(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890916
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】分離板およびこれを含む燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20210607BHJP
H01M 8/0254 20160101ALI20210607BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20210607BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20210607BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0254
H01M8/0267
H01M8/10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-246764(P2014-246764)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-207549(P2015-207549A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年8月1日
【審判番号】不服2019-9249(P2019-9249/J1)
【審判請求日】2019年7月10日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0048240
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】チン、サン、ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユ、チャン
【合議体】
【審判長】
亀ヶ谷 明久
【審判官】
増山 慎也
【審判官】
井上 猛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−293944(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0165500(US,A1)
【文献】
特開2011−76973(JP,A)
【文献】
特開2012−99333(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/150628(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/02
H01M8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜−電極アセンブリと、前記膜−電極アセンブリの両面に備えられる分離板とを含む燃料電池において、
前記膜−電極アセンブリに対応する前記分離板の反応面に形成され、反応気体を前記膜−電極アセンブリに供給する伝導性を有する微細多孔体を含み、
前記分離板は、前記反応気体を流出入させる入口および出口マニホールドと、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドと連結し、反応気体を前記反応面に誘導するチャンネル部とを含み、
前記分離板の反応面には、前記微細多孔体を複数個に分割する隔壁が形成され、
前記隔壁は、前記反応面の反対面に凹溝として形成され、前記反応面に突出して形成され、
前記凹溝は、冷却媒体を流動させる冷却通路として形成され、
前記分離板の前記隔壁は、前記膜−電極アセンブリの両面にそれぞれ形成される気体拡散層に密着して配置され、
多数枚の前記燃料電池を積層することによって燃料電池スタックが構成され、互いに隣接する前記燃料電池の前記分離板は、前記反応面の前記反対面が互いに密着し、前記冷却通路は、その前記反対面の前記凹溝が互いに合わされながら形成され、
前記チャンネル部は、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドから前記反応面に拡散するチャンネルを形成し、
前記チャンネル部は、前記チャンネルの間にリブを形成し、
前記分離板の反応面には、前記微細多孔体を複数個のパートに分割する前記隔壁が形成され、
前記隔壁は、前記リブと連結され、前記反応面を複数個の反応領域に区画し、
前記隔壁は、前記チャンネルを前記各反応領域と連結する複数個のチャンネル群に区画することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記チャンネルは、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドの一方から他方にいくほど長さが次第に長くなり、前記反応面に連結することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
膜−電極アセンブリの両面に備えられ、反応気体を前記膜−電極アセンブリに供給する燃料電池用分離板において、
前記膜−電極アセンブリに対応する反応面に形成される伝導性を有する微細多孔体と、
前記反応気体を流出入させる入口マニホールドおよび出口マニホールドに連結し、反応気体を前記反応面に誘導するチャンネル部と、
前記反応面に形成され、前記微細多孔体を複数個に分割する隔壁と、を含み、
