特許第6890921号(P6890921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890921
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】プローブカード及び接触検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20210607BHJP
   G01R 1/067 20060101ALI20210607BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   G01R1/073 E
   G01R1/067 C
   H01L21/66 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-207263(P2015-207263)
(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公開番号】特開2017-78660(P2017-78660A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年8月23日
【審判番号】不服2020-7341(P2020-7341/J1)
【審判請求日】2020年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】牧瀬 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】那須 美佳
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 濱本 禎広
【審判官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/051675(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/021194(WO,A1)
【文献】 特開2014−181910(JP,A)
【文献】 特開2009−230897(JP,A)
【文献】 特開2007−12475(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/115082(WO,A1)
【文献】 特開2013−88257(JP,A)
【文献】 特開平6−163657(JP,A)
【文献】 特開2003−215163(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/51099(WO,A1)
【文献】 特開2015−141199(JP,A)
【文献】 特開2015−158490(JP,A)
【文献】 特開2015−158491(JP,A)
【文献】 特開2012−88298(JP,A)
【文献】 特開2014−25737(JP,A)
【文献】 特開2012−8051(JP,A)
【文献】 特開2017−67783(JP,A)
【文献】 特開2014−44099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ性を有するプローブと、
前記プローブを保持するプローブヘッドと、を備えるプローブカードであって、
前記プローブヘッドは、
前記プローブを軸方向にガイドしつつ移動可能に保持するガイド部を備え、
前記ガイド部は、通電により前記プローブで発生した熱を吸熱して該プローブ外に流す放熱構造を備え、更に、
前記プローブの上部を保持する上部ガイド穴を有する上部ガイド部と、
前記プローブの下部を軸方向にガイドしつつ移動可能に保持する下部ガイド穴を有する下部ガイド部と、
前記上部ガイド部と前記下部ガイド部の中間に位置し、前記プローブの中間部を軸方向にガイドしつつ移動可能に保持する中間ガイド穴を有する中間ガイド部と、を備え、
前記放熱構造を有するガイド部は、前記中間ガイド部であり、
前記放熱構造の吸熱部位の少なくとも一部は、前記プローブのバネ性を発現する部分と対向して位置する、
ことを特徴とするプローブカード。
【請求項2】
請求項1に記載されたプローブカードにおいて、
前記放熱構造は、前記ガイド部の前記プローブと対向する部分の少なくとも一部が、前記プローブで発生した熱を該プローブから遠ざかる方向に放熱、拡散させる高熱伝導性材料で形成された構成である、ことを特徴とするプローブカード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたプローブカードにおいて、
前記放熱構造を有するガイド部は、上下方向に複数に分割されている、ことを特徴とするプローブカード。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載されたプローブカードにおいて、
