(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結穴形成工程は、前記杭構成部材を地盤に設置するための杭施工機に設けられた穿孔機構によって前記第一の連結穴および前記第二の連結穴を形成することを特徴とする請求項1に記載の杭構成部材の接続方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の機械式継手構造を備えた技術では、杭体を構成する杭構成部材自体に、連結用孔を穿孔するとともに、その連結用孔の内面側にボルト孔を形成させた係止部材を溶着するという複雑な加工を施す必要がある。また、接続する2本の杭構成部材のそれぞれに連結用孔を各別に穿孔するため、その穿孔には高い加工精度が要求され、さらに杭構成部材自体の製造誤差も発生するので、実際に要求する精度を満たすためには継手部が全て機械加工になってしまう。そのため、加工費用が増大するという問題があった。しかも、杭構成部材に対して上記の加工を行う場合には、一般的には杭材メーカーから加工工場を経由して上記加工を行ってから施工現場に搬入されるという搬送経路となり、輸送費を低減することが求められていた。
【0007】
さらに、工場などで連結用孔を加工した杭構成部材を現場で接続する場合には、両杭構成部材の連結用孔同士が一致するように精度よく位置決めするという手間のかかる作業が発生することになり、作業効率が低下する原因となっていることから、その点で改善の余地があった。
【0008】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、杭構成部材に対する加工コストや輸送コストを低減することができるとともに、接続時の位置決め作業にかかる手間を低減することが可能な杭構成部材の接続方法及び杭施工機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明の一態様に係る杭構成部材の接続方法は、杭体を構成する杭構成部材同士を、互いに重ねて接続する杭構成部材の接続方法であって、一方の杭構成部材の端部に他方の杭構成部材の端部を重ねて設置する杭構成部材配置工程と、重ねた部分に、その重ね方向に前記一方の杭構成部材及び前記他方の杭構成部材を貫通するように連結穴を形成する連結穴形成工程と、形成した前記連結穴に連結部材を嵌合させる連結部材嵌合工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
この方法によれば、以下のようにして継手構造を構築することができる。
すなわち、杭構成部材配置工程において一方の杭構成部材の端部と他方の杭構成部材の端部とを重ねた部分に対して、連結穴形成工程において一方の杭構成部材及び他方の杭構成部材を貫通するように連結穴を形成することができる。そして、連結部材嵌合工程において、形成した連結穴同士を連通するようにして連結部材を嵌合させることで、一方の杭構成部材と他方の杭構成部材とを連結させることができる。
このように、本発明に係る杭構成部材の接続方法によれば、一方の杭構成部材の端部と他方の杭構成部材の端部とを重ねて配置した状態で連結穴を形成し、かつ連結部材を嵌合させるという簡単な継手構造により施工できる方法であり、杭構成部材の設置箇所における現場施工が可能である。そのため、従来のように杭端部に機械加工が施される機械式継手の場合に比べて継手の加工費を低減することができる。さらに、継手の加工を行うために加工工場に杭構成部材を持ち込む工程が不要になるため、輸送コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明では、一方の杭構成部材と他方の杭構成部材とを重ねた部分で、一方の杭構成部材及び他方の杭構成部材を同時に貫通させたそれぞれの連結穴同士は位置ずれが生じることがなく、精度よく形成することができる。そのため、連結部材の挿入時に現場で連結穴同士を位置決めするという手間のかかる作業を低減することが可能となり、連結部材を容易に挿入して嵌合させることができるので、作業効率を向上させることができる。
さらに、杭体の打設作業中に、杭構成部材同士の継手構造を設けて接続できるので、この接続作業が完了した直後に打設作業を開始することができ、工程の短縮を図ることができる。
さらにまた、本発明では、杭構成部材同士が重なる部分であれば任意の箇所に継手構造を配置することが可能となるので、種々の縦継部材の配列に対応することができる利点がある。
【0012】
また、本発明の一態様に係る杭構成部材の接続方法においては、前記連結穴形成工程は、前記杭構成部材を地盤に設置するための杭施工機に設けられた穿孔機構によって前記連結穴を形成することを特徴としても良い。
【0013】
この方法によれば、杭施工機に穿孔機構が設けられているので、連結穴形成工程ごとに穿孔機構を配置する手間が不要になり、作業性の向上を図ることができる。また、杭施工機自体に備えられる旋回や上下移動機構を穿孔機構に利用することができるので、これらの動作に必要な新たな機構が不要となり、簡単な構造でコンパクト化を図ることができ、かつコストを低減できる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る杭構成部材の接続方法においては、前記連結部材嵌合工程は、前記杭構成部材を地盤に設置するための杭施工機に設けられた打設機構によって前記連結部材を前記連結穴に押し込むことにより嵌合させることを特徴としても良い。
【0015】
この方法によれば、杭施工機に打設機構が設けられているので、連結穴形成工程ごとに打設機構を配置する手間が不要になり、作業性の向上を図ることができる。また、杭施工機自体に備えられる旋回や上下移動機構を打設機構に利用することができるので、これらの動作に必要な新たな機構が不要となり、簡単な構造でコンパクト化を図ることができ、かつコストを低減できる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る杭構成部材の接続方法においては、前記連結穴形成工程で形成した前記連結穴に係合部材を配置する係合部材配置工程を備え、前記連結部材嵌合工程は、拡張可能に分割された前記係合部材の挿入穴に前記連結部材を押し込むことを特徴としても良い。
【0017】
この方法によれば、連結部材嵌合工程において、係合部材の挿入穴に連結部材を押し込むことにより嵌合させると、分割された係合部材が拡張された状態で連結穴に係合するので、連結部材が楔部材として機能して確実に嵌合させることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る杭体の構築方法は、上述した杭構成部材の接続方法により杭構成部材同士が互いに重ねて接続された杭体の構築方法であって、杭施工機の把持部によって前記一方の杭構成部材を把持して地盤に設置する設置工程と、前記設置工程で設置された前記一方の杭構成部材の上端部に新たに接続する前記他方の杭構成部材の下端部を重ねて設置し、前記連結穴形成工程及び前記連結部材嵌合工程により、前記杭構成部材同士を接続する接続工程と、を有し、前記接続工程を行いながら前記設置工程を複数回繰り返すことにより、複数の前記杭構成部材により前記杭体を構築することを特徴としている。
