特許第6890901号(P6890901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6890901射出成形機の異常検出方法および射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890901
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】射出成形機の異常検出方法および射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   B29C45/76
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-32847(P2019-32847)
(22)【出願日】2019年2月26日
(65)【公開番号】特開2020-131688(P2020-131688A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2019年11月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】朝野 一実
(72)【発明者】
【氏名】加古 峰稔
(72)【発明者】
【氏名】樫内 弘幸
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−88926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる射出成形機の異常検出方法において、
各ボールねじを駆動する別々のサーボモータのトルクをそれぞれ検出してその検出されたトルクの検出値同士を比較、演算してその偏差の値を求め、
前記トルクの検出値同士の偏差の値が所定時間以上もしくは所定時間を超えて予め保存されている所定の偏差の閾値以上もしくは前記所定の偏差の閾値を超えた値となった際、または前記トルクの検出値同士の偏差の値が所定回数以上もしくは所定回数を超えて予め保存されている所定の偏差の閾値以上もしくは前記所定の偏差の閾値を超えた値となった際には、前記トルクの検出値同士の偏差の値と前記所定の偏差の閾値のみを用いて異常と判断して異常の報知またはサーボモータの作動停止を行うことを特徴とする射出成形機の異常検出方法。
【請求項2】
前記トルクの検出値同士の偏差の値予め保存されている所定の偏差の閾値以上の際または前記所定の偏差の閾値を超えた際には異常レベルの判断を行い、即時にサーボモータの停止を要する異常レベルの閾値以外の異常レベルの閾値と判断されたときについてはサーボモータを停止せずに異常の報知を行うことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の異常検出方法。
【請求項3】
複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる射出成形機において、
複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる同期作動機構と、
前記同期作動機構のボールねじを駆動する別々のサーボモータのトルクをそれぞれ検出してその検出されたトルクの検出値同士を比較、演算し、該トルクの検出値同士の偏差の値が所定時間以上もしくは所定時間を超えて予め保存されている所定の偏差の閾値以上もしくは前記所定の偏差の閾値を超えた値となった際、または前記トルクの検出値同士の偏差の値が所定回数以上もしくは所定回数を超えて予め保存されている所定の偏差の閾値以上もしくは前記所定の偏差の閾値を超えた値となった際には、前記トルクの検出値同士の偏差の値と前記所定の偏差の閾値のみを用いて異常と判断して異常の報知またはサーボモータの作動停止を行う制御装置とが備えられ、
前記同期作動機構は、型締装置の型開閉機構であることを特徴とする射出成形機。
【請求項4】
複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる射出成形機において、
複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる同期作動機構と、
前記同期作動機構のボールねじを駆動する別々のサーボモータのトルクをそれぞれ検出してその検出されたトルクの検出値同士を比較、演算し、該トルクの検出値同士の偏差の値が所定時間以上もしくは所定時間を超えて予め保存されている所定の偏差の閾値以上もしくは前記所定の偏差の閾値を超えた値となった際、または前記トルクの検出値同士の偏差の値が所定回数以上もしくは所定回数を超えて予め保存されている所定の偏差の閾値以上もしくは前記所定の偏差の閾値を超えた値となった際には、前記トルクの検出値同士の偏差の値と前記所定の偏差の閾値のみを用いて異常と判断して異常の報知またはサーボモータの作動停止を行う制御装置とが備えられ、