前記プローブのバネ性は、該プローブを構成する導電性の筒体に設けられたスリットによって付与されている、ことを特徴とするプローブカード。
【請求項5】
請求項に記載されたプローブカードにおいて、
前記プローブは、スリーブ状の案内筒の一部にバネ性を発現するバネ部を有する筒体と、
前記筒体に対して挿入され、前記案内筒部の一部に接合されることによって筒体と一体になって軸方向に変位する導電性を有する棒状体と、を備えている、ことを特徴とするプローブカード。
【請求項6】
被検査体が載置される載置部と、
バネ性を有するプローブを備えるプローブカードと、
前記載置部上の被検査体の被検査部と前記プローブカードとの相対位置を接離可能に変化させる駆動部と、を備え、
前記載置部上に載置された被検査体の被検査部に対して、前記プローブが接触することによって通電検査を行う接触検査装置であって、
前記プローブカードは、請求項1からのいずれか一項に記載されたプローブカードである、ことを特徴とする接触検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の通電試験等に用いるプローブカード及び該プローブカードを備える接触検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接触検査装置は、バネ性を有する導電性のプローブを被検査体の被検査部に対して接触させた状態で前記バネ性を利用して適切な押圧力で押圧することにより電気的な接続状態を確立する。この状態で通電し検査を行う装置が接触検査装置である。この種の接触検査装置の従来技術として特許文献1から特許文献4に記載の装置等が挙げられる。
【0003】
また、図9に従来のプローブヘッド100の構造を表している。このプローブヘッド100は、プローブ101、下部プレート102、中間スペーサー103、上部プレート104、第1中間ガイドフィルム105、第2中間ガイドフィルム106及び第3中間ガイドフィルム107の計7点の部品で基本的に構成されている。そして、プローブ101の真直性は、下部プレート102、上部プレート104、第1中間ガイドフィルム105、第2中間ガイドフィルム106及び第3中間ガイドフィルム107の5つの部材で保持することによって保たれている。
また、第1中間ガイドフィルム105、第2中間ガイドフィルム106及び第3中間ガイドフィルム107が保持している範囲は、プローブ101のバネ作用を発現する部分108を除いた狭い範囲に設定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−162483号公報
【特許文献2】特開2006−3191号公報
【特許文献3】特開2014−44099号公報
【特許文献4】特開2015−148561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような接触検査装置において、通電検査を行う際に高電流が印加される場合が増えてきた。接触検査装置に高電流が印加されるとジュール熱が多く発生してプローブが高温になる。そして、該プローブの前記バネ性を発現する部分が高温になるとバネ性が低下する。また、バネ性が低下すると該プローブを被検査体の被検査部に対して適切な押圧力で押し付けることができなくなり、検査精度が低下する虞がある。
しかし、従来は、通電検査の際に高電流を印加した場合に発生するジュール熱によりプローブが高温になってバネ性が低下する虞については考慮されておらず、上記特許文献1から特許文献4にもその旨の記載は何らなされていない。
【0006】
また、図9に示す第1中間ガイドフィルム105、第2中間ガイドフィルム106及び第3中間ガイドフィルム107は、プローブ101の真直性の維持を目的に設けられており、プローブ101との接触面積が小さな現状の構成で期待できる放熱効果は極めて小さい。
本発明の目的は、バネ性を有する導電性のプローブを使用して被検査体の通電検査を行うプローブカード及び該プローブカードを備える接触検査装置において、通電検査の際に高電流を印加した場合でもプローブのバネ性が低下する虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のプローブカードは、バネ性を有するプローブと、前記プローブを保持するプローブヘッドと、を備えるプローブカードであって、前記プローブヘッドは、前記プローブを軸方向に移動可能に保持するガイド部を備え、前記ガイド部は、通電により発生した前記プローブ熱を吸熱して該プローブ外に流す放熱構造を備えている、ことを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記ガイド部は、前記プローブの熱を吸熱して該プローブ外に流す放熱構造を備えている。これにより、通電検査の際に高電流が印加された場合にはジュール熱が多く発生してプローブが高温になるが、当該放熱構造によって前記ジュール熱は吸収されて外部に放熱される。従って、当該プローブの高温化が抑制され、以ってプローブのバネ性が低下する虞を低減することができる。