【0019】
この杭体の構築方法によれば、設置工程で地盤に設置された一方の杭構成部材の上端部に他方の杭構成部材の下端部を重ねて接続した後に、それぞれの杭構成部材を貫通するように連結穴形成工程により連結穴を形成する。次に、前記連結部材嵌合工程によりそれぞれの連結穴に連結部材を嵌合させることで、一方の杭構成部材と他方の杭構成部材とを連結させることができる。そして、接続工程を行いながら設置工程を複数回繰り返すことにより、複数の杭構成部材により杭体を構築することができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る杭施工機は、杭体を構成する杭構成部材同士を、互いに重ねて接続して地盤に設置する杭施工機であって、地盤に設置された一方の杭構成部材の端部に他方の杭構成部材の端部を重ねた部分に、その重ね方向に前記一方の杭構成部材及び前記他方の杭構成部材を貫通するように連結穴を形成する穿孔機構と、形成した前記連結穴に連結部材を押し込むことにより嵌合させる打設機構と、を備えていることを特徴としている。
【0021】
この構成によれば、以下のようにして継手構造を構築することができる。
すなわち、地盤に設置された一方の杭構成部材の端部と他方の杭構成部材の端部とを重ねた部分に対して、穿孔機構によって一方の杭構成部材及び他方の杭構成部材を貫通するように連結穴を形成することができる。そして、打設機構において、形成した連結穴同士を連通するようにして連結部材を嵌合させることで、一方の杭構成部材と他方の杭構成部材とを連結させることができる。
このように、本発明に係る杭施工機によれば、地盤に設置した杭構成部材に対して他方の杭構成部材を配置した状態で連結穴を形成し、かつ連結部材を嵌合させるという簡単な継手構造により施工することができ、一方の杭構成部材の設置箇所における現場施工となる。そのため、従来のように杭端部に機械加工が施される機械式継手の場合に比べて継手の加工費を低減することができる。さらに、継手の加工を行うために加工工場に杭構成部材を持ち込む工程が不要になるため、輸送コストの低減を図ることができる。
【0022】
また、本発明では、一方の杭構成部材と他方の杭構成部材とを重ねた部分で、一方の杭構成部材及び他方の杭構成部材を同時に貫通させたそれぞれの連結穴同士は位置ずれが生じることがなく、精度よく形成することができる。そのため、連結部材の挿入時に現場で連結穴同士を位置決めするという手間のかかる作業を低減することが可能となり、連結部材を容易に挿入して嵌合させることができるので、作業効率を向上させることができる。
さらに、杭体の打設作業中に、杭構成部材同士の継手構造を設けて接続できるので、この接続作業が完了した直後に打設作業を開始することができ、工程の短縮を図ることができる。
さらにまた、本発明では、杭構成部材同士が重なる部分であれば任意の箇所に継手構造を配置することが可能となるので、種々の縦継部材の配列に対応することができる利点がある。
【0023】
また、本発明の一態様に係る杭施工機において、前記穿孔機構及び前記打設機構は互いに一体に設けられ、一体化された前記穿孔機構及び前記打設機構が施工機本体に対して着脱自在に設けられていることを特徴としても良い。
【0024】
この構成によれば、一体に設けられた穿孔機構及び打設機構を汎用の杭施工機の施工機本体に対して装着して用いることが可能となる。そのため、杭施工機ごとに対応させた仕様で構成する必要がなく、使用後には、穿孔機構及び打設機構のみを施工機本体から簡単に離脱させることで、汎用の杭施工機に戻すことができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る杭施工機は、前記穿孔機構及び前記打設機構は、前記杭構成部材の軸線方向に配列されていることを特徴としても良い。
【0026】
この構成によれば、穿孔機構で連結穴を形成した後、杭施工機により杭構成部材を上下方向のいずれかに移動させ、形成した連結穴を打設機構に対応する位置に配置することで、その連結穴に対して打設機構によって連結部材を挿入させて嵌合することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る杭施工機は、前記穿孔機構及び前記打設機構は、前記杭構成部材の周方向に配列されていることを特徴としても良い。
【0028】
この構成によれば、穿孔機構で連結穴を形成した後、杭施工機により杭構成部材を周方向のいずれかに移動させ、形成した連結穴を打設機構に対応する位置に配置することで、その連結穴に対して打設機構によって連結部材を挿入させて嵌合することができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係る杭構成部材の接続施工ユニットは、杭体を構成する杭構成部材同士を、互いに重ねて接続して地盤に設置する杭施工機に着脱自在に設けられた杭構成部材の接続施工ユニットであって、一方の杭構成部材及び他方の杭構成部材の端部を重ねた部分に、その重ね方向に一方の杭構成部材及び他方の杭構成部材を貫通するように連結穴を形成する穿孔機構と、形成した前記連結穴に連結部材を押し込むことにより嵌合させる打設機構と、を備えていることを特徴としている。
【0030】
本発明では、接続施工ユニットを杭施工機に装着することで、一方の杭構成部材の端部と他方の杭構成部材の端部とを重ねた部分に対して、穿孔機構によって一方の杭構成部材及び他方の杭構成部材を貫通するように連結穴を形成することができ、打設機構において形成した連結穴同士を連通するようにして連結部材を嵌合させて、一方の杭構成部材と他方の杭構成部材とを連結させることができる。
このように、本発明に係る杭構成部材の接続施工ユニットによれば、地盤に設置した杭構成部材に対して他方の杭構成部材を配置した状態で連結穴を形成し、かつ連結部材を嵌合させるという簡単な継手構造により施工することができ、一方の杭構成部材の設置箇所における現場施工となる。そのため、従来のように杭端部に機械加工が施される機械式継手の場合に比べて継手の加工費を低減することができる。さらに、継手の加工を行うために加工工場に杭構成部材を持ち込む工程が不要になるため、輸送コストの低減を図ることができる。
【0031】
また、本発明では、一方の杭構成部材と他方の杭構成部材とを重ねた部分で、一方の杭構成部材及び他方の杭構成部材を同時に貫通させたそれぞれの連結穴同士は位置ずれが生じることがなく、精度よく形成することができる。そのため、連結部材の挿入時に現場で連結穴同士を位置決めするという手間のかかる作業を低減することが可能となり、連結部材を容易に挿入して嵌合させることができるので、作業効率を向上させることができる。