前記同期作動機構は、射出装置の射出機構であることを特徴とする射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の異常検出方法および成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機等の成形機の異常検出方法については、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1は、モータによって駆動される駆動機構部の加速度をセンサにより検出し、過去に検出値や基準値と比較して異常を検出するものである。しかしながら特許文献1は、複数のボールねじをそれぞれモータにより駆動させる成形機の異常を検出するものではない。一方、特許文献2には、複数のモータのトルクについてモニターし、グラフィック表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−161476号公報(請求項1、0050、図1図5図6図7
【特許文献2】特開2004−188602号公報(請求項1、0026、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献2もまた、複数のボールねじをそれぞれモータにより駆動させる成形機の異常を検出するものではない。また特許文献2は単にトルクのグラフィック表示を行うものに留まり、検出したトルクに基づき次のアクションを自動的に行うものではない。そのため従来の特許文献1や特許文献2には、複数のボールねじをそれぞれモータにより駆動させる成形機において、どのように異常を検出して前記異常に対してどのように対応するかの解決策は何ら示されていなかった。
【0005】
そこで本発明では上記の問題を鑑みて、複数のボールねじをそれぞれサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる成形機において、比較的簡単な手段で異常を検出できる異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の成形機の異常検出方法は、複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる成形機の異常検出方法において、各ボールねじを駆動する別々のサーボモータのトルクをそれぞれ検出してその検出されたトルクの検出値同士を比較し、前記トルクの検出値同士の偏差が所定時間以上もしくは所定時間を超えて所定値以上もしくは所定値を超えた値となった際、または前記トルクの検出値同士の偏差が所定回数以上もしくは所定回数を超えて所定値以上もしくは所定値を超えた値となった際に異常と判断して異常の報知またはサーボモータの作動停止を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の成形機の異常検出方法は、請求項1において、前記トルクの検出値同士の偏差が所定値以上の際または所定値を超えた際には異常レベルの判断を行い、即時にサーボモータの停止を要する異常レベル以外の異常レベルと判断されたときについてはサーボモータを停止せずに異常の報知を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の成形機は、複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる成形機において、複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる同期作動機構と、前記同期作動機構のボールねじを駆動する別々のサーボモータのトルクをそれぞれ検出してその検出されたトルクの検出値同士を比較し該トルクの検出値同士の偏差が所定時間以上もしくは所定時間を超えて所定値以上もしくは所定値を超えた値となった際、または前記トルクの検出値同士の偏差が所定回数以上もしくは所定回数を超えて所定値以上もしくは所定値を超えた値となった際に異常と判断して異常の報知またはサーボモータの作動停止を行う制御装置とが備えられ、前記同期作動機構は、型締装置の型開閉機構であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の成形機は、複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる成形機において、複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる同期作動機構と、前記同期作動機構のボールねじを駆動する別々のサーボモータのトルクをそれぞれ検出してその検出されたトルクの検出値同士を比較し該トルクの検出値同士の偏差が所定時間以上もしくは所定時間を超えて所定値以上もしくは所定値を超えた値となった際、または前記トルクの検出値同士の偏差が所定回数以上もしくは所定回数を超えて所定値以上もしくは所定値を超えた値となった際に異常と判断して異常の報知またはサーボモータの作動停止を行う制御装置とが備えられ、前記同期作動機構は、射出装置の射出機構であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成形機の異常検出方法は、複数のボールねじをそれぞれ別々のサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる成形機の異常検出方法において、各ボールねじを駆動する別々のサーボモータのトルクをそれぞれ検出してその検出されたトルクの検出値同士を比較し、前記トルクの検出値同士の偏差が所定時間以上もしくは所定時間を超えて所定値以上もしくは所定値を超えた値となった際、または前記トルクの検出値同士の偏差が所定回数以上もしくは所定回数を超えて所定値以上もしくは所定値を超えた値となった際に異常と判断して異常の報知またはサーボモータの作動停止を行うので、比較的簡単な手段で異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の成形機の異常検出方法に用いられる射出成形機の概略説明図である。
図2】本発明の実施形態の成形機の異常検出方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の成形機の異常検出方法を説明するに際して、まずは図1を参照して成形機について説明する。成形機の一種である横型の射出成形機11は、型締装置13と射出装置14とから構成されている。型締装置13は、固定金型15が取付けられる固定盤16がベッド12上に固定的に配置されている。また固定盤16に対して可動金型17が取付けられる可動部である可動盤18がベッド上面のリニアガイド等のガイド19またはレールの上を型開閉方向に移動可能に設けられている。
【0013】
固定盤16の四隅近傍には型締機構である型締シリンダ20がそれぞれ設けられ、型締シリンダ20のロッドがタイバ21を構成している。そしてタイバ21は可動盤18の四隅近傍のガイド穴に挿通されている。型締シリンダ20は図示しない油圧回路に接続されている。なお型締機構については図1の型締シリンダ20に限定されず他の機構でもよい。
【0014】
固定盤16の外側(固定金型15の取付面とは反対側)には、射出装置14の加熱筒51およびノズル52が挿入可能な、凹部43(すり鉢部)が形成されている。またタイバ21の外周には複数の溝からなる係止部44が設けられている。一方可動盤18の外側(可動金型17の取付面とは反対側)の壁面のタイバ21が挿通される部分の周囲には結合機構であるハーフナット45が設けられている。ハーフナット45は複数の係止歯を有しており、図示しない駆動機構により進退移動されて、タイバ21の係止部44に前記係止歯が係止されるようになっている。結合機構は後述する型開閉機構22,23により型閉を行った後にタイバ21等と可動盤18等を結合するものであって、図示のものに限定されない。
【0015】
型開閉機構22,23は、複数設けられ、ボールねじ24,24をそれぞれサーボモータ25,25(一例として三相交流サーボモータ)を同期制御により駆動させ、1つの可動部である可動盤18を型開方向および型閉方向に移動させる同期作動機構である。具体的にはベッド12の可動盤側の両側上面のブラケット26,26にはボールねじ24,24を軸支するベアリングがボルトとナット等によりそれぞれ取付けられている。またベッド12の固定盤側の両側上面のブラケット27,27にはボールねじ24,24を軸支するベアリングがボルトとナット等によりそれぞれ取付けられている。そして前記各ベアリングに対して型開閉機構22,23のボールねじ24,24が回転自在にそれぞれ取付けられている。またベッド12の可動盤側の上面に設けられたブラケット28,28には型開閉機構のサーボモータ25,25がボルトとナット等によりそれぞれ固定されている。そしてサーボモータ25,25の駆動軸に固定された駆動プーリとボールねじ24,24の一端側に固定された従動プーリがベルト29,29により連結されている。なおサーボモータは減速機が取付けられたものでもよい。またサーボモータの駆動軸はボールねじに直列に直接連結されたものでもよい。またボールねじに固定された複数の従動プーリまたは単数の従動プーリに対して、複数のサーボモータの駆動プーリがベルトを介して接続されるものでもよい。