【0009】
本発明の第2の態様のプローブカードは、第1の態様において、前記放熱構造は、前記ガイド部の前記プローブと対向する部分の少なくとも一部が、前記プローブで発生した熱を該プローブから遠ざかる方向に放熱、拡散させる高熱伝導性材料で形成された構成であることを特徴とする。
ここで、前記高熱伝導性材料は、具体的にはファインセラミック系、マシナブルセラミック系、樹脂系、ポリイミド系(フィルムのような薄いものではなく、厚さをもったもの)の材料等が挙げられる。これらの材料を一種類で又は複数種類を組み合わせた複合構造で用いてもよい。
尚、当該ガイド部は、前記熱伝導性の他に、電気的絶縁性、放熱性、耐熱性の要求仕様を満たし、また線膨張係数が低い材料であることが好ましい。
【0010】
本態様によれば、前記放熱構造は、前記ガイド部の前記プローブと対向する部分の少なくとも一部が、前記プローブで発生した熱を該プローブから遠ざかる方向に放熱、拡散させる高熱伝導性材料で形成された構成であるので、当該ガイド部で通電検査時の前記プローブの移動をガイドしつつ、前記ジュール熱を当該高熱伝導性材料で形成されたガイド部によって容易に吸熱して放熱することができる。これにより、当該プローブの高温化が抑制され、プローブのバネ性が低下する虞を低減させることができる。
また、本態様により当該放熱構造を構造簡単にして構築することができる。当該放熱構造は、前記高熱伝導性材料を用いる構造には限定されないことは勿論である。
【0011】
本発明の第3の態様のプローブカードは、第1の態様又は第2の態様において、前記放熱構造の吸熱部位の少なくとも一部は、前記プローブのバネ性を発現する部分と対向して位置する、ことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記放熱構造の吸熱部位の少なくとも一部は、前記プローブのバネ性を発現する部分と対向して位置するので、プローブのバネ性を発現する部分からダイレクトに発生するジュール熱を吸収するので、プローブのバネ性の低下を効果的に低減させることができる。
また、効果的にジュール熱を吸収することができるから、当該プローブの高温化が抑制され、プローブのバネ性が低下する虞を低減させることができる。
【0013】
本発明の第4の態様のプローブカードは、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記プローブヘッドは、前記プローブの上部を保持する上部ガイド穴を有する上部ガイド部と、前記プローブの下部を保持する下部ガイド穴を有する下部ガイド部と、前記上部ガイド部と前記下部ガイド部の中間に位置し、前記プローブの中間部を保持する中間ガイド穴を有する中間ガイド部と、を備え、前記放熱構造を有するガイド部は、前記中間ガイド部である、ことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、プローブを上部ガイド部と、下部ガイド部と、その中間に位置する中間ガイド部と、によって構成される複数のガイド部によってガイドするので、通電検査時のプローブの移動を高精度でガイドしつつ、当該プローブの高温化が抑制され、プローブのバネ性が低下する虞を低減させることができる。
【0015】
本発明の第5の態様のプローブカードは、第4の態様において、前記放熱構造を有するガイド部は、上下方向に複数に分割されている、ことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記放熱構造を有する中間ガイド部(中間ガイド穴を有する部分)は上下方向に複数に分割されているので、プローブの組み付けがし易くなって、プローブカードの生産性が向上する。
【0017】
本発明の第6の態様のプローブカードは、第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記プローブのバネ性は、該プローブを構成する導電性の筒体に設けられたスリットによって付与されている、ことを特徴とする。
【0018】
プローブのバネ性が該プローブを構成する導電性を有する筒体の一部にスリット
を形成して螺旋形状等に形成することで付与されている構造のプローブの場合、特にジュール熱による高温化でバネ性が低下する傾向が見られる。
本態様によれば、このような構造のプローブであっても高温化によるバネ性の低下を効果的に抑制することができる。
【0019】