さらに、杭体の打設作業中に、杭構成部材同士の継手構造を設けて接続できるので、この接続作業が完了した直後に打設作業を開始することができ、工程の短縮を図ることができる。
さらにまた、本発明では、杭構成部材同士が重なる部分であれば任意の箇所に継手構造を配置することが可能となるので、種々の縦継部材の配列に対応することができる利点がある。
また、接続施工ユニットを汎用の杭施工機に対して装着して用いることが可能となるため、杭施工機ごとに合せた仕様で構成する必要がなく、使用後には、接続施工ユニットのみを簡単に離脱させることで、汎用の杭施工機に戻すことができる。
【0032】
また、本発明の一態様に係る接続施工ユニットは、前記穿孔機構及び前記打設機構は、前記杭構成部材の軸線方向に配列されていることを特徴としても良い。
【0033】
この構成によれば、穿孔機構で連結穴を形成した後、杭施工機により杭構成部材を上下方向のいずれかに移動させ、形成した連結穴を打設機構に対応する位置に配置することで、その連結穴に対して打設機構によって連結部材を挿入させて嵌合することができる。
【0034】
また、本発明の一態様に係る接続施工ユニットは、前記穿孔機構及び前記打設機構は、前記杭構成部材の周方向に配列されていることを特徴としても良い。
【0035】
この構成によれば、穿孔機構で連結穴を形成した後、杭施工機により杭構成部材を周方向のいずれかに移動させ、形成した連結穴を打設機構に対応する位置に配置することで、その連結穴に対して打設機構によって連結部材を挿入させて嵌合することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、杭構成部材に複雑な加工を施すことなく、杭構成部材に対する加工コストや輸送コストを低減することができるとともに、接続時の位置決め作業にかかる手間を低減することを効果的に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る一の実施形態について
図1から
図15を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の杭体100は、鋼管杭であり、上端部100aを地上部に突出させるようにして、所定のピッチで複数本が地盤A内に配されている。各杭体100は、杭構成部材である鋼管101を、杭体100の軸線L100に沿う方向である軸線方向Pに複数連結して構成されている。
鋼管101は、管状の本体部102と、本体部102の下端となる一端に接続され、内径が本体部102の外径と略等しい管状に形成された継手部103と有している。
図2に示すように、継手部103は、当該鋼管101の下に配置される下方の鋼管101の上端部101aが挿入され、杭体100の軸線方向Pに直交する方向となる径方向Q(
図4参照)に重ね合わされている。この上方に配された一方の鋼管101の継手部103と、当該鋼管101の下方に配される他方の鋼管101の上端部101aとは、本実施形態の継手構造1により接続されている。
また、本実施形態において、鋼管101の本体部102と継手部103とは、互いを溶接した溶接部104によって接合されている。なお、
図1に示すように、最下部に位置する鋼管101については、その下方に鋼管101を配していないことから、本体部102の下端には継手部103は設けられていない。
【0039】
次に、本実施形態の継手構造1の詳細について説明する。
図2から
図7に示すとおり、本実施形態の継手構造1は、第一の連結穴10を形成し上方の鋼管101に設けられた継手部103と、第二の連結穴20を形成し下方の鋼管101に設けられて上方の鋼管101の継手部103に挿入された上端部101aと、第一の連結穴10及び第二の連結穴20に挿入された楔部材30(連結部材)と、楔部材30と第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aとの間に嵌め込まれた係合部材40と、を備えている。
【0040】
下方の鋼管101の上端部101aは、上方の鋼管101の継手部103に挿入されていることにより、杭体100の軸線方向Pに直交する方向である径方向Qに継手部103と重なり合っている。継手部103は、径方向Qに貫通する第一の連結穴10が形成されている。
第一の連結穴10は、軸線方向Pに継手部103の略中央となる位置で、周方向Rに等間隔に複数形成されている。各第一の連結穴10は、継手部103の外周面103aから内周面103bまで略同一径として円形に形成されている。
【0041】
上端部101aは、第一の連結穴10と中心軸Cを略一致させるようにして第一の連結穴10と連通し、径方向Qに貫通する第二の連結穴20が形成されている。第二の連結穴20も、上端部101aにおいて、周方向Rに、第一の連結穴10の中心同士の間隔と同一の間隔で複数形成されている。各第二の連結穴20は、鋼管101の本体部102における外周面102aから内周面102bまで略同一径として円形に形成されている。ここで、第二の連結穴20の直径は、第一の連結穴10の直径よりも小さい。このため、第一の連結穴10の内周面10aと第二の連結穴20の内周面20aとの間には、下方の鋼管101の上端部101aにおける外周面102aにより形成される段差部102cを有している。
なお、第一の連結穴10及び第二の連結穴20は、後述する圧入機200に設けられる穿孔具51によってそれぞれ同時に穿孔されて貫通した状態に施工される。
【0042】
また、
図3、
図4及び
図8に示すように、楔部材30は、第二の連結穴20に挿入された先端挿入部31と、先端挿入部31よりも両鋼管101、101の径方向Q外周側となる位置に配され、第一の連結穴10に挿入された基端挿入部32とを有する。楔部材30は、径方向Q内周側から外周側となる先端から基端に向けて杭体100における周方向Rに沿う幅寸法B1が次第に大きくなるテーパ状の面に形成されている。したがって、先端挿入部31に対して基端挿入部32の方が、幅寸法B1が大きい形状となっている。一方、本実施形態では、杭体100における軸線方向Pに沿う楔部材30の幅寸法B2は、いずれの位置でも略同一寸法であって、第二の連結穴20の直径よりも小さい幅寸法の形状となっている。
【0043】
係合部材40は、複数の分割体41によって構成されている。分割体41は、第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aに沿い、楔部材30の幅が広がる方向となる周方向Rに、分割され並べて配置されている。本実施形態では、分割体41は2個である。各分割体41は、略半円板状に形成されて第二の連結穴20に配された先端部42と、略半円状に形成されて第一の連結穴10に配された基端部43と、を有する。
【0044】