【0016】
可動盤18の両側側面のブラケット30,30にはボールねじナット31,31がボルトとナット等によりそれぞれ固定されている。前記ボールねじナット31,31には前記ボールねじ24,24が挿通されている。そして前記サーボモータ25,25が駆動されることによりボールねじ24,24が回転され、可動盤18が型開閉方向に移動可能となっている。なお型開閉機構は、サーボモータを用いたものであれば、サーボモータが固定盤に設けられボールねじナットが可動盤に設けられたものや、サーボモータが可動盤に設けられボールねじナットが固定盤に設けられたもの等でもよい。更に型開閉機構は、固定盤に対して中間盤と可動盤の双方が移動される射出成形機の、双方移動される中間盤と可動盤の間に設けられたものでも、固定盤と中間盤の間に設けられたものでもよい。
【0017】
本実施形態では型開閉機構の数は2基が設けられているが、2基以上であれば限定されず4基等でもよい。また複数のサーボモータ間の同期制御方式については、両方のサーボモータが単独で制御されるものであっても、一方のサーボモータがマスタ軸であり、他方のサーボモータがスレーブ軸であって前記マスタ軸に追従するマスタ・スレーブ方式でもよい。そして3軸以上のサーボモータとボールねじから構成され2軸以上がスレーブ軸の場合は、スレーブ軸同士のサーボモータのトルクの検出値tの偏差dを比較するものでもよい。更には全ての軸のサーボモータのトルク値を検出し、いずれか1軸でも閾値を超えたら異常と判断するものでもよい。
【0018】
サーボモータ25,25には駆動軸の回転角度(可動盤18の位置)を検出するロータリエンコーダ32,32が取付けられている。そしてサーボモータ25,25とサーボアンプ33,33は動力線34,34により接続され、ロータリエンコーダ32,32とサーボアンプ33,33は信号線35,35により接続されている。そしてサーボモータ25,25は、サーボアンプ33,33からの指令値により駆動可能となっている。サーボアンプ33,33または動力線34,34には図示しない電流検出器が取付けられサーボモータ25,25に送られる電流値(出力電流値)が検出可能となっている。またサーボアンプ33,33は制御装置36と接続されている。
【0019】
制御装置36は、前記型開閉機構22,23のボールねじ24,24を駆動するサーボモータ25,25のトルクを検出してその検出値tを比較し該トルクの検出値tの偏差dが所定値を超えた際に異常と判断する機能を備えている。制御装置36は、入力部37、出力部38、記憶部39、演算部40、タイマ41等を備えている。そして制御装置36は、設定入力および表示を行う機能を備えた設定・表示部42に接続されている。前記制御装置36の記憶部39は、型開閉機構22,23の異常を判断するための双方のサーボモータ25,25のトルクの検出値tの偏差dの閾値iが保存されている。本実施形態では記憶部39に保存される閾値iは、運転が継続されることを前提とした異常の予報レベルi1、運転が継続されることを前提とするがより一層作業員に検査を求める異常の警告レベルi2、即時にサーボモータの停止させる即時停止レベルi3の3段階の閾値iが保存されている。これらの閾値iは、設定・表示部42から入力可能である。なお閾値iは前記3つの段階に限定されず、1つのみや他の数であってもよい。
【0020】
射出装置14は、複数基の射出用のサーボモータ53,53と1基の計量用のサーボモータ54を備えている。加熱筒51内のスクリュ59を前後進させる射出機構60は、複数設けられ、各ボールねじ55,55をそれぞれ少なくとも1基の射出用のサーボモータ53,53を同期制御により駆動させ、1つの可動部であるプッシャプレート56を前進方向および後退方向に移動させる同期作動機構である。射出用の2基のサーボモータ53,53は、フロントプレート58に固定されている。また2基のボールねじナット57,57はプッシャプレート56に固定されている。2本の射出用のボールねじ55,55は、フロントプレート58にベアリングを介して回転自在かつ前後には移動不能にそれぞれ取付けられ、前記プッシャプレート56のボールねじナット57にそれぞれ挿通されている。それぞれの射出用のサーボモータ53,53と1基の計量用のサーボモータ54は、型開閉機構22,23のサーボモータ25,25と同様にサーボアンプを介して制御装置36に接続されるが図1では詳細な図示は省略している。
【0021】