前記隔壁は、前記反応面の反対面に凹溝として形成され、前記反応面に突出し、
前記凹溝は、冷却媒体を流動させる冷却通路として形成され、
前記分離板の前記隔壁は、前記膜−電極アセンブリの両面にそれぞれ形成される気体拡散層に密着して配置され、
前記膜−電極アセンブリ及び前記分離板を含む燃料電池を多数枚積層することによって燃料電池スタックが構成され、互いに隣接する前記燃料電池の前記分離板は、前記反応面の前記反対面が互いに密着し、前記冷却通路は、その前記反対面の前記凹溝が互いに合わされながら形成され、
前記チャンネル部は、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドから前記反応面に連結するチャンネルを形成し、前記チャンネルの間にリブを形成し、
前記反応面には、前記微細多孔体を複数個のパートに分割する前記隔壁が形成され、
前記隔壁は、前記リブと連結され、前記反応面を複数個の反応領域に区画し、
前記隔壁は、前記チャンネルを前記各反応領域と連結する複数個のチャンネル群に区画することを特徴とする燃料電池用分離板。
【請求項4】
前記チャンネル部は、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドから前記反応面に拡散するチャンネルを形成することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用分離板。
【請求項5】
前記チャンネル部は、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドから前記反応面に連結するチャンネルを形成し、
前記チャンネルは、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドの一方から他方にいくほど長さが次第に長くなり、前記反応面に連結することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用分離板。
【請求項6】
前記チャンネルの間には、リブが突出形成されることを特徴とする請求項4または5に記載の燃料電池用分離板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの燃料電池スタックに関し、より詳しくは、微細多孔体構造を適用した分離板およびこれを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のように、燃料電池は、水素と酸素の電気化学的な反応を通じて電気エネルギーを発生させる単位セルからなる。このような燃料電池は、膜−電極アセンブリ(MEA:Membrane−Electrode Assembly)を挟んでその両側に分離板を配置して構成される。
【0003】
分離板には、燃料と空気としての反応気体を膜−電極アセンブリにそれぞれ供給する反応流路と、冷却水を流通させる冷却流路とを形成している。膜−電極アセンブリの両面には、反応気体を拡散させるための気体拡散層を形成している。
【0004】
ここで、燃料電池の性能を極大化させるためには、分離板の反応流路の間隔を稠密にして気体拡散層および膜−電極アセンブリの面圧を均一にし、気体拡散層が反応全面にわたって一定の透過性を有するようにしなければならない。
【0005】
しかし、分離板の成形段階で発生する各種の不良を防止するためには、分離板の反応流路の間隔を減らすことに限界があり、このような現実的な問題によって次のような燃料電池の性能低下の要因が発生する。
【0006】
第一、反応流路の間隔が大きい場合は、分離板と気体拡散層が接触するランド面に応力が集中する。これにより、気体拡散層の多孔性構造が破壊されて反応気体の透過性が悪くなり、反応気体の拡散性能および生成水の排出性能を低下させる。また、反応流路が形成された面の場合は、応力が低くて気体拡散層が分離板の流路部に突出して、流体の流動性を低下させ得る。
【0007】
第二、分離板のランド部によって気体拡散層の構造が破壊され、その破壊された部分では、カーボンファイバーが膜−電極アセンブリの電極層まで浸透するようになって電極層を損傷し得る。
【0008】
第三、気体拡散層が露出されている流路部の場合は、反応気体の供給が円滑で化学反応は活発であるが、気体拡散層および膜−電極アセンブリ間の面圧不足で接触抵抗が増加して、反応によって生成された電子の移動を難しくし得る。
【0009】
このような問題点を改善するために、従来技術では、金属薄板に微細ホールなどの多孔構造とチャンネルを形成して、3次元の多孔構造を有する成形多孔体を使用している。
【0010】
さらに、従来技術では、反応流路を有する分離板の代わりに面圧を均等に分散させ、反応気体の拡散および生成水の排出性能を向上させることができる微細多孔構造体を挿入する方法を使用している。
【0011】
これは、メタルフォーム(Metal foam)およびワイヤーメッシュ(wire mesh)等のような微細多孔構造体が開口率が高く、気体拡散層を均一に圧縮させる面圧分散の役割をするからである。
【0012】
その中でもメタルフォームは、金属材料の内部に数多くの気泡が互いに連結された形態でなることにより、流体の通過が容易であり、単位体積当たりの表面積比が高く、強度に優れ、燃料電池用の分離板素材として適合である。
【0013】
しかし、従来技術で前記メタルフォームの最も大きい短所は、内部気泡がランダムに連結しているため、反応気体および生成水の流れが制御できず、反応全面を効率的に利用することができないということである。