先端部42は、第二の連結穴20の内周面20aに沿う係合面42aと、係合面42aに対して第二の連結穴20の中心軸C側に配された被挿入面42bと、係合面42aと被挿入面42bを接続する端面42cとを有する。係合面42aは、第一の連結穴10及び第二の連結穴20の中心軸C方向視して円弧状に形成されている。また、被挿入面42bは、中心軸C方向視して円弧状の係合面42aに対して弦を構成するようにして、杭体100の軸線方向Pに略平行に配されている。また、端面42cは、円弧状の係合面42a及び弦を構成する被挿入面42bの両端部を切り欠くようにして、杭体100の周方向Rに対して略平行に配されている。また、被挿入面42bから係合面42aまでの最大離間寸法、すなわち第一の連結穴10及び第二の連結穴20の中心軸Cの位置における杭体100の周方向Rに沿う幅寸法B3は、第二の連結穴20の半径よりも小さい寸法となっている。
また、分割体41の先端部42は、係合面42a及び被挿入面42bの両端部を切り欠くようにして設けられた端面42cを有していることにより、軸線方向Pの幅寸法B4が第二の連結穴20の直径よりも小さい寸法となっている。なお、本実施形態では、上記のとおり端面42cを有しているものとしたが、両端部が切り欠かれずに係合面42aと被挿入面42bとにより角が形成され、端面42cを有していない構成としても良い。
【0045】
基端部43は、第一の連結穴10の内周面10aに沿う係合面43aと、係合面43aに対して第一の連結穴10の中心軸C側に配された被挿入面43bとを有する。先端部42同様に、係合面43aは、第一の連結穴10及び第二の連結穴20の中心軸C方向視して円弧状に形成されている。また、被挿入面43bは、中心軸C方向視して円弧状の係合面43aに対して弦を構成するようにして、杭体100の軸線方向Pに略平行に配されている。さらに、被挿入面43bから係合面43aまでの最大離間寸法、すなわち第一の連結穴10及び第二の連結穴20の中心軸Cの位置における杭体100の周方向Rに沿う幅寸法B5は、第一の連結穴10の半径よりも小さい寸法となっている。また、基端部43は、先端部42に対して、段差部102cに沿って第一の連結穴10の内周面10aに向かって張り出している。
【0046】
先端部42及び基端部43の被挿入面42b、43bは、それぞれ、杭体100の径方向Q内周側から外周側に向かうに従って、杭体100の周方向Rに沿って第一の連結穴10及び第二の連結穴20の中心軸Cから、係合面42a、43aが対向する内周面10a、20aに向かうように傾斜し、互いに連続している。そして、二つの分割体41は、互いの先端部42及び基端部43の被挿入面42b、43bを向い合せるように配置されている。これにより二つの分割体41の被挿入面42b、43bにより、杭体100の径方向Q内周側から外周側に向かうに従って、杭体100の周方向Rに沿う幅寸法が大きくなる挿入穴40aが形成されている。
【0047】
各分割体41の係合面42a、43aには、第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aに向かって突出する係合部44が設けられている。係合部44は、第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aに沿うように線状に延びているとともに、先鋭状に突出している。本実施形態では、係合部44は、弾性的に圧縮変形した状態で第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aに先端が食い込み、内周面10a、20aを押圧している。なお、係合部44が塑性変形した状態となっていても良い。
【0048】
次に、上記のような継手構造1によって鋼管101同士を接続する接続方法について、鋼管101を接続して構成される杭体100の構築方法に含めて説明する。
図9は、既に複数の杭体100が地盤Aに設置された状態で、次の杭体100を設置する状態を示している。杭体100の地盤Aへの設置は、本実施形態の杭体100の構築方法を構成する圧入工程S10(設置工程)と接続工程S20とを実施することにより行われる。圧入工程S10では、圧入機200(杭施工機)により鋼管101を地盤Aに圧入する。
【0049】
圧入する鋼管101は、本実施形態の継手構造1を構成するために、本体部102と本体部102の下端に接続された継手部103とを有する。継手部103における第一の連結穴10と、上端部101aにおける第二の連結穴20とは、下方の鋼管101の上端部101aに対して、上方の鋼管101の継手部103を互いに重ねた状態で、圧入機200に設けられる接続施工ユニット50の穿孔具51によって双方の鋼管101、101を同時に貫通させるように穿孔させることにより現場で加工される。最下部の鋼管101については継手部103を有していないのは上記のとおりである。
【0050】
ここで、圧入工程S10で使用する圧入機200(杭施工機)の一例を説明する。
図9及び
図10に示すように、圧入機200は、サドル202と、サドル202に対して、圧入方向Mと交差する方向Nに移動可能に設けられたマスト201と、マスト201に対して軸線方向Pとなる杭体100の圧入方向Mに移動可能に設けられたチャックフレーム203と、を備えている。
【0051】
サドル202は、互いに近接、離間することにより鋼管101の内周面に対して嵌合、離脱することが可能なクランプ202aを有する。本実施形態では、3つの鋼管101を反力受けとすることができるように、3つのクランプ202aを有する。なお、
図9では既に設置済みの3つの鋼管101を反力受けとしているが、反力受けとして必要な本数が設置されていない場合には、鋼管101に相当する反力受けを予め設置してクランプ202aで把持する。マスト201は、サドル202に対して、前後シリンダ(不図示)により圧入方向Mと交差するスライド方向Nに移動可能に設けられている。このため、反力受けとなる鋼管101を把持した状態でサドル202に対して前後シリンダ(不図示)によりマスト201を相対移動させることにより、マスト201を設置済みの鋼管101に対して移動させて新たな設置位置Sに鋼管101を圧入していくことが可能となる。なお、クランプ202aは圧入時に生じる反力を受けることができる程度に設ければよく、その数は任意に変更可能である。
【0052】
チャックフレーム203は、マスト201に設けられるとともにチャックフレーム203を圧入方向Mに移動させるメインシリンダ204と、圧入する鋼管101を把持するチャック205と、を備えている。メインシリンダ204には、チャック205を連結支持する連結部204aが設けられている。
