特許第6890828号(P6890828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890828
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】屋根上構造物固定金具
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20210607BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20210607BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20210607BHJP
【FI】
   E04D13/00 KETD
   E04D13/18
   H02S20/23 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-148098(P2017-148098)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-27156(P2019-27156A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】503341996
【氏名又は名称】エバー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】江原 正也
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−114576(JP,A)
【文献】 特開2001−53323(JP,A)
【文献】 特開2017−40120(JP,A)
【文献】 実開平6−44870(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0222670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04D 13/18
H02S 20/23
E04D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部にそれぞれ被係合凸部及び係合凸部を有する複数の屋根材を一方の係合凸部を他方の被係合凸部に挿入して凸条係合部を形成し、屋根上構造物を前記屋根材と共に野地板に締結する共に屋根上構造物固定金具において、
前記屋根上構造物を下方側から支持するベース部材と、
このベース部材に設けられ、前記凸条係合部を挟持するブラケットと、
このブラケットを挟持方向へ締め付ける締付ボルトと、
前記ベース部材と前記凸条係合部との間に配置され、前記凸条係合部を上側から覆う鞍型のカバー部材と、
このカバー部材の上部にその下端が設けられ、上端が前記ベース部材に貫通するネジ案内パイプと、
前記ブラケット間に配置され、前記ネジ案内パイプの外側面に取り付けられ、前記締付ボルトを挿通するボルト案内パイプと、
前記ネジ案内パイプに案内され、前記カバー部材及び前記凸条係合部を介して前記野地板に締結するネジ部材を備えている屋根上構造物固定金具。
【請求項2】
前記カバー部材の底部には緩衝材が配置されている請求項1に記載の屋根上構造物固定金具。
【請求項3】
前記ネジ案内パイプは、前記ベース部材側に固定された上部パイプと、前記カバー部材側に固定された下部パイプとを有し、前記上部パイプと前記下部パイプとは、挿脱自在に形成されている請求項1に記載の屋根上構造物固定金具。
【請求項4】
両端部にそれぞれ被係合凸部及び係合凸部を有する複数の屋根材を一方の係合凸部を他方の被係合凸部に挿入して凸条係合部を形成し、屋根上構造物を前記屋根材と共に野地板に締結する共に屋根上構造物固定金具において、
前記屋根上構造物を下方側から支持するベース部材と、
このベース部材に設けられ、前記凸条係合部を挟持するブラケットと、
このブラケットを挟持方向へ締め付ける締付ボルトと、
前記ベース部材と前記凸条係合部との間に配置され、前記凸条係合部を上側から覆う鞍型のカバー部材と、
このカバー部材の上部にその下端が設けられ、上端が前記ベース部材に貫通するネジ案内パイプと、
前記ブラケット間に配置され、前記ネジ案内パイプの外側面に取り付けられ、前記締付ボルトを挿通するボルト案内パイプと、
前記ベース部材の上面側に、前記ネジ案内パイプと同軸的に設けられた緩衝材製の筒体と、
前記筒体及び前記ネジ案内パイプに案内され、前記カバー部材及び前記凸条係合部を介して前記野地板に締結するネジ部材を備えている屋根上構造物固定金具。
【請求項5】
前記カバー部材の底部には緩衝材が配置されている請求項4に記載の屋根上構造物固定金具。
