【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
試験例1
[油脂加工澱粉の調製]
(澱粉試料1)
ハイリノールサフラワー油(ヨウ素価140)とハイオレイックサフラワー油(ヨウ素価90)を1:1の質量比で混合し、油脂組成物を調製した。リン酸架橋タピオカ(Asia Modified Starch Co., Ltd.製)100質量部に対して、調製した油脂組成物0.3質量部を加えて、ミキサーで均一に撹拌混合し、混合物を得た。この混合物を送風型乾燥機にて、130℃で3時間加熱し、油脂加工澱粉を得た。
【0053】
(澱粉試料2)
ハイリノールサフラワー油の代わりにエゴマ油(ヨウ素価200)を用いた以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0054】
(澱粉試料3)
ハイリノールサフラワー油の代わりにハイリノールひまわり油(ヨウ素価120)を用いた以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0055】
(澱粉試料4)
ハイオレイックサフラワー油の代わりにキャノーラ油(ヨウ素価110)を用いた以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0056】
(澱粉試料5)
ハイオレイックサフラワー油の代わりに精製パーム油(ヨウ素価50)を用いた以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0057】
(澱粉試料6)
油脂組成物をハイリノールサフラワー油のみとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0058】
(澱粉試料7)
油脂組成物をエゴマ油のみとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0059】
(澱粉試料8)
油脂組成物をハイリノールひまわり油のみとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0060】
(澱粉試料9)
油脂組成物をキャノーラ油のみとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0061】
(澱粉試料10)
油脂組成物をハイオレイックサフラワー油のみとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0062】
(澱粉試料11)
エゴマ油とハイリノールひまわり油を1:1の質量比で混合し、油脂組成物を調製した以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0063】
[水分散性試験]
200mL容ビーカーに25℃の水100mLを量り入れ、前記ビーカーに市販のスターラーバー(幅5mm×高さ5mm×全長45mm)を投入し、前記水を400rpmの速度で撹拌させつつ、水中に澱粉試料10gを添加したとき、その澱粉試料が水中に均一に分散するのに要する時間を測定した。より具体的には、疎水化された澱粉は、水面に粉塊として存在するが、時間の経過に伴い、水になじんで、水中にも移行し、その後スターラーバーの撹拌によって、水中に均一に分散するようになるので、それまでの時間(粉塊が消失するまでの時間)を測定した。
【0064】
上記手法で測定した分散時間が15分以内の油脂加工澱粉を望ましい水分散性を有しているものと判断した。
【0065】
[スラリー粘度測定]
乾燥物重量で90gの澱粉をミキサーで氷冷した水中に均一に分散させ、総量300gの30%濃度スラリーを調製した。調製したスラリーの粘度をB型粘度計(TVB10M、東機産業株式会社)で測定した。測定条件はローター回転数60rpmで15秒間回転させた後の値とした。
【0066】
既に述べたとおりスラリー粘度は、澱粉試料の疎水化度合、すなわち澱粉の油脂加工度合(油脂加工澱粉の性能)を示すパラメータであり、スラリー粘度が100mPa・s以上の油脂加工澱粉を望ましい性能を有しているものと判断した。
【0067】
各澱粉試料の水分散性(分散時間)およびスラリー粘度の測定結果を表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
表1より、ヨウ素価120以上の油脂とヨウ素価119以下の油脂を含む油脂加工澱粉(澱粉試料1〜澱粉試料5)は、スラリー粘度が100mPa・s以上であり、油脂加工澱粉としての性能が優れていると考えられる。さらに、当該油脂加工澱粉は、水分散性が15分以内であったことから、高いスラリー粘度と水分散性を両立することが可能であった。一方、ヨウ素価120以上の油脂のみを混合した澱粉試料6〜8および澱粉試料11は水分散性が悪く、15分以上の時間を要した。また、ヨウ素価119以下の油脂のみを混合した澱粉試料9および澱粉試料10は、スラリー粘度が100mPa・s未満となり、油脂加工澱粉としての性能が不十分であった。