図11に示すように、チャック205は、環状に複数配されたチャック爪206と、チャック爪206を圧入する鋼管101に向かって進退させるシリンダ208と、を有する。圧入する鋼管101は、環状に配されるチャック爪206の配列の内部に挿入される。チャック爪206は、圧入する鋼管101の外周面の曲率と対応する曲率に形成された把持面206aを有する。そして、シリンダ208の駆動力によりチャック爪206を進出させることで、鋼管101の外周面に把持面206aを所望の圧力で押圧させて鋼管101を把持することが可能であるとともに、チャック爪206を後退させることで鋼管101を把持した状態を解除することが可能である。
【0053】
チャックフレーム203には、
図9に示すように、チャック205を圧入する鋼管101の軸線L100回りに回転させるチャック回転駆動部(不図示)が設けられている。このため、チャック爪206により鋼管101を把持した状態で、図示しないチャック回転駆動部及びメインシリンダ204を駆動させれば、鋼管101を軸線L100回りに回転させながら、圧入方向Mに地盤Aに対して押し込み(すなわち圧入)または引き抜きを行うことが可能となっている。
【0054】
さらに、チャックフレーム203の上面203aには、チャックフレーム203で把持された鋼管101の上方に接続される他方の鋼管101の外周部に接続施工ユニット50が配置されている。なお、接続施工ユニット50は、チャックフレーム203に対して着脱自在に、或いは固定された状態で設けられている。
接続施工ユニット50は、
図10に示すように、鋼管101を挟んだ両側の対向するそれぞれの位置に設けられ、チャックフレーム203と共にマスト201に対して移動する構成となっている。
接続施工ユニット50は、
図12(a)、(b)に示すように、一方の鋼管101及び他方の鋼管101を重ねた部分において、重ね方向に両鋼管101、101を貫通させるように第一の連結穴10及び第二の連結穴20を形成する穿孔具51(穿孔機構)と、形成した連結穴10、20に配置される係合部材40に対して楔部材30を押し込むことにより嵌合させる打設具52(打設機構)と、を備えている。接続施工ユニット50は、箱状のボックス53を備え、このボックス53内に穿孔具51及び打設具52が、穿孔具51を上側にして圧入方向Mに配列され鋼管101に向けて施工可能に固定された状態で収容されている。
【0055】
穿孔具51は、例えばレール沿って移動可能な押出し部511の先端に油圧又は電動の駆動モータ516によって駆動する穿孔カッタ512が装着され、押出し部511の伸縮によって穿孔カッタ512が互いに重なった両鋼管101、101を貫通させるように径方向Qに進退移動可能に設けられている。
図13及び
図14に示すように、穿孔カッタ512は、同心円状の環状の内周刃513及び外周刃514が配置され、中心部にパイロットピン515が2枚の内周刃513及び外周刃514よりも突出した状態で設けられている。穿孔カッタ512において、内周刃513は外周刃514よりも突出しており、内周刃513における外周刃514の先端からの突出長は、鋼管101の上端部101aの厚みよりも大きく設定されている。押出し部511によって進出される穿孔カッタ512の突出位置は、チャック205で把持された一方の鋼管101の上部に接続される他の鋼管101における継手部103の内周面103bの位置となる。つまり、穿孔カッタ512で両鋼管101、101を貫通させると、重なり方向の内側の鋼管101の上端部101aには内周刃513と同じ径寸法の第二の連結穴20が形成され、外側の鋼管101の継手部103には外周刃514と同じ径寸法の第1連結穴10が形成され、それぞれの連結穴10、20によって
図14に示すように段差部102cが形成されることになる。なお、駆動モータ516が油圧モータの場合には、例えば圧入機200から油圧を供給することができる。
【0056】
打設具52は、
図12(a)、(b)に示すように、ジャッキ521の先端に押付部522が装着され、ジャッキ521の伸縮によって押付部522が径方向Qに進退移動可能に設けられている。押付部522は、楔部材30の基端挿入部32(
図8参照)側を押圧することで、穿孔具51で形成した連結穴10、20に嵌合させた係合部材40の挿入穴40aに楔部材30を押し込んで挿入させることができる。
なお、とくに図示しないが、押付部522の先端には、楔部材30がずれないように係止する係止部が形成されていても良い。あるいは、押付部522が磁石により形成されていて、磁力により楔部材30を着磁させるようにしても良い。
【0057】
また、チャックフレーム203の連結部204aには、
図9及び
図10に示すように、鋼管101を囲うように上面視でコの字状に配置され、接続施工ユニット50に手が届く範囲に作業ステージ54が設けられている。
【0058】
このような圧入機200により、
図9に示すように、鋼管101を圧入していく。そして、鋼管101の上端部101aをチャック205で把持可能な位置まで鋼管101の圧入を完了したら、次工程として本実施形態における接続方法による接続工程S20を実施する。
接続工程S20は、前工程で地中に圧入した鋼管101に対して、当該鋼管101の上端部101aに接続する他方の鋼管101を重ねて設置する杭構成部材配置工程S21と、重ねた部分に、その重ね方向に両鋼管101、101が貫通するように第一の連結穴10と第二の連結穴20を形成する連結穴形成工程S22と、第一の連結穴10と第二の連結穴20に係合部材40を挿入する係合部材配置工程S23と、係合部材40を構成する分割体41により形成された挿入穴40aに楔部材30を挿入する楔部材挿入工程S24と、楔部材30を押し込むことで係合部材40を構成する分割体41を拡張させる係合部材拡張工程S25(連結部材嵌合工程)と、を有している。
【0059】
杭構成部材配置工程S21では、まず圧入機200においてマスト201に対してチャックフレーム203を上昇させることで、チャック205を、圧入した鋼管101から上方に離間した位置まで移動させる。次に、
図15に示すように、図示しないクレーン等によって新たに接続する他の鋼管101を吊り込み、チャックフレーム203の上方から下降させることにより、チャック205に他の鋼管101を挿入する。そして、
図11に示す圧入機200のチャック爪206を、チャック205に挿入した他の鋼管101に対して進出させることにより、他の鋼管101を把持する。
【0060】
次に、圧入機200において、マスト201に対してチャックフレーム203を下降させることにより、チャック205で把持した他の鋼管101を下降させ、これにより圧入した鋼管101の上端部101aを他の鋼管101の継手部103に挿入させる。ここで、圧入機200を利用して、接続する他の鋼管101を把持することにより、既に圧入した鋼管101と、接続する他の鋼管101の軸線L100を一致させることができ、圧入した鋼管101の上端部101aを他の鋼管101の継手部103に容易に挿入させることができる。
なお、上下に接続される鋼管101、101同士の嵌合が容易な場合には、鋼管101の自重により嵌合できるため、チャック205による把持を行わなくても良い。
【0061】
次に、連結穴形成工程S22を実施する。