【請求項6】
前記ネジ案内パイプは、前記ベース部材側に固定された上部パイプと、前記カバー部材側に固定された下部パイプとを有し、前記上部パイプと前記下部パイプとは、挿脱自在に形成されている請求項4に記載の屋根上構造物固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野地板上に取り付けられる屋根材と、野地板及び屋根材上に配置される太陽光パネル等の屋根上構造物とを強固に取り付けるための屋根上構造物固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の野地板上には屋根材が配置され、受けた雨水を軒先側に流している。野地板の軒先側には、軒先用の水切り部材が設けられており、屋根材上を流れた雨水を破風板の先方位置(例えば、雨樋等)に案内する機能を有している(例えば、特許文献1参照。)。屋根材として、図14に示すような、低コスト、かつ、施工容易性を兼ね備えた屋根材Yが知られている。なお、図14は軒先側から見た図である。
【0003】
屋根材Yは、野地板Nに積層される平面部Ya及び右端部に位置する固定部Ybを有し、平面部Yaの左側端部に設けられた被係合凸部Ta及び右側端部に設けられた係合凸部Tbを備えている。被係合凸部Ta及び係合凸部Tbは、いずれも茸型をしているため、茸型締結部と称している。屋根材Yを野地板N上に施工する場合、平面部Yaを野地板N上に位置決めした後、固定部YbをビスBで野地板Nに固定する。ネジ留めの間隔は、屋根材の種類によってほぼ一定間隔に定められている(例えば、455mm)。そして、図14中左側の1枚目の係合凸部Tbに、右側に位置する2枚目の被係合凸部Taを被せることで係合する。被係合凸部Taと係合凸部Tbとが結合することで、棟側から軒先側に向けて桟状の凸条係合部Tが形成される。
【0004】
このような屋根材Y上に、太陽光電池パネルP等の屋根上構造物を設置する場合、図15に示すように、太陽光電池パネルPを屋根材Yの凸条係合部Tに太陽電池パネル留め金具100X(屋根上構造物固定金具)にボルト110及びブラケット120を介して固定する場合がある。太陽電池パネル留め金具100Xは太陽光電池パネルPの寸法に応じた所定間隔で設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−150089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した屋根上構造物固定金具では、次のような問題があった。すなわち、一旦、屋根材Yの施工をしてしまうと、屋根材Yを野地板N上に止め付けるためのビスBがどの位置にあるかが、判別できなくなる。このような状態で、太陽電池パネル留め金具100Xを凸条係合部Tに固定すると、例えば、図16及び図17に示すように、屋根材Yを留めるビスBの間に太陽電池パネル留め金具100Xが設置された場合は、上下2本のビスBに力がかかり、屋根材YがたわみビスBが抜けにくい。一方、図17及び図18に示すように、屋根材Yを留めるビスBの上に太陽電池パネル留め金具100Xが設置されるとビスB1本に引っ張り上げられる力がかかり、ビスBが抜けやすい。
【0007】
なお、凸条係合部Tは先端が曲面であるため、ネジをねじ込もうとすると、凸条係合部Tの先端の面で滑ってしまい凸条係合部Tに刺さりにくく、または、垂直方向にねじ込むことができないことから十分な固定力を発揮させることができない。したがって、凸条係合部Tの位置でネジで固定することは行われていなかった。
【0008】
そこで本発明は、先端が曲面状に形成された締結部を有する屋根材であっても、野地板との締結力を十分に発揮することができると共に、屋根上構造物を強固に固定することができる屋根上構造物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の屋根上構造物固定金具は次のように構成されている。
【0010】
両端部にそれぞれ被係合凸部及び係合凸部を有する複数の屋根材を一方の係合凸部を他方の被係合凸部に挿入して凸条係合部を形成し、屋根上構造物を前記屋根材と共に野地板に締結する共に屋根上構造物固定金具において、前記屋根上構造物を下方側から支持するベース部材と、このベース部材に設けられ、前記凸条係合部を挟持するブラケットと、このブラケットを挟持方向へ締め付ける締付ボルトと、前記ベース部材と前記凸条係合部との間に配置され、前記凸条係合部を上側から覆う鞍型のカバー部材と、このカバー部材の上部にその下端が設けられ、上端が前記ベース部材に貫通するネジ案内パイプと、前記ブラケット間に配置され、前記ネジ案内パイプの外側面に取り付けられ、前記締付ボルトを挿通するボルト案内パイプと、前記ネジ案内パイプに案内され、前記カバー部材及び前記凸条係合部を介して前記野地板に締結するネジ部材を備えている。