本発明の第7の態様のプローブカードは、第6の態様において、前記プローブは、スリーブ状の案内筒の一部にバネ性を発現するバネ部を有する筒体と、前記筒体に対して挿入され、前記案内筒部の一部に接合されることによって筒体と一体になって軸方向に変位する導電性を有する棒状体と、を備えている、ことを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、バネ性を有する筒体と、該筒体に対して挿入される導電性を有するプランジャーと、を備えたプローブを使用するプローブカードにおいて、第の態様と同様の作用効果、即ちプローブの高温化によるバネ性の低下を効果的に抑制することが可能になる。
【0021】
本発明の第8の態様の接触検査装置は、被検査体が載置される載置部と、バネ性を有するプローブを備えるプローブカードと、前記載置部上の被検査体の被検査部と前記プローブカードとの相対位置を接離可能に変化させる駆動部と、を備え、前記載置部上に載置された被検査体の被検査部に対して、前記プローブが接触することによって通電検査を行う接触検査装置であって、前記プローブカードは、第1の態様から第の態様のいずれか一つの態様のプローブカードである、ことを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、プローブカードの第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様が有している作用、効果を接触検査装置に適用して、プローブの高温化によるバネ性の低下を効果的に抑制して、接触検査装置の検査精度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る接触検査装置を模式的に表す側断面図。
図2】本発明の実施形態に係るプローブカードを模式的に表す側断面図。
図3】本発明の実施形態に係るプローブカードのカード構造を模式的に表す側断面図。
図4】本発明の実施形態に係るプローブカードを模式的に表す斜視図。
図5】本発明の実施形態に係るプローブカードのプローブを表す側面図。
図6】本発明の実施形態に係るプローブカードの要部を拡大して表す側断面図。
図7】本発明の実施形態に係るプローブカードの非通電状態における側断面図。
図8】本発明の実施形態に係るプローブカードの通電状態における側断面図。
図9】従来のプローブヘッドの構造を模式的に表す側断面図。[発明を実施するための形態]
【0024】
以下に、本発明の実施形態に係るプローブカード及び接触検査装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下の説明では、最初に図1及び図3に基づいて本発明の実施形態に係る接触検査装置の概要について説明する。次に、図2及び図4図6に基づいて本発明の実施形態に係るプローブカードの具体的構成について説明する。更に、図7及び図8に基づいて当該プローブカードを使用して行う通電検査の内容をプローブの非通電時と通電時の動作を中心に説明する。
【0025】
(1)接触検査装置の概要(図1及び図3参照)
接触検査装置1は、バネ性を有する導電性のプローブ3を被検査体5の被検査部7に対して接触させた状態で前記バネ性を利用して適切な押圧力で押圧することにより電気的な接続状態を確立する。この状態でプローブ3を通電状態にして各被検査部7の電流値や電圧差等の電気的特性を計測したり、被検査体5全体の動作試験を行って、当該被検査体5の良否を判定する目的で接触検査装置1は使用される。
【0026】
接触検査装置1の検査対象となる被検査体5としては、プリント配線基板等の電子基板や半導体ウェハ或いはパッケージされたIC、LSI等の半導体チップ等が一例として挙げられる。また、プローブ3が直接、接触する被検査部7としては、電子基板等にマウントされた電子回路上の検査パターンや電極ということになる。該電極等の被検査部7は検査時には通常その表面が酸化膜で覆われている。
具体的には、接触検査装置1は、前述した被検査体5が載置される載置部9と、バネ性を有するプローブ3を備える本発明のプローブカード11と、前記載置部9上の被検査体5の被検査部7と前記プローブカード11との相対位置を接離可能に変化させる駆動部13と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0027】
また、前記プローブカード11は、バネ性を有する複数本のプローブ3と、これら複数本のプローブ3を保持するプローブヘッド15と、を備えることによって構成されており、プローブ3は長尺な一例として円筒スリーブ状の筒体17(図2)と、該筒体17に挿入される長尺な一例として丸棒状のプランジャー(棒状体)19と、を備えることによって構成されている。