連結穴形成工程S22では、
図12(a)、
図16a及び
図17(a)に示すように、一方の鋼管101を地上に設置した圧入機200に設けられた互いに対向する位置に設けられる二組の接続施工ユニット50のそれぞれの穿孔具51によって一方の鋼管101に第一の連結穴10を形成するとともに、その上方から接続される他方の鋼管101の第二の連結穴20を形成する。具体的には、穿孔具51の駆動モータ516を駆動させて穿孔カッタ512を回転させるとともに、進出させて重なった鋼管101、101を同時に穿孔して貫通させる。このとき、
図14に示すように、穿孔カッタ512の外周刃514が外側の鋼管101のみを貫通させた位置で穿孔カッタ512の進出を停止させることで、一方の鋼管101には第一の連結穴10が形成され、他方の鋼管101には第一の連結穴10より大径で同軸となる第二の連結穴20が形成される。
【0062】
このように、本実施形態では、第一の連結穴10と第二の連結穴20が穿孔カッタ512によって同時に貫通させて形成されることから、第一の連結穴10と第二の連結穴20の中心軸C(
図5参照)を一致させることができる。そのため、第一の連結穴10と第二の連結穴20の中心軸Cがずれることがなくなり、これら連結穴10、20に係合される係合部材40を容易に挿入することができる。
【0063】
そして、本実施形態では、
図12(b)に示すように、第一の連結穴10と第二の連結穴20の形成後にチャックフレーム203を鋼管101の把持を開放して上方(圧入方向Mと反対方向)に移動させる。このときのチャックフレーム203の移動量は、穿孔具51と打設具52のそれぞれの中心軸の離間寸法D(
図12(a)、(b)参照)に相当する。つまり、
図12(b)及び
図16(b)に示すように、打設具52と両連結穴10、20とが対向し、かつそれぞれの中心軸が一致するように配置される。
なお、チャックフレーム203の上下移動後は、鋼管101が動かないようにチャック205で鋼管101を把持しておくことが望ましい。とくに、後述するように楔部材30を打設具52で押し込む際には、チャック205で把持しておく必要がある。
【0064】
次に、係合部材配置工程S23を実施する。
係合部材配置工程S23では、まず
図3及び
図17(b)に示すように、係合部材40を構成する分割体41を第一の連結穴10及び第二の連結穴20に挿入する。ここで、
図5に示すように、本実施形態では、2つの分割体41を、接続する鋼管101の軸線方向Pと直交する周方向Rに並べて配置する。各分割体41の先端部42は第二の連結穴20に配置されて、基端部43は第一の連結穴10に配置され、2つの分割体41の間には挿入穴40aが形成される。ここで、係合部材40は、2つの分割体41によって互いの間に挿入穴40aが形成される構成であるので、当該挿入穴40aの幅を予定される幅寸法より小さい寸法とするように挿入することで、第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aと干渉させずに容易に挿入させることができる。また、
図3に示すように、先に挿入する第一の連結穴10の直径を第二の連結穴20の直径よりも大きくしていることから、第一の連結穴10と第二の連結穴20の間に他の鋼管101の外周面102aにより形成される段差部102cを有している。また、これと対応して、分割体41は先端部42に対して基端部43が張り出している。このため、分割体41を第一の連結穴10及び第二の連結穴20に挿入すると段差部102cに基端部43の張り出した部分が係合する。これにより係合部材40を構成する分割体41を、位置決めして適切な量だけ確実に挿入することができ、分割体41が杭体100の径方向Q内周側へと位置ずれしてしまうことも防止することができる。そして、挿入した状態で各分割体41の先端部42及び基端部43の係合面42a、43aを第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aに当接させる。
【0065】
次に、楔部材挿入工程S24を実施する。
すなわち、楔部材挿入工程S24では、分割体41の間に形成された挿入穴40aに、杭体100の径方向Q外周側から、楔部材30を、先端挿入部31より順に挿入する。楔部材30の幅寸法が変化する方向を、係合部材40の分割体41による分割する方向に一致させるように、楔部材30の向きを調整する。ここで、第一の連結穴10及び第二の連結穴20の位置や直径の状態によって挿入穴40aの幅寸法は異なっているが、本工程の段階では楔部材30は挿入可能な位置まで挿入できていれば良く、基端挿入部32の一部が他の鋼管101の継手部103の外周面103aから突出した状態としておく。
【0066】
係合部材拡張工程S25では、楔部材挿入工程S24で挿入した楔部材30をさらに挿入穴40aに押し込む。具合的には、本実施形態では係合部材40の挿入穴40aに挿入されている楔部材30に対して径方向Qに正対する接続施工ユニット50の打設具52を使用して挿入穴40aに押し込む。すなわち、
図12(b)及び
図17(c)に示すように、まずジャッキ521を駆動させて押付部522を楔部材30に向けて進出させることで、ジャッキ521による駆動力に応じた力で押付部522によって楔部材30を挿入穴40aに押し込むことができる。
ここで、ジャッキ521による駆動力は、一定の力で楔部材30を押し込んで拘束力を発生させるために、予め設定した力となるように管理することが望ましい。また、
図3に示すように、楔部材30を押し込むに際して、段差部102cを有していることにより分割体41の基端部43の張り出した部分が案内され、適切に鋼管101の周方向Rに沿って分割体41を移動させることができるとともに、楔部材30とともに分割体41が鋼管101の径方向Q内周側へと移動してしまうことを規制することができる。
【0067】
このように楔部材30を挿入穴40aに押し込むことで、楔部材30の幅寸法B1が先端挿入部31から基端挿入部32に向かうに従って大きくなっているので、挿入穴40aを押し広げ、分割体41同士を離間させ、各分割体41の係合面42a、43aを第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aに押し付けることができる。これにより、係合部材40の分割体41から第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aに杭体100の周方向Rに沿う向きの力が当該周方向Rへの拘束力として各鋼管101に作用し、また、当該拘束力により生じる摩擦力が杭体100の軸線方向Pへの拘束力として各鋼管101に作用することになり、鋼管101同士を接続することができる。ここで、本実施形態では、分割体41の係合面42a、43aには係合部44が設けられており、楔部材30を押し込むことにより係合部44が弾性変形するとともに、先鋭状の先端が第一の連結穴10及び第二の連結穴20の内周面10a、20aに食い込むことになる。この係合部44の復元力及び食い込みによって、係合部材40と鋼管101との係合関係を確実に保持するとともに、より効果的に拘束力を発生させることができる。
