接続突起を通して流れる電流を制御するとともに、主ランプ92b及び副ランプ93cの点灯と消灯を制御する。制御部63は、CPUとタイマと揮発性のメモリ及び記憶手段を有し、副制御部92aも、CPUと揮発性のメモリ及び記憶手段を有する。
【0068】
図9は、本発明の一実施形態のオゾン水生成噴霧装置7において、制御部63が行う制御の主制御フローを示すフロー図である。オゾン水生成噴霧装置7の電源コードがコンセントに差し込まれると、ステップS1で主制御フローがスタートする。次いで、ステップS2では、電源に接続されているかどうかがチェックされ、接続されていればステップS3に進み、接続されていなければステップS2に戻る。ステップS3では、電源ランプを所定時間(例えば3秒間)だけ点灯し、電源に接続されたことを使用者に表示する。次いでステップS4では、オゾン水生成噴霧器1が電源部6に着座しているかどうかがチェックされ、着座していればステップS5に進み、着座していなければステップS4に戻る。次いでステップS5では、状態を記憶する変数「state」に初期値0が代入される。次いでステップS6,S7,S8では、第1生成ボタン64b、第2生成ボタン64c、電源ボタン64aのいずれかが押圧されたか否かがチェックされ、第1生成ボタン64bが押圧されたならばステップS9に進み、第2生成ボタン64cが押圧されたならばステップS10に進み、電源ボタン64aが押圧されたならばステップS11に進み、いずれのボタンも押圧されなかったならばステップS4に戻る。ステップS9では、変数「state」に値1を代入し、第1生成ランプ65bを点灯状態にし、変数「t
E」に第1生成処理時間(例えば240秒)を代入して、ステップS12に進む。ステップS10では、変数「state」に値2を代入し、第2生成ランプ65cを点灯状態にし、変数「t
E」に第2生成処理時間(例えば120秒)を代入して、ステップS12に進む。ステップS11では、電源ランプ65aを所定時間(例えば3秒間)だけ点灯し、終了処理を行うステップS14に進む。
【0069】
ステップS12では、後述するオゾン水の生成処理を行う。次いでステップS13では、後述するオゾン水の生成後処理を行い、ステップS14に進む。ステップS14では、後述する終了処理を行い、ステップS15に進む。ステップS15では、主制御フローが終了する。
【0070】
図10を参照して、ステップS12の生成処理のフローについて説明する。生成処理では、所定の時間だけ原料水を電気分解して、オゾン水を生成する。その際、使用者に現在の状態をわかりやすく表示することが望ましい。ステップS12sでは、生成処理がスタートする。次いでステップS20では、タイマの時刻tを初期値ゼロに設定し(t←0)、タイマをスタートする。次いでステップS21では、異常の有無をチェックする。異常とは、電極部2の電流値の異常、温度センサが検知する温度の異常、オゾン水生成噴霧器1が電源部6に載置されていないことの検知等を意味する。異常があれば、後述するステップS25のエラー終了処理へと進み、更にステップS15へと進んで主制御フローを終了する。ここで、エラー終了処理は、表示ランプ65を所定時間だけ点滅状態にしたのち、すべてのランプを消灯し、接続端子部91のすべての端子をアースする処理である。異常がなければ、ステップS22へと進む。ステップS22では、電源ボタンが押圧されたか否かが判定され、YESであればステップS26へ進み、NOであればステップS23へと進む。ステップS26では電源ランプ65aを所定の時間(例えば3秒間)だけ点灯して、ステップS27の終了処理へと進み、更にステップS15へと進んで主制御フローを終了する。ここで、終了処理は、すべてのランプを消灯し、接続端子部91のすべての端子をアースする処理である。ステップS23では、電極構造体2を通電状態にするとともに、主ランプ92bを点灯状態とし、ステップS24へと進む。なお、電極構造体2を通電状態にするためには、制御部63は制御電極62cを介して副制御部92aに制御信号を送り、副制御部92cは該制御信号に基づいて、電極構造体2を通電状態にする。また、主ランプ92bを点灯状態にするためには、制御部63は制御電極62cを介して副制御部92aに制御信号を送り、副制御部92aは該制御信号に基づいて、主ランプ92bを点灯状態にする。副ランプ92cも同様である。ステップS24では、タイマの時刻tが変数「t