また、図示の実施形態では、前述したプローブヘッド15は、図3に表すようなカード構造12に対して直接、取り付けられるように構成されている。具体的には、クランプヘッド35とスティフナー37によって支持されたプリント基板39の一例として下面に固定リング41を使用して取り付けられたMLC(Multi Level Cell)43に、対して、下方から当該プローブヘッド15を挿し込んで固定ネジ45を締め付けることによってプローブヘッド15は取り付けられるように構成されている。
【0028】
そして、前記プリント基板39は、一例としてセラミックス基板と配線基板とが積層された多層構造の電子基板によって構成されており、前記プローブ3の基端部3aに入力端が接続されている前記MLC43の出力端に接続される。該配線路の他端は、前記プローブ3の先端部3bが前記被検査部7に接触し通電検査を行うことによって取得したデータに基づいて前述した各被検査部7の電気的特性の計測と被検査体5全体の動作試験を実行し、被検査体5の良否を判定する制御部23を備えるテスター25に接続されている。
【0029】
(2)プローブカードの具体的構成(図2及び図4図6参照)
プローブカード11は、前述したようにバネ性を有するプローブ3と、該プローブ3を保持するプローブヘッド15と、を備えている。そして、プローブヘッド15には、プローブ3を押圧方向となる軸方向Zに移動可能に保持するガイド部27が設けられており、該ガイド部27には、通電により発生したプローブ3の熱を吸熱してプローブ3外に流す放熱構造29が備えられている。
【0030】
(A)プローブの具体的構成(図5参照)
図2に表したように、プローブ3は、スリーブ状の案内筒部33の一部にバネ性を発現するバネ部31(31A、31B、31C、31D)を有する筒体17と、該筒体17に対して挿入され、前記案内筒部33の一部に接合されることによって該筒体17と一体になって軸方向Zに変位する導電性を有するプランジャー19と、を備えている。
また、本実施形態では、プローブ3のバネ性は、導電性を有する前記筒体17に設けられる螺旋状のスリット47によって形成されるバネ部31(31A、31B、31C、31D)によって付与されている。
【0031】
筒体17は、一例としてNiCo、NiPなどのニッケル合金製で外径が0.1mm以下で長さが6mm程度の極めて細い管材によって形成されており、軸方向Zの両端とその中間の4ヶ所に円筒スリーブ状の案内筒部33A、33B、33C、33Dが設けられている。また、これら4ヶ所の案内筒部33A、33B、33C、33Dの間の3ヶ所にプローブ3にバネ性を付与するバネ部31が設けられている。
尚、前記3ヶ所に設けられるバネ部31は一例として先端部3b寄りと基端部3a寄りに設けられている2本のバネ部31A、31Dが長く、その中央においてギャップGを隔てて設けられる2本のバネ部31B、31Cが短くなるように形成されている。また、前記ギャップGを境にして先端部3b側に配置されるバネ部31A、31Bと基端部3a側に配置されるバネ部31C、31Dの巻方向をそれぞれ逆にしており、これにより、プローブ3を押圧した時の筒体17の捩れを解消している。
【0032】
更に、先端部3b寄りの案内筒部33Aと基端部3a寄りの案内筒部33Dには、軸方向Zに延びる所定長さの直線状の接合用スリット49A、49Bが対向する位置に1本ずつそれぞれ形成されている。因みに、この接合用スリット49A、49Bは、プランジャー19と筒体17とを抵抗溶接やカシメ等によって接合する際の筒体17の変形を防止して、一定の外径が保たれるようにする目的で形成されている。
また、前記バネ部31を設けるための螺旋状のスリット47の形成に当たっては、レーザー加工やエッチング処理等をそれぞれ単独で実施したり、両者を組み合わせて実施することが可能である。
【0033】
プランジャー19は、直径が0.05mm程度の丸棒状の部材で本実施形態では、先端部3b側に設けられる長さが4mm程度の第1プランジャー19Aと、基端部3a側に設けられる長さが2mm程度の第2プランジャー19Bと、の2本のプランジャーが使用されている。
このうち、第1プランジャー19Aは、一例としてAgPdCuなどのパラジウム合金製で、前記筒体17に組み付けた状態で該筒体17の先端部3b側の端面から1mm程度、先端が突出し、一方、第1プランジャー19Aの後端は、前記案内筒部33Cの内部に到達し得る長さに形成されている。
【0034】
また、前記第1プランジャー19Aは、前述した案内筒部33Aに形成されている接合用スリット49Aの個所で筒体17に接合され、筒体17と一体になって軸方向Zに移動し得るように構成されている。
そして、前記第1プランジャー19Aの先端がプローブ3の先端部3bとなり、通電検査時において前述した被検査体5の被検査部7に接触するように構成されている。
【0035】