【0014】
また、従来技術では、分離板に微細多孔構造体を適用するので、分離板の内部にかかる差圧が非常に高くて、燃料電池システムの寄生電力が増加し、燃料電池の体積が増加して、燃料電池の内部の水分(凝縮水)が過飽和状態で微細気孔が詰まり易いので、燃料電池の運転安全性を低下させ得る。
【0015】
この背景技術の部分に記載された事項は、発明の背景に対する理解を増進させるために作成されたもので、この技術が属する分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来技術でない事項を含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の実施例は、微細多孔構造体を適用しながら反応気体の流れを均等に配分させることができるだけでなく、水分の過多凝縮による瞬間的な水分流入のような外部かく乱状態でも、安定した燃料電池の作動が可能な分離板およびこれを含む燃料電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の実施例に係る燃料電池用分離板は、膜−電極アセンブリの両面に備えられ、反応気体を前記膜−電極アセンブリに供給するもので、前記膜−電極アセンブリに対応する反応面に形成される伝導性を有する微細多孔体と、前記反応気体を流出入させる入口マニホールドおよび出口マニホールドに連結し、反応気体を前記反応面に誘導するチャンネル部とを含むことができる。
【0018】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記チャンネル部は、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドから前記反応面に拡散するチャンネルを形成することができる。
【0019】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記チャンネル部は、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドから前記反応面に連結するチャンネルを形成することができる。
【0020】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記チャンネルは、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドの一方から他方にいくほど長さが次第に長くなり、前記反応面に連結することができる。
【0021】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記チャンネルの間には、リブが突出形成されることができる。
【0022】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板は、前記反応面に形成され、前記微細多孔体を複数個に分割する隔壁を含むことができる。
【0023】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記隔壁は、前記反応面の反対側面に凹溝として形成され、前記反応面に突出して形成されることができる。
【0024】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記凹溝は、冷却媒体を流動させる冷却通路として形成されることができる。
【0025】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記チャンネル部は、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドから前記反応面に連結するチャンネルを形成し、前記チャンネルの間にリブを形成することができる。
【0026】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記反応面には、前記微細多孔体を複数個のパートに分割する隔壁が形成されることができる。
【0027】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記隔壁は、前記リブと連結され、前記反応面を複数個の反応領域に区画することができる。
【0028】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池用分離板において、前記隔壁は、前記チャンネルを前記各反応領域と連結する複数個のチャンネル群に区画することができる。
【0029】
そして、本発明の実施例に係る燃料電池は、膜−電極アセンブリと、前記膜−電極アセンブリの両面に備えられる分離板と、前記膜−電極アセンブリに対応する前記分離板の反応面に形成され、反応気体を前記膜−電極アセンブリに供給する伝導性を有する微細多孔体とを含み、前記分離板は、前記反応気体を流出入させる入口および出口マニホールドと、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドと連結し、反応気体を前記反応面に誘導するチャンネル部とを含むことができる。
【0030】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記チャンネル部は、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドから前記反応面に拡散するチャンネルを形成することができる。