次に本実施形態の射出成形機11の異常検出方法、とりわけ型締装置13の型開閉機構22,23の異常検出方法について説明する。最初に型開完了位置において可動金型17から前回の成形品が取出されると次に、制御装置36からサーボアンプ33,33を介して型開閉機構22,23のサーボモータ25,25に信号が送られて型閉開始する。その際に各ボールねじ24,24を駆動するサーボモータ25,25のトルクを検出してその検出値tを比較し、前記トルクの検出値tの偏差dが所定値を超えた際に異常と判断する。
【0022】
より具体的には図2のフローチャートに示されるようにまず最初に、サーボモータ25,25のトルク(出力トルク)検出値tの検出を行う(S1)。サーボモータ25,25のトルク(出力トルク)検出値tは、サーボアンプ33,33からサーボモータ25,25に送られる駆動電流の電流値を図示しない電流検出器により測定して行われる。モータ駆動電流とトルクの関係はほぼ比例関係にはある。本発明においては、双方のサーボモータ25,25の相対的なトルクの関係を検出することが必要であるが、一方のサーボモータ25,25の絶対的なトルクの検出値を必要としているわけではない。そのため金型重量の変化や型開閉速度の変更によりサーボモータ25,25のトルクの検出値tが変更されても問題を生じない。なおトルクの検出はサーボモータの駆動軸の軸トルクを直接検出するなどしてもよい。これらトルクの検出値tは、設定・表示部42に数値表示され、なおかつ波形の形でグラフ表示される。
【0023】
そして2つのサーボモータ25,25のそれぞれのトルクの検出値tは、制御装置36の演算部40でその偏差dが演算される(S2)。偏差dの演算はトルクの検出値tのいずれか一方の値から他方の値を減算した値の絶対値で表わされる。トルクの偏差dが予報レベルi1、警告レベルi2、即時停止レベルi3の3つの閾値iうち最低の予報レベルi1を未満の場合(閾値未満の場合)(S3=N)は、正常な状態であり、型開閉機構22,23による型閉作動が完了してサーボモータ25,25が停止されるまでトルク値検出(S1)、トルク値偏差演算(S2)、トルクの検出値tの偏差dが閾値i1以上か?(S3)のループを繰り返す。一方サーボモータ25,25のトルクの検出値tの偏差dが少なくとも予報レベルi1以上の場合(閾値以上の場合)(S3=Y)は、所定値以上であり異常と判断した場合には異常レベルi1、i2、i3の判断を行う。具体的には次にトルクの検出値tの偏差dが即時停止レベルi3以上か(S4)を判断する。そして即時停止レベルi3以上のときには、設定・表示部42にトルクの検出値tの偏差異常の表示する(S5)。
【0024】
偏差異常の表示は、トルクの検出値tの偏差dが偏差異常であることのみを表示してもよいが、異常となっている原因や異常の推定される箇所や点検を指示する箇所を表示してもよい。一例として、2本以上のボールねじ24,24をサーボモータ25,25を用いて同期制御する型開閉機構22,23では、上記したように駆動部分に近いボールねじ24,24のベアリング、ボールねじナット31,31、減速機を含むサーボモータ25,25等を締結するボルトやナットの緩みが問題となるケースが多いので、それらの部分の点検を指示するメッセージを表示するようにしてもよい。また必要に応じてアラーム音などを発する。そして同時に制御装置36の演算部40からサーボアンプ33,33に信号が送られ双方のサーボモータ25,25の作動を停止する(S6)。
【0025】
サーボモータ25,25のトルクの検出値tの偏差dが閾値である予報レベルi1以上であったものの即時停止レベルi3未満のとき(S4=N)には、次にトルクの検出値tの偏差dが警報レベルi2以上であるか(S7)を判断し、予報レベルi1である(S7=N)のときは設定・表示部42に予報レベルi1に対応した異常の予報表示を行う(S8)。またトルクの検出値tの偏差dが警告レベルi2であるとき(S7=Y)は設定・表示部42に警告レベルi2に対応した異常の警告表示を行う(S9)。これらの際に後述するように、閾値i1,i2を超えた時間の積算時間や、閾値i1,i2を超えた回数の積算回数を用いて予報レベルi1、警告レベルi2、即時停止レベルi3のいずれに該当するかを判断するようにしてもよい。
【0026】
そしてトルクの検出値tの偏差dがサーボモータ25,25の停止を要する異常レベルi3以外の異常レベルである予報レベルi1または警告レベルi2であるときにはサーボモータ25,25を停止せずに、偏差dが閾値i1またはi2以上の回数をカウントする(S10)。また同時に偏差dが閾値i1またはi2以上の状態が継続された時間をタイマ41により計時する。そして偏差dが閾値i1またはi2以上となった回数が記憶部39に記憶されている設定回数(所定値)の閾値N以上となったら、設定・表示部42に偏差異常を表示する(S5)とともに、サーボモータ25,25の作動を停止する(S6)。または偏差dが閾値i1またはi2以上となった合計時間が設定時間(所定値)の閾値T以上となったとき(S13=Y)も同様に設定・表示部42に偏差異常を表示する(S5)とともに、サーボモータ25,25の作動を停止する(S6)。従ってトルクの検出値tの偏差dが所定時間以上閾値i1またはi2を超えた状態かまたは所定回数以上閾値i1またはi2を超えた状態のいずれの場合も設定・表示部42に偏差異常を表示してサーボモータ25,25が停止される。