【0070】
試験例2
[油脂加工澱粉の調製]
(澱粉試料12)
ハイリノールサフラワー油とハイオレイックサフラワー油の混合比を1:5の質量比とした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0071】
(澱粉試料13)
ハイリノールサフラワー油とハイオレイックサフラワー油の混合比を1:7の質量比とした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0072】
(澱粉試料14)
ハイリノールサフラワー油とハイオレイックサフラワー油の混合比を5:1の質量比とした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0073】
(澱粉試料15)
ハイリノールサフラワー油とハイオレイックサフラワー油の混合比を7:1の質量比とした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0074】
(澱粉試料16)
ハイリノールサフラワー油とハイオレイックサフラワー油の混合比を10:1の質量比とした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0075】
(澱粉試料17)
ハイリノールサフラワー油とハイオレイックサフラワー油の混合比を1:10の質量比とした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0076】
(澱粉試料18)
ハイリノールサフラワー油とハイオレイックサフラワー油の混合比を20:1の質量比とした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0077】
各澱粉試料の水分散性(分散時間)およびスラリー粘度を試験例1と同様に測定し、その結果を表2に示した。
【0078】
【表2】
【0079】
表2より、2つの油脂の混合比率が極端に偏ると、本発明の効果が得られにくいことが示唆された。
【0080】
試験例3
[油脂加工澱粉の調製]
(澱粉試料19)
油脂組成物を予め調製せず、ハイリノールサフラワー油とハイオレイックサフラワー油を澱粉100質量部に対して、それぞれ0.15質量部ずつ添加し混合した以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0081】
(澱粉試料20)
リン酸架橋タピオカを未加工タピオカとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0082】
(澱粉試料21)
リン酸架橋タピオカをコーンスターチとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0083】
(澱粉試料22)
リン酸架橋タピオカを未加工タピオカとし、油脂組成物をハイリノールサフラワー油のみとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0084】
(澱粉試料23)
リン酸架橋タピオカをコーンスターチとし、油脂組成物をハイリノールサフラワー油のみとした以外は、澱粉試料1と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0085】
各澱粉試料の水分散性(分散時間)およびスラリー粘度を試験例1と同様に測定し、その結果を表3に示した。
【0086】
【表3】
【0087】
澱粉試料19より、2種の油脂を予め混合し油脂組成物を調製することは必須でなく、澱粉添加後に混合することでも、発明の効果を得ることが可能であることが示された。また、澱粉試料20および澱粉試料21より、油脂加工澱粉の原料となる澱粉の種類に関係なく本発明の効果が発揮されることが示された。
【0088】
試験例4
[油脂加工澱粉の調製]
(澱粉試料24)
ハイリノールサフラワー油(ヨウ素価140)とハイオレイックサフラワー油(ヨウ素価90)を1:1の質量比で混合し、油脂組成物を調製した。リン酸架橋タピオカ100質量部に対して、調製した油脂組成物0.3質量部を加えて、ミキサーで均一に撹拌混合し、混合物を得た。この混合物100kgを20kgずつ紙袋に充填し、70℃の倉庫で5日間保管し油脂加工澱粉を得た。保管時は、他の紙袋を上に乗せることで試料100kgに対し、2000kgの荷重を加えた。
【0089】
(澱粉試料25)
油脂組成物をハイリノールサフラワー油のみとした以外は澱粉試料24と同様の手法で油脂加工澱粉を得た。