【0031】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記チャンネルは、前記入口マニホールドおよび出口マニホールドの一方から他方にいくほど長さが次第に長くなり、前記反応面に連結することができる。
【0032】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記チャンネル部は、前記チャンネルの間にリブを形成することができる。
【0033】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記分離板の反応面には、前記微細多孔体を複数個に分割する隔壁が形成されることができる。
【0034】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記隔壁は、前記反応面の反対面に凹溝として形成され、前記反応面に突出して形成されることができる。
【0035】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記凹溝は、冷却媒体を流動させる冷却通路として形成されることができる。
【0036】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記分離板の反応面には、前記微細多孔体を複数個のパートに分割する隔壁が形成されることができる。
【0037】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記隔壁は、前記リブと連結され、前記反応面を複数個の反応領域に区画することができる。
【0038】
また、本発明の実施例に係る前記燃料電池において、前記隔壁は、前記チャンネルを前記各反応領域と連結する複数個のチャンネル群に区画することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の実施例は、分離板のチャンネル部を通じて反応気体を反応面の微細多孔体に均一に分布させ、燃料電池の性能向上を図ることができる。
【0040】
さらに、本発明の実施例では、隔壁によって分離板の反応面を複数個の反応領域に区画し、微細多孔体を反応領域に形成される複数個のパートに分割し、チャンネル部のチャンネルをそれぞれの反応領域と連結する複数個のチャンネル群に区画することができる。
【0041】
そこで、本発明の実施例では、反応気体を微細多孔体に持続的に均一に分布させることができ、凝縮水の過多流入のような瞬間的な外部かく乱でも燃料電池の安定した性能維持が可能であり、反応によって生成された生成水の部分的な傾きによって反応気体の流動渋滞が発生することを防止することができる。
【0042】
また、本発明の実施例では、隔壁を形成する凹溝を冷却媒体を流動させる冷却通路として活用することができるので、燃料電池の冷却効率を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
この図面は、本発明の例示的な実施例を説明することに参照するためのものであるので、本発明の技術的思想を添付の図面に限定して解釈してはならない。
【
図1】本発明の実施例に係る燃料電池を示した一部断面構成図である。
【
図2】本発明の実施例に係る燃料電池用分離板を示した平面構成図である。
【
図3】本発明の実施例に係る燃料電池用分離板の一部を拡大した図面である。
【
図4】本発明の実施例に係る燃料電池の作用効果を説明するためのグラフである。
【
図5】本発明の実施例に係る燃料電池の作用効果を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付の図面を参考として本発明の実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0045】
本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付けた。
【0046】
図面に示した各構成要素の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために任意に示したので、本発明が必ずしも図面に示されたものに限定されず、様々な部分および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。
【0047】
そして、下記の詳細な説明で構成要素の名称を第1、第2等に区分したことは、その構成要素が同一の関係であり、これを区分するためであり、下記の説明で必ずしもその順序に限定されるものではない。
【0048】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0049】
また、明細書に記載された「…ユニット」、「…手段」、「…部」、「…部材」等の用語は、少なくとも一つの機能や動作をする包括的な構成の単位を意味する。
【0050】
図1は、本発明の実施例に係る燃料電池を示した一部断面構成図である。
【0051】
図1を参照すると、本発明の実施例に係る燃料電池100は、燃料としての水素ガスおよび酸化剤ガスとしての空気(以下、「反応気体」という)の提供を受けて、水素と酸素の電気化学的な反応を通じて電気エネルギーを発生させる単位セルからなる。
【0052】
このような燃料電池100は、多数枚で連続的に積層され、燃料電池スタックで構成され、反応副産物として熱を発生させ、凝縮水としての生成水を排出する。