【0068】
次に、チャックフレーム203による鋼管101の把持を開放してから、そのチャックフレーム203を圧入方向Mに上述した穿孔具51と打設具52のそれぞれの中心軸の離間寸法Dだけ移動させる。さらにその後に、
図18(a)に示すように、圧入機200においてチャックフレーム203に対してチャック205を鋼管101を把持した状態で回転させることにより、圧入された鋼管101及びこの鋼管101に対して接続する他の鋼管101を90°回転させ、係合部材拡張工程S25によって施工した継手部の位置も90°回転させる。
なお、チャック205を回転させた後は、鋼管101が動かないようにチャック205で鋼管101を把持しておくことが望ましい。とくに、楔部材30を打設具52で押し込む際には、チャック205で把持しておく必要がある。
【0069】
続いて、
図18(b)に示すように、90°回転させた位置の鋼管101に対して上述した連結穴形成工程S22と同様の手順により実施する。そして、
図18(c)に示すように、新たに鋼管101に形成した第一の連結穴10と第二の連結穴20に対して、係合部材配置工程S23と同様の手順により係合部材40を配置し、さらに楔部材挿入工程S24と同様の手順により係合部材40の挿入穴40aに楔部材30を挿入する。さらに、上述した係合部材拡張工程S25と同様の手順により楔部材挿入工程S24で挿入した楔部材30をさらに挿入穴40aに押し込む。これにより、周方向Rに90°の間隔で4箇所の接続部を形成することができる。
なお、本実施形態では連結穴10、20等からなる接続部が周方向Rに90°間隔をあけた4箇所に設けられる配置パターンを対象としているが、その他の配置パターンについては、チャック205の上下移動量、回転角度を任意で設定することにより対応することが可能である。
【0070】
次に、再び圧入工程S10を実施する。
すなわち、
図9に示すように、圧入機200において、鋼管101を把持しながらチャック205を回転させ、また、チャックフレーム203を下方(圧入方向M)に移動させることで、鋼管101を回転させつつ圧入させることができる。そして、チャックフレーム203のストローク分だけ鋼管101を圧入させたら、一度チャック205による鋼管101の把持を解除させる。次に、チャック205を上方に移動させた後に再びチャック205によって鋼管101を把持して回転させながら圧入していく。これを繰り返して、鋼管101の上端部101aがチャック205で把持可能な位置となるまで鋼管101を圧入したら本圧入工程S10を完了とし、再び接続工程S20を実施する。
このように、圧入工程S10と接続工程S20とを繰り返し、予定の本数の鋼管101を接続して圧入したら全工程が完了し、所定の長さの杭体100が地盤Aに設置されることになる。
【0071】
以上のように、本実施形態では、地盤に設置されチャック205で回転不能に保持された一方の鋼管101に対して他方の鋼管101を配置した状態で連結穴10、20を形成し、かつ楔部材30を嵌合させるという簡単な継手構造により施工できる方法であり、一方の鋼管101の設置箇所における現場施工となる。そのため、従来のように杭端部に機械加工が施される機械式継手の場合に比べて継手の加工費を低減することができる。
さらに、継手の加工を行うために加工工場に鋼管101を持ち込む工程が不要になるため、輸送コストの低減を図ることができる。
【0072】
また、本実施形態では、一方の鋼管101と他方の鋼管101とを重ねた部分で、両鋼管101を同時に貫通させたそれぞれの連結穴10、20同士は位置ずれが生じることがなく、精度よく形成することができる。そのため、楔部材30の挿入時に現場で連結穴10、20同士を位置決めするという手間のかかる作業を低減することが可能となり、楔部材30を容易に挿入して嵌合させることができるので、作業効率を向上させることができる。
さらに、杭体100の打設作業中に、鋼管101、101同士の継手構造を設けて接続できるので、この接続作業が完了した直後に打設作業を開始することができ、工程の短縮を図ることができる。
さらにまた、本実施形態では、鋼管101、101同士が重なる部分であれば任意の箇所に継手構造を配置することが可能となるので、種々の縦継部材の配列に対応することができる利点がある。
【0073】
また、本実施形態では、圧入機200に穿孔具51が設けられているので、上述した連結穴形成工程S22ごとに穿孔具51及び打設具52を配置する手間が不要になり、作業性の向上を図ることができる。また、圧入機200自体に備えられる旋回や上下移動機構を穿孔具51及び打設具52に利用することができるので、これらの動作に必要な新たな機構が不要となり、簡単な構造でコンパクト化を図ることができ、かつコストを低減できる。
【0074】
また、本実施形態では、穿孔具51及び打設具52がボックス53に収容されて一体に設けられた接続施工ユニット50を構成しており、本実施形態のような汎用の杭施工機に対して装着して用いることが可能となる。そのため、杭施工機ごとに対応させた仕様で構成する必要がなく、使用後には、接続施工ユニット50のみを簡単に離脱させることで、汎用の杭施工機に戻すことができる。
【0075】
以上、一の実施形態の杭構成部材の接続方法及び杭施工機について説明したが、これに限られるものではない。
上記においては、圧入機200に設けられる接続施工ユニット50が周方向Rの二箇所で、互いに対向する位置に設けられ、さらにチャックフレーム203の上面203aに固定されているが、接続施工ユニット50の位置や数量はこれに限定されることはない。また、穿孔具51及び打設具52が一体にユニット化されていない構成であってもかまわない。
【0076】
例えば、
図19及び
図20に示す第一の変形例による圧入機200A(杭施工機)は、チャックフレーム203の上面203aに支持され、チャック205に把持された鋼管101の全周を囲う環状の支持枠55と、支持枠55に固定され周方向Rに90°の間隔をあけて4箇所に設けられた穿孔具51及び打設具52を組み合わせによる接続装置部50Aと、を備えた接続施工ユニット50が着脱自在に設けられたものである。支持枠55には、複数の脚材55aが下方に向けて延びてチャックフレーム203の上面203aに着脱自在に装着されている。各接続装置部50Aの穿孔具51及び打設具52は、上述した実施形態と同様に、穿孔具51を上側にして圧入方向Mに配列され鋼管101に向けて施工可能に固定された状態で支持枠55に収容されている。
【0077】