【0027】
これらステップ(S12)、(S13)がいずれも閾値N,Tの回数未満および時間未満であるとき(S12=N)AND(S13=N)の場合は、作動か継続可能であるとしてサーボモータ25,25の作動を停止せずにステップ(S1)に戻って運転が継続される。これらのようにトルクの検出値tに閾値以上の偏差dが発生した回数や閾値以上の偏差dが発生した時間の要素を加味することにより、突発的なノイズの影響による誤報知や誤停止を防止することができる。なお本実施形態の図2のフローチャートは一例であって、異常のレベルの種類数、判断手法、手順も本実施形態のフローチャートの例に限定されない。閾値の判断については、トルクの検出値tの偏差dが閾値(所定値)以上のみの場合だけではなく、トルクの検出値tの偏差dが閾値(所定値)を超えた際に異常と判断するものでもよい。または閾値(所定値)の上限についても、閾値未満を正常値と判断せず、閾値(所定値)以下を正常値と判断してもよい。更にトルクの偏差異常の設定回数(所定値)の閾値Nや偏差異常の設定時間(所定値)の閾値Tに対する判断についても、所定時間もしくは所定回数以上の際、または所定時間もしくは所定回数を超えた際に異常と判断するものでよい。
【0028】
またトルクの検出値tの偏差dについては、偏差dの値(絶対値)と偏差dが発生した時間を積算により異常の程度を判断してもよい。即ちグラフにおける波形部分の面積により異常の程度を判断してもよい。更にはトルク波形を解析し、波形が異常なものと判断されたときに停止するものでもよい。更にまた、一定期間のトルクの検出値の平均値(実効トルク)を測定し、平均値の偏差dにより異常の有無を判断してもよい。
【0029】
またサーボモータ25,25のトルクの検出値t以外の他のセンサの検出値やメンテナンス記録と組み合せて異常の有無を判断するものや、異常個所の推定を行いその結果を表示するものでもよい。具体的には可動盤18やプッシャプレート56を移動させるリニアガイド等のガイド、ブッシュ、転動機構等への給脂状況の記録との組み合せや、音センサや振動センサの検出値を組み合わせて異音や振動異常の有無判断も加えて異常個所の推定に用いてもよい。
【0030】
また異常状態であることは、上記したように設定・表示部42に表示され、アラーム音等も発することにより周囲の作業者に報知されるがこれに限定されない。一例として工場内外の作業者の所持する携帯電話等の通信端末に通信により異常を報知してもよい。またイントラネット等を介して工場内の集中管理を行うパーソナルコンピュータやサーバーにデータを転送して表示やデータの蓄積、解析を行うようにしてもよい。更にインターネット等を介して他の事業所や射出成形機の製造メーカーのパーソナルコンピュータやサーバーにデータを転送してもよい。
【0031】
また本発明のサーボモータのトルクを検出してその検出値dを比較し、前記トルクの検出値の偏差が所定値i以上の際または所定値を超えた際に異常と判断する異常検出方法は、型開閉機構の型開時にも適用されることは言うまでもない。更には射出機構60のサーボモータ53,53を用いてプッシャプレート56の前後進の同期制御を行う射出制御時や背圧制御時にも適用される。
【0032】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや上記の各実施形態の一部部分を個別に組み合わせたものについても適用されることは言うまでもないことである。
【0033】
また本発明の成形機は、複数のボールねじをそれぞれサーボモータにより駆動させ可動部を移動させる成形機であれば、射出成形機に限定されない。具体的にはダイカスト成形機、プレス成形機、圧縮成形機、中空成形機、発泡成形機、真空成形機、注型成形機、トランスファ成形機、切削加工成形機などでもよい。これらの成形機についても竪型、横型の機構の種類は限定されず、成形される成形品についても限定されない。
【符号の説明】
【0034】
11 射出成形機(成形機)
13 型締装置
14 射出装置
16 固定盤
18 可動盤
22,23 型開閉機構
25 サーボモータ
36 制御装置
40 演算部
42 設定・表示部
i,i1,i2,i3,N,T 閾値
t トルクの検出値
図1
図2