【0053】
例えば、燃料電池100は、膜−電極アセンブリ(MEA:Membrane−Electrode Assembly)10と、膜−電極アセンブリ10の両面にそれぞれ形成される気体拡散層30と、気体拡散層30に密着して配置される分離板50とを含む。
【0054】
上記で膜−電極アセンブリ10は、電解質膜を挟んでその電解質膜の一面にアノード電極層を形成し、その電解質膜の他面にカソード電極層を形成する。
【0055】
アノード電極層は、水素ガスとしての反応気体を酸化反応させて電子と水素イオンに分離させ、電解質膜は、水素イオンをカソード電極層に移動させる機能をする。
【0056】
カソード電極層は、アノード電極層から受けた電子、水素イオン、および別途に提供される空気としての反応気体を還元反応させて水分および熱を生成する機能をする。
【0057】
上記で気体拡散層30は、分離板50を通じて供給される反応気体を膜−電極アセンブリのアノード電極層およびカソード電極層に拡散させ、電気伝導性を有し、アノード電極層およびカソード電極層上に形成される。
【0058】
上記で分離板50は、反応気体を気体拡散層30を通じて膜−電極アセンブリ10に供給し、電気伝導性を有した素材からなる。
【0059】
前記分離板50は、両側周縁に反応気体を流出入させる入口マニホールド51および出口マニホールド52をそれぞれ形成する。そして、分離板50は、気体拡散層30に対応する領域で、入口マニホールド51および出口マニホールド52と連結する反応面53を形成している。
【0060】
上記では、本発明の実施例に係る燃料電池100として、気体拡散層30を含んでいるものと説明されているが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではなく、気体拡散層30を削除した燃料電池100に適用することもできる。しかし、以下では、燃料電池100として気体拡散層30を含むものを例示して説明することとする。
【0061】
本発明の実施例に係る燃料電池用分離板50は、膜−電極アセンブリ10に対する面圧を均等に分散させ、反応気体の拡散および生成水の排出性を向上させることができる構造からなる。
【0062】
また、本発明の実施例は、反応気体の流れを均等に配分させることができるだけでなく、水分の過多凝縮による瞬間的な水分流入のような外部かく乱状態でも安定した燃料電池の作動を可能にする燃料電池用分離板50を提供する。
【0063】
図2は、本発明の実施例に係る燃料電池用分離板を示した平面構成図であり、
図3は、本発明の実施例に係る燃料電池用分離板の一部を拡大した図面である。
【0064】
図1乃至
図3を参照すると、本発明の実施例に係る燃料電池用分離板50は、基本的に微細多孔体60とチャンネル部70とを含んでいる。
【0065】
本発明の実施例において、微細多孔体60は、反応気体を気体拡散層30を通じて膜−電極アセンブリ10に供給し、上記で言及した反応面53に形成される。
【0066】
微細多孔体60は、所定の開口率(当業界では「気孔率」という)を有したメタルフォームで形成される。例えば、微細多孔体60は、電気伝導性に優れた銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、亜鉛金属、および金属合金の中で選択されるいずれか一つの素材からなる。
【0067】
このような微細多孔体60は、金属材料の内部に数多くの気泡が互いに連結されているため、反応気体と生成水の通過が容易であり、単位体積当たりの表面積比が高く、強度に優れているという利点がある。
【0068】
本発明の実施例において、チャンネル部70は、反応気体の流れを反応面53の微細多孔体60に均等に配分させ、反応によって生成された生成水の部分的な傾き現象およびこれによる反応気体の流動渋滞を防止するためのものである。
【0069】
また、チャンネル部70は、入口マニホールド51に流入される反応気体を反応面53の微細多孔体60に誘導し、その微細多孔体60を通過した反応気体を出口マニホールド52に容易に流出させる。
【0070】
このようなチャンネル部70は、入口マニホールド51および出口マニホールド52と連結され、反応面53に連結するチャンネル71を含む。
【0071】
チャンネル71は、入口マニホールド51および出口マニホールド52から反応面53に拡散する形状で、入口マニホールド51と反応面53との間および出口マニホールド52と反応面53との間にそれぞれ形成される。
【0072】
例えば、チャンネル71は、入口マニホールド51および出口マニホールド52の一方から他方にいくほど長さが次第に長くなる形状を有し、反応面53と連結される。
【0073】
ここで、チャンネル71の間にはリブ73が突出して形成され、これらのリブ73も、入口マニホールド51および出口マニホールド52の一方から他方にいくほど長さが次第に長くなる形状で形成される。
【0074】
一方、本発明の実施例に係る燃料電池用分離板50は、反応面53に形成され、微細多孔体60を複数個に分割する隔壁80をさらに含む。
【0075】
本発明の実施例において、隔壁80は、反応面53の反対面に凹溝81として形成され、その反応面53に突出して形成され、入口マニホールド51側から出口マニホールド52側に長く形成される。
【0076】
つまり、隔壁80は、反応面53に突出形成され、その反応面53を複数個の反応領域55に区画し、微細多孔体60をそれぞれの反応領域55に形成される複数個のパート61に分割する。