【0090】
[固結の確認]
調製した油脂加工澱粉の紙袋を2袋解体し、固結物の量を目視で評価した。また、得られた固結塊の硬さを手で破壊することで評価した。
【0091】
結果を表4に示した。
【0092】
【表4】
【0093】
表4より、2種の油脂を併用した澱粉試料24は、澱粉試料25と比較して固結物の量が少なかった。また、固結塊も柔らかく崩れやすいもので、取り扱いし易い品質となることが確認された。
【0094】
応用例1
[豚ロース肉を用いたトンカツ衣の結着性試験]
上記試験例にて調製した油脂加工澱粉(澱粉試料1,12,6,10,17)を用いて衣の結着性試験を実施した。揚げ物の具材として豚ロース肉を用いた。脂をトリミングした豚ロース肉を10mm厚にスライスし、予め凍結しておき、使用する直前に表面部分のみを温風にて解凍した。バッターは、澱粉100質量部に対し、増粘多糖類0.4質量部と氷冷水180質量部を加えて攪拌混合することで調製した。豚ロース肉にバッターを対肉30質量%となるように付着させ、パン粉付けして凍結した。冷凍保存後、大豆白絞油を用いて、175℃で5分間フライし、トンカツを調製した。トンカツはフライの3分間後にカットし、120分間後に目視による肉と衣の結着性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
1:完全に剥がれている、2:ほとんど剥がれている、3:半分程度剥がれている
4:ほとんど結着している、5:完全に結着している
評価は5名の熟練したパネラーで実施し、評価結果は平均点( 小数点第2位以下は四捨五入)で表示した。結果を表5に示した。
【0095】
【表5】
【0096】
表4より、水分散性とスラリー粘度を両立した澱粉試料1及び澱粉試料12を用いた衣は高い結着性を示した。一方、スラリー粘度は高いが水分散性が悪い澱粉試料6を用いた衣は、上記衣に比べ結着性が劣っていた。また、スラリー粘度が低い澱粉試料10及び澱粉試料17を用いた衣はさらに結着性が低かった。以上の結果より、スラリー粘度が一定以上の油脂加工澱粉は高い性能(結着性)を有していること、油脂加工澱粉の性能(結着性)にはスラリー粘度だけでなく水分散性も影響する可能性が示された。
【0097】
応用例2
[肉加工食品による評価]
上記試験例にて調製した油脂加工澱粉(澱粉試料1,12,6,10)を用いて肉加工食品(魚介肉加工食品)による評価を実施した。冷凍スケソウダラのすり身50質量部を解凍した後に、出口径4.8mmのプレートを取り付けたミートチョッパーでチョッピングし、更にフードカッターで粗ずりを行った。これに、食塩2質量部と氷水18質量部を添加しカッティングした後、油脂加工澱粉12質量部と氷水18質量部を添加し、カッティングした。得られた生地を直径45mmの筒状の塩化ビニリデン製フィルムに充填し、85℃の湯の中でボイルし、カマボコを得た。
(カマボコの硬さ評価)
得られたカマボコについて、魚介肉加工食品において重要な評価項目である硬さ( ゲル強度)について食感を評価した。評価基準は以下の通りである。
1:とても柔らかい、2:柔らかい、3:やや柔らかい、4:やや硬い、5:硬い
評価は5名の熟練したパネラーで実施し、評価結果は平均点( 小数点第2位以下は四捨五入)で表示した。
(弾力)
得られたカマボコについて、魚肉練製品において重要な評価項目である弾力について食感を評価した。評価基準は以下の通りである。
1:とても脆い、2:脆い、3:やや脆い、4:やや弾力がある、5:弾力がある
評価は5名の熟練したパネラーで実施し、評価結果は平均点(小数点第2位以下は四捨五入)で表示した。
(破断荷重測定)
得られたカマボコについて、破断荷重測定を実施した。カマボコを直方体(10mm×10mm×20mm)に切断し、レオメーター(RE2−33005B、山電社製)を用い、以下の条件でサンプルの長辺中央を垂直にせん断した際の破断荷重(gf)を測定した。
・プランジャー:くさび形
・破断歪率:98%
・ロードセル:2039.4gf(20N)
・せん断速度:1mm/秒
表6に魚介肉加工食品による評価結果を示した。
【0098】
【表6】
【0099】
表6より、水分散性とスラリー粘度を両立した澱粉試料1及び澱粉試料12を用いたカマボコは高いゲル強度を示し、官能評価点も高かった。一方、水分散性が悪い澱粉試料6やスラリー粘度が低い澱粉試料10を用いてカマボコは、ゲル強度及び官能評価点が低かった。以上の結果より、スラリー粘度が一定以上の油脂加工澱粉は高い性能(食感改良効果)を有していること、油脂加工澱粉の性能(食感改良効果)にはスラリー粘度だけでなく水分散性も影響する可能性が示された。なお、本結果は魚肉の蛋白質と油脂加工澱粉の相互作用によるものであるため、畜肉を用いた食肉加工食品においても本応用例と同様の効果が発揮される。