【0011】
両端部にそれぞれ被係合凸部及び係合凸部を有する複数の屋根材を一方の係合凸部を他方の被係合凸部に挿入して凸条係合部を形成し、屋根上構造物を前記屋根材と共に野地板に締結する共に屋根上構造物固定金具において、前記屋根上構造物を下方側から支持するベース部材と、このベース部材に設けられ、前記凸条係合部を挟持するブラケットと、このブラケットを挟持方向へ締め付ける締付ボルトと、前記ベース部材と前記凸条係合部との間に配置され、前記凸条係合部を上側から覆う鞍型のカバー部材と、このカバー部材の上部にその下端が設けられ、上端が前記ベース部材に貫通するネジ案内パイプと、前記ブラケット間に配置され、前記ネジ案内パイプの外側面に取り付けられ、前記締付ボルトを挿通するボルト案内パイプと、前記ベース部材の上面側に、前記ネジ案内パイプと同軸的に設けられた緩衝材製の筒体と、前記筒体及び前記ネジ案内パイプに案内され、前記カバー部材及び前記凸条係合部を介して前記野地板に締結するネジ部材を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、先端が曲面状に形成された締結部を有する屋根材であっても、十分に野地板との締結力を発揮することができると共に、太陽光パネルを強固に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る太陽電池パネル留め金具が取り付けられた屋根構造の要部を示す側面図。
図2】同太陽電池パネル留め金具を一部切欠して示す側面図。
図3】同太陽電池パネル留め金具の締結状態を示す正面図。
図4】同太陽電池パネル留め金具の締結状態を示す斜視図。
図5】同太陽電池パネル留め金具に組み込まれた締付ボルト、ボルト案内パイプ、ネジ案内パイプ、カバー部材を示す斜視図。
図6A】同太陽電池パネル留め金具の締結手順を示す説明図。
図6B】同太陽電池パネル留め金具の締結手順を示す説明図。
図7A】同太陽電池パネル留め金具の締結手順を示す説明図。
図7B】同太陽電池パネル留め金具の締結手順を示す説明図。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る太陽電池パネル留め金具を一部切欠して示す側面図。
図9】本発明の第3の実施の形態に係る太陽電池パネル留め金具を一部切欠して示す側面図。
図10】同太陽電池パネル留め金具の締結状態を示す正面図。
図11】同太陽電池パネル留め金具の締結状態を示す斜視図。
図12】引張試験装置の構成を概略的に示す説明図。
図13】同引張試験装置による試験結果を示す説明図。
図14】茸型の係合部を有する屋根材の取付状態を示す説明図。
図15】同屋根材を用いた屋根構造の要部を示す側面図。
図16】同屋根材を用いた屋根構造の要部を示す側面図。
図17】同屋根材を用いた屋根構造の要部を示す側面図。
図18】同屋根材を用いた屋根構造の要部を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。なお、図中Nは野地板、Yは屋根材、Tは屋根材の凸条係合部、Bはビス、Pは太陽光電池パネル、Fはブラケットを示している。
【0015】
図1に示すように、野地板N上に屋根材Yが設置されている。屋根材Yは、野地板Nに積層される平面部Ya及び右端部に位置する固定部Ybを有し、平面部Yaの左側端部に設けられた被係合凸部Ta及び右側端部に設けられた係合凸部Tbを備えている(図6参照)。被係合凸部Ta及び係合凸部Tbは、いずれも先端が曲面状に形成された茸型をしているため、茸型締結部と称している。
【0016】
図2及び図3に示すように、太陽電池パネル留め金具(屋根上構造物固定金具)10は、パネル留め金具20と、凸条係合部Tを上側から覆う鞍型のカバー部材30と、このカバー部材30の上部に鉛直方向に設けられたネジ案内パイプ40と、このネジ案内パイプ40の外側面に水平方向に設けられたボルト案内パイプ50と、ネジ案内パイプ40に案内され、カバー部材30を介して野地板Nに締結するネジ部材60を備えている。
【0017】
パネル留め金具20は、ベース部材21と、このベース部材21の下面に設けられた一対のブラケット22と、このブラケット22を締め付ける2本の締付ボルト23と、ベース部材21に設けられた脚部25とを備えている。ベース部材21には太陽光電池パネルPをブラケットFを介して取り付けるための取付ボルト26が設けられている。ブラケット22は、凸条係合部Tを側面から挟み込み、締付ボルト23を締め付けることで強固に凸条係合部Tに取り付けられる。
【0018】