E」より大きいか否かが判定される。YESであれば、ステップS12eに進んで生成処理が終了し、主制御フローに復帰する。NOであれば、ステップS21に戻る。
【0071】
図11を参照して、ステップS13の生成後処理のフローについて説明する。生成後処理では、電気分解後に、生成されたオゾン水の現在のオゾン濃度が除菌・消臭に有効な濃度であるのか否かを、使用者にわかりやすく表示することが望ましい。ステップS13sでは、生成後処理がスタートする。次いでステップS30では、上記と同様に制御部63と副制御部92aの連携により、電極構造体2を非通電状態にし、主ランプ92bを消灯状態とする。次いでステップS31,S32では、変数「state」の値が、1、2、1でも2でもない、のいずれであるかチェックされ、もしstate=1ならばステップS33に進み、もしstate=2ならばステップS34に進み、もし1でも2でもなければ、これは異常であるから、ステップS25に進んで、前記エラー終了処理を行い、更にステップS15へ進んで、主制御フローを終了する。ステップS33では、第1生成ランプ65bを消灯状態にし、変数「t
G」に第1有効時間(例えば20分)を代入してステップS35へと進む。ステップS34では、第2生成ランプ65cを消灯状態にし、変数「t
G」に第2有効時間(例えば10分)を代入してステップS35へと進む。ステップS35では、タイマの時刻tに初期値0を代入し(t←0)、タイマをスタートし、副ランプ92cを点灯状態にし、ステップS36に進む。ステップS36では、電源ボタン64aが押圧されたか否かが判定される。YESであれば、ステップS39に進み、電源ランプを所定時間(例えば3秒間)だけ点灯した後に、ステップS13eへと進み、生成後処理を終了して主制御フローへと復帰する。NOであればステップS37へと進む。ステップS37では、タイマの時刻tが変数「t
G」より大きいか否かが判定され、YES
であればステップS38へと進み、NOであればステップS36へと戻る。ステップS38では、副ランプ92cを消灯状態とした後に、ステップS13eへと進む。ステップS13eでは、生成後処理を終了して主制御フローへと復帰する。
【0072】
<電極構造体の構成> 次に、本発明の実施形態に係る電極構造体の種々の構成を説明する。
図12は、本発明の一実施形態に係る電極構造体の分解斜視図(12A)及び斜視図(12B)であり、
図13は、
図12に示した電極構造体の上面図(13A)及び側面図(13B)である。本実施形態において、電極構造体2は、矩形板状の陽極部材21と、陽極部材21に電極間隙23を隔てて対面する断面形状がU字型若しくはコの字型の陰極部材22と、陽極部材21と陰極部材22とで挟持された紐状絶縁スペーサ30と、電極間隙23のうち、紐状絶縁スペーサ30以外の空間部分である間隙流路24と、で構成される。本実施形態に於いては、紐状絶縁スペーサ30は、陽極部材21を巻回するOリング30aである。Оリング30aは、そのいずれの部分も、容器4を載置して電気分解を行う際に、鉛直方向(鉛直方向を示す矢印45が指し示す鉛直上方の向きを参照)と交差する方向に配向されている。特に、紐状絶縁スペーサ30の配向方向31(Oリング30aの最大傾斜直径の方向)と鉛直方向を示す矢印45とがなす角θは、0°ではなく、鋭角を成している。