この場合には、鋼管101の継手部の位置が周方向Rに90°の間隔をあけて設けられるときに、これら4つの継手部を一度に施工することが可能である。そのため、上述した実施形態のように対向する二箇所の継手部に対して楔部材30を嵌合させた後に鋼管101を90°回転させてから再び連結穴を形成して楔部材を嵌合させるという繰り返しの工程が不要となり、一方の鋼管101と他方の鋼管101との一箇所の接続部における作業効率を向上させることができる。
また、接続施工ユニット50を汎用の杭施工機に対して装着して用いることが可能となるため、杭施工機ごとに対応した仕様で構成する必要がなく、使用後には、接続施工ユニット50のみを簡単に離脱させることで、汎用の杭施工機に戻すことができる利点がある。
【0078】
また、
図21及び
図22に示す第二の変形例による圧入機200B(杭施工機)は、上述した実施形態における接続施工ユニット50に設けられる穿孔具51及び打設具52が圧入方向Mではなく周方向Rに隣り合うように配列された構成となっている。
この場合には、穿孔具51で連結穴10、20を形成した後、チャック205を回転させることで鋼管101を周方向Rのいずれかに移動させ、形成した連結穴10、20を打設具52に正対する位置に配置することで、その連結穴10、20に対して打設具52によって楔部材30を挿入させて嵌合することができる。
なお、本第二の変形例のように穿孔具51及び打設具52が周方向Rに隣り合うように配列されることに限らず、周方向Rに離れた位置、例えば穿孔具51及び打設具52が周方向Rに交互に90°の間隔をあけた位置に配置されていても良い。
【0079】
さらに、
図23に示す第三の変形例による圧入機200C(杭施工機)は、上述した実施形態と同様に穿孔具51及び打設具52が上下に配列される接続施工ユニット50を、チャック205から下方に向けて突出するように設ける構成であっても良い。
【0080】
さらにまた、
図24に示す第四の変形例による圧入機200D(杭施工機)は、第三の変形例による接続施工ユニット50を、マスト201からチャック205側に向けて延ばされたベース209に対して下方に向けて突出するように設ける構成としてもよい。この場合には、接続施工ユニット50がベース209を介してマスト201に固定されているので、例えばベース209に上下方向に伸縮するジャッキ(図示省略)を備えることで、鋼管101に対して上下に配置される穿孔具51及び打設具52の位置を移動させることができる。
【0081】
また、上記の実施形態では、接続施工ユニット50における上下に配置される穿孔具51及び打設具52は、上側に穿孔具51を配置しているが、上下を逆に配置してもよい。つまり、上側に打設具52を配置することも可能である。
さらに、上記の実施形態では、穿孔具51の内周刃513及び外周刃514の形状が同心円の環状のものであることに限定されず、周方向に分割された刃であってもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、継手部103が上方の鋼管101に設けられ、この継手部103に下方の鋼管101を挿入して接続するものとしたが、継手部103が下方の鋼管101に設けられ、上方の鋼管101を挿入して接続するものとしても良い。
また、鋼管101に継手部103を予め設けておき、当該継手部103ともう一方の鋼管101とを重ねるようにして接続するものとしたが、これに限るものではない。
【0083】
また、一方の鋼管101に対して他方の鋼管101全体を、内径を一方の鋼管101の外径と略等しくして挿入して本実施形態の継手構造1により接続するものとしても良い。
【0084】
また、上記においては、杭体を鋼管杭とし、これを構成する杭構成部材を鋼管としたがこれに限るものではない。例えば、鋼管矢板やC型状の鋼矢板にも適用可能である。例えば鋼矢板の場合には、杭構成部材として、矢板材とジョイントプレートとを重ね合わせ、互いに重ね合わさった部分を第一の接続部及び第二の接続部として本実施形態の継手構造1により接続しても良い。
また、上記においてはいずれも鋼材同士の接続を対象としていたがこれに限るものではなく、例えば杭構成部材としてコンクリート杭材とジョイント材の接続においても適用可能である。
【0085】
また、本実施形態の継手構造1では、第一の連結穴10と第二の連結穴20は幅寸法となる直径が異なるものとしたが、これに限るものではなく、同一の直径としても良い。
また、本実施形態の継手構造1では、係合部材40は、杭体100の周方向Rに分割される2つの分割体41により構成されるものとしたが、これに限るものではなく、3つ以上の分割体により構成するものとしても良い。
【0086】
また、第一の連結穴10及び第二の連結穴20は、円形の貫通孔として説明したがこれに限るものではない。例えば、矩形の穴など異なる形状としても良い。また、第二の連結穴20については第二の接続部を貫通せずとも、貫通孔となる第一の連結穴10と連通する構成であれば良い。
また、各継手構造を構成する第一の連結穴、第二の連結穴、係合部材及び楔部材の構成は、杭材の周方向に所定のピッチで一列に配されているものとしたが、軸線方向にも複数配されていても良い。この場合には、周方向のピッチを大きくしても良い。また、第一の連結穴、第二の連結穴、係合部材及び楔部材の構成が、軸線方向に異なる位置に配置される場合に、互いに周方向の位置を異なるようにして、所謂千鳥状に配置しても良い。
【0087】
また、上記実施形態において、楔部材30を打設具52で押し込むものとしたがこれに限るものではなく、圧入機200のチャック205の把持力を利用したり、ハンマー等により手作業で押し込むものとしても良い。
【0088】
また、上記実施形態の杭体の構築方法では、圧入工程S10として鋼管101を圧入機200により圧入して地盤A内に設置するものしたがこれに限るものではなく、打込みにより地盤Aに設置したり、予め掘削した穴に建て込むようにしたりしても良く、複数の杭材を本実施形態の継手構造で予め接続した後に地盤A内に設置するようにしても良い。
具体的には、上記実施形態のような圧入機200等の杭施工機を用いることなく、地上において鋼管101(杭構成部材)を横向きにして一方向に連続して配列し、横向きの一方の杭構成部材の端部と他方の杭構成部材の端部とを互いに重ねた部分を貫通するように連結穴を形成してもよい。さらに、横向きの状態のまま、形成した連結穴に連結部材を嵌合させるようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態において、穿孔具51及び打設具52を一体に設けて施工機本体に対して着脱自在に設ける構成としているが、穿孔具51及び打設具52を別体で設け、それぞれが施工機本体に対して着脱自在とする構成であってもかまわない。
【0090】
以上、本発明の実施形態及び変形例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態及び変形例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。