カバー部材30は、屋根材Y側が開口した鞍状に形成され、凸条係合部Tを覆うカバー本体31を備えている。カバー本体31の内側上部にはゴムやスポンジ等で形成された緩衝材32が配設されている。
【0019】
ネジ案内パイプ40は、その上端がベース部材21を貫通する上側パイプ41と、その下端がカバー部材30の頂部に接合された下部パイプ42から構成されている。上側パイプ41と下部パイプ42とは、挿脱自在に形成されており、ベース部材21とカバー部材30との間を伸縮自在につないでいる。ボルト案内パイプ50は、ブラケット22内部に配置され、上述した締付ボルト23が挿入される。図5は、締付ボルト23、ボルト案内パイプ50、ネジ案内パイプ40、カバー部材30の位置関係を示している。
【0020】
ネジ部材60は、先端側にネジが切られ、基端側にはネジが切られていない構造を有しており、ネジ案内パイプ40の上端からからカバー部材30及び凸状係合部Tの頂部に向けて挿入され、屋根材Y及び野地板Nに締結される。
【0021】
このように構成された太陽電池パネル留め金具10は、次のように用いる。最初に、屋根材Yを野地板Nに締結する。すなわち、屋根材Yの平面部Yaを野地板N上に位置決めした後、固定部YbをビスBで野地板Nに固定する。ネジ留めの間隔は、例えば、455mm等の寸法で一定に設定されている。左側の1枚目の係合凸部Tbに、右側に位置する2枚目の被係合凸部Taを被せることで係合する。被係合凸部Taと係合凸部Tbとが結合することで、棟側から軒先側に向けて桟状の凸条係合部Tが形成される。このようにして野地板N上に全ての屋根材Yを設置する。
【0022】
次に、太陽電池パネル留め金具10を屋根材Yに取り付ける。パネル留め金具20のブラケット22を凸条係合部Tに被せると同時に、カバー部材30を凸条係合部Tの上方から差し込む。図6Aに示すように、締付ボルト23をボルト案内パイプ50に挿入して、ブラケット22によって凸条係合部Tを挟む。図6Bに示すように、締付ボルト23をねじ込んで行くと、被係合凸部Taの頂部はブラケット22によって周囲が押さえられ、固定される。この時、ブラケット22の間隔がボルト案内パイプ50の全長と同じ寸法になった時点で締付ボルト23の締め込みは完了する。これにより、締付ボルト23の締め込み過ぎによるブラケット22や凸条係合部Tの破壊を防止する。
【0023】
次に、図7Aに示すように、ネジ案内パイプ40にネジ部材60をベース部材21側から通して、カバー部材30の頂部に当接した時点でねじ込んでゆく。さらに、ネジ部材60をねじ込んでいくと、ネジ部材60の先端は被係合凸部Taの曲面状の先端に当接するが、鞍型のカバー部材30は、ブラケット22によって挟み込まれて固定されることで、カバー部材30の頂部に接合された下部パイプ42は前後左右への動きが規制され、このカバー部材30に周囲を挟まれた被係合凸部Taについても側方への移動が規制されているため、図7Bに示すように、ネジ部材60は被係合凸部Taに孔開けしながら挿入することができる。さらにネジ部材60をねじ込むと、ネジ部材60の先端は野地板Nに達する。そして、ネジ部材60の頂部がベース部材21に当接し、その時点でねじ込みは終了する。ネジ部材60によって、太陽電池パネル留め金具10と、凸条係合部T及び野地板Nは強固に固定されることとなる。
【0024】
最後に、太陽電池パネル留め金具10に設けられた取付ボルト26によって太陽光電池パネルPの周縁に設けられたフレームFを固定する。
【0025】
このように構成された太陽電池パネル留め金具10によれば、野地板Nに屋根材Yを取り付けるビスBの位置に関わらず、太陽光電池パネルPに上向きの外力が加わった際に、最も力が加わる太陽電池パネル留め金具10の位置において強固に締結することができるので、屋根材Yが野地板Nから外れることを防止することができる。また、先端が曲面状に形成された凸条係合部Tであっても、凸条係合部Tの曲面でネジ部材60が滑り、斜めに締結されることがないため、十分に野地板Nとの締結力を発揮することが可能となる。
【0026】
図8は本発明の第2の実施の形態に係る太陽電池パネル留め金具10Aを一部切欠して示す側面図である。なお、この図において、図1図4と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0027】
太陽電池パネル留め金具10Aは、太陽電池パネル留め金具10に対し、締付ボルト23を1箇所に設けている点で異なっている。
【0028】
太陽電池パネル留め金具10Aにおいても、上述した太陽電池パネル留め金具10Aと同様に締付ボルト23とネジ部材60により、太陽電池パネル留め金具10Aと屋根材Y及び野地板Nを強固に固定することができる。
【0029】