【0073】
図12において、陽極部材21を巻回するOリング30aの個数は2個に限られず、1個でもよく、3個以上でもよい。また、陽極部材21を巻回する紐状絶縁スペーサ30は、Oリング30aでなくてもよく、螺旋状に陽極部材21を巻回する紐30bでもよい。また、紐状絶縁スペーサ30は、必ずしも陽極部材21の全周を隙間なく巻回する必要はなく、本実施形態の変形形態においては、電極間隙23内の原料水43の移動性を確保する観点から、分離した複数の円弧から構成されていてもよい。また、紐状絶縁スペーサ30は、必ずしも陽極部材21の全周に渡って同じ太さである必要はなく、本実施形態の別の変形形態においては、電極間隙23内の陰極部材22の近傍の原料水43の移動性を確保する観点から、場所によって太さが異なる紐状絶縁材料から構成されていてもよい。
本発明の紐状絶縁スペーサ30の材質としては、特に限定されるものではないが、フッ素樹脂、軟質フッ素樹脂、バイトンゴム、シリコンゴム、塩ビゴム、エチレンプロピレンゴム等が利用可能であり、耐食性の観点から、フッ素樹脂や軟質フッ素樹脂等が好ましい。
【0074】
図12において、陰極部材22には、複数の孔27が設けられている。陰極部材22に複数の孔を設けることにより、電極間隙23と容器4内の原料水43の流通を確保し、オゾンの生成反応を加速し、オゾン水42を効率的に生成することができる。
図12において、陰極部材22は、断面形状がU字型若しくはコの字型であり、その側面に開口部が1つある。なお、本発明では、
図12において陰極部材22に孔を設けない構成も可能である。この点は、
図1〜7および
図13〜17に示す実施形態についても同様である。
【0075】
図13において、Oリング30aで構成される紐状絶縁スペーサ30は弾性素材からなることが好ましい。その場合、電極構造体2は、紐状絶縁スペーサ30により巻回された陽極部材21と、陰極部材22との挿嵌により構成される。本形態によれば、接着剤をもちいることなく、単なる挿嵌により電極構造体2を構成でき、その構成が紐状絶縁スペーサ30の弾性により維持されるので、構造がシンプルで製造が容易な電極構造体2を有するオゾン水生成噴霧器1を提供できる。
【0076】
本発明において、陽極部材21を構成する素材は、導電性を有する限り特に限定されるものではないが、耐食性及びオゾン生成反応の触媒作用の観点から少なくともその表面は白金、イリジウム等の貴金属及びそれらの酸化物、又は、ニオブ酸化物、又は、タンタル酸化物、又は、カーボンを含むことが好ましい。陽極部材21には、陽極接続突起25が
延設されている。
【0077】
本発明において、陰極部材22を構成する素材は、導電性を有する限り特に限定されるものではないが、発生する水素に対して脆化しないという観点から、白金族元素、ニッケル、ステンレス、チタン、ジルコニウム、金、銀、カーボン等が好ましい。陰極部材22には、陰極接続突起26が延設されている。
【0078】
図14は、本発明の別の一実施形態における電極構造体2の分解斜視図(14A)、斜視図(14B)、及び、その一変形形態の斜視図(14C)である。本実施形態の構成は、
図12に示す実施形態と多くの点で共通であるから、相違点を中心に説明する。図(14A)及び図(14B)に示す実施形態においては、陽極部材21は円柱形状であり、陰極部材22は円筒形状である。Oリング30aで構成される紐状絶縁スペーサ30が陽極部材21の円柱の側面を巻回している。紐状絶縁スペーサ30は、陽極部材21と陰極部材22の間に挟持されており、その配向方向は鉛直方向と交差する方向である。図(14C)は、本実施形態の変形形態を示す。本変形形態においては、陽極部材21を構成する貴金属等の使用量を節減する観点から、陽極部材21は円筒形状をなしている。なお、陽極部材21を巻回するOリング30aの個数は2個に限られず、1個でもよく、3個以上でもよい。