他方、第2プランジャー19Bは、一例としてタングステンやロジウム(Rh)或いはAgPdCuなどのパラジウム合金製で、前記筒体17に組み付けた状態で該筒体17の基端部3a側の端面から0.2mm程度、後端が突出し、一方、第2プランジャー19Bの先端は、前記案内筒部33Cの内部に到達し得る長さに形成されている。
また、前記第2プランジャー19Bは、前述した案内筒部33Dに形成されている接合用スリット49Bの個所で筒体17に接合され、筒体17と一体になって軸方向Zに移動し得るように構成されている。
【0036】
また、案内筒部33Cの内部に位置する第1プランジャー19Aの後端と第2プランジャー19Bの先端との間には、約0.4mmの間隙Sが形成されており、第1プランジャー19Aと第2プランジャー19Bを合わせて計0.4mmの移動ストロークが得られるように構成されている。
そして、前記第2プランジャー19Bの後端がプローブ3の基端部3aになり、前述したカード構造12のMLC43の入力側の接点に当接して、通電検査時において前述した各被検査部7の電気的特性等を出力できるように構成されている。
【0037】
(B)プローブヘッドの具体的構成(図2図4及び図6参照)
プローブヘッド15は、本実施形態では、複数本のプローブ3と、プローブ3の基端部3a寄りの上部を保持する上部ガイド穴51aを有する上部ガイド部51と、プローブ3の先端部3b寄りの下部を保持する下部ガイド穴53aを有する下部ガイド部53と、前記上部ガイド部51と下部ガイド部53との中間に配置される中間スペーサー52と、前記上部ガイド部51と前記下部ガイド部53の間に位置し、上部ガイド部51、中間スペーサー52及び下部ガイド部53に形成された収容凹部55に収容される中間ガイド穴57aを有する中間ガイド部57と、を備えることによって構成されている。
【0038】
また、本実施形態では、前記中間ガイド部57がプローブ3の先端部3b側に位置する第1中間ガイド部57Aと、プローブ3の基端部3a側に位置する第3中間ガイド部57Cと、第1中間ガイド部57Aと第3中間ガイド部57Cの間に位置する第2中間ガイド部57Bの3つの中間ガイド部を備えることによって形成されている。
また、これら3つの中間ガイド部57A、57B、57Cの上面のプローブ3の設置範囲には所定深さの凹部57bがそれぞれ形成されており、前述した収容凹部55の底部に位置する下部ガイド部53にも収容凹部55の底面のプローブ3の設置範囲から所定深さの凹部53bが形成されている。
【0039】
そして、前述したプローブ3は、上部ガイド部51に形成されている上部ガイド穴51aに挿入された後、前記3つの中間ガイド部57A、57B、57Cにそれぞれ形成されている3つの凹部57bと複数の中間ガイド穴57aを通って、前記下部ガイド部53の凹部53bと下部ガイド穴53aに至り、プローブヘッド15の下面からプローブ3の先端部3bを所定長さ突出させた所定の位置で保持されるように構成されている。
【0040】
更に、本実施形態では、前述した3つの中間ガイド部57A、57B、57Cのすべてに放熱構造29を持たせており、該放熱構造29を持たせる手段として、前述した筒体17の4つのバネ部31A、31B、31C、31Dを囲うように対向して配置された3つの中間ガイド部57A、57B、57Cをプローブ3よりも熱伝導性の高い高熱伝導性材料で形成している。
そして、本実施形態では中間ガイド部57A、57B、57Cの材料としてセラミックスを採用している。また、セラミックスの中でも特に熱伝導率の高い窒化アルミニウム系のファインセラミックスが好適な材料として一例として使用できる。中間ガイド部57A、57B、57Cの材料として、ファインセラミック系、マシナブルセラミック系、樹脂系、ポリイミド系(フィルムのような薄いものではなく、厚さをもったもの)の材料等を使用することができる。これらの材料の一種類で又は複数種類を組み合わせた複合構造で用いてもよい。
尚、当該中間ガイド部57A、57B、57Cは、前記熱伝導性の他に、電気的絶縁性、放熱性、耐熱性が要求される仕様を満たす材料であり、また線膨張係数が低い材料であることが好ましい。
【0041】
また、放熱構造29としては、中間ガイド部57を高熱伝導性材料によって形成する他、プローブヘッド15内にエアレーション構造、水冷構造、ペルチェ構造等を設けることで構成してもよい。
【0042】
この他、本実施形態では、プローブ3の先端部3b寄りの部位を保持している下部ガイド部53と、プローブ3の基端部3a寄りの部位を保持している上部ガイド部51の材料としてもプローブ3よりも熱伝導性の高い高熱伝導性材料の一例としてセラミックスを使用しており、中間スペーサー52の材料として42アロイを一例として使用している。
【0043】