図9は本発明の第3の実施の形態に係る太陽電池パネル留め金具10Bを一部切欠して示す側面図、図9は太陽電池パネル留め金具10Bの締結状態を示す正面図、図11は太陽電池パネル留め金具10Bの締結状態を示す斜視図である。これらの図において、図1図4と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0030】
図9及び図10に示すように、太陽電池パネル留め金具10Bは、パネル留め金具20と、凸条係合部Tを上側から覆う鞍型のカバー部材30と、このカバー部材30の上部に鉛直方向に設けられたネジ案内パイプ40と、このネジ案内パイプ40の外側面に水平方向に設けられたボルト案内パイプ50と、ベース部材21の上面側に、ネジ案内パイプ40と同軸的に設けられた樹脂材(緩衝材)製の筒体70と、これら筒体70及びネジ案内パイプ40に案内され、カバー部材30及び凸条係合部Tを介して野地板Nに締結するネジ部材60Aを備えている。なお、筒体70の材質としては、適当な弾力と水に対するシール性を有するものであることが好ましく、例えば、ゴム樹脂やスポンジ樹脂を用いる。また、軸方向の長さ(高さ)は、屋根材Yの種類等に応じて適宜調節することが可能であるが、例えば、5〜10mm程度が好ましい。
【0031】
パネル留め金具20は、ベース部材21と、このベース部材21の下面に設けられた一対のブラケット22と、このブラケット22を締め付ける2本の締付ボルト23と、ベース部材21に設けられた脚部25とを備えている。ベース部材21には太陽光電池パネルPをブラケットFを介して取り付けるための取付ボルト26が設けられている。ブラケット22は、凸条係合部Tを側面から挟み込み、締付ボルト23を締め付けることで強固に凸条係合部Tに取り付けられる。
【0032】
カバー部材30は、屋根材Y側が開口した鞍状に形成され、凸条係合部Tを覆うカバー本体31を備えている。カバー本体31の内側上部にはゴムやスポンジ等で形成された緩衝材32が配設されている。
【0033】
ネジ案内パイプ40は、その上端がベース部材21を貫通している。ボルト案内パイプ50は、ブラケット22内部に配置され、上述した締付ボルト23が挿入される。
【0034】
ネジ部材60Aは、先端側にネジが切られ、基端側にはネジが切られていない構造を有しており、筒体70の上端から、ネジ案内パイプ40を介してカバー部材30及び凸状係合部Tの頂部に向けて挿入され、屋根材Y及び野地板Nに締結される。
【0035】
このように構成された太陽電池パネル留め金具10Bは、次のように用いる。最初に、屋根材Yを野地板Nに締結する。すなわち、屋根材Yの平面部Yaを野地板N上に位置決めした後、固定部YbをビスBで野地板Nに固定する。ネジ留めの間隔は、例えば、455mm等の寸法で一定に設定されている。左側の1枚目の係合凸部Tbに、右側に位置する2枚目の被係合凸部Taを被せることで係合する。被係合凸部Taと係合凸部Tbとが結合することで、棟側から軒先側に向けて桟状の凸条係合部Tが形成される。このようにして野地板N上に全ての屋根材Yを設置する。
【0036】
次に、太陽電池パネル留め金具10Bを屋根材Yに取り付ける。パネル留め金具20のブラケット22を凸条係合部Tに被せると同時に、カバー部材30を凸条係合部Tの上方から差し込む。締付ボルト23をボルト案内パイプ50に挿入して、ブラケット22によって凸条係合部Tを挟む。締付ボルト23をねじ込んで行くと、被係合凸部Taの頂部はブラケット22によって周囲が押さえられ、固定される。この時、ブラケット22の間隔がボルト案内パイプ50の全長と同じ寸法になった時点で締付ボルト23の締め込みは完了する。これにより、締付ボルト23の締め込み過ぎによるブラケット22や凸条係合部Tの破壊を防止する。
【0037】
次に、筒体70の上端側からネジ部材60Aを挿入し、ベース部材21に達したら、さらにネジ案内パイプ40に挿入する。そして、ネジ部材60Aの先端がカバー部材30の頂部に当接した時点でねじ込んでゆく。さらに、ネジ部材60Aをねじ込んでいくと、ネジ部材60Aの先端は被係合凸部Taの曲面状の先端に当接するが、鞍型のカバー部材30は、ブラケット22によって挟み込まれて固定されることで、カバー部材30の頂部に接合された下部パイプ42は前後左右への動きが規制され、このカバー部材30に周囲を挟まれた被係合凸部Taについても側方への移動が規制されているため、ネジ部材60Aは被係合凸部Taに孔開けしながら挿入することができる。さらにネジ部材60Aをねじ込むと、ネジ部材60Aの先端は野地板Nに達する。さらに、さらにネジ部材60Aをねじ込むと、ネジ部材60の頂部が筒体70の上面に当接し、その時点でねじ込みは終了する。ネジ部材60Aによって、太陽電池パネル留め金具10Bと、凸条係合部T及び野地板Nは強固に固定されることとなる。