また、陽極部材21を巻回する紐状絶縁スペーサ30は、Oリング30aでなくてもよく、螺旋状に陽極部材21を巻回する紐30bでもよい。また、紐状絶縁スペーサ30は、必ずしも陽極部材21の全周を隙間なく巻回する必要はなく、本実施形態の変形形態においては、電極間隙23内の原料水43の移動性を確保する観点から、分離した複数の円弧から構成されていてもよい。また、紐状絶縁スペーサ30は、必ずしも陽極部材21の全周に渡って同じ太さである必要はなく、本実施形態の別の変形形態においては、電極間隙23内の陰極部材22の近傍の原料水43の移動性を確保する観点から、場所によって太さが異なる紐状絶縁材料から構成されていてもよい。
【0079】
図15は、本発明の更に別の一実施形態に係る電極構造体2の分解斜視図(15A)及び斜視図(15B)である。本実施形態の構成は、既述の実施形態と多くの点で共通であるから、相違点を中心に説明する。本実施形態は、
図12に示した実施形態と陰極部材22の構造のみが異なる。本実施形態において、陰極部材22は2枚の分離した板からなり、これら2枚の板が、紐状絶縁スペーサ30により巻回された陽極部材21を挟持することにより電極構造体2が構成される。電極構造体2を構成する各部材は、接着、融着、締着等により互いに固定される。
図15において、陰極部材22は2枚の分離した板からなり、その側面に開口部が2つあるから、電極間隙23に外部から出入りする原料水43の移動の自由度が大きい。そのため、電極構造体2の外部から原料水43を電極間隙23内に効率的に導くことができ、又、生成したオゾン水42を電極間隙23内から電極構造体2の外部へと効率的に送り出すことができるので、オゾン水を効率的に生成することができる。
【0080】
図16は、本発明の更に別の一実施形態に係る電極構造体2の斜視図である。本実施形態の構成は、既述の実施形態と多くの点で共通であるから、相違点を中心に説明する。本実施形態は、
図12に示す実施形態の変形形態である。
図16において、電極構造体2は、nを2以上の整数として、紐状絶縁スペーサ30により巻回されたn枚の板状の陽極部材21が、n個の凹部をもつ板状の陰極部材22の凹部にそれぞれ挿嵌されて構成されている。nが2の場合には、陰極部材の断面形状は「mの字型」である。本実施形態においては、オゾン生成反応の起きる陽極部材21の表面積が大きくなるので、オゾン水を効率的に生成することができる。
【0081】
図17は、本発明の更に別の一実施形態に係る電極構造体2の斜視図である。本実施形態の構成は、既述の実施形態と多くの点で共通であるから、相違点を中心に説明する。本
実施形態は、
図15に示す実施形態の変形形態である。
図17において、電極構造体2は、nを2以上の整数として、紐状絶縁スペーサ30により巻回されたn枚の板状の陽極部材21が、(n+1)枚の板状の陰極部材22の間に挿嵌され、接着、融着、締着等により各部材が互いに固定されて構成されている。本実施形態においては、オゾン生成反応の起きる陽極部材21の表面積が大きくなるので、オゾン水を効率的に生成することができる。
【0082】
図18は、本発明の実施形態において、板状の陽極部材21に紐状絶縁スペーサ30を巻回する種々の仕方を示す説明図である。
図(18A)に示す陽極部材21は、陽極接続突起25を除く部分が長方形形状で、2輪のOリング30aからなる紐状絶縁スペーサ30が巻回され、鉛直方向を示す矢印45と紐状絶縁スペーサ30の配向方向31とのなす角度θは、θ=60°である。
図(18C)に示す陽極部材21は、図(18A)と同じ陽極部材に、2輪のOリング30aからなる紐状絶縁スペーサ30が巻回されて水平方向に配向され、前記角度θがθ=90°である。
図(18D)に示す陽極部材21は、図(18A)と同じ陽極部材に、2輪のOリング30aからなる紐状絶縁スペーサ30が巻回されて鉛直方向に配向され、前記角度θがθ=0°である。