(3)プローブカードを使用して行う通電検査の内容(図7図8参照)
次に、前記プローブカード11を備えた接触検査装置1を使用することによって実行される通電検査の内容をプローブ3の非通電時と通電時の動作を中心に説明する。
(A)非通電時(図7参照)
非通電時はプローブ3の先端部3bは、載置部9上に載置された被検査体5の被検査部7に対して離間した状態になっている。この状態では、バネ部31には負荷が掛かっていないため、第1プランジャー19Aの先端は筒体17の先端部3b側の端面から前述したように1mm程度突出した状態になっている。
【0044】
(B)通電時(図8参照)
この状態から駆動部13を起動し、プローブ3の先端部3bを被検査部7に対して相対的に移動させて該被検査部7に接触させ、所定の押圧力で押し付ける。そして、プローブ3の先端部3bには被検査部7から基端部3a側に向けての反力が作用し、該反力の一部は第1プランジャー19Aと筒体17との接合点となる接合用スリット49Aが形成されている部位を介して案内筒部33Aを基端部3a側に押し上げるように作用する。
また、前記反力の一部か筒体17と第2プランジャー19Bとの接合点となる接合用スリット49Bが形成されている部位を介して案内筒部33Dを先端部3b側に押し下げるように作用する。そして、前記案内筒部33Aと案内筒部33Dの変位を4つのバネ部31A、31B、31C、31Dの圧縮変形によって吸収するように構成されている。
【0045】
また、プローブ3の先端部3bから第1プランジャー19Aを流れる電流は、案内筒部33A、バネ部31A、案内筒部33B、バネ部31B、ギャップG、バネ部31C、案内筒部33C、バネ部31D、案内筒部33D、第プランジャー19Bの順で伝達されてプローブ3の基端部3aに至り、MLC43を介して、その電気信号が制御部23に送られる。
そして、この際、前記4つのバネ部31A、31B、31C、31Dがジュール熱により高温になるが、本実施形態ではこれらのバネ部31A、31B、31C、31Dと対向する位置の広い範囲に複数の中間ガイド部57A、57B、57Cが設けられているので、これらの中間ガイド部57A、57B、57Cが有する放熱作用が効果的に発揮されて該プローブ3の温度上昇が抑制される。即ち、前記バネ部31A、31B、31C、31Dは、それぞれ対向する位置に存する中間ガイド部57A、57B、57Cの中間ガイド穴57aの内周面によって前記ジュール熱を吸収されて放熱され、その温度上昇が抑制される。
【0046】
そして、このようにして構成される本実施形態に係るプローブカード11及び接触検査装置1によれば、バネ性を有する導電性のプローブ3を使用して被検査体5の通電検査を行うに際して、高電流を印加して通電検査を行った場合でも、プローブ3の筒体17に設けられるバネ部31の温度上昇を抑制することができる。これにより、プローブ3のバネ性を低下させることなく通電検査を行うことができるから、通電検査の検査精度の低下を抑制することが可能になる。
【0047】
[他の実施形態]
本発明に係るプローブカード11及び接触検査装置1は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0048】
例えば、放熱構造29は、プローブ3と対向する位置に存するすべてのガイド部27に設ける他、そのうち一部のガイド部27に対してだけ設けることも可能である。また、ガイド部27を構成している部材の全体に対して放熱構造29を適用する他、バネ部31と対向する位置に存するガイド部27の一部の範囲のみに放熱構造29を適用することも可能である。
また、前記実施形態では3つの中間ガイド部57A、57B、57Cを使用したが中間ガイド部57を4つ以上設けたり、中間ガイド部57を2つ以下に減らすことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…接触検査装置、3…プローブ、3a…基端部、3b…先端部、5…被検査体、
7…被検査部、9…載置部、11…プローブカード、12…カード構造、
13…駆動部、15…プローブヘッド、17…筒体、19…プランジャー(棒状体)、
23…制御部、25…テスター、27…ガイド部、29…放熱構造、31…バネ部、
33…案内筒部、35…クランプヘッド、37…スティフナー、39…プリント基板、
41…固定リング、43…MLC、45…固定ネジ、47…スリット、
49A、49B…接合用スリット、51…上部ガイド部、51a…上部ガイド穴、
52…中間スペーサー、53…下部ガイド部、53a…下部ガイド穴、
53b…凹部、55…収容凹部、57…中間ガイド部、57a…中間ガイド穴、
57b…凹部、Z…軸方向、G…ギャップ、S…間隙
図1
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図9