【0038】
最後に、太陽電池パネル留め金具10Bに設けられた取付ボルト26によって太陽光電池パネルPの周縁に設けられたフレームFを固定する。
【0039】
このように構成された太陽電池パネル留め金具10Bによれば、野地板Nに屋根材Yを取り付けるビスBの位置に関わらず、太陽光電池パネルPに上向きの外力が加わった際に、最も力が加わる太陽電池パネル留め金具10Bの位置において強固に締結することができるので、屋根材Yが野地板Nから外れることを防止することができる。また、先端が曲面状に形成された凸条係合部Tであっても、凸条係合部Tの曲面でネジ部材60Aが滑り、斜めに締結されることがないため、十分に野地板Nとの締結力を発揮することが可能となる。
【0040】
図12は引張試験装置90の構成を概略的に示す説明図、図13は引張試験装置90による試験結果を示す説明図である。
【0041】
図12に示すように、上述した太陽電池パネル留め金具10,10B及びその他の太陽電池パネル留め金具について、引張試験装置90から取付ボルト26に上方への引張力を付与し、屋根材Yと野地板Nとの結合力を計測した。この試験により、強風に対しての耐力が計測可能となる。
【0042】
図13に示すように、4つの試験を行った。なお、グラフにおいて横軸が屋根材Yと野地板Nとの距離であるストローク(単位:mm)、縦軸が引張力(単位:kN)を示している。No.1は図12における太陽電池パネル留め金具100Xであり、ネジ部材60を用いていない。No.2は図2における太陽電池パネル留め金具10であり、ネジ部材60が用いられている。No.3は比較例のため図示されていないが、図9における太陽電池パネル留め金具10Bにおいて筒体70が用いられていないものであり、ネジ部材60Aが用いられている。すなわち、ネジ部材60Aの頂部とベース部材21との間に筒体70の高さと同じ寸法の間隔があくこととなる。No.4は図9における太陽電池パネル留め金具10Bであり、ネジ部材60Aが用いられている。
【0043】
図13に示すように、No.1においては、ビスBによる締結力のみであり、ネジ部材60やネジ部材60Aによる補強が無いため、比較的弱い引張力において、屋根材Yと野地板Nとが離間し、引張力が約1.9kNでビスBが引き抜ける。No.2においては、ビスBによる締結力に加えて、ネジ部材60による締結力が同時に引張力に対して作用するため、引張力が約3.0kNでビスB及びネジ部材60が引き抜ける。
【0044】
No.3においては、当初はビスBによる締結力のみで屋根材Yと野地板Nを固定しているため、当初はNo.1と類似するが、屋根材Yと野地板Nとの離間距離が一定(例えば10mm)を超えると、ベース部材21とネジ部材60Bの頂部とが当接し、ネジ部材60Bの締結力が作用し始める。最終的に、引張力が3.6kNで、ビスB及びネジ部材60が引き抜ける。No.4においては、ビスBによる締結力が引張力に抵抗すると共に、ネジ部材60Bに緩衝材である筒体70を介して引張力が作用する。このため、引張力に対する抵抗力が最大に作用し、最終的に約4.3kNで、ビスB及びネジ部材60Aが引き抜ける。
【0045】
上述したように、ネジ部材が設けられていない太陽電池パネル留め金具100Xに対し、ネジ部材60を設けた太陽電池パネル留め金具10、及び、ネジ部材60Aを設けた太陽電池パネル留め金具10Bについては、高い引張力に抵抗して屋根材Yと野地板Nを強固に固定していることが判る。
【0046】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。上述した実施形態においては、太陽光電池パネルを例示したが、屋根上構造物であれば太陽光パネルに限られない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
い。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10,10A,10B…太陽電池パネル留め金具(屋根上構造物固定金具)、20…パネル留め金具、21…ベース部材、22…ブラケット、23…締付ボルト、25…脚部、26…取付ボルト、30…カバー部材、31…カバー本体、32…緩衝材、40…ネジ案内パイプ、50…ボルト案内パイプ、60,60A…ネジ部材、N…野地板、Y…屋根材、T…凸条係合部、B…ビス、P…太陽光電池パネル、F…ブラケット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
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図18