図(18B)に示す陽極部材21は、図(18A)と同じ陽極部材に、紐からなる紐状絶縁スペーサ30が螺旋状に巻回されて、鉛直方向と60°の角度をなす方向に配向され、前記角度θがθ=60°である。
【実施例】
【0083】
図5に示すように、本発明においては、容器4の内底面46に凹盆部48を設け、凹盆部底面48aに電極構造体2を立設することにより、容器4内の原料水の対流を促し、凹盆部48を設けない従来技術の場合と比べて、生成するオゾン水の濃度を高くすることができる。他の条件を一定に保ちつつ、内底面46に凹盆部48がある場合とない場合とで、生成するオゾン水の濃度を比較する実験を行った。
【0084】
<実施例:凹盆部を設けた場合>
図(18C)に示すように、陽極部材21の陽極接続突起25を除く部分が長方形形状で、長方形の2辺の長さが14mmと22mmであり、厚みが1.0mmの白金製の陽極部材21に、太さ2.0mmの2輪のOリング30aからなる紐状絶縁スペーサ30を巻回して、鉛直方向と90°の角度をなす方向に配向させた。この、紐状絶縁スペーサ30を巻回した陽極部材21を、
図12に示す断面形状がU字型をなす陰極部材22に挿嵌して電極構造体2を構成した。厚み0.6mmのチタン製の陰極部材22は、陰極接続突起26を除いて、正面視において長方形形状であり、長方形の2辺の長さは15mmと23mmである。また、陰極部材22の側面視における幅は5mmである。陰極部材22は多数の孔27を有する。この電極構成体2を、
図1に示す透明な容器4の容器底板49の平坦な上底面46に設けた凹盆部48の凹盆部底面48aの中央に立設した。容器4は、内直径50mm、高さ80mmの円筒形状であり、満杯時の容積は1.6×10
2mLである。凹盆部48は平面視において長方形状であり、長方形状の凹盆部底面48aとその周囲を囲う鉛直な凹盆部斜面48bからなり、長方形の2辺の長さは19mmと9mmである。また、鉛直な凹盆部斜面48bの高さは5mmである。容器4内に115mL(実施例1:第1水位線43bに対応)又は80mL(実施例2:第2水位線43cに対応)の原料水43を投入して電極構造体2を水面下に浸漬させたのち、水温を調整して、水温が20℃になった状況が確認できたら、陽極部材21と陰極部材22の間に12Vの定電圧を240秒(実施例1)又は120秒(実施例2)の間、印加して電気分解を行った。その間、電流値は約1.0Aであった。水温を20℃に保ちつつ、電気分解の終了から5分経過後ただちに、容器4内の原料水43(及びオゾン水42)を洗浄されたビーカーに移
し、パックテスト(協立理化学研究所製、オゾンWAK−O3)を用いてオゾン濃度を測定した。実験を5回繰り返して、5回分の測定の平均値をオゾン濃度の測定値とした。オゾン濃度の測定値は1.8mg/L(実施例1)及び1.1mg/L(実施例2)であった。なお、原料水43としては、硬度及びTDS値が全国水道水の平均値に近く、かつ、ほぼ一定であることが確認できた市販のミネラルウォーター(ボルヴィック、キリン株式会社)を用いた。
【0085】
<比較例:凹盆部を設けない場合>
実施例と同様に電極構造体2を構成し、
図1に示す透明な容器4の容器底板49の平坦な上底面46の中央に立設した。上底面46に凹盆部は設けなかった。他の条件は実施例1及び2と全く同じに揃えて、電気分解によるオゾン水の生成とオゾン濃度の測定を行った。容器4内に115mL(比較例1:第1水位線43bに対応)又は80mL(比較例2:第2水位線43cに対応)の原料水43を投入して、同様に240秒(比較例1)又は120秒(比較例2)の間、電気分解を行い、電気分解終了の5分後にオゾン濃度を測定した。電気分解中は12Vの定電圧を加え、電流値は約1.0Aであった。5回分の測定の平均値をオゾン濃度の測定値とした。オゾン濃度の測定値は0.6mg/L(比較例1)及び0.4mg/L(比較例2)であった。