【0077】
それぞれの反応領域55は、入口マニホールド51および出口マニホールド52側のチャンネル71と連結し、隔壁80は、チャンネル部70のリブ73と連結される。
【0078】
つまり、隔壁80は、入口マニホールド51側でチャンネル部70のリブ73と連結され、出口マニホールド52側でチャンネル部70のリブ73と連結される。
【0079】
そこで、上記の隔壁80は、チャンネル部70のチャンネル71をそれぞれの反応領域55と連結する複数個のチャンネル群75に区画する。
【0080】
このような隔壁80は、上記で言及したように、反応面53の反対面に凹溝81として形成され、その凹溝81は、燃料電池100の積層時に冷却媒体を流動させる冷却通路90として形成される。
【0081】
つまり、多数枚の燃料電池100を積層して燃料電池スタックを構成する時、互いに隣接する燃料電池100の分離板50は、反応面53の反対面が互いに密着し、上記の冷却通路90は、その反対面の凹溝81が互いに合わされながら形成される。
【0082】
以下、上記のように構成される本発明の実施例に係る燃料電池100の作用を前述した図面を参照して詳細に説明する。
【0083】
先ず、本発明の実施例では、一側分離板50の入口マニホールド51に反応気体として水素ガスを供給し、他側分離板50の入口マニホールド51に反応気体として空気を供給する。
【0084】
以下、反応気体は、チャンネル部70のチャンネル71を通じて拡散し、分離板50の反応面53に誘導され、その反応面53の微細多孔体60に均一に流入される。
【0085】
ここで、反応気体は、チャンネル71のチャンネル群75を通じて拡散し、隔壁80によって区画された反応面53の反応領域55に誘導され、その反応領域55に区画形成された微細多孔体60のパート61に均一に流入される。
【0086】
このような反応気体(水素ガスおよび空気)は、気体拡散層30を通じて拡散しながら膜−電極アセンブリ10のアノード電極層およびカソード電極層にそれぞれ供給され、該アノード電極層およびカソード電極層では、水素と酸素の電気化学的な反応によって電気エネルギーを発生させ、熱と凝縮水としての生成水を生成する。
【0087】
そして、微細多孔体60のパート61を通過した反応気体は、チャンネル部70のチャンネル71を通じて出口マニホールド52に容易に排出される。
【0088】
一方、本発明の実施例において、上記のように水素と酸素の電気化学的な反応によって発生する熱は、互いに隣接する燃料電池100の分離板50の間の冷却通路90を通じて流動する冷却媒体によって冷却される。
【0089】
これまで説明したように、本発明の実施例に係る燃料電池100によると、分離板50のチャンネル部70を通じて反応気体を反応面53の微細多孔体60に均一に分布させることができる。
【0090】
また、本発明の実施例では、隔壁80によって分離板50の反応面53を複数個の反応領域55に区画し、微細多孔体60を反応領域55に形成される複数個のパート61に分割し、チャンネル部70のチャンネル71をそれぞれの反応領域55と連結する複数個のチャンネル群75に区画する。
【0091】
従って、本発明の実施例では、反応気体を微細多孔体60に持続的に均一に分布させることができ、凝縮水の過多流入のような瞬間的な外部かく乱でも燃料電池の安定した性能維持が可能であり、反応によって生成された生成水の部分的な傾きによって反応気体の流動渋滞が発生することを防止することができる。
【0092】
そして、本発明の実施例では、隔壁80を形成する凹溝81を冷却媒体を流動させる冷却通路90として活用することができるので、燃料電池の冷却効率を増大させることができる。
【0093】
以下、本発明の実施例に係る燃料電池100の作用効果を
図4および
図5を参照して詳しく説明する。
【0094】
図4は、微細多孔体のみを適用した従来技術としての比較例と、微細多孔体と共にチャンネル部を適用した本発明の実施例1と、微細多孔体およびチャンネル部と共に隔壁を適用した本発明の実施例2に対する燃料電池の性能評価の結果を示したグラフである。
【0095】
図4のように、本発明の実施例1では、比較例に比べて最高出力区間で燃料電池の性能が15%増加したことが分かり、本発明の実施例2では、比較例に比べて最高出力区間で燃料電池の性能が20%増加したことが分かる。
【0096】
そして、
図5は、上記のような比較例と本発明の実施例2に対するセル運転安定性の評価結果を示したグラフである。
【0097】
図5のように、一定の燃料電池負荷状態でセル外部から瞬間的に凝縮水を流入させた時の比較例と実施例2のセル電圧の動きを比較すると、本発明の実施例2では、比較例に比べて安定したセルの動きを表しているが、これは、外部から流入した凝縮水がセル内に均等に流入することで瞬間的なセル電圧の降下が緩和されるためである。
【0098】
以上を通じて本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付の図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0099】
10:膜−電極アセンブリ
30:気体拡散層
50:分離板
51:入口マニホールド
52:出口マニホールド
53:反応面
55:反応領域
60:微細多孔体
61:パート
70:チャンネル部
71:チャンネル
73:リブ
75:チャンネル群
80:隔壁
81:凹溝
90:冷却通路