【0086】
実施例1、2において測定されたオゾン濃度は、比較例1、2のそれぞれ約3倍であった。電気分解中に、容器4内の原料水43に生じる対流を目視によって確認すると、比較例1で生じる対流は実施例1に比べて明らかに弱く、かつ電極構造体2の付近に局在して小規模であった。同様に、比較例2で生じる対流も実施例2に比べて明らかに弱く、かつ電極構造体2の付近に局在して小規模であった。容器4の内底面46に凹盆部48を設け、凹盆部底面48aに電極構造体2を立設することで、容器4内の原料水の対流が促進され、電気分解により効率的にオゾンが生成され、生成されるオゾン水のオゾン濃度を約3倍に高めることが可能であることがわかった。
【0087】
<安全性の検証> 実施例1において生成した温度20℃のオゾン水を、室温25℃の1m
3の空間内で噴霧機構5を手で把持してレバー54を回動させることにより10回噴霧した後の空間オゾン濃度を計測した。5回実験してその平均値を求め、下表に示す結果を得た。噴霧1回当たりのオゾン水の吐出量は約0.4mLである。
オゾン水の生成完了からの時間 空間オゾン濃度(ppm)
(噴霧前) 0.00250
0分後(生成完了直後) 0.00625
1分後 0.00875
15分後 0.00500
30分後 0.00250
高濃度のオゾンは人体に有害であるが、本発明のオゾン水生成噴霧器においては、ミスト状にして噴霧することでオゾン濃度は低くなり、空間オゾン濃度は0.01ppm以下の安全値となることがわかった。
【0088】
<除菌効果の検証>
実施例1において生成した温度20℃のオゾン水を、生成完了から1分後にプレパラート上の対象菌に滴下し、15秒後の生菌数を光学顕微鏡で調べた。その結果、対象菌の99%が除菌されていることが確認できた。対象菌は、サンプル家庭の台所やトイレから採取した。
【0089】
<消臭効果の検証>
実施例1において生成した温度20℃のオゾン水を、生成完了から5分後に、室温20℃のもとで気体状の悪臭物質と空気を封入した体積10Lの袋に、噴霧機構5を手で把持
してレバー54を回動させることにより10回噴霧し、噴霧前及び10分後の濃度をガスクロマトグラフで計測して消臭率を計算した。5回実験してその平均値を求め、下表に示す結果を得た。なお、イソ吉草酸は体臭の原因物質の1つである。
悪臭物質 10分後の消臭率
イソ吉草酸 84.6%
酢酸 80.0%
アンモニア 45.0%
イソ吉草酸、酢酸、及びアンモニアは、トイレや靴箱の臭い、ペット臭、体臭、タバコや車の臭い、衣服、家具、ソファやカーテンなどの悪臭の原因物質である。
本発明のオゾン水生成噴霧器により生成されたオゾン水(電解水)を噴霧することで、これらの悪臭に対して、消臭効果が発揮されることがわかった。
【0090】
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の組合せ、変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【解決手段】原料水43を貯留するための容器4と、容器4内の原料水43を電気分解してオゾン水42を生成するための電極構造体2と、オゾン水42を噴霧するための噴霧機構5と、を備え、容器4の内底面46は下方に凹んだ凹盆部48を有し、凹盆部48は、凹盆部底面48aとその周囲を囲う凹盆部斜面48bとで構成され、容器4内の凹盆部底面48aに電極構造体2が立設されているオゾン水生成噴霧器1であり、原料水43が凹盆部斜面48bを凹盆部底面48aに向かって流れ下る下降水流を生じさせて容器4内の原料水43の対流を促進し、電極構造体2に原料水43を供給して、電気分解によるオゾン生成反応を進行させ、生成されるオゾン水42のオゾン濃度を高くする。